説明

ポリアミド、このポリアミドを含む組成物、その使用

【課題】ポリアミドと、このポリアミドを含む組成物と、その使用。
【解決手段】下記一般式:X.Yを有する少なくとも2つの単位から成るポリアミドにおいて、上記ジカルボン酸がASTM規格D6866で規定する再生可能な資源に由来する有機炭素から成ることを特徴とするポリアミド(ここで、Xはアルキル芳香族ジアミンであり、Yはドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、ヘキサデカン二酸(C16)から選択される脂肪族ジカルボン酸である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半芳香族コポリアミドと、その製造方法と、その使用、特に、種々の物品、例えば消費材、特に電気機器、電子機器、自動車、外科機器、パッケージング、スポーツ用品の製造での使用とに関するものである。
本発明はさらに、上記コポリアミドを含む組成物と、この組成物の使用、特に上記物品の一部または全部の製造での使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドがアルキル芳香族ジアミンと二酸との重縮合で得られることは公知である。このポリアミドは一般に化学的、物理化学的、熱的、機械的な特性に優れ、例えば高温での機械強度に優れ、酸素に対する不浸透性に優れているという利点がある。
【0003】
特許文献1(米国特許第US 2002-0142179号明細書)には(i)メタキシレンジアミンと6〜12個の炭素原子を有する二酸との縮合生成物と、(ii) 無水マレイン酸がグラフトしたエチレンとアクリル酸エチルとのコポリマーとの混合物が記載されている。実施例は全てMXD.6をベースにしたものである。
【0004】
特許文献2(欧州特許第EP 1350806号公報)には(i)4〜20の炭素原子を有する二酸が70%以上である二酸とメタキシレンジアミンの縮合生成物と、(ii) スメクタイト(smectit)との混合物が記載されている。実施例は全てMXD.6をベースにしたものである。
【0005】
この種のアルキル芳香族ジアミンから得られるポリアミドはバリヤー特性に優れているので、包装分野で特に有利である。さらに、高温強度に優れているので自動車、電気分野およびエレクトロニクス分野でも有利である。
【0006】
しかし、最近の環境への関心から、石油起源の一次原料を使用して製造することを制限し、できる限り持続可能な原料を用いて製品を製造することに関心が寄せられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第US 2002-0142179号明細書
【特許文献2】欧州特許第EP 1350806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温強度に優れ、吸水性が低くという上記特性を有し、しかも、構造中に再生可能な原料から得られた単位を含むポリアミドを提供することにある。
本発明の上記以外の目的、特徴、観点および利点は以下の説明からより良く理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般に、ポリアミドは少なくとも2つの同一または異なる繰返し単位から成り、これらの単位は対応する2つのモノマーまたはコモノマーから成る。すなわち、ポリアミドはアミノ酸、ラクタムおよび/またはジカルボン酸とジアミンの中から選択される少なくとも2つのモノマーまたはコモノマーから製造される。
【0010】
本発明の対象は、下記一般式:
X.Y
(ここで、Xはアルキル芳香族ジアミンであり、Yはドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、ヘキサデカン二酸(C16)から選択される脂肪族ジカルボン酸である)
を有する少なくとも2つの単位から成るポリアミドにおいて、
上記ジカルボン酸がバイオ起源の炭素(bioresourced carbon)とよばれる、ASTM規格D6866で規定する再生可能な資源に由来する有機炭素から成ることを特徴とするポリアミドにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
すなわち、全く同じX.Y単位だけから成る場合、本発明のポリアミドはホモポリアミドでもよい。X.Y単位が少なくとも2つの別々の単位から成る場合、本発明ポリアミドはコポリアミドでもよい。一般に、コポリアミドは各コモノマーを区別するためにX.Y/Zで表される。本発明のポリアミドはホモポリアミドであるのが好ましい。
【0012】
