説明

ポリアルキレングリコールおよびその製造方法およびその用途

【課題】シリカ系のスケール防止効果等に優れるポリアルキレングリコールを提供する。
【解決手段】本発明のポリアルキレングリコールは、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールである。
【化1】


式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコールに関する。より具体的には、シリカ系のスケール防止効果に優れたポリアルキレングリコールに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、ボイラー水系、地熱水系、洗浄水系などの水、および水と接触する金属面、特に伝熱面には腐食やスケール障害が発生する。特に、開放循環式冷却水系において省資源、省エネルギーの立場から冷却水の系外への排棄(ブロー)を少なくし、高濃縮運転をする場合、溶解する塩類が高濃縮されて腐食性になるとともにカルシウム塩、マグネシウム塩、シリカ等のスケールが発生する。従来から、これらのスケールの生成を防止、あるいは除去するためのスケール防止剤として各種の重合体などが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(ポリ)アルキレンポリアミンをジカルボン酸で縮合した(ポリ)アミドアミン、(ポリ)アミドアミンの2級アミン部分の塩酸塩または4級アンモニウム塩、一般式(R−1)で表されるポリアミドアミンのアルキレンオキシド付加物、およびポリアミドアミンの部分アルキル化物のアルキレンオキシド付加物、一般式(R−2)で表される(ポリ)アルキレンポリアミンのモノカルボン酸による部分アミド化物、およびそのアルキレンオキシド付加物、および一般式(R−1)または(R−2)で表される化合物の2級または3級アミン部分の塩酸塩、または4級アンモニウム塩などを含むスケール防止剤が開示されている。
【0004】
【化1】

【0005】

[式中、Rは炭素数1〜100のジカルボン酸残基、X1は−(RO)−Zで表される(ポリ)オキシアルキレン基、水素原子、または炭素数1〜8のアルキル基であり、少なくとも1つは−(RO)−Zで表される(ポリ)オキシアルキレン基である。また、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Zは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜500の整数を示す。また、mは1〜100、nは1〜100の整数である。]
【0006】
【化2】

【0007】

[式中、XはR−CO−で表されるアシル基、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、または−(RO)−Zで表される(ポリ)オキシアルキレン基であり、少なくとも1つはR−CO−で表されるアシル基である。また、Rは炭素数1〜30のアルキル基、Rは炭素数2〜8のアルキレン基、Zは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜500の整数である。mは1〜100の整数である。]
例えば、特許文献2には、(a)カルボン酸基を有する構成単位および(b)ポリアルキレンオキシド基を有する構成単位を繰り返し構成単位として含み、重量平均分子量が5万を超え300万以下である水溶性共重合体(塩)がシリカ系のスケールの付着問題を制御することが可能であることが開示されており、実施例にはアクリル酸とメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの共重合体(塩)について具体的に開示されている。
【0008】
例えば、特許文献3には、活性水素原子含有基を3個以上有する化合物のアルキレンオキサイド付加物からなるスケール防止剤が開示されており、実施例にはソルビトールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを付加させた重合体等が具体的に開示されている。
【0009】
例えば、特許文献4には、(a)(メタ)アクリル酸(塩)と、(b)スルホン酸基含有モノマーと、(c)N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、及び、N−ビニル−ε−カプロラクタムよりなる群から選択される少なくとも1種のモノマーと、を共重合させて得られる水溶性共重合体が、スケールに対して良好な吸着性能を有しているため、シリカ系スケールの生成に対して非常に優れたスケール防止効果を示すことが開示されている。
【0010】
しかし、従来の重合体のシリカ系のスケール防止効果については必ずしも満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−138193号公報
【特許文献2】特開2000−24691号公報
【特許文献3】特開2006−150180号公報
【特許文献4】特開2009−51883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、シリカ系のスケール防止効果等に優れるポリアルキレングリコールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のポリアルキレングリコールは、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールである。
【0014】
【化3】

【0015】

式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0016】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコールの製造方法が提供される。本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、下記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程を必須とすることを特徴とする、一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールの製造方法である。
【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】

