説明

ポリアミド透湿膜及びその製造方法

【課題】
高い水蒸気透過性能と高い強度を両立した高性能なポリアミド透湿膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
ポリアミドを溶解したポリアミド溶液を吐出して凝固浴にて凝固させる熱誘起相分離法によるポリアミド透湿膜の製造方法であって、前記ポリアミド溶液中のポリアミドの濃度が35質量%〜60質量%で製膜するものであり、引張強度が10MPa以上、耐圧強度が0.7MPa以上、水蒸気透過速度が1×10-3〜2000×10-3cm/cm・sec・cmHgである。このポリアミド透湿膜は、高い水蒸気透過性と水蒸気分離性を持ち、空気の除湿、加湿等の用途に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド透湿膜及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、加湿膜、除湿膜等として有効に用いられるポリアミド透湿膜及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業生産における工場室内の空調などに用いられる空気の除湿には、冷凍機式や吸着式などの除湿機が多く利用されているが、冷凍機式除湿機は装置が大型で消費電力も大きく、吸着式除湿機は吸着剤の交換が頻繁に必要であるという問題があった。これらのことから、近年ではメンテナンスが簡便でコスト面でも有利な膜式除湿機の利用が注目されている。また、将来の電力発電として有望視されている固体高分子型燃料電池においては、発電電力の高出力を維持する為には、電解質膜が適度に加湿されていることが重要であり、軽量、小型の加湿器として膜式の加湿膜を利用することが注目されている。
【0003】
これら除湿膜、加湿膜に用いられる膜としては、ポリエーテルイミド製の高分子膜(例えば、特許文献1参照)、ポリイミド製の高分子膜(例えば、特許文献2参照)、フッ素樹脂製のイオン交換膜(例えば、特許文献3参照)などが知られている。しかしながら、前記ポリエーテルイミド、ポリイミド製の中空糸膜は、耐圧強度が優れるものの親水性が必ずしも高くなく、水蒸気の溶解・拡散機構に適したものではないことから、該中空糸膜の透湿性能は十分ではないという問題があった。さらに、ポリエーテルイミド、ポリイミドは、樹脂自体の耐有機溶剤性が高くないため、油等が混入する環境での除湿膜、透湿膜としての使用には制約があった。さらに、前記フッ素樹脂製のイオン交換膜は、水蒸気の分離係数は比較的大きいものの、実用上の強度が不足しているため、該イオン交換膜にスルホン酸共重合体を塗布する必要があり、得られる塗布後のイオン交換膜は、結果として水蒸気透過速度が劣り、実用的ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−38173号公報
【特許文献2】特開2007−90348号公報
【特許文献3】特開平1−189326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水蒸気透過性と強度を兼ね備える除湿膜、加湿膜等として好適に使用できる透湿膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、熱誘起相分離法を用いてポリアミド透湿膜を作製するにあたり、製膜原液中のポリアミドの濃度を35質量%〜60質量%として製膜することにより、得られるポリアミド透湿膜が、十分な強度を有し、かつ、高い水蒸気透過性能を有することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ポリアミドからなる中空糸膜状の透湿膜であって、引張強度が10MPa以上、耐圧強度が0.7MPa以上、水蒸気透過速度が1×10-3〜2000×10-3cm/cm・sec・cmHgであることを特徴とするポリアミド透湿膜。
(2)前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10Tからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする(1)記載のポリアミド透湿膜。
(3)150℃以上の沸点を有し、かつ、100℃未満の温度では前記ポリアミドと相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で前記ポリアミドを溶解して製膜原液とし、100℃以上の温度に制御した前記製膜原液を100℃未満の凝固浴に押し出して中空糸を形成し、その後、前記中空糸を溶媒に浸漬して前記有機溶媒を除去するポリアミド中空糸膜の製造方法であって、前記製膜原液中のポリアミドの濃度が35質量%〜60質量%であることを特徴とする(1)又は(2)記載のポリアミド透湿膜の製造方法。
(4)前記ポリアミドを溶解する溶媒が、非プロトン性極性溶媒、アルコール類から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(3)記載のポリアミド透湿膜の製造方法。
