説明

ポケットの飛び出し防止構造

【課題】従来のシャツなどの上着の胸部に設けられる収納物の飛び出しを防ぐポケットは、ポケット口をボタンなどで留めて防いでいたが、収納物の出し入れごとにポケット口の開閉を行わなければならないという不便な問題があった。
【解決手段】従来の上方開放のポケットに、そのポケット口から上方とポケット内下方に連設する縦長い飛び出し防止壁5aが上端と下端を上着本体30に縫着して設けられ、その長四角形状の飛び出し防止壁を挟んで内側と外側にそれぞれ収納部を備え、ポケット口上端33から上方の飛び出し防止壁の右側辺開口高さ13a部より収納物を横向きに近い状態で内側の収納部28bに出し入れ及び納置を行ない、飛び出し防止壁の上端を塞ぐことにより飛び出しを防ぐことができる。そして、外側の収納部は従来と同じく上部の開口部から出し入れするポケット構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類のポケットの内シャツ又は作業用上着又は運動用上着(以下上着と言う)などの胸部外側に設けられる上方開口のポケットで、そのポケットの収納物の飛び出し防止を図ったポケット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上着の胸部ポケットには、出し入れ時の使い勝手を重視したポケット口が常時開いたポケット構造と、ポケット口の一部又は全部をボタンやスナップ留め、又はマジックテ-プ(登録商標)やファスナ-(登録商標)で塞ぎ不規則な姿勢によるポケットからの収納物の飛び出しを防止する構造のものがある。
【0003】
【特許文献1】実開平01−002022
【特許文献2】実公昭36−021907
【特許文献3】特開平11−081017
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上に述べたポケット口が常時開放したポケットでは収納物が飛び出し易いと言う問題があり、また、ボタンやスナップ及びマジックテ-プ(登録商標)やファスナ-(登録商標)などでポケット口を塞ぐ方法では、塞ぎ部を出し入れのたびに開閉しなければならないという面倒しさを伴なうと共に、携帯電話機などの一定の重さを持つ収納物の姿勢が一定せず納置の安定を損ね、ポケットの型崩れなどによる見栄えを害するものになっていた。
【0005】
本発明は、このような従来の問題を解決しようとするものであり、従来の上方開口のポケットに二つの収納部を形成し、その両収納部からの収納物の飛び出しを防止するポケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、本発明は上記目的を達成するために図面に基づいて説明すると図1〜図3で示す実施例では、上着左胸部に設けられた従来の上方開放のポケットに、ポケットの横幅よりやや小さくポケット口上端から上方とポケット内下方にまたがる一定の縦長さからなる飛び出し防止壁で、その飛び出し防止壁の上端と下端を上着本体に固着して取り付け、同飛び出し防止壁の上端横形状を、上着中央側(以下右側と言い上着中央反対側を左側と言う)から左側に向って横辺と立下り傾斜辺からなる変形への字状の形状とし、底部となる下端形状を横水平形状としている。そして、その飛び出し防止壁を挟んで内側と外側に収納部を形成している。
【0007】
そして、図4〜図6で示す様に、飛び出し防止壁のポケット口上方の右側辺の開口部より、収納物(主に携帯端末)を横向きに近い状態で飛び出し防止壁内側に挿入納置し、外側の収納部は従来のポケットの機能を変えることなく上方の開口部から出し入れするものである。
【0008】
また、図7で示す飛び出し防止壁の変形の実施例では、飛び出し防止壁の底部となる下端を左側から右側に低くなる斜め傾斜形状とし、飛び出し防止壁のポケット口上方で、その上方の右側辺寄りの任意の高さ位置には、上着本体と飛び出し防止壁の一部をボタン又はスナップ等で開閉自在に接続する接続部が設けられ、その接続部を閉じると、ポケット口上端から接続部間に一定の高さの開口部が形成され、その右側辺開口部より横向きに近い状態で飛び出し防止壁内に出し入れする構成にしている。
【0009】
そして、図8で示す様に前記接続部を解除すると、側辺部の開口高さを大きく拡大調整できるものとなり、その開口部より大きな収納物を出し入れ可能とするものである。そして、挿入された収納物は、傾斜した底部で保持され常に出し入れ口側に傾いた傾斜姿勢となる。
【0010】
