説明

ポリアミドの製造方法

【課題】分子量分布が狭く、色調の低下が抑制されており、副生成物であるトリアミン生成量が少ないポリアミドの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリアミドの製造方法は、以下の工程(i)〜(iii)を、この順に含むことを特徴とする。
工程(i):モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上の温度で混合し、混合液を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合液を、生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成および前記塩の重合による低重合体の生成をおこないながら、生成した塩および低重合体を破砕し、塩および低重合体の破砕混合物を得る工程。
工程(iii):工程(ii)で得られた破砕混合物を、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃未満の温度で溶融押出により高分子量化する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸およびジアミンを主成分とするポリアミドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9Tといった比較的融点の高いポリアミドは、耐熱性を要求される分野で広く用いられている。例えば、ナイロン46は、その成形加工が容易であることから、産業資材用繊維や衣料用繊維に用いられている。ナイロン6T、ナイロン9Tは、低吸水性で寸法安定性が高いことから、電気・電子部品、自動車部品用成形品に用いられている。
【0003】
上記のような比較的高融点のポリアミドの製造方法としては、例えば、水の存在下で、ジカルボン酸成分とジアミン成分を、融点以下の温度で重合して低次縮合物を得、該低次縮合物を固相重合に付することにより所望の重合度のポリマーを得る方法が開示されている(特許文献1)。しかしながら、このような製造方法においては、重合時に水を加えるため、低次縮合物調製後に水を留去する工程が必要であり、工程の煩雑化を招くという問題があった。また、固相重合によりポリアミドを得るため、長時間を要するという問題があった。
【0004】
加えて、特許文献1においては、水を留去した後、低次縮合物を取り出し、粉砕した後、別の反応容器で固相重合する工程も必要となる。そのため、水を加えない場合に比べて、反応装置の容量を最大限に用いることができず、得られるポリアミドの生成量に比べて、容量が大きな反応装置が必要になるという問題もあった。さらに、重合時に水を大量に添加すると、非特許文献1に示唆されているように、得られるポリアミド中にトリアミン構造が副生し易くなり、副生成物であるトリアミンに起因して、結晶性が低下したりゲル化が生じたりする問題があった。
【0005】
一方、特許文献2には、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸を段階的に昇温させ、溶媒を用いずに芳香族ポリアミドを直接合成する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2においては、記載された反応温度(300〜330℃)より高い融点を有するポリアミドを重合により得る場合、ポリアミドが塊状化し、反応が均一に進行しない。そのため、生成したポリアミドの分子量分布が広くなるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の場合においては、上記のようにポリアミドが塊状化した場合、反応容器から取り出すためには、反応温度を350℃以上とする必要がある。このような350℃以上という温度下においては、ポリアミド中のアミド結合の分解が促進され色調が悪くなるという問題があった。また、記載された反応温度(300〜330℃)以下の融点を有するポリアミドを重合により得る場合においても、得られるポリアミドの種類によっては、ポリアミド中のアミド結合の分解が促進され、色調が悪くなるという場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−348427号公報
【特許文献2】特開2009−256610号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】高分子化学 第277号 第318頁(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、ジカルボン酸およびジアミンを主成分とし、副生成物であるトリアミン生成量が少なく分子量分布が狭いポリアミドを、色調の低下を抑制しつつ、短時間で生産性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
【0011】
(1) 以下の工程(i)〜(iii)を、この順に含むことを特徴とする、ジカルボン酸およびジアミンを主成分とするポリアミドの製造方法。
工程(i):モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上の温度で混合し、混合液を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合液を、生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成および前記塩の重合による低重合体の生成をおこないながら、生成した塩および低重合体を破砕し、塩および低重合体の破砕混合物を得る工程。