式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
本発明の別の局面によれば、スケール防止剤が提供される。本発明のスケール防止剤は、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールを含むスケール防止剤である。
本発明の別の局面によれば、洗剤組成物が提供される。本発明の洗剤組成物は、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールを含む洗剤組成物である。
本発明の別の局面によれば、顔料分散剤が提供される。本発明の顔料分散剤は、上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールを含む顔料分散剤である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シリカ系のスケール防止効果等に優れるポリアルキレングリコールを提供することができる。また、本発明によれば、良好なシリカ系のスケール防止効果を有するポリアルキレングリコールを簡便に製造することができる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1で製造されたポリアルキレングリコールのHNMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔ポリアルキレングリコール〕
本発明のポリアルキレングリコールは、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴としている。
【0023】
【化6】

【0024】

式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0025】
一般式(1)におけるRは、炭素数1〜20の有機基を表すが、当該有機基は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等を含んでいてもよく、有機基全体として炭素数1〜20であれば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミノ基等の置換基を含んでも良い。好ましくは炭素数1〜4の有機基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が例示され、エチレン基(−CHCH−)が特に好ましい。
【0026】
一般式(1)におけるRは、炭素数2〜20のアルキレン基を表すが、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、等が例示される。ポリアルキレングリコールのシリカ系のスケール防止効果が向上することから、Rは、炭素数2〜8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることが更に好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。なお、Rとしては、1種のみが単独で存在しても良いし、2種以上が混在していても良い。
上記一般式(1)においてオキシアルキレン基により形成される基(すなわち、(−O−R−))は、オキシエチレン基(−O−CH−CH−)を主体とするものであることが好ましい。この場合、「オキシエチレン基を主体とする」とは、全オキシアルキレン基の存在数において、オキシエチレン基がその半数以上を占めるものであることを意味する。これにより、さらに良好なスケール防止効果が得られる。上記一般式(1)中の(−O−R−)において、「オキシエチレン基を主体とする」ことを全オキシアルキレン基100モル%中のオキシエチレン基のモル%で表すと、50〜100モル%であることが好ましい。オキシエチレン基の含量が50モル%未満であると、スケール防止能(スケール防止性ともいう)が低下する虞がある。より好ましくは、60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。
【0027】
上記一般式(1)において、nは、オキシアルキレン基(−O−R−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、好ましくは3〜150であり、より好ましくは5〜100であり、さらに好ましくは7〜60である。上記範囲であれば、良好なスケール防止能が得られる。
【0028】
上記一般式(1)におけるRは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表すが、当該炭素数1〜20の有機基は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等を含んでいてもよく、有機基全体として炭素数1〜20であれば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミノ基等の置換基を含んでも良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示される。
は、好ましくは水素原子または炭素数1〜4の有機基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0029】
また、本発明のポリアルキレングリコールは、上記一般式(1)においてピロリドン環に存在する水素原子の一部または全部が他の有機基で置換されたポリアルキレングリコールであっても良い。この場合の他の置換基としては、上記一般式(1)におけるRにおける基と同じものが例示される。
【0030】
〔ポリアルキレングリコールの製造方法〕
本発明のポリアルキレングリコールは、収率が向上する傾向にあることから、下記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程(工程(1)を必須とする方法により製造することが好ましい。
【0031】
【化7】

