説明

ポリアミドイミド樹脂成形用樹脂組成物及びその成形体

【課題】耐熱性に優れる芳香族系ポリアミドイミド樹脂成形体面に剥離性、金型離型性、金型耐汚染性を付与させる成形用樹脂組成物及びその各種成形方法による表面改質成形体を提供することである。
【解決手段】芳香族系ポリアミドイミド樹脂100重量部の−NH−部位に、カルボキシル基を付与させる一次変性剤1〜15重量部を反応させ、得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂中のカルボキシル基に対して、0.1〜2当量のカルボキシル基とエステル化反応するゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が102〜105のフッ素系アルコール及び/またはシリコーン化合物を反応させてなる変性ポリアミドイミド樹脂を含有する成形用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族系ポリアミドイミド樹脂の優れた耐熱性、機械的強度、耐薬品性等の諸特性を損なわずに、基材との離型性、金型耐汚染性を付与した変性ポリアミドイミド樹脂を含有する成形用樹脂組成物、及び、その成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドイミド樹脂は、、ポリイミド主鎖中にアミド結合を導入し、アミド基とイミド基を交互に共重合した繰り返し単位を有するポリマーである。ポリアミドイミド樹脂は融点が他の樹脂に比べ著しく高い耐熱性に優れるポリマーであり、また、温度に対する諸特性の変化が少なく、耐衝撃性、摺動性に優れ、寸法安定性、電気絶縁性、耐摩耗性に優れるプラスチックである。このような特徴、諸特性を生かして、絶縁、封止材料、プリント基板などの電気電子分野をはじめ、航空宇宙用のジェットエンジン部材、自動車用エンジン部材、ギヤボックス、電気系統部材、また、一般機械用部材として特に耐熱性、耐摩耗性を要すギヤ、軸受け、摺動部材に使用されている。
【0003】
このようなポリアミド樹脂は、耐熱特性としての連続使用限界温度においても、非常に高い耐熱使用温度を有し、さらに、高い耐薬品性、耐摩擦・摩耗特性、機械的特性、電気的特性を有することからスーパーエンプラとして称されている耐熱性ポリマーである。しかしながら、ポリアミドイミド樹脂は高融点であるため加工温度が高く成形加工性が低いポリマーであることも事実である。
【0004】
従来から、このようなポリアミドイミド樹脂の諸特性をより改善又は改質させる提案が種々なされている。例えば、[特許文献1]には、ポリアミドイミド樹脂の主鎖にシロキサン構造を導入したシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂を樹脂成形体の材料に含有することで、ポリアミドイミド樹脂成形体に離型性を付与することが提案されている。ここで、シリコーン変性は従来公知のイソシアネート法、酸クロライド法、直接重縮合法、溶液重縮合法で行われており、例えば、イソシアネート法では、シロキサンジアミン、芳香族トリカルボン酸、ジイソシアネートを原料として合成されている。しかしながら、この様な方法で得られるシリコーン変性ポリアミドイミド樹脂は離型性を有するものの、主鎖にシロキサン構造が導入されているため、主鎖の剛直性が失われる傾向にあり、ポリアミドイミド樹脂本来の耐熱性、耐摩耗性等が損なわれるおそれがあった。
【0005】
また、[特許文献2]には、ポリアミドイミド樹脂にノニオン系のフッ素系界面活性剤を配合した樹脂ペーストが提案されている。前記発明では、ポリアミドイミド樹脂にフッ素系の界面活性剤を添加することにより、四フッ化ポリエチレンフィルムや四フッ化ポリエチレンコート板のような離型性に優れる基材に塗布したときにハジキの発生がなく、形状保持性を向上させるという効果を有している。しかしながら、前記発明は離型性基材との密着性を改良することを目的としたものであり、ポリアミドイミド樹脂の基材からの離型性、金型耐汚染性については全く考慮されていない。さらには、上記、ノニオン系のフッ素系の界面活性剤をポリアミドイミド樹脂にただ添加しただけでは、ポリアミドイミド樹脂に十分な離型性、耐汚染性を付与することはできない。
【0006】
また、[特許文献3]には、耐熱性の離型性皮膜として、基材上にフリットと耐熱性樹脂(例えば、ポリアミドやポリテトラフルオロエチレン等の樹脂又はそれらの混合樹脂)を下塗りし、その上にフッ素樹脂のコーティングを施した離型性皮膜が提案されている。この様な構成にすることで、耐熱性樹脂の耐熱性、耐久性を有しながら、フッ素樹脂の離型性を付与できるというものである。しかしながら、耐熱性樹脂の下塗り層の上にフッ素樹脂をコーティングすると離型性の付与は出来るものの、本来耐熱性樹脂(ポリアミドイミド樹脂)が有している耐熱性や耐久性は低くなり、より高温条件下での使用には耐えなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−170831
【特許文献2】特開2001−123066
【特許文献3】WO96―38236
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、ポリアミドイミド樹脂本来の優れた耐熱特性、耐摩耗特性を維持しながら、離型性、金型耐汚染性等の成型加工特性を付与させた成形用樹脂組成物、及びそれより得られる樹脂成形体を提供することである。
直接ポリアミドイミド樹脂を変性対象物として化学的に後追い反応させて変性ポリアミドイミド樹脂とすることであって、ポリマー特性として所望する成形加工性を発揮させる変性樹脂を含有する成形用樹脂組成物を提供することである。
【0009】