再生可能な原料は動物または植物の天然物で、人間のスケールでは短時間に再生が可能な資源である。特に、この資源は消費される速度と同程度に速く再生できなければならない。
【0013】
一般に、ポリアミドの決定的な特徴の一つは耐久性にある。一般に、ポリアミドは一般に予定使用寿命が少なくとも10年である用途で使用される。
【0014】
本発明ポリアミドの製造に例えばパーム油のような植物油等の再生可能な資源を使用した場合、光合成時に空気から取込んだ(この場合には植物中に取込んだ)CO2の一定量が原料中に所定期間固定されたとみなすことができ、少なくともポリアミド製品の全使用寿命中、炭素サイクルが維持される。
【0015】
これに対して、化石資源を起源とするポリアミドはその使用寿命の間、大気中の(例えば光合成で捕捉した)CO2を捕らえておくことができない。すなわち、化石資源中に保持していたCO2(化石化炭素)がポリアミドの使用寿命の終わりに(例えば燃焼によって)放出される。その量ポリアミド1トン当たり、約2.5トンになる。
【0016】
従って、ポリアミドの製造に化石原料を使用した場合、使用寿命の終わりに炭素サイクル中へ再放出され、100万年の時間尺度で化石化されていた炭素が放出されることになる。換言すれば、この炭素が炭素サイクルに追加され、バランスを乱すことになる。このメカニズムは蓄積効果に寄与し、温室化現像を悪化させる。
【0017】
本発明ポリアミドは、化石起源の原料でない再生可能な資源からの原料を使用することで、使用寿命の終わりに放出される可能性のあった炭素含有構造物中からだされるCO2の量を化石CO2の量の少なくとも44%減少させることができる。
【0018】
再生可能な原料は、化石燃料から作られた原料とは違って、14Cを含む。生体(動物または植物)から取り出した全ての炭素サンプルは3つのアイソトープ:12C(約98.892%)、13C(約1.108%)および14C(痕跡量:1.2×10-10%)の混合物である。生物組織の14C/12C比は大気のそれと同じである。環境中では14Cは主として2つの形:無機の形すなわち二酸化炭素(C02)の形と、有機の形すなわち有機分子中に一体化された炭素の形で存在する。
【0019】
有機生物体中では炭素が環境と絶えず交換しているので、14C/12C比は新陳代謝によって一定に保たれる。大気中の14Cの比率は一定であるので、その比は生物中でも同じである。生きている間、生物は12Cと一緒に14Cも吸収し、14C/12C比の平均値は1.2×l0-12に等しい。
【0020】
12Cは安定しており、サンプル中の12C原子の数は経時敵に一定である。一方、14Cは放射性であり(生物中の炭素の1グラム当たり毎分、13.6個の14C同位元素が崩壊)、サンプル中のこの原子の数は下記の式に従って時間(t)の関数で減少する:
【0021】
n=no exp(−at)
(ここで、noは材料(死ぬ運命にある生物、動物または植物)の14Cの数であり、nは時間tの開始時に残っている14C原子の数であり、aは壊変定数(または放射性定数)で、半減期に関連する)
【0022】
半減期(または半減時間)は生物種の放射性核または不安定粒子の数が壊変によって半分に減少するまでの期間であり、この半減期T1/2は壊変定数aに関連し、式aT1/2=In2で表される。14Cの半減期は5730年である。
【0023】
14Cの半減期(T1/2)から考えると、植物出発材料の抽出からポリマー製造まで、さらにはその使用終了時まで、14Cの含有量は一定である。
【0024】
従って、原料中に14Cが存在することは、その量とは別に、それを構成する分子の源の情報すなわちバイオ起源であり、再生可能な原料起源および非化石原料起源であることを示す情報を提供する。
【0025】
本発明ポリアミドは、ポリアミドの全炭素重量に対して再生可能な原料を起源とするバイオ起源の有機炭素(すなわち有機分子中に一体化された炭素)の重量が少なくとも20%である。この量はASTM規格D6866−06(Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis)に記載の方法の一つで14Cの含有量を求めることによって証明できる。この文書野内容は本明細書で引用したものとする。
【0026】
このASTM規格D6866−06にはバイオベース(biobased)カーボンとよばれる再生可能な原料に由来する有機炭素の測定方法は3つある。本発明ポリアミドの場合に適した比率はこの規格に記載の質量分析(マススペクトロメトリー)および液状シンチレーションスペクトロメトリ法で測定するのが好ましい。
【0027】
