説明

ポリアミド成形材料、及び、LEDハウジング部材の製造のための該材料の使用

【課題】発光ダイオード(LED)用の白色ハウジング部材の製造に適した、半芳香族ポリアミドをベースとする成形材料を提供する。
【解決手段】高い強度、高い長期反射率を有し、ブリスタリングがおこりにくいLEDハウジング又はハウジング部材の製造用の半結晶性ポリアミドをベースとするポリアミド成形材料であって、
(A)少なくとも70モル%の芳香族ジカルボン酸、及び、少なくとも70モル%の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子を有する)をベースとする、40〜80質量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(融解温度(Tm)が270℃〜340℃である)、
(B)10〜30質量%の二酸化チタン粒子、
(C)5〜20質量%のガラス繊維、
(D)5〜30質量%の炭酸カルシウム
からなるポリアミド成形材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド成形材料、及び、該材料から製造されるLEDハウジング部材に関し、この成形材料は、基本的に、高融点ポリアミド、白色顔料、炭酸カルシウム及びガラス繊維で構成される。提案されるポリアミド成形材料をベースとして製造されるLED部材は、非常に良い長期反射率と良い機械的特性とに関して着目されるべきである。
【背景技術】
【0002】
発光半導体ダイオード(LED)は、一般的な白熱灯と比べて多くの利点を有するため、多数のアプリケーションのための光源として使用される頻度が高くなっている。LEDは、従来の光源よりも一層経済的であり、必要とするのは低電圧の電流源であり、衝撃に強く、実質的にメンテナンスが不要であり、操作中の不要な熱の発散を低いレベルに抑えられる。これらの利点のために、徐々に従来の白熱灯がLEDに置き換えられており、LEDは、光信号、ディスプレイ(自動車、携帯電話、ビデオ、発光ディスプレイ)での用途、インテリア及びエクステリアのライト及び懐中電灯での用途が見出されている。
上述した集成装置の中でLED自体は、一般的に様々なパーツで構成される部材全体の単なる一部材にすぎない。LEDの集成装置は、少なくとも1個の半導体ダイオード、1個以上のLEDを収容し少なくとも一部を取り囲むハウジング、並びに、ダイオード及び接続要素の間の電気接続から構成される。構成部材の集成装置には、一般的にハウジングに固定され、部分的又は完全にLEDをカバーし、LEDにより発された光を集めるのに役立つレンズを含んでいる。
【0003】
ポリマー材料の射出成形によってLEDハウジングを製造する場合、かなり自由に設計でき、かつ、費用効率の高い製品を提供できる。しかしながら、使用されるポリマーは、このアプリケーションに適した多くの特性に適合しなければならない。LEDは、一般的におおよそ260℃の温度で、いわゆるリフロープロセス(SMT)によって回路ボードにはんだ付けされる。従って、使用されるポリマーは、十分な耐熱性を有しなければならないし、ブリスタリング(表面上のブリスター形成)を起こすことなくリフローはんだ付けに耐えなければならない。また、LEDハウジングは、操作する際の最高限度期間にわたって、最大光量を反射できるように、最大白色度及び良好な反射率を有していなければならない。このことから、ポリマーの組成に関しては、操作条件下における高いUV光安定性と、熱安定性と、良好な長期安定性が要求される。
【0004】
国際公開第2006/135841号公報には、高温ポリアミド組成物及び白色顔料(二酸化チタン)を含む、LEDの集成装置用のハウジングが開示されており、ポリアミドの母材は、融点が270℃超過であり、さらにテレフタル酸に加えて、10〜20個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンを含む。成形材料は、自由選択的に更にフィラーを含んでいても良い。唯一の例で、ガラス繊維が使用される。ガラス繊維を添加することで、機械的特性は改良されるが、長期反射率は劇的に悪化する。例えば、国際公開第2006/135841号公報ではまた、様々な温度で短時間(2時間)熱保存をした後の白色度のみが開示されている。
特開2007-271834号公報は、ポリフタルアミド、無機フィラー、白色顔料及びエポキシ樹脂からなる高融点ポリアミド成形材料から製造されるLED反射体に関する。この文献では、特に、エポキシへの良好な接着が強調されている。しかしながら、反射率に関しては、短期間での特性(170℃で2時間後、又は、260℃で10秒後)のみが試験されている。唯一の例として、20%のガラス繊維、10%の二酸化チタン及び3.5〜10%のエポキシ樹脂を含む、PA 6T/66が開示されている。このような組成では、長期反射率が劣る。
【0005】
欧州特許公開第1 693 418号公報には、ポリフタルアミド及び白色顔料を含み、130℃の温度で4500〜12000 MPaの範囲の弾性率を有する、LED反射体の製造用のポリアミド組成物が開示されている。その実施例においては、ガラス繊維-強化、二酸化チタン-着色成形材料(PA 6T/66をベースとする)のみが加工される。ガラス繊維含有量は、22〜30質量%である。反射率は、48時間室温でハロゲンランプの照射を受けた後に測定される。しかしながら、この集成装置は操作条件(該条件下ではLEDの操作で特有であるような熱と光の作用の組合せが生じてしまう)に全く対応していない。これらの成形材料はまた、長期反射率も不十分である。
【0006】
特開平03-88846公報には、赤外線のリフローはんだづけに耐えうる電気部材のハウジングの製造用のガラス繊維-強化ポリフタルアミド成形材料が開示されている。
欧州特許公開1 466 944号公報には、LED反射体の製造用の半芳香族ポリアミド及びチタン酸カリウム又は珪灰石をベースとする成形材料が開示されている。反射率を改善するために、いくつかの例において、さらに二酸化チタンが使用される。比較例において、本公報に係る発明のチタナートは、ガラス繊維で全て置換され、熱保存後の(180℃、2時間)反射率が明らかに悪化する。実施例で使用される半芳香族ポリアミドは、PA 6T/66及びPA 6T/DTだった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の説明
