説明

ポリウレタン樹脂

【課題】 難燃剤を含有しないか少量の含有量であっても、燃焼性(難燃性)に優れたポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】 樹脂中のビニル重合性官能基の濃度が0.05〜6mmol/gであることを特徴とする非発泡または発泡ポリウレタン樹脂を用いる。活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られ、(A)中に、活性水素含有基と特定組成の末端ビニル重合性官能基を有する特定組成の活性水素化合物(a)、および必要によりビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)を含有するか、または、(a)および/もしくは(c)とビニル重合性官能基を有しない1種以上の活性水素化合物(b)とを含有する、非発泡または発泡ポリウレタン樹脂を用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂に関する。詳しくは、非発泡または発泡ポリウレタン樹脂の難燃性に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は加工しやすく、耐熱性、耐候性、機械的性質等の優れた特性があり、電子、電気機器等、多くの工業製品、日常製品に広く利用されている。
また、難燃剤を付与し、ポリウレタン樹脂成形品の難燃化がはかられている。(例えば、非特許文献1参照)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ポリウレタン樹脂ハンドブック(岩田敬治編、日刊工業新聞社刊) 昭和62年9月25日発行 P167,174〜177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多量の難燃剤の付与は樹脂強度を低下させる等、樹脂物性を悪化させるという恐れがある。本発明は、難燃剤を含有しないか、又は少量の含有量であっても、燃焼性(難燃性)に優れたポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明とは、樹脂中のビニル重合性官能基の濃度が0.05〜6mmol/gであることを特徴とする非発泡または発泡ポリウレタン樹脂である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリウレタン樹脂は、従来の、ポリウレタン樹脂と比較して燃焼性(難燃性)に優れている。また、圧縮硬さ等の樹脂強度にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明において、ポリウレタン樹脂中のビニル重合性官能基の濃度は、0.05〜6mmol/g、好ましくは0.08〜4mmol/g、更に好ましくは0.1〜3.5mmol/g、特に好ましくは0.2〜3mmol/gである。樹脂中のビニル重合性官能基の濃度が0.05mmol/g未満であると、得られる樹脂の燃焼性(難燃性)が不十分となる。ビニル重合性官能基の濃度が6mmol/gを超えると脆性が発生してくる。
【0008】
ここで、樹脂中のビニル重合性官能基の濃度は、フーリエ変換赤外線吸収分析法(FT−IR)で測定したピーク強度(ピーク面積)を用いて算出した。FT−IRではビニル重合基のピークは896〜935cm-1に検出される。試料のポリウレタン樹脂のビニル重合基のピーク面積をK、試料のポリウレタン樹脂の原料と同じ組成の原料に過剰量の重合禁止剤を添加して反応させて得られたポリウレタン樹脂のビニル重合基のピークをLとした場合、樹脂中のビニル重合基濃度は以下の式により求められる。
樹脂中のビニル重合基濃度=M×(K/K’)/(L/L’)
【0009】
ここで、Mは、ポリウレタン樹脂の原料の合計重量に対する原料中のビニル重合基のモル濃度(計算値)を示す。K’は試料のポリウレタン樹脂中の反応に関与しない構造のピーク面積、L’は試料のポリウレタン樹脂の原料と同じ組成の原料に過剰量の重合禁止剤を添加して反応させて得られたポリウレタン樹脂中の反応に関与しないK’と同じ構造のピーク面積を示す。例えば、K’、L’の構造は芳香環を示す。
【0010】
本発明において、樹脂中のビニル重合性官能基の濃度を0.05mmol/g以上とする方法としては、いかなる方法を用いてもよく、特に限定されないが、非発泡または発泡ポリウレタン樹脂として、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを反応
させて得られ、(A)中に、活性水素含有基と下記一般式(1)で示されるビニル重合性官能基を有し、下記(a1)〜(a3)から選ばれる1種以上の活性水素化合物(a)、および必要によりビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)を含有するか、または、(a)および/もしくは(c)とビニル重合性官能基を有しない1種以上の活性水素化合物(b)とを含有する樹脂を用い、未反応のビニル重合性官能基を0.05mmol/g以上残存させる方法が好ましい。
(a1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル
【0011】
【化1】

[式中Rは、水素、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数6〜21のアリール基を表す。]
【0012】
未反応のビニル重合性官能基の量を調整する方法としては、例えば、ポリウレタン樹脂を製造する際に使用するラジカル重合開始剤の濃度を変えて、樹脂中の未反応のビニル重合性官能基の濃度を制御する方法が挙げられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)社製「パークミルD」)を使用した場合、ビニル重合性官能基含有活性水素化合物(a)およびビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物(c)中のビニル重合性官能基に対し、好ましくは1.0モル%以下、さらに好ましくは0.5モル%以下、とくに好ましくは0.3モル%以下用いる。
