説明

ポリアルキレングリコール誘導体

【課題】液−液界面および固−液界面において優れた界面活性能を発揮する非イオン性界面活性剤として使用可能な、新規なポリアルキレングリコール誘導体を提供する。
【解決手段】一般式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aおよびbは、EOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、a+bは0〜100であり、mは10〜100である。
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性界面活性剤に適したポリアルキレングリコール誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤には、界面に吸着して、界面エネルギーを低下させ、系を熱力学的に安定化させる作用がある。一般的に、分子内に親水基と親油基を併せ持った構造であり、液−液界面では主に乳化可溶化剤として、固−液界面では、粒子の分散、濡れ性の向上など様々な特性を発揮する。
【0003】
界面活性剤の中でも、非イオン性界面活性剤は、石鹸などの陰イオン性界面活性剤と並んで、産業界に不可欠であり、臨界ミセル濃度が低く、低濃度で使用できることから、工業的にも汎用されている。
【0004】
従来から汎用されている非イオン性界面活性の親油基に着目すると、その多くは動植物油脂から誘導される長鎖アルキルアルコールもしくはそれらを原料とした合成アルコールであるため(例えば特許文献1および2)、工業的には、数100程度の分子量しか得られず、十分な親油性を発揮するのが困難であった。
【0005】
一方、親水基は、金属酸化物などの固体を液体中に分散させる固−液界面において、固体表面への吸着性基として働くことが知られているが、親水基がオキシエチレン基では、HLBの制御が容易であるが、水酸基に比べ吸着能に課題があった。また、工業的に汎用されているソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルもしくはエーテル(例えば特許文献2および3)などは、多価アルコールに由来する水酸基を親水基としているが、これら化合物においても親油基の分子量が限定され、十分な効果を発揮するには課題があった。
【0006】
このような課題を解決するために、親油基としてオキシブチレン基、親水基としてポリグリセリンを導入した界面活性剤の提案がなされている(例えば特許文献4および5)。しかし、この提案においても、液−液界面への界面活性能には優れているが、吸着サイトとなる水酸基が両端にあるため、水酸基同士の相互作用に乏しいため固体表面への吸着能に劣り、その結果、固−液界面への界面活性能については、十分な効果が得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−212491
【特許文献2】特開2003−213036
【特許文献3】特開昭60−28944
【特許文献4】特開2007−31554
【特許文献5】特開2008−188557
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた界面活性能を発揮する非イオン性界面活性剤として使用可能な、新規なポリアルキレングリコール誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、非イオン性界面活性剤の親油基として、分子量の制御が可能なポリオキシアルキレン基に着目した。さらに親水基には、固体表面への吸着性に優れた水酸基が4つ隣接しているキシリトールに着目した。キシリトールに保護基を導入し、オキシエチレン基、炭素数3〜4のオキシアルキレン基などを導入した後、必要に応じてアルキル化もしくはアシル化を行い、その後、脱保護化することにより、4つの隣接水酸基を局在化することができ、界面活性能が向上することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1) 下記一般式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
【化1】


(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aおよびbは、EOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、a+bは0〜100であり、mは10〜100である。
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアシル基である。)
【0011】
(2) 前記のポリアルキレングリコール誘導体において、AOが炭素数4のオキシアルキレン基である。
【0012】
(3) 前記のポリアルキレングリコール誘導体において、a=0またはb=0である。
【0013】
(4) 前記のポリアルキレングリコール誘導体からなる非イオン性界面活性剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る新規なポリアルキレングリコール誘導体は、優れた界面活性能を発揮するため、産業上、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[ポリアルキレングリコール誘導体]
本発明に係るポリアルキレングリコール誘導体は、下記一般式(1)により示される。
【化2】