【0032】

上記反応により、下記一般式(3)で表される化合物が得られることになる。
【0033】
【化8】

【0034】

式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
上記一般式(3)で表される化合物は、更に末端の水酸基をハロゲン化アルキルや酸無水物等と反応させることにより修飾しても良い。
【0035】
上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物としては、特に限定はされないが、γ−ブチロラクトン類とアミノアルコール類を反応させる方法が好ましく、例えば特開2002−167375号等に開示の方法により製造することができる。
上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物としては、例えばN−ヒドロキシエチルピロリドン、N−ヒドロキシプロピルピロリドン、N−ヒドロキシブチルピロリドン等が例示される。
【0036】
本発明のポリアルキレングリコールは、上記工程(1)を含まない方法で製造しても構わない。例えば(i)上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、(ii)ポリアルキレングリコール鎖並びにイソシアネート基、エポキシ基、エステル基、アミド基等の水酸基と反応し得る反応性基とを有する化合物とを反応させることにより製造しても良い。
【0037】
(工程(1))
工程(1)は、上記の通り、(i)上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物(以下、化合物Aとも言う)と、(ii)炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程である。
上記工程(1)は、化合物Aとアルキレンオキシドを無触媒で、または触媒存在下で反応させる。反応速度の観点から、工程(1)は触媒存在下で行うことが好ましい。好ましい触媒としては酸触媒または塩基性触媒である。
【0038】
上記酸触媒としては、硫酸、リン酸などの鉱酸、四塩化スズ、三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられるが、中でも四塩化スズ、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素またはその錯体が、ポリアルキレングリコールのスケール防止能が向上することから好ましい。上記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0039】
上記工程(1)は、反応圧力としては、常圧から20Kg/cmG、好ましくは1〜10Kg/cmGである。また、反応温度としては好ましくは20〜180℃、更に好ましくは30〜160℃で行なわれる。
【0040】
上記工程(1)は、通常、化合物Aを反応器に仕込む工程(1−1)、アルキレンオキシドを反応器に添加する工程(1−2)と、化合物Aとアルキレンオキシドを反応させる工程(1−3)を含む。
好ましくは更に、反応触媒を添加する工程(1−4)を含む。(1−4)の工程を含むことにより、反応効率が向上し、不純物を低減させることができる為、得られるポリアルキレングリコールのスケール防止能が向上する。
更に(1−2)または(1−3)の工程の前または途中に、好ましくは(1−4)の工程の後に、水分等の不純物を除去する工程(A−5)を設けても良い。
上記(1−2)の工程と(1−3)の工程は同時に開始しても、(1−2)の工程よりも(1−3)の工程を後に開始しても良いが、(1−2)の工程終了後、(1−3)の工程を継続する(すなわち、(1−2)の工程よりも(1−3)の工程を後に終了させる)ことが好ましい。(1−2)の工程の後に、(1−3)の工程の全部または一部を行なうことにより、ポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となる。
また、工程(1−4)は、(1−2)の工程、(1−3)の工程の前に行なうことが好ましい。
【0041】
上記工程(1)は、通常窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。また、反応後に窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で保存しても良い。
上記工程(1)は、好ましくは無溶媒で行なわれるが、溶媒を使用しても良い。溶媒を使用する場合、化合物A、アルキレンオキシドを溶解できるものが好ましい。
【0042】
上記工程(1)において、化合物Aは予め全量反応器に仕込む(初期仕込み)ことが好ましい。初期仕込みすることにより、付加モル数の分布が狭くなり、例えば無機粒子の分散性能等が向上する。一方、アルキレンオキシドは初期に全量添加しても良いが、反応開始以後に徐々に反応器に添加することが好ましい。徐々に添加する場合は、回分式であっても連続式であっても良い。
【0043】
なお、上記工程(1)は、更に複数の工程に分割することも可能である。例えば、化合物Aに少量のアルキレンオキシドを付加する工程と、当該工程により得られたポリアルキレングリコールに更にアルキレンオキシドを付加する工程とを設け、2段階または3段階以上でアルキレンオキシドを付加しても良い。
【0044】
上記工程(1)の後または途中に、反応液中の触媒を除去する工程があっても良い。例えば、反応途中のポリアルキレングリコールが水に不溶の場合、水等で洗浄後に静置し、有機層と水層とを分離し触媒を除去することができる。上記洗浄は、例えば攪拌槽やラインミキサーで、20〜150℃で行なうことができる。
【0045】
本発明のポリアルキレングリコールの製造方法は、必要に応じて、工程(1)その他の反応工程の後または途中に、精製工程を設けても良い。精製工程としては、残存原料、副生成物、水分、触媒の残渣等を除去する工程や、触媒を中和する工程等が例示される。
触媒を中和する工程としては、例えば、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム存在下で反応した場合、その際の中和剤としては硫酸、酢酸、あるいは活性白土等の固体酸を使用することができる。
【0046】
[ポリアルキレングリコール組成物]
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、本発明のポリアルキレングリコールを必須として含むことを特徴としている。本発明のポリアルキレングリコールの含有量は、組成物100質量部に対し、1〜100質量部である。
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、安定性性や取り扱い性を考慮して、水を含んでいても良い、水の含有量は、組成物100質量部に対し、0〜50質量部が好ましい。安定性向上の面からは5〜30質量部が好ましい。
