説明

ポリウレタン樹脂製造用触媒及びポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】低温での硬化性に優れ、かつ環境的負荷の高い重金属を含まない触媒を用いたポリウレタン樹脂の製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で示される化合物をポリウレタン樹脂製造用触媒として用いる。 Zr(L)(L)(L)(L) (1)[式(1)中、L〜Lは各々独立して、下記(A)、(B)又は(C)であって、L〜Lのうち、少なくとも1つは(A)であり、少なくとも1つは(C)である。](A)一般式(2)で示される特定のβ−ジケトネート配位子。


(B)一般式(2)又はアリロキシ基を含有する特定のβ−ジケトネート配位子。(C)特定のアリロキシ基。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂の製造に有用な触媒に関する。また本発明は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び/又はウレタンプレポリマーとを、前記触媒及び必要に応じて溶剤、希釈剤、顔料、架橋剤等の存在下に反応させ、ポリウレタン樹脂を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネートを触媒及び必要に応じて発泡剤、界面活性剤、架橋剤等の添加剤の存在下に反応させて製造される。ポリウレタン樹脂は、基材との密着性、可とう性、耐候性に優れるため、自動車、建築、家電、重防食、プラスチック塗料、接着剤等の用途に広く使用されている。ポリウレタン樹脂製造用触媒としては、第3級アミン類や金属触媒が使用されているが、第3級アミン類は、ポリオールと有機ポリイソシアネートからウレタン結合を生成する反応を促進すると同時に、水と有機ポリイソシアネートとの反応を促進し、炭酸ガスを発生させる作用も有しているため、通常発泡ウレタン用途に使用される。一方、金属触媒は主にウレタン化反応を促進するため、非発泡ウレタン分野に使用される。また、第3級アミン類ではほとんど反応を促進できない脂肪族イソシアネートとポリオールの反応に対して、高い活性を有しているため、本用途では金属触媒が使用される。金属触媒としては、その活性の高さから、ジブチル錫ジラウレート(以下、DBTDLと称する場合がある。)やスタナスオクトエート等の有機スズ触媒が多用されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、これらの有機スズ触媒は毒性が高く、また、DBTDL中には環境ホルモンとしての有害性が指摘されているトリブチルスズが不純物として残留することが問題となっている。スズ以外の金属触媒として、鉛、水銀、ビスマス等の化合物もウレタン化反応を促進することが知られているが、これらの重金属化合物も毒性が高いため、有機スズ化合物と同様に使用が控えられる傾向がある。
【0003】
非重金属触媒としては、チタニウム、鉄、銅、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、マンガン等の遷移金属のアセチルアセトナート錯体がウレタン化活性を有することが古くから知られている。近年、環境意識の高まりから、重金属触媒を代替できる低毒性の触媒が望まれており、なかでもチタニウム/ジルコニウム化合物の高いウレタン化活性が注目され、新規な触媒の開発が活発化している。
炭素数が7以上のβ−ジケトネート配位子を含むジルコニウムのテトラジケトネート錯体をウレタン触媒として用いることで、反応性の改良が試みられている(例えば、特許文献1参照)。β−ジケトネート配位子を含む混合錯体としては、特定のβ―ジケトネート配位子、アルコキシド基又はカルボキシレート基を組み合わせたチタニウム/ジルコニウム化合物が遅延性のウレタン触媒として有用であることが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、触媒組成物としては、ジルコニウムジケトネート錯体と特定のアミン化合物を組み合わせることにより、高活性な触媒が得られることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、これらの触媒は重金属触媒と比較すると硬化性が十分に高くないため、代替触媒として用いるのは難しいのが現状である。例えば、ウレタン系のエラストマーや封止剤の硬化触媒として使用すると、特に低温領域では長い硬化時間を要し、樹脂硬度も十分に高くないという問題があった。また、ウレタンコーティング用途では、長い乾燥時間を要するという問題があった。
【0004】
【非特許文献1】横山哲夫著「ポリウレタンの構造・物性と高機能化及び応用展開」技術情報協会出版、1998年発行、第325頁
【特許文献1】特表2001−524142公報
【特許文献2】国際特許公開2004/044027号パンフレット
【特許文献3】特開2004−300430公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
重金属触媒を含む従来のウレタン製造用金属触媒は、加熱した場合には比較的高い活性を示すが、室温付近又はこれ以下の低温領域では十分な活性を有していない。このため、コーティング、シーラント等の用途で有機ポリイソシアネートとポリオールの2成分を非加熱で反応させようとする場合、長い硬化時間を要し、樹脂硬度も十分に高くないという問題があった。硬化速度を速めるために触媒の添加量を増加させると、残留した触媒によってウレタン樹脂が劣化しやすくなり、また重金属触媒を用いた場合、樹脂そのものの毒性が高まる危険性があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、少量の添加であっても低温領域でのウレタン化硬化性に優れ、なおかつ環境的負荷の高い重金属を使用しないポリウレタン樹脂製造用触媒を提供すること、及びこの触媒を用いることにより重金属触媒の使用量を大幅に低減することのできるポリウレタン樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の事情に鑑み、新規なポリウレタン樹脂製造用触媒について鋭意検討した結果、特定のβ−ジケトネート配位子及びアリロキシ基からなるジルコニウム化合物が前記課題を解決するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、以下に示すとおりの、ポリウレタン樹脂製造用触媒及びポリウレタン樹脂の製造方法である。
【0009】
<1>下記一般式(1)で示されるポリウレタン樹脂製造用触媒。
【0010】
Zr(L)(L)(L)(L) (1)
[上記一般式(1)中、L〜Lは各々独立して、
(A)下記一般式(2)で示されるβ−ジケトネート配位子、
【0011】
【化1】

(上記一般式(2)中、R及びRは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表し、かつRとRに含まれる炭素数の合計が3以上である。また、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
(B)下記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示されるβ−ジケトネート配位子、
【0012】
【化2】

(上記一般式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
【0013】
【化3】

(上記一般式(4)中、RはR又は−OR(ここで,Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。)を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。また、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
又は(C)下記一般式(5)で示されるアリロキシ基
−OR (5)