(5)前記製膜原液に、ポリアミド100質量部に対して、1〜40質量部のポリビニルアルコールを共存させることを特徴とする(3)又は(4)記載のポリアミド透湿膜の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い水蒸気透過性能と高い強度を両立した高性能なポリアミド透湿膜を得ることができる。本発明のポリアミド透湿膜は、一般家庭、学校、病院等の居住スペースやクリーンルーム、及び植物栽培施設等の工場での湿度調整、工業用の乾燥空気製造、燃料電池電解質膜の加湿などの分野で、好適に用いることができる。本発明のポリアミド透湿膜は、他の中空糸透湿膜と比較しても水蒸気透過性が高く、装置をコンパクト化できると共に耐油性が高いことから様々な所で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のポリアミド透湿膜を製造する方法の一実施態様を示す装置図である。
【図2】本発明のポリアミド透湿膜を製造するための紡糸口金の模式図である。
【符号の説明】
【0009】
1:攪拌モーター
2:加圧ガス流入口
3:コンテナ
4:定量ギアポンプ
5:内部液導入口
6:紡糸口金
7:凝固浴
8:中空糸
9:巻き取り機
10:溶媒抽出浴
11:内部液流入孔
12:製膜原液流入孔
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリアミドは、分子中にアミド結合を有するポリアミドであれば特に限定されないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T等が好適に用いられ、これらの中でポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、MXDポリアミド−6、ポリアミド9T、ポリアミド10Tが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミドMXD−6が、親水性が高いことからさらに好ましい。ポリアミドは架橋されていても良いし架橋されていなくても良い。
【0011】
ポリアミドの相対粘度は、高強度の観点から、2.0〜6.0の範囲が好ましく、3.5〜6.0の範囲がさらに好ましい。ポリアミドは1種類で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、ポリアミドと他の樹脂を混合して用いることもできる。
【0012】
本発明のポリアミド透湿膜の引張強度は、10MPa以上が必要であり、10MPa〜50MPaが好ましく、12MPa〜30MPaがさらに好ましい。引張強度が10MPaより低いと、透湿膜モジュール作製時に膜破断などを引き起こしたり、透湿膜の耐圧性能が経時で低下したりする問題がある。引張強度が50.0MPaを超えても、もはや得られる利点は少ない。
【0013】
本発明のポリアミド透湿膜の破断伸度は、30〜300%が好ましく、さらに好ましくは50〜200%である。破断伸度が小さいと、少しの衝撃によって折れてしまい、例えばモジュール化する際に、加工張力により変形してしまう問題があり好ましくない。
【0014】
本発明のポリアミド透湿膜の弾性率は、100〜1200MPaが好ましく、さらに好ましくは120〜800MPaである。弾性率が小さくなりすぎると、例えばモジュール化する際に、加工張力で伸びるなど取扱いが難しくなり好ましくない。また弾性率が高すぎると、モジュール化の際に膜が硬すぎて取扱いが難しくなる問題がある。
【0015】
本発明のポリアミド透湿膜の耐圧強度は、0.7MPa以上が必要であり、0.7MPa〜2.0MPaが好ましく、0.8MPa〜1.6MPaがさらに好ましい。耐圧強度が0.7MPaより低い場合は透湿膜と使用する際にかかる圧力に耐えずバーストを起こすことから実用上問題があり、2.0MPaを超えてももはや得られる利点は少ない。
【0016】
ここで、本発明の耐圧強度は、JIS K−3832−1990に記載の「精密ろ過膜エレメント及びモジュールのバブルポイント試験方法」に準じ25℃で測定を行なう。具体的には、ポリアミド透湿膜を300mm長に切断した物を10本束ね、U字型に曲げて端部を揃えて封止のため端部を熱シールする。これを外径8mm、内径5mmのナイロン製エアチューブを50mmに切断し、片端を封止したチューブに差し込み、2液混合型ポリウレタン接着剤を流し込んで端部50mmをポッティングする。ポリウレタン接着剤が硬化した後、封止された端部から20mmの部分で切断し、端部断面に全ての中空部分が露出したものを耐圧強度測定用モジュールとする。このモジュールをイソプロパノールに浸漬して十分に湿らせ、空気ラインに接続して中空内側に徐々に空気圧をかける。中空糸膜が破裂する直前の圧力を耐圧強度(MPa)とする。
【0017】
本発明のポリアミド透湿膜の水蒸気透過速度は、1×10-3〜2000×10-3cm/cm・sec・cmHgが必要であり、10×10-3〜1000×10-3cm/cm・sec・cmHgが好ましい。水蒸気透過速度が1×10-3cm/cm・sec・cmHg未満の場合は、水蒸気が効率良く透過できず、2000×10-3cm/cm・sec・cmHgを超える場合は、水蒸気のみならず他の気体も透過し分離係数が下がるため、いずれの場合も透湿膜として好ましくない。
【0018】
