説明

ポリアゾメチンおよびそのフィルムの製造方法。

【課題】 表面平滑性に優れた高耐熱性ポリアゾメチンおよびそのフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 アゾメチン基に対してオルト位に置換または無置換の水酸基、チオール基またはアミノ基を有するポリアゾメチンおよびそのフィルムを得る。本発明によれば表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)が40nm以下であり、かつ、10%重量減少温度が250℃以上である耐熱性に優れたポリアゾメチンフィルムが得られ、電気・電子部品材料として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面平滑性に優れた高耐熱性ポリアゾメチンフィルムおよびそれを製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性に優れた高分子フィルムとしてアラミドフィルムが知られている。しかし、アラミドをフィルムに加工する方法として、濃硫酸などを溶媒としたアラミド溶液を流延した後、水蒸気を用いて液晶相から等方相へ相転換を行ってフィルムを製造する方法が知られている。しかし、この製造方法は濃硫酸と水の接触という非常に危険な工程を経なければならない。また、この方法では表面平滑性に優れたフィルムの製造が困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポリアゾメチンを製造し、そのポリマー溶液から成形されたポリアゾメチンフィルムを製造し、表面平滑性に優れた高耐熱性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1.下記一般式(5)および/または(6)式で示されるポリアゾメチン。
【化5】

【化6】

但し、Arは、アゾメチン基の窒素原子に接続するベンゼン環においてオルト位に置換または無置換の水酸基、チオール基またはアミノ基を有する芳香族基を表す。Arは、芳香族基を表す。nは10以上の整数を表す。
【0005】
2.下記一般構造式(7)および/または(8)で表されることを特徴とするポリアゾメチン。
【化7】

但し、Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。XはOY基、SY基またはNY基を示す。また、Yは水素原子、アシル基、シリル基、アルキル基、アラルキル基から選ばれる基である。ベンゼン環においてX基とアゾメチン基はトランス位であってもシス位であっても良い。nは10以上の整数である。
【化8】

但し、XはOY基、SY基またはNY基を示す。また、Yは水素原子、アシル基、シリル基、アルキル基、アラルキル基から選ばれる基である。nは10以上の整数である。
【0006】
3.ポリアゾメチン溶液を基板上にキャストしてなるフィルム。
【0007】
4.10%重量減少温度が250℃以上であり、表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)が40nm以下であることを特徴とするポリアゾメチンフィルムである。
【0008】
5.ポリアゾメチン溶液を基板上にキャストしてなるフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、汎用有機溶媒に可溶であり、流延性に優れたポリアゾメチン溶液からフィルムを形成することで、表面平滑性に優れた高耐熱性ポリアゾメチンおよびそのフィルムを提供することを可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリアゾメチンは、主鎖反復単位中に−CH=N−結合を有し、かつ、アゾメチン基の窒素原子に接続するベンゼン環においてオルト位に置換または無置換の水酸基、チオール基またはアミノ基を有するポリアゾメチンであり、具体的には、例えば、前記一般構造式(7)および/または(8)に示されるポリアゾメチンが挙げられる。
【0011】
前記一般構造式(7)、(8)におけるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、トルオイル基、マロニル基、ピバロイル基、グルタリル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、パルミトイル基、アクリロイル基等が挙げられる。シリル基としては、メチルシリル基、エチルシリル基、tert−ブチルシリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0012】
本発明に用いられるポリアゾメチンは、例えば下記の反応式(9)または(10)で示されるように、フェニレンジアミン誘導体とフタルアルデヒドまたはアミノベンズアルデヒド誘導体を有機溶媒中で不活性ガス雰囲気下で反応させることにより得られる。
【0013】
【化9】

【化10】

但し、Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。XはOY基、SY基またはNY基を示す。また、Yは水素原子、アシル基、シリル基、アルキル基、アラルキル基から選ばれる基である。ベンゼン環においてX基とアゾメチン基はトランス位であってもシス位であっても良い。nは整数である。
【0014】
前記一般構造式(7)または(8)で示される本発明に用いるポリアゾメチンの例としては、以下の化合物が挙げられるが、ここに例示した化合物だけに制限されるものではない。
【化11】