(上記一般式(5)中、Rは炭素数6〜18のアリール基を表す。)
を表す。ただし、L〜Lのうち、少なくとも1つは(A)上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子であり、かつL〜Lのうち、少なくとも1つは(C)上記一般式(4)で表されるアリロキシ基である。]
<2>(A)上記一般式(2)で示されるβ−ジケトネート配位子が、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート及び6−メチル−2,4−ヘプタンジオネートからなる群より選ばれることを特徴とする上記<1>に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒
<3>(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基が、フェノレート、2−メチルフェノレート、3−メチルフェノレート、4−メチルフェノレート、2−メトキシフェノレート、3−メトキシフェノレート、4−メトキシフェノレート、1−ナフトラート及び2−ナフトラートからなる群より選ばれることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒
<4>ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記<1>乃至<3>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0014】
<5>ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記<1>乃至<3>のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒及び添加剤の存在下、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【0015】
<6>有機ポリイソシアネートが脂肪族イソシアネートであることを特徴とする上記<4>又は<5>に記載のポリウレタン樹脂の製造方法。
【0016】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明のウレタン樹脂製造用触媒は、上記一般式(1)で示されるジルコニウム化合物である。
【0018】
本発明において、(A)上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子としては、特に限定するものではないが、例えば、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、1−フェニル−1,3−ペンタンジオネート、2、4−ヘキサンジオネート、3−メチル−2,4−ヘキサンジオネート、2,4−ヘプタンジオネート、3−メチル−2,4−ヘプタンジオネート、4−メチル−3,5−ヘプタンジオネート、5−メチル−2,4−ヘプタンジオネート、6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート、2−メチル−3,5−ヘプタンジオネート、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオネート、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、2,4−オクタンジオネート、5−メチル−2,4−オクタンジオネート、6−メチル−2,4−オクタンジオネート、7−メチル−2,4−オクタンジオネート、3,5−オクタンジオネート、2−メチル−3,5−オクタンジオネート、6−メチル−3,5−オクタンジオネート、7−メチル−3,5−オクタンジオネート、3,5−ノナンジオネート、4,6−ノナンジオネート等が好適なものとして例示される。これらのうち、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、2、4−ヘキサンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート、6−メチル−2,4−ヘプタンジオネートは工業的に入手しやすく、また配位子とした場合に高活性な触媒となるため、さらに好ましい。
【0019】
また、本発明において、(B)上記一般式(3)で示されるβ−ジケトネート配位子としては、特に限定するものではないが、例えば、2,4−ペンタンジオネート、3−メチル−2,4−ペンタンジオネート、3−エチル−2,4−ペンタンジオネート等が好適なものとして例示される。
【0020】
また、本発明において、(B)上記一般式(4)で示されるβ−ジケトネート配位子としては、特に限定するものではないが、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸ブチル、プロピオニル酢酸tert−ブチル、ブチリル酢酸メチル、ブチリル酢酸エチル、ブチリル酢酸プロピル、ブチリル酢酸イソプロピル、ブチリル酢酸ブチル、ブチリル酢酸tert−ブチル、イソブチリル酢酸メチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸プロピル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸ブチル、イソブチリル酢酸tert−ブチル、3−オキソヘプタン酸メチル、3−オキソヘプタン酸エチル、3−オキソヘプタン酸プロピル、3−オキソヘプタン酸イソプロピル、3−オキソヘプタン酸ブチル、3−オキソヘプタン酸tert−ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸メチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸エチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸プロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸イソプロピル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸ブチル、5−メチル−3−オキソヘキサン酸tert−ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸メチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸エチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸プロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸イソプロピル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸ブチル、4,4−ジメチル−3−オキソペンタン酸tert−ブチル、ベンゾイル酢酸メチル、ジベンゾインメタン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、マロン酸ジtert−ブチル、マロン酸メチルtert−ブチル等のアニオンが好適なものとして例示される。これらのうち、アセト酢酸メチル及びアセト酢酸エチルは、工業的に入手しやすいため、本触媒の配位子として優れている。
【0021】
さらに、本発明において、(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基としては、具体的に、フェノレート、2−メチルフェノレート、3−メチルフェノレート、4−メチルフェノレート、2,3−ジメチルフェノレート、3,4−ジメチルフェノレート、3,5−ジメチルフェノレート、2,6−ジメチルフェノレート、2−メトキシフェノレート、3−メトキシフェノレート、4−メトキシフェノレート、2−アセチルフェノレート、3−アセチルフェノレート、4−アセチルフェノレート、1−ナフトラート、2−ナフトラート、2−メトキシカルボニルフェノレート、2−エトキシカルボニルフェノレートが例示できる。これらのうち、フェノレート、2−メチルフェノレート、3−メチルフェノレート、4−メチルフェノレート、2−メトキシフェノレート、3−メトキシフェノレート、4−メトキシフェノレート、1−ナフトラート及び2−ナフトラートは工業的に入手しやすいため、本触媒の配位子として優れている。
