説明

ポリウレタンエラストマー

【課題】 機械特性に優れ、かつ耐熱性が良好な熱可塑性ウレタンエラストマーを提供する。
【解決手段】
ポリウレタン樹脂(U)、加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)及び酸発生剤(B)を含有してなる組成物(Q0)を加熱成型して得られるポリウレタンエラストマー(Q)を使用する。前記ポリシロキサン(A)のうち好ましいのは、一般式(1)で表される加水分解性アルコキシ基を有するシラン化合物(a1)の縮合物(A1)である。
1mSi(OR24-m (1)
式中、R1は炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜2の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンエラストマーに関する。さらに詳しくは、ポリウレタン樹脂、特定のポリシロキサン及び酸発生剤を含有してなる組成物を加熱して得られるポリウレタンエラストマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンエラストマーはイソシアネート基を有する化合物とジオール及び鎖延長剤とを反応させて製造され、繰り返し屈曲耐久性、および耐寒性等に優れており、工業的に極めて有用である。
【0003】
しかし、これらポリウレタンエラストマーは、含まれるウレタン結合自体の熱的特性が不十分なこと、及び耐熱性低下の原因となりやすいアミン類などの反応促進剤を通常は使用していることなどの原因により、耐熱性が十分ではなかった。耐熱性向上の対策としては、例えば、熱的特性が改善されたウレタン結合を形成するジイソシアネート成分として1,5−ナフタレンジイソシアネートを用い、さらに耐熱性低下の原因となる反応促進剤を使用せずにウレタンエラストマーを製造することが提案されている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−279255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のウレタンエラストマーでは耐熱性は向上するものの、常温での機械特性が不充分であるという問題があった。
本発明の目的は、常温での機械特性、および耐熱性の双方に優れることを特徴とするウレタンエラストマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリウレタン樹脂(U)[以下において単に(U)と略記することがある]、加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)[以下において単に(A)と略記することがある]及び酸発生剤(B)[以下において単に(B)と略記することがある]を含有してなる組成物(Q0)[以下において単に組成物(Q0)又は(Q0)と略記することがある]を加熱成型して得られるポリウレタンエラストマー(Q)[以下において単に(Q)と略記することがある]である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリウレタンエラストマーは、機械特性および耐熱性に優れるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のポリウレタンエラストマー(Q)は、(U)、(A)及び(B)を含有する組成物(Q0)を加熱成型することによって、得られるものであり、特に(A)及び(B)を含むことを特徴としている。
本発明における組成物(Q0)は、(A)及び(B)を含むことによって、(U)の存在下に、(A)の加水分解性アルコキシ基同士の縮合反応が起こり、同時に(B)が加熱されて酸が発生し、(A)の縮合反応を促進させ、(A)の高分子量化が起こるため、(A)の高分子量化成分と(U)が相互に絡み合った複雑な構造のエラストマーが形成されて、機械特性及び耐熱性のいずれにも優れるという効果を発揮するものと推定される。
【0009】
本発明において組成物(Q0)中の成分として含まれる、加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)における加水分解性アルコキシ基としては、一般式(2)で示される基が挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基およびsec−ブチル基などが挙げられ、好ましいのはメチル基およびエチル基である。
【0012】
一般式(2)で示される加水分解性アルコキシ基は、ポリシロキサンのいずれの部分に存在してもよく、例えば、分子末端にのみ、または分子中の繰り返し単位に存在していてもよい。
(A)は、低分子シラン化合物の縮合、およびポリシロキサンへのアルコキシ基の導入などによって得られる。
【0013】
(A)のうち、低分子シラン化合物の縮合によって得られるものとしては、一般式(1)で表される加水分解性アルコキシ基を有するシラン化合物(a1)の1種以上の縮合物(A1)が挙げられる。
1mSi(OR24-m (1)
式中、R1は炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜2の整数である。
【0014】
1のうち、脂肪族飽和炭化水素基としては、直鎖アルキル基、分岐アルキル基および脂環式飽和炭化水素基が挙げられる。
直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−オクチルおよびn−ドデシル基およびこれらの重水素置換体、分岐アルキル基としてはイソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよび2−エチルヘキシル基など、並びに環式飽和炭化水素基としてはシクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基およびメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基およびアルキルアリール基が挙げられる。