【0015】
【化12】

【0016】
【化13】

【0017】
【化14】

【0018】
【化15】






【0019】
ポリアゾメチンを重合する際に用いる溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド基を有するアミド系溶媒、さらにはピリジン、テトラヒドロフラン等の汎用溶媒が挙げられる。また、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン等の溶媒を任意の割合で混合して使用することもできる。
【0020】
フェニレンジアミン誘導体を安定化させるためにこれらの塩酸塩、硫酸塩を用いてポリアゾメチンを重合する場合はピリジンを除いた上記溶媒にピリジン、トリエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基性化合物を添加しても良い。
【0021】
この反応温度は、室温〜150℃で行われる。しかし、反応を促進するため加熱しても良い。最高反応温度は溶媒の沸点で制御できる。150℃を超えると原料および生成物の分解反応も起こるため、140℃以下で行うことが望ましい。
【0022】
また、反応時に生成した水を除くために共沸溶媒や脱水剤を添加して平行をずらすことが望ましい。共沸溶媒は反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、具体的には、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、クロロホルム等を挙げることができる。これらの共沸溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。脱水剤も反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、具体的には、モレキュラーシーブズ、塩化カリウム等を挙げることができる。
【0023】
本発明においてポリアゾメチン溶液をキャストする方法としては、ポリアゾメチンを重合反応後、貧溶媒中へ再沈処理することによって不純物を除去して精製処理を行った後、再び溶媒に溶解し、その溶液を基板上にキャストする方法が挙げられる。また、フェニレンジアミン誘導体の塩酸塩等を用い、塩基性物質を添加して反応を行った場合は、反応の過程でこれらの塩が遊離してくる。そのため、反応液を水へ再沈して塩化物等を除くことが大切である。さらに上記の精製処理を繰り返した後、再び溶媒に溶解し、その溶液を基板上にキャストしても構わない。この際の溶媒としてN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。また、反応終了後、精製処理を行うこと無しに反応溶液をそのまま基板上にキャストしても構わない。
【0024】
本発明に用いるポリアゾメチン溶液をキャストするための基板としては、ガラス、フッ素系樹脂、アルミニウム、鉄、ステンレス等の素材からなる板、シート、フィルム等が挙げられる。
【0025】
基板上にキャストしたポリアゾメチン溶液の溶媒は、常圧または減圧下で加熱することにより除去する。この脱溶媒の際にはポリアゾメチンフィルムが著しく収縮するため、金属等で作られたフレームに固定する方法を利用しても良い。尚、溶媒の除去は、高温で急激に乾燥除去すると内部にクラック等の微細な欠点を生じることがあるため、常温で風乾するか、もしくは緩やかな熱風方式が好ましい。この時の乾燥は真空下で行うこともできる。
【0026】
キャストした基板を貧溶媒と接触させて揮発しにくい溶媒を除くこともできる。この後、上記の如く低温で乾燥させる。貧溶媒は、液相であっても気相であっても良い。ポリアゾメチンの貧溶媒としては、水、メタノール、エタノール等のアルコールやグリコール等が上げられる。
【0027】
本発明においてポリアゾメチン溶液をキャストする方法としては、ポリアゾメチン溶液をダイから押し出し、ロールまたはエンドレスベルトに引き取ることもできる。
キャストしたフィルム状のポリアゾメチンあるいはポリアゾメチン溶液は延伸することもできる。
工程が比較的簡便であるのは、円周状のスリットダイから押し出してブロー延伸する方法である。例えば米国特許第4898924号のような方法が適している。このブロー延伸では吐出方向へのドローダウンと吐出されたチューブの周方向への膨張により2軸延伸が達成される。この際に、チューブの内側にも凝固液を入れて製膜する事がより好ましい。この際に、熱風等で溶剤を蒸発させるか、またはチューブの内側および外側に凝固液を入れて凝固、製膜する事がより好ましい。
【0028】
さらに、ポリアゾメチン溶液をキャストするための基板として可撓性高分子フィルムを支持体フィルムとして用いることができる。スリットダイから押し出されたポリアゾメチン溶液と支持体フィルムと一体化して、一体化した支持体フィルム積層体をテンタークリップで挟み延伸する方法も好ましい。支持体フィルムはポリアゾメチン溶液の両側面に一体化してもよく、片面だけを張り合わせてもよい。両面を張り合わせた場合には、キャスト後に少なくとも片側の支持体フィルムを引き剥がしポリアゾメチン溶液から溶媒を除去する必要がある。
【0029】
この方法に好適な、可撓性高分子フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂等からなるフィルムおよびこれらの多層成形フィルムなどを利用することができる。
【0030】
本発明におけるポリアゾメチンの表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)は40nm以下であり、好ましくは35nm以下、より好ましくは30nm以下である。また、この成形体10%重量減少温度が250℃以上であり半田耐熱温度を有する。
【0031】
以下に実例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の主旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
【0032】
・ ポリアゾメチンの還元粘度(ηsp/C)の測定
ポリアゾメチンを0.2g/dlの濃度になるように脱水したN−メチルピロリドン(窒素雰囲気下、N−メチルピロリドンに対して約10質量%のトルエンを添加し、トルエンが完全に留出するまで共沸蒸留を行い、調製したものを使用した)で溶解・希釈した溶液を、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0033】
(2)表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)
表面あらさの測定は走査型プローブ顕微鏡E-Sweep(SII社製)を用い、DFMモードにより表面形態観察を実施した。カンチレバーはDF20(SII社より供給)を使用した。観察は5μm四方で実施し、Xデータ数及びYデータ数はそれぞれ512とした。得られたデータは傾斜補正を実施した後、付属のソフトウエアで表面粗さ(Ra)を算出した。傾斜補正は付属のソフトウエアによる二次傾斜補正(Auto2)を使用した。観察はランダムに10箇所以上で実施し、Raの平均値を算出した。
【0034】
(3)ポリアゾメチンフィルムの熱分解温度
測定対象のポリアゾメチンフィルムを充分に乾燥したものを試料として、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が10%減る温度を熱分解温度とみなした。
装置名 ; MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 10mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; 窒素
【0035】
(実施例1)
テレフタルアルデヒド4.024g、4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩6.392gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン11mlおよびN−メチルピロリドン11ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.8dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン11mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0036】
(実施例2)
テレフタルアルデヒド4.024g、2−エチル−4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩7.233gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン14mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド14ml中で窒素気流下120℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.9dl/gであった。再びポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド14mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0037】
(実施例3)
テレフタルアルデヒド4.024g、2、5−ジアミノ−1、4−ベンゼンジチオール二塩酸塩7.386gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン12mlおよびN−メチルピロリドン12ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.7dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン12mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0038】