本発明のポリアミド透湿膜の水蒸気透過速度の測定方法は、200mm長のポリアミド透湿膜10本を束ねて10mmφ×150mm長のステンレス製の管に挿入して両端をポッティング後、切断し、端部断面に全ての中空部分が露出した有効長100mmのミニモジュールを作製する。次に、前記ミニモジュールを構成する各ポリアミド透湿膜の内側に、25℃の飽和水蒸気を圧力0.7MPa(525cmHg)で供給し、ポリアミド透湿膜の外側に供給する25℃の乾燥窒素ガスを流し、液体窒素にて冷却したコールドトラップより回収した透過水蒸気量(cm、25℃、1気圧)を求める。得られた透過水蒸気量、測定に用いたモジュール内表面積及び測定時間を、下記の計算式に代入し、単位圧力(cmHg)、単位時間(sec)、単位面積(cm)当たりの透過水蒸気量を求めた。
水蒸気透過速度(cm/cm・sec・cmHg)=(透過水蒸気量)/{(モジュール内表面積)・(測定時間)・525}
モジュール内表面積(cm)=外径(cm)×3.14×長さ(cm)×10
【0019】
本発明のポリアミド透湿膜の水蒸気/窒素の気体分離係数(PH2O/PN2)は、20〜1500が好ましく、50〜1000がさらに好ましい。前記気体分離係数が20未満であれば、分離後の乾燥又は加湿空気が効率的に得られない場合があり、1500を超える場合は、結果として前記水蒸気透過速度が低下する場合があり、好ましくない。
【0020】
前記ポリアミド透湿膜の水蒸気/窒素の気体分離係数(PH2O/PN2)は、水蒸気透過速度を窒素透過速度で除した値であり、前記方法により求めた水蒸気透過速度と下記方法により求める窒素透過速度により計算する。
ここで、窒素透過速度の測定方法は、200mm長のポリアミド透湿膜10本を束ねて10mmφ×150mm長のステンレス製の管に挿入して両端をポッティング後、切断し、端部断面に全ての中空部分が露出した有効長100mmのミニモジュールを作製する。次に、前記ミニモジュールを構成する各ポリアミド透湿膜の内側に、25℃の乾燥窒素ガスを圧力0.7MPa(525cmHg)で供給し、ポリアミド透湿膜の外側に供給する25℃の乾燥ヘリウムガスを流し、ガスクロマトグラフィーによりポリアミド透湿膜の外側に透過してくる透過窒素ガス量(cm、25℃、1気圧)を測定する。得られた透過窒素ガス量、測定に用いたモジュール内表面積及び測定時間を、下記の計算式に代入し、単位圧力(cmHg)、単位時間(sec)、単位面積(cm)当たりの窒素透過速度を計算する。
窒素透過速度(cm/cm・sec・cmHg)
=(透過窒素ガス量)/{(モジュール内表面積)・(測定時間)・525}
モジュール内表面積(cm)=外径(cm)×3.14×長さ(cm)×10
【0021】
次に、本発明のポリアミド透湿膜の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、ポリアミドを室温で溶解させる溶媒が、ギ酸、濃硫酸、一部の含フッ素溶媒を除いて無いことから、高温で溶媒に溶解して作製するTIPS法を適用して製造することが必要である。
【0022】
本発明のポリアミド透湿膜の製造方法においては、150℃以上の沸点を有し、100℃未満の温度ではポリアミドと相溶せず、かつ100℃以上の温度で前記ポリアミドと相溶する有機溶媒を用いることが必要である。
【0023】
前記有機溶媒の沸点は、150℃以上が好ましく、180℃以上がさらに好ましく、200℃以上がいっそう好ましい。150℃以上の沸点が好ましいことの理由は明確ではないが、沸点が150℃未満であれば、後述するように、紡糸ノズルから製膜原液を吐出した際に、溶媒の蒸発による製膜原液中のポリアミドのミクロな濃度の揺らぎが起こりやすく、それが相分離工程における相分離速度、結晶化速度、結晶成長速度などのミクロ的な特性に影響を与えるものと推定される。さらに、有機溶媒の沸点が150℃未満の場合、100℃以上の温度でポリアミドを溶解するに際して、溶媒の蒸気圧が高くなるため、作業環境的に不都合が生じる場合もある。
【0024】
150℃以上の沸点を有し、100℃未満の温度ではポリアミドと相溶せず、かつ100℃以上の温度で前記ポリアミドと相溶する有機溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、アルコール類、グリセリンエステル類、有機酸及び有機酸エステル類などが挙げられる。
【0025】
非プロトン性極性溶媒の具体例としては、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、ε―カプロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0026】
アルコール類の具体例としては、例えば、ブチルアルコール類、ペンチルアルコール類、へキシルアルコール類などのモノアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量200〜1000)などの多価アルコール類などが挙げられる。
【0027】
グリセリンエステル類の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0028】