工程(iii):工程(ii)で得られた破砕混合物を、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃未満の温度で溶融押出により高分子量化する工程。
(2)融点が250℃以上のポリアミドを生成することを特徴とする(1)記載のポリアミドの製造方法。
(3)工程(ii)において、破砕混合物を構成する塩および低重合体の体積平均粒径が5mm以下になるように破砕することを特徴とする(1)または(2)記載のポリアミドの製造方法。
(4)工程(i)を、モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとの合計100質量部に対して、5質量部以下の水および/または有機溶剤の存在下でおこなうことを特徴とする(1)〜(3)いずれかに記載のポリアミドの製造方法。
(5)工程(ii)を、大気圧以上の圧力下でおこなうことを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のポリアミドの製造方法。
(6)工程(iii)において、工程(ii)で得られた塩および低重合体の破砕混合物を連続して溶融押出により高分子量化することを特徴とする(1)〜(5)いずれかに記載のポリアミドの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミドの製造方法によれば、ジカルボン酸およびジアミンを主成分とするポリアミドを、短時間で、かつ生産性よく製造することができる。また、得られたポリアミドは、分子量分布が狭く、色調の低下が抑制されており、加えて、副生成物であるトリアミンの生成量が少ないという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
本発明のポリアミドの製造方法は、ジカルボン酸とジアミンとをモノマーの主成分として用いるものである。
【0014】
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられる。脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンが挙げられる。脂肪族ジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が挙げられる。脂環式ジアミンとしては、シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、オルトキシリレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。
【0016】
前記のジカルボン酸とジアミンの組み合わせで得られるポリアミドとしては、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612などの脂肪族ポリアミド、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン6N、ナイロン9T、ナイロン9I、ナイロン9N、ナイロン10T、ナイロン10I、ナイロン10N、ナイロン12T、ナイロン12I、ナイロン12N、MXD6ナイロン、PXD6ナイロン等の半芳香族ポリアミドが挙げられる。ここで、Tはテレフタル酸、Iはイソフタル酸、Nはナフタレンジカルボン酸、MXDはメタキシリレンジアミン、PXDはパラキシリレンジアミンを示す。ポリアミドは、2種以上のポリアミドが共重合されたものでもよい。
【0017】
本発明の製造方法によれば、高い融点を有するポリアミドを得ることができる。具体的には、融点が250℃以上のポリアミドを得ることが好ましく、融点が300℃以上のポリアミドを得ることがより好ましい。融点が250℃以上のポリアミドとしては、例えば、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン12T等が挙げられる。
【0018】
本発明の製造方法は、以下の(i)〜(iii)の3工程をこの順に含むものである。
工程(i):モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上の温度で混合し、混合液を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合液において、生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成および前記塩の重合による低重合体の生成をおこないながら、生成した塩および低重合体を破砕し、塩および低重合体の破砕混合物を得る工程。
工程(iii):工程(ii)で得られた破砕混合物を、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃未満の温度で溶融押出により高分子量化する工程。
【0019】
工程(i)は、モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上で混合し、混合液を得る工程である。混合温度を融点の低い方のモノマーの融点以上とすることで、ジカルボン酸とジアミンは、一方のモノマーが他方のモノマーを溶媒として溶解している状態となるか、あるいは両方のモノマーが液状で混合している状態となるか、液体のモノマーと固体のモノマーとが混合している状態となる。
【0020】
工程(i)において、混合温度は、いずれか一方のモノマーの融点以上とすることが必要である。混合温度が、融点の低い方のモノマーの融点未満の温度である場合、両モノマーがいずれも固体の状態で存在するため、ジアミンとジカルボン酸を均一に混合することが困難となる。そのため、続く工程(ii)において塩が生成されないか、もしくは塩が生成されたとしても物性等が不均一な塩が得られてしまう。その結果、この塩の重合により得られたポリアミドの低重合体においては、重合度の斑が大きくなる。その結果、物性等が不均一な低重合体が得られてしまい、得られるポリアミドの分子量分布が広くなってしまうため好ましくない。