また、図9で示す使用例のごとく、ポケット口から上方の側辺開口部より挿入困難な大きな収納物を挿入する場合、ポケット口上端の一部と飛び出し防止壁の側辺の一部をポケット中央側(左側)の下方前方に向けて押し広げ、側辺部に収納物の横幅より大きな傾斜間口を形成し、出し入れすることも可能とする変形自在な縦長さを持つ飛び出し防止壁の構造である。
【0011】
そして、図10で示す使用例では、飛び出し防止壁内の収納物の姿勢は、前傾姿勢で飛び出そうとするとき図11で示す一定の角度に傾斜した場合においては、その傾きの角度が小さい程収納物の飛び出し方向の傾斜間口幅は、収納物の横幅より小さいものとなり一定の角度内では、収納物の上端角部と側辺の一部が飛び出し防止壁の上端とポケット口の側端に介接して飛び出しを防ぐものである。また、ポケット口側端点16aと飛び出し防止壁の右側辺15aの横間隔29を狭くする程、傾斜間口幅は小さなものとなり飛び出し防止効果を高める。
【0012】
また、図12で示す飛び出し防止壁の内側と外側の収納部内にそれぞれ収納した状態で前傾姿勢になると、飛び出し防止壁内の収納物の重みの圧力が外側の収納物にかかり、その収納物の滑り出しを抑制することができる。
【0013】
また、図13で示す飛び出し防止壁下端の底部を傾斜形状にすると、収納物を常に一定の方向の傾斜姿勢で納置することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように本発明のポケットは、従来の上方開放のポケットに飛び出し防止壁を設けることにより、飛び出し防止壁の内側と外側に重なる2つの収納部を形成することができ、飛び出しを抑制する内側の収納部に対し外側の収納部は従来の上方開放のポケットとしての機能を維持することが出来る。
【0015】
そして、飛び出し防止壁内への出入り口を、主な収納物となる携帯電話機の横幅よりやや大きい横向き開口高さにすると、主なポケットの傾き姿勢となる前傾姿勢時の飛び出し防止壁内の収納物は、防止壁の上方に向って滑り出そうとする力が働き横向きの口からは飛び出し難いものとなる。(図4、図11参照)
【0016】
そして、飛び出し防止壁下方部はポケット内に設けられている為、飛び出し防止壁内側の下方の収納部横幅空間は、飛び出し防止壁外側のポケット内横幅空間と共有(連通)する構成で、飛び出し防止壁の横幅より広い収納空間を得ることができ、一定の大きさの収納物の出し入れ及び納置が容易となる。(図4〜図6参照)
【0017】
また、収納物の出入り口となる側辺開口高さをボタン又はスナップで調整可能にすると、大きさの異なる収納物に効果的に対応できるものとなる。(図7、図8参照)
【0018】
また、飛び出し防止壁の底部を収納物が余り沈まない深さで斜め傾斜にすると、四角形状の収納物は常に出入り口に近い斜め傾斜に納置される為、収納の安定と操作が容易になるとともに、上端と下端を固着した飛び出し防止壁内の収納物は体に密着状態となり、更に収納の安定とポケットの型崩れを防ぐものとなる。(図13参照)
【0019】
また、飛び出し防止壁外側のポケット収納部は従来のポケット機能を果たすととに、その収納物の飛び出しを抑えるもので、たとえば、飛び出し防止壁内に一定の重さと大きさを持つ携帯電話機などの端末を納置し、外側の収納部に比較的軽い手帳や名刺及びか-ド入れ又はメガネやタバコなどを納置すると、ポケットが傾いた場合内側の端末の重みで外側の収納物が押し圧され、その押し圧力で収納物が飛び出しにくくなると言う大きな相乗効果を生むものとなる。(図12参照)
【0020】
以上の様に、従来の上方開口のポケット構造を変えることなくそのポケットに長四角形状の飛び出し防止壁を設けることにより、二重になった収納部のどちらの収納物の飛び出しも抑制することができる安価な構造体のポケットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図13に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図3で示される実施例の内図1は、上着本体30の左胸部に設けられるポケット31aの正面図を示し、図2は図1の平面図を示し、図3は図1の縦断面図を示している。ポケットに設ける飛び出し防止壁5aは、ポケットの間口幅20よりやや小さい横幅6とポケット口上端33から上方の上部縦長さ8aとポケット内下方のポケット底34近くまで伸延する下部縦長さ9aからなる縦長さ7aを持つ長四角形状で、その縦長さ7a間の内側横方向を貫通状態にし、上着中央側から反対側に向って横辺と斜め傾斜に立ち下がる辺を持つ上端形状部と下端の底部11aを形成する横辺部を上着本体30に固着して取り付け、飛び出し防止壁5aの内側と外側のポケット内にそれぞれ収納部28b,28aを具備している。
【0023】