有機酸及び有機酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、非プロトン性極性溶媒、アルコール類が好ましく、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールがさらに好ましい。非プロトン性極性溶媒、アルコール類を用いることで、後述するように、曳糸性が向上するとともに、引張強度、耐圧強度が向上し、さらには水蒸気透過速度が向上するという利点が得られる。
【0030】
これらの理由は明らかではないが、従来の中空糸膜に用いられているポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンに比べ、ポリアミド樹脂分子の分子内の極性が比較的高いため、極性の高い非プロトン性極性溶媒や多価アルコール類、その中でも特にスルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールにおいては、ポリアミドとの相溶性が高く均一に溶解すると共に、水との親和性も高い。この為に、凝固浴として例えば水を用いた場合には、凝固浴中で製膜原液に用いた溶媒と水との適度な交換により結晶化が早くなることで、孔の分布、孔径の制御が容易となるため、その結果、水蒸気透過速度や強度が向上するものと推察される。
【0031】
なお、100℃未満の温度でポリアミドと相溶する有機溶媒を用いた場合には、後述のように、100℃未満に温度が制御された凝固浴中に押し出した際に、凝固浴により急冷されても、製膜原液中のポリアミドの相分離が遅れるため、その相分離速度、結晶化速度、結晶成長速度などが不適なものとなって、本発明のポリアミド中空糸膜を得ることができない場合がある。
【0032】
前記有機溶媒は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。単独で使用しても十分な効果が得られるが、2種類以上を混合して用いると、これら2種類以上の有機溶媒で相分離の順序や構造が異なる為、さらに効果的な中空糸膜を製造できるメリットもある。
【0033】
ここで、ポリアミドが有機溶媒に相溶する温度とは、有機溶媒80質量部にポリアミド20質量部を添加し1時間攪拌したときに、目視で均一となる温度をいう。
【0034】
ポリアミドを前記有機溶媒に溶解する際の濃度としては、ポリアミドの濃度を35質量%〜60質量%とすることが必要であり、35質量%〜50質量%とすることが好ましく、40質量%〜50質量%とすることがより好ましい。ポリアミドの濃度が35質量%より低いと、多孔度が大きくなりすぎ水蒸気だけでなくエアーが漏れる問題があり、60質量%より高いと、水蒸気の透過性も低下する問題がある。
【0035】
本発明のポリアミド透湿膜の製造方法においては、前記有機溶媒、特に非プロトン性極性溶媒、アルコール類を溶解溶媒として用いることにより、製膜性が向上するため、ポリアミドの濃度を35質量%〜60質量%と高くしても曳糸性が確保され、孔が均一に分散したポリアミド透湿膜を得ることができる。
【0036】
さらに、本発明のポリアミド透湿膜の製造方法においては、上記製膜原液にポリビニルアルコールを、ポリアミド100質量部に対して1〜40質量部を共存させて製膜することにより、より高いレベルで、強度、水蒸気透過性能を両立させることができ好ましい。前記ポリビニルアルコールの共存濃度としては、ポリアミド100質量部に対して、5〜30質量部がさらに好ましく、10〜25質量部がいっそう好ましい。
【0037】
ポリビニルアルコールを共存させることで、水蒸気透過速度を向上させることができる理由は明らかではないが、ポリビニルアルコールを含む製膜原液を凝固浴に投入してポリアミド透湿膜を形成する際に、ポリアミドの相分離機構、結晶状態等を変えることができ、より網目状の構造で細かい結晶状態を形成することができると推定している。
【0038】
共存させるポリビニルアルコールは特に限定されないが、水に溶解でき、溶融成形できるようにケン化度、分子量を特定範囲内に制御したものが好ましい。例えば、ケン化度としては、30〜85mol%が好ましく、50〜80mol%がさらに好ましい。重合度としては、150〜500が好ましく、200〜400がさらに好ましい。かかる範囲を満たすポリビニルアルコールの具体例としては、日本酢ビ・ポバール株式会社製のJMR−8M、JMR−10M、JMR−20M、JMR−30M、JMR−8H、JMR−10H、JMR−20H、JMR−30H、クラレ製のクラレポバールCP−1000、CP−1210などが挙げられる。
【0039】
また、本発明の効果を損なわない限り、製膜を容易にする目的や中空糸透湿膜の性能を向上させる目的の為に添加剤を添加することができる。かかる添加剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等の増粘剤、塩化リチウム、塩化カルシウム等の無機塩類、モンタン酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、アルミナ等の造核剤やフィラーなどが挙げられる。
【0040】