原料中に14Cが存在することは、その量とは別に、それを構成する分子の一定の成分が再生可能な原料起源および非化石原料起源であることを示す。ASTM規格D6866に記載の方法で行う測定によって、再生可能材料から得られるモノマーまたは出発材料と、化石原料から得られるモノマーまたは出発材料とを区別できる。これらの測定は試験の役目をする。
【0028】
従って、再生可能な原料から得られるジカルボン酸Yを使用することで、石油化学で得られた同じ二酸を用いて得た従来法のポリアミドと同じ機械特性、化学特性および熱特性を有するポリアミドが得られ、持続可能な開発という観点を満たし、化石資源の使用量を制限することができる。
【0029】
植物起源の原料は本質的に偶数の炭素原子を有する化合物から成るという利点がある。これに対して鉱油留分からのモノマーは偶数の炭素原子と奇数の炭素原子の両方から成る不純物を含む。
【0030】
従って、植物原料を起源とする製品の加工時に抜き出された不純物は本質的に偶数の炭素原子数を有する。これに対して化石原料のモノマー中に奇数の炭素原子数を有する不純物が存在すると、最終ポリアミドの高分子構造に直接的な影響が出で、構造の解体に至ることになる。その結果、結晶化度、融解点、ガラス遷移温度等のポリアミドのいくつかの特性に影響が出る。
【0031】
ポリアミドのYモノマーはASTM規格D6866に規定する再生可能な原料を起源とする二酸から得られる。本発明のポリアミドは再生可能なバイオ起源(bioresourced)の含有量は、「%Corg.renew」で表される有機炭素の百分比が厳密にゼロより高いことが必要である。この%Corg.renewは下記の式(I)を満足する:
【0032】
【数1】

【0033】
(ここで、
i=ASTM D6866規格で100%再生可能な出発材料から得られる一つまたは複数のモノマー
j=ASTM D6866規格で100%化石出発材料から得られる一つまたは複数のモノマー、
k=ASTM D6866規格で一部が再生可能な出発材料から得られる一つまたは複数のモノマー、
Fi、Fj、Fk=コポリアミド中の各モノマーi、j、kのモル分率、
Ci、Cj、Ck=コポリアミド中の各モノマーi、j、kの炭素数(または重量)、
Ck’=一つまたは複数のモノマーk中のASTM D6866規格で再生可能な有機炭素原子数(または重量))
【0034】
(再生可能または石油)の種類、すなわち各モノマー(i、j、k)の起源はASTM規格D6866の方法の一つに従って決定される。
【0035】
(コ)モノマーXおよびYは化(I)ではモノマーi、jおよびkである。本発明ポリアミドの%Corg.renewが20%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上であるのが好ましい。
【0036】
換言すれば、本発明ポリアミドでは、再生可能な資源からの炭素の重量(または原子の数)がポリアミドの炭素の全重量(または全原子数)に対して少なくとも20重量%(または原子数、好ましくは少なくとも50重量%(または原子数)、さらに好ましくは少なくとも55重量%(または原子数)、特に好ましくは少なくとも60重量%(または原子数)であるのが好ましい。
【0037】
本発明ポリアミドの%Corg.renewが20%以上、特に50%以上の場合、ASTM D6866規格でJBPA「バイオマスPLA」の認証を得るための条件を満たす。また、本発明ポリアミドにはJORA協会の「バイオマスベース」のラベルを貼ることができる。
【0038】
例えば、上記(コ)モノマーは再生可能な資源は例えば植物油または澱粉またはセルロースのような天然多糖から得られ、澱粉は例えばとうもろこしまたはジャガイモから抽出できる。これらの(コ)モノマーまたは出発材料は種々の加工方法、特に化学的方法、酵素法またはバイオ発酵法によって得ることができる。
【0039】
C12二酸(ドデカンジオン酸)はドデカンジオン酸(ラウリン酸ともよばれる)のバイオ発酵で得られ、このラウリン酸は例えば椰子の実やココナッツから作られるリッチオイルから抽出できる。
【0040】
C14二酸(テトラデカン二酸)は例えばミリスチン酸のバイオ発酵で得ることができ、このミリスチン酸は例えば椰子の実やココナッツから作られるリッチオイルから抽出できる。
【0041】
C16二酸(ヘキサデカン二酸)はパルミチン酸のバイオ発酵で得られ、このパルミチン酸は主として例えばパーム油中に存在する。
【0042】
一塩基酸を二酸に変換するためには例えば変成酵母Candida tropicalisを使用することができる。下記特許文献が参照できる。
【特許文献3】国際特許第WO 91/6,660号公報
【特許文献4】米国特許第US 4 474 882号明細書
【0043】