従って、本発明の目的は、発光ダイオード(LED)用の白色ハウジングのパーツの製造に適した、半芳香族ポリアミドをベースとする成形材料を提供することである。成形材料は、高い長期反射率、ブリスタリングの起こりにくさ、並びに、良好な機械的特性、低い反り性、及び、(特に射出成形における)改良された加工性で特徴付けられるべきものである。高い力学的耐久性は、操作中又は激しい温度変動が起こる事象中でのLEDハウジングの破壊を防ぐために要求される。本明細書中で、「長期反射率」は、LED操作条件、すなわち、熱(120℃)及び光(LED:λmax = 440 nm)の作用下で、高い反射率が最大期間維持されることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本願請求項1のポリアミド成形材料によって、本発明に従って達成される。
具体的には、本発明は、高い強度、高い長期反射率を有し、ブリスタリングがおこりにくい、特にLEDハウジング又はハウジング部材の製造用の半結晶性ポリアミドをベースとするポリアミド成形材料に関する。
本発明のポリアミド成形材料は、特定される質量比で以下の成分(A)〜(D)からなる:
(A)少なくとも70モル%の芳香族ジカルボン酸、及び、少なくとも70モル%の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子を有する)をベースとする、40〜80質量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(融解温度(Tm)が270℃〜340℃である)、
(B)10〜30質量%の二酸化チタン、
(C)5〜20質量%のガラス繊維、
(D)5〜30質量%の炭酸カルシウム。
これらの成分(A)〜(D)の質量%は合わせて合計100%になる。
【0009】
但し、上記は、さらに成分(B)、(C)及び(D)が以下の条件を満たすことを条件として適用される:
・(B) + (C) + (D)が、20〜60質量%である。
・質量比(C)/(D)が、0.25〜1.5である。
ポリアミド成形材料は、成分(A)〜(D)に加えて一般的な添加剤(E)を含んでも良く、その量は、成分(A)〜(D)の合計に加えられる。
【0010】
炭酸カルシウムは、天然の炭酸カルシウムであっても沈殿炭酸カルシウムであっても良い。それは、表面処理形態を含みうる。さらに具体的には、DIN EN ISO 3262-4から-6: 1998-09に従って、チョーク(KAタイプ:少なくとも96%のCaCO3含有量、KBタイプ:少なくとも90%含む)、方解石(Cタイプ:少なくとも98%のCaCO3含有量)及び沈殿炭酸カルシウム(CCPタイプ:少なくとも98%のCaCO3含有量)であってもよい。このような生成物は、表面処理用の添加剤(例えばステアリン酸)を更に含んでも良い。
白色LEDハウジングを用いた実験では、炭酸カルシウム及び二酸化チタンで満たされたポリアミド成形材料によって、良好で不変の長期反射率を有する製品が得られることが示される。しかしながら、これらの純粋な無機物で満たされた製品は、困難を伴う方法でのみ加工されうる、比較的壊れやすい成形材料から得られることが欠点である。さらに、力学的耐久性が不十分であるために、操作中又は厳しい温度変動(熱衝撃)が起こる事象中にLEDハウジングが破砕する。芳香族ポリアミド、特にポリフタルアミドと、二酸化チタンとをベースとしたポリアミド成形材料の機械的特性は、ガラス繊維によって強化することで改良されうる。しかしながら、これらのガラス繊維-強化ポリアミド組成物から製造されたLEDハウジングの長期反射率は、より一層悪化する。
【0011】
ここで、驚くことに、ガラス繊維対炭酸カルシウムの質量比が特定の範囲内、すなわち0.25〜1.5の範囲内で選択される場合に、炭酸カルシウム及びガラス繊維と組み合わされたポリフタルアミド及び二酸化チタンから構成される組成物は、純粋な無機物で満たされた組成物と比較して、長期反射率を達成しうることが分かった。その際、これらの材料の力学的耐久性は、操作中のLEDハウジングの破砕を回避するのに十分なものである。
【0012】
長期反射率の計測:
LEDハウジングの重要な特性は、良好な長期反射性(反射率)を有することであり、この良好な長期反射性(率)とは長期間であってもLEDの高輝度を保証するために、最大期間にわたる操作条件下で、高反射率が維持されなければならないことを意味する。室温でLED(15ワット, λmax = 440 nm)を用いて試験片(カラータイル)を照射した場合、14日後であっても材料に視覚的変化、又はダメージを生じさせない。言い換えると、材料の選択に関して、純粋な照射はLEDハウジング材料の強制ストレス試験を行うことに適していない。熱と照射の同時作用でのみ、照射された部分に表面変化をもたらすので、反射率の値を減少させる。
【0013】
従って、製造された試験片の反射率の変化は、下記に記載されるストレス試験で測定される。加熱用平台上に置いたカラータイル(30 x 30 x 2 mm)を、空気雰囲気中で、下から全面に渡って120℃に加熱し、集束レンズシステム(中核の直径:4 mm, 散乱光の輪の直径:20 mm)を通したLED (15ワット, λmax = 440 nm)によってその中心に上から照射する。反射率を0時間及び24時間後に420及び440 nmの波長で測定する。下記の表1及び2にこれらの2つの値の間の差異を「Δ反射率」として加えて記載する。
反射率をアパーチャー30 mmのDatacolor SF600+分光光度計を用いて23℃にて、寸法30 x 30 x 2 mmのカラータイル上でDIN 6174に従って計測する。
本発明のポリアミド成形材料の好ましい形態では、サンプルが24時間、上述したストレス試験に曝された場合に、試験片の反射率は420 nmで計測される開始点(試験時間:0時間)の値が少なくとも85%であるとすると、25%(Δ反射率)以下だけ低下し、さらに好ましくは20%だけ低下する。
【0014】
半芳香族ポリアミド(成分(A))
本発明のLEDハウジングは、少なくとも1種の高融点ポリアミド(好ましくはポリフタルアミド)、二酸化チタン、ガラス繊維、炭酸カルシウム、及び、安定剤及び別の添加剤からなるポリアミド成形材料から製造される。
好ましい形態では、成分(A)の半芳香族ポリアミドは、少なくとも80モル%の芳香族ジカルボン酸、及び、少なくとも80モル%の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子を有する、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する)をベースとして形成される。