【0016】
上記式(1)は、キシリトール骨格を有するポリアルキレングリコール誘導体である。
EOはオキシエチレン基であり、親水性を付与する。AOは、炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、乳化可溶化剤としては親油基、分散剤としては立体反発をもたらす分散サイトとして作用する。
【0017】
AOとしては、炭素数3ではオキシプロピレン基、炭素数4では、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシt−ブチレン基が例示できるが、特に好ましくは、オキシブチレン基である。AOが2種以上の場合は、ランダム状付加でもブロック状付加でもよい。
【0018】
EOとAOの付加形態は、ブロック状であり、キシリトールに対してEO−AO−EOの順に付加する。EOとAOがランダム状に付加していると、界面活性能が十分ではなく好ましくない。
【0019】
mはAOの平均付加モル数で、AOが2種以上の場合は、合計平均付加モル数を示す。mは、10〜100であるが、より好ましくは15以上であり、最も好ましくは20以上である。また、mは、好ましくは80以下であり、より好ましくは70以下であり、最も好ましくは50以下である。本発明のポリアルキレングリコール誘導体において、AO部位は、親油基として作用するが、mが10より小さい場合は、親油基として十分な分子量ではなく、乳化可溶化剤として用いた場合、十分な効果を発揮しない場合があり、さらに、分散剤として用いたときに十分な立体反発が得られないため、好ましくない。nが100を超えると、副反応生成物の影響のために十分な効果を発揮しない場合があり、好ましくない。
【0020】
EOは、キシリトール骨格の親水性を補うために必要に応じて付加できる。a=b=0の場合は、親水基はキシリトール部位のみであり、AO部位を親油性とした非イオン性界面活性剤となる。また、a=0の場合は、AO部位の両側にキシリトール部位およびEO部位を配した、親水性−親油性−親水性のトリブロック型非イオン性界面活性剤となる。さらに、b=0の場合は、EO部位はキシリトールの親水性を補う働きを示す。
【0021】
このように、本発明では、a+bおよびmを適宜選択することによって、様々な分子形態をとり、目的に応じて、親水性および親油性を制御することが可能であるが、親油型非イオン性界面活性剤として作用するa=b=0の場合が特に好ましい。
【0022】
a+bは、EOの平均付加モル数で0〜100、好ましくは、0〜50、より好ましくは0〜20であり、最も好ましくは0〜10である。a+bが100より大きいと、親水性が高くなり、油剤との相溶性が十分に得られず、十分な界面活性能が得られないため好ましくない。
一方、親水性を補うためにEOが必要であれば、a+bは、1〜100、好ましくは1〜50、より好ましくは1〜20であり、最も好ましくは5〜10である。
【0023】
また、a、bは、それぞれ100以下であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下であり、最も好ましくは10以下である。
また、a、bは、それぞれ0であってよいが、親水性を補うためにEOが必要であれば、1以上であってよく、5以上が更に好ましい。
【0024】
また、本発明の観点からは、EOとAOの合計に対するAOの割合(AO/(EO+AO))が80質量%以上であることが特に好ましい。
【0025】
は、水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキルまたはアシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基及びこれらの混合基などが挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基である。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基などが挙げられる。好ましくは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基である。
【0026】
キシリトール部位は、隣接する4つの水酸基を有し、親水基として作用する。固−液界面であれば、固体表面への吸着部位として、さらに液−液界面であれば、乳化可溶化剤の親水基として必須である。
【0027】
キシリトール以外の骨格を有する水酸基、例えば、グリセリンのように隣接する水酸基が2つの場合や、引用文献4もしくは5に例示されるトリグリセリン誘導体のように、4つの水酸基を有しても、吸着サイトとなる水酸基が両端にある場合では、水酸基同士の相互作用に乏しいため固体表面への吸着能に劣り、固体表面への吸着力が十分ではない。
【0028】
[ポリアルキレングリコール誘導体の製法]
一般式(1)に示されるポリアルキレングリコール誘導体は、通常、以下の(1)〜(3)の手順により製造することができる。
【0029】
(1) キシリトールを酸触媒の存在下、ケタール化剤もしくはアセタール化剤と反応させ、下記一般式(2)に示すキシリトールジケタール化合物もしくはジアセタール化合物を得る。
【0030】
【化3】

