説明

ボール弁

【課題】 弁座が早期に摩耗するのを防止することができるボール弁を提供する。
【解決手段】一対の弁座部材3A,3Bの互いに対向する各端面の内周部には、球弁6を回動可能に支持する弁座3aをそれぞれ設ける。同端面の中間部には、弁座3a側に向かって突出し、かつ弁座3aを囲む突出部3bを形成する。これにより、弁座部材3A,3Bの互いに対向する各端面の弁座3aに隣接する部位に、球弁6に向かって開口する収容凹部3cを形成する。収容凹部3cには、潤滑油を収容させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁体として球弁が用いられたボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボール弁は、ガス通路が形成された弁本体と、この弁本体のガス通路内に互いに対向して配置された一対の弁座部材と、この一対の弁座部材の各弁座によって回動可能に支持された球弁とを備えている。球弁は、閉位置と開位置との間を回動可能であり、閉位置に回動するとガス通路が閉じられ、開位置に回動するとガス通路が開かれる。
【0003】
【特許文献1】特開2000−35143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボール弁においては、その構造上、球弁と弁座との接触面積を大きくすることが難しい。このため、弁座が早期に摩耗し易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するために、内部にガス通路が形成された弁本体と、上記ガス通路の内部に互いに対向して配置され、互いに対向する一端部に環状をなす弁座がそれぞれ形成された一対の弁座部材と、この一対の弁座部材の弁座によって回動可能に支持された球弁とを備えたボール弁において、上記一対の弁座部材の一端部の上記弁座に隣接する外面に、上記球弁に向かって開口する収容凹部が形成され、この収容凹部に潤滑油が収容されていることを特徴としている。
この場合、上記弁座部材の一端部の上記弁座に隣接する外面に上記球弁側に突出する突出部が形成されることにより、上記突出部と上記弁座との間に上記収容凹部が形成されていることが望ましい。上記突出部の先端部が上記球弁に相対回動可能に接触していることが望ましい。
また、上記弁座部材が、その軸線と直交し、かつ上記弁座部材をその一端側と他端側とに二等分する二等分線に関して対称に形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、収容凹部に収容された潤滑油が弁座と球弁との間に入り込む。したがって、弁座の早期摩耗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施の形態を示す。この実施の形態のボール弁1は、弁本体2を有している。この弁本体2には、その一端面から他端面まで貫通するガス通路2aが形成されている。このガス通路2aの上流側及び下流側の各開口部には、テーパ雌ねじ部2b,2cが形成されている。ガス通路2aの中間部には、テーパ雌ねじ部2b,2cの最小内径と同等以下の内径を有するストレート孔部2dが形成されている。
【0008】
ガス通路2aのストレート孔部2dには、環状をなす一対の弁座部材3A,3Bが挿入されている。一対の弁座部材3A,3Bは、ストレート孔部2dの長手方向へ互いに離間し、かつ互いの軸線(以下、弁座部材3A,3Bの軸線に符号L1を付す。)を一致させて配置されている。一方の弁座部材3Aは、図1における左端部(他端部)がストレート孔部2dの内周面のテーパ雌ねじ2c側の端部に設けられた環状突出部2eに押し当てられている。他方の弁座部材3Bは、図1における右端部(他端部)がストレート孔部2dのテーパ雌ねじ部2b側の端部に設けられたCリング4にワッシャ5を介して押し当てられている。これにより、一対の弁座部材3A,3Bが所定の設置位置から互いに離間する方向へ移動不能になっている。
【0009】
一対の弁座部材3A,3Bは、互いに同一(対称)に構成されている。そこで、以下においては、弁座部材3Aについてのみ説明することとし、弁座部材3Bについては弁座部材3Aと同様の構成部分に同一符号を付してその説明を省略する。勿論、弁座部材3A,3Bは、互いに異なる構成にしてもよい。しかし、この実施の形態のように両者を同一構成にすることが望ましい。そのようにすれば、部品点数を減らすことができ、その分だけ弁座部材3A,3Bの製造費及び管理費等を低減することができるからである。