そして、飛び出し防止壁5aの上着中央側となる右側辺15aの内、ポケット口上端33より上方の上部右側辺開口高さ13a部より、横向きに収納物35aを収納部28b内に出し入れする構成である。そして、もう一方の左側辺15b上部の上部左側辺開口高さ14aは、右側の開口高さより小さい形状にしている。
【0024】
図4〜図6で示す実施例の内図4は、前記図1〜図3で示すポケット31aの使用例の正面図を示し、図5は図4のX3-X3線の横断面図を示し、図6は図4のX4-X4線の縦断面図を示している。ポケット口側端点16aと右側辺開口上端点16bを結んだ結び線40方向は傾斜角23aの大きさで傾き、その結び線の長さ間隔で最も大きな傾斜間口幅21aが形成され、その間口幅を収納物35aの横幅36aよりやや大きくすると出し入れが容易となる。
【0025】
また、上部右側辺開口高さ13aの一定の高さ間では、ポケット口側端点16aと右側辺15aの横間隔29を小さくする程、前記2点16a,16bを結ぶ傾斜角23aは小さくなると共に傾斜間口幅21aも小さくなる構成である。
【0026】
そして、上部右側辺開口高さ13a部を押し広げ前記2点を結ぶ結び線40と直角24方向の最も大きな傾斜間口幅21aを利用した出し入れ方向25aに収納物35aを出し入れするのが最も良方向でとなる。そして、飛び出し防止壁5a内の収納部28bに挿入された収納物は任意の姿勢で底部11aで保持されている。
【0027】
図7、図8で示されるポケット31bの実施例では、ポケット口上端33より上方に上部縦長さ8bとポケット内下方に下部縦長さ9bを持つ縦長さ7bからなる飛び出し防止壁5cは、その下端部を横幅6間に渡って上着中央側が低い斜め傾斜の取付けで底部11bを形成し、上方の上部縦長さ間の中間高さよりやや上方で右側辺15a近くには、上着本体と飛び出し防止壁の一部を開閉自在にボタン又はスナップ等12で接続する接続部19を設けている。
【0028】
そして、図7で示す接続部19を閉じるとポケット口上端33から接続部19間に、収納物の出し入れ口となる上部右側辺開口高さ13cが形成され、その接続部19と下方のポケット口側端点16aを結んだ結び線40方向は傾斜角23b大きさで傾き、その結び線の長さ間隔で最も大きい傾斜間口幅21bを形成する。そして、傾斜間口幅21bを最も有効に生かす前記結び線40に対し直角24の出し入れ方向25bに収納物35aを出し入れするのが最も好まし方向となる。
【0029】
そして、図8で示す接続部19を開放すると大きな上部右側辺開口高さ13bとなり、上方の右側辺開口上端点16bと下方のポケット口側端点16aを結ぶ傾斜角23cの大きさで傾いた結び線40と直角24の出し入れ方向25cに最も大きな傾斜間口幅21cを形成し、その間口幅より小さい横幅36cの収納物35cを出し入れする。
【0030】
よって、図7、図8で示す実施例は、接続部19の開閉により収納物の大きさに対応するよう傾斜間口幅の大きさを調整可能とするものにしている。そして、収納物は飛び出し防止壁の底部11bの傾斜形状により、常にポケット上方の出し入れ口方向に向いた傾斜姿勢で納置されることとなる。
【0031】
図9は、図4で示す実施例のポケット31aに大きな収納物35bを出し入れする使用例を示し、飛び出し防止壁5aの右側辺15aの一端とポケット口上端33の一端を横方向の下方前方方向に押し広げ、任意の出し入れ方向25dに対し右側辺15aとポケット口上端33の変形後の交点となる変形下端点17と右側辺開口上端点16b間に、収納物の横幅36bより大きい傾斜間口幅21dを形成し、変形前の傾斜間口幅より大きい収納物を収納することができる。
【0032】
図10で示す実施例では、前傾姿勢時のポケット31aの収納物が飛び出し防止壁5aの上方で受け止められた状態の横からみたポケットの縦断面をを示している。
【0033】
図11で示される実施例では、図10の前傾姿勢時のポケット31aを正面から見てそれを起こした図を示し、飛び出し防止壁5a内の収納物35aは任意の角度の飛び出し方向27に飛び出そうとすると、その方向の傾斜間口幅22は収納物の横幅36aより小さく飛び出しを防止している。したがって、飛び出し方向が横向きに近い傾斜姿勢に成る程、その飛び出し方向の傾斜間口幅は大きくなり飛び出しの危険が増すものとなる。そこで、ポケット口側端点16aと飛び出し防止壁の右側辺15aの横間隔29を狭くすると傾斜間口幅は小さくなり飛び出しの危険を抑制することとなる。
【0034】