【0031】
式(2)のキシリトールジケタール化物もしくはジアセタール化物は、必要に応じて、蒸留等で精製しても構わない。
【0032】
(2) 続いてアルカリ触媒下、オキシエチレン基および炭素数3〜4のオキシアルキレン基を付加反応し、さらに必要に応じて、アルカリ触媒下にて、アルキルハライド、アシルハライド、酸無水物などと反応させ、末端水酸基をエーテル化もしくはエステル化することもできる。
(3) その後、酸の存在下で脱ケタール化もしくは脱アセタール化を行う。
【0033】
式(2)において、RおよびRは、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基であり、RおよびRが同時に水素原子になることはない。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が例示できるが、好ましくはメチル基、エチル基である。R=R=メチル基の場合、ケタール化剤としてアセトン、2,2−ジメトキシプロパンが例示でき、R=水素原子、R=メチル基の場合、アセタール化剤として、アセトアルデヒドが例示できる。
【0034】
ケタール化もしくはアセタール化の触媒としては、酸触媒、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。通常、ケタール化剤もしくはアセタール化剤の仕込み量は、キシリトールに対して、200〜400モル%であり、酸触媒の仕込み量はキシリトールに対して5×10−6〜15×10−3モル%が、反応温度は30〜90℃で行うのが一般的である。
【0035】
式(2)のキシリトールジアセタール化物もしくはジケタール化物を、次工程のアルキレンオキシド付加反応で使用する場合、特に触媒除去処理などをしなくても差し支えないが、必要であれば、アルカリによる中和処理や酸吸着処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムなどの中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0036】
式(2)の化合物について、アルカリ触媒の存在下でアルキレンオキシド付加反応を行う場合、通常、オートクレーブなどの加圧反応釜において、40〜180℃で反応を行う。このときアルカリ触媒としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。触媒の使用量は特に限定されないが、付加反応終了後の質量に対して0.01〜5.0質量%が一般的である。
【0037】
アルキレンオキシドの付加反応後、必要に応じて、アルカリ存在下、炭素数1〜4のアルキルハライド等を反応させ、アルキルエーテル化することもできる。アルキルハライドの例としては、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が挙げられる。また、このときのアルカリとしては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコラート等を使用することができる。アルカリハライドの仕込み量は、反応する水酸基数に対して100〜400モル%、アルカリ量は、反応する水酸基数に対して100〜500モル%、反応温度は60〜180℃で行うのが一般的である。
【0038】
また、式(2)の化合物について、必要に応じて、アルカリもしくは酸触媒の存在下、炭素数1〜4のカルボン酸、カルボン酸ハライド、カルボン酸無水物等のアシル化剤にて、エステル化することもできる。カルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等、カルボン酸ハライドとしては、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸等が例示できる。アシル化剤の仕込み量は、反応する水酸基数に対して100〜400モル%、アルカリもしくは酸触媒量は、反応する水酸基数に対して0.01〜500モル%、反応温度は60〜180℃で行うのが一般的である
【0039】
式(2)の化合物のオキシアルキレン化物における脱ケタール化もしくは脱アセタール化物反応は、酸の存在下で行う。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、パラトルエンスルホン酸、その他固体酸、陽イオン交換樹脂、酸性白土等が挙げられる。酸の使用量としては、式(3)の化合物のオキシアルキレン化物に対して0.001〜6.0質量%である。また、必要に応じて水を添加して反応もでき、使用量としては、0.01〜100質量%である。反応温度は60〜150℃で行うのが一般的である。
【0040】
脱ケタール化もしくは脱アセタール化反応終了後は、アルカリによる中和処理や酸吸着剤処理、濾過等を行うことができる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム等の中和剤や、協和化学工業(株)製のキョーワード300、キョーワード500、キョーワード1000、キョーワード2000、富田製薬(株)製のトミックスAD−500等の吸着剤、その他ゼオライト等が使用できる。
【0041】
以上説明したように、一般式(1)で示されるポリアルキレングリコール誘導体は、予めキシリトールの水酸基をジケタール化又はジアセタール化によって保護し、この状態で水酸基のオキシアルキレン化反応を行い、必要に応じてエーテル化/エステル化を行った後、脱ケタール化または脱アセタール化反応により脱保護化という一連の工程が行われる。そして、これにより、式(1)に示すようなキシリトールの水酸基1つが修飾されたポリアルキレングリコール誘導体を得ることができる。
【0042】
本発明の非イオン性界面活性剤は、分散性、湿潤性、水中油型もしくは油中水型乳化剤として良好であるが、用途はそれらに限定されるものではない。用途としては例えば、乳化剤、可溶化剤、分散剤、消泡剤、潤滑剤、浸透剤、洗浄剤等、産業分野としては、例えば、繊維工業、金属工業、製紙工業、印刷業、化粧品工業、医薬品工業、食品工業、写真工業、合成樹脂工業、潤滑工業などが例示できる。なお、これらの用途における本発明の非イオン性界面活性剤の使用量は、使用目的に応じて適宜調整されるが、0.01〜50質量%が一般的であり、好ましくは、0.01〜20質量%である。
【実施例】
【0043】
(合成例)
本発明に係るポリアルキレングリコール誘導体の合成例を示す。水酸基価は、JIS
K1557 6.4に準じて測定した。
合成例1:ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)
(1) ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、2,2−ジメトキシプロパン1291g、パラトルエンスルホン酸一水和物27mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、2時間反応させた。反応終了後、副生したメタノール及び過剰分の2,2−ジメトキシプロパンを除去し、1014gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a、R=R=メチル基)を得た。水酸基価は、240KOHmg/gであった。原料のキシリトールと化合物1aのIRチャートを比較したところ、化合物1aには3500cm−1付近の水酸基のピークが小さくなっており、代わりに2960cm−1、2870cm−1、1460cm−1、1380cm−1付近のピークが出現していることを確認した。
【0044】
【化4】