本発明の第一態様では、ポリアミドは上記の式X.Yを有するホモポリアミドである。特に、本発明ポリアミドは式X.YにおいてXがアルキル芳香族ジアミンを表し、Yがドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)およびヘキサデカン二酸(C16)の中から選択される直鎖脂肪族ジカルボン酸を表す。
【0044】
アルキル芳香族ジアミンはメタキシレンジアミン(MXDまたは1,3-キシレンジアミンともよばれる)およびパラキシレンジアミン(PXDまたは1,4-キシレンジアミンともよばれる)の中から選択される。
【0045】
本発明の好ましいポリアミドは式:MXD.12、MXD.14、MXD.16およびPXD.12を有するホモポリアミドである。
【0046】
モノマーXおよびモノマーYのモル比は化学量論であるのが好ましい。
【0047】
本発明のホモポリアミドは再生可能な資源から得られる(必要に応じて化石資源から得られる物を含むこともできる)Yモノマーすなわちドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)またはヘキサデカン二酸(C16)を含む。このホモポリアミドはASTM規格D6866に規定する再生可能な資源から得られるYモノマーのみから成るのが好ましい。
【0048】
本発明の第二態様では、本発明ポリアミドはコポリアミドで、下記一般式を有する少なくとも2つの別々の単位から成ることができる:
X.Y/Z
[ここで、
XおよびYが上記定義のもの、
Zはアミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位および式(Caジアミン)(Cb二酸)を有する単位の中から選択される(ここで、aはジアミンの炭素数、bは二酸の炭素数で、aとbの各々は4〜36の間の数である)]
【0049】
本発明コポリアミドは再生可能な資源からのYモノマーからなり、必要に応じて化石資源からのものも含むことができる。YモノマーはASTM規格D6866に規定の再生可能な資源であるバイオ起源(bioresourced)の炭素のみから成るのが好ましい。
【0050】
Zがアミノ酸から得られる単位を表す場合、Zは9−アミンノノナン酸(Z=9)、10−アミノデカン酸(Z=10)、10−アミノウンデカン酸(11で表示)、12−アミノドデカン酸(Z=12)、11−アミノウンデカン酸(Z=11)およびその誘導体、特にN−ヘプチル−11−アミノウンデカン酸の中から選択できる。
【0051】
アミノ酸として2、3、それ以上の複数のアミノ酸の混合物を考えることもできる。この場合、形成されるコポリアミドはそれぞれ4、5、それ以上の単位から成る。
【0052】
Zがラクタムから得られる単位を表す場合、Zはピロリジノン、ピペリジノン、カプロラクタム(Z=6)、エナントラクタム、カプリロラクタム、ペラルゴラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、ラウリルラクタム(Z=12)の中から選択できる。
【0053】
可能な組合せの中では下記式の一つの中から選択されるコポリアミドが特に重要である:MXD.12/11、MXD.12/12、MXD.12/6、MXD.14/11、MXD.14/12およびMXD.14/6。
【0054】
本発明の有利な変形例では、最終コポリアミド中のZのモル含有量は0(含まない)と80%(含む)との間、アルキル芳香族ジアミンXのモル含有量は50(含まない)と10%(含む)との間、Y二酸のモル含有量は50(含まない)と10%(含む)との間である。
【0055】
Z単位が式(Caジアミン).(Cb二酸)を有する単位の場合、ジアミンが脂肪族で直鎖であれば、(Caジアミン)は式:H2N−(CH2)a−NH2を有する。
【0056】
(Caジアミン)はブタンジアミン(a=4)、ペンタンジアミン(a=5)、ヘキサンジアミン(a=6)、ヘプタンジアミン(a=7)、オクタンジアミン(a=8)、ノナンジアミン(a=9)、デカンジアミン(a=10)、ウンデカンジアミン(a=11)、ドデカンジアミン(a=12)、トリデカンジアミン(a=13)、テトラデカンジアミン(a=14)、ヘキサデカンジアミン(a=16)、オクタデカンジアミン(a=18)、オクタデセンジアミン(a=18)、エイコサンジアミン(a=20)、ドコサンジアミン(a=22)および脂肪酸から得られるジアミン野中から選択する。
【0057】