【0021】
工程(i)において、混合温度は、{(融点の低い方のモノマーの融点)+10℃}〜{(融点の低い方のモノマーの融点)+50℃}の範囲が好ましい。具体的には、80〜150℃とすることが好ましく、80〜120℃とすることがより好ましい。混合温度が80℃未満であると、塩が生成されない場合があるため好ましくない。
【0022】
工程(i)において、混合する時間は、撹拌の均一性の観点から、混合すべき温度に達してから、0.1〜2時間が好ましく、0.1〜1.0時間がより好ましい。
【0023】
モノマーとして、例えば、テレフタル酸のような常温で粉状のものを用いる場合、体積平均粒径が200μm以下の粒子を用いることが好ましく、100μm以下の粒子を用いることがより好ましい。体積平均粒径がこの範囲のモノマーを用いることで、続く工程(ii)において、分子量分布が狭く、重合度の斑が小さいポリアミドの低重合体を生成させることができる。なお、体積平均粒径の求め方は、後述の実施例において説明する。
【0024】
なお、工程(i)においては、系内の熱斑を小さくすることを目的として、水および/または有機溶剤を用いてもよい。その添加量は、原料モノマーであるジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して、5質量部以下とすることが好ましく、4質量部以下がより好ましく、全く使用しないことが特に好ましい。添加する水および/または有機溶剤の含有量をこの範囲に抑制することで、水および/または有機溶剤を留去する工程を設けることなくポリアミドを生成することができる。また、結晶性の低下やゲル化の原因となる副生成物であるトリアミンの生成量を抑制することができる。
【0025】
工程(ii)は、後の工程(iii)において最終的に得られるポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンの反応による塩の生成と、前記塩の重合による低重合体の生成を行いながら、塩および低重合体を破砕し、塩および低重合体の破砕混合物を得る工程である。
【0026】
工程(ii)においては、塩が生成されるにともないジカルボン酸とジアミンが徐々に減少する。同時に、低重合体が生成されるにともない塩が徐々に減少する。そして、上述のように塩および低重合体が破砕されるので、塩と低重合体の破砕混合物が生成する。なお、工程(ii)の終了は、モノマーの反応率が90%以上になることを目安とすることができ、モノマー反応率の求め方は、後述の実施例において説明する。
【0027】
工程(ii)において、塩を生成させ、かつ生成された塩を重合させることで低重合体を生成させる温度は、生成するポリアミドの融点未満とすることが必要である。該温度が生成するポリアミドの融点以上の場合、アミド結合の熱分解が促進され、色調が悪くなったり、重合途中に副生するトリアミンの生成量が多くなったりするという問題がある。また、生成した塩と低重合体が破砕しなかったり、最終的に得られるポリアミドの分子量分布が広くなったりする場合がある。
【0028】
なかでも、塩を生成させ、かつ生成された塩を重合させることで低重合体を生成させる温度は、150〜270℃が好ましく、150〜250℃がより好ましい。この温度が150℃未満であると重縮合反応が進行ない場合がある。一方、270℃を超えると、得られるポリアミドの色調が低下する場合がある。
【0029】
工程(ii)において塩を生成させ、かつ生成させた塩を重合させることで低重合体を生成させる際の反応時間としては、十分に反応を進行させる観点から、塩を生成させ、かつ塩を重合させることで低重合体を生成させるための温度に達してから、0.1〜10時間が好ましく、0.1〜5時間がより好ましい。
【0030】
本発明においては、均一に反応を進行させるために、塩および低重合体を破砕することが必要である。破砕せずに重合した場合は、生成した塩と低重合体が塊状化したり、反応の進行に斑が生じたりするという問題がある。工程(ii)にて存在する物質は、塩または低重合体の状態であるため破砕が容易である。
【0031】
本発明の製造方法においては、工程(ii)にて破砕された塩や低重合体が、破砕熱によって溶融し、これらが再固化することにより塊状となる場合がある。このような場合であっても、得られるポリアミドの融点が250℃以上であれば、破砕熱にさらされても塩や低重合体が溶融しにくく、溶融再固化による塊状物の生成が起こりにくくなるという利点がある。
【0032】
工程(ii)で破砕して得られた破砕混合物を構成する塩および低重合体の体積平均粒径は、5mm以下とすることが好ましく、2mm以下とすることがより好ましく、1mm以下とすることがさらに好ましい。破砕混合物の体積平均粒径をこの範囲とすることで、次の工程(iii)において、分子量分布が狭く重合度の斑が小さいポリアミドを、溶融押出により高分子量化することができる。
【0033】
一般に、破砕の方法としては、圧縮力粉砕、剪断力粉砕、衝撃力粉砕、摩擦力粉砕、攪拌式破砕が挙げられる。本発明においては、破砕しながら攪拌できるという点で、攪拌翼による攪拌式破砕が好ましい。
【0034】
本発明においては、攪拌動力/仕込量、攪拌時の回転トルク、攪拌翼の大きさおよび形状、回転数などの破砕条件、ジカルボン酸とジアミンとの混合液の仕込量を制御することで、破砕混合物を構成する塩および低重合体の体積平均粒径を5mm以下とすることができる。
【0035】
