説明

ポリアクリレートを含む埋め込み型医療器具のための薬剤含有コーティング

医療器具のための、特に薬剤溶出ステントのためのポリマーについて記載する。該ポリマーはn−ブチルメタクリレートに由来してよく、そして約20%〜約500%の破断時伸び率を有していてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤溶出性血管ステントなどの埋め込み型医療器具のためのコーティングを対象としている。
【背景技術】
【0002】
経皮的冠動脈形成術(PTCA)は、心疾患を治療するための手技である。バルーン部分を有するカテーテル組立体は、上腕もしくは大腿動脈を経由して患者の心血管系内へ経皮的に導入される。カテーテル組立体は、バルーン部分が閉塞性病変を横断して配置されるまで冠動脈血管構造に通して前進させられる。病変を横断して配置されると、バルーンは、内腔壁をリモデリングする目的で病変のアテローム硬化性プラークを半径方向に圧縮するために規定サイズへ拡張させられる。その後、バルーンは、カテーテルを患者の血管構造から抜去できるように小さなプロファイルへ収縮させられる。
【0003】
上記の手技に結び付いた問題には、バルーンを収縮させた後に虚脱して導管を閉塞させる可能性がある、剥離内膜の形成または動脈内面の損傷が含まれる。さらに、動脈の血栓および再狭窄が手技後数カ月間にわたって発生することがあり、これらはまた別の血管形成術手技もしくは外科的バイパス手術を必要とすることがある。ステントは、動脈内面の虚脱による動脈の部分もしくは完全閉塞を減少させるため、そして血栓および再狭窄が発生する機会を減少させる目的で、血管開存性を維持するために内腔内に植え込まれる。
【0004】
ステントは、機械的インターベンションとしてだけではなく、生物学的療法を提供するためのビヒクルとしても使用される。機械的インターベンションとして、ステントは、通路を物理的に開存性で維持するため、そして所望であれば拡張するために機能する足場(スカフォールディング)としても作用する。典型的には、ステントは圧縮できるので、カテーテルを用いてそれらを小血管に通して挿入し、次にそれらが所望の場所に配置されると大きな径に拡張させることができる。PTCA手技に適用されてきたステントを開示している特許文献の例には、Palmazに発行された米国特許第4,733,665号、Gianturcoに発行された米国特許第4,800,882号、およびWiktorに発行された米国特許第4,886,062号が含まれる。
【0005】
薬理学的療法は、ステントに薬剤を添加することによって達成できる。薬剤含有ステントは、罹患部位での治療用物質の局所的投与を提供する。治療部位で有効濃度を提供する目的では、そのような薬剤の全身性投与は患者にとって有害もしくは毒性の副作用を生成することが多い。局所送達は、全身性用量に比して少ない総薬剤レベルが投与されるが、特定部位に集中するので好ましい治療方法である。そこで局所送達は、発生させる副作用が少なくなり、より優れた結果を達成する。薬剤含有ステントのために提案された1つの方法は、ステントの表面にコーティングされるポリマー担体を使用する工程を含んでいる。溶媒、溶媒中に溶解させたポリマー、および混合液中に分散させた治療用物質を含む溶液がステントに塗布される。溶媒を蒸発させると、ポリマーのコーティングおよびポリマー内に含浸された治療用物質がステント表面上に残留する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ステントコーティングを作製するために使用できる1つのポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)である。このポリマーは耐久性であり、生物学的に適合性であり、そして薬剤を運ぶポリマーマトリックスとして、または薬剤の放出速度を調節するトップコート膜としてのいずれかで使用できる。しかし、PBMAの特性には改良できる余地がある。詳細には、PBMAをベースとするステントコーティングからのエベロリムスなどの一部の疎水性の中分子量薬剤の放出速度は低すぎる可能性がある。結果として、より高い薬剤対ポリマー比が必要になることがあるが、これは望ましくない。高い薬剤対ポリマー比では、PBMAをベースとする薬剤およびポリマー組成物の一部は、ステントの拡張によりコーティング内で作り出される高度の歪みに対して、その伸長が不十分になる可能性がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上述した欠陥を有しておらず、他の有益な特性を有しているステントコーティングを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
様々な実施形態は、ベースモノマー(重合するとベースポリマーが生成する)の残基を含むベースポリマーに由来するポリマーを含む医療製品を含み、ベースポリマーは20〜500%の破断時伸び率を有する。これらの実施形態の一部では、ポリマーは、約200〜1,000キロダルトンの重量平均分子量を備えるベースポリマーを含んでいる。これらやその他の実施形態では、ベースポリマーは、約3〜約6の多分散性指数を有する。これらやその他の実施形態では、ポリマーは、約20℃未満、または−30〜20℃のガラス転移温度を有する。
【0009】
これらやその他の実施形態では、ポリマーは少なくとも第1のアクリル系モノマーを含んでいる。一部の実施形態では、少なくとも第1のアクリル系モノマーおよびベースポリマーの混合物であるポリマーが選択される。一部の実施形態では、ベースモノマーと第1のアクリル系モノマーのコポリマーであるポリマーが選択される。
【0010】
これらやその他の実施形態では、第1のアクリル系モノマーは、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(ドデシルメタクリレート)、n−オクチルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、イソ−デシルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート)、1−ヘキサデシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、またはこれらのモノマーの組み合わせのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態では、第1のアクリル系モノマーは、詳細にはこれらのモノマーのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを除外した群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、ポリマーは以下の式の1つを有する。
【化1】

【0012】
(式中、XおよびXは各々、独立して、水素原子もしくはアルキル基であり、RおよびRは各々、独立して、C−C12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ラジカルであり、およびm、n、およびpは各々整数であり、m>0、n>0、およびp≧0である)
【0013】
これらやその他の実施形態では、ベースポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つもしくは任意の組み合わせを含んでいる。一部の実施形態では、ベースポリマーは、詳細にはこれらのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを除外した群から選択される。
【0014】
これらやその他の実施形態では、ポリマーは、ポリ(n−ブチルメタクリレート)および第2ポリマー材料を含み、ポリマーは実質的に単一のガラス転移温度を有する。これらの実施形態の一部では、実質的に単一のガラス転移温度は、約20℃未満、または−30℃〜20℃のガラス転移温度を有する。
【0015】
