説明

ポリイミド樹脂用組成物

【課題】透明性が高く、黄変が抑制され、耐熱性に優れ、かつ、薄膜とした際の機械的強度及び接着性にも優れるポリイミド樹脂用組成物、該組成物を反応させて得られるポリイミド樹脂組成物、該樹脂組成物のシート状成形物であるポリイミドフィルム、該フィルムからなる接着剤、感光性基材、ならびに前記樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】カルボン酸化合物の無水物、ジアミン化合物、及び式(I):


(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を含有してなる、ポリイミド樹脂用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド樹脂用組成物に関する。さらに詳しくは、透明性が高く、黄変が抑制され、耐熱性に優れ、かつ、薄膜とした際の機械的強度及び接着性にも優れるポリイミド樹脂用組成物、該組成物を反応させて得られるポリイミド樹脂組成物、該樹脂組成物のシート状成形物であるポリイミドフィルム、該フィルムからなる接着剤、感光性基材、ならびに前記樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性、耐光性、機械的強度に優れるポリマーである。その合成方法としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン誘導体を縮重合してポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を生成し、得られたポリアミド酸を加熱して、又は触媒を用いてイミド化する方法が挙げられる。
【0003】
しかしながら、このようにして得られるポリイミドは、直鎖(直線)状のポリマーであり、ポリマー中の3次元的なネットワークが乏しく、耐アルカリ性や薄膜とした際のフィルム強度に問題がある。また、直線状のポリマーは、ポリマー間の相互作用も弱いため、ガラスや金属等の基材に対する接着力が弱く、基材に接着させる際には予めプライマーで基材表面を処理する必要がある。
【0004】
これに対して、例えば、特許文献1では、3次元架橋可能なトリアミン誘導体を用いて分子内に多分岐構造を形成させた、多くの空隙を有するポリイミドが開示されている。また、特定の表面処理剤で処理されたシリカ等の金属酸化物微粒子を加えて、樹脂をコンポジット化する方法も報告されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−131706号公報
【特許文献2】特開平7−304886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トリアミン誘導体を用いてポリイミドを調製すると、その使用量によっては、ポリアミド酸の生成時に架橋が多くなり過ぎて、得られる樹脂がゲル化してイミド化が困難になるという問題がある。
【0007】
また、従来の表面処理剤によって処理された金属酸化物微粒子は、ポリアミド酸には良好に分散するが、極性の低いポリイミドへの分散性が未だ十分ではなく、ポリアミド酸からポリイミドへの変換中に凝集が生じやすい。
【0008】
またさらに、ポリアミド酸を加熱してイミド化する場合には、得られる樹脂が黄変しやすい。
【0009】
本発明の課題は、透明性が高く、黄変が抑制され、耐熱性に優れ、かつ、薄膜とした際の機械的強度及び接着性にも優れるポリイミド樹脂用組成物、該組成物を反応させて得られるポリイミド樹脂組成物、該樹脂組成物のシート状成形物であるポリイミドフィルム、該フィルムからなる接着剤、感光性基材、ならびに前記樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
〔1〕 カルボン酸化合物の無水物、ジアミン化合物、及び式(I):
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を含有してなる、ポリイミド樹脂用組成物、
〔2〕 カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを重合反応させた重合物に、式(I):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を100℃以上で反応させて得られる、ポリイミド樹脂組成物、
〔3〕 前記〔2〕記載のポリイミド樹脂組成物からなる、ポリイミドフィルム、
〔4〕 前記〔3〕記載のポリイミドフィルムからなる接着剤、
〔5〕 前記〔3〕記載のポリイミドフィルムからなる感光性基材、ならびに
〔6〕 式(I):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子の存在下に、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを23〜80℃で重合反応させる工程、及び該工程で得られた反応物を成形後、100℃以上で反応させる工程を含む、ポリイミド樹脂組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリイミド樹脂用組成物は、透明性が高く、黄変が抑制され、耐熱性に優れ、かつ、薄膜とした際の機械的強度及び接着性にも優れるポリイミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリイミド樹脂用組成物は、カルボン酸化合物の無水物、ジアミン化合物、及び金属酸化物微粒子を含有するものであって、該金属酸化物微粒子が式(I):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理されたものであることに大きな特徴を有する。
