説明

ポリアセタール樹脂の製造方法

【課題】トリオキサンの重合、もしくはトリオキサンと環状ホルマールとの共重合において、均一なる反応系で安定なポリアセタール樹脂を得る製造方法を提供する。
【解決手段】トリオキサンの重合をメルト状態で行う重合に際し、(1)トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物から選ばれる1種もしくは2種以上と、(2)トリオキサンに可溶性である混合媒体とからなる混合物(I)を連続的に添加混合させ、カチオン性重合触媒を吸着させることにより触媒活性を失活化させる、安定なポリアセタール樹脂を得る方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジニアリング樹脂として、重要なポリアセタール樹脂を工業的に得ることに関する。さらに詳しくは、トリオキサンの重合、もしくはトリオキサンと環状ホルマールとの共重合において、均一なる反応系で安定なポリアセタール樹脂を得る改善された製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、トリオキサンの重合、あるいはトリオキサンと環状エーテルおよび環状ホルマールの共重合により、ポリアセタール樹脂を得ようとする試みはなされている。特に、安定なポリアセタール樹脂共重合体を得ようとする試みは興味深くなされている。その例として、これまでの方式では、トリオキサンの重合、もしくは、環状ホルマールとの共重合により、固体状のポリアセタール樹脂コポリマーが生じ、ついで、そのポリマーを粉砕する方式が採用されていた。たとえば、本出願人よりなる特許文献1では、ポリアセタール樹脂コポリマーを微粉砕し、ついで、塩基の水溶液中で触媒を失活する方法を提案している。同じく、本出願人よりなる特許文献2では、連続した重合とそれに続くポリマーの微粉砕、およびそれに連続して続く塩基との接触、およびポリマーの乾燥をすべて連続して行い、それらはいずれも不活性ガス雰囲気中で行うことを提案している。特に、本出願人よりなる後者の方法は、安定したポリアセタール樹脂コポリマーを得るのにもっとも好ましい方式として注目された。しかしながら、固体状のポリマーの微粉砕など、装置的に煩雑である点が問題となった。
【0003】
さらにまた、別な方式による安定なポリアセタール樹脂の製法も本出願人から提案されている。 例えば、特許文献3では、トリオキサンを単独重合、あるいは1,3−ジオキソランとの共重合において、80℃でニーダーを用いて、トリフルオロメタンスルホン酸(モル比でモノマーに対して5×10−8〜2×10−7の範囲で使用)を重合触媒として用い、得られた粒状ポリアセタール樹脂(またはポリアセタール樹脂コポリマー)にイオン吸着体を添加し、融点以上に加熱し、カチオン性重合触媒を吸着させることを提案している。同様に、特許文献4においても、カチオン活性な重合触媒を用いて得られたポリアセタール樹脂にイオン性吸着体を添加して、カチオン性重合触媒を吸着させることを提案している。しかしながら、これらの方式は、粒状ポリアセタール樹脂で得られたカチオン性重合触媒の吸着法については明らかにしているが、メルト重合で得られたカチオン性重合触媒の吸着法については明らかにしていない。
【0004】
一方、ポリアセタール樹脂の製造法として、通常は、特許文献3で述べられているように、ポリアセタール樹脂の天井温度(Ceiling Temperature:119℃)以下で重合反応が行われ、ニーダー等の重合装置を用いて、粒径もしくは粉体状のポリアセタール樹脂が得られる。
しかしながら特許文献5では、135〜300℃の温度範囲でトリオキサンを塊状重合させ、重合中に単量体および重合体を溶融状態で存在させることにより、分子量20,000以上のポリアセタール樹脂を得る別な製法を提案している。
また、特許文献6では、トリオキサンとポリアセタール樹脂が重合中に溶融状態である製造法において、スタティックミキサーを使用することを提案している。また、特許文献7では、トリフルオロメタンスルホン酸などのプロトン酸を用いて撹拌を行い、重合する方式を提案している。また、カチオン性重合触媒を失活させるために、ポリマーに対して0.05〜1.0%(w/w)のトリエチルアミンなどの塩基性化合物を用いることを提案している。
【0005】
これらの溶融状態でポリアセタール樹脂を得る方式は、重合反応時の副反応、および、重合触媒を失活させることの難しさが指摘されている。例えば、特許文献7では、失活化後も数%の不安定末端部が存在することが示されている。
また、特許文献7に示されるように、失活剤としてトリエチルアミンなどの揮発性の塩基を使用した場合、未反応のトリオキサンを回収すると、回収トリオキサン中にトリエチルアミンなどが含まれ、重合に使用するにはさらなる精製を必要とする。なお、未反応のトリオキサンは、通常仕込みのトリオキサンに対して、20〜40%程度あることが特許文献5、あるいは特許文献7で明らかになっている。 また、特許文献8では、カチオン性重合触媒に過塩素酸を用いて、メルト状態でトリオキサンを重合し、ついでCHONa(ナトリウムメトキシド)をポリアセタール樹脂中に分散させたマスターバッチを用い、重合触媒の10倍モル量のCHONaを重合反応生成物中に導入し、混和し、10分間中和反応を行い、重合触媒を失活することを提案している。しかしながら、この方式では、中和反応に10分間も要すること、およびCHONaとホルムアルデヒドを10分間にわたり高温で接触させるために製品が着色しやすいなどの問題点を有する。また、CHONaをポリアセタール樹脂中に分散させても、1分以下の短時間では中和反応が完結しないなどの問題もある。
【0006】
【特許文献1】特公平2−35772号公報