また、本発明による他の目的は、芳香族系ポリアミドイミド成形体のポリマー特性としての剥離性、金型離型性、金型耐汚染性を施させる成形用樹脂組成物を用いて、押出成形、圧縮成形、溶融注型成形又は射出成形させてなることを特徴とする芳香族系ポリアミドイミド成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、芳香族環鎖を主鎖構成とする芳香族系ポリアミドイミドポリマーに、後追い反応させて化学的に変性させ、成形体に、優れた剥離性、金型離形性、金型耐汚染性等のポリマー特性を付与させる変性樹脂を含有することを特徴とする成形用樹脂組成物を提供する。
【0011】
すなわち、本発明が提供する「第1の成形用樹脂組成物」は、芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)を一次変性剤(B−1)、及び、エステル化変性剤(B−2)を用いて変性させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂(D−1)を含有する成形用樹脂組成物である。また、前記カルボキシル基を付与する一次変性剤(B−1)がジカルボン酸無水物であることが好ましい。
【0012】
本発明が提供する「第2の成形用樹脂組成物」は、変性ポリアミドイミド樹脂(D−1)100重量部と、重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部と、熱ラジカル発生剤(又は熱重合開始剤)0.1〜20重量部とを含有することを特徴とする成形用樹脂組成物である。
【0013】
さらに、本発明によれば、上記する第1又は第2の成形用樹脂組成物を用いることで、押出成形、圧縮成形、溶融注型成形又は射出成形され、ポリマー特性として優れた剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性を発揮する芳香族系ポリアミドイミド成形体を提供する。
また、本発明によれば、未変性の芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部と、上記する第1又は第2の成形用樹脂組成物の50〜150重量部とを混合させてなる混合樹脂組成物(E−1)である「第3の成形用樹脂組成物」を用いて、押出成形、圧縮成形、注型成形又は射出成形され、ポリマー特性として剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性を発揮することを特徴とする芳香族系ポリアミドイミド成形体を提供する。
【0014】
また、本発明によれば、前記一次変性樹脂(C−1)成分の100重量部と、前記フッ素系アルコール及び/またはシリコーン化合物の10〜200重量部と、重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部とを、常温〜常温以下の温度下に混合させてなる混合樹脂組成物(E−2)である「第4の成形用樹脂組成物」を用いて押出成形、圧縮成形、溶融注型成形又は射出成形され、ポリマー特性として剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性を発揮することを特徴とする芳香族系ポリアミドイミド成形体を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による成形用樹脂組成物を用いて得られる芳香族系ポリアミドイミド成形体に発現されるポリマー特性改質としての剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性(なお、本発明におけるこの金型耐汚染性とは、例えば、電子写真画像形成装置等に用いられている熱転写ロール部材等における耐トナー性として称されている耐汚染性なる評価値も含まれるものである。)は、その主成分樹脂である芳香族系ポリアミドイミド耐熱性ポリマー成形体に対して、ポリアミドイミド樹脂中の−NH−部位が、本発明による変性剤で後追い反応させて化学的に構造変性されたことで、従来のポリアミドイミド樹脂では離型性、金型耐汚染性が不十分であるため困難であった、公知の成形方法である射出成形、押出し成形、圧縮成形又は溶融注型成形を可能にさせ、その成形時に成形体表面に効果的に離型性、金型耐汚染性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明による耐熱性芳香族ポリアミドイミド樹脂成形体にポリマー特性としての成形加工性を付与したポリアミドイミド変性樹脂を含有する成形用樹脂組成物の最良の実施形態について更に説明する。
【0017】
既に上述したように、本発明による芳香族系耐熱性ポリアミドイミド成形体の更なるポリマー特性として、剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性なる特性改質をさせる変性樹脂を含有する成形用樹脂組成物において、変性樹脂は、未変性のポリアミドイミド樹脂の−NH−部位に、後追い反応させて化学的に構造変性させることで得られ、成形体に所望する更なるポリマー特性を発現させることを特徴とするものである。
【0018】
そこで、既に上述した本発明が提供する「第1の成形用樹脂組成物」において、芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)成分は芳香族系耐熱性ポリマーである。この成形用樹脂組成物に含有される変性樹脂(D−1)は、次の工程で得られる。
【0019】
まず、未変性の芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)を、カルボキシル基を付与させる一次変性剤(B−1)によって一次変性し一次変性樹脂(C−1)を生成する。
