説明

ポリアリレート系樹脂組成物

【課題】 PAR/PCTA系樹脂組成物が本来有する耐熱性、成形加工性、透明性等の性能を維持しつつ、優れた難燃性と耐薬品性を有するポリアリレート系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリアリレート樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)、テレフタル酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を主成分とするポリエステル樹脂(B)、臭素化ジフェニルエタン(C)及びホスフェート化合物(D)からなり、各成分の質量比が特定の式を満足するポリアリレート系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性と透明性に加えて難燃性と耐薬品性に優れたポリアリレート系樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとテレフタル酸及び/又はイソフタル酸とからなる芳香族ポリエステルに代表されるポリアリレート(以下、PARと略称することがある。)は耐熱性が高く、透明性、機械的強度、寸法安定性に優れた樹脂として、様々な分野で使用されている。また、成形加工性、耐薬品性、耐候性の改善を目的として、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する。)等の他のポリエステル樹脂とアロイ化した樹脂組成物も、その使用分野を広げている。
【0003】
しかしながら、PARとPETとの樹脂組成物は、PAR単体と比較すると、成形加工性、耐薬品性は向上するものの、熱的特性や耐衝撃性が低下するため、使用時に問題が発生するだけでなく、予備乾燥等の取扱いが極めて困難となる。また、耐衝撃性が低下すると成形品にクラック等が入りやすくなり、実用性能に問題が残る。
【0004】
これらの問題を解決するために、特許文献1では、芳香族ジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステル樹脂(以下、PCTAと略称することがある。)をPARとアロイ化することが提案されている。しかしながら、このアロイは難燃性が不十分であり、電気、電子分野等の用途に制限されるものであった。
【0005】
PARに難燃性を付与する技術として、特許文献2には、ハロゲン化カーボネート化合物を配合することが記載されている。この方法では、透明性を維持したまま難燃性を向上させることはできるものの、耐薬品性が不十分となり、やはり用途が制限されるものであった。
【特許文献1】特開2002−302596号公報
【特許文献2】特開2002−80713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決し、PAR/PCTA系樹脂組成物が本来有する耐熱性、成形加工性、透明性等の性能を維持しつつ、優れた難燃性と耐薬品性を有するポリアリレート系樹脂組成物を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、PARを主成分とする樹脂組成物に、特定の樹脂及び化合物を配合することで上記課題が解決されることを見出して本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリアリレート樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)、テレフタル酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を主成分とするポリエステル樹脂(B)、臭素化ジフェニルエタン(C)及びホスフェート化合物(D)からなり、各成分の質量比が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とするポリアリレート系樹脂組成物を要旨とするものである。
(1): (A1)/(A2)=100/0〜10/90
(2): {(A1)+(A2)}/(B)=10/90〜90/10
(3): (C)/{(A1)+(A2)+(B)}=5/100〜30/100
(4): (D)/{(A1)+(A2)+(B)}=0.01/100〜0.3/100
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のPAR/PCTA系の樹脂組成物が有していた耐熱性、成形加工性、透明性等を維持しつつ、優れた難燃性と耐薬品性を有するポリアリレート系樹脂組成物が提供され、この樹脂組成物は、自動車外板用途、電子機器部品用途をはじめとして、産業上の利用価値が極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリアリレート系樹脂組成物は、PAR樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)、テレフタル酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を主成分とするポリエステル樹脂(B)、臭素化ジフェニルエタン(C)及びホスフェート化合物(D)からなっている。
【0012】
まず、本発明にいうPAR樹脂(A1)とは、芳香族ジカルボン酸残基とビスフェノール残基を繰り返し単位とする樹脂である。
【0013】
ビスフェノール残基を導入するための原料はビスフェノール類であり、その具体例として、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0014】
これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは、二種類以上を混合して使用してもよい。とりわけ、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BAと略称する。)が好ましく、この化合物を単独で使用することが経済的に最適である。
【0015】