別の好ましい形態は、成分(A)の半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸に関して、本質的に芳香族ジカルボン酸のみをベースとして形成されることを特徴とする。
また、成分(A)の半芳香族ポリアミドの芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸及びこれらの混合物の群から選択されることが好ましい。
別の好ましい形態において、成分(A)の半芳香族ポリアミドの脂肪族ジアミンは、ヘキサンジアミン、デカンジアミン及びこれらの混合物の群から選択される。
【0015】
本発明に従って使用されるポリアミド成形材料のマトリックスは、270℃〜340℃の範囲に融点を有する、少なくとも1種の高融点ポリアミド(成分(A))をベースとする。
好ましく使用されるポリフタルアミドは、テレフタル酸及び脂肪族ジアミン、及び、自由選択的にほかの脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸、及び、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をベースとするポリアミドである。
高融点ポリアミド(成分(A))は、好ましくは、m-クレゾール中(0.5質量%, 20℃)で計測される溶液粘度ηrelが2.6未満であり、好ましくはηrelが2.3未満であり、特にηrelが2.0未満であり、ηrelが少なくとも1.4であり、好ましくはηrelが少なくとも1.5であり、特にηrelが少なくとも1.55である。溶液粘度ηrelは好ましくは、1.5〜2.0の範囲内、より好ましくは、1.55〜1.75の範囲内である。
有用な高融点半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジアミンをベースとするポリアミドである。一部の芳香族ジカルボン酸は、脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸によって置き換えることができる;一部の脂肪族ジアミンは、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジアミンによって置き換えることができる。ジカルボン酸及びジアミンは、ラクタム、及び/又は、アミノカルボン酸によって部分的に置き換えることもできる。
【0016】
従って、高融点ポリアミドは、以下の成分から形成される:
(A1)ジカルボン酸:
70〜100モル%の芳香族ジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸、及び/又は、イソフタル酸(存在する酸の全含有量をベースとする)、
0〜30モル%の脂肪族ジカルボン酸(好ましくは、6〜18個の炭素原子を有する)、及び/又は、脂環式ジカルボン酸(好ましくは8〜20個の炭素原子を有する)、
(A2)ジアミン:
70〜100モル%の少なくとも1種の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子を有する)(存在するジアミンの全含有量をベースとする)、
0〜30モル%の脂環式ジアミン(好ましくは、6〜20個の炭素原子を有する)、及び/又は、芳香脂肪族ジアミン、例えばMXDA及びPXDA、
ここで、高融点ポリアミドにおけるジカルボン酸のモル含有割合は合わせて100%となり、ジアミンのモル含有割合は合わせて100%となり、自由選択的に以下を含む:
(A3)アミノカルボン酸、及び/又は、ラクタムが、
0〜100モル%のラクタム(好ましくは6〜12個の炭素原子を有する)、及び/又は
0〜100モル%のアミノカルボン酸(好ましくは6〜12個の炭素原子を有する)を含む。
成分(A1)及び(A2)が実質的に等モル量で使用されるのに対して、(A3)の濃度は、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、特に20質量%以下((A1)から(A3)の合計をベースとする)である。
【0017】
実質的に等モル量で使用される成分A1及びA2に加えてジカルボン酸(A1)又はジアミン(A2)を使用して、ポリアミド調製物中のモル質量を制御でき、又は、モノマーロスを補うことができるので、1種の成分A1又はA2の全濃度が大部分を占めうる。
成分A1の好適な脂肪族ジカルボン酸は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラッシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸及びオクタデカン二酸である。好適な脂環式ジカルボン酸は、シス-及び/又はトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸及び/又はシス-及び/又はトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸(CHDA)である。
成分(A2)として使用される70〜100モル%に及ぶジアミンは、好ましくは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPD)、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン、1,18-オクタデカンジアミンの群から選択される。これらの中で、好ましいジアミンとしては、1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン及び1,12-ドデカンジアミン、特に、1,6-ヘキサンジアミン及び1,10-デカンジアミン、又は、それらの混合物が用いられる。
【0018】
必須要件として使用される上述の脂肪族ジアミンは、少量である30モル%以下の、好ましくは20モル%以下、特に10モル%以下(ジアミンの全量をベースとする)のほかのジアミンで置き換えても良い。使用される脂環式ジアミンは、例えば、シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4'-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)及び3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)でありうる。芳香脂肪族ジアミンは、例えば、m-キシリレンジアミン(MXDA)及びp-キシリレンジアミン(PXDA)である。
【0019】