ここで、芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部に対して、この一次変性剤(B−1)剤は1〜15重量部、更には、ベースポリマーのポリマー特性を損ねず、目的とするポリマー離形性を充分に発揮させる変性が成される観点から、好ましくは、5〜12重量部を、溶融又は半融下に混合させ、一次変性樹脂(C−1)を得る。
【0020】
次に、この一次変性樹脂(C−1)中に含有するカルボキシル基に対して、カルボキシル基を化学的に安定化させ、樹脂に離型性を付与する観点から、エステル化反応させるエステル化変性剤(B−2)を、好ましくは100〜150℃で、反応させることで変性ポリアミドイミド樹脂(D−1)を得る。
このエステル化変性剤(B−2)として、カルボキシル基とエステル化反応するゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が10〜10の範囲にあるフッ素系アルコール及び/又はシリコーン化合物が用いられる。これらエステル化変性剤(B−2)は、一次変性樹脂(C−1)中のカルボキシル基に対して、0.1〜2当量の範囲で、更には、ベースポリマーのポリマー特性を損ねずに、本発明が目的とするポリマー離形性を充分に発揮させる変性が成される観点から、好ましくは、0.5〜1.5当量の範囲で用いられる。
【0021】
本発明においては、ポリアミドイミド樹脂のGPCによる数平均分子量は1000〜1000000の範囲であり、好ましくは、10000〜500000の範囲である。分子量が下限値以下では、変性化密度の高いポリアミドイミド分子が生成され、ベースポリマーのポリマー特性を損ねる傾向から好ましくなく、また、上限値を超えるようでは、1分子中の変性密度が低くなり、変性の目的であるポリマーの離形性を充分に発現させることができないおそれがあり好ましくない。
【0022】
<未変性の芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)成分>
そこで、既に上述する如く、本発明に用いる未変性芳香族系ポリアミドイミド樹脂としては、それ自体公知の方法で製造され、例えば、(1)3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体とポリイソシアネートを溶媒中で反応させる方法や(2)3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体とジアミンを溶媒中で反応させる方法が挙げられる。
【0023】
(1)の方法で用いられる3価以上のポリカルボン酸としては、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸無水物;ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンセン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3’4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2’3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェテントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1一ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等が挙げられ、ポリアミドイミド合成時の反応性が良好であり、合成された樹脂の耐熱性、機械的強度等の諸物性が良好である点で、分子内に芳香族有機基を有するテトラカルボン酸等の酸無水物を使用することが好ましい。
【0024】
また、ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボヌレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族イソシアネートや、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3′−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネ−ト、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネ−ト等の芳香族イソシアネート等が挙げられるが、生成された樹脂の耐熱性、機械的強度等の良好な芳香族系ジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0025】
(2)の方法においては、3価以上のポリカルボン酸としては、上述したものが挙げられ、上記同様に芳香族系の酸無水物を使用することが好ましい。また、ポリアミンとしては、ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、m−キシリジンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、トルイレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6−ジアミノナフタレン、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(m−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4′−ビス(p−アミノフェノキシ)ベンゾフェノフェン、4,4′−ビス(m−アミノフェノキシ)ベンゾフェノフェン、4,4′−ビス(p−アミノフェニルメルカプト)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(p−アミノフェニルメルカプト)ジフェニルスルホン、4,4′,4″−トリアミノトリフェニルメタン等が挙げられるが、生成されたポリアミドイミド樹脂の耐熱性、機械的強度等を良好にする上では芳香族含有ジアミンを用いることが好ましい。
