説明

ポリイソシアネート含有樹脂組成物、およびそれを用いた樹脂成型品

本発明は、一般式(I)


[式中、Rは、低級アルキル、または一般式(II)


(式中、Rは、低級アルキレンを表す)を表す]で表されるリジンエステルポリイソシアネートと、イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂とを含むポリイソシアネート含有樹脂組成物等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、成型材料、塗料、コーティング剤、粘接着剤、シーリング材等の用途に有用なポリイソシアネート含有樹脂組成物、およびポリイソシアネート含有樹脂組成物を用いた樹脂成型品に関する。
【背景技術】
ポリイソシアネート化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、ウレタン基等の活性水素含有基と高い反応性を有するため、分子量調整剤、架橋剤、充填材と樹脂との結合剤等として様々な分野で多用されている。しかし、これらの活性水素含有基を有する成分と混合して使う場合、ポットライフは短く、速やかに使用する必要があり、取り扱いにくい等の問題点がある。
この欠点を改善するものとして、イソシアネート基をフェノール、ラクタム等のブロック剤で保護した、いわゆるブロックイソシアネートが知られている(特公昭49−2179号公報参照)。ブロック剤は、主に熱により外れて有効イソシアネート成分が生成し、イソシアネート基との反応性を有する官能基との反応が起こる。しかし、ブロック剤として用いたフェノール等の物質が、ブロックの解離時に系内に生じるため、これらの物質による臭気、毒性等安全衛生上の問題がある。
また、二官能以上のイソシアネートをこれと実質的に反応しない熱可塑性樹脂中に分散させたポリイソシアネート含有樹脂組成物が知られている(特開昭56−167721号公報参照)。この組成物におけるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族イソシアネート等が例示されている。しかし、これらのポリイソシアネート含有樹脂組成物は、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂とポリイソシアネートとの反応速度が小さい、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂とポリイソシアネートとの相溶性が低い、組成物中のイソシアネート基濃度が高いペレットを得ることができない等の点で満足できるものではない。
さらに、末端に2個以上のイソシアネート基を持つ化合物を、イソシアネート基と反応を起さない熱可塑性樹脂と混和し、得られた混和物を熱可塑性ポリウレタン樹脂に配合し、次いでこの混合物を成形機に供して成形する熱硬化性ポリウレタン成形品の製造法が知られている(特公昭58−2063号公報参照)。しかし、上記文献で得られる熱硬化性ポリウレタン成形品は、耐候性等の点で満足できるものではない。
一方、2,6−ジイソシアネートカプロン酸−β−イソシアネートエチルエステル等の三官能ポリイソシアネート化合物を用いたポリウレタン樹脂を主成分とする塗料用組成物が知られており、この組成物を用いた塗料は、硬化速度が大きい、低毒性、塗膜性能において耐酸性、耐水性に優れる等の特長を有している(特公昭57−20343号公報参照)。しかしながら、この組成物は、原料である三官能ポリイソシアネート化合物のポットライフが短い等、原料の取り扱い易さの点で満足できるものではない。
【発明の開示】
本発明は、次の(1)〜(6)を提供する。
(1) 一般式(I)

[式中、Rは、低級アルキル、または一般式(II)