撹拌翼としては、特に限定されないが、プロペラ型、パドル型、タービン型、らせん型、ダブルヘリカル型等が挙げられる。また、これらを組み合わせたものでもよい。なかでも、破砕混合物の体積平均粒径を5mm以下とする観点から、ダブルヘリカル型が好ましい。アンカー型の攪拌翼を用いた場合は、生成した塩および低重合体を破砕することができない場合がある。
【0036】
工程(ii)における撹拌動力/仕込量は、攪拌動力/仕込量は0.02kW/kg以上とすることが好ましく、0.03kW/kg以上とすることがより好ましく、0.035kW/kg以上とすることがさらに好ましい。攪拌動力/仕込量を0.02kW/kg以上とすることで、破砕混合物の体積平均粒径を5mm以下とすることができる。なお、攪拌動力/仕込量の上限は、特に限定されないが、通常、攪拌機のモーター出力の観点から、1kW/kg程度である。
【0037】
工程(ii)において、破砕時の回転数は、1〜1000rpmが好ましく、1〜100rpmがより好ましい。1rpm未満であると、破砕混合物の体積平均粒径を5mm以下とすることができない場合がある。一方、1000rpmを超えると、撹拌効率が低下する場合がある
【0038】
工程(ii)における混合液の仕込量は、工程(i)におけるオートクレーブの内容量に対する、原料の総仕込量によって決まる。上記の工程(i)におけるオートクレーブの内容量に対する、原料の総仕込量の割合は、1Lあたり200〜700gとすることが好ましく、300〜600gとすることがより好ましく、350〜500gとすることがさらに好ましい。前記割合を200〜700gの範囲とすることで、続く工程(ii)において生成した塩および低重合体を効率よく破砕することができ、破砕混合物の体積平均粒径を5mm以下とすることが可能となる。
【0039】
工程(ii)において、塩の生成反応と、前記塩の重合による低重合体の生成反応とが進行することにともなって、水蒸気が発生する。そのため、系内の圧力は水蒸気圧まで上昇する。
【0040】
系内の圧力は、用いるモノマーを系外に留去させずに定量的に重縮合反応を行いやすいことから、大気圧以上とすることが好ましく、絶対圧力で1.0MPa以上とすることがより好ましい。系内の圧力の上限は特に限定されず、反応容器の耐圧力の範囲内で適宜選択される。系内の圧力は、水蒸気を系外に放圧したり、窒素で加圧したりすることで制御される。
【0041】
工程(iii)は、工程(ii)で得られた破砕混合物を、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃未満の温度で、溶融押出により高分子量化するポリアミドを得る工程である。従来、固相重合によりポリアミドを得る場合は、重合に5〜10時間要し、生産性に劣る場合があった。加えて、長時間加熱することによりポリアミド結合の熱分解が促進され、色調が低下するという問題があった。しかしながら、本願発明においては、ポリアミド低重合体から固相重合ではなく溶融押出機によって重合をおこなうことによりポリアミドを得るものである。そのため、重合時間が短縮され、色調の低下が抑制されたポリアミドを生産性よく得ることができる。
【0042】
例えば、溶融押出機によって重合をおこなうには、例えば、破砕混合物を反応容器から取りだしてから溶融押出機に供給してもよいし、反応容器に溶融押出機を直結させて連続的に重合をおこなってもよい。得られるポリアミドの色調低下および作業時間の短縮の点から、後者の方が好ましい。連続的に溶融押出に付することで、空気による酸化を抑制でき、ポリアミドの色調低下が抑制され、かつ作業時間を短縮することができる。
【0043】
溶融押出機としては、二軸押出機が好ましい。二軸押出機としては、反応で生じた水を除去するためのベント部を有するタイプのものが好ましく、ベント部を2個以上有するものがより好ましい。ベント部は必要に応じて常圧開放、或いは、ポンプで吸引して減圧にして使用することができる。通常、第1ベントは窒素を流通させ開放状態とし、第2ベント以降は減圧状態とすることが好ましい。このような条件を設定することにより、重合度を効率よく高めることができる。また、溶融押出と重合に十分な熱量を与える観点から、溶融押出機のL/Dは10〜60とすることが好ましく、15〜50とすることがより好ましく、20〜40とすることがさらに好ましい。また、高分子量化を促進するためには、溶融押出機を2台直列にして用いるのも有効である。
【0044】
反応温度としては、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃とすることが必要である。反応温度が{(生成するポリアミドの融点)+10℃}よりも低いと、高重合化が困難となるので好ましくない。一方、反応温度が350℃を超えると、結晶性の低下やゲル化の原因となるトリアミン量が多くなり、また、アミド結合の熱分解が促進され、ポリアミドの色調が悪くなるので好ましくない。
【0045】
反応時間つまり溶融押出機内での滞留時間は、1〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましい。反応時間が1分未満である場合、高重合化が進行しない場合がある。一方、反応時間が10分を超えると、得られるポリアミドの色調が低下する場合がある。
【0046】
本発明においては、溶融押出により重合して得られたポリアミドを、必要に応じて固相重合に付し、さらに重合度を上げることもできる。
【0047】
本発明の製造方法においては、重合触媒を用いることが好ましい。触媒は、工程(i)〜工程(iii)のいずれの工程で添加してもよいが、重合反応の速度を増大させ、重合効率を向上させる観点から、工程(i)で添加することが好ましい。
【0048】