アリール基としてはフェニル、ビフェニル、ナフチル基およびこれらの重水素、フッ素もしくは塩素の各置換体;アラルキル基としてはトリル、キシリル、メシチルおよびこれらの重水素、フッ素もしくは塩化物;並びに、アルキルアリール基としてはメチルフェニルおよびエチルフェニル基などが挙げられる。
1のうち好ましいのは直鎖アルキル基、分岐アルキル基およびアリール基、さらに好ましいのは直鎖アルキル基およびアリール基、特に好ましいのはメチル基、エチル基、フェニル基およびこれらの併用である。
(A1)のうち、特に好ましいのは、その他の成分との相溶性の観点から、一般式(1)におけるR1がフェニル基であるシラン化合物の縮合物、またはR1がフェニル基であるシラン化合物とR1が直鎖アルキル基であるシラン化合物を含む2種以上のシラン化合物の縮合物である。
2としては一般式(2)におけるRと同様のアルキル基が挙げられ、好ましいものも同様である。
【0015】
一般式(1)において、mが0、すなわちアルコキシ基を4個有する4官能シラン化合物としては、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン等が挙げられる。
mが1、すなわちアルコキシ基を3個有する3官能シラン化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランおよびメチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
mが2、すなわちアルコキシ基を2個有する2官能シラン化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシランおよびフェニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
組成物(Q0)の加熱成型後に形成される(A1)の縮合物の3次元構造の均一性の観点から、これらのうち好ましくは、mが1、すなわち3官能シラン化合物である。
上記のシラン化合物(a1)の縮合物(A1)は、例えば、乾燥雰囲気下で、シラン化合物(a1)中に所定量の水および必要により触媒を攪拌しながら約10分〜60分かけて滴下し、その後副生するアルコールの沸点以下の温度(例えば0〜150℃)で1〜12時間かけて熟成することにより得ることができる。
【0016】
反応において添加する水の量をXモル、シラン化合物(a1)中のアルコキシ基のモル数をYとした場合、X/Yが小さすぎると縮合物の収量と分子量が低下する。一方、X/Yが大きすぎる場合は分子量が大きくなりすぎて保存安定性が低下する傾向にある。このことから、0.1<X/Y<5の範囲、好ましくは0.3<X/Y<3の範囲で行うことが好ましい。添加する水は通常イオン交換水または蒸留水を用いる。また、分子量調整の目的で1個の加水分解性アルコキシ基を有するシラン化合物を添加することもできる。1個の加水分解性アルコキシ基を有するシラン化合物としては、例えばトリフェニルモノメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
触媒としては蟻酸、酢酸、蓚酸、乳酸、マロン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、フタル酸、ピロメリット酸、p―トルエンスルフォン酸、メタンスルフォン酸、トリフルオロ酢酸およびトリフルオロメタンスルフォン酸などの1価、2価もしくは3価の有機酸;塩酸、リン酸、硝酸、フッ酸、臭素酸、塩素酸および過塩素酸などの無機酸;アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類水酸化物、第4級アルキルアンモニウムの水酸化物や炭酸塩および1〜3級アミン類などのアルカリ塩;第4級アルキルアンモニウムハロゲン化物;次亜塩素酸ナトリウム;スズ、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウムおよび硼素などのケイ素以外の金属のアルコキシドおよびそれらのキレート錯体;などをあげることができ、この中で有機酸、無機酸、金属アルコキシド、金属アルコキシドのキレート化合物など酸性触媒が好ましく、有機酸が特に好ましい。
触媒の添加量は(a)100重量部に対して、0.0001〜10重量部、好ましくは、0.001〜1重量部である。触媒の添加方法は特に規定されないが好ましくは水溶液として加える。また、好ましい反応温度は20℃〜100℃である。
【0018】
加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)のうち、ポリシロキサンへのアルコキシ基の導入によって得られるものとしては、1分子中に加水分解性アルコキシ基および他の反応性官能基を有するシラン化合物(a2)と、該反応性官能基と反応しうる官能基を有するポリシロキサン(a20)との反応物(A2)が挙げられる。
【0019】
(a2)における他の反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基及びグリシジル基などが挙げられる。
(a2)としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(a20)中の官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基等が挙げられ、例えば、(2)中の他の反応性官能基がグリシジル基の場合は、(a20)中の官能基はカルボキシル基またはアミノ基であることが好ましく、(a2)中の他の反応性官能基がメルカプト基の場合は、(a20)中の官能基はグリシジル基またはカルボキシル基であることが好ましい。