図12は、図10の変形の使用例の要部拡大図を示し、飛び出し防止壁5a内側の収納部28bと外側のポケット内収納部28aにそれぞれ収納物35a、35dが納置されると、飛び出し防止壁5aの上方で受け止められた収納物35aに対し、飛び出し防止壁外側の収納物35dには、内側の収納物35aの重みによる圧力がかかり、収納物35dの飛び出しを自動的に防ぐものとなっている。
【0035】
図13で示される実施例で、飛び出し防止壁5b下端の傾斜した底部11bに受け止められた収納物35aは、取り出し方向となる傾斜間口幅21a部方向に向いた操作が容易な傾斜姿勢となっている。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例を示す正面図である。
【図2】図1のX1−X1線による矢視図である。
【図3】図1のX2−X2線による矢視図である。
【図4】図1で示す実施例の使用例を示す正面図である。
【図5】図4のX3−X3線による矢視図である。
【図6】図4のX4−X4線による矢視図である。
【図7】本発明の実施例とその使用例を示す正面図である。
【図8】図7の変形の使用例を示す正面図である。
【図9】図4の変形の使用例を示す正面図である。
【図10】本発明の前傾姿勢での使用例を示す要部縦断面図である。
【図11】図10のX5−X5線による矢視図を起こした図である。
【図12】図10の変形の要部拡大図である。
【図13】本発明の実施例の使用例を示す正面図である。符号の説明
【0037】
5a、5b、5c、5d:飛び出し防止壁
6:横幅
7a、7b:縦長さ
8a、8b:上部縦長さ
9a,9b:下部縦長さ
11a、11b:底部
12:ボタン又はスナップ等
13a,13b,13c:上部右側辺開口高さ
14a、14b:上部左側辺開口高さ
15a:右側辺
15b:左側辺
16a:ポケット口側端点
16b:右側辺開口上端点
17:変形下端点
19:接続部
20:間口幅
21a,21b,21c、21d、22:傾斜間口幅
23a、23b:傾斜角
24:直角
25a,25b,25c,25d:出し入れ方向
27:飛び出し方向
28a,28b:収納部
29:横間隔
30:上着本体
31a、31b,31c:ポケット
32:ポケット本体
33:ポケット口上端
34:ポケット底
35a、35b、35c、35d:収納物
36a、36b、36c:横幅
40:結び線













































【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服の内、シャツ又は作業用上着又は運動用上着(以下上着本体と言う)の胸部外側に設けられる上方開口のポケットにおいて、該ポケットには同ポケット口から上方とポケット内下方に連設する一定の縦長さと横幅を持つ飛び出し防止壁を、その飛び出し防止壁の上端と下端を上着本体に固着して取り付け、同飛び出し防止壁の外側と内側に収納部を備え、前記飛び出し防止壁のポケット口から上方の左右の側辺の内少なくとも上着中央側の側辺部より、飛び出し防止壁内の収納部に収納物を出し入れ納置自在にするポケット構造としたことを特徴とするポケットの飛び出し防止構造。(図1〜図6参照)
【請求項2】
ポケット口から上方の飛び出し防止壁の横幅間の内、少なくとも上着中央側の側辺近くの任意の高さ位置には、該高さ位置の飛び出し防止壁の一部を上着本体に着脱自在にする接続部が設けられ、その接続部は上着本体にボタンを取り付け、飛び出し防止壁にボタン穴を設けた構成としたことを特徴とする請求項1記載のポケットの飛び出し防止構造。
(図7、図8参照)
【請求項3】
前記接続部はスナップ接続構成としたことを特徴とする請求項2記載のポケットの飛び出し防止構造。
【請求項4】
飛び出し防止壁下端の底部を形成する取り付け形状は、上着中央側に向って低くなる斜め傾斜取り付け形状としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポケットの飛び出し防止構造。(図7、図8、図13参照)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−133049(P2009−133049A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31493(P2008−31493)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【特許番号】特許第4162255号(P4162255)
【特許公報発行日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(599028423)有限会社朝日設計工業 (14)
【Fターム(参考)】