一方、PAR樹脂(A1)に、芳香族ジカルボン酸残基を導入するための原料としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4´−ジカルボキシジフェニルエーテル、ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、4,4´−ジカルボキシジフェニルスルホン等が挙げられ、中でもテレフタル酸やイソフタル酸が経済的に好ましい。
【0016】
本発明においては両者を混合使用して得られるポリアリレート樹脂組成物が溶融加工性及び機械的特性の面で特に好ましい。その混合比率(テレフタル酸/イソフタル酸)は任意に選択することができるが、モル分率で90/10〜10/90の範囲であることが好ましく、より好ましくは70/30〜30/70、最適には50/50である。テレフタル酸の混合モル分率が10モル%未満であっても、90モル%を超えても界面重合法では十分な重合度に達しない場合がある。
【0017】
PAR樹脂(A1)は、機械的特性と流動性のバランスから、通常、極限粘度が0.4〜1.0、好ましくは0.4〜0.8、最適には0.5〜0.7のものが好ましい。
【0018】
本発明において、PAR樹脂としては、例えば、市販のユニチカ社製Uポリマー(商標)(U-100)や、同社製(パウダー)を使用することができる。
【0019】
次に、本発明でいうポリカーボネート樹脂(A2)とは、ビスフェノール残基とカーボネート残基を繰り返し単位とするポリ炭酸エステルである。ビスフェノール残基単位を導入するための原料としては、例えば、BA、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,3-または1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4'-ジチオジフェノール、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジクロロジフェニルエーテル、4,4-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。その他にも米国特許明細書第2,999,835号、同第3,028,365号、同第3,334,154号及び同第4,131,575号に記載されているジフェノール類が使用できる。
【0020】
これらは単独で使用してもよいし、あるいは、二種類以上を混合して使用してもよい。とりわけ、前記同様、BAが好ましく、この化合物を単独で使用することが経済上最適である。カーボネート残基を導入するための原料としては、例えばホスゲン、あるいはジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネート樹脂(A2)は極限粘度が0.3〜0.7であることが好ましく、そのようなポリカーボネート樹脂(A2)として、住友ダウ社製カリバー(商標)(200-30、200-13、200-3)、帝人化成社製パンライト(商標)(L-1250、L1225LL)、日本GE社製レキサン(商標)(5221C)等が例示できる。
【0022】
PAR樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)の配合比率は、要求される耐熱性、成形性(流動性)の性能に合わせ、適切な割合を選択することが可能であり、ポリカーボネート樹脂(A2)は用いなくてもよい。通常、その質量比(PAR樹脂(A1)/ポリカーボネート樹脂(A2))は、前記(1)式のように100/0〜10/90であり、好ましくは100/0〜20/80である。なお、PAR樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)はそれぞれ二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
次に、本発明でいうポリエステル樹脂(B)とは、主たるジカルボン酸成分としてテレフタル酸、主たるジオール成分として1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたポリエステルである。
【0024】
ポリエステル樹脂(B)において、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸成分を80モル%以上含有していることが好ましく、90モル%以上含有していることが最適である。テレフタル酸以外の酸成分としては、例えばイソフタル酸、無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、及びそれらの炭素数が1〜3のアルキルのエステル化物、テレフタル酸の炭素数が1〜3のアルキルエステル化物及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0025】
また、ポリエステル樹脂(B)において、ジオール成分として、1,4-シクロヘキサンジメタノールを70モル%以上含有していることが好ましい。この成分が70モル%未満であると、十分な耐衝撃性能が得られなかったり、耐熱性が低下する場合がある。
【0026】
1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分として、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル,1,5-ペンタンジオール、ポリテトラメチレングリコール及びそれらの混合物を挙げることができる。特に好ましい他のジオール成分としては、エチレングリコールを単独で用いるものである。
【0027】
ポリエステル樹脂(B)は、機械的特性と成形加工性の観点から、極限粘度が0.5〜1.2、好ましくは0.6〜1.0であることが望ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂(B)としては、市販のイーストマンケミカル社製サーミックス(商標)6761、同社製デュラスター(商標)DS2000、同社製イースター(商標)DN003等が例示できる。また、ポリエステル樹脂(B)は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