【0013】
このほか、反応時の温度を下げて未反応のビニル重合性官能基を増加させ、樹脂中のビニル重合性官能基の濃度を上げる方法、ビニル重合性官能基含有活性水素化合物(a)およびビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物(c)中のビニル重合性官能基の濃度を上げて、樹脂中のビニル重合性官能基の濃度を上げる方法、活性水素成分(A)の活性水素価を極端に上げウレタン化反応を大幅に促進させて、ビニル重合性官能基同士の衝突頻度を下げて未反応のビニル重合性官能基の濃度を上げる方法等を用いてもよい。
【0014】
活性水素成分(A)中に必要により用いるビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)のビニル重合性官能基の例としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、プロペニル基、1−ブテニル基等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中で好ましくは、(メタ)アクリロイル基、アリル基およびプロペニル基であり、更に好ましくは、(メタ)アクリロイル基およびアリル基である。ここで(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタアクリロイル基を意味し、以下同様の記載法を用いる。
また、(a)の活性水素含有基としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、1級アミノ基、2級アミノ基から選ばれる1種以上が挙げられる。好ましくはヒドロキシル基およびメルカプト基であり、更に好ましくはヒドロキシル基である。
【0015】
ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)は下記(a1)〜(a3)から選ばれる化合物であり、2種以上を併用してもよい。
(a1)ポリオール〔多価アルコール、多価フェノール、多価アルコールもしくは多価フェノールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記)付加物、アミンのAO付加物、多価アルコールとポリカルボン酸もしくはラクトンとから誘導されるポリエステルポリオールなど〕の不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル〔とくに部分(メタ)アクリル酸エステルまたは部分アリルエーテル〕
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物〔と
くに部分(メタ)アクリルアミド化物または部分アリル化物〕
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル〔とくに部分(メタ)アクリルチオエステルまたは部分アリル化物〕
【0016】
(a1)の製造に用いる多価アルコールとしては、例えば、炭素数2〜18(好ましくは2〜12)の2価アルコール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−および1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等]、炭素数3〜18(好ましくは3〜12)の3〜5価の多価アルコール[アルカンポリオールおよびその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ジグリセリン;糖類およびその誘導体、例えば、α−メチルグルコシド、キシリトール、グルコース、フルクトース;等]、および炭素数5〜18(好ましくは5〜12)の6〜10価またはそれ以上の多価アルコール[6〜10価のアルカンポリオール、および6〜10価のアルカンポリオールもしくは3〜5価のアルカンポリオールの分子内もしくは分子間脱水物、例えば、ジペンタエリスリトール;糖類およびその誘導体、例えば、ソルビトール、マンニール、ショ糖;等]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0017】
(a1)の製造に用いる多価フェノールとしては、多価フェノール〔単環多価フェノール(ハイドロキノン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)など〕、3〜5価の多価フェノール〔単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシン等)、3〜5価の、多価フェノール化合物のホルマリン低縮合物(数平均分子量1000以下)(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)など〕、6〜10価またはそれ以上の多価フェノール〔6価以上の、多価フェノール化合物のホルマリン低縮合物(数平均分子量1000以下)(ノボラック樹脂、レゾールの中間体)等〕、多価フェノールとアルカノールアミンとの縮合物(マンニッヒポリオール)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0018】