(a20)としては、例えば、カルボキシル基を両末端に有するポリシロキサン、アミノ基を両末端に有するポリシロキサン、およびグリシジル基を両末端に有するポリシロキサンなどが挙げられる。
【0020】
(A2)の製造方法としては、例えば、カルボキシル基を両末端に有するポリシロキサンに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを反応させて得られる。
この場合の反応温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜110℃である。また、反応時間は、特に限定されないが、好ましくは5〜30時間である。また、必要により触媒(例えば、トリフェニルホスフィンなど)を用いることもできる。
【0021】
(A)の数平均分子量(以下Mnと略記することがある)は、得られるウレタンエラストマーの機械特性と耐熱性の観点から、好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは1,000〜10,000である。(A)のMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)例えば HLC−8220(東ソー・テクノシステム(株)製)を使用して、ジメチルフォルムアミドを溶媒に、ポリスチレン樹脂を分子量の校正試薬として測定することができる。
【0022】
本発明における組成物(Q0)に含まれる酸発生剤(B)は、光又は熱で酸を発生する化合物であり、(A)の縮合反応の促進のために添加されるものである。
(B)としては、下記の(i)スルホン化合物、(ii)スルホン酸エステル化合物、(iii)スルホンイミド化合物、(iv)ジスルホニルジアゾメタン(v)ジスルホニルメタンおよび(v)オニウム塩が挙げられる。
(i)スルホン化合物
フェナシルフェニルスルホン、4−トリスフェナシルスルホン−ケトスルホン、β−スルホニルスルホンおよびこれらのα−ジアゾ化合物等
(ii)スルホン酸エステル化合物
ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、ピロガロールメタンスルホン酸トリエステル、α−メチロールベンゾイントシレートおよびα−メチロールベンゾインドデシルスルホネート等
(iii)スルホンイミド化合物
N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−トルエンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロオクタンスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミドおよびN−(ベンゼンスルホニルオキシ)ナフチルイミド等
(iv)ジスルホニルジアゾメタン化合物
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタンおよびビス(1、4−ジオキサスピロ[4,5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタン等
(v)オニウム塩
スルホニウム塩〔ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、アリルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート塩等〕、
ヨードニウム塩(ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等)、ホスホニウム塩(エチルトリフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート等)、ジアゾニウム塩(フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等)、アンモニウム塩(1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート等)、およびフェロセン〔(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート等〕等
【0023】
(B)のうち、得られるポリウレタンエラストマーの伸びの観点から、好ましいのはスルホンイミド化合物およびジスルホニルジアゾメタン化合物であり、さらに好ましくは、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタンである。
【0024】
本発明における組成物(Q0)に含まれるポリウレタン樹脂(U)は、通常のポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。
(U)のうち、耐熱性の観点から、好ましいのはMnが1,000〜5,000のジオール(u1)及びポリイソシアネート(u2)を必須原料としてなるポリウレタン樹脂である。
(u1)としては、ポリエステルジオール及びポリエーテルジオール等が挙げられる。
ポリエステルジオールとしては、低分子ジオールとジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル、酸ハライド等]との縮合重合体;ラクトンモノマーの開環重合体;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】
ポリエーテルジオールとしては、たとえば低分子ジオール、2価のフェノール類など2個の水酸基を含有する化合物に、炭素数2〜5のアルキレンオキサイド(以下AOと略記)をブロックまたはランダム付加した化合物があげられる。
【0026】
(u1)のうちで好ましいものはポリエーテルジオールであり、さらに好ましいものは低分子ジオールにAOが付加したものであり、特に好ましいものは1、4−ブチレンオキサイドが付加したポリテトラメチレングリコール(PTMG)である。
【0027】