【0022】
本発明において、上記一般式(1)で示されるジルコニウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、分子構造中に(A)上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子3分子と(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基1分子を有する化合物としては、具体的には、ジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムトリス(2、4−ヘキサンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(2,4−ヘプタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(2,4−オクタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−オクタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(2,7−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(4,6−ノナンジオネート)(フェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−ノナンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムトリス(2、4−ヘキサンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(5−メチル−2,4−ヘキサンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(2,4−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(2,4−オクタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−オクタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(2,7−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(4,6−ノナンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−ノナンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(1−ナフトラート)、ジルコニムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(1−ナフトラート)、ジルコニムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(1−ナフトラート)、ジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)、ジルコニムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)、ジルコニムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)等を例示できる。これらの化合物は、ウレタン化活性が高いため、ウレタン製造用触媒として優れているが、なかでも3,5−ヘプタンジネートを含むジルコニウム錯体は、常温で液状であり、ポリオール成分への溶解性が良いため、ポリウレタン樹脂製造用触媒として非常に優れている。
【0023】
また、分子構造中に(A)上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子2分子と(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基2分子を有する化合物としては、具体的には、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウムビス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウムビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウム(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウム(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウム(3,5−ヘプタンジオネート)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウム(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウム(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)、ジルコニウム(3,5−ヘプタンジオネート)(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ビス(3−メチルフェノレート)を例示できる。これらの化合物は、常温で液状のものが多く、ポリオール成分への溶解性が良いため、ポリウレタン樹脂製造用触媒として優れている。
【0024】
さらに、分子構造中に(A)上記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子2分子、(B)上記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示されるβ−ジケトネート配位子1分子及び(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基1分子を有する化合物としては、具体的には、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウム(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムビス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸メチル)(フェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸エチル)(フェノレート)、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウム(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸メチル)(3−メチルフェノレート)、ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸エチル)(3−メチルフェノレート)が例示できる。
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒として用いられる上記一般式(1)で表されるジルコニウム化合物は、従来公知の一般的な方法で製造することができる。例えば、ジルコニウムテトラプロポキサイド又はジルコニウムテトラブトキサイドを適当な溶媒(塩化メチレン、トルエン、酢酸エチル等)に溶解させ、続いて配位子となるβ―ジケトン化合物やフェノール類を0〜100℃で滴下し、その後1〜24時間反応させることによって、アルコキサイドと交換させる。次に、副生したアルコール及び溶媒を減圧下で留去し、目的化合物を得ることができる。ジルコニウムテトラアルコキサイドは、容易に加水分解するため、反応は不活性ガス中で行い、溶媒は脱水したものを使用する必要がある。