【0026】
<カルボキシル基を付与させる一次変性剤(B−1)>
そこで、本発明において、一次変性剤(B−1)としては、例えば、テトラヒドロフタル酸,マレイン酸,フマル酸,コハク酸,アジピン酸,フタル酸、イソフタル酸,ヘキサヒドロフタル酸,テトラヒドロフタル酸,ダイマー酸,セバチン酸,アゼライン酸,5−Naスルホイソフタル酸,イタコン酸,シトラコン酸,ノルボルネンジカルボン酸,ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸無水物;また、これらの誘導体として、無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸,メチルーヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルーテトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物が挙げられる。中でも、ポリアミドイミド樹脂中の−NH−基との反応性が良好であり、さらに、−NH−基との反応により、ポリアミドイミド樹脂中に重合性二重結合を導入できるジカルボン酸無水物を使用することが好ましい。
【0027】
<エステル化変性剤>
本発明においてはエステル化変性剤(又は二次変性剤)(B−2)としてカルボキシル基とエステル化反応するフッ素系アルコール及び/またはシリコーン化合物が用いられる。好ましくは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が10〜10の範囲であり、一次変性樹脂(C−1)のカルボキシル基に対して反応性を有する基が0.1〜2当量になる範囲で適宜好適に使用することができる。このエステル化変性剤が、上記配合割合から外れ、0.1当量よりも少ないと、十分な離型性が得られず、また、2当量よりも多いと一次変性樹脂との相溶性の問題から製膜後の表面平滑性が悪くなるため好ましくない。また、本発明の目的として発現させるポリマー離型性が加熱下においても熱的に安定させる観点から、好ましくは、0.5〜1.5当量の範囲で好適に用いることができる。
【0028】
<エステル化変性剤;フッ素系アルコール>
そこで、このエステル化変性剤であるフッ素系アルコールの具体例として、例えば、;2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、6−(パーフルオロエチル)ヘキサノール、2−パーフルオロブチルエタノール、3−パーフルオロブチル−2−プロペン−1−オール、6−(パーフルオロブチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、3−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等のモノオール化合物、また、3−(2−パーフルオロヘキシル)エトキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(2−パーフルオロ−n−オクチル)エトキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(1H,1H−ペンタテカフロ−1−オクチル)オキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(1H,1H−パーフルオロ−1−ラウリル)オキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(2,2,2−トリフルオロエチル)オキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(ヘキサフルオロプロピル)オキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(2−パーフルオロ−n−ブチル)エトキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(4,4,4−トリフルオロ−3,3,−ジメトキシブチル)オキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(n−パーフルオロ−n−オクチル)メチルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(パーフルオロ−n−オクチル)−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(パーフルオロ−n−ブチル)−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−(パーフルオロ−n−ヘキシル)−1,2−ジヒドロキシプロパン、1,4−ビス(1,2−ジヒドロキシプロピル)−パーフルオロ−n−プタン、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、3,3,4,4,5,5、6,6−オクタフルオロオクタン−1,8−ジオール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1,4−ブタンジオール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。
【0029】
<エステル化変性剤;シリコーン化合物>