本発明のポリアルキレングリコール組成物は、本発明のポリアルキレングリコール、水以外に、不純物として原料、副生成物、触媒の残渣、溶媒等を含み得る。
【0047】
〔用途〕
本発明のポリアルキレングリコールは、スケール防止剤として使用可能であるが、顔料分散剤、繊維処理剤等の添加剤、洗剤添加物等として用いられうる。
【0048】
<水処理剤、スケール防止剤>
本発明のポリアルキレングリコールは、水処理剤、スケール防止剤に添加することができる。該水処理剤等には、必要に応じて、他の配合剤として、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。防食剤としては、リン酸塩、重合リン酸塩、リン酸エステル、ホスホン酸塩、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの多価金属類、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾールなどのアゾール類、ヒドラジンなどが挙げられる。また、スライムコントロール剤としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩、クロルメチルトリチアゾリン、メチルイソチアゾリン、エチルアミノイソプロピルアミノメチルチオトリアジンなどが挙げられる。
【0049】
上記水処理剤等は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜、鉄鋼集塵水系、地熱水系等でのスケール防止に有用である。特にシリカ系のスケール防止剤として有用である。本発明のスケール防止剤が効果を十分に発揮する水系としては高塩類水系、とりわけシリカ濃度が150mg/L以上の高シリカ濃度水系が挙げられる。
【0050】
上記水処理剤は、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。適切な水溶性重合体としては、アクリル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタアリルオキシプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体、及びこれらの塩等を必須として重合した共重合体および/または単独重合体が例示される、本発明における水処理剤は本発明のポリアルキレングリコール単独でも効果があるが上記適切な水溶性重合体との併用によってさらに効果が発揮される。これら2種類の重合体は予め所定の比率に混合しておいても良いし、対象水系に別々に注入しても良い。添加量は対象水系の水質に応じて変化するが、標準的には1〜200mg/L程度が好ましい。また、本発明のポリアルキレングリコールと上記適切な水溶性重合体を併用する場合はその比率は99/1〜10/90質量比であることが好ましい。
【0051】
上記水処理剤は、粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【0052】
<無機顔料分散剤>
本発明のポリアルキレングリコールは、無機顔料分散剤に添加することができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0053】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のポリアルキレングリコールの含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。上記無機顔料分散剤は粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【0054】
上記無機顔料分散剤は、例えばカーボンブラックの分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度カーボンブラックスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0055】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0056】
<繊維処理剤>
本発明のポリアルキレングリコールは、繊維処理剤に添加することができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のポリアルキレングリコールを含む。
【0057】
上記繊維処理剤における本発明のポリアルキレングリコールの含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0058】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0059】
本発明のポリアルキレングリコールと、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0060】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0061】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ酸(塩)組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のポリアルキレングリコールと、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
上記繊維処理剤は、粉末状等の固体状、液体状のいずれでも構わない。
【0062】
<洗剤組成物>
本発明のポリアルキレングリコールは、洗剤組成物にも添加しうる。
【0063】
洗剤組成物における当該ポリアルキレングリコールの含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、ポリアルキレングリコールの含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0064】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0065】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0066】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0067】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0069】
(固形分の測定)
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンでポリアルキレングリコール(組成物)1.0g+水3.0gを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0070】
(ポリアルキレングリコールの測定条件)