(式中、Rは、低級アルキレンを表す)を表す]で表されるリジンエステルポリイソシアネートと、イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂とを含むポリイソシアネート含有樹脂組成物。
(2) リジンエステルポリイソシアネートとイソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂の割合が、重量比で50:50〜2:98である(1)に記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
(3) ポリイソシアネート含有樹脂組成物中のイソシアネート基濃度が1〜24重量%である(1)または(2)に記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
(4) イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
(5) Rがメチル、エチル、または2−イソシアナートエチルである(1)〜(4)のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物と、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂とを反応させて得られる樹脂成型品。
一般式(I)および(II)中の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば、炭素数1〜8の直鎖または分枝状のアルキル等があげられ、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等があげられ、中でも、メチルまたはエチルが好ましい。
低級アルキレンとしては、例えば、炭素数2〜8の直鎖または分枝状のアルキレン等があげられ、その具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン等があげられ、中でも、エチレンが好ましい。
以下、一般式(I)で表されるリジンエステルポリイソシアネートを、単にリジンエステルポリイソシアネートと表現し、イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂を、単に熱可塑性樹脂−Aと表現することもある。
本発明に使用されるリジンエステルポリイソシアネートは、特に限定されないが、公知の方法(例えば、特開2002−3462号公報等に記載された方法等)により製造することができ、また、例えば、一般式(I)中のRが2−イソシアナートエチルである2−イソシアナートエチル2,6−ジイソシアナートカプロエート(LTI)、および一般式(I)中のRがメチルであるメチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート(LDI)は、市販品として入手することもできる。
本発明に使用される熱可塑性樹脂−Aとしては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等があげられ、中でも、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂が好ましい。これらは、公知の任意の方法により得ることができ、市販品として入手することもできる。
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物は、リジンエステルポリイソシアネートと熱可塑性樹脂−Aを混合することにより製造することができる。混合方法としては、特に限定されないが、溶融混練、溶液混合等があげられる。
溶融混練の場合、押し出し機、密閉式混練機、ミキシングロール等を用いるのが好ましく、中でも、押し出し機または密閉式混練機を用いることがより好ましい。溶融混練を行う前は、熱可塑性樹脂−Aを乾燥し、その水分含有量を少なくしておくことが好ましい。溶融混練後は、冷却した後、裁断してペレット、粉体等にして使用に供することができる。
押し出し機を用いる場合の具体的混合方法としては、リジンエステルポリイソシアネートと熱可塑性樹脂−Aとを予備混合した後押し出し混練する方法、押し出し機のシリンダー中間部からリジンエステルポリイソシアネートを液状で注入する方法等があげられる。
密閉式混練機を用いる場合の具体的混合方法としては、熱可塑性樹脂−Aを混練機中で溶融させた後、リジンエステルポリイソシアネートを添加し、さらに混練する方法等があげられる。
溶融混練を行う際の温度は、好ましくは、100〜250℃、より好ましくは、140〜200℃である。
溶液混合の場合、予め溶剤に溶解させた熱可塑性樹脂−Aとリジンエステルポリイソシアネートとを混合した後、溶剤を除去することが好ましい。その際用いることのできる溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性であるものが好ましく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1−メトキシプロピル−2−アセテート、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングレコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングレコールブチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム等があげられる。
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物では、リジンエステルポリイソシアネートと熱可塑性樹脂−Aの比(重量比)は、使用目的に応じて選べるが、好ましくは、50:50〜2:98で、より好ましくは、40:60〜5:95である。リジンエステルポリイソシアネート含量の熱可塑性樹脂−A含量に対する重量比が、50/50以下あると樹脂組成物の強度が強くなって扱いやすく、逆に、2/98以上であると樹脂成型品を製造する際の該樹脂組成物の架橋剤としての配合量を少なくすることができる。
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物中のイソシアネート基濃度(以下、NCO濃度と略す)は、好ましくは、1〜24重量%、より好ましくは、2〜19重量%である。ここで、NCO濃度は、以下の測定方法により測定したものである。
[NCO濃度の測定方法]
測定試料0.1〜0.15gを200ml共栓付きフラスコに精秤し、0.1mol/L ジ−N−ブチルアミン(トルエン溶液)25mlを添加した後15分間攪拌する。これに、イソプロピルアルコール100mlを加え、電位差滴定装置(平沼産業製 COMTITE−980)を用い、0.1mol/L 塩酸で滴定する。別途、ブランクを滴定する。下記の式を用いてNCO濃度を算出する。
NCO濃度(重量%)=(Vb−Vs)×f×N×4.2/W
ここで、Vb: ブランクテストで要した塩酸の滴定量(ml)
Vs: 本テストで要した塩酸の滴定量(ml)
f : 滴定に使用する塩酸のファクター(−)
N : 滴定に使用するHCl濃度(mol/L)
W : 測定試料の重量(g)
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル捕捉剤、チキソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、シランカップリング剤、安定剤(金属石鹸、フォスファイト、フェノール系、有機錫系等)、可塑剤(ジオクチルフタレート、ポリエステル系、トリメリット酸系等)、光安定剤(ヒンダードアミン系等)、炭酸カルシウム等の充填剤、分散剤(界面活性剤)等の各種の添加剤が含有されていてもよい。