重合触媒としては、特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩等を用いることができる。触媒の使用量は、生成するポリアミドの品質向上の観点から、原料モノマーであるジカルボン酸とジアミンの合計のモル数に対して、2モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
【0049】
本発明においては、重合度の調整、分解や着色の抑制等を目的として、ポリアミドの末端基を封鎖するための末端封鎖剤を加えることが好ましい。末端封鎖剤は、工程(i)〜(iii)のいずれの工程で添加してもよい
【0050】
末端封鎖剤としては、ポリアミドの末端基との反応性の観点から、モノカルボン酸、モノアミンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。モノカルボン酸としては、酢酸、ラウリン酸、安息香酸等が挙げられる。モノアミンとしては、オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン等が挙げられる。
【0051】
末端封鎖剤の使用量は、生成するポリマーの分子量の観点から、原料モノマーであるジカルボン酸とジアミンの合計のモル数に対して、5モル%以下が好ましく、2モル%以下がより好ましい。
【0052】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラーや安定剤等の添加剤を加えてもよい。添加剤としては、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状補強材、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等が挙げられる。添加剤は、本発明における任意の段階で添加することができ、例えば、ポリアミドの重合時に添加してもよいし、得られたポリアミドに溶融混練してもよい。
【0053】
上記のようにして得られたポリアミドの数平均分子量は、特に限定されず、目的に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形加工が容易なポリアミドを得ようとすれば、数平均分子量を1万以上とすることが好ましい。ポリアミドの数平均分子量は、工程(iii)における反応時間を調整することで適宜制御することができる。
【0054】
本発明の製造方法においては、工程(iii)の反応を溶融押出機によりおこなうため、ペレット状のポリアミドを得ることができる。そのため、その後の加工において、取り扱いが容易である。
【0055】
本発明の製造方法においては、工程(ii)で得られる破砕混合物を構成する塩および低重合体の粒径を5mm以下とすることで、続く工程(iii)において、重合度斑が少なく重合することが可能である。その結果、得られるポリアミドの分子量分布を4.0以下とすることができる。なお、得られるポリアミドの分子量分布の求め方は、後述する。
【0056】
また、本発明の製造方法においては、工程(ii)において生成するポリアミドの融点未満の温度で塩と低重合体を生成し、さらに、工程(iii)において短時間でポリアミドを重合するため、ポリアミド中のトリアミン量を抑制することができる。ポリアミド中のトリアミン量を、従来の製造方法に対して低くすることができ、例えば、ジアミンに対して0.3モル%以下とすることができる。
【0057】
また、本発明の製造方法においては、生成するポリアミドの融点未満の温度で塩と低重合体を生成し、さらに、得られた塩と低重合体を短時間で高分子量化するため、アミド結合の熱分解を抑制することができ、色調が良好なポリアミドを得ることができる。具体的な指標としては、L値が70以上のポリアミドを得ることができる。
【実施例】
【0058】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0059】
各種の物性測定は以下の方法によっておこなった。
(1)モノマーの反応率
ポリアミド30mgにメタノール10mLを加え、懸濁液を作製した。この懸濁液を1時間放置し、ディスクフィルターで濾過し、試料溶液を作製した。その後、この試料溶液を質量分析計付帯のガスクロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent 6890N」)で分析した。そして、原料モノマーのジアミンを標準試料として作成した検量線を用いて、ポリアミド中の未反応ジアミンを定量し、ジアミンの反応率を計算した。なお、実施例および比較例においては、モノマーの反応率が90%以上となったときに、工程(ii)を終了した。
【0060】
(2)体積平均粒径
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、商品名「LA920」)を用いて測定した。なお、破砕混合物の体積平均粒径は、工程(iii)直前にサンプリングしたものを用いた。
(3)数平均分子量、分子量分布
ポリアミド5mgに10mMトリフルオロ酢酸含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mLに溶解させて得られた溶解液を、ディスクフィルターで濾過し、試料溶液を作製した。この試料溶液を、示差屈折率検出器(東ソー社製、商品名「RI−8010」)を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(GPC、東ソー社製)で分析した。溶離液として、10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。分析条件は、流速が0.4mL/分、温度が40℃であった。そして、ポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリーズ社製)を標準試料として作成した検量線を用いて、重量平均分子量および数平均分子量を求め、重量平均分子量/数平均分子量を分子量分布とした。