【0026】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、上記した本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、反応させることをその特徴とする。
【0027】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒をポリウレタン樹脂製造に用いる場合の使用量は、特に限定するものではないが、ポリオールを100重量部とした時、金属量として0.001〜1重量部の範囲が好ましい。また、本発明のポリウレタン製造用触媒に加えて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の有機金属触媒や第3級アミン触媒を併用しても良い。
【0028】
その他の有機金属触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート等の有機スズ触媒や、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が例示される。これらのうち、好ましい化合物としては、有機スズ触媒であり、更に好ましくはスタナスジオクトエート又はジブチルスズジラウレートである。本発明のポリウレタン樹脂の製造方法において、本発明の触媒組成物を使用することにより、有機スズ触媒の使用量を大幅に低減することができる。
【0029】
また、その他の第3級アミン触媒としては、特に限定するものではないが、具体的には、トリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3−キヌクリジノール、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、N−メチル−N’−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N−メチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、キヌクリジン、2−メチルキヌクリジン等が例示される。
【0030】
本発明において、その他の有機金属触媒や第3級アミン触媒を使用する場合は、その使用量は、ポリオールを100重量部としたとき、通常0.0001〜5重量部の範囲であり、更に好ましくは0.001〜3重量部の範囲である。
【0031】
本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、非常に高活性であるため、用途によっては可使時間(ポットライフ)を確保できないことがある。この場合は、カルボン酸又はβ−ジケトン化合物を遅延剤として添加することによって、可使時間を調節することが可能である。有効な遅延剤としては、具体的に、ギ酸、酢酸、プロパン酸、オクチル酸、2−ヒドロキシエタン酸(グリコール酸)、2−フェニル−2−ヒドロキシエタン酸(マンデル酸)、2−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、2,4−ペンタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルを例示することができる。これらの遅延剤の添加量は、必要とする可使時間に依存し、特に限定するものではないが、通常、本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒1重量に対して、0.01〜100重量部の範囲であり、更に好ましくは0.1〜10重量部の範囲である。
【0032】
本発明において、使用されるポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、アクリル系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、カプロラクトン変性ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、エポキシ変性ポリオール、アルキド変性ポリオール、ひまし油、フッ素含有ポリオール等が使用できる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0033】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングルコール、テトラメチレングルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール類、エチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物類、トルエンジアミン、ジフェニルメタン−4,4−ジアミン等の芳香族アミン化合物類、エタノールアミン及びジエタノールアミン等のようなアルカノールアミン類等のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料としてこれにエチレンオキシドやプロピレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドの付加反応により製造することができる(例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publishers(ドイツ),p.42〜53参照)。
【0034】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと無水マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物や、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等(例えば、岩田敬治、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社,p.117参照)が挙げられる。
【0035】
アクリル系ポリオールとしては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル等の水酸基含有不飽和モノマー及び/又はこれらモノマーにε−カプロラクタム等のラクトン類を付加したラクトン変性不飽和モノマーと、スチレン、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等の不飽和モノマーを重合反応させて得られるポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリオールの平均分子量は200〜10,000の範囲のものが好ましい。平均分子量が200未満では架橋点間距離が短く、塗膜としたときの柔軟性が十分ではなく、耐割れ性が不充分となるおそれがあり、10,000を超えると架橋密度が低くなり、塗膜としたときの強靭性や硬度が不充分となり本発明の効果を発揮しないおそれがある。
【0037】
本発明において、使用される有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフチレンジイシシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、優れた塗膜物性、耐候性を与える目的で、脂肪族イソシアネート類が好ましい。
【0038】