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物は、保存安定性に優れる。また、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物では、組成物中のイソシアネート基濃度が高いペレットを得ることができる。組成物中のイソシアネート基濃度が高いと、樹脂成型品を製造する際、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物の架橋剤としての配合量を少なくすることができる。また、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との反応速度が大きく、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との相溶性に優れ、得られる樹脂成型品の架橋密度を高くすることができる。また、成型加工時に与える熱による揮発性が少なく、安全衛生上の問題がない。
本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物は、成型材料、塗料、コーティング剤、粘接着剤、シーリング材等の用途に有用である。中でも、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物を用いた成型品は耐候性に優れ、屋外使用に好適である。
次に、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物と、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂とを反応させて得られる樹脂成型品について説明する。
本発明に使用されるイソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂(以下、単に熱可塑性樹脂−Bと表現することもある)におけるイソシアネート基と反応する活性水素含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基、アミド基、アセトアセチル基等があげられ、中でも、ヒドロキシル基、アミノ基、ウレタン基、ウレア基等が好ましい。
本発明に使用される熱可塑性樹脂−Bとしては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸、ポリヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシル基またはアミノ基含有アクリル樹脂等があげられ、中でも、常温において固体で、上記の熱可塑性樹脂−Aと溶融混合可能なもの、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸等が好ましい。これらは、公知の任意の方法により得ることができる。
本発明の樹脂成型品は、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物と熱可塑性樹脂−Bとを反応させて製造することができる。例えば、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物と熱可塑性樹脂−Bとを予備混合し、流動性をなくさない程度に反応させ、公知の成型方法、例えば、射出成型、押し出し成型、カレンダー成型等の成型方法により成型を行い、冷却後、さらに、必要により40〜150℃での熱処理により反応を完結させることにより行うことができる。
本発明の樹脂成型品は、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物中に含有されるNCO基のモル数と、熱可塑性樹脂−B中のイソシアネート基と反応する活性水素含有基のモル数との比が、0.01〜100になるように配合して製造するのが好ましく、0.1〜10になるように配合して製造するのがより好ましい。
本発明の樹脂成型品は、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物と熱可塑性樹脂−Bの他に、例えば、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料、シリカ、酸化マグネシウム、木材粉等の充填剤等の添加剤を添加して、反応させて製造してもよい。その際、それらの添加剤が活性水素含有基を有している場合、架橋密度の向上が期待できる。それらの添加量は、熱可塑性樹脂−B 1重量部に対して、0.1〜500重量部が好ましい。
また、本発明の樹脂成型品を製造する際には、必要に応じて、公知慣用の各種用途に適した他の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動性改善剤、粘着付与剤・防止剤、顔料分散剤等を添加してもよい。
本発明の樹脂成型品の形状、用途等は、特に限定されない。例えば、射出成型により、自動車部品、事務・OA用品、生活雑貨等向けに、ブロック状、シート状等、さまざまな形状、デザインの樹脂成型品を製造することができる。また、押し出し成型により、ホース、チューブ、フィルム、電線被覆、異形品等を製造することができる。さらに、カレンダー成型により、フィルム・シート、繊維、プラスチック等各種基材とのラミネートフィルム・シート等を製造することができる。
本発明の樹脂成型品は、架橋密度が高く、耐候性等に優れ、屋外使用等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1 リジンエステルポリイソシアネート含有樹脂組成物の製造
二軸押し出し機[(株)池貝製PCM30、L/D=42;L:シリンダーの長さ、D:シリンダーの直径]に、ポリスチレン[A&Mスチレン(株)製、HF−77、予備乾燥済み]8.8kg/時間をホッパーより供給し、2−イソシアナートエチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート[LTI、協和発酵工業(株)製、NCO濃度47.2重量%]1.2kg/時間をシリンダー中間部から東邦機械工業(株)製の液体圧入機を用いて供給した。LTIを常温で供給し、押し出し機のシリンダー設定温度を150℃とした。押し出し機からストランド状(ひも状、直径3mm)で出てくる組成物を、冷却槽で水冷後、カッターで切断することにより、リジンエステルポリイソシアネート含有樹脂組成物(ペレット;実−1とする)を得た。
得られたペレット中のNCO濃度は、5.6重量%であった。このペレットを、23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
実施例2 リジンエステルトリイソシアネート含有樹脂組成物の製造
ポリスチレンの供給量を8.0kg/時間にし、LTIの供給量を2.0kg/時間に変更する以外は、実施例1と同様の操作により、リジンエステルトリイソシアネート含有樹脂組成物(ペレット;実−2とする)を得た。
得られたペレット中のNCO濃度は、9.2重量%であった。このペレットを23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
実施例3 リジンエステルジイソシアネート含有樹脂組成物の製造
ポリスチレンの供給量を8.6kg/時間にし、LTIをメチル−2,6−ジイソシアナートカプロエート[LDI、協和発酵工業(株)製、NCO濃度39.6重量%]にし、その供給量を1.4kg/時間とする以外は、実施例1と同様の操作により、リジンエステルジイソシアネート含有樹脂組成物(ペレット;実−3とする)を得た。