さらに、ポリアミドを有機溶媒に溶解するにあたり、前述のように有機溶媒の温度を100℃以上にしておくことが必要である。具体的には、その系の相分離温度よりも10℃〜50℃高い温度、より好ましくは20℃〜40℃高い温度で溶解させるのがよい。その系の相分離温度とは、樹脂と溶媒を十分に高い温度で混合したものを徐々に冷却し、液−液相分離又は結晶析出による固−液相分離が起こる温度をいう。相分離温度の測定は、ホットステージを備えた顕微鏡等を使用することで、好適に行うことができる。
【0041】
製造のための次のステップとして、上述のようにポリアミドを前記有機溶媒に溶解することにより作製した製膜原液を100℃以上の温度に制御し、中空糸紡糸用ノズルを用いて100℃未満の凝固液中に押し出すことで、中空糸を形成する。設定された凝固液の温度にまで製膜原液が速やかに冷却されることによって、相分離が誘起され、多孔質構造が形成される。
【0042】
中空糸紡糸用ノズルとしては、図2に示すように、溶融紡糸において芯鞘型の複合繊維を作製する際に用いられるような二重円形状を有する口金を用いることができる。
【0043】
中空部分となる芯部には、流体を注入する。この注入する流体としては、液体、気体が使用できる。中でも、流体として液体(内部液)を使用した場合には、製膜原液の粘性が低く糸状の形成が難しい条件でも紡糸が可能となる場合があり好ましい。この内部液としては適宜のものを使用できるが、透湿膜の内表面の孔数を多くしたい場合には当該ポリアミドと親和性の高い良溶媒を使用することができ、内表面の孔数を小さくしたい場合にはポリアミドと親和性の低い貧溶媒を使用することができる。
【0044】
すなわち、製膜原液の樹脂濃度が低く全体多孔度が高い場合には内表面の多孔度を抑えてエアーの漏れを抑制する為に貧溶媒を、全体多孔度が低い場合には良溶媒を流すことが好ましい。かかる流体の具体例としては、良溶媒としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。貧溶媒としては、ポリエチレングリコール(分子量400〜1500)、高級脂肪酸類、流動パラフィンなどの、沸点が高くポリアミドと相溶しない任意の流体が挙げられる。製膜原液の粘性が高く、曳糸性に優れている場合には、芯部に不活性ガス等の気体を流入する方法を用いてもよい。
【0045】
本発明のポリアミド透湿膜の水蒸気透過速度や水蒸気/窒素の気体分離係数(PH2O/PN2)を制御するために、例えば、高い相分離温度を有するポリエチレングリコールを混合する事により、先にポリエチレングリコールが相分離して開孔効果を付与させることができる。また例えば、液−液相分離を起こすスルホランを混合する事により、強伸度が向上するスポンジ状構造を付与させることができる。
【0046】
前記芯部に注入する流体(内部液)の流量は、中空糸膜の内径、外径を制御する為に重要であり、内径を大きくしたい場合には内部液の流量を大きくし、内径を小さくしたい場合には内部液の流量を小さくする。かかる内部液の流量としては、1g/分〜20g/分が好ましく、2g/分〜15g/分がさらに好ましい。この範囲より小さければほとんど中空が無い中空糸膜になる場合があり、この範囲より大きければ内部液吐出の勢いが大きくなり中空部の中心がずれたり内表面にマクロボイドができる場合がある。
【0047】
内径としては、用いられる分野にもよるが、50〜1500μmが好ましく、150〜1000μmがより好ましく、250〜800μmがいっそう好ましい。外径としては、用いられる分野にもよるが、100〜3000μmが好ましく、300〜2000μmが好ましく、500〜1500μmがいっそう好ましい。これら内径、外径は、ろ過する流体、必要なろ過性能などの各種条件に応じて適宜選択することができる。
【0048】
凝固液としては、本発明の効果を損なわない限り、いかなるものでも使用できる。例えば、水;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール類;アセトン、エチルメチルケトンなどのケトン類、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒などを好適に使用できる。これらは、単独でも使用できるとともに、2種類以上を混合した混合溶媒でも使用できる。これらの中で水、グリセリン、エチレングリコール、γ−ブチロラクトンが好ましく、水がより好ましい。
【0049】
凝固液の温度は100℃未満とすることが必要であり、−20℃以上100℃未満が好ましく、−10℃〜80℃がより好ましく、0℃〜50℃がいっそう好ましい。凝固液が水である場合において、冷却温度を0℃以下に設定したいときには、塩類を添加したり、エチレングリコールやグリセリン等を混合したりすることで、対応可能である。
【0050】
凝固浴に導入され固化された中空糸膜は引取り機を用いて一定のスピードで引取ることにより、安定した径を有する中空糸膜が得られる。引取り速度は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、10〜100m/分であり、15〜80m/分が好ましく、20〜50m/分がさらに好ましい。この速度より遅い場合、中空糸が凝固浴を沈む速度の方が大きくなるためたるみができる問題があり、この速度より速い場合、十分に凝固浴で冷却固化させることができず安定した中空糸膜ができない場合がある。