(a1)の製造に用いるポリオールのうち、アミンのAO付加物におけるアミンとしては、例えば、アンモニア;炭素数2〜20のアルカノールアミン[モノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン等];炭素数1〜20のアルキルアミン[メチルアミン、エチルアミン、n−ブチルアミン、オクチルアミン等];炭素数2〜6のアルキレンジアミン[エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等];アルキレン基の炭素数が2〜6のポリアルキレンポリアミン(重合度2〜8)[ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等];炭素数6〜20の芳香族アミン[アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン、ナフタレンジアミン、アントラセンジアミン等];炭素数4〜15の脂環式アミン[イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン等];炭素数4〜15の複素環式アミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン等]およびこれらの2種以上の併用などが挙げられる。
【0019】
多価アルコール、多価フェノール、またはアミンに付加させるAOとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、1,3−、1,4−もしくは2,3−ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド(炭素数5〜30またはそれ以上)、スチレンオキサイドなどおよびこれらの2種以上の併用(併用する場合には、ランダム付加、ブロック付加、これらの組合せのいずれでもよい。)が挙げられる。これらのAOのうち、炭素数2〜8のものが好ましく、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものが更に好ましい。付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができる。1分子当たりのAOの付加モル数は、好ましくは1〜70、更に好ましくは1〜50である。上記および以下において、%は、特に記載のない限り質量%を意味する。
【0020】
(a1)の製造に用いるポリオールのうちポリエステルポリオールに用いる多価アルコールは、前記と同様のものが挙げられ、ポリカルボン酸としては、例えば、炭素数4〜18の脂肪族ポリカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸等]、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸[フタル酸もしくはその異性体、トリメリット酸等]、これらのポリカルボン酸のエステル形成性誘導体[酸無水物、アルキル基の炭素数が1〜4の低級アルキルエステルなど]およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。ラクトンとしては、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(a)の製造に用いるポリオールとしては、好ましくはヒドロキシル基を3〜10個、更に好ましくは3〜6個有するものである。
【0021】
(a1)は、部分(メタ)アクリル酸エステル、および部分アリルエーテルの場合を例にとると、例えば、以上例示したポリオールを、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基が未反応で残るような当量比で、ハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを用いて部分(メタ)アクリロイル化または部分アリル化することにより得られる。ハロゲン化(メタ)アクリルとしては、塩化(メタ)アクリロイル、臭化(メタ)アクリロイル、ヨウ化(メタ)アクリロイル、ハロゲン化アリルとしては、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。また、上記ポリオールと(メタ)アクリル酸とを用い、1分子中に少なくとも1個のヒドロキシル基が未反応で残るような当量比で、通常の方法でエステル化反応してもよい。
また(a1)は、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体、またはアリルアルコール等の不飽和アルコールに前記のAOを付加しても得ることができる。この場合、AOの中では、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものが好ましい。付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができる。AOの付加モル数は、好ましくは1〜70、更に好ましくは1〜50である。
【0022】
(a2)は、前記のアミンのうち、ポリアミンまたはアルカノールアミンと、前記のハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを、1分子中に少なくとも1個のアミノ基または水酸基(アルカノールアミンの場合)が未反応で残るような当量比で、反応させることにより得られる。
【0023】
(a3)の製造に用いるポリチオールとしては、チオール基を2〜4個有し、炭素数2〜18のものが好ましく、例えば、エタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−プロパンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)チオシアヌル酸、ジ(2−メルカプトエチル)スルフィド、ジ(2−メルカプトエチル)エーテルおよびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
(a3)は、これらポリチオールに、前記のハロゲン化(メタ)アクリルまたはハロゲン化アリルを、1分子中に少なくとも1個のチオール基が未反応で残るような当量比で、反応させることにより得られる。
【0024】