【特許文献2】特公平6−89090号公報
【特許文献3】特公平6−92476号公報
【特許文献4】特許第3115913号公報
【特許文献5】特公昭63−9527号公報
【特許文献6】特許第3285278号公報
【特許文献7】特許第3359748号公報
【特許文献8】WO2007−009925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の方法では、一旦得られた固体状のポリアセタール樹脂コポリマーを粉砕し、ついで塩基と接触し、重合触媒の失活を図っていた。従って、粉砕器等の煩雑な設備が必要となった。そこで、粉砕器等をなくして、より簡便な形態で重合触媒を失活せしめ、不安定部の少ない重合体を得ることが望まれる。
また、トリオキサンを溶融状態で重合する場合、重合装置が簡略であり、粉砕器等の設備が不要である等の工業上のメリットが認められる。しかしながら、失活化後の不安定末端部がまだ満足するレベルにないなどの問題点を持っている。さらに溶融重合法では、未反応のトリオキサンが20〜40%あり、その回収工程が煩雑であるなどの問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、以下の簡便で優れた安定性を有するポリアセタール樹脂およびポリアセタール樹脂コポリマーの連続的な製造法を達成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.トリオキサンの重合、もしくはトリオキサンと環状ホルマールとの共重合を一般式ROCHOR(R、Rは炭素数8以下のアルキル基)で示される化合物の存在下で、カチオン性重合触媒を用いて、重合温度を130℃〜200℃とし、加圧条件下で連続的に重合反応を行い、得られた溶融状態の重合体を含む重合反応混合物に、(1)トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物から選ばれる1種もしくは2種以上と、(2)トリオキサンに可溶性である混合媒体とからなる混合物(I)を連続的に添加混合させ、カチオン性重合触媒を吸着させる
ことにより触媒活性を失活化させることを特徴とするポリアセタール樹脂の製造方法。
2.上記トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物が、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのNaアルコラート、あるいはポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのKアルコラート、ビスフェノールAのNa塩、ビスフェノールAのK塩であることを特徴とする上記1記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
3.上記カチオン性重合触媒が、パーフルオロアルキルスルホン酸、過塩素酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、又はそれらの酸の誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記1又は2に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
4.カチオン性重合触媒を吸着させることにより失活せしめた後に、トリオキサンを含む揮発性成分を蒸発させ、この揮発性成分を冷却して液体状態にした後、この液体成分を重合系に回し重合成分として再利用することを特徴とする上記1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
5.重合体のポリマー末端に存在する不安定部を除去する工程を更に有することを特徴とする上記1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
6.前記(2)の混合媒体が、トリオキサン及び/又はポリアセタール樹脂コポリマーからなることを特徴とする上記1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、熱安定性の高いポリアセタール樹脂の連続的な製造方法を提供する。この方式は、ポリアセタール樹脂の製造法として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明では、トリオキサンの重合、もしくはトリオキサンと環状ホルマールの共重合を一般式ROCHOR(R1、R2は炭素数8以下のアルキル基)で示される化合物の存在下で、カチオン性重合触媒を用いて、重合温度を130℃〜200℃とし、加圧条件下で連続的に重合反応を行い、溶融状態であるトリオキサンおよび重合体を含む重合反応混合物を得る。なお、ここで、溶融状態であるトリオキサンおよび重合体を含む重合反応混合物には、一部に結晶化したポリアセタール樹脂、もしくはポリアセタール樹脂コポリマーを含んでいても良い。本発明の溶融状態とは、重合反応混合物が流動状態であることを意味している。
本発明で用いるトリオキサンは、高度に精製されている必要がある。水、メタノール、ギ酸等のポリマー末端にOH基を誘導する不純物の含有量は、トータルで30ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは3ppm以下である。
【0011】
また、分子量調節剤として使用するROCHORで示される化合物(ただし、ここでR1、R2は、炭素数8以下のアルキル基とする)は、通常はメチラール、ブチラールが好ましい。中でも特に、メチラールが好ましい。メチラールの添加量は、通常はトリオキサン1モルに対して、0.1×10−3モルから6×10−3モルの範囲で用いられる。重合温度は130℃から200℃で使用されるが、通常は130℃から180℃の温度範囲が好ましい。更に好ましくは、130℃から150℃の温度範囲である。重合時の圧力は、1.5barから200barの範囲で適宜選択する。好ましくは、2barから100barの範囲である。