本発明のポリアルキレングリコールは、高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)
(シリカ系のスケール防止性(シリカ系のスケール防止能)の評価法)
(1)イオン交換水にMgSO・7HOを200mg/L(CaCOに換算して)、表1に記載のスケール防止剤を100ppmとなるように添加し、NaSiO・9HOを210mg/L(SiOに換算して)、およびNaHCOを500mg/L(CaCOに換算して)を添加した。この液のpHを9.00±0.1に調整した後、70℃で40時間静置した(加熱処理後液ともいう)。また、NaSiO・9HOのみを210mg/L(SiOに換算して)にイオン交換水で調製した(非加熱処理液という)。
その後、加熱処理液を0.1μのフィルターで濾過した。ろ液を純水で10倍に希釈し、ICP発光分光分析装置(島津製 ICPE−9000)を使用してSi濃度を測定し、この値の10倍を濾液中のSi濃度とし、さらにSi濃度をSiO濃度に換算した。Si析出量(Amg/L、SiO換算)を下記の通り算出した。
Si析出量(Amg/L、SiO換算)=非加熱処理液のSiO濃度−加熱処理液のSiO濃度
(2)上記(1)においてスケール防止剤を添加しない以外は(1)と同様にしてブランクのSi析出量(Bmg/L、SiO換算)を算出した。
(3)下記の通り、シリカ系のスケール防止能を算出した。
シリカ系のスケール防止能(%)=(B−A)/B×100
その結果を表1に示す。なお、上記濾液中のSiO濃度が高い場合は、スケール化していないSi成分が多いことを示しており、即ち、スケール防止性が良好であることを表す。従って、上記シリカ系のスケール防止能(%)は、高いほどスケール防止性が良好であることを表す。
【0071】
(実施例1)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、N−ヒドロキシエチルピロリドン(以下HEPと称することがある。)374.6g(2.9モル)、反応触媒として水酸化ナトリウム0.33g(200ppm)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして安全圧下で120±5℃を保持したままエチレンオキシド1281.8g(29.0モル)を3.5時間かけて反応器内に導入し、導入後さらに2時間その温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、HEPに平均10モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(1)を得た。
【0072】
(実施例2)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、上記実施例1と同様にして製造したHEPに平均10モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール600g(1.1モル)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして安全圧下で120±5℃を保持したままエチレンオキシド195.1g(4.4モル)を2.5時間かけて反応器内に導入し、導入後さらに1.5時間その温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、HEPに平均14.2モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(2)を得た。
【0073】
(実施例3)
温度計、撹拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えたSUS製オートクレーブ反応容器に、上記実施例2と同様にして製造したHEPに平均14.2モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール780.7g(1.1モル)を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で120℃まで加熱した。そして安全圧下で120±5℃を保持したままエチレンオキシド284.2g(6.5モル)を5.3時間かけて反応器内に導入し、導入後さらに4.2時間その温度を保持した。最後に、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、室温まで冷却した。こうして、HEPに平均20.4モルのエキレンオキシドが付加したポリアルキレングリコール(3)を得た。
【0074】
(実施例4)
上記実施例で得られたポリアルキレングリコール(1)、(2)、比較重合体(1)として代表的なスケール防止剤である重量平均分子量5000のポリアクリル酸ナトリウムのシリカ系のスケール防止能を上記評価方法に従って測定した。測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】

本発明のポリアルキレングリコールは、従来のポリアルキレングリコールと比較して良好なシリカ系のスケール防止性を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリアルキレングリコールは、良好なスケール防止能を有する。したがって、スケール防止剤等の水処理用途や洗剤添加物、顔料分散剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコール。
【化1】


式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【請求項2】
下記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程を必須とすることを特徴とする、一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールの製造方法。
【化2】


【化3】


式中、Rは、炭素数1〜20の有機基を表し、Rは、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【請求項3】
請求項1に記載のポリアルキレングリコールを含む、スケール防止剤。
【請求項4】
請求項1に記載のポリアルキレングリコールを含む、洗剤組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアルキレングリコールを含む、顔料分散剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149186(P2012−149186A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9520(P2011−9520)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】