説明

ポジ型レジスト組成物

【課題】溶解または膨潤等の有機材料への影響が小さく有機ポリマー基板の湿式塗布によるレジスト膜の形成が可能であり、さらに、基板上に形成したレジスト膜、レジストパターンが耐溶剤性に優れるポジ型レジスト組成物の提供。
【解決手段】含フッ素脂肪族アルコールと、重合物、ビニル化合物、および光酸発生剤を含有するポジ型レジスト組成物であって、含フッ素脂肪族アルコールが一価のアルコールであり、含有する炭素数が2〜8であり、水素原子の個数がフッ素原子数の個数以下であるポジ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子等の製造におけるフォトリソグラフィーによるレジストパターン加工に使用するポジ型レジスト組成物に関する。特に、有機ポリマー基板または有機物薄膜を設けた基板上に、レジストパターン加工をする際に好適なポジ型レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の製造において、フォトリソグラフィー(以下、単にリソグラフィーと呼ぶ)を利用した微細加工が一般的に行われている。リソグラフィーとは、感光性の物質(フォトレジスト、以後、単にレジストと呼ぶ)を塗布しレジスト膜を形成した基板表面に、パターンを有するフォトマスクを介して高エネルギー光を照射し、レジスト膜を所望のパターンに露光して、このパターンの形状を基板表面へ転写することであり、リソグラフィーにおけるレジストの現像技術とは、レジストの露光された部分と露光されていない部分の現像液による溶解度の差異により、微細なレジストパターンを基板上に形成させる技術である。
【0003】
半導体素子製造のためのリソグラフィーにおいては、シリコン単結晶等の無機物からなる無機基板を使用することが多いが、有機ポリマーフィルム、有機ポリマー基板または基板上に設けた有機物薄膜等の有機材料上に、レジストパターンを形成する場合もある。尚、本発明において、有機ポリマー基板とは、有機化合物の分子が重合して生成する化合物(重合体)を材料とする基板を言い、代表的なものにポリエチレンテレフタレート(以下、PETと呼ぶことがある。)を材料とするPET基板が挙げられる。
【0004】
このような有機材料上にレジスト膜を形成する際のレジスト溶剤に、ガラス基板等の無機材料上にレジストを湿式塗布する際に一般的に使用される溶剤を用いると、その溶剤が有機材料を湿潤、即ち、溶解または膨潤し、基材表面の均一性が失われ、微細なレジストパターンが加工できないという問題があった。
【0005】
他に、基板上へのパターン形成法には、感光性レジストフィルムを用いる方法、またはインクジェット法が挙げられる。
【0006】
感光性レジストフィルムを用いる方法は、感光性レジストフィルム(以後、ドライフィルムレジストと呼ぶことがある。)を基板に貼り付けた後に紫外線で露光してレジストパターンを形成する方法である。尚、ドライフィルムレジストは、旭化成イーマテリアルズ株式会社製、商品名、サンフォート、またはニチゴー・モートン株式会社製、商品名、ALPHO等市販されている。感光性レジストフィルムを用いる方法では、ドライフィルムレジストを基板に貼り付ける前に、ドライフィルムレジストと基板との密着性向上のために、サンドブラスト等を用いた加工により、基板表面を粗くすることが推奨される。しかしながら、粗い面にすると、レジストを多層にして微細加工を繰り返す場合等には、パターン精度の低下の要因となる、また、ドライフィルムレジストを貼り付ける際には、通常、ドライフィルムレジストを加熱するが、ドライフィルムレジストと基板の熱膨張率の違いにより、特に有機ポリマー基板を使用する際は、基板との寸法変化の差が大きく、正確な位置合わせが難しいという問題があった。
【0007】
インクジェット法は、基板上にインク等の液滴を吐出して直接パターン形状を描く方法である。しかしながら、インクジェット法は、ディスプレイが小さい場合には有用であるが、大型のディスプレイの作製においては、リソグラフィーに比較して大面積に精度よくパターンを描くのが難しく時間がかかるという問題があった。
【0008】
リソグラフィーにおいて、湿式塗布でレジスト膜を形成する際に、耐溶剤性に劣る有機材料上に塗布するレジスト組成物が検討されている。
【0009】
例えば、特許文献1〜3には、レジストの溶剤として、耐溶剤性が劣る有機材料に対し膨潤または溶解を起こしにくい溶剤であるエーテル、長鎖アルコールまたはフッ素化アルコールを用いたレジスト組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1〜3においては、レジストパターンの耐溶剤性は検討されておらず、耐溶剤性が十分でないという問題があった。
【0010】
また、より微細なレジストパターンを得るためには、二重露光することがある。フォトリソグラフィーで基板上に一旦レジストパターンを加工した後、再度レジストパターン上にレジスト液を塗布しレジスト膜を形成した後でレジストパターンを加工する、二重露光においては、レジストパターンの耐溶剤性が特に重要である。
【0011】
レジスト膜およびレジストパターンの耐溶剤性においては、特許文献4に一旦、樹脂膜に架橋構造を形成させた上で、紫外光、電子線等の高エネルギー線の照射を行い、露光部の架橋構造を開裂させることで、露光部を現像液に溶解させ現像し、耐溶剤性に優れるパターンを得る方法が開示される。しかしながら、用いている溶剤は、無機基板に対して使用する一般的な溶剤であり、有機材料を湿潤しないものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−226432号公報
【特許文献2】特開2002−179733号公報
【特許文献3】特開2010−276969号公報
【特許文献4】国際公開WO 2009/105556のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
フォトリソグラフィーによりレジストパターン等を有機材料上に形成する場合、有機材料は有機溶剤に対する耐溶剤性に劣ることから、例えば、有機ポリマー基板の有機溶剤への膨潤または溶解により透明性が失われる、基板が収縮するまたは表面が侵される等、有機ポリマー基板の表面形状が変化する問題があった。
【0014】
このような状況の下、溶解または膨潤等の有機材料への影響が小さく、例えば、有機ポリマー基板への湿式塗布によるレジスト膜の形成が可能なレジスト組成物が求められている。また、基板上に形成したレジスト膜、レジストパターンが耐溶剤性に優れるレジスト組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶剤として、有機材料に対して、溶解または膨潤等の影響が極めて小さい含フッ素脂肪族アルコールを用い、当該含フッ素脂肪族アルコールに可溶な特定の重合物に対し、特定の組合せのビニル化合物および光酸発生剤を溶解させたポジ型レジスト組成物である。
【0016】
有機材料への影響が小さい溶剤は、一般に重合物およびビニル化合物等のレジスト材料の溶解力が小さく、レジスト組成物(レジスト液)として使用することが困難である。
【0017】
本発明者らは、特定の重合物が、有機材料への影響が小さい含フッ素脂肪族アルコールに可溶であることを見出して、特定のビニル化合物を組み合わせ、さらに光酸発生剤を添加してレジスト組成物とすることで、有機材料への影響が小さく有機ポリマー基板への湿式塗布によるレジスト膜の形成が可能であり、形成したレジスト膜やレジストパターンが優れた耐溶剤性を示すポジ型レジスト化合物を完成させた。
【0018】
本発明のポジ型レジスト組成物において、特定の重合物を特定のビニル化合物と結合させる熱硬化反応を進行させてレジスト膜とした後、高エネルギー線の照射により、照射部に光酸発生剤より酸を発生させて、照射部のレジスト膜のみにおいて発生した酸により、重合物とビニル化合物の熱硬化時で生じた架橋構造に含まれる結合を切断することで、照射部のレジスト膜のみを現像液に溶解させて、所謂ポジ型のレジストとし、有機ポリマー基板上へ微細なレジストパターンを形成する。
【0019】
本発明のポジ型レジスト組成物において、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールは、多くの有機材料に対して溶解力が低いことから、有機ポリマーフィルム、有機ポリマー基板、および有機薄膜が表面に形成された基板等の有機材料を侵さない。また、レジストとしての感光性に十分な量の光酸発生剤を溶解させることが可能である。
【0020】
即ち、本発明は、下記の発明1〜発明8からなる。
【0021】
[発明1]
水素原子の個数がフッ素原子の個数以下であり、炭素数が2〜8である1価の含フッ素脂肪族アルコールと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位Aと下記一般式(2)で表される繰り返し単位Bを含む重合物と、ビニル化合物と、光酸発生剤と、を含むポジ型レジスト組成物。
【化1】

【0022】
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜3までのアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、炭Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−である。)
【化2】

【0023】
(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Dは下記一般式(3)で表わされる基、または、下記一般式(4)で表わされる基である。)
【化3】

