説明

ポリウレタンフォーム及びポリウレタンフォームの製造方法

【課題】高通気性と高弾性とを兼ね備えたポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【解決手段】(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール、(C)水、(D)整泡剤、(E)触媒を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させ、除膜処理を施したポリウレタンフォームにおいて、上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量3000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、上記(E)の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部として上記ポリウレタン発泡原料を調製したものであり、かつセル数が5〜25個/インチであるポリウレタンフォームを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高通気性かつ高弾性で、良好な洗濯洗浄性及び体圧分散性が要求される介護用マットレス素材として好適に使用されるポリウレタンフォーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリウレタンフォームは良好な高反発性を有することからマットレス、枕、ベッド等の素材として用いられている。
【0003】
また、高齢化社会の到来に伴って、ベッドやマットレスの素材としてのポリウレタンフォームに対しても介護に適した高い特性が要求されるようになってきている。特に、高弾性による良好な体圧分散性と高通気性による良好な洗浄性は強く求められるところである。即ち、高弾性による良好な体圧分散性は寝たきり患者の褥瘡予防に効果的に寄与し、また高通気性による良好な洗浄性は洗濯/洗浄による殺菌によって例えばMRSA院内感染の予防に効果的に寄与する。
【0004】
ここで、ポリウレタンフォームの通気性を高めるにはセルを粗大化すればよく、そのような粗大セル化を実現する方策として、ポリオール、ポリイソシアネート、整泡剤、発泡剤等を含有するポリウレタン発泡原液をミキシングチャンバー内でエアーを注入しながら混合し、これを乳化状態で吐出させ発泡硬化させてポリウレタンフォームを作製する場合に、上記ミキシングチャンバー内圧とエアー注入量を調整してセル数6〜15個/インチの粗大セルを有するポリウレタンフォームを得る方法が知られている(特許文献1:特開平11−116717号公報)。
【0005】
一方、高弾性のポリウレタンフォームを得る方策としては、ポリウレタン発泡原液中のポリオール成分として、数平均分子量6000以上のポリオールを用いることで、高弾性のポリウレタンフォームを得る方法が知られている(特許文献2:特開2006−316210号公報)。
【0006】
しかしながら、前者の方法でセルを粗大化したポリウレタンフォームは、高通気性を有するものの反発弾性率が不十分で良好な体圧分散性を得るにはその弾性が不十分である。一方、後者の方法で得られるポリウレタンフォームは、高い弾性率を得ることができ、優れた体圧分散性を有するマットレスとすることができるが、独立気泡となりやすく連通気泡を得にくいため、高い通気性を得ることができず、上記の洗濯・洗浄性を有するマットレスとすることは困難である。更に、後者の処方でポリウレタン発泡原液を調製し、これを前者の方法で発泡成形した場合、即ち数平均分子量6000以上のポリオールを配合したポリウレタン発泡原液を用い、これを加圧調整したミキシングチャンバー内で混合して発泡成形を行った場合には、発泡成形時に独立気泡によるシュリンクが生じたり、整泡力の欠如によりフォーム形状が保てずフォームが崩壊するなどの不都合が生じて、良好な発泡性を得ることができず、高弾性で高通気性のポリウレタンフォームを得ることはできない。なお、ここでいう「フォームの崩壊」とは次の現象をいう。つまり、ウレタン発泡時には発泡したセル核を安定化させるために整泡剤やスズ触媒を使用するのが通常であるが、その際に粗大セルを作るためには整泡力の低い整泡剤を使用する必要があり、そのためフォームが不安定となりやすく、場合によってはセル形状を保つことができずに潰れてしまう現象を「フォームの崩壊」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−116717号公報
【特許文献2】特開2006−316210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高通気性と高弾性とを兼ね備え、良好な洗濯洗浄性及び体圧分散性が要求される介護用マットレス素材として好適に使用されるポリウレタンフォーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート、(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール、(C)水、(D)整泡剤、(E)触媒を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させ、除膜処理を施してポリウレタンフォームを得る場合に、上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量5000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、かつ上記(E)の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部とすることにより、高弾性率のポリウレタンフォームを得ることができ、かつこのポリウレタン発泡原液を所定の加圧状態に調整したミキシングチャンバー内で攪拌混合し乳化状態で吐出させて発泡硬化させることにより、発泡性に不都合を生じることなく、得られるポリウレタンフォームのセルを粗大化することができ、セル数5〜25個/インチの粗大セルを有する通気性に優れたポリウレタンフォームを得ることができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0010】