【0010】
弁座部材3Aは、周知のボール弁の弁座部材と同様の材質、例えば比較的硬質のゴム、フッ素樹脂等の合成樹脂、その他によって構成されている。弁座部材3Aは、図1〜図5に示すように、断面略四角形のリング体として形成されており、ガス通路2aのストレート孔部2dに圧入されている。これにより、ストレート孔部2dの内周面と弁座部材3Aの外周面との間が密封されている。弁座部材3Aの弁座部材3Bと対向する一端面の内周側部分には、弁座3aが形成されている。弁座3aは、軸線L1上に中心を位置させた球面の一部によって構成されている。
【0011】
一対の弁座部材3A,3Bの各弁座3a,3aによって球弁6が回動可能に支持されている。球弁6は、図1及び図2に示すように、球弁6の中心(弁座3aを構成する球面の中心)Cを通り、弁座部材3A,3Bの軸線L1と直交する軸線L2を中心として図1に示す開位置と、この開位置からほぼ90°離れた閉位置との間を回動可能になっている。球弁6が開位置に回動すると、ガス通路2aの弁座部材3A,3Bによって区画される上流側部分と下流側部分とが球弁6に形成された貫通孔6aを介して連通し、ガス通路2aが開かれる。球弁6が閉位置に回動すると、ガス通路2aの上流側部分と下流側部分との間が球弁6によって遮断され、ガス通路2aが閉じられる。
【0012】
弁本体2の軸線L2上に位置する一側壁には、当該一側壁を貫通する連結軸7が回動可能に設けられている。この連結軸7の内側の端部は、球弁6に回動不能に連結されている。連結軸7の弁本体2から外部に突出した外側の端部には、ハンドル8が回動不能に連結されている。したがって、球弁6は、ハンドル8によって回動操作することができる。
【0013】
図1〜図5に示すように、弁座部材3Aの弁座部材3Bと対向する一端面には、突出部3bが形成されている。突出部3bは、その先端部が球弁6に接近するよう、弁座部材3Aの軸線方向に突出している。突出部3bは、球弁6の中心Cに向かって突出させてもよい。突出部3bの先端部は、球弁6の外周面に相対回動可能に接触している。突出部3bの突出量を小さくしてその先端部を球弁6から若干離間させてもよい。突出部3bは、弁座部材3Aの軸線を中心として環状に形成されており、弁座3aより外周側に配置されている。このように配置された突出部3bが形成されることにより、弁座部材3Aの一端面の弁座3aと突出部3bとの間の部分には、球弁6に向かって開放された収容凹部3cが形成されている。この収容凹部3cには、グリス等の潤滑油(図示せず)が収容されている。
【0014】
図4(B)に示すように、弁座部材3Aは、その軸線L1と直交し、かつ弁座部材3Aをその一端側と他端側とに二等分する二等分線L3に関して対称に形成されている。したがって、弁座部材3Aの他端面にも、弁座3a、突出部3b及び収容凹部3cが形成されている。
【0015】
弁座部材3A,3Bの各他端面にも突出部3bがそれぞれ形成されると、弁座部材3Aは、その他端面の突出部3bだけが環状突出部2eに突き当たり、弁座部材3Bは、その他端面の突出部3bだけがワッシャ5に突き当たることになる。この結果、突出部3bと環状突出部2eとの間、及び突出部3bとワッシャ5との間の各面圧が高くなり、それらの間のシール性を向上させることができる。ただし、突出部3bは、必ずしもこの実施の形態のようにその幅(弁座部材3A,3Bの径方向の寸法)を狭くする必要がなく、突出部3bを径方向外側に向かって広げてもよい。例えば、図3において想像線で示すように、弁座部材3A,3Bの外周部まで広げてもよい。後述するように、各弁座部材3A,3Bの一端面に形成される突出部3bが環状突出部2e、ワッシャ5にそれぞれ突き当てられることがある。そこで、一端面に形成される突出部3bについても、他端面に形成される突出部3bと同様にその幅を広げてもよい。
【0016】
上記構成のボール弁1においては、弁座部材3A,3Bに潤滑油を収容する収容凹部3cが弁座3aに隣接して設けられているので、収容凹部3cに収容された潤滑油が弁座3aに導入される。したがって、弁座3aが早期に摩耗するのを防止することができる。しかも、収容凹部3cの開口部が球弁6の外周面と対向しているので、収容凹部3cが球弁6によって蓋をされたような状況を呈している。したがって、収容凹部3cに収容された潤滑油が無駄に漏出することがほとんどない。よって、油切れを長期間にわたって防止することができる。また、突出部3bの先端部が球弁6と接触しているので、弁座3aが摩耗した場合には、突出部3bの先端部が弁座として機能する。したがって、このボール弁1は、その寿命をさらに向上させることができる。