記載されたジカルボン酸及びジアミンに加えて、ポリアミド-成形成分(成分(A3))としてラクタム及び/又はアミノカルボン酸を使用することもできる。好ましい化合物は、例えば、カプロラクタム(CL)、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウロラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)である。成分A1及びA2と一緒に使用されるアミノカルボン酸及び/又はラクタムの濃度は、40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である(成分A1及びA2の合計をベースとする)。特に好ましいラクタムは、ラクタム又はα,ω-アミノ酸(4、6、7、8、11又は12個の炭素原子を有する)である。これらのラクタムとしては、ピロリジン-2-オン(4個の炭素原子)、ε-カプロラクタム(6個の炭素原子)、オエナントラクタム(7個の炭素原子)、カプリロラクタム(8個の炭素原子)、ラウロラクタム(12個の炭素原子)が挙げられ、又は、α,ω-アミノ酸としては、1,4-アミノブタン酸、1,6-アミノヘキサン酸、1,7-アミノヘプタン酸、1,8-アミノオクタン酸、1,11-アミノウンデカン酸及び1,12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0020】
ジアミンは、ジカルボン酸よりも揮発性が高い化合物なので、調製プロセスでは、しばしば、ジアミンロスを引き起こす。言い換えると、水の蒸発工程、前濃縮(precondensate)の放出工程、及び、融解相又は固相における後濃縮(postcondensation)の工程で、ジアミンは失われる。従ってジアミンロスを補うために、好ましくはジアミンの全量をベースとして1〜8質量%のジアミン過剰量をモノマー混合物に加える。ジアミン過剰量は、モル量及び末端基(end group)の分布を制御するためにも使用される。モル質量、相対粘度及びフリーフロー又はMVRを制御するために、モノカルボン酸又はモノアミンの形態でのレギュレーターは、混合物及び/又は前濃縮物(後濃縮前)に添加されうる。レギュレーターとして好適な脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸又はモノアミンは、とりわけ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロ酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミンである。レギュレーターは、単独でも組み合わせても使用することができる。レギュレーターとして、アミノ又は酸性基とともに反応できるほかの単官能基の化合物、たとえば、無水物、イソシアナート、酸ハライド又はエステルを使用することもできる。レギュレーターの一般的な使用量は、ポリマーkgあたり10〜200 mmolである。
【0021】
半芳香族コポリアミド(A)は、それ自体知られているプロセスによって調製されうる。好適なプロセスは、様々な文献等に記載されており、特許文献で言及されている可能なプロセスのいくつかは、ここに特定される;ここで引用される文献の開示内容は、本発明の成分(A)のコポリアミドを調製するプロセスに関して本願の開示内容に明確に組み込まれる:ドイツ国特許公開第195 13 940号公報、欧州特許公開第0 976 774号公報、欧州特許公開第0 129 195号公報、欧州特許公開第0 129 196号公報、欧州特許公開第0 299 444号公報、米国特許出願第4,831,106号明細書、米国特許出願第4,607,073号明細書、ドイツ国特許公開第14 95 393号公報及び米国特許出願第3,454,536号明細書。
【0022】
共通して最も使用され、成分(A)の製造に適したものは、まず低粘度で低モル量での前濃縮をして、次いで固相又は融解相で(例えば押出機中にて)後濃縮する2段階の調製である。3段階プロセスも可能であり、これはドイツ国特許公開第696 30 260号公報で特定されたように1.前濃縮、2.固相ポリマー化、及び3.融解ポリマー化から構成される。この文献に記載されるプロセスは、本願の開示内容に明確に組み込まれる。また300℃未満の融点を有する製品に適しているのは、例えば、米国特許出願公開第 3,843,611及び米国特許出願公開第 3,839,296に記載される1段階のバッチプロセスであり、これらの文献によると、モノマー又はそれらの塩の混合物を1〜16時間、250〜320℃の温度に加熱し、次いで、圧力を気体材料の蒸発(自由選択的に不活性ガスも含まれる)による最大値から1 mm Hgに至る最低圧力に減少させる。
【0023】
本発明のポリアミドの具体例としては、PA 4T/4I、PA 4T/6I、PA 5T/5I、PA 6T/6、PA 6T/6I、PA 6T/10T、PA 6T/10I、PA 9T、PA 10T、PA 12T、PA 10T/10I、PA10T/12、PA10T/11、PA 6T/9T、PA 6T/12T、PA 6T/10T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12及びそれらの混合物である。成分(A)の半芳香族ポリアミドは、特に好ましくは、PA 6T/6I、PA 6T/10T、PA 6T/10T/6I及びそれらの混合物の群から選択される。
【0024】
本発明に従うと、好ましい高融点ポリアミド(A)は、特に、以下の半芳香族コポリアミドである:
・ 半結晶性ポリアミド6T/6I(50〜80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミドユニット、及び、20〜50モル%のヘキサメチレンイソフタルアミドユニットを含む);
・ 半結晶性ポリアミド6T/6I(55〜75モル%のヘキサメチレンテレフタルアミドユニット、及び、25〜45モル%のヘキサメチレンイソフタルアミドユニットを含む);
・ 半結晶性ポリアミド6T/6I(62〜73モル%のヘキサメチレンテレフタルアミドユニット、及び、25〜38モル%のヘキサメチレンイソフタルアミドユニットを含む);
・ 半結晶性ポリアミド6T/6I(70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミドユニット、及び、30モル%のヘキサメチレンイソフタルアミドユニットを含む);