また、共重合体のコモノマーとして用いる環状ホルマールとしては、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールなどが好ましい。通常これらのコモノマーは、トリオキサン1モルに対して1×10−3モルから1×10−1モルの範囲で使用される。
【0012】
本発明で用いられる好ましいカチオン性重合触媒は、パーフルオロアルキルスルホン酸、過塩素酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸又はそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上であるカチオン性重合触媒である。これらのカチオン性重合触媒の例として、過塩素酸、過塩素酸−t−ブチルエステル、アセチルパークロレート、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸無水物などが挙げられる。なお、パーフルオロアルキルスルホン酸の例は、特開昭48−29894号公報において述べられている。また、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、もしくは有機ホスフィン酸誘導体を用いたカチオン性重合触媒の例は、米国特許7,022,805号に示されている。それらの例として、ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸、ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン酸、トリフルオロメチルホスホン酸、ペンタフルオロエチルホスホン酸などが挙げられる。
【0013】
これらのカチオン性重合触媒は、トリオキサンおよび環状ホルマールの総量に対して、通常は0.01質量ppm以上5質量ppmの範囲で用いられる。カチオン性重合触媒の濃度は、生成重合体の分子量に対して大きな影響を及ぼすので、カチオン性重合触媒を溶解希釈した状態で用いるのが好ましい。カチオン性重合触媒を希釈する溶媒は、重合に悪影響を及ぼさない有機溶媒であるエーテル類や環状エーテルである。例えば、n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどである。カチオン性重合触媒は、メチラールに希釈溶解して用いることも可能であり、モノマーとカチオン性重合触媒をできるだけ迅速に均一に混合し、しかる後に重合反応が生じ、反応系の粘度が上昇することが好ましい。重合反応と同時に生じる好ましくない副反応を制御するためにも、重合反応機内での重合反応混合物の滞留時間の分布は均一であることが好ましい。そのために、通常重合反応はパイプ型リアクターで行われる。重合反応の滞留時間は、0.1〜10分、好ましくは0.3〜5分、特に好ましくは0.5〜2分である。このような溶融重合は、通常50気圧程度の圧力下で行われる。また、トリオキサンの40〜70%が重合体に変換する。時には、80%近くが変換する場合もある。
【0014】
このようにして得られた溶融状態のトリオキサンとポリアセタール樹脂を含む溶融状態の重合反応混合物に、(1)トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物から選ばれる1種もしくは2種以上と、(2)トリオキサンに可溶性である混合媒体とからなる混合物(I)を連続的に添加させることが重要である。
【0015】
ここで言うトリオキサンに可溶性である混合媒体とは、重合反応条件下の温度においてトリオキサンに可溶であり、好ましくはトリオキサンそのもの、あるいはポリアセタール樹脂、ポリアセタール樹脂コポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられ、分子中に活性水素を持たない物質が好ましい。また、トリオキサンに可溶性である混合媒体に活性水素を有していても、その活性水素の量がその媒体の質量あたり1/100以下、あるいは1/500以下であれば、トリオキサンに可溶性である混合媒体として使用することができる。具体的な例としては、トリオキサン、ポリアセタール樹脂、あるいはトリオキサンとポリアセタール樹脂若しくはポリアセタール樹脂コポリマーとの混合物であり、液体の状態であることが好ましい。1つの例として、トリオキサン50質量%とポリアセタール樹脂(ポリアセタール樹脂コポリマー)50質量%とからなる混合物に、塩基性のアルカリ金属化合物を溶解若しくは分散してなる混合物(I)である。
【0016】
トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物とは、ブチルリチウム、ナフタレンのNa錯体、テトラエチレングリコール
モノメチルエーテルのNaアルコラート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルのKアルコラート、メトキシフェノールのNa塩、メトキシフェノールのK塩、ビスフェノールAのNa塩、ビスフェノールAのK塩、グリニア試薬類、アルキルマグネシウム、アルキル亜鉛などであり、中でも好ましくは、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのNaアルコラート、あるいはポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのKアルコラート、ビスフェノールAのNa塩、ビスフェノールAのK塩であり、トリオキサンに可溶性を示す媒体中に均一に溶解、もしくは分散させて使用する。