得られたペレット中のNCO濃度は、5.5重量%であった。このペレットを23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
実施例4 リジンエステルトリイソシアネート含有樹脂組成物の製造
東洋精機(株)製ラボプラストミルを用いて、軟質塩化ビニル樹脂[アプコ(株)製、CE80EA、予備乾燥済み]51gを160℃で予め溶融させ、LTI9gを少しずつ加え混練混合した。この混合物を取り出し、冷却した後、粉砕することにより、リジンエステルトリイソシアネート含有樹脂組成物(粉体;実−4とする)を得た。
得られた樹脂組成物のNCO濃度は、7.0重量%であった。この粉体を23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
比較例1 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有樹脂組成物の製造
二軸押し出し機[(株)池貝製PCM30、L/D=42]に、ポリスチレン(予備乾燥済み)8.3kg/時間をホッパーより供給し、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、スミジュール44S、住友バイエルウレタン製)1.7kg/時間をシリンダー中間部から供給用シリンダー型ポンプを用いて供給した。MDIを60℃で供給し、押し出し機のシリンダー設定温度を150℃とし、実施例1と同様の操作により、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含有樹脂組成物(ペレット;比−1とする)を得た。
得られたペレット中のNCO濃度は、実−1と同じ、5.6重量%であった。このペレットを、23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
比較例2 ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート含有樹脂組成物の製造
ポリスチレンの供給量を5.5kg/時間にし、MDIをヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート(HDIヌレート、スミジュールN3300:住友バイエルウレタン製)にし、その供給量を4.5kg/時間とする以外は、比較例1と同様の操作により、ペレット化したヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート含有樹脂組成物を得ようとした。本例では、実施例2と同じNCO濃度のヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート含有樹脂組成物を得ることを目的としたが、押し出されたストランドがサージングを起こし、ペレット化することができなかった。
比較例3 ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート含有樹脂組成物の製造
ポリスチレンの供給量を7.4kg/時間にし、MDIをHDIヌレートにし、その供給量を2.6kg/時間とする以外は、比較例1と同様の操作により、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体トリイソシアネート含有樹脂組成物(ペレット;比−3とする)を得た。
得られたペレット中のNCO濃度は、実−1と同じ、5.6重量%であった。このペレットを、23℃、50%相対湿度(RH)に調節した部屋に1ヶ月間放置した後、NCO濃度を測定したところ、変化がなく、保存安定性に優れていた。
参考例1 ポリウレタン樹脂の製造
PTG−2000(保土ヶ谷化学製ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1991)629g、1,4−ブタンジオール(三菱化学製)87gとイソホロンジイソシアネート(デスモジュールI:住化バイエルウレタン製)285gを120℃で混合し、5分間強撹拌した。これを80℃で3日間熟成した。冷却後粉砕し、ポリウレタン樹脂を得た。得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、85,000であった。
参考例2 ポリ乳酸の製造
90重量%濃度のL−乳酸水溶液1010gを、撹拌装置、リービッヒ冷却管および窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、窒素置換を行った後、徐々に減圧しながら昇温し、150℃とした。最終的に0.133kPaまで減圧した。氷水で冷やした受器より留出した混合物525.2g(乳酸を主成分とする;回収率52%)を得た。得られた混合物をアセトンに溶かし、酸価を測定したところ、乳酸オリゴマーとして重合度は1.20であった。
この混合物500gを、窒素気流下、140℃で、5時間攪拌し、乳酸オリゴマー417gを得た。上記と同様に酸価を測定したところ、重合度は3.41であった。
この乳酸オリゴマー400gに合成ケイ酸アルミニウム[富田製薬(株)]8gを加え、200℃まで昇温し、30分間かけて徐々に2.67kPaまで減圧し、200℃で1時間撹拌した後、徐々に0.133kPaまで減圧し、200℃で9時間撹拌した。室温まで冷却し、固体化した乳白色のポリ乳酸約200gを得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は、83,000であった。
実施例5 実−1の樹脂組成物とポリウレタン樹脂を用いた樹脂成型品の製造
参考例1で得たポリウレタン樹脂と実−1の樹脂組成物を90:10の割合(重量比)で予備混合した後、40mmの押し出しTダイフィルム成型機(シリンダー温度190℃)を用いて、厚さ0.3mmのフィルムを得た。その後、80℃で1日間熟成した。
実施例6 実−3の樹脂組成物とポリウレタン樹脂を用いた樹脂成型品の製造
樹脂組成物を実−3に変更する以外は、実施例5と同様の操作により、厚さ0.3mmのフィルムを得た。
比較例4 ポリウレタン樹脂を用いた樹脂成型品の製造
参考例1で得たポリウレタン樹脂をそのまま用いて、40mmの押し出しTダイフィルム成型機(シリンダー温度190℃)を用い、厚さ0.3mmのフィルムを得た。その後、80℃で1日間熟成した。
比較例5 比−1の樹脂組成物とポリウレタン樹脂を用いた樹脂成型品の製造
参考例1で得たポリウレタン樹脂と比−1の樹脂組成物を90:10の割合(重量比)で予備混合した後、40mmの押し出しTダイフィルム成型機(シリンダー温度190℃)を用いて、厚さ0.3mmのフィルムを得た。その後、80℃で1日間熟成した。
比較例6 比−3の樹脂組成物とポリウレタン樹脂を用いた樹脂成型品の製造
樹脂組成物を比−3に変更する以外は、比較例5と同様の操作により、厚さ0.3mmのフィルムを得た。
試験例1
実施例5、6、比較例4、5および6で得られたフィルムを用いて、ゲル分率(架橋密度の評価指標:ゲル分率が大きいと架橋反応が進んでいることを示す)の測定、耐候性試験を実施した。
ゲル分率の測定は、精秤した約1gのサンプルを、加熱還流条件下のテトラヒドロフラン(THF)中に8時間浸漬した後、非抽出分重量を測定し、これの当初のサンプル重量に対する割合として算出した。この際、非抽出分は、真空乾燥器を使用して80℃、1.33kPa条件で6時間乾燥させた。
耐候性試験は、サンシャインウエザオメーター(63℃、120分間中18分間の降雨条件)で100時間処理した。耐候性の評価は、変色の有無で行った。
試験結果を表1に示す。