従って、本発明は、下記請求項1のポリウレタンフォームを提供する。
請求項1:
下記(A)〜(E)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート
(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール
(C)水
(D)整泡剤
(E)触媒
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させ、除膜処理を施したポリウレタンフォームにおいて、
上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量3000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、
上記(E)成分の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部として上記ポリウレタン発泡原料を調製したものであり、かつセル数が5〜25個/インチであることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【0011】
更に本発明者は検討を重ね、上記(E)成分として用いるより具体的な触媒や上記(A)成分として用いるより具体的なポリイソシアネートを見出し、好適な実施態様として下記請求項2〜5のポリウレタンフォームを提供する。
請求項2:
上記(E)成分として用いるアミン系触媒として、樹脂化触媒と泡化触媒とを併用すると共に、これらの配合量がいずれも上記(B)成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部である請求項1記載のポリウレタンフォーム。
請求項3:
上記樹脂化触媒としてトリエチレンジアミンを用いる請求項2記載のポリウレタンフォーム。
請求項4:
上記泡化触媒としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを用いる請求項2又は3記載のポリウレタンフォーム。
請求項5:
上記(A)成分のポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであり、かつこのトリレンジイソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネート含有量が80%のT80−TDIと2,4−トリレンジイソシアネート含有量が65%のT65−TDIとを質量比でT80/T65=100/0〜0/100の割合で用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【0012】
また、本発明者は、上記高弾性・高通気性のポリウレタンフォームを確実に得ることができる製造方法について更に検討を進めた結果、上記(A)〜(E)成分を含む上記ポリウレタン発泡原液をミキシングチャンバー内で攪拌混合し乳化状態で吐出させて発泡硬化させる際のミキシングチャンバー内圧を0.2〜0.4kg/cm2とすること、更には上記攪拌混合の際にミキシングチャンバー内にエアーを0.1〜500cc/minの割合で注入することにより、高弾性でかつセル数5〜25個/インチの高通気性を有するフォーム体を発泡性等に不都合を生じさせることなく確実に得ることができ、高弾性で高通気性のポリウレタンフォームが得られることを見出した。
【0013】
従って、本発明は、下記請求項6〜11のポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
請求項6:
下記(A)〜(E)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート
(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール
(C)水
(D)整泡剤
(E)触媒
を含むポリウレタン発泡原液をミキシングチャンバー内で攪拌混合し、これを乳化状態で吐出させ発泡させて所定のフォーム体とした後、発泡セルの除膜処理を施して、ポリウレタンフォームを得るポリウレタンフォームの製造方法において、
上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量5000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、かつ、
上記(E)成分の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部として上記ポリウレタン発泡原液を調製し、