また、本発明において、シリコーン系エステル化変性剤の具体例として、水酸基を含有するシラン化合物から導入される反応性有機ラジカルとして、例えば、ビニル基、エポキシ基、(メタ)クリル基、アミノ基等を挙げることができる。すなわち、そのシリコーン化合物(又はシラン化合物)としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、シランカップリング剤等のシラン化合物を挙げることができる。例えば、アルコキシシランとしては、Si(OMe) ,MeSi(OMe) ,MeSi(OMe),MeSi(OMe) ,CSi(OMe) ,n−CSi(OMe) ,n−C13Si(OMe) ,n−C1021Si(OMe) ,CH=CHSi(OMe) ,CSi(OMe) ,(CSi(OMe) ;特に、通常に知られているシランカップリング剤として、NHCHCHNHCHCHCHMeSi(OMe) ,NHCHCHNHCHCHCHSiMe(OMe),HSCHCHCHSi(OMe) ,CNHCHCHCHSi(OMe) ,CH=(Me)CCOOCHCHCHSi(OMe) ;また、Si(OEt) ,MeSi(OEt) ,MeSi(OEt) ,MeSiOEt等が挙げられ、また、アシロキシシランとしては、MeSi(OCOMe),CSi(OMe) ,CH=CHSi(OCOMe) 等が挙げられ、また、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマーも適宜に用いることができる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基である。
【0030】
そこで、上記する本発明による第1の成形用樹脂組成物を特徴を生かすことで、本発明においては、以下の第2〜第5の成形用樹脂組成物を提供することができる。
【0031】
<第2の成形用樹脂組成物>
本発明が提供する「第2の成形用樹脂組成物」は、上記する変性ポリアミドイミド樹脂(D−1)100重量部と、重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部と、熱ラジカル発生剤(又は熱重合開始剤)0.1〜20重量部とを含有することを特徴とする成形用樹脂組成物である。
【0032】
重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物としては、例えば、2−クロロ酢酸、3−クロロプロピオン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクレート,β−メタクロリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート;酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,n−酪酸ビニル,イソ酪酸ビニル,ピバリン酸ビニル,カプロン酸ビニル,ラウリル酸ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニリデン,クロロヘキサンカルボン酸ビニル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸−2−クロロエチル等のハロゲン化ビニル化合物;(メタ)アクリル酸アミノエチル,(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸アミノプロピル,(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系誘導体類;N−ビニルジエチルアミン,N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類;アリルアミン,メタクリルアミン,N−メチルアクリルアミン等のアリルアミン系誘導体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体;p−アミノスチレン等のアミノスチレン類;6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート, 1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂環式アルコールのアクリル酸エステル;エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,ジエチルグリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。また、例えば、アミド基含有ビニル単量体類としては;メタクリルアミド,N−メチロールメタクリルアミド,N−メトキシエチルメタクリルアミド等が挙げられ、アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,p−アミノスチレン等のアミノスチレン類,N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等が挙げられる。また、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル,(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸アミノプロピル,メタクリル酸フェニルアミノエチル,N−ビニルジエチルアミン,N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類,アリルアミン,メタクリルアミン,N−メチルアクリルアミン,N,N−ジメチルアクリルアミド,N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体,アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,N−アミノスチレン等のアミノスチレン類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマー;スチレン,メチルスチレン,ジメチルスチレン,トリメチルスチレン,エチルスチレン,ジエチルスチレン,トリエチルスチレン,プロピルスチレン,ブチルスチレン,ヘキシルスチレン,ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等のアルキルスチレン;フロロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,ジブロモスチレン,クロルメチルスチレン等のハロゲン化スチレン;ニトロスチレン,アセチルスチレン,メトキシスチレン、α−メチルスチレン,ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0033】