ゲル分率の測定結果から、実施例5、6で得られたフィルムは、比較例6で得られたフィルムと比較して、架橋密度が高いといえ、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物は、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との反応速度が大きく、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との相溶性に優れているといえる。また、耐候性試験の結果から、実施例5、6で得られたフィルムは、比較例5で得られたフィルムと比較して、変色がなく、耐候性に優れているといえる。
実施例7 実−1の樹脂組成物とポリ乳酸を用いた樹脂成型品の製造
参考例2で得たポリ乳酸と実−1の樹脂組成物を85:15の割合(重量比)で予備混合した後、型締め力75tの射出成型機(住友ネスタールSG−75)を用いて、射出機温度190℃で、100mm×100mm×厚さ2mmのフィルムを得た。その後、80℃で1日間熟成した。
比較例7 ポリ乳酸を用いた樹脂成型品の製造
参考例2で得たポリ乳酸をそのまま用いて、型締め力75tの射出成型機(住友ネスタールSG−75)を用い、射出機温度190℃で、100mm×100mm×厚さ2mmのフィルムを得た。その後、80℃で1日間熟成した。
比較例8 比−1の樹脂組成物とポリ乳酸を用いた樹脂成型品の製造
樹脂組成物を比−1に変更する以外は、実施例7と同様の操作により、100mm×100mm×厚さ2mmのフィルムを得た。
試験例2
実施例7、比較例7および比較例8で得られたフィルムを用いて、試験例1と同様の操作で、ゲル分率の測定、耐候性試験を実施した。ただし、実施例7および比較例8のゲル分率の測定においては、溶剤をクロロホルムに変更して実施した。
試験結果を表2に示す。