【0061】
(4)融点
サンプル10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、商品名「DSC−7」)を用いて、常温から350℃まで20℃/分で昇温し、5分間保持した。その後、500℃/分で25℃まで降温し、5分間保持後、400℃まで20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に得られた曲線の融解に由来するピークの頂点を融点温度とした。
(5)色調
日本電色工業社製、商品名「Σ90 color measuring system」を用いて、C/2光源、反射にてL値を測定した。
【0062】
(6)トリアミン量
ポリアミド10mgに47%臭化水素酸を3mL加え、130℃で16時間加熱後、室温まで放冷した。そこに20%水酸化ナトリウム水溶液を5mL加えて試料溶液をアルカリ性にした後、分液ロートに移してクロロホルムを8mL加えて撹拌した後静置し、クロロホルム相を採り、濃縮した。これにクロロホルム1.5mLを加え、これをメンブランフィルターで濾過したものを測定試料とした。この測定試料を、質量分析計を備えたガスクロマトグラフィー装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名「Agilent 6890N」)で分析した。ジアミンとトリアミンを標準試料として作成した検量線を用いて、ポリアミド中のジアミンとトリアミンを定量し、ジアミンに対するトリアミンのモル比を算出した。ジアミンの標準物質は、重合に用いたジアミンを用いた。また、トリアミンの標準物質は、酸化パラジウムを触媒として、オートクレーブ中にて重合に用いたジアミンを240℃で3時間加熱攪拌して反応させて得たトリアミン化合物を用いた。
【0063】
(7)溶融押出機内の樹脂温度(重合温度)
樹脂温度は溶融押出機の設定温度に比較して、摩擦や剪断により高温になっている場合があるため、樹脂温度計を溶融押出機に設置するかあるいは、ノズルから出てきた樹脂温度を温度計で測定することにより計測した。
【0064】
実施例1
[工程(i)]
ジカルボン酸としてテレフタル酸50.9質量部、ジアミンとして1,10−ジアミノヘキサン49.1質量部、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部、末端封鎖剤として安息香酸0.57質量部からなる混合物(ジカルボン酸:ジアミン:触媒:末端封鎖剤=50:50:0.16:0.39、モル比)を、ダブルヘリカル撹拌翼を備えたオートクレーブ中で、窒素雰囲気下、80℃において、1時間、20rpmで撹拌した。
【0065】
[工程(ii)]
回転数を20rpmに保ったまま昇温し、オートクレーブ内を1.8MPa、210℃で3時間保ちながら、生成した塩および低重合体を0.04kW/kgの攪拌動力/仕込量で攪拌しながら破砕し、その破砕混合物を得た。その後、反応により生じた水蒸気を放圧し、オートクレーブの圧力を常圧に戻した。
【0066】
[工程(iii)]
工程(ii)で得られた破砕混合物をオートクレーブから取り出した。その後、二軸押出機(30mmφ、L/D=45、2ベント)に供給して、ペレット状のポリアミドを得た。二軸押出機のシリンダー温度を330℃に設定し、樹脂温度を325〜300℃に調節し、3時間重合した。平均滞留時間は3分に設定した。ホッパーは酸素含有量が50ppm以下の窒素ガスでシールした。また、第1ベントは開放し、前記の窒素ガスでシールし、第2ベントは真空ポンプを使用して50mmHgの減圧度を保った。スクリュー回転数は40rpmに設定した。
【0067】
実施例2〜7、10および12
原料モノマー、製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様におこなってポリアミドを得た。なお、実施例4においては、ジカルボン酸として、テレフタルとイソフタル酸の混合物(テレフタル酸:イソフタル酸=90:10)を用いた。
【0068】
実施例8、9および13
工程(i)において表1に示すような量で水を添加し、製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様におこなってポリアミドを得た。なお、表1における水の添加量はジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対しての量である。
【0069】
実施例11、14および15
オートクレーブと二軸押出機の供給口に直結させ、工程(ii)で得られた破砕混合物を、直接二軸押出機に供給し、その他の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
【0070】
比較例1
[工程(i)]
【0071】
ジカルボン酸としてテレフタル酸50.9質量部、ジアミンとして1,10−ジアミノヘキサン49.1質量部、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.10質量部、末端封鎖剤として安息香酸0.57質量部からなる混合物(ジカルボン酸:ジアミン:触媒:末端封鎖剤=50:50:0.16:0.39、モル比)を、アンカー型撹拌翼を備えたオートクレーブ中で、窒素雰囲気下、80℃において、1時間、20rpmで撹拌した。工程(ii)を以下のように変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。