活性水素化合物(a)は分子内に前記ビニル重合性官能基を1個以上有する。ビニル重合性官能基の数は,好ましくは1〜20個、更に好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜7個、特に好ましくは1〜5個、最も好ましくは2〜4個である。ビニル重合性官能基の数が1個以下であると圧縮硬さの発現の効果が低く、20個を超えると効果が徐々に
低くなる。
(a)は活性水素含有基を1個以上有し、好ましくは1〜8個、更に好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜3個、最も好ましくは1〜2個である。活性水素含有基が1〜8個であるとポリウレタン樹脂の成形時の硬化性が良好である。
なお、(a)のビニル重合性官能基数、および活性水素含有基数は、(a)が反応混合物等組成が単一でない場合は、平均の個数を用いる。
【0025】
活性水素化合物(a)の活性水素価は10〜1800が好ましく、更に好ましくは20〜1500、特に好ましくは30〜1000、最も好ましくは50〜500である。
ここで、活性水素価は、”56100/活性水素1個当たりの分子量”を意味し、活性水素を有する基が水酸基の場合、水酸基価に相当する。なお、水酸基価は、試料1gを中和するのに相当するKOHのmgであって、”56100/水酸基1個当たりの分子量”を意味する。なお、ここで56100はKOH1モルのmg数を示している。活性水素価の測定方法は、上記定義の値を測定できる方法であれば公知の方法でよく、特に限定されないが、水酸基価の場合、例えばJIS K1557に記載の方法が挙げられる。
【0026】
これら(a)の中では、好ましくは(a1)および(a2)であり、更に好ましくは(a1)であり、特に好ましくは、多価アルコールもしくはそのAO付加物の部分アリルエーテル、および多価アルコールもしくはそのAO付加物の部分(メタ)アクリル酸エステルであり、最も好ましくは多価アルコールもしくはそのAO付加物の部分(メタ)アクリル酸エステルである。
【0027】
活性水素成分(A)中に、必要により、ビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物(c)を1種以上使用することができる。
(c)は活性水素含有基を持たないので、ポリウレタン樹脂を形成するために、(A)中で、必ずビニル重合性官能基含有活性水素化合物(a)および/またはビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)と併用する必要がある。
(c)のビニル重合性官能基としては、ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)におけるビニル重合性官能基と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
(c)中のビニル重合性官能基数は、好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個である。
(c)は、(c)が副生成物として(a)と同時に生じる製造条件で(a)を製造し、(a)と共に活性水素成分(A)中に含有されていてもよい。
(c)としては、芳香族炭化水素単量体[スチレン、α−メチルスチレンなど]、不飽和ニトリル[(メタ)アクリロニトリルなど]なども用いることができるが、(c)の好適な具体例としては、下記(c1)〜(c3)が挙げられる。
【0028】
(c1)ポリオール〔多価アルコール、多価フェノール、多価アルコールもしくは多価フェノールのAO付加物、アミンのAO付加物、多価アルコールとポリカルボン酸もしくはラクトンとから誘導されるポリエステルポリオールなど〕の不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和アルキルエーテル〔とくに(メタ)アクリル酸エステルまたはアリルエーテル〕
(c2)アミンの不飽和カルボン酸アミド化物または不飽和アルキル化物〔とくに(メタ)アクリルアミド化物またはアリル化物〕
(c3)ポリチオールの不飽和カルボン酸チオエステルまたは不飽和アルキルチオエーテル〔とくに(メタ)アクリルチオエステルまたはアリル化物〕
(c1)〜(c3)はそれぞれ、例えば、前記(a1)〜(a3)の製造時において、用いる原料の反応モル比を変えて、未反応の活性水素含有基が残らないように反応させることにより得られる。
【0029】
ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)と、ビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物(c)は、(A)中に用いられる(a)と(c)の質量比〔(a)と(c)の合計を100とする〕は、好ましくは(a):(c)=100:0〜10:90、さらに好ましくは(a):(c)=100:0〜30:70、とくに好ましくは(a):(c)=99:1〜40:60である。
【0030】
活性水素成分(A)中に、ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)およびビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)以外に、必要により、ビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)を含有してもよい。
なお、ビニル重合性官能基を有する化合物として(c)のみを用いる場合は、(b)を併用する必要がある。
(b)はビニル重合性官能基を実質的に有しないポリオールであり、脂肪族アミンのAO付加物(b1)、芳香族アミンのAO付加物(b2)、多価アルコールまたは多価フェノールのAO付加物(b3)、ポリエステルポリオール(b4)、ポリマーポリオール(b5)、および前記(a1)の製造に用いるポリオールとして例示したもののうち上記以外のもの(多価アルコール等)が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