【0024】
(式(3)中、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、カルボキシル基は、保護基により保護されていてもよい。)
【化4】

【0025】
(式(4)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、アルキルスルホンアミド基は、保護基により保護されていてもよい。)
[発明2]
上記一般式(2)中、Dが、下記一般式(5)で表される基である、発明1のポジ型レジスト組成物。
【化5】

【0026】
(式(5)中、Rは炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは結合し環状構造を形成していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
[発明3]
上記一般式(2)中、Dが、下記一般式(6)で表される基である、発明1のポジ型レジスト組成物。
【化6】

【0027】
(式(6)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Rは、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは結合して環状構造を形成していてもよい。Lは、単結合、直鎖状の炭素数1〜15、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
で表される基である、発明1のポジ型レジスト組成物。
【0028】
[発明4]
前記ビニル化合物として、少なくとも2個のビニルエーテル基を含有しているビニル化合物を含むことを特徴とする、発明1〜3のいずれかのポジ型レジスト組成物。
【0029】
[発明5]
前記光酸発生剤が、一般式(7)で表される2価の基を含むN−スルホニルオキシイミド化合物またはオキシム−O−スルホネート化合物である、発明1〜4のいずれかのポジ型レジスト組成物。
【化7】

【0030】
(式(7)中、Rは、一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基で置換されていてもよく、窒素原子が有する2つの結合手は、別々の原子とそれぞれ単結合を形成しても、1つの原子と二重結合を形成していてもよい。)
[発明6]
光酸発生剤が、一般式(8)で表される化合物である、発明1〜5のいずれかのポジ型レジスト組成物。
【化8】

【0031】
(式(8)中、R10は、炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部または全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基またはチオフェニル基で置換されていてもよく、R11〜R13は、それぞれ独立にフェニル基、ナフチル基またはビフェニル基であり、これらの基の芳香環に結合する一部または全ての水素原子がメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、チオフェニル基、フッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
[発明7]
含フッ素脂肪族アルコールの質量を100とする質量比で表して、重合物が0.5以上、30以下、ビニル化合物が0.05以上、20以下であり、さらに重合物とビニル化合物を合計した質量を100とする質量比で表して、光酸発生剤が0.01以上、15以下含まれる、発明1〜6のいずれかのポジ型レジスト組成物。
【0032】
[発明8]
重合物を基準とするモル%で表して、重合物に繰り返し単位Aが25モル%以上、80モル%以下、繰り返し単位Bが20モル%以上、75モル%以下含まれる、発明1〜7のいずれかのポジ型レジスト組成物。
【発明の効果】
【0033】
本発明のポジ型レジスト組成物において、溶媒に有機材料を侵さない含フッ素脂肪族アルコールを用いたことで、リソグラフィーにおいて、有機ポリマー基板または有機薄膜付き基板等の有機材料上にレジスト膜を形成するためレジスト液(レジスト組成物)の湿式塗布を行っても、レジスト溶剤が有機材料に溶解または膨潤する等の悪影響を与えることがなく、レジストパターンの微細加工が容易となる。
【0034】
本発明のポジ型レジスト組成物を、有機ポリマー基板または有機薄膜等の有機材料の表面に湿式塗布しレジスト膜とした際に加熱硬化を行うと、レジスト膜中において重合物とビニル化合物の結合反応が起こり、レジスト膜またはレジストパターンに現像液に溶解および膨潤しない、且つ有機溶剤に溶解および膨潤しない耐久性が付与される。
【0035】
また、光酸発生剤を用いることにより、加熱硬化後のレジスト膜は感光性を有しており、フォトリソグラフィーにおいて光照射した露光部位においては、照射により発生した酸がレジスト膜中の重合物とビニル化合物の結合を切断し、現像液可溶となりレジストパターンを得ることが可能となり、レジストとして用いるに十分な現像液への溶解性が得られる。前述のように、未露光部は、加熱硬化により、現像液および有機溶剤に溶解および膨潤しなくなるので、現像液または有機溶剤を塗布または浸漬してもパターンは維持される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のポジ型レジスト組成物は、有機材料に、溶解、膨潤する等の影響を与えない特定の含フッ素脂肪族アルコールを用い、且つこれに溶解する重合物、ビニル化合物および光酸発生剤を含有させたことを特徴とする。
【0037】
以下、本発明のポジ型レジスト組成物について説明する。
【0038】
1.含フッ素脂肪族アルコール(レジスト溶剤)
本発明のポジ型レジスト組成物において、レジスト溶剤としては、炭素数が2〜8である1価の含フッ素脂肪族アルコールであって、水素原子の個数がフッ素原子数の個数以下であるものが使用される。
【0039】
2価以上の含フッ素脂肪族アルコールは沸点が高く、レジスト組成物を塗布した後のレジスト膜から、加熱により溶剤を蒸発除去することが難しく、均一な厚みのレジスト膜を得ることができない。また、炭素数が1のアルコールにおいては、沸点が低く塗布による均一なレジスト膜の形成が困難である。炭素数が9以上のアルコールにおいては、室温(20℃)での流動性が低く、あるいは固体状であるため、塗布による均一なレジスト膜の形成が困難である。さらに、水素原子数がフッ素原子数より多いアルコールにおいては、有機物を溶解する性質が強いために、レジスト膜の下層となる有機物膜や有機ポリマー基板へ湿潤しやすくなる。
【0040】
さらに、レジスト組成物の保存安定性から、上記含フッ素脂肪族アルコールにおいて水酸基に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合していないことが好ましい。
【0041】
また、用いられる含フッ素脂肪族アルコールは、沸点がレジスト組成物を塗布する際の基板温度よりも高いことが好ましく、より好ましくは塗布温度より20℃以上、さらに好ましくは50℃以上、高いことである。含フッ素脂肪族アルコールの沸点が、レジスト組成物を塗布する際の基板温度より低いと、塗布作業中に含フッ素脂肪族アルコールが急速に揮発し、レジスト膜に十分な平坦性が得られなく、リソグラフィーによる微細なレジストパターンを得がたい。また、用いられる含フッ素脂肪族アルコールは、沸点が200℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは、180℃以下であればさらに好ましい。含フッ素脂肪族アルコールの沸点が200℃より高いと、レジスト組成物を塗布した後のレジスト膜から、加熱により溶剤を蒸発除去することが難しく、均一な厚みのレジスト膜を得ることができない。
【0042】
本発明のポジ型レジスト組成物に含有させる含フッ素脂肪族アルコールとして好ましくは、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタノール、(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)メタノール、(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)エタノール、または2−(1,2,2,3,3,4,4,5−オクタフルオロシクロペンチル)プロパン−2−オールを挙げることができ、これらの溶剤を2種以上混合して使用してもよい。
【0043】
これらの溶剤の中でも入手が容易であり、有機材料を浸さず、本発明のポジ型レジスト組成物の他組成物である重合物、光酸発生剤等に対し十分な溶解性を有することから、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブタノールまたは2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンタノールが、本発明のポジ型レジスト組成物において特に好ましい含フッ素脂肪族アルコールである。
【0044】
2.重合物
2.1.繰り返し単位A
本発明のポジ型レジスト組成物が含む重合物は、上記一般式(1)で表される繰り返し単位Aを含有することにより、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに可溶となる。
【0045】
繰り返し単位Aの側鎖は極性が低くかつ柔軟であることから、該繰り返し単位を含有する重合物は、前記含フッ素脂肪族アルコールに対しても十分な溶解性を有する。一方で、例えば、環状のアルキル基を側鎖に有する繰り返し単位からなる重合物は含フッ素脂肪族アルコールに対して十分な溶解性を有さない。これは、環状のアルキル基に柔軟性が不足しているからと考えられる。また別の例として、トリアルキルアミノ基を側鎖に有する繰り返し単位からなる重合物も含フッ素脂肪族アルコールに対して十分な溶解性を有さない。これは、トリアルキルアミノ基の極性が高いためと考えられる。
【0046】
繰り返し単位Aにおいて、Rは、具体的には、単量体の入手が容易であることから、水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0047】
また、一般式(1)において、Rは、具体的には、以下に示す炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【化9】

【0048】
合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、本発明のポジ型レジスト組成物において、前記アルキル基の中でも、Rとして炭素数1〜6のアルキル基を含む重合物を用いることが特に好ましい。以下に、具体的にRとして好ましい炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【化10】

【0049】
また、Rは、以下に示す、炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基で、該アルキル基の一部の炭素原子が酸素原子により置換されたものであってもよい。
【化11】

【0050】
合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、本発明のポジ型レジスト組成物において、重合物が含むRには、具体的に以下のアルキル基を用いることが好ましい。
【化12】