・ 半結晶性ポリアミド(少なくとも50モル%のテレフタル酸及び多くても50モル%のイソフタル酸、及び、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミン及びデカンジアミンの群から選択される少なくとも2種のジアミンの混合物から調製される);
・ 半結晶性ポリアミド(少なくとも70モル%のテレフタル酸及び多くても50モル%のイソフタル酸、及び、ヘキサメチレンジアミン及びドデカンジアミンの混合物から調製される);
・ 半結晶性ポリアミド6T/10T(10〜60モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)及び40〜90モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)ユニットを含む);
・ 半結晶性第3級ポリアミド6T/10T/6I(50〜90モル%、好ましくは50〜70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)及び5〜45モル%、好ましくは10〜30モル%のヘキサメチレンイソフタルアミドユニット(6I)及び5〜45モル%、好ましくは20〜40モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)ユニットを含む)
【0025】
二酸化チタン(成分(B))
本発明のポリアミド成形材料は、10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%、最も好ましくは17〜23質量%の二酸化チタン (成分B)を含む。
二酸化チタンは、アナターゼ型であってもルチル型であってもよいが、好ましくは、熱及び風化に対する優れた安定性のためにルチル型である。二酸化チタンは、表面処理されていることが更に好ましい。二酸化チタンは、顔料として多数のマトリクス材料で利用されている。夫々の場合で用途と加工性に関して、顔料-マトリクスの組合せで生じる様々な特定の要求に適合させるために、ベース材料である純二酸化チタンに、粒子表面の改良のための特定の後処理プロセスを受けさせる。
好ましくは、無機表面処理剤、特に、無機及び有機表面処理剤の組合せが、二酸化チタンの後処理のために使用される。二酸化チタンは、好ましくは、まず、無機層でコートされ、次いで、有機コーティングが施される。好ましくは、無機コーティングは酸化金属である。二酸化チタンの一次粒子のシリコン化合物、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物を用いたコーティング(好ましくは、特定の酸化金属でなされる)と、さらなる有機修飾によって、白色顔料の一連の使用関連特性が改良される。
【0026】
無機表面処理によって、顔料粒子はAl2O3、ZrO2及びSiO2化合物のコーティングを受ける。このことは、主にポリマーの光触媒分解を阻害する目的で行われる。加工用の顔料を様々なポリマーマトリクスに適合させるために、それらに、有機表面処理剤、例えば、カルボン酸、ポリオール、アルカノールアミン、及び、ポリシロキサンの第二コーティングを受けさせる。ポリシロキサン処理は、無機顔料表面の極性表面を、あまり極性が高くはない表面に変換させる。このことは、顔料粒子とポリマー分子とのぬれ性を増進させ、該ぬれ性により分散性が良くなる。顔料のデリバリープロパティー(delivery properties)もプラスに影響を受けるので、吸湿性が低減される。
フリーラジカルの形成及びそれらのポリマーマトリクスへの移動を阻害する一つの方法は、絶縁酸化物、例えば、シリカ(SiO2)又はアルミナ(Al2O3)の層で夫々の二酸化チタン粒子を完全にコーティングすることである。光学的特性の最適条件を有する二酸化チタンの安定性のために使用される最も重要な方法は、クロリドプロセス、及び、無機高性能後処理から得られる二酸化チタンベース材料のドーピングである。クロリドプロセスからのベース材料のドーピングは、電子/ホール対の形成を防ぐので、高エネルギーのフリーラジカル数を減少させる。このような修飾二酸化チタン粒子の無機コーティングは、特定の沈殿したシリカ及び/又はアルミナ、及び少量の副次的要素からなる。コーティング中のこれらのドーピング剤は、存在するフリーラジカルといくらか反応し、有害な生成物を形成する。これらの方法で安定化された二酸化チタンは、高い老化安定性及び最大の風化安定性に関して注目され、本発明では好ましく使用される。
【0027】
二酸化チタン粒子の形状は、特に制限されるわけではなく、適当にフレーク状又は球体又は不確定形状の形態をとることができる。二酸化チタン粒子の平均粒子直径は、好ましくは、約0.1〜5μmであり、特に0.2〜1μmである。質量分布の中央値d50mは、好ましくは0.3〜0.6μmであり、数分布の中央値d50nは、好ましくは0.1〜0.4μmである。ポリアミドマトリクス中の二酸化チタンの分散性を改良するために、シリコーンオイル、ポリオール又は他の補助剤を使用することができる。
有機コーティングとして好適なカルボン酸の例としては、アジピン酸、テレフタル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ポリヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、サリチル酸、ヒドロキシコハク酸、マレイン酸が挙げられる。用語「カルボン酸」には、記載されたカルボン酸の塩、エステル、及びアミドが含まれる。
有機コーティングに好ましいシリコン化合物の例としては、シリカート、有機シラン及び有機シロキサン、例えば、オルガノアルコキシシラン、アミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン及びポリヒドロキシシロキサンが挙げられる。好ましいシランは、式RxSi(R')4(式中、Rは非加水分解性の脂肪族、脂環式又は芳香族基(1〜20個の炭素原子を有する)であり、R'は1種以上の加水分解性基、例えば、アルコキシ、ハロゲン、アセトキシ又はヒドロキシル基であり、xは1、2又は3である)を有するシランである。
【0028】
特に好ましいシランには、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び、これらの2種又はそれ以上の組合せが含まれる。同様に好適なほかのシランとしては、Rは8〜18個の炭素原子を有するラジカルであり、R'はクロロ、メトキシ、エトキシ及びヒドロキシル基の群から選択される1種以上である。