(u1)のMnは、得られるポリウレタンエラストマーの伸びや強度の観点から、通常1,000〜5,000、好ましくは1,500〜4,000、さらに好ましくは2,000〜3,500である。(u1)のMnは水酸基価から計算されたものである。
【0028】
(U)の必須原料のうちのポリイソシアネート(u2)としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)];脂環族ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(以下、水添TDIと略記)];芳香族ジイソシアネート[2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略記)、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略記)、1,5−ナフタレンジイソシアネート];芳香脂肪族ジイソシアネート[m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略記)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)];及びこれらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);が挙げられる。
(u2)のうち好ましいものは、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及び芳香脂肪族ジイソシアネートであり、さらに好ましいものはIPDI、水添MDI、MDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、XDIおよびTMXDI、特に好ましいものはMDIである。
【0029】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)は、上記の(u1)と(u2)を反応させてイソシアネート基を末端に有するポリウレタンプレポリマーを、好ましくは鎖伸長剤(u3)で鎖伸長反応させて得ることが出来る。
【0030】
鎖伸長剤(u3)としては、通常の鎖伸長剤、例えば特開2006−160918号公報に記載の化合物などが使用できる。
【0031】
上記のポリウレタンプレポリマーは、Mnが1,000〜5,000のジオール(u1)の水酸基(OH)当量に対するジイソシアネート(u2)のイソシアネート当量の比(以下NCO/OH比と略記)は1.2〜5、好ましくは1.5〜3となるように混合し、必要により触媒を添加した後に加熱し、反応を完結することにより得られる。
NCO/OH比が1.2以上では、ポリウレタンプレポリマーの粘度が低くなり、組成物(Q0)の成型性がさらに良好である。NCO/OH比が5以下では得られたポリウレタンエラストマーは低温での弾性がさらに良好である。
【0032】
ポリウレタンプレポリマー製造時の温度は好ましくは100〜200℃である。温度が100℃以上では(u2)が溶融し、製造時間が短くなる。温度が200℃以下ではウレタンは熱分解せず、安定である。
【0033】
鎖伸長剤(u3)の配合量は、イソシアネート当量に対する鎖伸長剤(u3)の活性水素当量(但しカルボン酸とスルホン酸の活性水素は除外する)の比(以下H/NCO比と略記)は好ましくは0.7〜1、さらに好ましくは0.8〜1で行われる。H/NCO比が0.7以上では機械的性質がさらに良好となり、1以下では得られたエラストマーは低温で弾性が低下しにくい。
鎖伸長反応の温度は、通常40〜120℃、好ましくは50〜90℃である。
【0034】
本発明におけるポリウレタンプレポリマー及びポリウレタン樹脂(U)の製造条件は、上記以外の条件であってもよく、例えば、特開2004−307833号公報及び特開2006−3481175号公報に記載の製造条件などであってもよい。
【0035】
本発明におけるポリウレタン樹脂(U)のMnは、好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000である。(U)のMnは前記のGPCにより測定されたものである。
【0036】
本発明における組成物(Q0)は、上記の(U)、(A)及び(B)を含有してなり、(U)+(A)+(B)の合計重量に基づくそれぞれの成分の含有量は以下の通りである。
【0037】
(U)の含有量は、60〜95重量%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)が好ましく、さらに好ましくは70〜93%、特に好ましくは75〜90%である。(U)が60%以上であれば強度がさらに良好に発揮でき、95%以下であると耐熱性が良好に発揮できる。
【0038】
(A)の含有量は、4.9〜30%が好ましく、さらに好ましくは6〜20%、特に好ましくは8〜15%である。5%以上であれば伸びがさらに良好に発揮でき、30%以下であれば強度がさらに良好に発揮できる。
【0039】
(B)の含有量は、0.01〜10%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜7%、特に好ましくは0.05〜5%である。0.01%以上であれば機械特性がさらに良好に発揮でき、10%以下であれば耐熱性がさらに良好に発揮できる。
【0040】
本発明における組成物(Q0)は、さらに可塑剤、顔料及びその他の添加剤を添加してもよい。可塑剤としては通常の可塑剤、例えばフタル酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジアルキルエステル、塩素化パラフィン等が挙げられる。顔料としては通常の顔料、例えば二酸化チタン、アゾ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。また、その他の添加剤としては通常の酸化防止剤等が挙げられる。可塑剤、顔料及びその他の添加剤は、組成物(Q0)の製造時に配合してもよく、ポリウレタン樹脂(U)の製造時に配合してもよい。