【0051】
次の段階として、得られた中空糸を溶媒に浸漬して、中空糸内で相分離を起こしている有機溶媒を抽出除去することで、最終的に中空糸膜を得ることができる。かかる抽出用の溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後にポリアミド樹脂の沸点の差などで容易に分離できるものが好ましい。例えば、水、グリセリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエンなどが挙げられる。これらの中で水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、水、メタノール、イソプロパノールが特に好ましい。特に水に溶解する溶媒を抽出する場合には、前述の冷却工程において水浴を使えば同時に溶媒抽出も行うことができ好ましい。フタル酸エステル、脂肪酸等の水に不溶の溶媒を抽出する際には、イソプロピルアルコール、石油エーテル等を好適に用いることができる。
【0052】
洗浄方法は本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、抽出溶媒の槽を連続的に通す方法や、抽出溶媒をシャワー状に散布する方法、一定時間抽出溶媒に浸漬する方法等が用いられる。製膜溶媒の残存は1質量%以下にすることが好ましく、0.5質量%以下にすることがさらに好ましい。1質量%以上の製膜溶媒が残存すると乾燥工程で乾燥が困難となったり、最終製品に残留するなどの問題がある。
【0053】
次に、洗浄したポリアミド透湿膜を乾燥することができる。乾燥方法は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、オーブンや減圧乾燥機等でのバッチ式の乾燥、ドライヤーを連続的に通すことによる連続式の乾燥等が用いられる。乾燥温度は特に限定されないが、30℃〜200℃であり、好ましくは40℃〜150℃であり、より好ましくは50℃〜130℃が挙げられる。乾燥温度が30℃よりも低ければ乾燥時間が長くかかり生産性が低下する場合があり、乾燥温度が200℃よりも高ければ、得られるポリアミド透湿膜が、伸びたり、つぶれたりする等の変形や分解が起こる可能性があり好ましくない。乾燥時間は特に限定されないが、バッチ式の乾燥の場合10分〜5時間が好ましく、20分〜2時間がより好ましい。連続式の乾燥の場合は、ドライヤー内の滞留時間として30秒〜20分が好ましく、1分〜10分がより好ましい。
【0054】
上述した本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法を好適に実施するには、図1に示すような、乾湿式紡糸に用いられる一般的な装置を用いることができる。中空糸の製造には、図2に示したような二重円形状を有する口金を用いることができる。
【0055】
図1において、3はコンテナ、7は凝固浴、9は巻き取り機、10は溶媒抽出浴である。コンテナ3には、ポリアミド樹脂を有機溶媒に100℃以上で溶解した製膜原液が貯留される。コンテナ3の底部には、定量ポンプ4と紡糸口金6とが設けられている。防止口金6は、図2に示す断面構造を有する。詳細には、防止口金6は、中央部の横断面円形の内部流体流出孔11と、この内部流体流出孔11の周囲においてこの内部流体流出孔11と同心状に形成された環状の製膜原液流出孔12とを有する。製膜原液流出孔12には、コンテナ3の内部から定量ポンプ4を経て製膜原液21が供給される。内部流体流出孔11には、図1に示される導入路5から、図示を省略した別の定量ポンプを経て、内部流体22が供給される。図1において、1はコンテナ3に設けられた攪拌用のモータ、2はコンテナ3の内部への加圧ガス供給路である。
【0056】
このような構成によれば、ポリアミド樹脂は、上述したように有機溶媒と高温で混合溶解されて製膜原液となり、コンテナ3に溜められる。製膜原液21および内部流体22は、それぞれ定量ポンプによって計量され、紡糸口金6に送られる。口金6から吐出された製膜原液は、わずかなエアーギャップを介して、水などの実質的にポリアミド樹脂を溶解しない液体を貯留した凝固浴7に導入され、冷却固化される。これにより中空糸8が得られる。このとき、製膜原液が冷却固化される過程で、熱誘起による相分離が起こるため、中空糸8は、その中空の壁部が海島構造を有するにいたる。このようにして得られた中空糸8を巻き取り機9でいったん巻き取った後、これを溶媒抽出浴10へ送る。溶媒抽出浴10では、水等の抽出溶媒を用い、所定の時間をかけて、海島構造の島成分である有機溶媒と、紡糸時に中空部に流し込まれた流体とが除去される。これにより、所望の中空糸膜が得られる。この中空糸膜は、溶媒抽出浴10から取り出される。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例、比較例において、ポリアミド透湿膜についての特性値の測定は前述の方法によりおこなった。
<測定方法>
(1)引張強伸度、弾性率
島津製作所製オートグラフGS−J型を用いて、JIS L−1013号に記載の方法により測定し、弾性率は、1.0N〜2.0Nの強力範囲での傾きにより求めた。