このポリウレタン発泡原液を攪拌混合する際の上記ミキシングチャンバー内圧を0.2〜0.4kg/cm2に調整してセル数が5〜25個/インチのポリウレタンフォームを得ることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
請求項7:
上記(E)成分として用いるアミン系触媒として、樹脂化触媒と泡化触媒とを併用すると共に、これらの配合量をいずれも上記(B)成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とする請求項6記載のポリウレタンフォームの製造方法。
請求項8:
上記樹脂化触媒としてトリエチレンジアミンを用いる請求項7記載のポリウレタンフォームの製造方法。
請求項9:
上記泡化触媒としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを用いる請求項7又は8記載のポリウレタンフォームの製造方法。
請求項10:
上記(A)成分のポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであり、かつこのトリレンジイソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネート含有量が80%のT80−TDIと2,4−トリレンジイソシアネート含有量が65%のT65−TDIとを質量比でT80/T65=100/0〜0/100の割合で用いる請求項6〜9のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
請求項11:
上記ミキシングチャンバー内へエアーを注入しながらポリウレタン発泡原液の攪拌混合を行うと共に、そのエアー注入量を0.1〜500cc/minとする請求項6〜10のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリウレタンフォームは、従来は二律背反的な性能であった高弾性と高通気性とを兼備し、良好な洗濯性(洗浄性)と体圧分散性とが要求されるマットレス、特に介護用マットレスの素材として好適に使用されるものであり、また本発明の製造方法によれば、このような高弾性・高通気性のポリウレタンフォームを良好に得ることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリウレタンフォームは、上記のように、次の(A)〜(E)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート
(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール
(C)水
(D)整泡剤
(E)触媒
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させ、除膜処理を施したものである。
【0016】
前記(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)が好適に用いられる。また、場合によってはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を適量配合することも可能である。
上記TDIとしては、特に制限されるものではないが、2,4−TDIの含有量が80%、即ち2,4−TDIと2,6−TDIとの配合質量比が80/20のT80−TDI、2,4−TDIの含有量が65%、即ち2,4−TDIと2,6−TDIとの配合質量比が65/35のT65−TDI、又はこれらT80−TDIとT65−TDIとを併用することが好ましい。つまり、上記(A)成分のイソシアネートとしては、上記T80−TDIとT65−TDIとを質量比でT80/T65=100/0〜0/100の割合で用いることが好ましい。この場合、T80−TDIとT65−TDIとを併用する場合の好ましい配合比は、質量比でT80/T65=95/5〜5/95であり、より好ましくはT80/T65=75/25〜25/75である。
また、上記MDIとしては、純(ピュア)MDI(4,4’−MDI)、ポリメリックMDI、粗(クルード)MDIなどを用いることができる。
このようなTDI、MDIとしては市販品を使用することができ、TDIとしては、例えば三井化学(株)製「コスモネートT−80」(T80−TDI)、「コスモネートT−65」(T65−TDI)が例示され、MDIとしては、住友バイエルウレタン(株)製のクルードMDI「44V20」を例示することができる。
【0017】
前記(A)成分が上記ポリウレタン発泡原液中に占める割合(2種以上のイソシアネートを併用する場合には、その総量がポリウレタン発泡原液中に占める割合)としては、その目安としてのイソシアネート当量(軟質ポリウレタン発泡原液中の活性水素量(モル)を100とした時の、軟質ポリウレタン発泡原液中のイソシアネ−ト基の当量(モル)比)値として通常100以上、好ましくは105以上、上限としては好ましくは130以下、より好ましくは125以下である。イソシアネート当量が100未満であると、攪拌不良が起こる場合があり、一方130を超えると、フォームダウンする場合がある。
【0018】
上記(B)成分のヒドロキシル基を供給するポリオールとして、本発明では数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量5000以上のポリマーポリオールとを併用する。
【0019】