ゲル分率の測定結果から、実施例7で得られたフィルムは、比較例8で得られたフィルムと比較して、架橋密度が高いといえ、本発明のポリイソシアネート含有樹脂組成物は、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との反応速度が大きく、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂との相溶性に優れているといえる。また、耐候性試験の結果から、実施例7で得られたフィルムは、比較例8で得られたフィルムと比較して、変色がなく、耐候性に優れているといえる。
【産業上の利用可能性】
本発明により、保存安定性、取り扱い易さ等に優れるポリイソシアネート含有樹脂組成物、および耐候性等に優れる当該ポリイソシアネート含有樹脂組成物を用いた樹脂成型品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)

[式中、Rは、低級アルキル、または一般式(II)

(式中、Rは、低級アルキレンを表す)を表す]で表されるリジンエステルポリイソシアネートと、イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂とを含むポリイソシアネート含有樹脂組成物。
【請求項2】
リジンエステルポリイソシアネートとイソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂の割合が、重量比で50:50〜2:98である請求の範囲1に記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート含有樹脂組成物中のイソシアネート基濃度が1〜24重量%である請求の範囲1または2に記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
【請求項4】
イソシアネート基と実質的に反応しない熱可塑性樹脂が、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂の中から選ばれる1種以上の樹脂である請求の範囲1〜3のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
【請求項5】
がメチル、エチル、または2−イソシアナートエチルである請求の範囲1〜4のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物。
【請求項6】
請求の範囲1〜5のいずれかに記載のポリイソシアネート含有樹脂組成物と、イソシアネート基と反応する活性水素含有基を有する熱可塑性樹脂とを反応させて得られる樹脂成型品。

【国際公開番号】WO2005/003207
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511446(P2005−511446)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010065
【国際出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000162607)協和発酵ケミカル株式会社 (60)
【Fターム(参考)】