【0045】
(2)オキシブチレン化反応
化合物1aを235g、水酸化カリウム15.5gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりブチレンオキシド2900gを滴下させ、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、2850gのポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物1b)を得た。水酸基価は、18.1KOHmg/gであった。
【0046】
【化5】

【0047】
(3)脱ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物1bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、密閉状態で80℃、2時間脱ケタール化反応を行った後、窒素バブリングで水及びアセトンを系外に留去した。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃、1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、650gのポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物1)を得た。
【0048】
【化6】

【0049】
なお、以上によって得られた化合物1についてGPC分析を行ったところ、メインピークの分子量は2989であった。分析条件は以下の通りである。
分析機器 :SHODEX GPC SYSTEM−11(昭和電工社製)
標準物質 :ポリエチレングリコール
サンプルサイズ :10%×100×0.001mL
溶離液 :THF
流速 :1.0mL/min
カラム :SHODEX KF804L(昭和電工社製)
カラムサイズ :I.D.8mm×30cm×3
カラム温度 :40℃
検出器 :RI×8
【0050】
また、化合物1bと化合物1のIR分析を比較すると、化合物1では3500cm−1付近の水酸基のピークが大きくなっていることから、目的物質が得られていることを確認した。
【0051】
合成例2:ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2)
合成例1の手順のうち、ケタール化反応を以下の通りに変更し、合成を行い、ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2)を得た。
【0052】
(1)ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管及び油水分離管を取り付けた3リットルの四つ口フラスコに、キシリトール700g、アセトン1050g、パラトルエンスルホン酸一水和物10mgを仕込み、反応系内を60〜90℃に保持し、4時間反応させた。反応終了後、副生した水及び過剰分のアセトンを除去し、1002gのジイソプロピリデンキシリトール(化合物1a、R=R=メチル基)を得た。水酸基価は、235KOHmg/gであった。原料のキシリトールと化合物1aのIRチャートを比較したところ、化合物1aには3500cm−1付近の水酸基のピークが小さくなっており、代わりに2960cm−1、2870cm−1、1460cm−1、1380cm−1付近のピークが出現していることを確認した。
【0053】
(2) オキシエチレンおよびオキシブチレン化反応
化合物1aを235g、水酸化カリウム20gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置により、エチレンオキシド230gを滴下させ、2時間撹拌した。引き続き、ブチレンオキシド2900gを滴下させ、2時間撹拌した。その後、オートクレーブ内から、反応物を取り出し、塩酸で中和して、pH6〜7とし、含有する水分を除去するため、100℃、1時間、減圧処理を行い、最後に濾過をして塩を除去して、3028gのポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)ジイソプロピリデンキシリトール(化合物2b)を得た。水酸基価は、17.0mgKOH/gであった。
【0054】
【化7】

【0055】
(3) ケタール化反応
撹拌羽根、窒素吹き込み管、熱電対、冷却管を取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、化合物2bを700g、水70g、36%塩酸10gを仕込み、密閉状態で80℃、2時間脱ケタール化反応を行った後、窒素バブリングで水及びアセトンを系外に留去した。続いて10%水酸化カリウム水溶液でpH6〜7に合わせ、含有する水分を除去するために、100℃、1時間、減圧処理した。さらに処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、670gのポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシブチレン(40モル)キシリトール(化合物2)を得た。
【0056】
【化8】

【0057】
合成例1に準じて、GPC分析を行ったところ、メインピークの分子量は3121であった。さらに、化合物2bと化合物2のIR分析を比較すると、化合物1では3500cm−1付近の水酸基のピークが大きくなっていることから、目的物質が得られていることを確認した。
【0058】
本発明者らは、上記合成例1〜2に準じて、下記表1に示す組成のキシリトール誘導体を調製した。
【0059】
【表1】