【0072】
[工程(ii)]
撹拌速度は20rpmのまま、昇温し、オートクレーブ内を1.8Mpa、210℃で3時間保ち、0.04kW/kgの攪拌動力/仕込量で破砕せずに攪拌し、塩および低重合体の塊状物を得た。その後、反応により生じた水蒸気を放圧し、オートクレーブの圧力を常圧に戻した。その後、塊状化した生成物を取り出して室温で放冷後、クラッシャーで粉砕し、粉末の破砕混合物を得た。
【0073】
[工程(iii)]
工程(ii)で得られた破砕混合物を取り出した後、二軸押出機(30mmφ、L/D=45、2ベント)に供給して、ペレット状のポリアミドを得た。二軸押出機のシリンダー温度を330℃に設定し、樹脂温度を325〜330℃に調節し、3時間重合させた。平均滞留時間は3分に設定した。ホッパーは酸素含有量が50ppm以下の窒素ガスでシールした。また、第1ベントは開放し、前記の窒素ガスでシールし、第2ベントは真空ポンプを使用して50mmHgの減圧度を保った。スクリュー回転数は40rpmに設定した。
【0074】
比較例2
工程(i)の混合温度をジアミンモノマーの融点未満である35℃に変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
【0075】
比較例3
実施例1の工程(ii)を以下のように変更する以外は、同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
[工程(ii)]
撹拌速度は20rpmのまま、昇温し、生成ポリアミドの融点以上である330℃で3時間保ち、ポリアミドを得た。その後、反応により生じた水蒸気を放圧し、オートクレーブの圧力を常圧に戻した。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状に縮合物を払い出し、室温で放冷後、クラッシャーで粉砕し、粉末の破砕物を得た。
【0076】
比較例4
工程(iii)において樹脂温度を360℃に変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
【0077】
比較例5
工程(iii)において、樹脂温度を310℃に変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
【0078】
比較例6
工程(iii)において、工程(ii)で得られた破砕混合物を、窒素気流下、20rpmで回転させながら、230℃で600時間固相重合して粉末状のポリアミドを得ること以外は、実施例1と同様の操作をおこなってポリアミドを得た。
【0079】
比較例7
カルボン酸としてテレフタル酸391.2質量部、アミンとして1,10−ジアミノデカン405.7質量部、触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物0.8質量部、末端封鎖剤として安息香酸2.3質量部、蒸留水320質量部からなる混合物(ジカルボン酸:ジアミン:触媒:末端封鎖剤=50:50:0.16:0.39、モル比)、(系内の水の残存量:ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して40質量部)を、ダブルヘリカル撹拌翼を備えたオートクレーブに入れ、窒素雰囲気下、1時間かけて150℃まで昇温させた後、水を120質量部留出させた(系内の水の残存量:ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して40質量部)。次いで、内部温度を240℃に昇温した後、水を72g留出させ(系内の水の残存量:ジカルボン酸とジアミンの合計100質量部に対して40質量部)、その後4時間攪拌しながら反応させた。なお、攪拌動力/仕込量を0.04kW/kgとし、スクリュー回転数を40rpmに設定した。
【0080】
その後、反応容器下部の取り出し口からノズルを介し、低重合体を吐出速度200g/分にて吐出し、このときに反応容器下部の取り出し口とノズルの間の配管へ230℃に加熱された水を15g/分の速度で添加した。得られた低重合体100gを粉砕した後(粒径:2.0mm)、流量300mL/分で窒素を流し、攪拌しながら2時間かけて内部温度を250℃に昇温し、そのまま5時間反応させた。
表1、2に、原料モノマー、製造条件、および得られたポリアミドの評価結果を示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
なお、表1、2中の略語は以下のものを示す。
TPA:テレフタル酸 (融点:300℃)
IPA:イソフタル酸 (融点:343℃)
HA:1,6−ヘキサンジアミン (融点:42℃)
NA:1,9−ノナンジアミン (融点:36℃)
DA:1,10−デカンジアミン (融点:62℃)
DDA:1,12−ドデカンジアミン (融点:68℃)
【0084】
なお、工程(iii)の供給方法における「独立」とは、破砕混合物をオートクレーブから取り出してから溶融押出機に供給する方法である。「連続」とは、オートクレーブと溶融押出機を連結させ、工程(ii)で得られた破砕混合物を、直接溶融押出機に供給する方法である。
【0085】
実施例1〜15は、短時間でペレット状のポリアミドを得ることができた。得られたポリアミドは、数平均分子量が10000以上と高く、ポリアミド中に含まれるトリアミン量が0.3%以下と小さかった。また、L値が70以上と色調が良好であった。加えて、分子量分布が狭いものであった。
【0086】
実施例2で得られたポリアミドは、工程(ii)における温度が、本発明におけるより好ましい範囲よりも高かったため、L値に改善の余地を残すものであった。
【0087】