この場合、上記ポリエーテルポリオールとしては、反応性の観点から、アルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。このようなアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0020】
中でも、上記ポリエーテルポリオールとしては、原料活性の観点から、上記POとEOとを共重合して得たポリエーテルポリオールが好適に用いられる。共重合の際のPOとEOとの配合比としては、EO/PO(モル比)として通常0/100〜18/82(モル比)、好ましくは5/95〜10/90(モル比)である。EO/PO(モル比)が上記範囲を逸脱すると、ポリエーテルポリオールの生成が困難になる場合がある。
【0021】
また、上記ポリエーテルポリオールの一分子中に含まれるヒドロキシル基の数としては、通常2〜4個、特に3個であることが好ましい。ヒドロキシル基の数が多すぎると原料粘度が上昇する場合があり、少なすぎると物性が低下する場合がある。
【0022】
上記ポリエーテルポリオールは、上記の通り数平均分子量7000以上のものが用いられ、好ましくは数平均分子量7000〜12000、より好ましくは数平均分子量7000〜10000、更に好ましくは数平均分子量7000〜8000のものが用いられる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量が7000未満であると、得られるポリウレタンフォームの反発性に劣り、本発明の目的が達成されない。一方、数平均分子量が12000を超えると、粘度が高すぎて攪拌が困難になる場合がある。
なお、本発明において数平均分子量とは、GPC法によりポリスチレン換算値として算出した数平均分子量を意味する。
【0023】
(B)成分として上記ポリエーテルポリオールと併用されるポリマーポリオールとしては、上記の通り数平均分子量3000以上のものであればよく、例えば、数平均分子量3000〜7000のポリエーテルポリオールにポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のポリマー成分をグラフト共重合させたポリマーポリオール等が挙げられる。ポリアルキレンオキシドの原料となるアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシドを含むことが好ましく、プロピレンオキシド単独のもの、又はプロピレンオキシド及びエチレンオキシドを共に含むものであることが特に好ましい。また、上記ポリマーポリオール中に占める上記のようなポリマー成分の割合は、特に制限されるものではないが、通常10〜50質量%、特に20〜40質量%であることが好ましい。
【0024】
このポリマーポリオールは、上記の通り数平均分子量3000以上のものであるが、好ましくは数平均分子量3000〜7000、より好ましくは数平均分子量4000〜6000、更に好ましくは数平均分子量4000〜5000のポリマーポリオールが用いられる。この場合、このポリマーポリオールの数平均分子量が3000未満であると得られる発泡体の反発性が劣り本発明の目的を達成することができず、一方、数平均分子量が7000を超えると粘度が高くなって攪拌が困難になる場合があり好ましくない。
【0025】
本発明における上記ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとの配合比は、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70とされ、好ましくは60/40〜40/60、より好ましくは55/45〜45/55である。なお、両者の配合比が上記範囲を逸脱すると、得られるポリウレタン発泡成形体の物性が低下したり、反応不具合を生じたりする場合がある。
【0026】
また、この(B)成分として用いられる、上記ポリエーテルポリオール又はポリマーポリオールは、分子鎖末端にエチレンオキシドユニットを有するエチレンオキシド末端ポリオールを含むと共に、分子鎖末端に存するエチレンオキシドユニットが全ポリオール成分中に占める割合が0.1〜20質量%、中でも5〜10質量%であるものが、反応制御性の観点から好適である。
【0027】
また、本発明における上記(B)成分としては、粘度(ポリエーテルポリオールとポリマーポリオールとを混合したポリオール全体の粘度)が液温25℃において5000mPa・s以下であるポリオールが好ましく使用される。本発明におけるポリウレタン発泡原液には、イソシアネート基を供給するポリイソシアネートと、ヒドロキシル基を供給するポリオールとが含まれるが、このような特定の粘度を有するポリオールを用いることにより、ポリウレタン発泡原液の増粘速度を抑制することが可能となって攪拌効率が上昇し、イソシアネート基とヒドロキシル基とがより均一に反応することが可能となるため、従来に比べて発生ガスの発生効率が増加するのみならず、その発生ガスの発生箇所としてもポリウレタン発泡原液内で均一に発生することとなり、軽量かつ均質なポリウレタン発泡成形体を得ることが可能となる。
なお、本発明において「粘度」とは、JIS Z 8803−1991に準拠し、液温25℃において、毛細管粘度計を用いて測定した粘度を意味する。
【0028】
上記(B)成分の液温25℃における好ましい粘度は、上記の通り5000mPa・s以下であるが、より好ましくは1800mPa・s以下である。ポリオールの粘度が大きすぎると、ポリウレタン発泡原液の攪拌効率が低くなって良好なフォーム体の発泡成形が困難となる場合がある。
【0029】