【0017】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む塩基性の化合物の添加量は、プロトン酸のプロトン、もしくはカチオンに対して等モル量から100倍モル量が好ましく、生成重合体に対して、0.001質量%以上1.0質量%以下の範囲である。好ましくは、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲であり、更に好ましくは、0.001質量%以上0.1質量%以下の範囲である。
【0018】
トリオキサンに可溶性である混合媒体とアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩基性化合物の混合方法は、特に制限するものではないが、好ましくは、攪拌羽根等の攪拌機能を有する混合槽にトリオキサンに可溶性を示す混合媒体を定量フィーダー等で連続フィードし、混合媒体の融点以上の温度で加熱・加圧条件下で液体状態とする。液体状態になった混合媒体にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の塩基性化合物を所定濃度になるまで攪拌しながら連続フィードし、混合媒体中に均一に分散させる。一般的には、スタティックミキサーなど、混和性の良い装置を用いて均一分散される。得られた混合物(I)は、重合反応機に添加され、カチオン性重合触媒と反応させることで、カチオン性重合触媒の活性が失活化される。その後、トリオキサン及び重合生成物、ホルムアルデヒドを含む重合反応混合物は、次の工程に回される。本発明の次工程とは、重合反応混合物からトリオキサンなどの未反応の揮発性成分を除く工程である。重合反応混合物中の重合体の不安定部を、塩基性物質を添加して熱分解、あるいは加水分解、あるいはアルコール分解、ついで揮発性成分を除去する工程も含まれる。
【0019】
揮発性成分の除去工程は、トリオキサン、ホルムアルデヒドなどの揮発性成分を重合体生成物から除去する工程であり、温度は170〜250℃に保たれ、トリオキサン、ホルムアルデヒドなどを除去する。揮発性成分の除去効率を高める為には、溶融相の表面積(溶融相/気相の界面)を大きくする装置が望ましく、望ましい装置の例としては、単軸押出機、多軸押出機、フラッシュポットなどである。ここで蒸発した揮発性成分は冷却され、トリオキサン、ホルムアルデヒドを含む液体状態となる。このトリオキサンを含む回収された液体は、再度重合系にリサイクル使用される。なお、冷却に当たり、冷却器表面に析出物が生じるのを防ぐために、冷却器の表面の温度は100℃以上であるのが望ましい。また、揮発性成分の液体化に当たり、すべてを液体化する場合もあれば、一部ガス状のホルムアルデヒドを液体化せずにホルムアルデヒド吸収系に導く場合もある。
揮発性成分が除去された溶融状態の重合体は必要により、次なる工程に回して、さらに、減圧条件下で微量の残存する揮発性成分を除去することもできる。あるいは、重合体のポリマー末端に存在する不安定部を除去する工程にかけることもできる。
重合体のポリマー末端に存在する不安定部を除去する工程は、パイプ型リアクターの重合反応機の重合体排出部に、同型のパイプ型リアクターを設け、このパイプ型リアクターを170℃〜230℃に加熱し、トリエチルアミン水溶液或いはトリエチルアミン/メタノール溶液などの塩基性物質を供給し、重合体を加熱処理することによりポリマー末端に存在する不安定部を分解除去する。又は、パイプ型リアクターの重合反応機の重合体排出部に、従来公知の溶融混合装置、例えば単軸スクリュー式連続押出し混練機、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出し混練機を設ける事も可能である。
【実施例】
【0020】
以下実施例で本発明の主旨を説明するが、これはこの発明の範囲を限定するものではない。
[実施例1]
1,3−ジオキソラン5モル%を溶解したトリオキサン溶融物を、外側のジャケットが135℃に加熱されたパイプ型リアクターに、毎時5kgで連続的に供給した。パイプ型リアクター内は、スタティックミキサーで内容物を均一に混合されるようになっている。パイプ型リアクターは、前段混合部分、主重合部分、および触媒失活部分の3部より構成されている。このパイプ型リアクターに、95ppmのCFSOH(トリフルオロメタンスルホン酸)を含有するメチラールを、連続的に毎時8.4g供給した。なお、1,3−ジオキソラン5モル%を溶解したトリオキサン溶融物と、95ppmのCFSOHを含有するメチラールは、パイプ型リアクターの前段混合部で均一に混合され、そのまま次の重合部分に供給され、パイプ型ブリアクター内で重合反応を行った。前段の触媒混合および重合反応は135℃とした。パイプ型リアクター内での重合部分の反応混合物の平均滞留時間は1分であった。
次に、この重合反応混合物に0.1質量%のトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNaアルコラートを含む135℃のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)を、毎時10g連続的にパイプ型リアクターに供給した。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)重合反応混合物とトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNa(ナトリウム)アルコラートを含む135℃のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)を均一に混合し、カチオン性重合触媒をトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNaアルコラートに吸着させ、触媒活性を失活化させた。なお、触媒失活部の平均滞留時間は、30秒である。