【0017】
また、上記構成のボール弁1を組み立てる場合には、弁座部材3A、球弁6、弁座部材3B、ワッシャ5及びCリング4がその順にテーパ孔部2bからストレート孔部2dの所定の位置まで挿入される。この場合、弁座部材3A,3Bが同一に構成されているから、弁座部材3A,3Bの挿入順番を間違ったとしても問題が生じることがない。また、弁座部材3A,3Bが対称に形成されているから、弁座部材3A,3Bが、それぞれの一端側と他端側とが逆向きになった状態で挿入されたとしても、各弁座部材3A,3Bの他端面に形成された弁座3a,3aが球弁6を支持する。したがって、このような場合にも全く問題が生じない。弁座部材3A,3Bが正逆いずれの向きで挿入された場合であって球弁6を支持する弁座3aに潤滑油を供給することができるよう、弁座部材3A,3Bを組付ける際には、一端面と他端面とにそれぞれ形成された収容凹部3c,3cの両者に潤滑油を収容させておくことが望ましい。
【0018】
図6は、この発明の第2実施の形態を示す。この実施の形態のボール弁1′においては、ガス通路2aが直角に屈曲しており、テーパ雌ねじ部2cを有する下流側部分がストレート孔部2cと直交している。なお、ガス通路2aのテーパ孔部2bを有する上流側部分は、上記実施の形態と同様に、ストレート孔部2cと同芯に配置されている。ガス通路2aが直角に屈曲されたことに対応して、球弁6には、貫通孔6aと直交する分岐孔6bが形成されている。この分岐孔6bは、ガス通路2aの下流側部分と常時連通している。したがって、球弁6が図6に示す開位置に位置すると、ガス通路2aの上流側部分と下流側部分とが貫通孔6a及び分岐孔6bを介して連通する。一方、球弁6が開位置からほぼ90°回動して閉位置に位置すると、上記の実施の形態と同様に、ガス通路2aの上流側部分と下流側部分とが球弁6によって遮断される。その他の、構成は上記実施の形態と同様であるので、同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同実施の形態における一対の弁座部材と球弁とを示す拡大断面図である。
【図3】図2のX円部の拡大図である。
【図4】同実施の形態において用いられている弁座部材を示す図であって、図4(A)はその平面図、図4(B)は図4(A)のB−B線に沿う断面図である。
【図5】同実施の形態においては用いられている弁座部材を示す一部切欠き斜視図である。
【図6】この発明の他の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
L1 弁座部材の軸線
L3 二等分線
1 ボール弁
1′ ボール弁
2 弁本体
2a ガス通路
3A 弁座部材
3B 弁座部材
3a 弁座
3b 突出部
3c 収容凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にガス通路が形成された弁本体と、上記ガス通路の内部に互いに対向して配置され、互いに対向する一端部に環状をなす弁座がそれぞれ形成された一対の弁座部材と、この一対の弁座部材の弁座によって回動可能に支持された球弁とを備えたボール弁において、
上記一対の弁座部材の一端部の上記弁座に隣接する外面に、上記球弁に向かって開口する収容凹部が形成され、この収容凹部に潤滑油が収容されていることを特徴とするボール弁。
【請求項2】
上記弁座部材の一端部の上記弁座に隣接する外面に上記球弁側に突出する突出部が形成されることにより、上記突出部と上記弁座との間に上記収容凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボール弁。
【請求項3】
上記突出部の先端部が上記球弁に相対回動可能に接触していることを特徴とする請求項2に記載のボール弁。
【請求項4】
上記弁座部材が、その軸線と直交し、かつ上記弁座部材をその一端側と他端側とに二等分する二等分線に関して対称に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のボール弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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