(Caジアミン)が脂環族の場合、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミンシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACMまたはMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)およびイソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)の中から選択をされる。また、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンから成る炭素骨格を有することもできる。脂環族ジアミンのリストは下記文献に記載されているが、下記文献に記載のものに限定されるものではない。
【非特許文献1】"Cycloaliphatic Amines" (Encyclopaedia of Chemical Technology, Kirk-Othmer, 4th Edition (1992), pp. 386-405)
【0058】
(Caジアミン)がアルキル芳香族化合物の場合には、1,3-キシリレンジアミンおよび1,4-キシリレンジアミンの中から選択することができる。
【0059】
(Cb二酸)モノマーが脂肪族で直鎖の場合には、琥珀酸(y=4)、ペンタン二酸(y=5)、アジピン酸(y=6)、ヘプタン二酸(y=7)、オクタン二酸(y=8)、アゼライン酸(y=9)、セバシン酸(y=10)、ウンデカン二酸(y=11)、ドデカン二酸(y=12)、ブラシリック酸(y=13)、テトラデカン二酸(y=14)、ヘキサデカン二酸(y=16)、オクタデカン二酸(y=18)、オクタデセン二酸(y=18)、エイコサン二酸(y=20)、ドコサン二酸(y=22)および36個の炭素を含む脂肪酸の二量体の中から選択される。
【0060】
モノマー(Cb二酸)がドデカン二酸(y=12)、テトラデカン二酸(y=14)またはヘキサデカン二酸(y=16)の場合、それらは再生可能な資源および/または化石起源の材料にすることができる。
【0061】
上記脂肪酸の二量体は長鎖炭化水素を有する不飽和一塩基性脂肪酸(リノール酸およびオレイン酸)のオリゴマー化または重合によって得られるダイマー化された脂肪酸で、特に、下記文献に記載されている。
【特許文献5】欧州特許第EP 0 471 566号公報
【0062】
二酸が脂環族の場合には、ノルボルニルメタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルプロパン、ジ(メチルシクロヘキシル)、ジ(メチルシクロヘキシル)プロパンの炭素化骨格を有することができる。
【0063】
二酸が芳香族の場合には、テレフタル酸(Tで表示)、イソフタル酸(Iで表示)およびナフタレン二酸の中から選択される。
【0064】
(Caジアミン).(Cb二酸)単位が単位X.Yと厳密に同じである特定の場合、CaジアミンはXと同じアルキル芳香族ジアミンで、Cb二酸はY二酸として同じ二酸で、後者はASTM規格D6866に規定する再生可能な材料起源のものか、および/または、化石資源起源のものである場合は当然除かれる。事実、この特定の場合には本発明の第一態様ですでに述べたものと同じホモポリアミドが入る。
【0065】
Zが単位(Caジアミン).(Cb二酸)であるコポリアミドX.Y/Zの場合の中では式:MXD.12/PXD.12、MXD.14/PXD.14、MXD.12/6.12、MXD.12/10.12、MXD.12/12.12、MXD.12/MXD.6、MXD.12/MXD.10、MXD.12/10.10およびMXD.12/6.10の中から選択される一つのコポリアミドが挙げられる。
【0066】
ポリアミドを定義するのに用いる命名法は当業者に周知の下記文献に記載されている(特に、第3頁の表2を参照)。
【非特許文献2】Plastics,Polyamides (PA) for moulding and extrusion,Part 1: Designation], particularly on page 3 (Tables 1 and 2)
【0067】
本発明の別の観点から、本発明コポリアミドはさらに、一般式を有する少なくとも一つの第3の単位を含む:
X.Y/Z/A
(ここで、
Aはアミノ酸、ラクタムから得られる単位および式(Cdジアミン).(Ce二酸)から得られる単位の中から選択され、dはジアミンの炭素数、eは二酸の炭素の数、dおよびeの各々は4〜36の数である。
【0068】
式X.Y/Z/Aでは、上記の(コ)モノマーまたはX.Y単位およびZに記載のものが参照できる。
【0069】