これらやその他の実施形態では、第2ポリマー材料は、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘプチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−オクチルメタクリレート)、ポリ(n−ノニルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(n−デシルメタクリレート)、ポリ(1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態では、第2アクリル系モノマーは、詳細にはこれらのモノマーのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを除外した群から選択される。
【0016】
これらやその他の実施形態では、第2ポリマー材料は、ベースポリマーのTより低いTを備える非アクリル系ポリマーを含んでいる。
【0017】
これらやその他の実施形態では、本医療器具は、追加的に以下の物質:血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含んでいる。一部の実施形態では、本物質は、詳細にはこれらのカテゴリーのいずれか1つまたはいずれかの組み合わせを除外した群から選択される。
【0018】
上記で考察した実施形態を作製する方法もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0019】
一部の実施形態では、本埋め込み型医療器具はステントである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
用語および定義
以下の術語および定義が適用される。
【0021】
用語「ポリマー」は、ホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーを含むと規定されている。用語「ポリマー」は、用語「ポリマー化合物」の同義語であるとさらに規定されている。用語「コポリマー」は、2つのモノマー種の共重合によって入手されるコポリマーおよび3種のモノマー種から入手されるもの(「ターポリマー」)を含む、2種以上のモノマーに由来するポリマーであると規定されている。用語「ランダムコポリマー」は、鎖内の任意の所与位置で所与のモノマー単位を見いだす確率が隣接単位の性質に依存しない高分子からなるコポリマーであると規定されている。用語「交互コポリマー」は、交互配列内に2種のモノマー単位を含む高分子からなるコポリマーであると規定されている。
【0022】
多分散性指数(PI)として表示される用語「多分散性」は、各ポリマーが様々な鎖長を有し、したがって様々な分子量を有する分子を含むので、ポリマーの分子量分布に関連している。用語「多分散性指数」は、ポリマーの重量平均分子量(M)の同一ポリマーの数平均分子量(M)に対する比率M/Mであると規定されている。
【0023】
用語「重量平均分子量」(M)は、式:
=Σ(M)/Σ(M
(式中、Mはフラクション「i」の高分子の分子量であり、そしてNは「i」フラクション内の高分子の数である)として計算されるより大きな分子へより高い統計的重量を与えるために平均化された、多分散性ポリマーサンプルの分子量であると規定されている。
【0024】
用語「数平均分子量」(M)は、式:
=Σ(M)/Σ(N
(式中、MおよびNは上記に規定したとおりである)として計算されるより各分子へ等統計的重量を与えるために平均化された、多分散性ポリマーサンプルの分子量であると規定されている。
【0025】
大多数のポリマーについては、これはM>Mであり、結果としてPI>1.0である頻回に発生する現象である。ポリマーの分子量分布が狭くなるにつれて、PI値は1.0に近づき、その逆も同様のことが言える。理論的単分散性ポリマーについては、M=Mであり;そしてそのようなポリマーについてはPI=1.0である。
【0026】
用語「ガラス転移温度」もしくはTは、非晶質もしくは半結晶質ポリマーを曝露させる温度を上昇させた結果として、ポリマーの鎖内での分節的分子運動の発生が起こり、大気圧でガラス状固体から非晶質固体へのポリマーの最終的転移を導く温度領域のほぼ中央にある温度であると規定されている。言い換えると、Tは、非晶質ポリマー(または部分結晶質ポリマー内の非晶質領域)が硬質で相当に脆弱な性質から粘弾性(ゴム状)の性質へ変化する温度範囲内の平均温度であると規定されている。本発明のためには、以下で考察する全ポリマーのためのTは、ポリマーが乾燥状態にある場合に示差走査熱量測定法(DSC)を用いて決定されている。DSCは、温度の関数としてのポリマーの熱容量における変化を測定する。「乾燥状態」は、ポリマーが約1%(ポリマー重量の百分率として)未満の水を含有することを意味する。
【0027】
用語「アクリル系ポリマー」もしくは「アクリレート」は、アクリル基(I)もしくはメタクリル基(II)を有するモノマー由来のポリマー(ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー、およびプレポリマーを含む)を意味する。
【化2】

【0028】
用語「最大伸び」もしくは「破断時伸び」は、サンプルを一方向の線形方法で定速で伸長させたときに、フィルム破裂点でのポリマーのフリーフィルムの長さにおける部分的増加であると規定されている。
【0029】
実施の形態
ステントコーティングは、以下の層:
(a)プライマー層と;
(b)薬剤−ポリマー層(「リザーバー」もしくは「リザーバー層」とも呼ぶ)もしくはポリマー無含有薬剤層と;
(c)トップコート層と;または
(d)仕上げトップコートとのうちの任意の1つもしくは任意の組み合わせを含むことができる多層構造であってよい。
一部の実施形態では、多層構造は、詳細には上記に列挙した層のうちの任意の1つもしくは任意の組み合わせを除外できる。
【0030】
ステントコーティングの各層は、ポリマーもしくはポリマーの混合物を溶媒もしくは溶媒混合液中に溶解させる工程と、結果として生じる溶液をステントにスプレーする、もしくはステントをその溶液中に含浸させることによって塗布する工程とによってステント上に形成できる。塗布後、溶媒を蒸発させると、乾燥コーティングが残留する。乾燥は、それを高温で実施することにより加速できる。
【0031】
薬剤をリザーバー層に組み込むためには、薬剤を上述したポリマー液と結合できる。または、ポリマー無含有リザーバーを作製することもできる。ポリマー無含有リザーバーを作製するためには、薬剤を適切な溶媒もしくは溶媒混合液中に溶解させ、その後で薬剤溶液をスプレーする、もしくは薬剤溶液中にステントを含浸させることによって溶液を塗布できる。
【0032】
薬剤を溶液として導入する代わりに、適切な溶媒中の懸濁液などのコロイド系として導入することもできる。懸濁液を作製するためには、薬剤は、従来型のコロイド化学技術を使用して溶媒中に分散させることができる。例えば薬剤の性質のような多様な因子に依存して、当業者は、懸濁液のための溶媒、ならびに溶媒中に分散させる薬剤の量を選択できる。懸濁液は、ポリマー液と混合することができ、この混合液は上述したようにステントに塗布できる。または、薬剤懸濁液は、ポリマー液と混合せずにステントに塗布することもできる。
【0033】
薬剤−ポリマー層は、リザーバー層へ組み込まれている少なくとも1つの活性物質もしくは薬剤のためのリザーバーとして機能するためにステント表面の少なくとも一部へ直接的に塗布できる。ステントとリザーバーとの間には、薬剤−ポリマーのステントへの接着を改善するために任意のプライマー層を塗布できる。トップコート層は、使用する場合には、リザーバーの少なくとも一部分の上方に塗布することができ、これは薬剤放出速度を制御するために役立つ速度限定膜として機能できる。一部の実施形態では、トップコート層は本質的に活性物質もしくは薬剤を全く含有していなくてよい;それでも、トップコート層の形成中には、少量ではあるが薬剤が薬剤−ポリマー層からトップコート層へ移動することがある。ステントの生体適合性を強化するためには、ステント表面の全部もしくは一部へ任意の仕上げ層を塗布できる。
【0034】