これらの化合物は、特に、一次変性剤(B−1)によって導入される二重結合と反応させることが好ましく、特に、無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸等のジカルボン酸無水物によって導入された二重結合と反応させることが好ましい。なお、これらの重合性化合物の量は、(D−1)中に含有する変性基の作用を妨げない観点から、変性ポリアミドイミド樹脂100重量部に対して20〜60重量部の量で使用することがより好ましい。
【0034】
<第3の成形用樹脂組成物>
また、本発明によれば、未変性の芳香族ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部と、上記する第1又は第2の成形用樹脂組成物50〜150重量部とを混合させてなる混合樹脂組成物(E−1)であることを特徴とする「第3の成形用樹脂組成物」を提供することができる。
【0035】
<第4の成形用樹脂組成物>
また、本発明によれば、上記する一次変性樹脂(C−1)100重量部に、上記するエステル化変性剤(B−2)10〜200重量部と、この一次変性樹脂(C−1)中の重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部とを、常温〜常温以下の温度下に混合させてなる混合樹脂組成物(E−2)であることを特徴とする「第4の成形用樹脂組成物」を提供することができる。
【0036】
<各種の成形方法による芳香族系ポリアミドイミド樹脂成形体>
以上から、上記する本発明による第1〜第4の成形用樹脂組成物を用いると、通常、成形時に、これらの成形用樹脂組成物を250〜350℃下に熱溶融状又は熱半融状に予熱処理させることで、所望する変性化樹脂として、押出し成形、射出成形、ブロー成形又は延伸成形を適宜可能にすることができる。また、本発明による変性によって熱硬化性を損ねない限り注型成形、射出成形又は圧縮成形を適宜可能にすることができる。本発明の成形用樹脂組成物は、その成形体に剥離性、金型離型性又は金型耐汚染性なるポリマー特性を付与させて、上記する押出し成形、圧縮成形、溶融注型成形、射出成形、ブロー成形又は延伸成形を可能にさせるものである。本発明の変性によって成形時におけるポリマー特性が活かされて、このポリマー樹脂が有する耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性、寸法安定性等が損なわれずに発揮させる各種の形状で、各種の用途に供せる耐熱性成形体を提供することができる。
【0037】
また、本発明においては、成形前に変性によって所望するポリマー特性を損ねない範囲において、上記する本発明による成形用樹脂組成物に、予め従来から一般に公知の各種の添加剤を添加させることができる。例えば、硬化促進剤、低収縮剤、増粘剤、内部離型剤、分散剤、可塑剤、滑剤、被膜形成助剤、剥離剤、消泡剤、防炎剤、難燃性付与材、帯電防止剤、導電性付与剤、紫外線吸収剤、紫外線増感剤、蛍光増白剤、抗菌・防カビ剤、繊維状を含む有機及び無機フィラー、染料、顔料等を必要に応じて適宜添加させることができる。また、本発明においては、これらの添加剤をそれぞれ個々に配合してもよく、2種以上を組合わせて適宜配合させてもよく、その添加量はその添加剤種にもよるが、通常、変性前の芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部当たり、0〜100重量部、好ましくは、50重量部以下、更に好ましくは、20重量部以下で適宜好適に添加することができる。
【0038】
上述した添加剤の内で、例えば、シート材の引張り強度の改善・補強や、撓み防止や、シート表面のAB(アンチブロッキング)性等の特性改善等に係わって、各種の微粉状、鱗片状、繊維状(又はウイスカー状)の無機・有機のフィラーを適宜添加させることができる。このようなフィラーとして、例えば、炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,硫酸バリウム,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,アルミナ粉末、ベンガラ、シリカ、合成スメクタイト、合成ゼオライト、チタン酸マグネシウム、合成塩基性炭酸リチウム・アルミニウム塩、合成塩基性炭酸リチウム・マグネシウム塩、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成雲母、オラストナイト、ネフェリンサイト、タルク、ケイソウ土、マイカー、カオリン、ガラス粉、各種有機ポリマー微粒子等が挙げられる。これらの単独又は二種以上を組合わせて使用することができる。また、繊維補強材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、有機系繊維、チタン酸カリ繊維等が挙げられ、これらの繊維長は0.1〜20mm、好ましくは1〜10mmのものが使用される。また、これらの微粉状、繊維状フィラーは、本発明の樹脂との相容性、分散性の観点から、例えば、予めシラン系やチタネート系のカップリング剤等で表面処理をするか、また、適宜好適な分散剤を併用させて使用することができる。また、特に着色剤としては、耐熱性であることから、無機系の酸化物顔料である、ベンガラ、黒色フェライト、酸化チタン等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0040】