【0051】
また、Rは、以下に示す、一部の水素原子がフッ素原子により置換された、炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基であってもよい。合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、以下に示すアルキル基が好ましい。
【化13】

【0052】
また、Rは、以下に示す一部の炭素原子が酸素原子により置換され、一部の水素原子がフッ素原子により置換された、炭素数1〜8の直鎖状または炭素数3〜8の分岐鎖状のアルキル基であってもよく、合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、以下に示すアルキル基が好ましい。
【化14】

【0053】
2.2.繰り返し単位B
本発明のポジ型レジスト組成物が含有する重合物は、レジスト膜を加熱硬化させるために、ビニル化合物と化学結合するための結合部位となる官能基を有する必要がある。具体的には、重合物は、側鎖にカルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を有することが好ましい。これらの酸性基は、加熱によりビニル化合物と反応し結合する。しかしながら、冷暗所保管、冷蔵室保管すればビニル化合物との結合が生じにくく、生じたとしても反応速度が遅く、十分な貯蔵安定性が得られる。
【0054】
そこで、本願発明の組成物に含まれる重合物は、前記一般式(2)により表される繰り返し単位Bを含有する。
【0055】
また、一般式(2)において、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0056】
繰り返し単位Bは、具体的には、以下のカルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を有する繰り返し単位B1、およびカルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基が保護基により保護された繰り返し単位B2が挙げられる。
【0057】
2.2.1.カルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を有する繰り返し単位B1
[カルボキシル基を有する繰り返し単位B1]
カルボキシル基を有する繰り返し単位B1は、下記一般式(9)で表わされる繰り返し単位である。
【化15】

【0058】
式(9)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1から3までのアルキル基であり、該アルキル基の一部あるいは全ての水素原子がフッ素原子あるいは塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、直鎖状の炭素数1〜15、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。
【0059】
尚、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、あるいはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0060】
カルボキシル基を有する繰り返し単位B1のうち、合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、特に以下に示す構造が好ましい。
【化16】

【0061】
[アルキルスルホンアミド基を有する繰り返し単位B1]
アルキルスルホンアミド基を有する繰り返し単位B1は、下記一般式(10)で表わされる繰り返し単位B1である。
【化17】

【0062】
式(10)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1から3までのアルキル基であり、該アルキル基の一部あるいは全ての水素原子がフッ素原子あるいは塩素原子で置換されていてもよく、Rは、アルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、直鎖状の炭素数1〜15、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。
【0063】
尚、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、あるいはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。また、ビニル化合物との反応性の高さから、Rはパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0064】
パーフルオロアルキルスルホンアミド基を有する繰り返し単位B1のうち、合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、特に以下に示すくり返し単位B1を挙げることができる。
【化18】

【0065】
2.2.2.カルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基が保護基により保護された繰り返し単位B2
本発明のポジ型レジスト組成物が含有する重合物において、ビニル化合物と結合するための結合部位となる官能基を有する繰り返し単位として、前記繰り返し単位B2を含有させることも可能である。繰り返し単位B2は、側鎖にカルボキシル基またはアルキルスルホン酸基が保護されたアセタール構造を有しており、加熱によってカルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を生じさせることができるので、前記繰り返し単位B1と同様に、加熱によりビニル化合物と反応し結合する。しかしながら、加熱を行う前にはビニル化合物と結合する基を有さないため、冷暗所保管、冷蔵室保管すれば結合反応をせず、十分な貯蔵安定性が得られる。
【0066】
本願発明の組成物に含まれる重合物は、繰り返し単位B1と繰り返し単位B2を同時に含有してもよく、また、繰り返し単位B1を含有する重合物と繰り返し単位B2を含有する重合物を混合して使用してもよい。
【0067】
繰り返し単位B2を含有する重合物を合成する方法には特に制限は無く、既知の方法をよく用いることができる。繰り返し単位B2を含有する重合物を合成する方法の例として、カルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を側鎖に有する単量体とビニルエーテルを反応させてアセタール構造を有する単量体を先に合成し、この単量体を用いて重合反応を行う方法(以下、単量体アセタール化法と呼ぶ)、または、繰り返し単位B1を含有する重合物を先に合成し、この重合物とビニルエーテルを反応させてアセタール構造を有する重合物を得る方法(以下、重合物アセタール化法と呼ぶ)が挙げられる。単量体アセタール化法と重合物アセタール化法の両者において、カルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基を有する単量体あるいは重合物とビニルエーテルの反応は、単量体あるいは重合物とビニルエーテルを混合することで進行するが、混合物を加熱するか、あるいは酸触媒を加えることで反応の進行を速め、また最終的な反応率を上昇させることが可能になる場合がある。酸触媒として具体的には、硫酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、パラトルエンスルホン酸、またはトリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。また、カルボキシル基またはアルキルスルホンアミド基とビニルエーテルの反応には、反応熱の除去や反応溶液の粘度を下げる目的で溶媒を使用してもよい。溶媒としてはカルボキシル基あるいはアルキルスルホンアミド基とビニルエーテルの反応を妨げないものが好ましく、具体的にはアセトン、2−ブタノンまたは4−メチル−2−ペンタノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル、トルエンまたはキシレン等の芳香族化合物、およびエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテルまたはエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテルを挙げられる。溶媒は一種のみでも、あるいは混合して用いてもよい。
【0068】
アセタール構造を形成するための反応に用いられるビニルエーテルとしては、公知のものをよく用いることができる。具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ターシャリーブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルビニルエーテル、2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、または2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルビニルエーテル、等を好ましい例として挙げることができる。
【0069】
前記一般式(2)において、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0070】
具体的には以下の、カルボキシル基が保護基により保護された、カルボキシル基を生じさせる繰り返し単位B2、およびアルキルスルホンアミド基が保護基により保護されたアルキルスルホンアミド基を生じさせる繰り返し単位B2が挙げられる。
【0071】
[カルボキシル基を生じさせる繰り返し単位B2]
カルボキシル基を生じさせる繰り返し単位B2は、下記一般式(11)で表わされる。
【化19】

【0072】
式(11)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1から3までのアルキル基であり、該アルキル基の一部あるいは全ての水素原子がフッ素原子あるいは塩素原子で置換されていてもよく、Rは、炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、またRとRは化学結合により環状構造を形成してもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、直鎖状の炭素数1〜15、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。
【0073】
即ち、カルボキシル基の保護基は具体的には、以下の基である。
【化20】

【0074】
は、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは結合し環状構造を形成していてもよい。
【0075】
尚、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、あるいはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0076】
カルボキシル基を生じさせる繰り返し単位B2のうち、合成が容易であり、重合物が前記含フッ素脂肪族アルコールに対し易溶となることから、繰り返し単位B2の好ましい具体例として、下記一般式で表わされる繰り返し単位を挙げることができる。
【化21】

【0077】
は、炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状、あるいは環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、またRとRは化学結合により環状構造を形成してもよい。
【0078】
単量体の合成の容易さおよび原料ビニルエーテルの入手性の面から、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル基が好ましく、Rは水素原子またはメチル基が好ましい。また、RとRは化学結合によって環状構造を形成してもよい。
【0079】
尚、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、あるいはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0080】
カルボキシル基を生じさせる繰り返し単位B2の好ましい具体例として、下図の繰り返し単位B2を挙げることができる。
【化22】

【0081】
[アルキルスルホンアミド基を生じさせる繰り返し単位B2]
アルキルスルホンアミド基を生じさせる繰り返し単位B2は、下記一般式(12)で表わされる。
【化23】

【0082】
式(12)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1から3までのアルキル基であり、該アルキル基の一部あるいは全ての水素原子がフッ素原子あるいは塩素原子で置換されていてもよく、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは化学結合により環状構造を形成していてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、直鎖状の炭素数1〜15、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。
【0083】
尚、単量体の合成が容易であることから、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基、あるいはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0084】
本発明において、アルキルスルホンアミド基の保護基は具体的には、以下の基である。
【化24】

【0085】
は、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは化学結合により環状構造を形成していてもよい。
【0086】
アルキルスルホンアミド基を生じさせる繰り返し単位B2の好ましい具体例として、下記一般式で表わされるくり返し単位B2を挙げることができる。
【化25】

【0087】
式(13)中、Rは、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、またRとRは化学結合により環状構造を形成してもよい。Lは、炭素数2〜4の2価の炭化水素基である。
【0088】
式(13)において、単量体の合成の容易さおよび原料ビニルエーテルの入手性の面から、Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基、4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル基が好ましく、Rは水素原子またはメチル基が好ましい。
【0089】
また、式(13)において、RとRは化学結合によって環状構造を形成してもよく、好ましい繰り返し単位B2の具体例として下記一般式(14):
【化26】