上記(C)成分の水は、上記(A)成分と反応して炭酸ガスを発生させ、発泡剤として作用する。この(C)成分の水の配合量は、適宜調整され特に制限されるものではないが、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して好ましくは1〜3.5質量部、より好ましくは1〜3.5質量部である。(C)成分の配合量が上記範囲を逸脱すると、得られるポリウレタン軟質スラブフォームの熱圧縮残留歪み特性に劣る場合がある。
【0030】
上記(D)成分の整泡剤としては、例えばシリコーン系整泡剤、アニオン系整泡剤、カチオン系整泡剤を挙げることができ、中でも、分子鎖末端に水酸基を有する整泡剤が好ましく用いられる。
【0031】
この(D)成分の整泡剤は、特に制限されるものではないが、数平均分子量2000以下のものが好ましく用いられ、数平均分子量のより好ましい範囲は500〜2000、更に好ましくは1000〜2000である。整泡剤の数平均分子量が小さすぎると整泡力が弱くなりすぎる場合がある。一方、大きすぎると整泡力が強くなりすぎる場合がある。
また、(D)成分のHLB(hydrophile−lipophile balance)値としては、通常1以上、好ましくは2〜20、より好ましくは8〜13である。当該値が小さすぎるとプレミックスしたポリオール成分内で分離する場合がある。一方、大きすぎるとイソシアネートとの攪拌が悪化する場合がある。
更に、(D)成分の表面張力値(mN/m)としては通常15以上、好ましくは18〜30、より好ましくは20〜23である。当該値が小さすぎるとプレミックスしたポリオール成分内で分離する場合がある。一方、大きすぎるとイソシアネートとの攪拌が悪化する場合がある。
【0032】
上記(D)成分としては市販品を用いることができ、例えば、モメンティブパフォーマンスマテリアル社製、NIAX SILICONE L−2100;日本ユニカー(株)製、L−3601,L−5309,L−5366,SZ−1302,SZ−1306,SZ−1313,SZ−1327,SZ−1333,SZ−1336,SZ−1339,SZ−1342,SZ−1355,Y−10184;東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、SF2965,SF2962,SF2961,SRX274C,SF2964,SF2969,PRX607等を用いることができる。
なお、上記ポリウレタン発泡原液中の(D)成分の配合量としては、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜1質量部である。
【0033】
上記(E)成分の触媒としては、本発明ではアミン系触媒とスズ触媒とを併用する。この場合、上記アミン系触媒としては、樹脂化触媒、泡化触媒を用いることができ、特に樹脂化触媒と泡化触媒とを併用することが好ましい。
【0034】
上記樹脂化触媒としては、特に制限されるものではないが、トリエチレンジアミン、イミダゾール化合物などの環状第3級アミンが好ましく用いられ、特にトリエチレンジアミンが好適である。また、特に制限されるものではないが、上記泡化触媒としては、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルアルキルアミンなどの鎖状第3級アミンが好ましく用いられ、特にビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルが好適である。
【0035】
上記アミン系触媒の配合量は、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して0.1〜0.4質量部とされ、好ましくは0.1〜0.3質量部、より好ましくは0.1〜0.2質量部である。この場合、配合量が0.1質量部未満であるとフォームダウンとなり、また0.4質量部を超えると独立気泡となってシュリンクが発生し、いずれの場合も本発明の目的を達成し得ない。
【0036】
また、このアミン系触媒として上記樹脂化触媒と泡化触媒とを併用する場合は、これら樹脂化触媒と泡化触媒のいずれの配合量も上記(B)成分のポリオール100質量部に対して0.01〜0.3質量部とされ、好ましくは0.01〜0.2質量部である。
【0037】
次に、この(E)成分中のスズ触媒としては、スタナスオクトエート、スタナスラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアセテート、オクチル酸スズ等の公知の有機スズ触媒を用いることができる。このスズ触媒の配合量は、特に制限されるものではないが、上記(B)成分のポリオール100質量部に対して0.01〜0.5質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4質量部、更に好ましくは0.01〜0.2質量部である。
【0038】
本発明の上記ポリウレタン発泡原液には、上記(A)〜(E)成分の他に、公知の添加剤を適宜添加することができ、例えば、気泡連通化剤、抗菌剤、充填剤、着色剤、帯電防止剤、難燃化剤などを本発明の目的を逸脱しない範囲で適宜、適量を配合することができる。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームは、上記ポリウレタン発泡原液を所定の形態に発泡成形し、除膜処理を施すことにより得ることができる。この場合、除膜処理は熱処理、オゾン処理、アルカリ処理、酸素・水素爆発処理などの公知の方法で行うことができる。
【0040】