PAR樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)、ポリエステル樹脂(B)の配合比は、樹脂組成物の成形加工性、耐熱性、耐薬品性の連立という観点から、前記(2)式のように質量比{(A1+A2)/B}が10/90〜90/10、好ましくは15/85〜85/15の範囲とすることが必要である。PAR樹脂(A1)とポリカーボネート樹脂(A2)との合計(A1+A2)の質量比が10%未満になると、耐熱性の低下及び衝撃強度の低下が顕著となり、また、逆に90%を超えると、樹脂の流動性が低下することから、成形加工性が悪くなり、さらには耐薬品性も著しく低下する。
【0030】
次に、本発明でいう臭素化ジフェニルエタン(C)とは、ジフェニルエタンに塩化臭素を反応させて作製されるものであり、臭素含有率が60%〜90%、融点が200℃以上の粉体である。
【0031】
この臭素化ジフェニルエタン(C)の含有量は、前記(3)式のように全ポリマー成分100質量部に対して5〜30質量部とする必要があり、好ましくは7〜25質量部である。含有量が5質量部未満になると、難燃性能をもたらす効果が低く、逆に30質量部より多いと、機械的強度や耐薬品性能が著しく低下する。
【0032】
臭素化ジフェニルエタン(C)としては、市販のALBEMARLE社製SAYTEX(商標)8010が例示できる。
【0033】
さらに、本発明にいうホスフェート化合物(D)とは、下記一般式(a)で表される化合物である。
【0034】
【化1】

上記(a)式中、同種又は異種のR1、R2は水素原子、又は炭素数が1〜24(好ましくは2〜18、より好ましくは4〜18)のアルキル基、又はアルケニル基から選ばれる基である。R1、R2のいずれかが炭素数25以上のアルキル基又はアルケニル基であると、成形加工時の樹脂組成物の変色を抑制できない場合がある。また、R1は水素あるいはR2と同一のアルキル基、又はアルケニル基であることが好ましい。炭素数が1〜24のアルキル基又はアルケニル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、ミリスチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基、テトラコシル基等が挙げられる。
【0035】
好ましいホスフェート化合物(D)の例として、例えば、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの具体例の中で、ブチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェートが好ましい化合物として例示できる。また、ホスフェート化合物は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ホスフェート化合物(D)は、前記した(4)式のように全ポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とする必要があり、好ましくは0.03〜0.2質量部である。含有量が0.01質量部未満になると、成形加工するときの変色を防止する効果が実用上発現せず、また、透明性が若干低下する傾向があり、意匠性の面で好ましくない。また、含有量が0.3質量部を超えると変色が起こり、さらには透明性が低下する。
【0037】
本発明のポリアリレート系樹脂組成物には、本発明の効果を大きく損なわない限り、架橋剤、ブルーイング剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
本発明のポリアリレート系樹脂組成物は、前記(A1)、(B)、(C)及び(D)、あるいは、(A1)、(A2)、(B)、(C)及び(D)の材料が前記式(1)〜(4)を満足するように混合されたものである。混合方法としては、材料を単にドライブレンドしてもよいし、溶融、混練することにより調製してもよい。しかしながら、成形加工時における取り扱いの容易さの観点から、樹脂組成物はペレット形態の混練物であることが望ましい。
【0039】
本発明のポリアリレート系樹脂組成物は、射出成形あるいは押出成形により容易にシート状に加工したり、成形品を得ることができるが、これらの製品はPAR/PCTA系樹脂組成物が本来有する耐熱性、成形加工性、透明性等の性能を維持しつつ、優れた難燃性と耐薬品性を有するものである。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例で用いた原料、及び物性の評価方法は、次の通りである。
(1)PAR樹脂(A1):ユニチカ社製U−パウダ(極限粘度0.5)
(2)ポリカーボネート樹脂(A2):住友ダウ社製カリバー(商標)200−30、極限粘度0.5)
(3)ポリエステル樹脂(B):イーストマンケミカル社製サーミックス6761(商標)(極限粘度0.9、モノマー使用割合:テレフタル酸/イソフタル酸/1,4シクロヘキサンジメタノール=95/5/100(モル比))
(4)臭素化ジフェニルエタン(C):ALBEMARLE社製SAYTEX(商標)
8010
(5)ホスフェート化合物(D):城北化学社製JP−504(アルキルアシッドホスフェート)
(6)臭素化カーボネート化合物 :帝人化成社製ファイアーガード(商標)F
G−8500
2.評価方法
(1)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した溶液粘度から求めた。
(2)コンパウンド性
樹脂混練装置(東芝機械社性 TEM-37BS)を用い、それぞれの配合でブレンド後、シリンダ設定温度280〜300℃にてコンパウンドを実施し、ペレットを得た。評価判断は以下のように行い、◎、○を合格とした。
【0041】
ストランド切れの発生が 5回/時間未満 ;◎
5回/時間以上、10回/未満 ;○
10回/時間以上 ;×
(3)バーフロー測定
樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度300℃、流動先端圧力100MPaにて、厚さ2mm、幅20mmのバー状金型内に射出成形し、その長さで成形加工性を評価した。評価判断は以下のように行い、◎、○を合格とした。
【0042】
バーフロー長が 200mm以上 ;◎
100mm以上、200mm未満 ;○
100mm未満 ;×
(4)DTUL
ASTM D648に準じ、荷重0.45MPaにて測定した。試験片は、樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度300℃で成形した。この物性測定試験片は1日以上室温にて放置した後、測定に供した。評価判断は以下のように行い、◎、○を合格とした。