ここで「ビニル重合性官能基を実質的に有しない」とは、JIS K−1557記載の方法で測定された総不飽和度が0.2meq/g以下であることを意味する。
【0031】
(b1)の脂肪族アミンとしては、1級および/または2級アミンが挙げられ、1級および/または2級アミノ基の数は、好ましくは1〜4個、更に好ましくは1〜3個であり、アミノ基に由来する活性水素の数は、好ましくは2〜8個、更に好ましくは2〜4個である。
(b1)として具体的には、前記(a1)の項で述べた、アルカノールアミン、炭素数1〜20のアルキルアミン、炭素数2〜6のアルキレンジアミン、およびアルキレン基の炭素数が2〜6のポリアルキレンポリアミン(重合度2〜8)等が挙げられる。好ましくはアルカノールアミンおよびアルキレンジアミンである。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である。
AO付加反応は、従来公知の通常の方法により行うことができ、付加時に用いる触媒としては、通常用いられるアルカリ触媒(KOH、CsOH等)の他、特開2000−344881号公報に記載の触媒〔トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等〕、特開2002−308811号公報に記載の触媒(過塩素酸マグネシウム等)を用いてもよい(以下のAO付加物も同様)。
【0032】
(b2)の芳香族アミンとしては、前記(a1)の項で述べた、炭素数6〜20の芳香族アミン等が挙げられる。好ましくはアニリン、フェニレンジアミン、およびトリレンジアミンである。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である。
【0033】
(b3)の多価アルコールとしては、(a1)の製造に用いる多価アルコールとして例示したものが挙げられる。
(b3)の多価フェノールとしては、(a1)の製造に用いる多価フェノールとして例示したものが挙げられる。
付加するAOとして好ましいものは、POおよび/またはEOを主成分とし、必要により20%以下の他のAOを含むものであり、特に好ましくはPO、およびPOとEOの併用である。
【0034】
(b4)のポリエステルポリオールとしては、前記(a1)の製造に用いるポリエステルポリオールとして例示したもの、および前記多価アルコールもしくは多価フェノールのAO付加物(b3)と前記ポリカルボン酸の重縮合物が挙げられる。
【0035】
(b5)のポリマーポリオールとしては、通常ポリウレタン樹脂に使用されるもの、例えば、前記のポリカルボン酸に前記のAOを付加したポリエーテルポリオール、前記ポリエステルポリオールおよびそのAO付加物、低分子量ポリオール(例えば前記多価アルコール)、前記アルカノールアミン、および前記多価アルコールまたは多価フェノールのAO付加物(b3)から選ばれる1種以上のポリオール中で、ビニルモノマー(アクリロニトリル、スチレンなど)を重合して得られるポリマーポリオール、並びにこれらの混合物が挙げられる。上記AOとして好ましいものは、POおよび/またはEOである。これらの中で好ましくは(b3)から得られるポリマーポリオールである。
(b5)の製造方法は、従来のポリマーポリオールにおける重合法と同様に行うことができる。例えば、必要により分散剤を含むポリオール中で、ビニルモノマーを重合開始剤の存在下に重合させる方法(米国特許第3383351号明細書、特公昭39−24737号公報、特公昭47−47999号公報または特開昭50−15894号公報に記載の方法)が挙げられる。また、重合は、バッチ式でも連続式でも行うことができ、常圧下、加圧下または減圧下において重合することができる。必要に応じて、溶剤、連鎖移動剤を使用することができる。(b5)中の重合体の体積平均粒子径は0.5〜15μmが好ましい。
【0036】
(b)としては、好ましくはヒドロキシル基を2〜8個、更に好ましくは2〜6個有するものが好ましく、(b)の水酸基価は、好ましくは30〜1900、更に好ましくは50〜1600、特に好ましくは80〜1000である。
これら(b)の中では、(b1)、(b2)、および(b3)が好ましく、更に好ましくは(b2)、および(b3)であり、特に好ましくは(b2)、および(b3)の中でも多価アルコールのAO付加物である。
【0037】
また、活性水素成分(A)中に、ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)、および/またはビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)を用いることで、燃焼性(難燃性)に優れたポリウレタン樹脂を得ることができるが、特に燃焼性が重視される用途に用いる場合、それに加えて、(b)として芳香環を有する化合物、すなわち、芳香族アミンのAO付加物(b2)、(b3)のうち多価フェノールのAO付加物(b31)、(b4)のうち芳香環を有するポリエステルポリオール(構成単位として、炭素数8〜18の芳香族ポリカルボン酸や多価フェノールのAO付加物を含有するもの等)(b41)、および(b5)のうち芳香環を有するポリマーポリオール(b51)を、少なくとも一部〔好ましくは(b)の10〜80%〕用いるのが好ましい。
これらの芳香環を有する(b)の中では、(b2)および(b41)が好ましく、さらに好ましくは、(b2)の中では、フェニレンジアミンのAO付加物、およびトリレンジアミンのAO付加物であり、(b41)の中では、フタル酸もしくはその異性体および/またはそのジエステルと、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、グリセリン、および(b3)から選ばれる1種以上との重縮合物であり、とくに好ましくはフェニレンジアミンのAO付加物、およびトリレンジアミンのAO付加物である。
【0038】
活性水素成分(A)中のビニル基含有成分の濃度(重量%、以下本段落では%は重量%を示す。)は、好ましくは0.6〜62%、更に好ましくは1〜40%、特に好ましくは2〜20%である。0.6%以上であるとポリウレタン樹脂の曲げ強度が発現し易く、62%以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易である。