本発明の1つの実施形態によると、ステントコーティングの任意もしくは全部の層は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)、ポリ(エチルメタクリレート)(PEMA)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)(PIPMA)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)(PPMA)に由来するポリマーまたは例えば約20%から約500%、より狭い範囲では、約30%〜約300%、例えば、約40%〜約200%の高度の破断時伸び率を有するPBMA、PEMA、PIPMA、もしくはPPMAに由来する単位を含むコポリマーであってよい。本開示のためには、これらのポリマー全部を集合的にベースポリマーと呼ぶ。さらに、ベースポリマー単位とは、それらにベースポリマーが由来しうる任意のモノマー単位を意味する。本発明の一部の実施形態は、詳細には上記に列挙したポリマーもしくはベースポリマー単位のうちの任意の1つもしくは任意の組み合わせをベースポリマーもしくはベースポリマー単位として含むことから除外している。
【0035】
本発明の実施形態によると、ベースポリマーもしくは高度の破断時伸び率を備えるベースポリマー単位に由来するポリマーを含むステントコーティングを作製するために様々な方法を使用できる。以下の考察では、
高重量平均分子量(M)を有するベースポリマーを使用すること;
広多分散性指数(PI)を有するベースポリマーを使用すること;および
ベースポリマーのTより低いTを有するベースポリマー単位に由来するポリマー組成物を使用することを含むこれらの方法について記載する。
【0036】
高Mベースポリマーを使用すること
本発明の1つの実施形態によると、高Mを有するベースポリマーを使用できる。例えば、有用なベースポリマーのMは、約100,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンであってよい。1,000,000のMWでは粘度が問題になることがあるが、粘性液の塗布を調整する、または溶液の粘度を調整することは、当業者の技術レベルの範囲内に含まれる。
【0037】
一部の実施形態では、ベースポリマーは、約200,000ダルトン〜約600,000ダルトン、例えば、約250,000ダルトン〜約500,000ダルトンのMを有していてよい。
【0038】
ステントコーティングを作製するために高分子量ベースポリマーを使用すると、高度の破断時伸び率が達成されることの他に、コーティングの多数の物理的および機械的特性が向上すると予測される。例えば、引張り強さ、降伏強さ、耐亀裂性および耐摩耗性の全部が向上すると予測される。
【0039】
広PIベースポリマーを使用すること
一部の実施形態では、高度の破断時伸び率を備えるベースポリマーを入手するために、広い分子量分布を備えるベースポリマーが使用される。例えば、約3〜約6のPIを有するベースポリマーを使用できる。他の実施形態では、Mは、上述したように約300,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの範囲内であってよく、PIは約3〜約6の範囲内であってよい。
【0040】
低いTを備えるベースポリマー単位に由来するポリマー組成物を使用すること
典型的には薬剤放出速度を減少させるのが有益であるが、薬剤放出速度が低すぎることが時々ある。そのような場合には、薬剤放出速度を増加させるのが望ましい。薬剤放出速度は、ポリマーの薬剤透過性に関連している。透過性は、ポリマー内での薬剤溶解度と薬剤拡散率の積である。溶解度は、ポリマー内の薬剤の熱力学的特性である。順に、薬剤拡散率は、ポリマー構造に関連している。典型的には、ポリマーは、低いT、および結晶性が存在する場合は低結晶度を有する場合により高い最終伸び率を有する。これらの同一特性は、さらにポリマー内を通過する高い薬剤拡散速度も導く。したがって、本発明の一部の実施形態では、ステントコーティングの任意もしくは全部の層は、低いTを有するポリマー組成物から製造されてよい。これらの組成物は、n−ブチルメタクリレートに由来する構成成分およびまた別のアクリル化合物に由来する構成成分を含んでいる。そのような組成物は、2つのタイプである第1のベースポリマー単位に由来する単位を含むポリマーを含む組成物、および第2のベースポリマーと少なくとも1つの他のアクリル系ポリマーとの物理的混合物である組成物であってよい。さらに、一部の実施形態では、ステントコーティングの任意もしくは全部の層は、ベースポリマー単位に由来する構成成分および非アクリル系化合物に由来する構成成分を含んでいる組成物である、低いTを有するポリマー組成物から製造できる。
【0041】
ベースポリマー単位に由来する単位を含むコポリマー
一部の実施形態では、ポリマー組成物は、ベースポリマーとまた別のアクリル系モノマーとのコポリマー(ベースポリマー単位コポリマー(bpu)コポリマー))を含むことができるが、bpuコポリマーのTは、分子量に依存する純粋ベースポリマーのTより低い。bpuコポリマーは、任意の種類の、例えばランダム、交互、またはブロックコポリマーであってよい。bpuコポリマーのTは、約20℃未満、例えば約−30℃〜約20℃、または約0℃〜約20℃、例えば約15℃であってよい。
【0042】
ステントコーティングのために適切な低いTを有するベースポリマー単位コポリマーは、代表的な一般式(III−A)、一般式(III−B)、一般式(III−C)、または一般式(III−D):
【化3】

【0043】
(式中:
XおよびXは各々、独立して、水素原子、またはメチルもしくはエチル基などのアルキル基である;
【0044】
RおよびRは各々、独立して、C〜C12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ラジカルである;および
【0045】
m、n、およびpは各々整数であり、m>0、n>0、およびp≧0である)を有していてよい。
【0046】
式(III−A〜III−D)によるポリマーの総分子量(M)は、約50,000ダルトン〜約500,000ダルトン、または約250,000ダルトンなどの約100,000ダルトン〜約400,000ダルトンであってよい。
【0047】
式(III−A〜III−D)によって記載されるベースポリマー単位コポリマーの例には、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−n−オクチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−ペンチルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−n−デシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−n−ドデシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−ウンデシルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレートおよびポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−ラウリルメタクリレート)が含まれる。これらのコポリマーの一部の代表的な式は、各々以下に示す式(IV)、(V)、および(VI)である。当業者は、式(IV)、(V)、および(VI)がコポリマーの構造を例示する式だけではなく、これらの構造が他の形状を取れることも理解する。
【化4】

【0048】
コポリマーもしくはターポリマーについては、T(ケルビン温度)は一般に、Fox方程式によるポリマー構成成分の質量分率加重平均である。結果として、所定値のTを備える式(III−A〜III−D)のコポリマーもしくはターポリマーを設計できる。例えば、純粋ポリ(ラウリルメタクリレート)は約208K(−65℃)のTを有し、ポリ(n−ブチルメタクリレート)は約293K(20℃)のTを有する。したがって、約2質量%〜約25質量%のラウリルメタクリレート単位、およびn−ブチルメタクリレートに由来するバランスを有するポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−ラウリルメタクリレート)(VI)[P(BMA−LMA)]は、表1に示したように、約17℃〜約−5℃のTを有することができる。