この場合、発泡成形は、目的とするポリウレタンフォームの形態や用途により適宜選択すればよく、例えばマットレスやベッド用素材などのスラブ状のフォーム体とする場合には、ミックスチャンバー内で上記ポリウレタン発泡原液を攪拌混合し、クラフト紙等を敷設したコンベアベルト等に乳化状態で吐出させて発泡硬化させる方法で発泡成形すればよい。またこの場合、必要に応じてミックスチャンバー内にエアーを注入しながら上記ポリウレタン発泡原液の攪拌混合を行うことができる。
【0041】
ここで、上記ミックスチャンバー内で、ポリウレタン発泡原液を攪拌混合する場合、ミックスチャンバー内を適度な加圧状態とすることにより、発泡セルを粗大化させることができ、具体的にはミックスチャンバー内圧を0.2〜0.4kg/cm2、より好ましくは0.3〜0.4kg/cm2とすることにより、より確実に発泡セルの粗大化を達成することができ、セル数5〜25個/インチ、更には5〜20個/インチの粗大化セルを有するポリウレタンフォームを得ることができる。
【0042】
また、ミックスチャンバー内にエアー注入する場合、そのエアーの注入量は、特に制限されるものではないが、0.1〜500cc/min、特に0.1〜300cc/minとすることが好ましく、エアー注入量が500cc/minを超えると、セルが細かくなって上記セルの粗大化を達成できない場合がある。
【0043】
なお、上記ポリウレタン発泡原液は、通常上記各成分が上記ミックスチャンバーに投入され攪拌混合されて調整されるが、場合によっては予め複数の成分を混合しておき、最終的に上記ミックスチャンバー内で全成分を攪拌混合して、ポリウレタン発泡原液とすることもできる。また、発泡成形時の条件、例えば温度、ミキシングチャンバーからの吐出速度等は、得られるフォーム体の形態や大きさ、性状、用途、要求特性などに応じて通常の条件とすればよい。
【0044】
本発明のポリウレタンフォームは高い反発弾性を有すると共に、セル数5〜25個/インチの粗大化セルを有し、通気性にも優れるものであり、マットレス、枕、ベッド等の素材として好適である。特に、介護用マットレス、介護用ベッド素材として好適に用いられ、その高弾性により良好な体圧分散性を達成して褥瘡予防に効果的に寄与し得、また高通気性を有するので洗濯・洗浄性に優れ、洗濯/洗浄による殺菌によって例えばMRSA院内感染の予防に効果的に寄与し得るものである。
【実施例】
【0045】
以下、実施例,比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0046】
[実施例1,2、比較例1〜4]
下記表1示された各成分をそれぞれタンクに収容し、各タンクからポンプでミキシングヘッドのミキシングチャンバー内へと連続的に送液し、ミキシングチャンバー内圧を表1に示した圧力に調整すると共に、エアーを100cc/minの速度で注入しながら各成分を攪拌混合してポリウレタン発泡原液を調整し、これをミキシングチャンバーから所定速度で運転されたコンベアベルト上に乳化状態で吐出させ発泡硬化させてポリウレタンフォームを作製した。その際の発泡性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
評価基準
◎:非常に優れる
○:良好
△:可
×:不良
【0047】
次に、得られた各ポリウレタンフォームを耐圧釜の中に入れて密封した後、耐圧釜の中の空気を抜いて燃焼ガスを充填し、この燃焼ガスに着火して燃焼熱により除膜処理を施した。
この除膜処理を施したポリウレタンフォームにつき、JIS K6400に従って密度、25%硬度、反発弾性率、通気性、セル数を測定し、また反発性を下記基準で評価した。結果を表1に示す。
反発性評価基準
◎:55%以上
○:50%以上、55%未満
×:50%未満
【0048】
【表1】

ポリオールA:三井化学(株)「アクトコールFC−24」MW=7000
ポリオールB:三井化学(株)「アクトコールPOP−3428」MW=5000
ポリオールC:三洋化成工業(株)「GP−3000V」MW=3000
イソシアネートA:TDI 三井化学(株)「コスモネートT−80」
イソシアネートB:TDI 三井化学(株)「コスモネート T−65」
触媒A:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル 東ソー(株)「TOYOCAT ET」
触媒B:トリエチレンジアミンのジプロピレングリコール溶液 エアープロダクツジャパン(株)「DABCO33LV」 表中の配合量はトリエチレンジアミン量
触媒C:オクチル酸錫 日本化学産業(株)「ニッカオクチック錫」
架橋剤A:(株)日本触媒「ジエタノールアミン」
架橋剤B:旭硝子(株)「EL555」
連通化剤:ダウケミカル「CP1421」
抗菌剤:シナネンゼオミック「AW10NS」
整泡剤:モメンティブパフォーマンスマテリアル社「NIAX SILICONE L−2100」MW=2000以下
※1:独立気泡によるシュリンク発生
※2:形状が保てずにフォームが崩壊した
【0049】
表1の通り、本発明のポリウレタンフォームは、高弾性で通気性に優れるものであることが確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(E)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート
(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール
(C)水