[離型性]
ポリイミドフィルム上に試料を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、150℃×10分の乾燥を行った後、200℃×1時間の熱処理を行って塗膜を形成した。製膜後の塗工面に23℃×65RH%下にて、市販のセロハンテープを15分貼り付けた後の90°剥離強度(N/cm)により評価した。
剥離強度2.5N/cm以下であれば実用上問題なく使用できるレベルであり。剥離強度2.0N/cm以下であれば作業性が格段に向上する。
【0041】
[平滑性]
ポリイミドフィルム上に試料を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、150℃×10分の乾燥を行った後、200℃×1時間の熱処理を行って塗膜を形成した。製膜後の表面状態を目視により観察し、下記の評価を行った。
○:表面に斑点等が全く見られない
△:斑点模様が見られる
×:表面の厚みの異なる斑点模様又は縞模様が見られる
【0042】
(製造例1)一次変性ポリアミドイミド樹脂の製造
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、未変性ポリアミドイミド樹脂(A−1)成分であるポリアミドイミド樹脂バイロマックス(登録商標)HR−16NN(東洋紡績(株)製)の15%N−メチル−2−ピロリドン溶液を670重量部(ポリアミドイミド樹脂固形分100重量部)、一次変性剤(B−1)である無水マレイン酸を5重量部を仕込み、フラスコ内を撹拌しながら、フラスコ内の内容物を95℃まで昇温し、そのまま95℃に維持しながら反応させた。反応後、室温まで冷却し、一次変性ポリアミドイミド樹脂を得た。
得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量が3万であった。
【0043】
(製造例2)一次変性ポリアミドイミド樹脂の製造
無水マレイン酸の量を0.1重量部に代えた以外は製造例1と同様にして一次変性ポリアミドイミド樹脂を得た。
得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂は、数平均分子量3万であった。
【0044】
(実施例1)
製造例1で得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂が入れられたフラスコに、エステル化変性剤(B−2)としてポリジメチルシリル基含有アルコールFM−042(チッソ(株)製)5重量部を入れ、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分撹拌して窒素置換を行った。
次いで、フラスコ内の内容物を95℃まで昇温し、そのまま95℃に維持しながら3時間反応させた。反応後室温まで冷却し、変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0045】
(実施例2)
エステル化変性剤(B−2)FM−042の代わりにフッ素化アルキル含有アルコールCHEMINOX FA−8(ユニマテック(株)製)5重量部を用いた以外は実施例1と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0046】
(実施例3)
エステル化変性剤(B−2)ポリジメチルシリル基含有アルコールFM−042(チッソ(株)製)5重量部を10重量部にした以外は実施例1と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
(実施例4)
エステル化変性剤(B−2)フッ素化アルキル含有アルコールCHEMINOX FA−8(ユニマテック(株)製)5重量部を10重量部にした以外は実施例2と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
(比較例1)
未変性ポリアミドイミド樹脂バイロマックス(登録商標)HR−16NN(東洋紡績(株)製)を用いて、離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0049】
(比較例2)
製造例2で得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0050】
(比較例3)
製造例2で得られた一次変性ポリアミドイミド樹脂を用いた以外は実施例2と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0051】
(比較例4)
エステル化変性剤(B−2)ポリジメチルシリル基含有アルコールFM−042(チッソ(株)製)5重量部を0.1重量部にした以外は実施例1と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0052】
(比較例5)
エステル化変性剤(B−2)フッ素化アルキル含有アルコールCHEMINOX FA−8(ユニマテック(株)製)5重量部を0.1重量部にした以外は実施例2と同様にして変性ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液(成形用樹脂組成物)の離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0053】
(実施例5)