【0090】
(式(14)中、Rは、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。Lは、炭素数2〜4の2価の炭化水素基である。)
または下記一般式(15):
【化27】

【0091】
(式(15)中、Rは、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。Lは、炭素数2〜4の2価の炭化水素基である。)
が挙げられる。
【0092】
2.4.繰り返し単位A、繰り返し単位B1、および繰り返し単位B2の含有割合
本発明のポジ型レジスト組成物の重合物において、一般式(1)で表される繰り返し単位Aの、重合物全体に占める割合は、モル%で表して、25%以上、80%以下である。
【0093】
より好ましくは50%以上、75%以下である。含量が25%未満では、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールへ不溶となる、あるいはレジスト基板に塗布する際、均一な厚みに塗布できない虞がある。含量が80%より多いと、現像液への溶解性不足によりレジストパターンのコントラスト不足(解像性不良)をもたらす虞がある。
【0094】
本発明のポジ型レジスト組成物の重合物において、一般式(2)で表される繰り返し単位B1と一般式(5)で表される繰り返し単位B2の、重合物全体に占める割合は、モル%で表して、繰り返し単位B1と繰り返し単位B2の合計で20%以上、75%以下である。より好ましくは繰り返し単位B1と繰り返し単位B2の合計で25%以上、50%以下である。繰り返し単位B1と繰り返し単位B2の合計の含量が20%未満では、ビニル化合物との結合部位が少ないために、現像液への溶解性不足によるレジストパターンのコントラスト不足、また、レジストパターンの基板からの剥がれ等が起こる虞がある。繰り返し単位B1と繰り返し単位B2の合計の含量が75%より多いと、未反応の結合部位が存在し、現像液への溶解性過剰によるレジストパターンのコントラスト不足となる、あるいは溶剤である含フッ素脂肪族アルコールへ不溶となる、あるいはレジスト基板に塗布する際、均一な厚みに塗布できない虞がある。繰り返し単位B1と繰り返し単位B2の比率については特に制限は無いが、繰り返し単位B2の比率が高いほどポジ型レジスト組成物の保存安定性が向上する。保存安定性を向上させる目的で繰り返し単位B2を含有させる場合には、繰り返し単位B2は、重合物全体に占める割合をモル%で表して、繰り返し単位B1と同じかより多く含まれることが好ましい。繰り返し単位B2の割合が繰り返し単位B1の割合より低い場合には、繰り返し単位B2を用いることによる保存安定性を向上させる効果が十分に表れない虞がある。
【0095】
本発明のポジ型レジスト組成物に用いる重合物において、レジスト膜に他の機能を付与するために、繰り返し単位A、繰り返し単位B1および繰り返し単位B2以外に、残部として、他の繰り返し単位を含有させてもよい。
【0096】
2.5.重合物の分子量
本発明のポジ型レジスト組成物に用いる重合物の好ましい分子量は、粘度、および現像液への溶解性から、ポリスチレン換算による重量平均分子量Mwで表して、Mw=1,000〜500,000、好ましくは2,000〜200,000、より好ましくは3,000〜100,000である。
【0097】
本発明のポジ型レジスト組成物中における重合物の割合は、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールの質量を100質量部として、0.5質量部以上、30質量部以下、より好ましくは、1質量部以上、15質量部以下、さらに好ましくは3質量部以上、15質量部以下である。重合物の含有が0.5質量部より少ない場合、ポジ型レジスト組成物を基板に湿式塗布した際、レジスト膜として所望の厚みを得にくい。30質量部より多い場合には、ポジ型レジスト組成物の粘度が高くなり、均一な厚みのレジスト膜が得にくい。
【0098】
3.ビニル化合物
本発明におけるポジ型レジスト組成物は、多官能のビニル化合物、具体的には2基以上のビニルエーテル基を含有するビニル化合物を含有する。
【0099】
ビニルエーテル基と重合物中の結合部位の結合により、本発明におけるポジ型レジスト組成物によるレジスト膜には耐溶剤性が付与される。
【0100】
レジスト膜の現像液への耐性と耐溶剤性の面から、特にビニルエーテル基として3官能以上のビニル化合物が好ましい。これに加えて、結合部位の数の調整のために、単官能あるいは多官能の別のビニル化合物をさらに使用してもよい。
【0101】
ビニル化合物の沸点は、レジスト膜の加熱硬化温度と同じかそれ以上であれば好ましく、加熱硬化温度より30℃以上高いことがより好ましい。ビニル化合物の沸点が加熱硬化温度より低い場合には、硬化中にその一部あるいは全てがレジスト膜から揮発するため、硬化が不十分となる場合がある。
【0102】
好ましい多官能ビニル化合物の例として、一般式(16)で示される構造のものを挙げることができる。
【化28】

【0103】
(式(16)において、l、mおよびnは、それぞれ0以上、25以下の整数である。)
式(16)の具体的な例として、以下の化合物を挙げることができる。
【化29】

【化30】

【0104】
(l、mおよびnは、それぞれ0以上、18以下の整数である。)
尚、l+m+nの平均値が3以上、6以下であることが好ましい。
【0105】
これら化合物は、日本カーバイド工業株式会社より、商品名、TMPEOTVE、TM
PEOTVE−30、TMPEOTVE−60として市販される。
【0106】
本発明のポジ型レジスト組成物中におけるビニル化合物の含有割合は、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールの質量を100質量部として、好ましくは0.05質量部以上、20質量部以下である。より好ましくは、0.1質量部以上、10質量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上から10質量部以下に含有させるとする。ビニル化合物の含有割合が、0.05質量部より小さい場合には、結合による硬化が不足し、十分な耐溶剤性が付与できず、また現像時に溶解や剥がれが生じやすくなる。より好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。一方で、ビニル化合物の割合が20質量部より大きい場合には、未反応のビニル化合物が生じ、現像時に溶出してパターンの形成に悪影響をおよぼす懸念がある。より好ましくは10質量部以下である。
【0107】
4.光酸発生剤
本発明によるポジ型レジスト組成物は、現像後のレジストパターンを得るために、露光により酸を発生する化合物、すなわち光酸発生剤を含有する。光酸発生剤は、現像後に露光部の現像液に対する溶解性が顕著であり、現像後のレジストパターンに十分なコントラストを付与するものを選択することが好ましい。
【0108】
本発明のポジ型レジスト組成物が含有する光酸発生剤は、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールに対し、溶解することが好ましい。含有量は、ポジ型レジスト組成物における重合物とビニル化合物を合計した質量を100とした際に0.01質量部以上、15質量部以下である。より好ましくは、0.1質量部以上、10質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上、10質量部以下である。0.01質量部より、光酸発生剤の含有が少ないと、現像後のレジストパターンに十分なコントラストを付与することが困難である。好ましくは、0.1質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上である。15質量部よ
り光酸発生剤が多いと、レジストの感度が過大になり、微細加工が難しくなる。好ましくは、10質量部以下である。
【0109】
さらに、光酸発生剤は、その熱分解温度が加熱硬化温度よりも高いことが好ましい。具体的には、その分解開始温度が加熱硬化温度以上であること、より好ましくは加熱硬化温度より10℃以上高いこと、さらに好ましくは加熱硬化温度より20℃高いこと。分解開始温度が低い場合には、未露光部においても酸が発生し、溶解性コントラストの不足を招きうる。ただし、少量の酸の発生は、添加物等で調整が可能であるため、これは必須の条件とはならない。
【0110】
本発明のポジ型レジスト組成物が含む光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物で、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールに溶解するものであればよく、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミドまたはオキシム−O−スルホネートを挙げることができる。これらは単独でも2種以上混合しても用いることができ、好ましくは、N−スルホニルオキシイミドまたはオキシム−O−スルホネートである。
【0111】
本発明のポジ型レジスト組成物が含む光酸発生剤として、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールへの溶解性の面から、下記一般式(7)で表される構造を含むN−スルホニルオキシイミドまたはオキシム−O−スルホネートが特に好ましい。
【化31】

【0112】
式(7)中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキル基の一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基で置換されていてもよく、窒素原子が有する2つの結合手は、別々の原子とそれぞれ単結合を形成しても、1つの原子と二重結合を形成していてもよい。
【0113】
式(7)中の窒素原子が有する2つの結合手が別々の原子と単結合を形成する光酸発生剤として、例えば以下に示すN−スルホニルオキシイミド化合物を挙げることができる。
【化32】