可塑剤の含有量は、組成物(Q0)の重量に基づいて好ましくは3%以下である。
顔料の含有量は、組成物(Q0)の重量に基づいて好ましくは3%以下である。
その他の添加剤の含有量は、組成物(Q0)の重量に基づいて好ましくは1%以下である。
【0041】
本発明における組成物(Q0)は、(U)、(A)及び(B)、並びに必要により可塑剤等を混合することによって得られる。混合の順序は特に限定されないが、(U)に、配合量が比較的少ない(A)及び(B)を混合する方法、特に(B)を最後に混合する方法が好ましい。
混合の装置としてはプラネタリーミキサー、ニーダーなどが挙げられ、混合中の温度は通常20〜150℃である。
組成物(Q0)の100℃での粘度は、通常1,000〜1,000,000mPa・s、好ましくは3,000〜100,000mPa・sである。1,000mPa・s以上であれば均一に混合し易く、1,000,000mPa・s以下であれば注型し易い。
なお、(Q0)の粘度はキャピログラフ1B型(東洋精機製作所製)で測定することができる。
【0042】
本発明のポリウレタンウレタンエラストマー(Q)は、上記の組成物(Q0)を加熱成型することによって得られるが、通常は、組成物(Q0)を予熱したモールドに注型し、モールドを外部から一定の時間かけて加熱することにより得られる。
モールドとしては、後述の加熱温度での耐熱性があり、目的とする形状が得られるモールドであれば特に限定されず、鋼材にメッキを施した素材のモールド等が用いられる。
モールドの予熱温度は通常60〜120℃である。
注型後の加熱温度は好ましくは80〜200℃であり、さらに好ましくは90〜180℃である。80℃以上であれば(A)の縮合反応が起こりやすく、かつ、(B)からの酸の発生が起こりやすい。また200℃以下であれば、(U)の分解が起こりにくい。
加熱時間は、加熱温度に依存するが、好ましくは0.3〜5時間、さらに好ましくは0.5〜3時間である。0.3時間以上であれば縮合反応が起こりやすく、5時間以下であれば熱劣化が起こりにくい。
加熱装置としては、例えば順風乾燥機などが挙げられる。
加熱後には室温まで冷却して脱型することにより、本発明のポリウレタンエラストマー(Q)が得られる。
【0043】
なお、本発明のポリウレタンエラストマー(Q)の製造方法としては、予めポリウレタン樹脂(U)を製造せずに、ポリウレタン樹脂(U)の原料成分である(u1)、(u2)及び(u3)、(A)並びに(B)を一括して混合した組成物を、モールドに注型し、加熱して反応させる方法も含まれる。
【0044】
本発明のポリウレタンウレタンエラストマー(Q)のMn(前述と同様のGPC測定による)は、通常、10,000〜200,000、好ましくは20,000〜100,000である。Mnが10,000以上であれば機械特性がさらに良好であり、200,000以下では溶融粘度が低くなり成形性がさらに良好である。
【0045】
本発明のポリウレタンエラストマー(Q)は、熱可塑性であり、例えばメルトフローレイト(g/10分、測定条件:230℃、過重2.16kg)は好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.5〜5である。
本発明のポリウレタンエラストマー(Q)の硬度(JIS K6301に準じてショアA硬さの測定による)は好ましくは30〜100であり、さらに好ましくは50〜80である。
本発明のポリウレタンエラストマーの(Q)軟化温度(℃、JIS K7206に準じる測定による)は好ましくは145〜220であり、さらに好ましくは165〜195である。
【0046】
実施例
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0047】
[加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)の製造]
<製造例1>
加熱冷却・攪拌装置および窒素導入管を備えたガラス製コルベンに、フェニルトリメトキシシラン240部(1.20モル部)とイオン交換水18g(1.0モル部)と、シュウ酸0.1部(0.001モル部)を仕込み、60℃、6時間の条件で加熱撹拌し、さらにエバポレーターを用いて、加水分解により副生したメタノールを50mmHgの減圧下で2時間かけて除去し、ポリシロキサン(A−1)(Mn:3,200)を得た。
【0048】
<製造例2>
製造例1と同様のコルベンに、ジフェニルジメトキシシラン170部(0.74モル部)、フェニルトリメトキシシラン80部(0.40モル部)とイオン交換水40g(2.2モル部)と、シュウ酸0.1部(0.001モル部)を仕込み、60℃、6時間の条件で加熱撹拌し、さらにエバポレーターを用いて、加水分解により副生したメタノールを50mmHgの減圧下で2時間かけて除去し、ポリシロキサン(A−2)(Mn:5,000)を得た。
【0049】
<製造例3>
製造例1と同様のコルベンに、両末端カルボキシ基変性ポリシロキサン(「X−22−162C」:信越化学工業(株)製)50部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン8部、トリフェニルホスフィン1部、およびp−メトキシフェノール0.2部を仕込み、110℃にて10時間反応させ、ポリシロキサン(A−3)(Mn:1,500)を得た。
【0050】
<比較製造例1>
製造例1と同様のコルベンに、トリメチルモノメトキシシラン119部(1.14モル部)とイオン交換水45g(2.5モル部)と、シュウ酸0.1部(0.001モル部)を仕込み、60℃、6時間の条件で加熱撹拌し、さらにエバポレーターを用いて、加水分解により副生したメタノールを50mmHgの減圧下で2時間かけて除去し、比較のポリシロキサン(A−4)(Mn:350)を得た。
【0051】
実施例1