【0021】
ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤に可溶である。一方、ポリイミドはポリアミド酸が脱水縮合(イミド化)したものであり、前記溶剤に不溶である。このように両者の極性は大きく異なるため、金属酸化物微粒子は、ポリアミド酸に良好に分散しても、ポリイミドが形成されるとポリイミドには分散せず、凝集を起こすことになる。そこで、本発明では、上記式(I)で表わされる化合物を含有する表面処理剤で処理して得られた金属酸化物微粒子を樹脂に結合させることによって、該微粒子の凝集を抑制することが可能となった。即ち、式(I)で表わされる化合物は、金属酸化物微粒子の表面処理によって、−SiR基が金属酸化物微粒子の表面に結合して存在することになる。R基はエポキシ構造含有置換基であるが、エポキシ構造が金属酸化物微粒子表面との反応時やイミド化時の加熱によって開環してヒドロキシ基を生じる。かかるヒドロキシ基はポリアミド酸のカルボキシ基と脱水反応することによって、金属酸化物微粒子をSiR基を介して樹脂に結合させることが出来る。このようにして結合した金属酸化物微粒子は、樹脂中で凝集することなく良好に分散するため、高い透明性を維持して、光透過性を向上することができる。また、金属酸化物微粒子と樹脂が結合することにより黄変を抑制することができる。さらに、イミド化による樹脂結合が減少するものの、3次元的なネットワークが形成されて樹脂間の相互作用が強くなり、かつ、金属酸化物微粒子によって樹脂強度が付与されるため、薄膜を調製しても、十分な機械的強度を有し、かつ、ガラスや金属等の基材に対する接着性が良好となる。
【0022】
式(I)中のRはエポキシ構造含有置換基を示す。エポキシ構造含有置換基は、エポキシ構造を置換基中に少なくとも1個含有する有機基であれば特に限定はない。エポキシ構造は該置換基のいずれの位置に存在してもよいが、ポリアミド酸との反応性の観点から、置換基の末端部分、即ち、Rが結合するケイ素原子から最遠位に位置することが好ましい。また、該置換基は、好ましくは1〜6の炭素数を有するものが望ましい。
【0023】
かかる置換基の具体例としては、エポキシエチル基、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシプロピル基等が挙げられ、なかでも、エポキシシクロヘキシル基、グリシドキシプロピル基が好ましい。
【0024】
式(I)中のR、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのなかでも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、R、R及びRがいずれも、メチル基、エチル基、又はプロピル基であることがより好ましい。
【0025】
かかる式(I)で表される3官能性アルコキシシランとしては、2-〔(3,4)-エポキシシクロヘキシル〕エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
式(I)で表される3官能性アルコキシシランは、公知の方法に従って合成することができる。また、市販品としては、2-〔(3,4)-エポキシシクロヘキシル〕エチルトリメトキシシランとして「KBM-303」(信越シリコーン社製)、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランとして「KBM-403」(信越シリコーン社製)が好適に使用される。
【0027】
表面修飾剤中の式(I)で表される3官能性アルコキシシランの含有量は、樹脂中への架橋部位の導入量の観点から、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、50〜100重量%がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明においては、金属酸化物微粒子の分散性の観点から、式(I)で表される3官能性アルコキシシラン以外の他の表面修飾剤を使用することができる。他の表面修飾剤としては、メチル(トリメトキシ)シラン、エチル(トリメトキシ)シラン、ヘキシル(トリメトキシ)シラン、デシル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリメトキシ)シラン、2-〔(3,4)-エポキシシクロヘキシル〕エチル(トリメトキシ)シラン、3-グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピル(トリメトキシ)シラン、3-アクリロキシプロピル(トリメトキシ)シラン等が挙げられる。
【0029】
本発明において表面処理される金属酸化物微粒子としては、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、及びアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカがより好ましい。なお、表面処理される金属酸化物微粒子の平均粒子径は、透明性の観点から、1〜100nmが好ましい。本明細書において、金属酸化物微粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法に従って、測定することができる。
【0030】
表面処理方法としては、特に限定はなく公知の方法が挙げられる。例えば、金属酸化物微粒子と表面修飾剤を溶媒中、10〜100℃で0.1〜72時間攪拌する方法(湿式方法)が例示される。