【0114】
これら化合物は、みどり化学株式会社より、商品名、NAI−105、NAI−101、NAI−106として市販される。
【0115】
また、式(7)中の窒素原子が有する2つの結合手が1つの原子と二重結合を形成する光酸発生剤として、例えば以下に示すオキシム−O−スルホネート化合物を挙げることができる。
【化33】

【0116】
これら化合物は、みどり化学株式会社製より、商品名、PAI−101、PAI−106、PAI−1001として、BASFジャパン株式会社製より、商品名、IRGACURE PAG103、IRGACURE PAG108、IRGACURE PAG121、CGI1380、CGI725として市販される。
【0117】
当該光酸発生剤は、紫外光であるg線(波長、436nm)、h線(波長、405nm)、i線(波長、365nm)の波長に感度を有し、高圧水銀灯や半導体レーザー等による紫外光の照射により酸を発生し、照射部のレジスト膜を現像液に可溶とする。当該光酸発生剤を含むことにより、本発明のポジ型レジスト組成物を含むレジスト膜は、これら紫外光の照射により発生した酸を有する照射部が現像液に可溶となり、レジストパターンの形成が可能となる。
【0118】
さらに、本発明のポジ型レジスト組成物が含む、光酸発生剤には、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールへの溶解性に優れていることから、下記一般式(8)で表されるスルホニウム塩化合物を、好ましい例として挙げることができる。
【化34】

【0119】
式(8)中、R10は、炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部または全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基またはチオフェニル基で置換されていてもよく、R11〜R13は、フェニル基、ナフチル基またはビフェニル基であり、これらの基の芳香環に結合する一部または全ての水素原子がメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、チオフェニル基、フッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。
【0120】
当該光酸発生剤は、その分子構造によりg線、h線およびi線の紫外線波長や、KrFエキシマレーザー(波長、248nm)、あるいはArFエキシマレーザー(波長、193nm)による紫外光に感度を有し、これら紫外光の照射により酸を発生し、照射部のレジスト膜を現像液に可溶とする。当該光酸発生剤を含むことにより、本発明のポジ型レジスト組成物を含むレジスト膜は、前記紫外光の照射により発生した酸を有する照射部が現像液に可溶となり、レジストパターンの形成が可能となる。
【0121】
5.その他添加物
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記の重合物、ビニル化合物および光酸発生剤以外に、必要に応じてその他添加物を含有させることができ、例えば、界面活性剤または塩基が挙げられる。これらは、本発明のポジ型レジスト組成物の成膜性または保存安定性を向上させる目的で使用することができる。
【0122】
本発明のポジ型レジスト組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させる目的で市販の界面活性剤を配合することができる。
【0123】
具体的には、DIC株式会社製の商品名メガファック、品番F142D、F172、F173またはF183、住友スリーエム株式会社製の商品名フロラード、品番、FC−135、FC−170C、FC−430またはFC−431、旭硝子株式会社製の商品名サーフロン、品番S−112、S−113、S−131、S−141またはS−145、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製、商品名、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032またはSF−8428が挙げられる。これらの界面活性剤の配合量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して、通常、5質量部以下である。
【0124】
さらに、本発明のポジ型レジスト組成物には、塩基性化合物として含窒素有機化合物を配合することができる。
【0125】
含窒素有機化合物の配合により、レジスト膜とし露光した際の酸の拡散が抑制されて、解像度が向上し、露光余裕度やパターンプロファイルを向上することができ、また、ビニル化合物の安定性を向上させることができる。
【0126】
このような含窒素有機化合物には、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、水酸基を有する含窒素化合物、アミド類、イミド類またはカーバメート類が挙げられる。
【0127】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ターシャリーペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、メチレンジアミンまたはエチレンジアミンが上げられる。
【0128】
また、第二級の脂肪族アミン類には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジオクチルアミン、N,N’−ジメチルメチレンジアミンまたはN,N’−ジメチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0129】
また、第三級の脂肪族アミン類には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、ブチルジメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミンまたはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0130】
また、水酸基を有する含窒素化合物には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミドまたはN−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミドが挙げられる。
【0131】
また、アミド類には、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドまたはプロピオンアミドが挙げられる。
【0132】
また、イミド類には、フタルイミド、サクシンイミドが挙げられる。
【0133】
また、カーバメート類には、N−ターシャリーブトキシカルボニル−N,N−ジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0134】
6.ポジ型レジスト組成物の使用方法
本発明のポジ型レジスト組成物は、対象の基板上にレジスト液を塗布して加熱乾燥および加熱硬化してレジスト膜とし、その後に露光し、次いで現像液により現像処理することで、基板上にレジストパターンを形成できる。
【0135】
本発明のポジ型レジスト組成物の塗布は、湿式塗布法により、バーコーター、スピンコーターまたはロールコーターを使用して基板上に塗布することができる。塗布に引き続き、ポジ型レジスト組成物中の溶剤の除去と、重合物とビニル化合物の結合反応を促進させレジスト膜を十分に硬化させるために加熱を行う。加熱の方法としては、ホットプレートによる加熱等の公知の方法を用いることができる。加熱温度は、通常60℃以上、150℃以下で、好ましくは80℃以上、140℃以下である。加熱温度が60℃より低い場合、および150℃より高い場合には、レジスト膜の硬化が不十分となり、露光部と未露光部の現像液に対する溶解の有無の違いによる溶解コントラストが不足、あるいは現像後に得られるレジストパターンが有機溶剤に対し湿潤する等のことが起こりうる。また、加熱時間は、通常30秒以上で、好ましくは1分以上である。加熱時間が30秒より短い場合にはレジスト膜の硬化が不十分となり、露光部と未露光部の光部と未露光部の現像液に対する溶解の有無の違いによる溶解コントラストが不足、あるいは現像後に得られるレジストパターンが有機溶剤に対し湿潤、膨潤する等のことが起こりうる。
【0136】
本発明のポジ型レジスト組成物により得られるレジスト膜の露光には、公知の方法をよく用いることができる。すなわち、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、KrFエキシマレーザー(波長248nm)またはArFエキシマレーザー(波長193nm)等の光源を用いて、フォトマスクのパターンをレジスト膜へ露光する。露光における露光量は1〜10000mJ/cm程度、好ましくは10〜5000mJ/cm程度となるように露光することが好ましい。
【0137】
露光後のレジスト膜は、そのまま現像を行っても良いが、露光部で光酸発生剤より発生した酸による重合物の分解反応を促進させるために、現像前に加熱処理を行ってもよく、その際には、加熱の方法としては、ホットプレートによる加熱等公知の方法を用いることができる。加熱温度は、通常140℃以下で、好ましくは130℃以下とする。加熱温度が140℃より高い場合にはレジスト組成物を構成する重合物が熱により劣化し、現像液に対する溶解性の差異によるコントラストが不足、あるいは現像後に得られるレジストパターンが有機溶剤に対し湿潤、膨潤する等のことが起こりうる。
【0138】
露光を行ったレジスト膜の現像は、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用いて、浸漬法でパドル法、スプレー法等の公知の方法により、現像時間、0.1分間以上、3分間以下、好ましくは0.5分間以上、2分間以下で行うことが好ましく、基板上に目的のレジストパターンが形成される。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0140】
1.含フッ素脂肪族アルコールの有機ポリマー基板への影響
有機ポリマー基板としての各種溶剤に対する浸漬試験を行った。
【0141】
有機ポリマー基板にはPET基板を用いた。詳しくは、厚さ100μmのPET(東レ株式会社製、商品名、ルミラーT60)から、5cm×5cmの大きさにカッターナイフで切り出したものを用いた。
【0142】
溶剤には、炭素数が2〜8である1価のアルコールであり、水素原子の個数がフッ素原子の個数以下である含フッ素脂肪族アルコールとしての2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノールおよび2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールを用いた。
【0143】
比較として、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびシクロヘキサノンを各々用いた。
【0144】
浸漬試験は、上記PET基板を、各種溶剤を満たしたシャーレ中に120秒間完全に浸漬後、100℃に加熱したホットプレート上で乾燥させ、PET基板の溶剤の膨潤による反りの発生の有無と、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、機種名、NDH2000)でヘイズ値を測定し評価した。尚、ヘイズ値の測定は、JIS K 7136に準じて行った。試験前のPET基板に反りはなく、ヘイズ値は2.0%であった。
【0145】
表1に示すように、含フッ素脂肪族アルコールである2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、および2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールに浸漬後のPET基板には反りがなく、浸漬試験前のPET基板と比較してヘイズ値も殆ど変化しない。一方、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびシクロヘキサノンに浸漬した場合、溶剤の膨潤により基板に反りが生じた。シクロヘキサノンに浸漬した場合にはPET基板が白化しヘイズ値も3.8%に大きく上昇した。
【0146】
このように、含フッ素脂肪族アルコールである2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノールおよび2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールはPET基板に膨潤しなく、PET基板表面を侵さないことがわかった。
【表1】