(D)整泡剤
(E)触媒
を含むポリウレタン発泡原液を発泡硬化させ、除膜処理を施したポリウレタンフォームにおいて、
上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量3000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、
上記(E)成分の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部として上記ポリウレタン発泡原料を調製したものであり、かつセル数が5〜25個/インチであることを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
上記(E)成分として用いるアミン系触媒として、樹脂化触媒と泡化触媒とを併用すると共に、これらの配合量がいずれも上記(B)成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部である請求項1記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
上記樹脂化触媒としてトリエチレンジアミンを用いる請求項2記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
上記泡化触媒としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを用いる請求項2又は3記載のポリウレタンフォーム。
【請求項5】
上記(A)成分のポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであり、かつこのトリレンジイソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネート含有量が80%のT80−TDIと2,4−トリレンジイソシアネート含有量が65%のT65−TDIとを質量比でT80/T65=100/0〜0/100の割合で用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項6】
下記(A)〜(E)の各成分、
(A)イソシアネート基を供給するポリイソシアネート
(B)ヒドロキシル基を供給するポリオール
(C)水
(D)整泡剤
(E)触媒
を含むポリウレタン発泡原液をミキシングチャンバー内で攪拌混合し、これを乳化状態で吐出させ発泡させて所定のフォーム体とした後、発泡セルの除膜処理を施して、ポリウレタンフォームを得るポリウレタンフォームの製造方法において、
上記(B)成分のポリオールとして、数平均分子量7000以上のポリエーテルポリオールと数平均分子量5000以上のポリマーポリオールとを、質量比でポリエーテルポリオール/ポリマーポリオール=70/30〜30/70の割合で併用し、かつ、
上記(E)成分の触媒として、アミン系触媒とスズ触媒とを併用すると共に、アミン系触媒の配合量を上記(B)成分100質量部に対して0.1〜0.4質量部として上記ポリウレタン発泡原液を調製し、
このポリウレタン発泡原液を攪拌混合する際の上記ミキシングチャンバー内圧を0.2〜0.4kg/cm2に調整してセル数が5〜25個/インチのポリウレタンフォームを得ることを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
上記(E)成分として用いるアミン系触媒として、樹脂化触媒と泡化触媒とを併用すると共に、これらの配合量をいずれも上記(B)成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とする請求項6記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
上記樹脂化触媒としてトリエチレンジアミンを用いる請求項7記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項9】
上記泡化触媒としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを用いる請求項7又は8記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項10】
上記(A)成分のポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートであり、かつこのトリレンジイソシアネートとして、2,4−トリレンジイソシアネート含有量が80%のT80−TDIと2,4−トリレンジイソシアネート含有量が65%のT65−TDIとを質量比でT80/T65=100/0〜0/100の割合で用いる請求項6〜9のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項11】
上記ミキシングチャンバー内へエアーを注入しながらポリウレタン発泡原液の攪拌混合を行うと共に、そのエアー注入量を0.1〜500cc/minとする請求項6〜10のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームの製造方法。

【公開番号】特開2011−184502(P2011−184502A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48764(P2010−48764)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】