この同じ式でA単位は上記定義の単位Zと同じ意味を有する。単位Aが単位Zと全く同一である特別なケースは当然除かれる。コポリアミドX.Y/Z/Aの可能な組合せの中では特に下記の式の中から選択されるコポリアミドがあげられる:MXD.12/6/6.12、MXD.12/11/6.12、MXD.12/12/6.12、MXD.12/6/10.12、MXD.12/11/10.12、MXD.12/12/10.12、MXD.12/6/MXD.6、MXD.12/11/MXD.6、MXD.12/12/MXD.6、MXD.12/6/MXD.10、MXD.12/11/MXD.10、MXD.12/12/MXD.10、MXD.12/6/12.12、MXD.12/11/12.12およびMXD.12/12/12.12。
【0070】
ZおよびA単位は化石資源起源のものでも、再生可能な資源に由来するバイオ起源のものでもよいが、後者の量が増加するほど、最終コポリアミドの有機炭素の比率が増加する。
【0071】
本発明はさらに、上記定義のポリアミドの製造方法にも関するものである。本発明方法は、再生可能な資源に起因する炭素から成るドデカン二酸(C12)酸、テトラデカン二酸(C14)およびヘキサデカン二酸(C16)の中から選択される少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸とアルキル芳香族ジアミンとの重縮合段階を少なくとも一つ有する。
【0072】
上記製造方法では、上記重縮合段階の前に下記の2つのステップ
追加することができる:
(a) 再生可能な原料、例えば植物または動物の油から脂肪族一塩基酸を得て、必要に応じて精製する段階、
(b) 上記段階で得られた脂肪族一塩基酸から例えば発酵によって二酸を性ゾする段階。この二酸を重縮合してアルキル芳香族ジアミンにする。
【0073】
本発明はさらに、本発明の少なくとも一つのポリアミドを含む組成物にも関するものである。本発明組成物は少なくとも一種の第2のポリマーをさらに含むこともできる。
【0074】
上記の第2のポリマーは半結晶ポリアミド、非晶形のポリアミド、半結晶コポリアミド、非晶形のコポリアミド、ポリエーテル・アミド、ポリエステル・アミドおよびそれの混合物から選択できる。
【0075】
第2のポリマーはASTM規格D6866に規定する再生可能な原料から得られるものであるのが好ましい。特に、この第2のポリマーは変成および/またを未変成の澱粉、セルロースまたは酢酸セルロースおよびその誘導体、例えばセルロースエーテル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸の中から選択できる。
【0076】
本発明組成物はさらに、少なくとも一種の添加剤を含むことができる。この添加剤は安定剤、特に紫外線安定剤、充填剤、繊維、染料、可塑剤、耐衝撃剤、界面活性剤、顔料、ブルーイング剤、抗酸化剤、天然ワックスおよびこれらの混合物の中から選択できる。
【0077】
充填剤としては特にシリカ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、膨張グラファイト、酸化チタンまたはガラスビーズをあげることができる。この添加剤は天然物か、ASTM規格D6866に定義の再生可能な資源を起源とするものが好ましい。
【0078】
本明細書に記載のコモノマーまたは出発材料(アミノ酸、ジアミン、二酸)は、N-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸、脂肪酸二量体および脂環式ジアミンを除いて、その全てまたは一部が2-メチル-15-ジアミノペンタンのように部分的に不飽和で分岐することが考えられる。
【0079】
C18ジカルボン酸は飽和したオクタデカン二酸または不飽和なオクタデセン二酸にすることもできる。
【0080】
本発明ポリアミドまたは本発明組成物は、構造物を製造するのに用いることができる。この構造物は本発明ポリアミドだけまたは本発明組成物だけで作る場合には単一層構造物でもよい。少なくとも2つの層から成る場合、上記構造物は多層構造でもよく、その多層構造の少なくとも一層が本発明ポリアミドまたは本発明組成物で作る。単一層または多層の構造物は繊維、フィルム、チューブ、中空体、射出成形品の形にすることができる。
【0081】
本発明ポリアミドまたは本発明組成物は、電気機器および電子機器、例えば電話、コンピュータ、マルチメディアシステムの要素の全部または一部
形成するのに使用できる。
【0082】
本発明ポリアミドおよび本発明組成物は、従来法の通常の方法で製造できる。特に下記文献に記載の方法が使用できる。
【特許文献6】ドイツ特許第DE 4318047号公報
【特許文献7】米国特許第US6143862号明細書
【0083】
以下、本発明の実施例で説明するが、以下の実施例は単なる例示であって、本発明がそれに限定されるものではない
【実施例】