有機コーティングが存在する場合には、その質量割合は、コートされる二酸化チタンをベースとして0.1〜10%、好ましくは0.5〜7%、最も好ましくは0.5〜5%である。
好ましい無機コーティングの例としては、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、リン、亜鉛、希土類金属などの元素の酸化金属及びヒドロキシオキシドが挙げられる。
好ましい酸化金属は、酸化アルミニウム及び二酸化シリコンである。無機コーティングは、コートされた二酸化チタンをベースとして0.25〜50%、好ましくは1.0〜25%、最も好ましくは2〜20%の質量割合にほぼ相当する。
【0029】
ガラス繊維(成分(C))
記載された成形材料の特徴は、ガラス繊維によって適度に補強されることであり、このガラス繊維は、全ポリアミド成形材料をベースとして、5〜20質量%、好ましくは7〜17質量%、最も好ましくは8〜15質量%の濃度範囲内で使用される。
ガラス繊維は、好ましくはEガラスからなる。しかしながら、全てのほかのガラス繊維タイプ、例えば、A、C、D、M、S、R ガラス繊維、又は、これらのいずれかの好ましい混合物又はEガラス繊維を含む混合物を使用することもできる。ガラス繊維は、長繊維の形態又はチョップトガラス繊維の形態で加えられ、好適なサイズシステムを有する繊維及び接着促進剤又は接着促進剤システム(例えば、シラン、アミノシラン又はエポキシシランをベースとする)を提供することができる。好ましくは、E又はSガラスの短ガラス繊維として知られるチョップト繊維が使用される。
好ましいガラス繊維は、円形断面を有するガラス繊維(円形ガラス繊維)、及び、非円形断面を有するガラス繊維(フラットガラス繊維)の双方である。
円形ガラス繊維の直径は、5〜20μm、好ましくは5〜15μm、より好ましくは7〜12μmである。
【0030】
また、好ましくは、本発明の成形材料において、非円形の横断面を有するガラス繊維(フラットガラス繊維)、特に、長円、楕円、コクーン型(2以上の円形ガラス繊維を長手方向に互いに結合する)又は長方形のガラス繊維を使用することもできる。次いで、これらの成形材料は、成形材料から製造される成形物において、特に横手方向の剛性と強度に関して利点を示す。好ましく使用されるフラットガラス繊維(成分(C))は、平面型で非円形の断面積を有する短ガラス繊維(チョップトガラス)であり、互いに直行する断面軸の比が2より大きいか2と等しく、小さな断面軸の長さは3μm以上である。ガラス繊維がまさに実質的に長方形断面を有することが特に好ましい。ガラス繊維は、長さが2〜50mmのチョップトガラスの形態である。本発明の成形材料中のフラットガラス繊維の濃度は、5〜20質量%であり、好ましくは7〜17質量%であり、特に8〜15質量%である。
既に詳述したように、フラットガラス繊維(C)は、チョップトガラスの形態で本発明に従って使用される。これらのガラス繊維の直径は、小さな断面軸では3〜20 μmであり、大きな断面軸では6〜40 μmであり、互いに直行する断面軸の比(主軸対第二軸の比)が2〜6であり、好ましくは3〜5であり、最も好ましくは約4である。
【0031】
炭酸カルシウム(成分(D))
本発明のポリアミド成形材料の別の主成分は、炭酸カルシウム(成分D)であり、成分(D)は、成形材料中で5〜30質量%の割合で、好ましくは10〜25質量%の割合で、最も好ましくは10〜20質量%の割合で存在する。
成分B(二酸化チタン)、C(ガラス繊維)及びD(炭酸カルシウム)は、合わせて20〜60質量%の割合でポリアミド成形材料を構成する。
質量比(C):(D)は、0.25〜1.5であり、好ましくは0.3〜1.2であり、より好ましくは0.4〜1.0であり、最も好ましくは0.5である。
好適な炭酸カルシウム無機物は、粉末の天然型及び沈殿型(PCC)の双方であって、好ましくは少なくとも97質量%の炭酸カルシウム含有量及び多くとも0.2質量%のFe2O3含有量を有する。天然に生じる形態に従って、チョーク、粉末の方解石, 粉末の大理石及び粉末の石灰石の間で区別される。好ましい結晶構造は、アラゴナイト及び方解石であり、好ましくは針状、葉巻型、及び、立方晶系結晶型で得られる。特に好ましいのは、葉巻型結晶型(例えば、製品Socal P2又はP3(Solvay Chemicals製)によって得られる)である。粉末の天然型チョークの例としては、Hydrocarb、Setacarb-OG (極細)、のCalcigloss-GU(極細の粉末の大理石)(Pluss-Staufer AG製)が挙げられる。
【0032】
天然の炭酸カルシウムフィラーは、段階的な粉砕粉末度の範囲で使用できる。この段階的な粉砕粉末度は、d50m値がおおよそ1μmで最大の粒子サイズが6〜10 μmの極細製品から、狭い粒子サイズ分布のmm範囲内の破片型にまで及ぶ。比表面積は、1〜10 m2/gであるが、粉砕が最も細かく行われた場合にのみ10 m2/gとなりうる。PCC型の場合、細かいタイプでは、比表面積は6〜10m2/gであり、微細タイプでは、比表面積は20〜35m2/gである。
熱可塑性物質中の炭酸カルシウムの分散性を改善するために、好適な表面処理(コーティング)によって炭酸カルシウムを親油性にすることができる。表面処理の好適な薬剤は、例えば、カルシウムステアラート及びステアリン酸、及び二酸化チタンの有機表面処理のために既に言及されたカルボン酸である。
【0033】
LEDハウジング/ハウジング
用語「LED集成装置」は、少なくとも1個の発光半導体ダイオード、ダイオードと電流源との接続のための電気接続、及び、ダイオードを部分的に取り囲むハウジングからなる部材を示す。自由選択的に、このLED集成装置は、部分的又は完全にLEDをカバーし、LEDによる発光を集めるのに役立つレンズを含んでも良い。
従って、使用されるポリマーは、十分な耐熱性を有しなければならないし、ブリスタリング(表面上のブリスター形成)を起こすことなくリフローはんだ付けに耐えなければならない。また、LEDハウジングは、最高稼動期間にわたって、最大光量を反射できるように、最大白色度及び良好な反射率を有していなければならない。このことから、ポリマーの組成に関しては、操作条件下における高いUV光安定性と、熱安定性と、良好な長期安定性が要求される。本発明のポリアミド成形材料は、上述した全ての要求を満たし、特に非常に良い長期反射率が重要な点となる。このLED集成装置のハウジングは、一つのピース又は二つかそれ以上の個々のピースから製造されうる。ハウジング全体、又は少なくとも1つのハウジングのパーツは、本発明の成形材料から製造される。次いで、残りのハウジングのパーツは、他のポリマー又はセラミック材料から製造されうる。個々のハウジングのパーツは、機械的に互いに接合されるか、互いに接着接合されるか、組み合わされて熱可塑性の成形材料、例えば、本発明のポリアミド成形材料でオーバーモールドすることでユニットを形成する。ハウジング又はハウジングのパーツは、公知の熱可塑性成型プロセス、例えば射出成形によって本発明の成形材料で製造される。ハウジング又はハウジングのパーツはまた、ハウジング中のLEDに電気接続させる金属のリードフレーム(好ましくは銅又は銀めっきされた銅)をポリアミド成形材料でオーバーモールドすることによって製造される。