実施例7で得られたポリアミドは、攪拌動力/仕込量が、本発明の好ましい範囲よりも低いものであった。そのため、他の実施例と比較すると、破砕混合物の体積平均粒径が大きくなり、分子量分布に改善の余地を残すものであった。
【0088】
実施例8および13は、原料モノマーとしてのジアミンおよびジカルボン酸を反応系に供給する際に、水が添加されていたが、その添加量が原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部以下であったため、トリアミン量が十分に少ないものであった。
【0089】
実施例9は、原料モノマーとしてのジアミンおよびジカルボン酸を反応系に供給する際に、水が添加されていたが、その添加量が原料モノマーの合計100質量部に対して5質量部を超えていた。そのため、トリアミン量に改善の余地を残す結果となったが、十分に実使用に耐えうるものであった。
【0090】
実施例10は、工程(iii)における重合時間が、本発明のより好ましい範囲よりも長かったため分子量が大きくなったものの、L値が低く、色調の低下に改善の余地を残すものであった。
【0091】
実施例11、14および15は、オートクレーブと二軸押出機の供給口に直結させ、連続的に粉砕物を溶融押出機に供給したため、熱劣化が抑制され、L値が特に高かった。
【0092】
比較例1は、アンカー型の攪拌翼を用いたため、工程(ii)において、塩および低重合体の生成をおこないながら、破砕することができなかった。そのため、得られたポリアミドは顕著に分子量分布が広いものとなった。加えて、L値および数平均分子量が低く、トリアミン量も多かった。
【0093】
比較例2は、工程(i)の温度を、原料モノマーの融点よりも高くしたため、得られたポリアミドの分子量分布が広くなった。加えて、L値および数平均分子量が低く、トリアミン量も多かった。
【0094】
比較例3は、工程(ii)における樹脂温度が生成するポリアミドの融点を超えて高かったため、得られたポリアミドは熱劣化が激しく色調が低下し、L値が顕著に低いものとなった。加えて、トリアミン量が多く、分子量分布が広かった。
【0095】
比較例4は、工程(iii)における装置の設定温度が350℃を超えて高かったため、得られたポリアミドは熱劣化が激しく色調が低下し、L値が顕著に低いものとなった。加えて、トリアミン量が多く、分子量分布が広かった。
【0096】
比較例5は、工程(iii)における装置の設定温度が、(ポリアミドの融点+10)℃未満であったため、反応が進行しておらず、数平均分子量が顕著に低かった。さらに、分子量分布が低いものとなり、トリアミン量が多かった。
【0097】
比較例6は、工程(iii)を固相重合でおこなったため、重合時間が非常に長かった。そのため、アミド結合の熱分解が促進され、色調が低下し、L値が顕著に低いものとなった。加えて、分子量分布が広く、トリアミン量も多かった。
【0098】
比較例7は、特許文献1の実施例1に従って追試をおこなった。得られたポリアミドは、工程(ii)において破砕をおこなっておらず、低重合体が得られてから破砕をおこなったため分子量分布が広く、固相重合により得られているためL値が低く、かつ水を用いているためトリアミン量が多かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(i)〜(iii)を、この順に含むことを特徴とする、ジカルボン酸およびジアミンを主成分とするポリアミドの製造方法。
工程(i):モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとを、融点の低い方のモノマーの融点以上の温度で混合し、混合液を得る工程。
工程(ii):工程(i)で得られた混合液を、生成するポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンとの反応による塩の生成および前記塩の重合による低重合体の生成をおこないながら、生成した塩および低重合体を破砕し、塩および低重合体の破砕混合物を得る工程。
工程(iii):工程(ii)で得られた破砕混合物を、{(生成するポリアミドの融点)+10℃}〜350℃未満の温度で溶融押出により高分子量化する工程。
【請求項2】
融点が250℃以上のポリアミドを生成することを特徴とする請求項1記載のポリアミドの製造方法。
【請求項3】
工程(ii)において、破砕混合物を構成する塩および低重合体の体積平均粒径が5mm以下になるように破砕することを特徴とする請求項1または2記載のポリアミドの製造方法。
【請求項4】
工程(i)を、モノマーとしてのジカルボン酸とジアミンとの合計100質量部に対して、5質量部以下の水および/または有機溶剤の存在下でおこなうことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリアミドの製造方法。
【請求項5】
工程(ii)を、大気圧以上の圧力下でおこなうことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のポリアミドの製造方法。
【請求項6】
工程(iii)において、工程(ii)で得られた塩および低重合体の破砕混合物を連続して溶融押出により高分子量化することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のポリアミドの製造方法。

【公開番号】特開2012−188557(P2012−188557A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53656(P2011−53656)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】