【0147】
2.単量体アセタール化法による単量体の合成
合成例
[メタクリル酸1−(2−メチルプロポキシ)エチルの合成]
メタクリル酸8.61g(100mmol)とイソブチルビニルエーテル20.0g(200mmol)を50mLナスフラスコに測り取り、フッ素樹脂でコートされた攪拌子を投入した。これをマグネチックスターラーにて攪拌しながら、60℃に温度調整された油浴で6時間加熱した。加熱後に全量を炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度5重量%)20mLと混合し、静置して有機層を分取した。分取した有機層全量を飽和塩化ナトリウム水溶液20mLと混合し、静置して有機層を分取した。分取した有機層に含まれる水分を硫酸ナトリウムで除去した後に、ろ過により液体を得た。得られた液体をロータリーエバポレーターにて温度40℃、圧力30hPaで濃縮し、12.32gの淡黄色液体として以下に示す、重合物に繰り返し単位B2を与えるための、カルボキシル基が保護基により保護された単量体である、メタクリル酸1−(2−メチルプロポキシ)エチルを得た。
【化35】

【0148】
3.重合物の合成
続いて、本発明のポジ型レジスト組成物に使用する重合物を合成し、分子量を測定した。次いで、溶剤である含フッ素脂肪族アルコールへの溶解性の評価試験を実施した。
【0149】
重合物の合成に用いた原料単量体を、重合物に繰り返し単位Aを含有させる単量体を表2に、重合物に繰り返し単位B1を含有させる単量体を表3に、また、重合物に繰り返し単位B2を含有させる単量体を表4に、重合物に繰り返し単位A、B1およびB2に該当しない繰り返し単位を与える単量体を表5に、それぞれ示した。以後、原料単量体については、表2、表、表4および表5内の略号で示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0150】
また、重合開始剤には、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)の市販品(和光純薬工業株式会社製、品番、V−601)を使用し、(以後、V−601と略する。)反応溶剤には2−ブタノンを用いた。
【0151】
重合物の合成例を、本発明の重合物の範疇にあるものを実施例1〜14に、本発明の重合物の範疇にないものを比較例1〜4に示す。尚、重合物は、ポリマーの意味のPを冠し、カッコ内に原料単量体の略号を用い、P(原料単量体略号/原料単量体略号)で表した。例えば、P(MA−nBu/MAA)である。また、MAA由来の繰り返し単位と3,4−ジヒドロ−2H−ピランがアセタール結合を形成した繰り返し単位をMA−DHPと表す。
【0152】
実施例1
[P(MA−nBu/MAA) 80/20(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=80/20(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/MAA)=80/20(モル比)を合成した。
【0153】
MA−nBu、1.737g(12.2mmol)、MAA、0.263g(3.05mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.176g(0.763mmol)を、30mlセプタム栓つきバイアルに測り取り、フッ素樹脂でコートされた攪拌子を投入し、窒素を吹き込んだ後に密栓した。これをマグネチックスターラーにて攪拌しながら、80℃に温度調整された油浴で5時間加熱した。加熱後に全量をn‐ヘプタン40gと混合し、得られた沈殿を吸引ろ過により分取した。得られた固体を75℃の減圧乾燥機で8時間乾燥し、以下に示す目的物であるP(MA−nBu/MAA)が、MA−nBu/MAA=80/20(モル比)の白色固体として、収量1.66g、原料単量体に対して収率83%で得られた。
【化36】

【0154】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例2
[P(MA−nBu/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0155】
MA−nBu、1.588g(11.2mmol)、MAA、0.412g(4.79mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.184g(0.798mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的の重合物であるP(MA−nBu/MAA)を合成した。P(MA−nBu/MAA)は、MA−nBu/MAA=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.79g、原料単量体に対して収率90%で得られた。
【0156】
実施例3
[P(MA−iBu/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−iBu/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0157】
MA−iBu、1.588g(11.2mmol)、MAA、0.412g(4.79mmol)、2−ブタノン、4.00g、および上述のV−601、0.184g(0.798mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−iBu/MAA)を合成した。P(MA−iBu/MAA)は、MA−iBu/MAA=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.95g、原料単量体に対して収率98%で得られた。
【化37】

【0158】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例4
[P(MA−EOE/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−EOE/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0159】
MA−EOE、1.622g(10.3mmol)、MAA、0.378g(4.39mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.169g(0.732mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−EOE/MAA)を合成した。P(MA−EOE/MAA)は、MA−EOE/MAA=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.90g、原料単量体に対して収率95%で得られた。
【化38】

【0160】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例5
[P(MA−EOE/MAA) 50/50(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=50/50(モル比)となるように、重合物であるP(MA−EOE/MAA)=50/50(モル比)を合成した。
【0161】
MA−EOE、1.295g(8.19mmol)、MAA、0.705g(8.19mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.189g(0.819mmol)を用い、実施例1と同様の手順でP(MA−EOE/MAA)を合成した。P(MA−EOE/MAA)は、MA−EOE/MAA=50/50(モル比)の白色固体として、収量1.96g、原料単量体に対して収率98%で得られた。
【0162】
実施例6
[P(MA−Me/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−Me/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0163】
MAA、0.539g(6.26mmol)、MA−Me、1.461g(14.6mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.240g(1.04mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−Me/MAA)を合成した。P(MA−Me/MAA)は、MA−Me/MAA=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.96g、原料単量体に対して収率98%で得られた。
【化39】

【0164】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例7
[P(TFOL−M/MAA) モル比(70/30)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物である、P(TFOL−M/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0165】
TFOL−M、1.640g(9.76mmol)、MAA、0.360g(4.18mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.160g(0.697mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(TFOL−M/MAA)を合成した。P(TFOL−M/MAA)は、TFOL−M/MAA=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.96g、原料単量体に対して収率98%で得られた。
【化40】

【0166】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例8
[P(MA−nBu/MA−EATf) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/MA−EATf)=70/30(モル比)を合成した。
【0167】
MA−nBu、1.119g(7.87mmol)、MA−EATf、0.881g(3.37mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.129g(0.562mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−nBu/MA−EATf)を合成した。P(MA−nBu/MA−EATf)は、MA−nBu/MA−EATf=70/30(モル比)の白色固体として、収量1.50g、原料単量体に対して収率75%で得られた。
【化41】

【0168】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例9
[P(HFIP−M/MA−EATf) 60/40(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=60/40(モル比)となるように、重合物であるP(HFIP−M/MA−EATf)=60/40(モル比)を合成した。
【0169】
MA−EATf、0.849g(3.25mmol)、HFIP−M、1.151g(4.87mmol)、2−ブタノン4.00g、およびV−601、0.094g(0.41mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(HFIP−M/MA−EATf)を合成した。P(HFIP−M/MA−EATf)は、HFIP−M/MA−EATf=60/40(モル比)の白色固体として、収量1.64g(原料単量体に対する収率82%)で得られた。
【化42】

【0170】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例10
[P(MA−MIB−HFA/MA−EATf) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−MIB−HFA/MA−EATf)=70/30(モル比)を合成した。
【0171】
MA−EATf、0.500g(1.91mmol)、MA−MIB−HFA 1.500g(4.46mmol)、2−ブタノン4.00g、およびV−601、0.073g(0.32mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−MIB−HFA/MA−EATf)を合成した。P(MA−MIB−HFA/MA−EATf)は、MA−MIB−HFA/MA−EATf=70/30(モル比)の白色固体として収量0.90g、原料単量体に対して収率45%で得られた。
【化43】

【0172】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例11
[P(MA−MIB−HFA/MA−EATf) 60/40(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1=60/40(モル比)となるように、重合物であるP(MA−MIB−HFA/MA−EATf)=60/40(モル比)を合成した。
【0173】
MA−MIB−HFA、1.318g(3.92mmol)、MA−EATf、0.682g(2.61mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.075g(0.33mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物であるP(MA−MIB−HFA/MA−EATf)を合成した。P(MA−MIB−HFA/MA−EATf)は、MA−MIB−HFA/MA−EATf=60/40(モル比)の白色固体として収量1.64g(原料単量体に対して収率82%)で得られた。
【0174】
実施例12
[P(MA−nBu/MA−iBuVE) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B2=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/MA−iBuVE)=70/30(モル比)を合成した。
【0175】
MA−nBu、3.203 g(22.5mmol)、MA−iBuVE、1.797g(9.65mmol)、2−ブタノン、10.0g、およびV−601、0.370g(1.61mmol)を、50mlナスフラスコに量り取り、フッ素樹脂でコートされた攪拌子を投入し、窒素を吹き込んだ後に密栓した。これをマグネチックスターラーにて攪拌しながら、80℃に温度調整された油浴で5時間加熱した後に、全量をロータリーエバポレーターにて温度40℃、圧力30hPaで濃縮してから、メタノール200gと混合した。生じた沈殿物をデカンテーションにより分取した後に、40℃の減圧乾燥機で6時間乾燥して、以下に示す目的物である以下に示すP(MA−nBu/MA−iBuVE)を合成した。P(MA−nBu/MA−iBuVE)は、MA−nBu/MA−iBuVE=70/30(モル比)の白色固体として収量3.78g、原料単量体に対して収率76%で得られた。
【化44】