【0034】
ハウジングは、好ましくは定義された領域中にくぼみ(空洞)を有し、該くぼみは、LEDが中に挿入され、かつ、与えられる出口オリフィス又はマウントされたレンズの方向にLEDから放射される光のための反射体として働く。くぼみは、シリンダー型、円錐型、又は放物型、又は、いずれかの曲面形態を有し、好ましくは滑らかな表面を有する。くぼみの壁は、好ましくは、ダイオードに平行に向けられるか、実質的に平行に向けられる。適宜レンズは、LEDのくぼみ上に配置されてもよく、例えば、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂又は架橋された透明ポリアミドからなる。
本発明のハウジング又はハウジングのパーツは、例えば以下のアプリケーション:信号灯、ビデオディスプレイ、視覚的ディスプレイ装置、インテリア及びエクステリアの灯、携帯電話のディスプレイ、投光照明、自動車のブレーキ灯及びバックライト、テレビ、コンピューター、ノート型パソコン(laptop)又はノートパソコン(notebook)のバックライト用のディスプレイ、例えば道路用のフロアライト、懐中電灯で使用されるLED集成装置に組み込まれる。
別の形態は、独立項で特定される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好ましい形態の記載
実施例を参照して、以下にさらに本発明を説明し支持する。以下に詳述される実施例は本発明の説明と支持の目的にのみ利用され、それらは限定的な方法で上記の一般用語で記載され、かつ、請求の範囲で定義されるような本発明を解釈するために使用されるべきではない。
実施例において、以下の出発材料が本発明の成形材料の製造のために使用される。
【0036】
成分(A):
ポリマー 1:ポリアミド 6T/6I (70:30)(融点が325℃であり、溶液粘度ηrelが1.59(m-クレゾール中, 0.5質量%, 20℃)である)
ポリマー 2:ポリアミド 6T/10T (15:85)(融点が295℃であり、溶液粘度ηrelが1.68(m-クレゾール中, 0.5質量%, 20℃)である)

成分(B):
二酸化チタン タイプA: Ti-Pure R-104 (DuPont)
二酸化チタン タイプB: Kronos 2222 (Kronos Inc.)

成分(C):
ガラス繊維1 Vetrotex 995;円形の標準的なガラス繊維(円形断面のポリアミド, 繊維長さ4.5 mm, 直径 10μm);
ガラス繊維2 NITTOBO CSG3PA-820(フラットガラス繊維, 長さ3 mm, 主断面軸がおおよそ7〜28μmであり、これに応じて断面軸の比がおおよそ4である, アミノシランサイズ, NITTO BOSEKI, Japan)

成分(D):
Socal P3 (Solvay)
【0037】
成形材料の製造及びそのプロセス:
表1及び2に記載された量(それぞれ質量%を示す)で、出発材料を、Werner&Pfleiderer ZSK25 二軸押出機を用いて混合し、対応する成形材料を得た。成分A、B及びDをはかりで計測してから、押出機の導入ゾーンに移した。ガラス繊維(成分B)、及び、適宜、成分Dの一部をサイドフィーダにより供給した。成分を300〜340℃で均質化した。成形材料をストランドとして押出して、水浴で冷却し、次いで、ペレット化した。ペレットを0.05%未満の含水率になるまで乾燥させて、射出成形機(バレル温度:330℃, 成形温度:130℃)で加工して、試験片を得た。
下記の試験を下記の標準に従って下記の試験片を用いて行った。
【0038】
引張弾性係数、最大抗張力及び引張破壊応力:
ISO 527(引張速度5 mm/分)
ISO 引張試験片, 標準:ISO/CD 3167, A1タイプ, 170 x 20/10 x 4 mm, 温度 23℃

熱的特性:融点:
ISO標準 11357-11-2;ペレット;示差走査熱量測定(DSC)を熱速度20℃/分で行った。

相対粘度:
DIN EN ISO 307(0.5質量%のm-クレゾール溶液中, ペレット温度 20℃)
【0039】
長期反射率:
加熱用平台上に置いたカラータイル(30 x 30 x 2 mm)を、空気雰囲気中で、下から全面に渡って120℃に加熱し、集束レンズシステム(中核の直径:4 mm, 散乱光の輪の直径:20 mm)を通したLED (15ワット, λmax = 440 nm)によってその中心に上から照射した。反射率を0時間(開始時)及び24時間後に420及び440 nmの波長で測定した。
反射率をアパーチャー30 mmのDatacolor SF600+分光光度計を用いて23℃の温度にて、寸法30 x 30 x 2 mmのカラータイル上でDIN 6174に従って計測した。

熱サイクル試験における機械的安定性:
夫々の場合において、リードフレーム上に射出成形された100個のLEDハウジングを150℃に加熱されたオーブン(強制空気)で3分間、150℃に加熱した。次いで、このサンプルを-60℃の温度の冷却ボックスに3秒間以内に移して、3分間その中で保持し、それらを150℃に加熱されたオーブンに3秒以内に戻した。このサイクルを50回行った。1%よりも大きいLEDハウジングが、この熱サイクル試験の間にクラック形成を被った場合、試験は、失敗とした。表中、これをクラック形成として「C」と示し、クラック形成されなかった場合には「NC」と示す。
【0040】
結果の考察:
本発明に従った様々な実施例1〜8及び比較例1〜8のサンプルの最終的な特性を表1及び表2にまとめた。
本発明の成形材料から製造される全ての試験片は、波長420及び440 nmで計測される反射率の良い開始値を等しく達成し、それらの比較変形型も同様だった。LED光源を用いて高い強度で照射しながら同時に120℃で24時間保存した後、本発明の成形材料の反射率の落ち込みは、比較例の場合と比較して少なかった。さらに特別には、タイプ1ポリマーをベースとする試験片は、長時間の加熱と照射の後でさえも、反射率の高い値を保ったままであったので、さらに、LEDハウジング又はハウジングのパーツの製造に非常に適している。