【0060】
(特性評価)
以上、調製したポリアルキレングリコール誘導体の非イオン性界面活性剤としての特性について検討するため、酸化チタンの各種油剤に対する分散性について、湿潤点(湿潤性)、流動点(流動性)およびそれらの差(分散性)の3つの指標を用いて評価した。
【0061】
<分散性の評価方法>
酸化チタン:関東化学製 試薬 酸化チタン(IV) アナターゼ型
大豆油:和光純薬製 大豆油
【0062】
<湿潤点(湿潤性)>
酸化チタン50gに各種非イオン性界面活性剤5gを添加し、大豆油を少量ずつ滴下しながらスパーテルで混ぜ合わせたとき、酸化チタン全体が濡れて一つの塊となる点を湿潤点(g/50g)とした。湿潤点が小さいほど、少ない量で湿潤し、固体表面への吸着が良好である。
【0063】
<流動点(流動性)>
湿潤点を測定後、引き続き、大豆油を少量ずつ滴下しながら、スパーテルで混ぜ合わせ、分散液を調製する。得られた分散液を傾けた時に流れ出す点を流動点(g/50g)とした。流動点が小さいほど良好である。
【0064】
<湿潤点および流動点の差(分散性)>
前述の方法にて得られた湿潤点および流動点の差を算出した(g/50g)。差が小さい程、分散に要する油剤量が少ないことを示し、分散性が良好である。結果を表2、表3に示す。
【0065】
表中、( )内の数値は、それぞれに要した大豆油の質量(g/50g)を示す。また、%表記は、ブランクを100とした時の質量比を示し、以下の式から算出した。数値が低い程、良好であることを示す。

質量比(%)=[各化合物を用いたときの質量(g)]/[ブランクの質量(g)] ×100

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
本発明の化合物1〜5を添加した実施例1〜5は、いずれも良好な分散性を示した。
一方、比較例1では親油基の分子量が小さいため、また、比較例2では、EO付加モル数が大きいため、流動性が悪く、分散性も劣っていた。比較例3では、親油基となるオキシアルキレン基が存在しないため、何れの評価項目も劣っていた。
比較例4および5では、グリセリン骨格、もしくは、トリグリセリン骨格のため、酸化チタンへの吸着効率が落ち、湿潤性が劣っていた。比較例6は、湿潤性が良好であるが、流動性に劣り、分散性も劣っていた。比較例7では、湿潤性、流動性、分散性のいずれも劣っていた。
【0069】
<乳化安定性の評価>

調製方法
大豆油 30.0 質量%
乳化剤 5.0 質量%
水 65.0 質量%
【0070】
大豆油と乳化剤を、70℃にて均一に撹拌し、さらに同温度にて水をゆっくり添加して予備溶解した。これをホモミキサーにて撹拌して(5000rpm×5分間)、乳化剤組成物を得た。
【0071】
評価基準
作成した乳化剤組成物を乳化直後および40℃で1ヶ月間保管した後の乳化状態を下記の基準により、目視で判断した。結果を表4に示す。
○:安定なエマルジョン状態。
×:わずかに油浮きが見られる状態。
××:完全にクリーミングまたは分離している状態。
【0072】
【表4】

【0073】
本発明の化合物1〜5を添加した実施例6〜10は、いずれも良好な乳化安定性を示した。一方、比較例8では親油基の分子量が小さいため、また、比較例9では、EO付加モル数が大きいため、乳化安定性に劣っていた。比較例10では、親油基となるオキシアルキレン基が存在しないため、何れの評価項目も劣っていた。
比較例11および12では、グリセリン骨格、もしくは、トリグリセリン骨格のため、本発明のキシリトール誘導体よりも水酸基の配向性に乏しく、乳化安定性に劣る。比較例13および比較例14でも、本発明の効果には及ばなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)により示されるポリアルキレングリコール誘導体。
【化9】


(式中、EOはオキシエチレン基であり、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、EOとAOはブロック状に結合している。
aおよびbはEOの平均付加モル数であり、mはAOの平均付加モル数であり、a+bは0〜100であり、mは10〜100である。
は、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のアシル基である。)
【請求項2】
AOが炭素数4のオキシアルキレン基であることを特徴とする、請求項1記載のポリアルキレングリコール誘導体。
【請求項3】
a=0またはb=0であることを特徴とする、請求項1または2記載のポリアルキレングリコール誘導体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載のポリアルキレングリコール誘導体からなることを特徴とする、非イオン性界面活性剤。

【公開番号】特開2011−157466(P2011−157466A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20008(P2010−20008)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】