(実施例4)
テレフタルアルデヒド4.024g、1、2、4、5−テトラアミノベンゼン三塩酸塩7.427gおよびモレキュラーシーブス6.500gをN−メチルピロリドン11ml中で窒素気流下20℃、24時間反応させた。この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.5dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン11mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0039】
(実施例5)
イソフタルアルデヒド4.024g、4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩6.392gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン11mlおよびN−メチルピロリドン11ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、生成物を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.6dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン11mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、2時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0040】
(実施例6)
イソフタルアルデヒド4.024g、2−メチル−4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩6.815gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン13mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド13ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.6dl/gであった。再びポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド13mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0041】
(実施例7)
イソフタルアルデヒド4.024g、2、5−ジアミノ−1、4−ベンゼンジチオール二塩酸塩7.386gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン12mlおよびN−メチルピロリドン12ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.7dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン12mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0042】
(実施例8)
イソフタルアルデヒド4.024g、1、2、4、5−テトラアミノベンゼン三塩酸塩7.427gおよびモレキュラーシーブス6.500gをN−メチルピロリドン11ml中で窒素気流下20℃、24時間反応させた。この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.5dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン11mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0043】
(実施例9)
フタルジアルデヒド4.024g、4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩6.392gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン12mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド12ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.4dl/gであった。再びポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド12mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0044】
(実施例10)
フタルジアルデヒド4.024g、2−エチル−4、6−ジアミノレゾルシン二塩酸塩7.233gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン14mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド14ml中で窒素気流下120℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.3dl/gであった。再びポリマーをN,N−ジメチルホルムアミド14mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0045】
(実施例11)
フタルジアルデヒド4.024g、2、5−ジアミノ−1、4−ベンゼンジチオール二塩酸塩7.386gおよび炭酸カリウム4.146gをトルエン12mlおよびN−メチルピロリドン12ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。冷却後、この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.5dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン12mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0046】
(実施例12)
フタルジアルデヒド4.024g、1、2、4、5−テトラアミノベンゼン三塩酸塩7.427gおよびモレキュラーシーブス6.500gをN−メチルピロリドン11ml中で窒素気流下20℃、24時間反応させた。この反応溶液を水200ml中へ再沈して、吸引ろ別を行った。得られた固体を80℃、3mmHgで24時間乾燥させた。ポリマーの還元粘度は0.4dl/gであった。再びポリマーをN−メチルピロリドン11mlに溶解し、ポリマー溶液とした後、5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0047】
(実施例13)
3−アミノー4−ヒドロキシベンゾアルデヒド13.714gをトルエン18mlおよびN−メチルピロリドン18ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。ポリマーの還元粘度は0.6dl/gであった。このポリマー溶液を5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0048】
(実施例14)
4−アミノー3−チオールベンゾアルデヒド15.320gをトルエン23mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド23ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。ポリマーの還元粘度は0.5dl/gであった。このポリマー溶液を5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0049】
(実施例15)
3、4−ジアミノベンゾアルデヒド13.615gおよびモレキュラーシーブス3.250gをN−メチルピロリドン18ml中で窒素気流下20℃、24時間反応させた。ポリマーの還元粘度は0.2dl/gであった。このポリマー溶液を5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0050】
(実施例16)
3−アミノー2−ヒドロキシベンゾアルデヒド13.714gをトルエン18mlおよびN−メチルピロリドン18ml中で窒素気流下130℃、1時間加熱した。ポリマーの還元粘度は0.6dl/gであった。このポリマー溶液を5ml分取して5cm×5cmのアルミニウムプレート上にキャストした。その後、室温で24時間3mmHg、次いで100℃、200℃各1時間3mmHgの環境下で溶媒を留去した。
【0051】
以上より、ポリアゾメチンを製造し、そのポリマー溶液から成形したポリアゾメチンフィルムは、表面平滑性に優れた高耐熱性フィルムである。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明で製造されたポリアゾメチンフィルムは、表面平滑性に優れ、かつ、高耐熱性を有する。
本発明によれば表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)が40nm以下であり、かつ、10%重量減少温度が250℃以上である耐熱性に優れたポリアゾメチンフィルムが得られ、電気・電子部品材料として好適である。
【0054】
また、本発明のポリアゾメチンおよびそのフィルムは、耐久性、発光性、電子輸送性、ホール輸送性等に優れる。それらの特性を活かして、電界発光素子材料等として利用することができる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および/または(2)式で示されるポリアゾメチン。
【化1】