【0031】
表面修飾剤の使用量は、表面処理される金属酸化物微粒子100重量部に対して、30〜200重量部が好ましく、50〜150重量部がより好ましい。
【0032】
かくして、特定の表面修飾剤によって表面処理された金属酸化物微粒子が得られる。表面処理後の金属酸化物微粒子の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、該微粒子を反応させて得られるポリイミド樹脂組成物の透明性の観点からは、1〜20nmがより好ましい。なお、上記方法による表面処理によって、金属酸化物微粒子の平均粒子径が変動することは殆どないため、所望の平均粒子径を有する表面処理後の金属酸化物微粒子を得るためには、表面処理に供される金属酸化物微粒子の平均粒子径を、公知の方法に従って、予め調整すればよい。
【0033】
表面処理後の金属酸化物微粒子の含有量は、樹脂組成物中、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
【0034】
本発明におけるカルボン酸化合物の無水物としては、2価以上のカルボン酸化合物の無水物であればよいが、テトラカルボン酸化合物の二無水物が好ましい。テトラカルボン酸化合物の二無水物としては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物の二無水物が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
本発明におけるジアミン化合物としては、m-フェニレンジアミン、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3-アミノフェニル)スルフィド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルフィド、ビス(3-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4-アミノフェニル)スルホキシド、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3-アミノフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、(3-アミノフェニル)(4-アミノフェニル)スルホン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、3,4'-ジアミノベンゾフェノン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3-ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4'-ビス〔3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4'-ビス〔3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-5,5'-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-4,5'-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-5'-フェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4,4'-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-5,5'-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-4,5'-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4'-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'-ジアミノ-5'-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明のポリイミド樹脂用組成物における、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物のモル比(カルボン酸化合物の無水物/ジアミン化合物)は、1.0/1.2〜1.2/1.0が好ましく、1.0/1.1〜1.1/1.0がより好ましく、実質的に等モル(1.0/1.0)がさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物は、前記カルボン酸化合物の無水物、ジアミン化合物及び金属酸化物微粒子に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0038】
本発明のポリイミド樹脂組成物は、本発明のポリイミド樹脂用組成物を重合反応させることにより得られるが、例えば、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを重合反応させた重合物に、表面処理後の金属酸化物微粒子を100℃以上で反応させることにより調製することができる。
【0039】
カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物との重合反応(以下、ポリアミド酸の重合反応ともいう)は、公知の方法に従って行うことができるが、好ましくは、有機溶媒の存在下で、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを混合して行う。なお、カルボン酸化合物の無水物は、反応に供する前に予め、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜150℃の温度で乾燥させてから用いてもよい。