製造例1と同様のコルベンに、Mnが2,000のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(1,000g)、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1.1モル(275g)、触媒としてトリエチルアミン0.1gを仕込み、反応温度100℃、6時間反応させ両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(I’−1)1,275gを得た。このポリウレタンプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−1)1,310gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)190gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−1)1, 510gを調製した。
組成物(Q0−1)の全量を100℃に予熱した20cm×20cm×10cmのモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−1)を得た。(Q−1)のMnは36,000であった。
【0052】
実施例2
製造例1と同様のコルベンに、Mnが3,000のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(1,500g)、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1モル(250g)、触媒としてトリエチルアミン1gを仕込み、反応温度100℃、6時間反応させ両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(I’−2)1,750gを得た。
このポリウレタンプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−2)1,785gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)290gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−2)2,085gを調製した。
組成物(Q0−2)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−2)を得た。(Q−2)のMnは45,000であった。
【0053】
実施例3
実施例1と同様にして得られたポリウレタンプレポリマー(I’−1)1,310gに鎖伸長剤として1,6−ヘキサンジオール(分子量:118)0.4モル(47.2g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−3)1,357gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)196gおよび酸発生剤としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−3)1,563gを調製した。
組成物(Q0−3)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−3)を得た。(Q−3)のMnは47,000であった。
【0054】
実施例4
製造例1と同様のコルベンに、数平均分子量が4,000のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(2,000g)、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1モル(250g)、触媒としてトリエチルアミン1gを4つ口フラスコに仕込み、反応温度100℃、6時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(I’−4)2,250gを得た。
このプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−4)2,285gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)330gおよびN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えて、プラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−4)2,590gを調製した。
組成物(Q0−4)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−4)を得た。(Q−4)のMnは64,000であった。
【0055】
実施例5
製造例1と同様のコルベンに、数平均分子量が6,000のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(3,000g)、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1モル(250g)、触媒としてトリエチルアミン1gを4つ口フラスコに仕込み、反応温度100℃、6時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(I’−5)3,250gを得た。
このプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−5)3,285gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)470gおよびN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えて、プラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−5)3,765gを調製した。