【表1】

【0049】
ベースポリマーと他のアクリル系ポリマーとの物理的混合物
一部の実施形態では、ベースポリマーと少なくとも1つの他のアクリル系ポリマーとの物理的混合物は、その混合物のTが純粋ベースポリマーのTより低い場合には、ステントコーティングの任意もしくは全部の層を作製するために使用できる。混合物のTは、約20℃未満、例えば約−30℃〜約20℃、より狭い範囲では約−15℃〜約18℃、例えば約15℃であってよい。
【0050】
混合物を形成するためにベースポリマーと結合できるベースポリマー以外のアクリル系ポリマーの例には、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)(PHMA)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)(PEHMA)、ポリ(n−オクチルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−デシルメタクリレート)、ポリ(n−ドデシルメタクリレート)、ポリ(1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、およびポリ(ラウリルメタクリレート)(PLMA)が含まれる。
【0051】
コポリマーと同様に、個々のポリマーの混合物のT(ケルビン温度)は、一般にその混合物が非結晶性であり、混合物のポリマーが混和性である限りは、混合物を含むポリマーの質量分率加重平均である。したがって、ベースポリマーと少なくとも1つの他のアクリル系ポリマーとの物理的混合物は、Tの所定値、これらの例では15℃を有することができる。約92質量%のベースポリマーおよび8質量%のポリ(デシルメタクリレート)を含有する混合物、および約69質量%のベースポリマーおよび21質量%のポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)を含有する混合物の例は有用である。ポリマー混合物は、ベースポリマー単位コポリマーとベースポリマーもしくはベースポリマー単位コポリマー以外のうちの少なくとも1つのアクリル系ポリマー、例えばポリ(n−ヘキシルメタクリレート)(PHMA)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)(PEHMA)、ポリ(n−オクチルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−デシルメタクリレート)、ポリ(n−ドデシルメタクリレート)、ポリ(1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、およびポリ(ラウリルメタクリレート)(PLMA)との混合物を含むことができる。
【0052】
非アクリル系成分を含む組成物
本発明の他の実施形態によると、一部の非アクリル系モノマーもしくはポリマーもまた、ステントコーティングを作製するために使用できる。一部の実施形態は、フリーラジカルもしくは原子移動プロセスによって重合する非アクリル系モノマーを選択する。非アクリル系モノマーは、実質的に上述したアクリル基(I)およびメタクリル基(II)を含有していないモノマーである。非アクリル系ポリマーは、非アクリル系モノマーに由来するポリマーである。用語「非アクリル系ポリマー」には、非アクリル系ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、オリゴマー、およびプレポリマーが含まれる。
【0053】
一部の実施―形態では、ベースポリマー単位と非アクリル系モノマーとのコポリマーであって、約20℃未満、例えば約−30℃〜約18℃、または−15℃〜約18℃、例えば約15℃のTを有するコポリマーを使用できる。そのようなコポリマーを形成するためにベースポリマー単位と共重合できる非アクリル系モノマーの例には、表IIに示したモノマーが含まれる。使用できるベースポリマー単位と非アクリル系モノマーとのコポリマーは、例えば、ランダム、交互、またはブロックコポリマーのような任意の種類であってよい。ベースポリマー単位と非アクリル系モノマーとのコポリマーは、それらのコポリマーが式(III−A)から式(III−D)を有するベースポリマー単位コポリマーについて上述したTの所定値を有するように、当業者が設計できる。
【0054】
一部の実施形態では、ベースポリマーと少なくとも1つの非アクリル系ポリマーとの物理的混合物は、その混合物のTが純粋ベースポリマーのTより低い場合には、ステントコーティングの任意もしくは全部の層のために使用できる。
【0055】
混合物のTは、約20℃未満、例えば約−30℃〜約20℃、より狭い範囲では約−15℃〜約18℃、例えば約15℃であってよい。
【表2】

【0056】
ベースポリマー単位コポリマーと非アクリル系モノマーとのコポリマーの場合と同様に、ベースポリマーと個別の非アクリル系ポリマーとの混合物については、その混合物のT(ケルビン温度)は、一般にFox方程式によって与えられるようにその混合物を含むポリマーの質量分率加重平均である。したがって、ベースポリマーと少なくとも1つの非アクリル系ポリマーとの物理的混合物は、Tの所定値、例えば15℃を有することができる。使用できる混合物の例には、約29質量%のベースポリマーおよび71質量%のポリ(4−ブチルスチレン)を含有する混合物および約82質量%のベースポリマーおよび18質量%のポリ(フッ化ビニリデン)を含有する混合物が含まれる。
【0057】
薬剤−ポリマー層もしくはトップコート層の少なくとも一方は、上記で記載した範囲内に含まれるTを有するベースポリマー単位もしくはPBMAをベースとするポリマーまたは混合物を含むことができる。しかし、プライマー、薬剤−ポリマー層、もしくはトップコート層のためには、薬剤−ポリマー層もしくはトップコート層のいずれかを形成するポリマーもしくはポリマー混合物が規定範囲内のTを有する限り、他のポリマーもまた使用できる。
【0058】
プライマー層、薬剤−ポリマー層、またはトップコート層を作製するために使用できるまた別のポリマーの代表的な例を以下に示す。
ポリビニルエーテル類 ポリビニルメチルエーテル
ポリハロゲン化ビニリデン類 ポリフッ化ビニリデン
ポリ塩化ビニリデン
芳香族ポリビニル類 ポリスチレン
ポリアミド類 ナイロン66
ポリカプロラクタム
生体分子類 フィブリン
フィブリノーゲン
セルロース
デンプン
コラーゲン
ヒアルロン酸
ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-吉草酸塩)
ポリジオキサノン
ポリオルトエステル
ポリ無水物
ポリ(グリコール酸)
ポリ(D,L-乳酸)
ポリ(グリコール酸-コ-トリメチレンカーボネート)
ポリホスホエステル
ポリホスホエステルウレタン
ポリ(アミノ酸)
ポリシアノアクリレート類
ポリ(トリメチレンカーボネート)
ポリ(イミノカルボネート)
コ-ポリ(エーテル-エステル)
ポリアルキレンオキサレート類
ポリホスファゼン類
ポリウレタン類
シリコーン類
ポリエステル類
ポリオレフィン類
ポリイソブチレン
エチレン-アルファオレフィンコポリマー類
ポリ塩化ビニル
ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロペン)
ポリアクリロニトリル
ポリビニルケトン類
ポリビニルエステル類
アクリロニトリル-スチレンコポリマー類
ABS樹脂類
エチレン-酢酸ビニルコポリマー類
アルキド樹脂類
ポリカーボネート類
ポリオキシメチレン類
ポリイミド類
ポリエーテル類
エポキシ樹脂類
ポリウレタン類
レーヨン
三酢酸レーヨン
セルロース
酢酸セルロース
酪酸セルロース
酢酸酪酸セルロース
セロファン
硝酸セルロース
プロピオン酸セルロース
セルロースエーテル類
カルボキシメチルセルロース
【0059】