【0040】
有機溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメトキシアセトアミド、N-メチル2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、1,2-ジメトキシエタン、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕エーテル、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ピロリン、ピコリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホンアミド、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール酸、p-クロロフェノール、アニソール、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、溶解性やイミド化時の加熱に際して着色度合いが小さいことから、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0041】
ポリアミド酸の重合反応は、常圧下(101.3kPa)、要すれば加圧下又は減圧下にて、好ましくは100℃未満、より好ましくは23〜80℃の温度で行われる。反応時間は、カルボン酸化合物の無水物及びジアミン化合物の種類や、有機溶媒の種類、反応温度によって一概には決定されないが、通常、1〜24時間が好ましい。
【0042】
なお、反応時には、溶液粘度を調整するために、上記有機溶媒を適宜添加しながら混合してもよい。
【0043】
次に、上記で得られた重合物に、表面処理後の金属酸化物微粒子を加熱して反応させる(以下、熱イミド化反応ともいう)。加熱温度は、100℃以上であり、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜300℃である。加熱時間は、1〜5時間が好ましい。なお、加熱は、一定温度で一定時間行う態様であってもよいが、例えば、100〜150℃で1〜2時間、150〜200℃で1〜2時間、200〜300℃で1〜2時間と多段階に分けて行う態様であってもよい。
【0044】
表面処理後の金属酸化物微粒子は、ポリアミド酸の重合物を調製後に、添加混合して反応させることができる。また、得られる樹脂組成物における金属酸化物微粒子の分散性の観点から、ポリアミド酸の重合開始時に予め表面処理後の金属酸化物微粒子を添加して、ポリアミド酸の重合反応を金属酸化物微粒子の存在下で行い、重合物中に金属酸化物微粒子を均一に分散させてから、熱イミド化反応させてもよい。
【0045】
また、熱イミド化反応の際に、予め、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物との重合物と、即ち、ポリアミド酸の重合物と表面処理後の金属酸化物微粒子との混合物を成形した後、反応に供することができる。具体的には、例えば、カプトンフィルム上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、前記混合物を適当な厚さに塗工後、100℃以上、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜300℃で加熱して、溶媒の除去とイミド化を同時に行って、シート状のポリイミド樹脂組成物を得ることができる。従って、本発明は、本発明のポリイミド樹脂組成物がシート状に成形された、ポリイミドフィルムを提供する。フィルムとしては、厚さが10〜200μm程度のものが例示され、30〜120μmのものが好ましい。なお、加熱時間は、樹脂や溶媒の種類、加熱温度によって異なるため一概には決定できないが、1〜6時間が好ましい。
【0046】
ポリイミドフィルムは、本発明のポリイミド樹脂組成物がシート状に成形されたものであり、透明性が高く、黄変が抑制され、耐熱性に優れ、かつ、薄膜とした際の機械的強度及び接着性にも優れるものである。従って、接着剤、感光性基材として好適に用いられる。
【0047】
接着剤、及び感光性基材は、本発明のポリイミドフィルムを用いるのであれば、公知の方法に従って調製することができる。
【0048】
また、本発明は、発明のポリイミド樹脂組成物の製造方法を提供する。該方法としては、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを重合反応させた重合物に、表面処理後の金属酸化物微粒子を反応させる工程を含むものであれば、特に限定はされないが、得られる樹脂組成物における金属酸化物微粒子の分散性の観点から、具体的には、表面処理後の金属酸化物微粒子の存在下に、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを23〜80℃で重合反応させる工程〔以下、工程(A)ともいう〕、及び該工程で得られた反応物を成形後、100℃以上で反応させる工程〔以下、工程(B)ともいう〕を含む方法が好ましい。
【0049】