組成物(Q0−5)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−5)を得た。(Q−5)のMnは72,000であった。
【0056】
実施例6
製造例1と同様のコルベンに、数平均分子量が500のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(250g)、ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1モル(250g)、触媒としてトリエチルアミン1gを4つ口フラスコに仕込み、反応温度100℃、6時間反応させて両末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(I’−6)500gを得た。
このプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)の混合物を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−6)535gを得た。
これに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)78gおよびN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えて、プラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−6)623gを調製した。
組成物(Q0−6)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−6)を得た。(Q−6)のMnは24,000であった。
【0057】
実施例7
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1,310gに製造例2で得られたポリシロキサン(A−2)190gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−7)1,510gを調製した。
組成物(Q0−7)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−7)を得た。(Q−7)のMnは41,000であった。
【0058】
実施例8
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1,310gに製造例3で得られたポリシロキサン(A−3)190gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−8)1,510gを調製した。
組成物(Q0−8)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−8)を得た。(Q−8)のMnは42,000であった。
【0059】
実施例9
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1,310gに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)114gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−9)1,434gを調製した。
組成物(Q0−9)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−9)を得た。(Q−9)のMnは45,000であった。
【0060】
実施例10
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1, 310gに製造例1で得られたポリシロキサン(A−1)328gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(Q0−10)1,648gを調製した。
組成物(Q0−10)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(Q−10)を得た。(Q−10)のMnは31,000であった。
【0061】
比較例1
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1, 310gに比較製造例1で得られたポリシロキサン(A−4)190gおよび酸発生剤(B)としてのN−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド10gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(X0−1)1,510gを調製した。
組成物(X0−1)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(X−1)を得た。(X−1)のMnは47,000であった。
【0062】
比較例2
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1,310gに比較製造例1で得られたポリシロキサン(A−4)190gを加えてプラネタリーミキサーを使用して100℃で20分間混練し、組成物(X0−2)1,500gを調製した。
組成物(X0−2)の全量を100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(X−2)を得た。(X−2)のMnは31,000であった。
【0063】
比較例3
実施例1で得られたポリウレタン樹脂(U−1)1,310gを100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(X−3)を得た。(X−3)のMnは29,000であった。
【0064】
比較例4