次に、このトリオキサン、ホルムアルデヒド、重合体を含む重合反応混合物をジャケット温度180℃に加熱した熱管を通して加熱し、ついで内温を180℃に維持したフラッシュポットに導入して、ホルムアルデヒド、トリオキサンを含む揮発性成分を蒸発させた。さらに、溶融状態の重合体を2軸の押出機に導入し、220℃の樹脂温度で、減圧条件下でさらに揮発性成分を除去し、毎時3.6kgのポリアセタール樹脂コポリマーを得た。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0021】
[比較例1]
実施例1のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と温合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)における塩基性化合物をCHONaに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。なお、CHONaのトリオキサン中の濃度は、0.029質量%とし、供給量は毎時10gとした。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、プロトン酸の10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の97.0質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、52g/10minであった。塩基性化合物をCHONaに変更した場合、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値も高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、塩基性化合物がCHONaである場合、トリオキサンへの溶解性が乏しい為にカチオン性重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0022】
[比較例2]
実施例1のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)における混合媒体を流動パラフィンに
変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の92.0質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、94g/10minであった。
トリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)における混合媒体が流動パラフィンである場合、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値が高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、流動パラフィンはトリオキサンへの溶解性が乏しい為にカチオン性重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0023】
[実施例2]
実施例1において、重合反応混合物中のカチオン性重合触媒を失活化させた後、フラッシュポットから蒸発したトリオキサンを含む揮発性成分を120℃加圧条件下で液化させ、ついで、液化物を再度135℃でリサイクルさせた。なお、ここでは、カチオン性重合触媒およびカチオン性重合触媒の失活剤は、次の通りとした。95ppmのCFSOHを含有するメチラールを連続的に毎時11g供給し、0.1重量%のトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNaアルコラートを含む135℃のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)を、毎時13g連続的にパイプ型リアクターに供給した。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、プロトン酸のプロトンの10倍モルに相当する。)その他は、実施例1と同様の装置を用いた。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0024】
[比較例3]
実施例2において、トリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)における塩基性化合物をCHONaに変更した以外は、実施例2同様の操作を行った。なお、CHONaのトリオキサン中の濃度は、0.029質量%とし、供給量は、毎時13gとした。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の96.8質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、55g/10minであった。
塩基性化合物にCHONaを用いた場合、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値が高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、CHONaはトリオキサンへの溶解性が乏しい為にカチオン性重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0025】