本発明において、使用される脂肪族イソシアネート類としては、例えば、従来公知の直鎖脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のイソシアネートが挙げられ、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H−MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、L−リシンジイソシアネート(LDI)、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等のイソシアネート又はこれらイソシアネートの二量体変性体、三量体変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、更にこれら有機ポリイソシアネート化合物のブロックイソシアネート体等を単独で又は混合して用いる。ブロックイソシアネートとしては、例えばエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、フェノール、p−ニトロフェノール等のフェノール類、ε−カプロラクタム等のラクタム類、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム等のオキシム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン含有化合物で活性なイソシアネート基をブロックしたものが挙げられる。
【0039】
本発明の製造方法においては、有機イソシアネートに換えて、ウレタンプレポリマーを使用することもできる。ウレタンプレポリマーは、前述のポリオールとポリイソシアネートを反応させることにより製造されるが、該反応は高温で行うことが望ましく、例えば、60℃〜150℃の範囲間で反応を行うことが望ましい。ポリオールに対するポリイソシアネートの当量比は、約0.8〜約3.5の範囲間に設定するのが望ましい。
【0040】
本発明において、イソシアネートインデックスは特に限定するものではないが、通常は50〜250の範囲であり、更に好ましくは70〜150の範囲である。70以下では架橋密度が低くなり樹脂強度が低下するおそれがあり、150以上では未反応イソシアネート基が残存するため塗膜乾燥性が悪化するおそれがある。
【0041】
本発明において、必要で応じて、添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、架橋剤又は鎖延長剤、顔料、着色剤、難燃剤、老化防止剤、抗酸化防止剤、充填剤、増粘剤、減粘剤、可塑剤、タレ防止剤、沈殿防止剤、消泡剤、UV吸収剤、溶媒、チキソトロープ剤、吸着剤、その他従来公知の添加剤等が挙げられる。これら添加剤の種類及び添加量については、従来公知の形式と手順を逸脱しない限り、通常使用される範囲で十分に本発明に適用することができる。
【0042】
本発明において、架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール(具体的には、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン等)、低分子量のアミンポリオール(具体的には、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等)、ポリアミン(具体的には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等)等が挙げられる。
【0043】
本発明においては、イソシアネートやポリオール等の原料を溶解、希釈するため、溶剤を使用することができる。このような溶剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルターペン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルグリコールアセテート、酢酸セルソルブ等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類の有機溶媒が挙げられる。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように本発明のポリウレタン樹脂製造用触媒は、従来の金属触媒と比較して、室温又はこれ以下の低温領域におけるに硬化性に優れているため、反応促進のために加熱しない非加熱条件下で良好な硬化速度が得られる。また、重金属を含まないため、取扱いが容易であり、環境にやさしいポリウレタン樹脂を製造することができる
【実施例】
【0045】
以下、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0046】
実施例1
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブンタンジオネート)(フェノレート)>
ジルコニウムテトラn−プロポキシド(ZA−40、松本製薬工業株式会社製)10g(ジルコニウムとして22.9mmol)を窒素置換したシュレンク管に入れ、脱水塩化メチレン10gを加えた。この溶液に、フェノール2.16g(22.9mmol)、続いて1−フェニル−1,3−ブタンジオン11.14g(68.7mmol)(ACROS社製)を加え、室温で12時間反応させた。反応終了後、生成したn−プロパノール及び溶媒の塩化メチレンを60℃で減圧留去し、白色の固体15.10gを得た。収率は99%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(1−フェニル−1,3−ブンタンジネート)(フェノレート)であることを確認した。
【0047】
元素分析値 C:63.8(64.7)、H:4.2(4.8)、Zr:13.5(13.7)。なお、括弧内は計算値を表す(以下同様)。
【0048】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
ポリプロピレングリコール(分子量700、ジオール型、和光純薬工業株式会社製)12.8gに上記で調製した化合物29.3mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を加え30秒間撹拌した後、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)ヌレートベースのウレタンプレポリマー(Coronate HX、日本ポリウレタン工業社製)7.2gを加え30秒間撹拌した。上記混合液を金型上の円形のくぼみ(直径1cm、深さ2mm)にすばやく流し込み、硬化挙動を評価した(室温、25℃)。混合液を流し込んでから、混合液がゲル化するまでの時間をゲルタイム、指で触ってベトツキが無くなるまでの時間をタックフリータイムとした。評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

実施例2
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)>
1−フェニル−1,3−ブタンジオンの替わりに、3,5−ヘプタンジオン8.80g(68.7mmol)(Aldrich社製)を加える以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体12.8gを得た。収率は99%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)であることを確認した。
【0050】
元素分析値 C:56.6(57.3)、H:6.3(6.8)、Zr:15.9(16.1)。
【0051】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒として、ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)を24.8mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0052】
実施例3
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(フェノレート)>
1−フェニル−1,3−ブタンジオンの替わりに、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン9.77g(68.7mmol)(Aldrich社製)を加える以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、薄黄色の固体13.78gを得た。収率は99%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(フェノレート)であることを確認した。