(2)相対粘度
96%硫酸を溶媒として、濃度1g/デシリットル、温度25℃で測定した。
【0058】
実施例1
ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製A1030BRT、相対粘度3.53)160gと、スルホラン(東京化成工業株式会社製)240gとを、200℃で1.5時間攪拌することで、ポリアミド6をスルホランに溶解させ、製膜原液を調製した。その後、その温度を190℃に低下させ、図1に示す装置における定量ポンプ4を介して紡糸口金6に送液し、10.0g/分でギアポンプを用いて押し出した。紡糸口金は、環状の製膜原液流出孔の外径が1.58mm、その内径が0.60mmのものを用いた。中空糸を紡糸するための内部液として、ポリエチレングリコール(分子量400)を5.0g/分の送液速度で流した。押出された紡糸原液は、10mmのエアーギャップを介して、水に投入して冷却固化させ、巻き取り機9によって40m/分の巻取速度にて巻き取った。得られた中空糸を溶媒抽出浴10にて水に24時間浸漬して溶媒を抽出し、熱風乾燥機で50℃2時間乾燥処理を行い、ポリアミド透湿膜を得た。
【0059】
実施例2
溶解溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを用い、ポリアミド6の濃度を50質量%とし、175℃で1.5時間攪拌することで、ポリアミド6をN−メチル−2−ピロリドン(東京化成工業株式会社製)に溶解させ、製膜原液を調製し、紡糸温度を170℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0060】
実施例3
ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製A1030BRT、相対粘度3.53)240gと、プロピレングリコール(東京化成工業株式会社製)160gとを、160℃で1.5時間攪拌することで、ポリアミド6をプロピレングリコールに溶解させ、製膜原液を調製した。その後、その温度を155℃に低下させ、実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0061】
実施例4
ポリアミド6のチップ(ユニチカ株式会社製A1030BRT、相対粘度3.53)140gと、スルホラン(東京化成工業株式会社製)260gと、ポリビニルアルコールJMR−20M(日本酢ビ・ポバール株式会社製)2.8gを、200℃で1.5時間攪拌することで製膜原液を調製した。その後、その温度を190℃に低下させ、実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0062】
実施例5
ポリビニルアルコールを7g添加した以外は、実施例4と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0063】
実施例6
ポリビニルアルコールを14g添加した以外は、実施例4と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0064】
実施例7
ポリビニルアルコールを28g添加した以外は、実施例4と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0065】
実施例8
ポリビニルアルコールを49g添加した以外は、実施例4と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0066】
実施例9
MXDポリアミドのチップ(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、レニー6002)160gと、スルホラン(東京化成工業株式会社製)240gを180℃で1.5時間撹拌することで製膜原液を調製した。その後、180℃のままで実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0067】
実施例10
ポリアミド12のチップ(アルケマ(株)製リルサンAECN0TL、相対粘度2.25)160gに変え、スルホラン(東京化成工業株式会社製)240gを180℃で1.5時間撹拌することで製膜原液を調製した。その後、180℃のままで実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0068】
実施例11
ポリアミド66(宇部興産社製、UBEナイロン2020B)160gと、スルホラン(東京化成工業株式会社製)240gを210℃で1.5時間撹拌することで製膜原液を調製した。その後、210℃のままで実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0069】
実施例12
ポリアミド610(東レ社製、CM2001)160gと、スルホラン(東京化成工業株式会社製)240gを180℃で1.5時間撹拌することで製膜原液を調製した。その後、180℃のままで実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0070】
比較例1