[実施例3]
実施例2において、トリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)における混合媒体を、145℃のトリオキサン/ポリアセタール樹脂コポリマー(50/50、質量比)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0026】
[比較例4]
実施例3において、塩基性化合物をCHONaに変更した以外は、実施例3と同様の操作を行った。なお、CHONaのトリオキサン/ポリアセタール樹脂コポリマー中の濃度は、0.029質量%とし、供給量は、毎時13gとした。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、プロトン酸のプロトンの10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の96.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、60g/10minであった。塩基性化合物がCHONaである場合、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値が高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、CHONaはトリオキサンへの溶解性に乏しい為にカチオン性重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0027】
[比較例5]
実施例3において、混合媒体を流動パラフィン/ポリエチレン(50/50、質量比)に変更した以外は、実施例3と同様の操作を行った。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の91.5質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、102g/10minであった。混合媒体が流動パラフィン/ポリエチレンでは、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値が高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、流動パラフィン/ポリエチレンはトリオキサンへの溶解性が乏しい為に重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0028】
[実施例4]
実施例2において、塩基性化合物をメトキシフェノールのK(カリウム)塩に変更し、更に混合媒体を135℃のトリオキサンから180℃のポリアセタール樹脂コポリマー(mp:165℃、メルトインデックス:80g/10min)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、ポリアセタール樹脂コポリマー中のメトキシフェノールのK塩濃度は、0.09質量%であり、毎時13g連続的に供給した。(なお、ここで供給するK塩は、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.5質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0029】
[比較例6]
実施例4において、塩基性化合物をCHONaに変更した以外は、実施例4と同様の操作を行った。なお、CHONaのポリアセタール樹脂コポリマー中の濃度は0.029質量%とし、は毎時13gとした。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の96.3質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、63g/10minであった。塩基性化合物がCHONaである場合、生成重合体の加熱減量が大きく、メルトインデックス値が高い(得られる重合体の分子量が低下している。すなわち、ポリマー主鎖が切断している)。
これらの結果から、CHONaは、重合反応系に対する溶解性が乏しい為にカチオン性重合触媒の失活化がうまくいかないことを示している。
【0030】
[実施例5]
実施例2において、重合触媒を過塩素酸に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、過塩素酸のメチラール中の濃度は63ppmとした。この重合体を、230
℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.5質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、31g/10minであった。
【0031】
[実施例6]
実施例2において、使用したトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNaアルコラートとトリオキサンとの混合物(I)をn−ブチルリチウムとトリオキサンとの混合物に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、n−ブチルリチウムの濃度は、0.034質量%とした。(なお、ここで供給するn−ブチルLiは、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.5質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、33g/10minであった。