ここで、ビニル基含有成分の濃度は、活性水素成分(Zグラム)に十分な量の水酸化カ
リウムのエタノール溶液を加え、密閉下70℃で24時間アルカリ分解した後、分取液体クロマトグラフィーにてビニル基含有成分(Eグラム)を分取し、次式により求める。
ビニル基含有成分の濃度(%)=(E/Z)×100
【0039】
活性水素成分(A)中の、ビニル重合性官能基を有する活性水素化合物(a)とビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)の合計とビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)の質量比〔(a)、(b)、(c)の合計を100とする〕は、〔(a)+(c)〕:(b)が、好ましくは100:0〜0.5:
99.5、更に好ましくは75:25〜1:99、特に好ましくは70:30〜5:95
である。(a)と(c)の合計の比率が0.5%以上だとフォームの圧縮硬さの発現がしやすく、75%以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易となる。
【0040】
本発明で使用される有機ポリイソシアネート(B)としては、イソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、ポリウレタン樹脂の製造に通常使用されるものを用いることができる。このようなイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、これらの変性物(例えば、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシヌアレート基、またはオキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
芳香族ポリイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く;以下のイソシアネートも同様)6〜16の芳香族ジイソシアネート、炭素数6〜20の芳香族トリイソシアネートおよびこれらのイソシアネートの粗製物などが挙げられる。具体例としては、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜10の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、炭素数6〜16の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、炭素数8〜12の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
変性ポリイソシアネートの具体例としては、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDIなどが挙げられる。
有機ポリイソシアネート(B)としては、好ましくは芳香族ポリイソシアネートであり、更に好ましくは2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、並びにそれらの変性物から選ばれる1種以上のMDI系ポリイソシアネートを主成分とするものである。(B)中のこれらの主成分の含有量は、好ましくは40%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0043】
活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを反応させて本発明のポリウレタン樹脂を製造する際のイソシアネート指数(NCO INDEX)[(NCO基/活性
水素原子含有基)の当量比×100]は、好ましくは50〜250、更に好ましくは70〜200、特に好ましくは75〜180、最も好ましくは80〜160である。
【0044】
本発明のポリウレタン樹脂は、非発泡ポリウレタン樹脂であっても、発泡剤(C)の存在下に(A)と(B)を反応させて得られる発泡ポリウレタン樹脂であってもよい。発泡ポリウレタン樹脂の中では、硬質ポリウレタンフォームに適用すると、本発明の効果が大きい。
本発明で必要により用いられる発泡剤(C)としては、水、水素原子含有ハロゲン化炭化水素、低沸点炭化水素、液化炭酸ガス等が用いられ、2種以上を併用してもよい。
水素原子含有ハロゲン化炭化水素の具体例としては、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)タイプのもの(例えばHCFC−123およびHCFC−141b);HFC(ハイドロフルオロカーボン)タイプのもの(例えば、HFC−245faおよびHFC−365mfc)などが挙げられる。
低沸点炭化水素は、沸点が通常−5〜70℃の炭化水素であり、その具体例としては、ブタン、ペンタン、シクロペンタンが挙げられる。これらのうち好ましくはペンタン、およびシクロペンタンであり、さらに好ましくはシクロペンタンである。
これら(C)の中で、好ましくは低沸点炭化水素、および低沸点炭化水素と水の併用である。
【0045】
活性水素成分(A)100部に対する発泡剤(C)の使用量は、水は、好ましくは0.1〜30部、さらに好ましくは1〜20部である。水素原子含有ハロゲン化炭化水素は、好ましくは50部以下、さらに好ましくは10〜45部である。低沸点炭化水素の量は、活性水素成分(A)100部当り、好ましくは0.1〜50部、更に好ましくは1〜40部、特に好ましくは10〜30部、最も好ましくは15〜25部である。液化炭酸ガスは、好ましくは30部以下、さらに好ましくは1〜25部である。低沸点炭化水素と水とを併用する場合の水の使用量は、上記量の低沸点炭化水素に加え、好ましくは10部以下、更に好ましくは0.1〜5部、特に好ましくは0.1〜3部、最も好ましくは0.2〜2部である。