【0176】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例13
[重合物アセタール化法によるP(MA−nBu/MA−DHP) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B2=70/30(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/MA−DHP)=70/30(モル比)を合成した。
【0177】
実施例2と同様の手順で得たP(MA−nBu/MAA)=70/30(モル比)、1.00g、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、0.30g、および2−ブタノン5.00gを50mLナスフラスコに測り取り、フッ素樹脂でコートされた攪拌子を投入した。これをマグネチックスターラーにて攪拌しながら、氷水浴で溶液の温度が3℃以下になるまで冷却した。この溶液にメタンスルホン酸3mgを2−ブタノン0.50gへ溶解させた溶液を15分かけて滴下してから、氷水浴による冷却を続けたまま6時間攪拌した。その後、溶液にMEK10gを加えてから炭酸水素ナトリウム水溶液(濃度5質量%)10mLと混合し、静置して有機層を分取した。分取した有機層全量を塩化ナトリウム水溶液(濃度10質量%)10mLと混合し、静置して有機層を分取した。分取した有機層に含まれる水分を硫酸ナトリウムで除去した後に、ろ過により液体を得た。得られた液体を全量をn‐ヘプタン70gと混合し、得られた沈殿を吸引ろ過により分取した。得られた固体を40℃の減圧乾燥機で8時間乾燥し、目的物である以下に示す重合物であるP(MA−nBu/MA−DHP)を、MA−nBu/MA−DHP=70/30(モル比)の白色固体として収量0.64gで得た。
【化45】

【0178】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
実施例14
[P(MA−nBu/MAA/MA−iBuVE) 70/10/20(モル比)の合成]
繰り返し単位の存在比が繰り返し単位A/繰り返し単位B1/繰り返し単位B2=70/10/20(モル比)となるように、重合物であるP(MA−nBu/NAA/MA−iBuVE)=70/10/20(モル比)を合成した。
【0179】
MA−nBu、1.369g(9.63mmol)、MAA、0.118g(1.38mmol)、MA−iBuVE、0.512g(2.75mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.253g(0.357mmol)を用い、実施例1と同様の手順で以下に示す目的物であるP(MA−nBu/MAA/MA−iBuVE)を合成した。P(MA−nBu/MAA/MA−iBuVE)は、MA−nBu/MAA/MA−iBuVE=70/10/20(モル比)の白色固体として収量1.58g(原料単量体に対して収率76%)で得られた。
【化46】

【0180】
(n、mおよびlは、それぞれ正の整数を表す。)
比較例1
[P(MA−HE/MA−BTHB−OH) 30/70(モル比)の合成]
繰り返し単位Aのみからなる重合物である、P(MA−HE/MA−BTHB−OH)=30/70(モル比)を合成した。
【0181】
MA−HE、0.319g(2.45mmol)、MA−BTHB−OH、1.681g(5.71mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.094g(0.41mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−HE/MA−BTHB−OH)を合成した。P(MA−HE/MA−BTHB−OH)は、MA−HE/MA−BTHB−OH=30/70(モル比)の白色固体として収量1.76g、原料単量体に対して収率88%で得られた。
【化47】

【0182】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
比較例2
[P(MAA)の合成]
繰り返し単位B1のみからなる重合物である、P(MMA)を合成した。
【0183】
MAA 2.000g(23.2mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601 0.267g (1.16mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MAA)を合成した。P(MAA)が白色固体として収量1.95g、原料単量体に対して収率98%で得られた。
【化48】

【0184】
(nは、それぞれ正の整数を表す。)
比較例3
[P(MA−CH/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位Aを含有せず、かつ繰り返し単位B1を含有する重合物である、P(MA−CH/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0185】
MA−CH、1.640g(9.75mmol)、MAA、0.360g(4.18mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.160g(0.70mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−CH/MAA)を合成した。P(MA−CH/MAA)は、MA−CH/MAA=70/30(モル比)の白色固体として収量1.54g、原料単量体に対して収率77%で得られた。
【化49】

【0186】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
比較例4
[P(MA−DEAE/MAA) 70/30(モル比)の合成]
繰り返し単位Aを含有せず、かつ繰り返し単位B1を含有する重合物である、P(MA−DEAE/MAA)=70/30(モル比)を合成した。
【0187】
MA−DEAE、1.668g(9.00mmol)、MAA、0.332g(3.86mmol)、2−ブタノン、4.00g、およびV−601、0.148g(0.64mmol)を用い、実施例1と同様の手順で目的物である以下に示すP(MA−DEAE/MAA)を合成した。P(MA−DEAE/MAA)は、MA−DEAE/MAA=70/30(モル比)の白色固体として収量1.98g、原料単量体に対して収率99%で得られた。
【化50】

【0188】
(nおよびmは、それぞれ正の整数を表す。)
4.重量平均分子量Mwおよび分子量分散Mw/Mnの測定
次いで、以上の実施例1〜14、比較例1〜4で得られた各重合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、重量平均分子量Mwと分子量分散Mw/Mn(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで除算したもの)を算出した。GPCには、東ソー株式会社製、品名 HLC−8320を用い、同じく、東ソー株式会社製カラム(品名、ALPHA−MカラムおよびALPHA−2500)を各1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてジメチルホルムアミドに臭化リチウムを0.03モル/L、リン酸を0.01モル/Lの濃度で溶解させた溶液を用い、検出器に屈折率差検出器を用い測定した。結果を表6に示す。
【表6】

【0189】
5.含フッ素アルコール溶剤への重合物の溶解性評価
上記実施例1〜14、比較例1〜4より得られた重合物について、含フッ素脂肪族アルコール溶剤中に重合物の濃度が10質量%になるように浸漬し、80℃に加熱して、30分間保持した。これを5℃の冷蔵庫内で20時間保管した後に、析出物および不溶分の有無を目視で確認した。含フッ素脂肪族アルコール溶剤としては、(A):2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、(B):2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、(C):2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールの3種類を使用した。
【0190】
結果を表7に示した。前記繰り返し単位Aと、繰り返し単位B1または繰り返し単位B2を含む実施例1〜14および前記繰り返し単位Aのみを含む比較例1の重合物は、含フッ素脂肪族アルコールに可溶であるが、繰り返し単位B1のみからなる比較例2の重合物(P(MAA))および、繰り返し単位Aを含有せず繰り返し単位B1を含有する比較例3および4の重合物は、含フッ素脂肪族アルコールに不溶であった。
【表7】

【0191】
6.熱硬化、現像液耐性及び有機溶剤耐性試験
実施例1〜14および比較例1で得られた重合物に、表8に示すように、溶剤として含フッ素脂肪族アルコールである2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールを用い、全ての例においてさらに以下に示す構造の3官能ビニル化合物(日本カーバイド工業株式会社製、商品名、TMPEOTVE−30)を加え組成物とした。尚、重合物の濃度およびビニル化合物の濃度は、溶剤の質量を100質量部とする質量部で表した。
【化51】

【0192】
(n、mおよびlは、それぞれ正の整数を表す。)
前記組成物を、[001]結晶面が基板面となるようにカットされた、厚さ、0.1nmの自然酸化膜を表面に有するシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製、品番、1H−360S)を用い、組成物を膜厚さが400nmから800nmの範囲になるように回転速度を調整しつつ塗布した。塗布後の基板をホットプレートにより大気下で各々表8に記載の加熱処理条件で加熱し、塗布膜を熱硬化させた。熱硬化後の膜厚を、光干渉膜厚計(ドイツSentech社製、品名、FTP500)を用いて測定し、回転速度を調整した。
【0193】
これらの膜の現像液に対する耐性を評価するために、液温23℃に調整したテトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液、濃度2.38質量%に1分間浸漬し、イオン交換水で洗浄後に、再び膜厚を測定した。表7において、熱硬化後の膜厚に対して、80%以上の厚さで組成物膜が残っていれば○、60%以上、80%以下では△、60%以下は×とした。
【0194】
次いで、有機溶剤に対する耐性を評価するために、溶剤にプロピレングリコールモノメチルエーテル(表8中、(D))、またはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(表8中、(E))を用い、現像液に上記条件で浸漬させた後の膜組成物膜上に溶剤2mlを回転塗布し、続けて110℃にて1分間乾燥させた後の膜厚を測定した。スピンコーターによる塗布条件は、回転速度、1200rpm、回転保持時間、2分間とした。表8において、熱硬化後の膜厚に対して80%以上の厚さで膜が残っていれば○、60%以上80%以では△、60%以下は×とした。
【表8】