【0053】
元素分析値 C:58.2(59.3)、H:7.1(7.3)、Zr:15.1(15.0)。
【0054】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒として、ジルコニウムトリス(6−メチル−2,4−ヘプタンジオネート)(フェノレート)を26.6mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0055】
実施例4
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)>
1−フェニル−1,3−ブタンジオンの替わりに、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン12.66g(68.7mmol)(Aldrich社製)を加える以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、白色の固体16.42gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)であることを確認した。
【0056】
元素分析値 C:62.4(63.8)、H:8.2(8.5)、Zr:15.2(15.3)。
【0057】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)(フェノレート)を32.2mg(金属成分として固形分の0.02部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0058】
実施例5
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)>
フェノールの替わりに、3−メチルフェノール2.48g(22.9mmol)を加える以外は、実施例2と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体12.88gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)であることを確認した。
【0059】
元素分析値 C:57.2(58.0)、H:6.8(7.0)、Zr:15.2(15.7)。
【0060】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(3−メチルフェノレート)を25.4mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0061】
実施例6
<触媒の合成:ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)>
フェノールの替わりに、サリチル酸エチル3.81g(22.9mmol)を加える以外は、実施例2と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体14.28gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)であることを確認した。
【0062】
元素分析値 C:56.8(56.5)、H:6.4(6.6)、Zr:14.1(14.3)。
【0063】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(2−エトキシカルボニルフェノレート)を28.0mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0064】
実施例7
<触媒の合成:ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)>
フェノールを4.31g(45.8mmol)、3,5−ヘプタンジオンを5.87g(45.8mmol)使用する以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体11.91gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)であることを確認した。
【0065】
元素分析値 C:57.5(58.7)、H:5.8(6.1)、Zr:16.8(17.2)。
【0066】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)ビス(フェノレート)を23.3mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0067】
実施例8
<触媒の合成:ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)>
β−ジケトン化合物として、3,5−ヘプタンジオン5.87g(45.8mmol)と2,4−ペンタンジオネート2.29g(22.9mmol)を使用する以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体12.03gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)であることを確認した。
【0068】
元素分析値 C:54.2(55.8)、H:6.1(6.4)、Zr:17.1(17.0)。
【0069】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)を23.6mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0070】
実施例9
<触媒の合成:ジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸エチル)(フェノレート)>
β−ジケトン化合物として、3,5−ヘプタンジオン5.87g(45.8mmol)とアセト酢酸エチル2.98g(22.9mmol)を使用する以外は、実施例1と同様にして合成を実施し、薄黄色の液体12.03gを得た。収率は98%であった。元素分析及びNMRによって、得られた化合物はジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸エチル)(フェノレート)であることを確認した。
【0071】
元素分析値 C:54.4(55.0)、H:6.2(6.4)、Zr:16.2(16.1)。
【0072】
<硬化性の評価:脂肪族イソシアネートの硬化試験>
触媒としてジルコニウムビス(3,5−ヘプタンジオネート)(アセト酢酸エチル)(フェノレート)を24.9mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を用いる以外は、実施例1の<硬化性の評価>と同様にして評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0073】
実施例1〜実施例9から、本ポリウレタン樹脂製造用触媒は、室温付近の低温領域において非常に高い硬化性を有していることがわかる。
【0074】
比較例1
ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)のジルコニウムの1.5wt%トルエン溶液66.9mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0075】
ジルコニウムテトラ(2,4−ペンタンジオネート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0076】
比較例2
ジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)26.3mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0077】
ジルコニウムテトラ(3,5−ヘプタンジオネート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0078】
比較例3