製造例1と同様のコルベンに、Mnが2,000のポリテトラメチレングリコール(三洋化成工業(株)製)0.5モル(1,000g)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製)1.1モル(231g)、触媒としてトリエチルアミン0.1gを仕込み、反応温度100℃、6時間反応させ両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー(I’−1)1,231gを得た。 このポリウレタンプレポリマーに鎖伸長剤として1,4−ブタンジオール0.4モル(36g)を添加し100℃で5分間反応させてポリウレタン樹脂(U−1)1,267gを得た。
これを全量100℃に予熱した実施例1と同様のモールド中に注型した。このまま100℃の循風乾燥機にて20時間反応させることで目的のポリウレタンエラストマー(X−4)を得た。(X−4)のMnは28,000であった。
【0065】
実施例、比較例の(U)+(A)+(B)の合計重量に基づく(U)、(A)及び(B)の含有量を以下の表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
[評価試験]
実施例1〜10、比較例1〜4で得られたウレタンエラストマー(Q−1)〜(Q−10)、(X−1)〜(X−4)について機械物性、及び耐熱特性について評価した。評価方法は以下の通りである。結果を以下の表2及び表3に示す。
【0068】
<ショアA硬さ>
JIS K6301に準じてショアA硬さの測定を行った。A型スプリング式硬さ試験器を用いて測定し、3カ所の算術平均を測定値とした。
【0069】
<メルトフローレイト(MFR)>
JIS K7210に準じてMFR[g/10分]の測定を行った。230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0070】
<破断強度>
JIS K6301に準じて破断強度[kgf/cm2]の測定を行った。試験片は1号片を用い、25℃にて測定を行った。
【0071】
<破断伸び>
JIS K6301に準じて破断伸び[%]の測定を行った。試験片は1号片を用い、25℃にて測定を行った。
【0072】
<屈曲試験>
JIS K6301に準じて屈曲試験[mm]の測定を行った。測定を3回行いその亀裂長さの平均を測定値とした。耐屈曲疲労性を評価できる。
【0073】
<低温ねじり試験>
JIS K6301に準じて低温ねじり試験[℃]の測定を行った。2.81mN・m/radのねじり定数を持つワイヤを用いて評価した。耐寒性を評価できる。
【0074】
<熱変形温度>
JIS K7206に準じて軟化温度[℃]の測定を行った。5mmの厚さの試験片を用い、120℃/hの昇温速度で制御し、評価した。耐熱性を評価できる。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
表1及び表2に示したように、実施例1〜10は比較例1〜4に比べ、熱変形温度、破断強度、破断伸びが飛躍的に高くなり、耐熱特性、機械特性が向上することが明かである。
以上のことより、本発明のポリウレタンエラストマーは、従来のポリウレタンエラストマーと比較して、耐熱性、及び機械特性に特に優れ、同時に耐寒性、耐屈曲疲労性も保持可能であるという特長を有する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のポリウレタンエラストマーは、耐屈曲性と耐寒性を有したまま耐熱特性及び機械特性が改善されるので、例えば、フィルム又はシートなどの形状で使用され、特に、自動車のホールジョイント・ダストカバー、電線・ケーブル材等の被覆材として有用に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(U)、加水分解性アルコキシ基を有するポリシロキサン(A)及び酸発生剤(B)を含有してなる組成物(Q0)を加熱成型して得られるポリウレタンエラストマー(Q)。
【請求項2】
前記ポリシロキサン(A)が、一般式(1)で表される加水分解性アルコキシ基を有するシラン化合物(a1)の縮合物(A1)である請求項1記載のポリウレタンエラストマー。
1mSi(OR24-m (1)
[式中、R1は炭素数1〜12の脂肪族飽和炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、mは0〜2の整数である。]
【請求項3】
前記(A1)が、一般式(1)におけるR1がフェニル基であるシラン化合物を含む1種以上のシラン化合物の縮合物、またはR1がフェニル基であるシラン化合物およびR1が直鎖アルキル基であるシラン化合物を含む2種以上のシラン化合物の縮合物である請求項2記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項4】
前記(A)の数平均分子量が500〜100,000である請求項1〜3いずれか記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂(U)が、数平均分子量1,000〜5,000のジオール及びジイソシアネートを必須原料として得られるポリウレタン樹脂である請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項6】
前記組成物における前記ポリシロキサン(A)の含有量が、(U)+(A)+(B)の合計重量に基づいて5〜30重量%である請求項1〜5いずれか記載のポリウレタンエラストマー。
【請求項7】
組成物(Q0)の加熱成型が、モールド中で40〜120℃で0.3〜5時間加熱される注型加熱成型である請求項1〜6のいずれか記載のポリウレタンエラストマー。

【公開番号】特開2009−35604(P2009−35604A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199727(P2007−199727)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】