比較例2のLEDハウジング(ガラス繊維で強化されていない)は、満足のいく長期反射率を示すが、非常に砕けやすく、加工が困難で、機械的安定性が不十分であり、熱サイクル試験でクラックが生じてしまう。
比較例7及び8は、本発明にかかる実施例と同様に、二酸化チタンだけでなく、成分C (ガラス繊維)及び成分D(炭酸カルシウム)も含むが、本発明の比である0.25〜1.5の範囲では含まない。比較例7においては、ガラス繊維対炭酸カルシウムの質量比が2.0である。 実施例1と比較すると、長期反射率が非常に低い。比較例8においては、ガラス繊維対炭酸カルシウムの質量比が0.20である。ここで、長期反射率を実施例1と比較したが、この成形材料で製造されたLEDハウジングは、熱サイクル試験中に、ほんの数回サイクル行った後に、クラック形成を被った。言い換えると、これらのLEDハウジングの機械的安定性は不十分だった。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い強度、高い長期反射率を有し、ブリスタリングがおこりにくいLEDハウジング又はハウジング部材の製造用の、半結晶性ポリアミドをベースとするポリアミド成形材料であって、
(A)少なくとも70モル%の芳香族ジカルボン酸、及び、少なくとも70モル%の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子を有する)をベースとする、40〜80質量%の少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(融解温度(Tm)が270℃〜340℃である)、
(B)10〜30質量%の二酸化チタン粒子、
(C)5〜20質量%のガラス繊維、
(D)5〜30質量%の炭酸カルシウム
からなり、
成分(A)〜(D)の質量%は合わせて合計100%になるポリアミド成形材料
(但し、成分(B)、(C)及び(D)は、
(B) + (C) + (D)が、20〜60質量%であり、
質量比(C)/(D)が、0.25〜1.5であるとの条件を満たし、
ポリアミド成形材料は、成分(A)〜(D)に加えて一般的な添加剤(E)を含んでも良く、その量は、成分(A)〜(D)の合計に加えられる)。
【請求項2】
成分(D)が、10〜25質量%、好ましくは10〜20質量%の炭酸カルシウムで形成される、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
成分(B)が、15〜25質量%の二酸化チタン粒子で形成される、請求項1又は2に記載のポリアミド成形材料。
【請求項4】
成分(B)が、有機材料又は無機材料でコートされた二酸化チタン粒子で形成される、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項5】
二酸化チタン粒子の平均粒子径が、0.1〜5μm、特に0.2〜1μmであり、及び/又は
質量分布の中央値d50mが、0.3〜0.6μmであり、及び/又は
数分布の中央値d50nが、0.1〜0.4μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
質量比(C)/(D)が、0.3〜1.2、好ましくは0.4〜1.0、より好ましくは約0.5である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項7】
成分(C)が、7〜17質量%、特に8〜15質量%の円形又は非円形の断面積を有するガラス繊維で形成され、又は
前記ガラス繊維の混合物が使用され、
非円形の断面積の場合には、断面積は好ましくは、長円、楕円、長方形、又は、コクーン型である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項8】
成分(A)の半芳香族ポリアミドが、
少なくとも80モル%の芳香族ジカルボン酸及び少なくとも80モル%の脂肪族ジアミン(4〜18個の炭素原子、好ましくは6〜12個の炭素原子を有する)をベースとして形成される、請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項9】
成分(A)の半芳香族ポリアミドが、ジカルボン酸に関して、本質的に芳香族ジカルボン酸のみをベースとして形成される、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
成分(A)の半芳香族ポリアミドの芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項11】
成分(A)の半芳香族ポリアミドの脂肪族ジアミンが、ヘキサンジアミン、デカンジアミン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項12】
成分(A)の半芳香族ポリアミドが、PA 4T/4I、PA 4T/6I、PA 5T/5I、PA 6T/6、PA 6T/6I、PA 6T/10T、PA 6T/10I、PA 9T、PA 10T、PA 12T、PA 10T/10I、PA10T/12、PA10T/11、PA 6T/9T、PA 6T/12T、PA 6T/10T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、及び、これらの混合物の群から選択され;
成分(A)の半芳香族ポリアミドが、特に好ましくは、PA 6T/6I、PA 6T/10T、PA 6T/10T/6I、及び、これらの混合物の群から選択される、請求項1〜11のいずれかに記載のポリアミド成形材料。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載されたポリアミド成形材料から形成されたLEDハウジング又はLEDハウジング部材。
【請求項14】
LEDハウジング又はLEDハウジング部材の製造用の、請求項1〜12のいずれかに記載のポリアミド成形材料の使用。

【公開番号】特開2011−241398(P2011−241398A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110334(P2011−110334)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(510022808)エーエムエス−パテント アクチェンゲゼルシャフト (12)
【Fターム(参考)】