工程(A)の具体例としては、例えば、式(I)で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子の存在下に、ジアミン化合物をジメチルアセトアミド等の有機溶剤に20〜40重量%の濃度になるように調製した液に、好ましくは100℃以上、より好ましくは100〜150℃で乾燥させたカルボン酸化合物の無水物を添加して、好ましくは23〜80℃、より好ましくは23〜60℃で、好ましくは1〜24時間反応させる工程等が挙げられる。
【0050】
工程(B)の具体例としては、例えば、工程(A)で得られた重合物をキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により適当な厚さに塗工後、100℃以上、好ましくは100〜300℃、より好ましくは150〜300℃で反応させる工程が例示される。反応時間は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは1〜6時間である。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0052】
〔金属酸化物微粒子の平均粒子径〕
金属酸化物微粒子の平均粒子径とは、金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径のことであり、透過型電子顕微鏡TEMにて、画像に映った粒子100個の直径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。
【0053】
金属酸化物微粒子の表面処理例1
攪拌機、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた容器に、平均粒子径15nmのコロイダルシリカ水分散液(商品名:スノーテックスOS、日産化学社製、固形分濃度20重量%)10.0g、及びメタノール15.0gを加えた。そこに、表面処理剤として、2-〔(3,4)-エポキシシクロヘキシル〕エチルトリメトキシシラン〔商品名:KBM-303、信越シリコーン社製、式(I)におけるRが3,4-エポキシシクロヘキシル基、R、R及びRがメチル基〕2.0g(金属酸化物微粒子100重量部に対して100重量部)をメタノール5.0gに溶解した液を、滴下ロートを用いて、1秒間に1滴滴下するような滴下速度で滴下混合し、60℃で1時間加熱攪拌を行った。その後、室温まで冷却して、ジメチルアセトアミド3gを加え、次いでロータリーエバポレーターを用いてメタノールと水を留去して固形分濃度を20重量%に調整し、表面処理されたシリカのジメチルアセトアミド分散液(シリカ分散液A)を得た。
【0054】
金属酸化物微粒子の表面処理例2
表面処理例1と同様の装置を用い、コロイダルシリカ水分散液(スノーテックスOS)10.0g、及びメタノール15.0gを用いる代わりに、平均粒子径5nmのコロイダルシリカ水分散液(商品名:スノーテックスOSX、日産化学社製、固形分濃度10重量%)20.0g、及びメタノール30.0gを用いた以外は、表面処理例1と同様にして、表面処理されたシリカのジメチルアセトアミド分散液(シリカ分散液B)を得た。
【0055】
金属酸化物微粒子の表面処理例3
表面処理例1と同様の装置を用い、表面処理剤として、KBM-303を2.0g用いる代わりに、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン〔商品名:KBM-403、信越シリコーン社製、式(I)におけるRが3-グリシドキシプロピル基、R、R及びRがエチル基〕2.0g(金属酸化物微粒子100重量部に対して100重量部)を用いた以外は、表面処理例1と同様にして、表面処理されたシリカのジメチルアセトアミド分散液(シリカ分散液C)を得た。
【0056】
金属酸化物微粒子の表面処理例4
表面処理例1と同様の装置を用い、表面処理剤として、KBM-303を2.0g用いる代わりに、KBM-303を1.5g、及びヘキシルトリメトキシシラン〔商品名:KBM-3063、信越シリコーン社製、式(I)におけるRがヘキシル基、R、R及びRがメチル基〕0.5g(総使用量は、金属酸化物微粒子100重量部に対して100重量部)を用いた以外は、表面処理例1と同様にして、表面処理されたシリカのジメチルアセトアミド分散液(シリカ分散液D)を得た。
【0057】
金属酸化物微粒子の表面処理例5
表面処理例1と同様の装置を用い、表面処理剤として、KBM-303を2.0g用いる代わりに、メチルトリメトキシシラン〔商品名:KBM-13、信越シリコーン社製、式(I)におけるRがメチル基、R、R及びRがメチル基〕2.0g(金属酸化物微粒子100重量部に対して100重量部)を用いた以外は、表面処理例1と同様にして、表面処理されたシリカのジメチルアセトアミド分散液(シリカ分散液E)を得た。
【0058】
実施例1
攪拌機、還流冷却器、及び窒素導入管を備えた容器に、ジアミン誘導体として、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン(商品名:m-BAPS、和歌山精化社製)10.81g、及び無水ジメチルアセトアミド20gを加え、ジアミン誘導体を溶解させた。そこに、室温(25℃)で、シリカ分散液A 0.75g、及び予め150℃で3時間乾燥させたオキシジフタル酸無水物(商品名:ODPA、マナック社製)8.97gを加え、また、粘度調整するために、合計量8gの無水ジメチルアセトアミドを適宜加えて、3時間攪拌してポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液を膜厚100μmになるようにカプトンフィルムに塗工し、100℃で1時間、150℃で1時間、250℃で1時間と順次加熱して、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0059】