本発明のコーティングをステントと結び付けて記載してきた。しかし、本コーティングは、様々な他の医療器具とともに使用することもできる。本発明の実施形態と結び付けて使用できる埋め込み型医療器具の例には、ステントグラフト、グラフト(例、大動脈グラフト)、人工心臓弁、脳脊髄液シャント、ペースメーカー用電極、Axius冠動脈シャントおよび心内膜リード(例、FINELINEおよびENDOTAK、Guidant社製)が含まれる。器具の基礎構造は、実質的に任意の設計であってよい。器具は、金属材料、または例えばコバルト−クロム合金(例、ELGILOY)、ステンレススチール(316L)、「MP35N」、「MP20N」、Elastinite(Nitinol)、タンタル、タンタル系合金、ニッケル−チタン合金、白金、例えば白金−イリジウム合金などの白金系合金、イリジウム、金、マグネシウム、チタン、チタン系合金、ジルコニウム系合金、またはそれらの組み合わせを含むがそれらに限定されない合金から製造されてよい。生体吸収性もしくは生体内安定性ポリマーから製造された器具もまた、本発明の実施形態と一緒に使用できる。「MP35N」および「MP20N」は、ペンシルベニア州ジェンキンタウンに所在のStandard Press Steel社から入手できるコバルト、ニッケル、クロムおよびモリブデンの合金の商標である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム、および10%のモリブデンからなる。「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム、および10%のモリブデンからなる。
【0060】
活性物質、治療物質もしくは薬剤という互換的に使用される用語は、患者に対して治療作用もしくは予防作用を発揮できる任意の物質を含むことができる。薬剤には、小分子薬、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドなどが含まれてよい。薬剤は、例えば血管平滑筋細胞の活性を阻害するために設計できよう。再狭窄を阻害するために平滑筋細胞の異常もしくは不適切な移動もしくは増殖を阻害することを目指すことができる。
【0061】
薬剤の例には、アクチノマイシンD、もしくはその誘導体およびアナログ(ウィスコンシン州ミルウォーキーに所在のSigma−Aldrich社製、またはMerck社から入手できるCOSMEGEN)などの抗増殖性物質が含まれる。アクチノマイシンDの別名には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、およびアクチノマイシンCが含まれる。活性物質は、さらにまた抗腫瘍性、抗炎症性、抗血小板凝集性、抗凝固性、抗フィブリン性、抗トロンビン性、抗有糸分裂性、抗生物質性、抗アレルギー性および抗酸化性物質の種類に分類することもできる。そのような抗腫瘍薬もしくは抗有糸分裂薬の例には、パクリタキセル(例、コネティカット州スタンフォードに所在のBristol−Myers Squibb社製のTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例、ドイツ国フランクフルトに所在のAventis S.A.社製のTaxotere(登録商標))、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例、ニュージャージー州ピーパックに所在のPharmacia & Upjohn社製のAdriamycin(登録商標))、およびマイトマイシン(例、コネティカット州スタンフォードに所在のBristol−Myers Squibb社製のMutamycin(登録商標))が含まれる。そのような血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗フィブリン薬、および抗トロンビン薬の例には、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン類似物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリンおよびプロスタサイクリンアナログ、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組み換えヒルジン、およびAngiomax(商標)(Biogen社、マサチューセッツ州ケンブリッジ)などのトロンビン阻害剤が含まれる。そのような細胞成長抑止薬もしくは抗増殖薬の例には、アンジオペプチン、カプトプリル(例、コネティカット州スタンフォードに所在のBristol−Myers Squibb社製のCapoten(登録商標)およびCapozide(登録商標))、シラザプリルもしくはリシノプリル(例、ニュージャージー州ホワイトハウスステーションに所在のMerck & Co.社製のPrinivil(登録商標)およびPrinzide(登録商標))などのアンジオテンシン転換酵素阻害剤;カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(ω3−脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoA還元酵素の阻害剤、コレステロール降下薬、商品名はニュージャージー州ホワイトハウスステーションに所在のMerck & Co.社製のMevacor(登録商標))、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に対して特異的な抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、および酸化窒素が含まれる。抗アレルギー薬の例は、ペミロラストカリウムである。適切な可能性があるその他の治療用物質には、α−インターフェロン、遺伝子組み換え上皮細胞、タクロリムス、デキサメタゾン、およびラパマイシン、ならびに40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(Novartisから入手できるエベロリムスの商標によって知られている)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、および40−O−テトラゾール−ラパマイシンなどのそれらの構造的誘導体もしくは機能的アナログが含まれる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例によって本発明の一部の実施形態についてさらに具体的に例示する。
【0063】
実施例1(Prophetic Example 1)
約0.1質量%〜約15質量%、例えば約2.0質量%のEVAL、ならびにDMACおよびエタノールの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約80質量%のDMACから約20質量%のエタノールを含有する残部を含むポリマー溶液を調製できる。この溶液は、プライマー層を形成するためにステント上に塗布できる。プライマー層を塗布するためには、VALVEMATE 7040制御システムを備えるEFD 780Sスプレーノズルなどのスプレー装置(EFD社製、ロードアイランド州イーストプロビデンス)を使用できる。EFD 780Sスプレーノズルは、エアアシステッド型外部混合噴霧器である。本組成物は空気によって噴霧化され、ステント表面へ塗布される。本組成物を塗布するプロセス中に、ステントは任意で、約50〜約150rpmの速度で、その長手軸の周囲を回転させることができる。ステントは、さらに塗布中に同一軸に沿って直線的に移動させることもできる。
【0064】
EVAL溶液は、一連の10秒パスで13mmのTETRAステント(Guidant社)へスプレー塗布すると、例えば1パスあたり10gのコーティングを沈着させることができる。13mmのTETRAステントの代わりに、例えば12mmのVISIONステント(同様にGuidant社製)のようなまた別の適切なステントを使用することもできる。スプレーのパス間では、ステントは約60℃の温度の気流を用いて約10秒間乾燥させることができる。5パスをスプレー塗布し、次にプライマー層を約1時間にわたり約110℃で焼成することができる。結果として、約50μgの固体含量を有するプライマー層を形成できる。「固体」は、全揮発性有機化合物(例、溶媒)が除去された後にステント上に沈着した乾燥残留物の量を意味する。
【0065】
(a)約0.1質量%〜約15質量%、例えば約2.0質量%のEVAL;