【0195】
表8に示すように、前記繰り返し単位Aおよび繰り返し単位Bを含む実施例1〜14の重合物は、現像液耐性および溶剤耐性に優れるが、繰り返し単位Aのみを含む比較例1の重合物(P(MA−HE/MA−BTHB−OH))は、現像液耐性および溶剤耐性に劣っていた。
【0196】
7.パターン形成試験
実施例1、2、4〜6および10〜14の重合物に、溶剤として含フッ素脂肪族アルコールである2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノールを使用し、ビニル化合物として前記TMPEOTVE−30を使用し、光酸発生剤として以下に示す構造の化合物(BASFジャパン株式会社製、商品名、IRGACURE PAG103(表9中、(G))、またはサンアプロ株式会社製、商品名、CP−100TF(表9中、(H))を使用し、表9に示す比で調合し、ポジ型レジスト組成物とした。表9において、調合比は溶剤の質量を100質量部とする質量部で表した。光酸発生剤は重合物とビニル化合物を合計した質量を100質量部として3質量部使用した。
【化52】

【化53】

【0197】
このポジ型レジスト組成物を、[001]結晶面が基板面となるようにカットされた、厚さ、0.1nmの自然酸化膜を表面に有するシリコン基板上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製、品番、1H−360S)を用い、組成物膜の厚さが400nmから800nmの範囲になるように回転速度を調整しつつ塗布した。塗布後の基板をホットプレートにより大気下で各々表9に記載の加熱処理条件で加熱し、組成物膜を熱硬化させた。熱硬化後の組成物膜付きシリコン基板の組成物膜の厚さを、光干渉膜厚計(ドイツSentech社製、品名、FTP500)を用いて測定した。
【0198】
このようにして、各ポジ型レジスト組成物膜付き基板を作製し、それぞれg/h/i線露光機(ドイツ ズースマイクロテック株式会社製)にて3秒、5秒、10秒、20秒、60秒露光した。紫外線の強度は70mWであった。露光時のマスクには大日本印刷株式会社製 FINELINE TESTPATTERN−Iを使用した。露光後のポジ型レジスト組成物膜付き基板は、90℃に温度調節したホットプレートで1分間加熱した後に、温度23℃に調整した現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、濃度2.38質量%)に1分間浸漬して現像した。これをイオン交換水により洗浄し、エアーガンによって乾燥させた後に、顕微鏡により形成されたパターンを確認した。いずれかの露光量において、ライン幅5μmのラインアンドスペースマスクによりパターンが解像できれば可とした。表9に示すように、全て解像度は良好であった。
【表9】

【0199】
8.ポジ型レジスト化合物の有機ポリマー基板への影響
表9に示した実施例1、2、4〜6、10〜14で得られた重合物を用いたポジ型レジスト組成物について、有機ポリマー基板への塗布試験を行った。シリコン基板の代わりに有機ポリマー基板としてのPET基板を使用し、上記パターン形成試験と同じ方法で、ポジ型レジスト組成物をPET基板へ塗布し加熱硬化を行った。加熱は表9に記載の各々の実施例における加熱処理条件と同様に行った。PET基板は、厚さ100μmの前記PET基板(東レ株式会社製、商品名ルミラーT60)を、カッターナイフにて、直径12cmの円形に切り出して用いた。
【0200】
このようにして、各ポジ型レジスト組成物を膜付けしたPET基板を作製し、塗布面全面に、g/h/i線露光機にて10秒間露光した。紫外線の強度は70mWであった。露光後の各ポジ型レジスト組成物の膜付きPET基板を、90℃に加熱したホットプレート状で1分間加熱した後、温度23℃に調整した現像液(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、濃度2.38質量%)に1分間浸漬して、塗布膜を溶解させた。次いで、イオン交換水により洗浄し、エアーガンによって乾燥させた後に、目視による基板に溶剤の膨潤による反りが生じたかどうかの判定と、ヘイズメーターによるヘイズ値の測定を行い評価した。
【0201】
表10に示すように、実施例1〜14で得た重合物を用いたポジ型レジスト組成物、全てにおいて基板には反りが発生せず、また塗布試験前の有機ポリマー基板と比較してヘイズ値は殆ど変化しなかった。このようにして、本発明のポジ型レジスト組成物をPET基板へ塗布しても、溶剤によるPET基板の膨潤または溶解により透明性が失われる、基板が収縮するまたは表面が侵される等の不具合は起こらないことがわかった。
【表10】

【0202】
上述の通り、本発明のポジ型レジスト組成物は、溶解または膨潤等の有機材料への影響が小さく有機ポリマー基板の湿式塗布によるレジスト膜の形成が可能であり、形成したレジスト膜やレジストパターンが優れた耐溶剤性を示す。
【0203】
本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形・変更を含むものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素原子の個数がフッ素原子の個数以下であり、炭素数が2〜8である1価の含フッ素脂肪族アルコールと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位Aと下記一般式(2)で表される繰り返し単位Bを含む重合物と、ビニル化合物と、光酸発生剤と、を含むポジ型レジスト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−である。)
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Dは下記一般式(3)で表わされる基、または、下記一般式(4)で表わされる基である。)
【化3】

(式(3)中、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、カルボキシル基は、保護基により保護されていてもよい。)
【化4】

(式(4)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、アルキルスルホンアミド基は、保護基により保護されていてもよい。)
【請求項2】
一般式(2)中、Dが、下記一般式(5)で表される基である、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化5】

(式(5)中、Rは、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは結合し環状構造を形成していてもよい。Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−または−O−C(=O)−であり、Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
【請求項3】
上記一般式(2)中、Dが、下記一般式(6)で表される基である、請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。
【化6】

(式(6)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Lは、単結合、酸素原子、−CH−O−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、または−O−C(=O)−であり、Rは、炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、Rは、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、炭素数3〜15の分岐鎖状、または炭素数6〜15の環状の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよく、RとRは化学結合により環状構造を形成していてもよい。Lは、単結合、炭素数1〜15の直鎖状、または炭素数3〜15の分岐鎖状の2価の炭化水素基であり、該炭化水素基の一部の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよく、該炭化水素基の一部または全ての水素原子がフッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
【請求項4】
前記ビニル化合物として、少なくとも2個のビニルエーテル基を含有しているビニル化合物を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項5】
光酸発生剤が、一般式(7)で表される2価の基を含むN−スルホニルオキシイミド化合物またはオキシム−O−スルホネート化合物である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化7】

(式(7)中、Rは、一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基、またはフェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部もしくは全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基で置換されていてもよく、窒素原子が有する2つの結合手は、別々の原子とそれぞれ単結合を形成しても、1つの原子と二重結合を形成していてもよい。)
【請求項6】
光酸発生剤が、一般式(8)で表される化合物である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【化8】

(式(8)中、R10は、炭素数1〜12のアルキル基であり、該アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、フェニル基、ナフチル基もしくはビフェニル基であり、これらの基の芳香環が有する一部または全ての水素原子がフッ素原子、塩素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基またはチオフェニル基で置換されていてもよく、R11〜R13は、フェニル基、ナフチル基またはビフェニル基であり、これらの基の芳香環に結合する一部または全ての水素原子がメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、フェノキシ基、チオフェニル基、フッ素原子または塩素原子で置換されていてもよい。)
【請求項7】
含フッ素脂肪族アルコールの質量を100とする質量比で表して、重合物が0.5以上、30以下、ビニル化合物が0.05以上、20以下であり、さらに重合物とビニル化合物を合計した質量を100とする質量比で表して、光酸発生剤が0.01以上、15以下含まれる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。
【請求項8】
重合物を基準とするモル%で表して、重合物に繰り返し単位Aが25モル%以上、80モル%以下、繰り返し単位Bが20モル%以上、75モル%以下含まれる、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のポジ型レジスト組成物。

【公開番号】特開2013−29822(P2013−29822A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133697(P2012−133697)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】