【0032】
[実施例7]
実施例2において使用したトリエチレングリコールモノメチルエーテルNaアルコラートとトリオキサンからなる混合物(I)の供給量を毎時5gに変更し、連続的に供給した。それ以外は、実施例2と同様の操作を行った。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、CFSOHのプロトンの5倍モルに相当する。)この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0033】
[実施例8]
実施例2において使用した重合触媒をCFSOHの代わりに(CFSO)O(トリフルオロメタンスルホン酸無水物)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、(CFSO)Oのメチラール中の濃度は、90ppmである。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、28g/10minであった。
【0034】
[実施例9]
実施例2において使用した重合触媒をCFSOHの代わりにアセチルパークロレートに変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、アセチルパークロレートのメチラール中の濃度は90ppmとした。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.4質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、32g/10minであった。
【0035】
[実施例10]
実施例2において使用した重合触媒をCFSOHの代わりに(CFPOH(ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸)に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。なお、ビス(トリフルオロメチル)ホスフィン酸のメチラール中の濃度は128ppmとした。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.2質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、34g/10minであった。
【0036】
[実施例11]
実施例2において使用した重合触媒をCFSOHの代わりにトリフルオロメチルホスホン酸(CFPO(OH))に変更した以外は、実施例2と同様の操作を行った。
なお、トリフルオロメチルホスホン酸のメチラール中の濃度は48ppmとした。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.0質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、36g/10minであった。
【0037】
[実施例12]
実施例1のパイプ型リアクターの失活部に引き続いて、末端不安定部除去部をつけた。カチオン性重合触媒の添加までの操作は実施例1と同様の操作を行い、カチオン性重合触媒の失活化を行った。失活部の平均滞留時間は、30秒であった。
次に、この溶融状態の重合反応混合物を、180℃に加熱されたパイプ型リアクターよりなる末端不安定部の除去工程部に導入した。この工程の入り口に、毎時5gのトリエチルアミン/水(1/4質量比)を供給した。末端不安定部の除去工程部の滞留時間は10分であった。ここで得られた重合反応混合物を2軸の押出機に導入し、ホルムアルデヒド、トリオキサンを含む揮発性成分を減圧条件下で除去し、ポリアセタール樹脂コポリマーを得た。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.9質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、26g/10minであった。
【0038】
[実施例13]
実施例2の未反応トリオキサンの除去・回収部に引き続いて、末端不安定部除去部をつけた。この溶融状態の重合反応混合物を、180℃に加熱されたパイプ型リアクターよりなる末端不安定部の除去工程部に導入した。この工程の入り口に、毎時6gのトリエチルアミンを供給した。末端不安定部の除去工程部の滞留時間は7分であった。
ここで得られた溶融状態の重合反応混合物を2軸の押出機に導入し、ホルムアルデヒド、トリオキサンを含む揮発性成分を減圧条件下で除去し、ポリアセタール樹脂コポリマーを得た。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.9質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、27g/10minであった。
【0039】
[実施例14]
実施例13の6gのトリエチルアミンの代わりに、トリエチルアミン/水(1/4質量比)混合液6gに変更以外は、実施例13と同様の操作を行った。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.9質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値は、27g/10minであった。
【0040】
[実施例15]
実施例13の6gのトリエチルアミンの代わりに、トリエチルアミン/メタノール(1/4質量比)混合液6gに変更以外は、実施例13と同様の操作を行った。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.9質量%であり、メルトインデクッス値は、27g/10minであった。