実施例1で得られた変性ポリアミドイミド樹脂溶液が入れられたフラスコに、重合反応性化合物FM−0721(チッソ(株)製)を10重量部、熱ラジカル発生剤AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を1重量部を入れ、フラスコ内に窒素ガスを導入しながら30分撹拌を行った。得られた成形用樹脂組成物溶液を用いて離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0054】
(実施例6)
実施例1で得られた変性ポリアミドイミド樹脂の固形分100重量部に対して、未変性ポリアミドイミド樹脂バイロマックス(登録商標)HR−16NN(東洋紡績(株)製)の固形分10重量部を混合して成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物溶液を用いて離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0055】
(実施例7)
未変性ポリアミドイミド樹脂バイロマックス(登録商標)HR−16NN(東洋紡績(株)製)の固形分100重量部を混合した以外は、実施例6と同様にして成形用樹脂組成物を得た。得られた成形用樹脂組成物溶液を用いて離型性及び表面平滑性評価を行い、その結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
市販されているポリアミドイミド樹脂に対して、著しく簡便な樹脂への直接的な反応でカルボキシル基を付与する一次変性剤を混和させ、次いで、このカルボキシル基に対するエステル化変性剤を添加させてなる離型性の良好な変性ポリアミドイミド樹脂を含有する成形用樹脂組成物を提供することができる。
このような成形用樹脂組成物を用いて、ガラス、セラミック、ステン板等の耐熱性基板上で、キュア処理させることで、剥離性に優れるポリアミドイミド樹脂のシート状成形体を調製することができる。
また、このような成形用樹脂組成物を用いることで、従来困難な傾向にあったポリアミドイミド樹脂の射出成形、押し出し成形、圧縮成形又は溶融注型成形等を可能にさせる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)を変性させて得られる変性ポリアミドイミド樹脂(D−1)を含有する成形用樹脂組成物であって、
前記変性樹脂(D−1)が、芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)と一次変性剤(B−1)とを反応させて一次変性樹脂(C−1)を生成した後、さらにエステル化変性剤(B−2)と反応させて得られる樹脂であり、
前記、一次変性剤(B−1)が、芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)の−NH−部位にカルボキシル基を付与する変性剤であり、
前記、エステル化変性剤(B−2)が、カルボキシル基とエステル化反応するゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算数平均分子量が102〜105の範囲にあるフッ素系アルコール及び/またはシリコーン化合物であり
芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部に対して、一次変性剤(B−1)1〜15重量部を反応させ、
一次変性樹脂(C−1)のカルボキシル基に対して、0.1〜2当量のエステル化変性剤(B−2)を反応させて得られることを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項2】
前記、カルボキシル基を付与する一次変性剤(B−1)がジカルボン酸無水物であることを特徴とする請求項1項記載の成形用樹脂組成物。
【請求項3】
変性樹脂(D−1)100重量部と、重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部と、熱ラジカル発生剤(又は熱重合開始剤)0.1〜20重量部とを含有することを特徴とする請求項1項又は2項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載する何れかの成形用樹脂組成物を用いて、押出成形、圧縮成形、溶融注型成形又は射出成形させて得られることを特徴とする芳香族系耐熱性ポリマー成形体。
【請求項5】
請求項1〜3に記載する何れかの成形用樹脂組成物50〜150重量部に、変性前の芳香族系ポリアミドイミド樹脂(A−1)100重量部を添加して得られる混合樹脂組成物(E−1)を含有することを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項6】
前記、混合樹脂組成物(E−1)を用いて押出成形、圧縮成形、注型成形又は射出成形させて得られることを特徴とする芳香族系耐熱性ポリマー成形体。
【請求項7】
前記一次変性樹脂(C−1)100重量部と、前記エステル化変性剤(B−2)10〜200重量部と、前記重合性二重結合に対して重合反応性を有する化合物10〜100重量部とを、常温〜常温以下の温度下に混合させてなる混合樹脂組成物(E−2)を含有することを特徴とする成形用樹脂組成物。
【請求項8】
前記、混合樹脂組成物(E−2)を用いて押出成形、圧縮成形、溶融注型成形又は射出成形させて得られることを特徴とする芳香族系耐熱性ポリマー成形体。

【公開番号】特開2007−217498(P2007−217498A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37967(P2006−37967)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】