【0043】
DTUL値が 90℃以上 ;◎
70℃以上,90℃未満;○
70℃未満 ;×
(5)引張強度
ASTM D638に準じて測定した。試験片は、樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度280℃で成形した。
【0044】
この物性測定試験片は、1日以上室温にて放置した後、測定に供した。評価判断としては、55MPa以上を合格とした。
(6)伸度
ASTM D638に準じて測定した。試験片は、樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度280℃で成形した。この物性測定試験片は1日以上室温にて放置した後、測定に供した。評価判断としては、40%以上を合格とした。
(7)難燃性
UL94V試験方法に準じて測定した。試験片は、樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度280℃で成形した。評価判断としては、V−2以上が好ましい。
(8)耐機械オイル性
ユシローケンCE50に試験片を浸漬し、表面状態を観察した。評価判断は以下のように行い、◎、○を合格とした。
【0045】
変化なし ;◎
失透、微細クラック;○
クラック発生 ;×
(9)透明性
射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度280℃で厚さ2mmの見本板を成形し、色調測定装置(日本電色製SZ-Σ80型測色器)により、JIS K7103に基づいて測定した。評価判断は以下のように行い、◎、○を合格とした。
【0046】
透明性が 80%以上 ;◎
80%未満、60%以上 ;○
60%未満 ;×
(実施例1)
PAR樹脂(A1)60質量部、ポリエステル樹脂(B)40質量部、臭素化ジフェニルエタン(C)5質量部及びホスフェート化合物(D)0.06質量部を、クボタ社製連続定量供給装置を用いて、同方向2軸押出機(東芝機械社製TEM−37BS)の主供給口に供給した。樹脂温度290℃、吐出量25kg/hで溶融混練を行ない、ノズルからストランド状に引き取った樹脂組成物を水浴に浸して冷却固化し、ペレタイザでカッティングした後、100℃で12時間熱風乾燥することによって樹脂組成物のペレットを得た。
【0047】
次いで、得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS-100E-3S)を用いて樹脂温度280℃で成形し、物性測定試験片、見本板、試験プレートを作製し、各種評価試験を行った。
(実施例2〜8)
表1に示すように樹脂及び化合物の配合量を変化させた以外は、実施例1と同様に溶融混錬を行ない、樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて、実施例1と同様に評価を行なった。
【0048】
実施例1〜8の評価結果を併せて表1に示す。
(比較例1〜8)
表2に示すように樹脂及び化合物の配合量を変化させた以外は、実施例1と同様の溶融混練を行なって樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて実施例1と同様に評価を行なった。
【0049】
比較例1〜8の評価結果をまとめて表2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

実施例1〜8で得られた樹脂組成物は、コンパウンド性については特に問題はなく、良好にペレット化することができた。
【0052】
また、得られたペレットを評価したところ、全ての組成において成形性に問題はなく、引張強度が55MPa以上、成形品の透明性も光線透過率が60%以上あり、良好であった。また、難燃性についてはV−2以上と良好であり、耐機械オイル性においても良好な性能を有するものであった。
【0053】
一方、比較例1は、臭素化ジフェニルエタン(C)が、本発明の範囲の下限を外れているため、難燃性能が劣るものであった。また、比較例2は、臭素化ジフェニルエタン(C)が、本発明の範囲の上限を外れているため、伸度が30%を下回り、機械物性で劣るものであった。
【0054】
次に、比較例3は、ホスフェート化合物(D)を配合しなかったため、黄色の変色が起こり、透明性が低下した。また、比較例4は、ホスフェート化合物(D)が本発明の範囲の上限を外れたため、黒色の変色が起こり、透明性が低下した。
【0055】
さらに、比較例5は、ポリエステル樹脂(B)が、本発明の範囲の上限を外れたため、DTULの値が70℃未満となり、耐熱性に劣るものであった。
【0056】
比較例6は、PAR樹脂(A1)が、本発明の範囲の上限を外れたため、成形性評価であるバーフロー長が100mmを下回り、成形加工性で劣るものであった。
【0057】
比較例7は、難燃剤として臭素化カーボネート化合物を用いたが、耐機械オイル性試験で表面にクラックが入り、耐薬品性で劣るものであった。
【0058】
比較例8は、PAR樹脂(A1)とポリカーボネート(A2)の割合が、本発明の範囲の下限を外れたために耐薬品性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリレート樹脂(A1)、ポリカーボネート樹脂(A2)、テレフタル酸成分と1,4−シクロヘキサンジメタノール成分を主成分とするポリエステル樹脂(B)、臭素化ジフェニルエタン(C)及びホスフェート化合物(D)からなり、各成分の質量比が下記式(1)〜(4)を満足することを特徴とするポリアリレート系樹脂組成物。
(1): (A1)/(A2)=100/0〜10/90
(2): {(A1)+(A2)}/(B)=10/90〜90/10
(3): (C)/{(A1)+(A2)+(B)}=5/100〜30/100
(4): (D)/{(A1)+(A2)+(B)}=0.01/100〜0.3/100

【公開番号】特開2007−99894(P2007−99894A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291237(P2005−291237)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】