【0041】
[実施例16]
トリオキサン溶融物を、外側のジャケットが135℃に加熱されたパイプ型リアクターに、毎時5kgで連続的に供給した。パイプ型リアクター内は、スタティックミキサーで内容物が均一に混合されるようになっている。パイプ型リアクターは、前段混合部分、主重合部分、および触媒失活部分の3部より構成されている。また、このパイプ型リアクターに95ppmのCFSOHを含有するメチラールを連続的に毎時11g供給した。なお、トリオキサン溶融物と95ppmのCFSOHを含有するメチラールは、パイ
プ型リアクターの前段混合部で混合され、そのまま次の重合部分に供給されパイプ型リアクター内で重合反応を行った。前段の重合触媒の混合および重合反応は135℃とした。
次に、この重合反応混合物に0.1質量%のトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNaアルコラートを含む135℃のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)を毎時13g連続的にパイプ型リアクターに供給した。(なお、ここで供給するNaアルコラートは、CFSOHのプロトンの10倍モルに相当する。)重合反応混合物とトリエチレングリコールモノメチルエーテルのNa(ナトリウム)アルコラートを含む135℃のトリオキサンに可溶性であり塩基性を示すアルカリ金属を含む化合物と混合媒体としてのトリオキサンとからなる混合物(I)は均一混合され、カチオン性重合触媒の触媒活性を失活化させた。
重合反応生成物中の重合触媒を失活化させた後、フラッシュポットから蒸発させたトリオキサンを含む揮発性成分を蒸発させ、120℃加圧条件下で液化させ、この液化物を再度135℃の温度に加温し重合系に供給し、トリオキサンと混合させリサイクルさせた。未反応のトリオキサンの除去・回収部に引続いて、重合反応混合物を180℃に加熱されたパイプ型リアクターの末端不安定部の除去工程部に導入した。この工程の入り口に、毎時6gのトリエチルアミン/水(1/4質量比)を供給した。末端不安定部の除去工程部の滞留時間は7分であった。ここで得られた溶融状態の重合体混合物を2軸の押出機に導入し、ホルムアルデヒド、トリオキサンを含む揮発性成分を減圧条件下で除去し、ポリアセタール樹脂ホモポリマーを得た。この重合体を230℃の真空下で60分加熱した。
得られた重合体の加熱後のポリマー残量は、加熱前の99.7質量%であり、190℃でのメルトインデクッス値、は27g/10minであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の製造方法は、ポリアセタール樹脂の製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオキサンの重合、もしくはトリオキサンと環状ホルマールとの共重合を一般式ROCHOR(R、Rは炭素数8以下のアルキル基)で示される化合物の存在下で、カチオン性重合触媒を用いて、重合温度を130℃〜200℃とし、加圧条件下で連続的に重合反応を行い、得られた溶融状態の重合体を含む重合反応混合物に、(1)トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物から選ばれる1種もしくは2種以上と、(2)トリオキサンに可溶性である混合媒体とからなる混合物(I)を連続的に添加混合させ、カチオン性重合触媒を吸着させることにより触媒活性を失活化させることを特徴とするポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項2】
上記トリオキサンに可溶性であり塩基性を示す、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物が、ポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのNaアルコラート、あるいはポリエチレングリコールのモノアルキルエーテルのKアルコラート、ビスフェノールAのNa塩、ビスフェノールAのK塩であることを特徴とする請求項1記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項3】
上記カチオン性重合触媒が、パーフルオロアルキルスルホン酸、過塩素酸、有機ホスホン酸、有機ホスフィン酸、又はそれらの酸の誘導体から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項4】
カチオン性重合触媒を吸着させることにより失活せしめた後に、トリオキサンを含む揮発性成分を蒸発させ、この揮発性成分を冷却して液体状態にした後、この液体成分を重合系に回し重合成分として再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項5】
重合体のポリマー末端に存在する不安定部を除去する工程を更に有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記(2)の混合媒体が、トリオキサン及び/又はポリアセタール樹脂コポリマーからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアセタール樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−227894(P2009−227894A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77530(P2008−77530)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】