上記および以下において、部は、特に記載のない限り質量部を意味する。
【0046】
本発明のポリウレタン樹脂を製造する際、必要に応じて添加剤(D)を用いることができる。
(D)のうちラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物(例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタンなど)、有機過酸化物(例えばジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、過酸化物とジメチルアニリンとの組み合わせ(レドックス触媒)などの水溶性ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0047】
その他の添加剤(D)としては、整泡剤(ジメチルシロキサン系、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン系等)、ウレタン化触媒(3級アミン触媒、例えばトリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ジエチルエタノールアミン、N、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジアミノビシクロオクタン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、ビス(ジメチルアミノエチル)エ−テル、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−ウンデセン−7等、および/または金属触媒、例えばオクチル酸第一スズ、ジラウリル酸ジブチル第二スズ、オクチル酸鉛等)、難燃剤(リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステル等)、着色剤(染料、含量等)、可塑剤(フタル酸エステル、アジピン酸エステル等)、有機充填剤(合成短繊維、熱可塑性もしくは熱硬化性樹脂からなる中空微小球等)、抗酸化剤(ヒンダードフェーノー
ル系、ヒンダードアミン系等)、老化防止剤(トリアゾール系、ベンゾフェノン系等)、離型剤(ワックス系、金属石鹸系、またはこれらの混合系)など公知の添加剤の存在下で反応させることができる。また、前記(a)を希釈剤として用いた添加剤〔例えば、アミン系触媒の(a)溶液〕を用いてもよい。
【0048】
活性水素成分(A)100部に対するそれぞれの添加量は、整泡剤は、好ましくは10部以下、更に好ましくは0.01〜7部、特に好ましくは0.05〜5部、最も好ましくは0.1〜3部である。ウレタン化触媒は、好ましくは15部以下、更に好ましくは0.01〜10部、特に好ましくは0.02〜5.0部、最も好ましくは0.1〜3.5部である。ウレタン化触媒の量が10部以下ではウレタン化反応と同時に重合反応を進行させるのが容易であり、0.01部以上では、キュアー性の良好なポリウレタン樹脂得られる。
難燃剤は、好ましくは50部以下、更に好ましくは1〜40部、特に好ましくは3〜30部、最も好ましくは5〜25部である。着色剤は、好ましくは2部以下、更に好ましくは1部以下である。可塑剤は、好ましくは50部以下、更に好ましくは20部以下、特に好ましくは10部以下である。有機充填材は、好ましくは50部以下、更に好ましくは40部以下、特に好ましくは30部以下である。抗酸化剤は、好ましくは1部以下、更に好ましくは0.01〜0.5部である。老化防止剤は、好ましくは1部以下、更に好ましくは0.01〜0.5部である。離型剤は、好ましくは10部以下、更に好ましくは5部以下、特に好ましくは3部以下である。
【0049】
本発明のポリウレタン樹脂の製造方法の一例を示せば以下のとおりである。
まず、活性水素成分(A)、並びに必要により発泡剤(C)および/または添加剤(D)を所定量混合する。次いでポリウレタン発泡機または攪拌機を用いて、この混合物と有機ポリイソシアネート(B)とを急速混合した混合液をモールドに流し入れ、所定時間硬化後、脱型してポリウレタン樹脂を得る。モールドは開放モールド、密閉モールドのどちらでもよく、また常温でも加熱下(例えば30〜80℃)でもよい。ウレタン化反応は、プレポリマー法では各成分を混合した原液の粘度が高くなるためワンショット法が好ましい。
なお、本発明のポリウレタン樹脂は、スラブフォーム、RIM(反応射出成形)法による成形品、およびメカニカルフロス法による発泡ポリウレタン樹脂であってもよい。
【0050】
本発明のポリウレタン樹脂は、(a)および/または(c)のビニル重合性官能基の重合と共に、(a)および/または(b)と(B)とによるポリウレタン形成反応を、反応により得られるビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせることにより得られる、ビニル重合性官能基の重合により形成されたビニル重合鎖部分がポリウレタン形成反応により形成されたポリウレタン鎖部分に架橋された構造を有する樹脂である。ここで、ビニル重合性官能基の重合と共にポリウレタン形成反応をビニル重合鎖部分とポリウレタン鎖部分の架橋が起こる条件下で行わせるということは、ビニル重合性官能基の重合とポリウレタン形成反応とを、少なくとも一部の期間並行して行わせることを意味する。架橋密度を上げて、機械的物性を向上させるためには、一方の反応で硬化して樹脂が形成されてしまう前に、もう一方の反応を開始させて、2つの反応を同時に行わせるのが望ましい。
【0051】
発泡ポリウレタン樹脂の場合の密度は、モールド発泡においては、コア密度が、好ましくは80kg/m以下、更に好ましくは10〜60kg/m、特に好ましくは10〜50kg/m、最も好ましくは10〜45kg/mである。フリー発泡においては、コア密度が、好ましくは50kg/m以下、更に好ましくは10〜40kg/m、特に好ましくは10〜35kg/m、最も好ましくは10〜30kg/mである。