実施例2
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75g、及び粘度調整用の無水ジメチルアセトアミド8gを用いる代わりに、シリカ分散液A 3.75g、及び粘度調整用の無水ジメチルアセトアミド7.25gを用いた以外は、実施例1と同様にして、10重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0060】
実施例3
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、シリカ分散液B 0.75gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0061】
実施例4
実施例1と同様の装置を用い、オキシジフタル酸無水物(ODPA)8.97gを用いる代わりに、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(商品名:BPDA、JFEケミカル社製)7.25gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0062】
実施例5
実施例1と同様の装置を用い、ジアミン誘導体(m-BAPS)10.81g、及びオキシジフタル酸無水物(ODPA)8.97gを用いる代わりに、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-1,1'-ビフェニル-4,4'-ジアミン(商品名:m-TBFA、和歌山精化社製)6.40g、4,4'-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物(商品名:6FDA、クラリアント社製)8.88gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0063】
実施例6
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、シリカ分散液C 0.75gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0064】
実施例7
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、シリカ分散液D 0.75gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0065】
比較例1
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、市販のオルガノシリカゾル(商品名:DMAC-ST、日産化学社製、ジメチルアセトアミド溶媒、シリカ濃度20重量%) 0.75gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0066】
比較例2
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、市販のオルガノシリカゾル(商品名:DMAC-ST、日産化学社製、ジメチルアセトアミド溶媒、シリカ濃度20重量%) 0.75gを用いた以外は、実施例4と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0067】
比較例3
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いる代わりに、シリカ分散液E 0.75gを用いた以外は、実施例1と同様にして、2.5重量%のシリカ粒子を含んだポリイミドフィルムを得た。
【0068】
参考例1
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いない以外は、実施例1と同様にして、シリカ粒子を含まないポリイミドフィルムを得た。なお、ポリアミド酸溶液はガラス板上に塗工してポリイミドフィルムを得た。
【0069】
参考例2
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いない以外は、実施例4と同様にして、シリカ粒子を含まないポリイミドフィルムを得た。なお、ポリアミド酸溶液はガラス板上に塗工してポリイミドフィルムを得た。
【0070】
参考例3
実施例1と同様の装置を用い、シリカ分散液A 0.75gを用いない以外は、実施例5と同様にして、シリカ粒子を含まないポリイミドフィルムを得た。なお、ポリアミド酸溶液はガラス板上に塗工してポリイミドフィルムを得た。
【0071】
得られたポリイミドフィルムについて、以下の試験例1〜5の方法に従って評価を行った。結果を表1に示す。なお、試験例5では、試験例5に記載の方法で別途調製したポリイミドフィルムについて評価を行った。
【0072】
試験例1〔ヘイズ〕
ヘイズメーター(HR-100、村上色彩社製)を用いて、フィルムのヘイズ値を測定した。ヘイズ値が3.0%以下であれば、透明性に優れることを意味する。
【0073】
試験例2〔光透過率〕
紫外可視スペクトル測定器(U4100、日立社製)を用いて、波長430nmに対するフィルムの光透過率を測定した。なお、表中の括弧内の数値は、実施例1、2、3、6、7及び比較例1、3は、参考例1に対する増減の割合を、実施例4及び比較例2は、参考例2に対する増減の割合を、実施例5は、参考例3に対する増減の割合を示す。増加割合が大きいほど、金属酸化物微粒子を含有しないフィルムに対して熱イミド化の際の着色が少ないことを意味する。
【0074】
試験例3〔耐熱性〕