(b)約0.1質量%〜約2質量%、例えば約1.0質量%の活性物質、例えばエベロリムス;および
(c)DMACおよびペンタンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約80質量%のDMACおよび約20質量%のペンタンを含有する残部を含む薬剤含有調製物を調製できる。
【0066】
プライマー層の塗布と同一方法で、5パスのスプレー塗布を実施し、薬剤−ポリマー層を約50℃で約2時間焼成すると、約30μg〜750μg、例えば約90μgの固体含量、および約10μg〜約250μg、例えば約30μgの薬剤含量を有する薬剤−ポリマー層が形成される。
【0067】
最後に、
(a)約500,000の重量平均分子量を有する約1質量%〜約10質量%、例えば約2質量%のポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA);および
(b)アセトンおよびシクロヘキサノンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約70質量%のアセトンおよび約30質量%のシクロヘキサノンを含有する残部を含むトップコート組成物を調製できる。
【0068】
プライマー層および薬剤−ポリマー層の塗布と同一方法で、多数回パスのスプレー塗布を実施し、その後に約1時間にわたり約50℃で最終焼成を実施する。結果として、約40μg〜約150μg、例えば約60μgの固体含量を備えるトップコート膜を形成できる。
【0069】
実施例2(Prophetic Example 2)
ステントは実施例1に記載したようにコーティングできるが、トップコート内のPBMAは約4の多分散性指数を有していてよい。PBMAの重量平均分子量は、約150,000ダルトン〜約400,000ダルトンであってよい。
【0070】
実施例3(Prophetic Example 3)
ステントは、トップコート層においてPBMAを、約2質量%〜約25質量%、例えば約10質量%のラウリルメタクリレート由来の単位、およびn−ブチルメタクリレート由来の単位の残部を有する同一量のポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−ラウリルメタクリレート)[P(BMA−LMA)]に置換できる以外は実施例1に記載したとおりにコーティングできる。トップコート層を形成する前にポリ(BMA−LMA)を溶解させるために使用できる溶媒は、アセトンおよびシクロヘキサノンの溶媒混合液であってよく、該溶媒混合液は約70質量%のアセトンおよび30質量%のシクロヘキサノンを含有している。
【0071】
実施例4(Prophetic Example 4)
ステントは、実施例1に記載したプライマー層および薬剤−ポリマー層でコーティングすることができる。
(a)約1質量%〜約10質量%、例えば約1.8質量%のPBMA;
(b)約0.1質量%〜約10質量%、例えば約0.2質量%のポリ(ラウリルメタクリレート)(PLMA);および
(c)アセトンおよびキシレンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約50質量%のアセトンおよび約50質量%のキシレンを含有する残部を含むトップコート組成物を調製できる。
【0072】
プライマー層および薬剤−ポリマー層の塗布と同様の方法で、多数回パスのスプレー塗布を実施し、その後に約1時間にわたり約60℃で最終焼成を実施する。結果として、トップコート膜を形成できるが、この膜は約40μg〜約120μg、例えば約75μgの固体含量を有する。
【0073】
実施例5(Prophetic Example 5)
約0.1質量%〜約15質量%、例えば約2.0質量%のPBMA、ならびにアセトンおよびシクロヘキサノンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約70質量%のアセトンから約30質量%のシクロヘキサノンを含有する残部を含有するポリマー溶液を調製できる。この溶液は、プライマー層を形成するためにステント上に塗布できる。プライマー層を塗布するためには、VALVEMATE 7040制御システムを備えるEFD 780Sスプレーノズルなどのスプレー装置(EFD社製、ロードアイランド州イーストプロビデンス)を使用できる。EFD 780Sスプレーノズルは、エアアシステッド型外部混合噴霧器である。本組成物は空気によって噴霧化され、ステント表面へ塗布される。組成物を塗布するプロセス中に、ステントは任意で、約50〜約150rpmの速度で、その長手軸の周囲を回転させることができる。ステントは、さらに塗布中に同一軸に沿って直線的に移動させることもできる。
【0074】
PBMA溶液は、一連の10秒パスで12mmの小VISIONステント(Guidant社)へスプレー塗布すると、例えば1パスあたり10μgのコーティングを沈着させることができる。スプレーのパス間では、ステントは約60℃の温度の気流を用いて約10秒間乾燥させることができる。5パスをスプレー塗布し、次にプライマー層を約1時間にわたり約80℃で焼成することができる。結果として、約50μgの固体含量を有するプライマー層を形成できる。「固体」は、全揮発性有機化合物(例、溶媒)が除去された後にステント上に沈着した乾燥残留物の量を意味する。
【0075】
(a)質量の66%がBMA単位に由来し、質量の34%が4−ブチルスチレン単位に由来する、約0.1質量%〜約15質量%、例えば約2.0質量%のポリ(n−ブチルメタクリレート−コ−4−ブチルスチレン);
(b)約0.1質量%〜約2質量%、例えば約0.8質量%の活性物質、例えばSIROLIMUS;および
(c)アセトンおよび4−メチル−2−ペンタノンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約50質量%のアセトンおよび約50質量%の4−メチル−2−ペンタノンを含有する残部を含む薬剤含有調製物を調製できる。
【0076】
プライマー層の塗布と同一方法で、19パスのスプレー塗布を実施し、薬剤−ポリマー層を約50℃で約2時間焼成すると、約30μg〜750μg、例えば約190μgの固体含量、および約10μg〜約250μg、例えば約50μgの薬剤含量を有する薬剤−ポリマーリザーバー層が形成される。
【0077】
実施例6(Prophetic Example 6)
ステントは、実施例5に記載したプライマー層でコーティングすることができる。
(a)約1質量%〜約10質量%、例えば約1.8質量%のPBMA;
(b)約0.1質量%〜約10質量%、例えば約0.2質量%のポリ(ブチレンアジペート);および
(c)約0.1質量%〜約2質量%、例えば約0.5質量%の活性物質、例えばPACLITAXEL;
(c)アセトンおよびキシレンの溶媒混合液で、該溶媒混合液が約50質量%のアセトンおよび約50質量%のキシレンを含有する残部を含む薬剤リザーバー組成物を調製できる。
【0078】
プライマー層の塗布と同一方法で、多数回パスのスプレー塗布を実施し、その後に約1時間にわたり約60℃で最終焼成を実施する。結果として、約40μg〜約200μg、例えば約125μgの固体含量を有する薬剤リザーバー層を形成できる。
【0079】
本発明の特定の実施形態を示して記載してきたが、当業者にとって、その広い態様における本発明の実施形態から逸脱せずに変形および改変を加えられることは明白であろう。このため、添付の特許請求の範囲は、本発明の実施形態の真の精神および範囲に含まれるすべてのそのような変形および改変をその範囲内に含むものである。さらに、様々な実施形態については上述してきた。便宜上、本発明の実施形態を構成する態様の組み合わせは、当業者であれば、それらが必ずしも除外すべきであると意図されない場合は相互を除いて読めるような方法で列挙されている。しかし1つの実施形態の1つの態様についての言及により、その態様を過度の実験を行うことなく組み込むことのできる全実施形態における使用が開示されることが意味されている。同様に、1つの実施形態の一部を構成するとき1つの態様についての言及は、特別にその態様を除外する補充実施形態が存在するという黙示的認識である。本明細書に言及したすべての特許、試験方法、およびその他の文書は、本明細書一致する程度まで、そしてそのような組み込みが許容される全司法権と一致する程度まで参照して完全に組み込まれる。