実施例1において、ポリアミド6のチップを120g、スルホラン(東京化成工業株式会社製)を280gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0071】
比較例2
実施例1において、ポリアミド6のチップを250g、スルホラン(東京化成工業株式会社製)を150gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリアミド透湿膜を得た。
【0072】
比較例3
ポリエーテルイミド(GEプラスチックス製、ウルテム1010)80g、ポリビニルピロリドン(日本触媒株式会社製、K−90)4gをN,N−ジメチルアセトアミド316gに溶解させ紡糸原液を調製した。これを50℃で実施例1と同じ二重環式ノズルから10mmのエアーギャップを介して室温の水からなる凝固浴に押出し、40m/分で巻き取った。得られた中空糸を溶媒抽出浴10にて水に24時間浸漬して溶媒を抽出し、熱風乾燥機で50℃2時間乾燥処理を行い、ポリアミド透湿膜を得た。
【0073】
実施例1〜12について得られたポリアミド透湿膜、比較例1〜3について得られたポリアミド透湿膜、ポリエーテルイミド透湿膜の各種物性値を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1から明らかなように、実施例1〜12は、いずれも高い引張強度及び耐圧強度を示し、さらに水蒸気透過速度、分離係数共に優れるものであった。特に、製膜原液にポリビニルアルコールを共存させた実施例4〜7においては、ポリビニルアルコールを共存させていない他の実施例に比べて、製膜原液のポリアミド濃度が比較的低いものであっても、得られるポリアミド透湿膜は、比較的高い引張強度及び耐圧強度を示し、さらに水蒸気透過速度が良好なものであった。
一方、比較例1は、製膜原液のポリアミド濃度が30質量%と低かったため、得られるポリアミド透湿膜の引張強度、耐圧強度が低く、さらに透過性能としては、水蒸気だけでなく窒素ガスも透過するため分離係数が低いものであった。比較例2は、製膜原液のポリアミドの濃度が62.5質量%と高かったため、比較例3は、ポリエーテルイミドを用いたため、いずれも水蒸気透過速度が劣るものであった。
【0076】
実施例13
実施例1で得られた中空糸透湿膜100本を束ねて両端をステンレス製管に接着してモジュール化した。このモジュールの内側に25℃の水中を通過させた水蒸気飽和空気(湿度18%RH)を配管内圧力0.7MPa、供給空気流量2L/分の条件化で送り込み、除湿性能を評価した。その結果、モジュール出口から出た空気は3%RHにまで除湿できていた。
【0077】
実施例14
実施例4で得られた中空糸透湿膜100本を束ねて両端をステンレス製管に接着してモジュール化した。このモジュールの内側に25℃の水中を通過させた水蒸気飽和空気(湿度18%RH)を配管内圧力0.7MPa、供給空気流量2L/分の条件化で送り込み、除湿性能を評価した。その結果、モジュール出口から出た空気は2%RHにまで除湿できていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドからなる中空糸膜状の透湿膜であって、引張強度が10MPa以上、耐圧強度が0.7MPa以上、水蒸気透過速度が1×10-3〜2000×10-3cm/cm・sec・cmHgであることを特徴とするポリアミド透湿膜。
【請求項2】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10Tからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド透湿膜。
【請求項3】
150℃以上の沸点を有し、かつ、100℃未満の温度では前記ポリアミドと相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で前記ポリアミドを溶解して製膜原液とし、100℃以上の温度に制御した前記製膜原液を100℃未満の凝固浴に押し出して中空糸を形成し、その後、前記中空糸を溶媒に浸漬して前記有機溶媒を除去するポリアミド中空糸膜の製造方法であって、前記製膜原液中のポリアミドの濃度が35質量%〜60質量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアミド透湿膜の製造方法。
【請求項4】
前記ポリアミドを溶解する溶媒が、非プロトン性極性溶媒、アルコール類から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載のポリアミド透湿膜の製造方法。
【請求項5】
前記製膜原液に、ポリアミド100質量部に対して、1〜40質量部のポリビニルアルコールを共存させることを特徴とする請求項3又は4記載のポリアミド透湿膜の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−20232(P2012−20232A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160072(P2010−160072)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】