【0084】
各種ポリアミドおよびコポリアミドの製造(テストA〜H)
テストA〜Hの全部または一部で使用するモノマーは下記である:
(1)メタキシレンジアミン([表]ではMXDで表示)(CAS 1477-55-0)DKSH社から供給。
(2)パラキシレンジアミン([表]ではPXDで表示)(CAS 539-48-0)、Aldrich社から供給。
(3)再生可能な資源由来のドデカン二酸([表]ではDC12で表示)(CAS693-23-2)中国のBiotechnology社から供給。
(4)再生可能な資源由来のテトラデカン二酸([表]ではDC14で表示)(CAS 821-38-5)、中国のBiotechnologyから供給。
(5)セバシン酸([表]ではDC10で表示)(CAS 111-20-6)、Sun Chemie社から供給。
(6)デカンジアミン([表]ではDA10で表示)(CAS 646-25-3)、Sun Chemie社から供給。
(7)カプロラクタム([表]ではL6で表示)(CAS 105-60-2)、BASF社から供給。
(8)11-アミノウンデカン酸([表]ではA11で表示)(CAS 105-60-2)、Arkema社から供給。
(9)ラウリルラクタム([表]ではL12で表示)(CAS 947-04-6)、Arkema社から供給。
【0085】
[表1]に示す特定組成物(A〜H)に応じた複数のモノマーから各種のホモポリアミドおよびコポリアミドを製造した。
以下、実施例A(MXD.12)の製造方法を詳細に説明するが、この方法はA〜Hの全ての実施例に適用できる。
【0086】
下記のモノマー:14.1 kg(103.5モル)のメタキシレンジアミンと、23.8kg(103.5モル)のドデカンジオン酸と、500gのH2Oとを攪拌機を備えた反応装置に入れた。得られた混合物を不活性雰囲気下に置き、240℃で最大30バール圧力下で加熱した。1時間保持した後、混合物を2時間かけて大気圧まで膨張させた。ポリマーが所望粘度に達するまで窒素フラッシングしながら275℃で重縮合を約2時間続けた。
【0087】
【表1】

【0088】
2.化石および植物起源の二酸サンプル中に存在する不純物比率の比較
下記の二酸サンプルを分析した。
(1)再生可能な資源またはバイオ起源のドデカン二酸を下記の方法で製造した:先ず、椰子油またはパーム油からラウリン酸を抽出する。適当な微生物を使用してバイオ発酵によってラウリン酸からドデカン二酸を得る。この二酸を溶媒なしにアムモニアおよび少なくとも一種の強塩基の存在下アミン化する。
(2)化石起源のドデカン二酸、
(3)再生可能な資源またはバイオ起源のテトラデカン二酸を下記の方法で製造した:椰子油またはパーム油からミリスチン酸を抽出する。ミリスチン酸から適当な微生物を使用してバイオ発酵によってテトラデカン二酸を得る。この二酸を溶媒なしにアムモニアおよび少なくとも一種の強塩基の存在下アミン化
(4)化石起源のテトラデカン二酸。
【0089】
これらの全て化合物は従来はアセトニトリル、トリメチルアミンおよびビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドの混合物シリル化で得ていた。
【0090】
得られる各化合物のサンプルは質量分析装置にガスクロマトグラフィを連結して半定量的に分析した。使用した内部標準はTinuvin 770であり、カラムは長さが50mのCP-SIL 5CB基型(Varian)である。
この分析で脂肪族二酸タイプの不純物の一定数を同定できる。不純物は偶数および奇数の炭素原子数のものを含む。相対含有量を半定量的に比較した。すなわち、分析した各サンプルに対して下記の比Rを計算した:

結果は[表2]に示した。
【0091】
【表2】

【0092】
この分析結果は、植物起源の化合物の場合、奇数炭素数を含む不純物の比率が低いことを示しており、この化合物から製造したポリアミドの高分子構造が小さくならないようにする貢献をしている。
【0093】
3.炭素サイクルから出る大気CO2の価値
[表3]は本発明ポリアミド1トンを製造下時に炭素サイクルから「除去される」大気CO2の量をまとめて示してる。
【0094】
【表3】

【0095】
4.寿命終了時に潜在的に放出れるCO2の量の価値
式:C203022の繰返し単位を有するMXD.12で測定した。繰返し単位のモル重量:330グラム/モル、炭素C質量:240グラム/モル、全C%=72.73%。
【0096】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
X.Y
(ここで、Xはアルキル芳香族ジアミンであり、Yはドデカン二酸(C12)、テトラデカン二酸(C14)、ヘキサデカン二酸(C16)から選択される脂肪族ジカルボン酸である)