【化2】

但し、Arは、アゾメチン基の窒素原子に接続するベンゼン環においてオルト位に置換または無置換の水酸基、チオール基またはアミノ基を有する芳香族基を表す。Arは、芳香族基を表す。nは10以上の整数を表す。
【請求項2】
下記一般構造式(3)および/または(4)で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリアゾメチン。
【化3】

但し、Rは水素原子、メチル基またはエチル基を示す。XはOY基、SY基またはNY基を示す。また、Yは水素原子、アシル基、シリル基、アルキル基、アラルキル基から選ばれる基である。ベンゼン環においてX基とアゾメチン基はトランス位であってもシス位であっても良い。nは10以上の整数である。
【化4】

但し、XはOY基、SY基またはNY基を示す。また、Yは水素原子、アシル基、シリル基、アルキル基、アラルキル基から選ばれる基である。nは10以上の整数である。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のポリアゾメチン溶液を基板上にキャストしてなるフィルム。
【請求項4】
10%重量減少温度が250℃以上であり、表面あらさ(Ra、算術平均粗さ)が40nm以下であることを特徴とする、請求項4記載のフィルム。
【請求項5】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のポリアゾメチン溶液を基板上にキャストしてなるフィルムの製造方法。


【公開番号】特開2008−266539(P2008−266539A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115337(P2007−115337)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】