フィルムを400℃で24時間処理した後の光透過率を試験例2と同様にして測定した。
【0075】
試験例4〔弾性率〕
オートグラフ(AGS-J、島津製作所社製)を用いて、フィルムの弾性率を測定した。弾性率が710N/cm2以上であれば、機械的強度に優れることを意味する。なお、表中の括弧内の数値は、実施例1、2、3、6、7及び比較例1、3は、参考例1に対する増減の割合を、実施例4及び比較例2は、参考例2に対する増減の割合を、実施例5は、参考例3に対する増減の割合を示す。増加割合が大きいほど、金属酸化物微粒子を含有しないフィルムに対して機械的強度に優れることを意味する。
【0076】
試験例5〔接着性〕
ポリアミド酸溶液を、膜厚100μmになるようにカプトンフィルム(長さ10cm、幅2cm)に塗工した後、その上からガラス板を貼り合わせて、100℃で1時間、150℃で1時間、250℃で1時間と順次加熱してイミド化させた、接着フィルムを得た。得られた接着フィルムをオートグラフ(AGS-J、島津製作所社製)を用いて、室温(25℃)下、300mm/分のスピードで90度ピーリングする際の剥離強度(接着力)を測定して、接着性を評価した。剥離強度が200N/cm2以上であれば、接着性に優れることを意味する。
【0077】
【表1】

【0078】
結果、実施例の組成物は、比較例に比べて、ヘイズが低く、光透過率が高く、かつ、機械的強度にも優れるものであることが分かる。また、金属酸化物微粒子を含有しながらも耐熱性に優れ、剥離強度も非常に高いものであった。一方、比較例の組成物は、シリカを含有することにより機械的強度が向上するものの、イミド化によりシリカの分散性が低下し、樹脂組成物が弱く白濁するものであった。
【0079】
感光性基材
実施例1におけるポリアミド酸溶液(表面処理後のシリカ含有)27gに、光塩基発生剤(1,4-ジヒドロキシピリジン誘導体、アルドリッチ社製)0.32g(ポリアミド酸100重量部に対して4重量部)、及びユニオックス(MM-500、日油社製)2.43g(ポリアミド酸100重量部に対して30重量部)を加えたワニスを、スピンコーターを用いて膜厚30μmで塗工して90℃で15分間プレベークを行って、フォトマスク(ライン/スペース=200μm/50μm、ミタニマイクロニクス社製)を載せた後、I線40mJを露光した。露光後、165℃で10分間加熱(PEB)を行って、40℃に加熱した現像液〔10%-TMAH水溶液/エキネン=50/50(重量比)〕に6分間浸漬して未露光部位を完全に除去し、残った部位をホットプレート上で200℃で33分、250℃で33分、300℃で33分、385℃で2時間と段階的に加熱硬化した。得られた硬化物の顕微鏡観察により、パターニングが出来ていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のポリイミド樹脂用組成物は、例えば、半導体用電子材料、コーティング材料、塗料、分離膜等を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸化合物の無水物、ジアミン化合物、及び式(I):
【化1】

(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を含有してなる、ポリイミド樹脂用組成物。
【請求項2】
表面処理後の金属酸化物微粒子の平均粒子径が1〜100nmである、請求項1記載のポリイミド樹脂用組成物。
【請求項3】
カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを重合反応させた重合物に、式(I):
【化2】

(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子を100℃以上で反応させて得られる、ポリイミド樹脂組成物。
【請求項4】
反応に際して、予めカルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物との重合物と、表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子との混合物を成形した後、反応に供する、請求項3記載のポリイミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4記載のポリイミド樹脂組成物からなる、ポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項5記載のポリイミドフィルムからなる接着剤。
【請求項7】
請求項5記載のポリイミドフィルムからなる感光性基材。
【請求項8】
式(I):
【化3】

(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4の、直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される3官能性アルコキシシランを含有する表面処理剤で処理された金属酸化物微粒子の存在下に、カルボン酸化合物の無水物とジアミン化合物とを23〜80℃で重合反応させる工程、及び該工程で得られた反応物を成形後、100℃以上で反応させる工程を含む、ポリイミド樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−280807(P2010−280807A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135013(P2009−135013)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】