ジルコニウムテトラ(6−メチル−2,4−ペンタンジオネート)26.1mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0079】
ジルコニウムテトラ(6−メチル−2,4−ペンタンジオネート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0080】
比較例1〜3から、β−ジケトネート配位子のみから構成されるジルコニウム化合物を使用した場合は、十分な活性が得られないことがわかる。
【0081】
比較例4
ジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)21.1mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0082】
ジルコニウムトリス(2,4−ペンタンジオネート)(フェノレート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0083】
比較例5
ジルコニウムトリス(アセト酢酸エチル)(フェノレート)25.1mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は[実施例1]の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0084】
ジルコニウムトリス(アセト酢酸エチル)(フェノレート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0085】
比較例4及び比較例5から、2つのカルボニル基に結合した末端アルキル基に含まれる炭素数の合計が2であるβ−ジケトネート配位子(すなわち、2,4−ペンタンジオネート)とアリロキシ基からなるジルコニウム化合物や、β―ケトエステルとアリロキシ基からなるジルコニウム化合物の硬化性は低いことがわかる。
【0086】
比較例6
ジルコニウムジ(n−プロポキサイド)ビス(2,4−ペンタンジオネート)17.9mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0087】
ジルコニウムジ(n−プロポキサイド)ビス(2,4−ペンタンジオネート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0088】
比較例7
ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(ベンジルアルコラート)25.4mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は[実施例1]の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0089】
ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(ベンジルアルコラート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0090】
比較例8
ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(ドデカノラート)28.9mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は[実施例1]の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0091】
ジルコニウムトリス(3,5−ヘプタンジオネート)(ドデカノラート)を使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。
【0092】
比較例6〜比較例8から、β−ジケトネート配位子とアルコキシ基からなるジルコニウム化合物の硬化性は低いことがわかる。
【0093】
比較例9
DBTDL(ジブチルスズジラウレート)21.2mg(金属成分としてポリオール100重量部に対し0.031重量部)を触媒として用いる以外は実施例1の<硬化性の評価>と同じ方法を用いて、評価を実施した。結果を表1にあわせて示す。
【0094】
DBTDLを触媒として使用した場合、十分な硬化性が得られないことがわかる。また、DBTDLは不純物としてトリブチルスズを含有しており環境衛生上、安全に使用できるものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリウレタン樹脂製造用触媒。
Zr(L)(L)(L)(L) (1)
[上記一般式(1)中、L〜Lは各々独立して、
(A)下記一般式(2)で表されるβ−ジケトネート配位子、
【化1】

(上記一般式(2)中、R及びRは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表し、かつRとRに含まれる炭素数の合計が3以上である。また、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
(B)下記一般式(3)若しくは下記一般式(4)で示されるβ−ジケトネート配位子、
【化2】

(上記一般式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
【化3】

(上記一般式(4)中、RはR又は−OR(ここで,Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。)を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。また、Rは水素原子又は炭素数1〜7のアルキル基を表す。)
又は(C)下記一般式(5)で示されるアリロキシ基
−OR (5)
(上記一般式(5)中、Rは炭素数6〜18のアリール基を表す。)
を表す。ただし、L〜Lのうち、少なくとも1つは(A)上記一般式(2)で示されるβ−ジケトネート配位子であり、かつL〜Lのうち、少なくとも1つは(C)上記一般式(5)で示されるアリロキシ基である。]
【請求項2】
(A)一般式(2)で示されるβ−ジケトネート配位子が、1−フェニル−1,3−ブタンジオネート、3,5−ヘプタンジオネート及び6−メチル−2,4−ヘプタンジオネートからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒
【請求項3】
(C)一般式(5)で示されるアリロキシ基が、フェノレート、2−メチルフェノレート、3−メチルフェノレート、4−メチルフェノレート、2−メトキシフェノレート、3−メトキシフェノレート、4−メトキシフェノレート、1−ナフトラート及び2−ナフトラートからなる群より選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂製造用触媒
【請求項4】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒の存在下、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法
【請求項5】
ポリオールと有機ポリイソシアネートとを、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂製造用触媒及び添加剤の存在下、反応させることを特徴とするポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項6】
有機ポリイソシアネートが脂肪族イソシアネートであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のポリウレタン樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2007−197506(P2007−197506A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15016(P2006−15016)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】