を有する少なくとも2つの単位から成るポリアミドにおいて、
上記ジカルボン酸がASTM規格D6866で規定する再生可能な資源に由来する有機炭素から成ることを特徴とするポリアミド。
【請求項2】
ポリアミドの炭素の全重量に対する再生可能な資源に由来する炭素の重量が少なくとも55%、好ましくは少なくとも50%、特に少なくとも20%である請求項1に記載のポリアミド。
【請求項3】
モノマーXがメタキシレンジアミンおよびパラキシレンジアミンから選択される請求項1または2に記載のポリアミド。
【請求項4】
ポリアミドがホモポリアミドである請求項1〜のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項5】
式:MXD.12、MXD.14、MXD.16およびPXD.12(ここで、MXDはメタキシレンジアミンを表し、PXDはパラキシレンジアミンを表す)で表される請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリアミド。
【請求項6】
下記一般式を有する少なくとも2つの異なる単位から成るコポリアミドである請求項1〜3のいかなる一つに記載のポリアミド:
X.Y/Z
(ここで、XおよびYは上記で定義のもの、Zはアミノ酸から得られる単位、ラクタムから得られる単位および式(Caジアミン).(Cb二酸)を有する単位の中から選択され、aはジアミンの炭素数、bは二酸の炭素数、aおよびbの各々は4〜36の数である)
【請求項7】
下記の式:MXD.12/6、MXD.12/11、MXD.12/12、MXD.12/10.12、MXD.12/MXD.6、MXD.12/MXD.10(ここで、MXDはメタキシレンジアミン、PXDはパラキシレンジアミンである)の中から選択されるコポリアミドである請求項6に記載のポリアミド。
【請求項8】
ASTM規格D6866に規定する再生可能な資源に起因する炭素から成るドデカン二酸(C12)酸、テトラデカン二酸(C14)およびヘキサデカン二酸(C16)の中から選択される少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸とアルキル芳香族ジアミンとの重縮合段階を少なくとも一つ有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミドの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも一つのポリアミドを含む組成物。
【請求項10】
半結晶または非晶質なポリアミド、半結晶または非晶質なコポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエステルアミドおよびこれらの混合物の中から選択される少なくとも一種の第2のポリマーをさらに含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
第2のポリマーがASTM規格D6866に規定する再生可能な資源から得られる請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
充填剤、繊維、着色剤、安定剤、特に、紫外線安定剤、可塑剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、耐衝撃剤、抗酸化剤、天然ワックスおよびこれらの混合物の中から選択される添加剤を少なくとも一種さらに含み、好ましくはこれら添加剤が天然およびASTM規格D6866に規定する再生可能な資源に由来するもの手ある請求項9〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリアミドまたは請求項9〜12のいずれか一項に記載の組成物の、単一層構造物または多層構造物の少なくとも一つの層での使用。
【請求項14】
上記構造物が繊維、フィルム、チューブ、中空体、射出成形品の形をしている請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2011−527369(P2011−527369A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517199(P2011−517199)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051310
【国際公開番号】WO2010/004194
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】