【0080】
さらに、一部の実施形態は範囲を列挙している。これが実施される場合は、その範囲を1つの範囲として、及び終点を含むその範囲内の1の点を開示することが意味されている。1つの態様についての特定の数値もしくは条件を開示する実施形態については、さもなければ同一であるが、その態様についてはその数値もしくは条件を特異的に除外する補助実施形態が存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約20%〜約500%の破断時伸び率を備えるベースポリマー単位に由来するポリマーを有する埋め込み型医療器具を含む医療器具。
【請求項2】
前記埋め込み型医療器具が、ステントである、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記ポリマーが、約200,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するベースポリマーである、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記ポリマーが、約3〜約6の多分散性指数を有するベースポリマーを含む、請求項3に記載の医療器具。
【請求項5】
前記ポリマーが、約3〜約6の多分散性指数を有するベースポリマーを含む、請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記ポリマーが、第1のアクリル系モノマーを含む、請求項1に記載の医療器具。
【請求項7】
前記ポリマーが、ベースポリマーおよび第1のアクリル系モノマーのコポリマーである、請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記第1のアクリル系モノマーが、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(ドデシルメタクリレート)、n−オクチルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、イソ−デシルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、1−ヘキサデシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、または3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレートのうちの少なくとも1つである、請求項7に記載の医療器具。
【請求項9】
前記ポリマーが、約20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項6に記載の医療器具。
【請求項10】
前記ガラス転移温度が、約−30℃〜約20℃である、請求項9に記載の医療器具。
【請求項11】
前記ポリマーが、以下の式:
【化1】

(式中、XおよびXは各々、独立して、水素原子もしくはアルキル基であり、RおよびRは各々、独立して、C〜C12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ラジカルであり、m、n、およびpは各々整数であり、m>0、n>0、およびp≧0である)を有する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項12】
約20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項10に記載の医療器具。
【請求項13】
−30℃〜約20℃のガラス転移温度を有する、請求項11に記載の医療器具。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)および第2ポリマー材料を含み、前記ポリマーが、実質的に約20℃未満である単一のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項15】
前記ガラス転移温度が、約−30℃〜約20℃である、請求項14に記載の医療器具。
【請求項16】
前記第2ポリマー材料が、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘプチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−オクチルメタクリレート)、ポリ(n−ノニルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(n−デシルメタクリレート)、ポリ(1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)、またはポリ(ラウリルメタクリレート)のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載の医療器具。
【請求項17】
前記第2ポリマー材料が、前記ベースポリマーのTより低いTを備える非アクリル系ポリマーである、請求項14に記載の医療器具。
【請求項18】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の医療器具。
【請求項19】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項6に記載の医療器具。
【請求項20】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項9に記載の医療器具。
【請求項21】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の医療器具。
【請求項22】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の医療器具。
【請求項23】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の医療器具。
【請求項24】
埋め込み型医療器具上にコーティングを沈着させる工程を含む方法であって、前記コーティングが、約20%〜約500%の破断時伸び率を備えるベースポリマー単位に由来するポリマーを有する方法。
【請求項25】
前記埋め込み型医療器具が、ステントである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリマーが、約200,000ダルトン〜約1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有するベースポリマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ベースポリマーが、約3〜約6の多分散性指数を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ベースポリマーが、約3〜約6の多分散性指数を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマーが、第1のアクリル系モノマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーが、ベースポリマーおよび第1のアクリル系モノマーのコポリマーである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のアクリル系モノマーが、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(ドデシルメタクリレート)、n−オクチルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、イソ−デシルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、1−ヘキサデシルメタクリレート、ウンデシルメタクリレート、または3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレートのうちの少なくとも1つである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーが、約20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ガラス転移温度が、約−30℃〜約20℃である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマーが、以下の式:
【化2】

(式中、XおよびXは各々、独立して、水素原子もしくはアルキル基であり、RおよびRは各々、独立して、C〜C12直鎖状もしくは分枝状脂肪族ラジカルであり、およびm、n、およびpは各々整数であり、m>0、n>0、およびp≧0である)のうちの少なくとも1つを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマーが、約20℃未満のガラス転移温度を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ガラス転移温度が、約−30℃〜約20℃である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリマーが、ベースポリマーおよび第2ポリマーを含み、前記ポリマーが、実質的に約20℃未満である単一のガラス転移温度を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記ガラス転移温度が、約−30℃〜約20℃である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記第2ポリマーが、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘプチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−オクチルメタクリレート)、ポリ(n−ノニルメタクリレート)、ポリ(2−エトキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(ペンチルメタクリレート)、ポリ(イソ−デシルメタクリレート)、ポリ(n−デシルメタクリレート)、ポリ(1−ヘキサデシルメタクリレート)、ポリ(ウンデシルメタクリレート)、ポリ(3,5,5−トリメチルヘキシルメタクリレート)、またはポリ(ラウリルメタクリレート)のうちの少なくとも1つである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記第2ポリマーが、前記ベースポリマーのTより低いTを備える非アクリル系ポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項43】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記医療器具が、さらに、血管平滑筋細胞活性阻害剤、抗増殖剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、抗炎症薬、抗血小板凝集阻害薬、抗凝固薬、抗線維素溶解素、アンチトロンビン、抗生物質、抗アレルギー薬、抗酸化剤、およびこれらのあらゆるプロドラッグ、代謝産物、アナログ、ホモログ、コンジナー、誘導体、または塩のうちの1つもしくは任意の組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項1に記載の医療器具。
【請求項48】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項47に記載の医療器具。
【請求項49】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項4に記載の医療器具。
【請求項50】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項49に記載の医療器具。
【請求項51】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項7に記載の医療器具。
【請求項52】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項51に記載の医療器具。
【請求項53】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項10に記載の医療器具。
【請求項54】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項53に記載の医療器具。
【請求項55】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項11に記載の医療器具。
【請求項56】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項55に記載の医療器具。
【請求項57】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項14に記載の医療器具。
【請求項58】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項57に記載の医療器具。
【請求項59】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項17に記載の医療器具。
【請求項60】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項59に記載の医療器具。
【請求項61】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項18に記載の医療器具。
【請求項62】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項61に記載の医療器具。
【請求項63】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項24に記載の方法。
【請求項64】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項64に記載の方法。
【請求項65】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項27に記載の方法。
【請求項66】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項33に記載の方法。
【請求項68】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項70】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項38に記載の方法。
【請求項72】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(イソプロピルメタクリレート)、またはポリ(n−プロピルメタクリレート)のうちの少なくとも1つまたは任意の組み合わせである、請求項41に記載の方法。
【請求項74】
前記ベースポリマーが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)である、請求項73に記載の方法。

【公表番号】特表2008−513117(P2008−513117A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532425(P2007−532425)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/032754
【国際公開番号】WO2006/036558
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(504183388)アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ, インコーポレイテッド (40)
【Fターム(参考)】