【0052】
本発明のポリウレタン樹脂の芳香環濃度は、難燃性が良好なことから、1.0〜10mmol/gが好ましく、より好ましくは2.0〜10.0mmol/g、更に好ましくは3.0〜8.0mmol/g、特に好ましくは3.2〜6.0mmol/g、最も好ましくは3.5〜5.0mmo/gである。
ポリウレタン樹脂における芳香環濃度は、ポリウレタン樹脂を得るに用いる原料の総質量中の芳香環のモル数で表し、下式で示される。
〔(ポリウレタン樹脂を得るに用いる原料中の芳香環の総数)/(ポリウレタン樹脂を得るに用いる原料の総質量)〕×1000
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0054】
<樹脂中のビニル重合性官能基の濃度 測定方法>
樹脂中のビニル重合性官能基(以下、ビニル重合基とも記載する。)の濃度は、フーリエ変換赤外線吸収分析法(FT−IR、Varian製、660−IRを使用した。)で測定したピーク強度(ピーク面積)を用いて算出した。FT−IRではビニル重合基のピークは896〜935cm-1に検出される。試料のポリウレタン樹脂のビニル重合基のピーク面積をK、試料のポリウレタン樹脂の原料と同じ組成の原料に重合禁止剤であるハイドロキノンを樹脂の原料の合計重量に対し1重量%添加して得られたポリウレタン樹脂のビニル重合基のピーク面積をLとした場合、樹脂中のビニル重合基濃度は以下の式により求められる。
樹脂中のビニル重合基濃度=M×(K/K’)/(L/L’)
ここで、Mは、ポリウレタン樹脂の原料の合計重量に対する原料中のビニル重合基のモル濃度(計算値)を示す。K’は試料のポリウレタン樹脂中の反応に関与しない構造である芳香族のピーク面積(710〜790cm-1)、L’は試料のポリウレタン樹脂の原料と同じ組成の原料に重合禁止剤を過剰量添加して反応させて得られたポリウレタン樹脂中の反応に関与しない芳香族のピーク面積(710〜790cm-1)を示す。
【0055】
<ウレタン樹脂中の芳香環濃度の算出方法>
上記記載の式により求めた。
【0056】
下記の実施例1〜20、比較例1〜6における発泡ポリウレタン樹脂の原料は次の通りである。
(1)ビニル重合性官能基含有活性水素化合物(a)
(a1)シュークロースとアクリル酸を反応させた、水酸基価が748で分子内のビニル重合性官能基が4.4mmol/gのビニル重合性官能基含有活性水素化合物
(a2)シュークロースとメタクリル酸を反応させた、水酸基価が953で、分子内のビニル重合性官能基が2.4mmol/gのビニル重合性官能基含有活性水素化合物
(a3)ソルビトールとアクリル酸を反応させた、水酸基価が282で、分子内のビニル重合性官能基が2.4mmol/gのビニル重合性官能基含有活性水素化合物
(a4)ペンタエリスリトールとアクリル酸を反応させた、水酸基価が86で、分子内のビニル重合性官能基が10.8mmol/gのビニル重合性官能基含有活性水素化合物
【0057】
(2)ビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物(c)
(c1)ペンタエリスリトールとアクリル酸を反応させた、水酸基価が0で、分子内のビニル重合性官能基が11.4mmol/gのビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない化合物
(3)ビニル重合性官能基を有しない活性水素化合物(b)
(b1)トルエンジアミンにEO2.2モルとPO3.9モルをブロック付加させた水酸基価499のポリエーテルポリオール
(b2)グリセリンにPO2.7モルを付加させた水酸基価673のポリエーテルポリオール
(b3)エチレンジアミンにEO2.7モルとPO2.1モルをブロック付加させた水酸基価748のポリエーテルポリオール
(b4)エチレンジアミンにEO4.8モルとPO4.0モルをブロック付加させた水酸基価449のポリエーテルポリオール
(b5)トルエンジアミンにPO7.7モルを付加させた水酸基価395のポリエーテルポリオール
(b6)エチレンジアミンにPO4.1モルを付加させた水酸基価748のポリエーテルポリオール
(b7)トルエンジアミンにEO3.0モルとPO5.2モルをブロック付加させた水酸基価405のポリエーテルポリオール
【0058】
(4)発泡剤(C)
(C1)水
(C2)シクロペンタン
(C3)HCFC−141b
(C4)HFC−245fa
(C5)HFC−365mfc
【0059】
(5)添加剤(D)
(D1)トリクロロプロピルフォスフェート(第八化学(株)社製)
(D2)アミン触媒A(サンアプロ(株)社製MS−181)
(D3)アミン触媒B(サンアプロ(株)社製MS−177)
(D4)触媒C(サンアプロ(株)社製DABCO K−15)
(D5)ポリエーテルシロキサン重合体(東レダウコーニング(株)社製「SH−193」)
(D6)ラジカル重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)社製「パークミルD」)
(6)有機ポリイソシアネ−ト(B)
(B1)粗製MDI(日本ポリウレタン工業(株)社製「MR−200」)、NCO%=31.0
【0060】
〔実施例1〜20、比較例1〜6〕
実施例1〜20、比較例1〜6の発泡ポリウレタン樹脂の製造方法は、以下のとおりである。
まず、25±5℃に温調した活性水素成分(A)と発泡剤(C)、および整泡剤やウレタン化触媒等の添加剤(D)を所定量混合した。この混合物に25±5℃に温調した有機ポリイソシアネート(B)を所定のNCO INDEXとなるよう加えて、攪拌機[ホモディスパー:特殊機化(株)社製]にて4000rpm×6秒間急速混合し、混合液をすみやかに25℃の240×240×240mmの天蓋のないアルミ製の箱に流し入れ、フリー発泡をさせて発泡ポリウレタン樹脂を得た。
【0061】
各実施例および比較例により得られた発泡ポリウレタン樹脂の、コア密度、圧縮硬さ、樹脂中のビニル重合基濃度、および燃焼性(燃焼距離、燃焼貫通までの時間)の測定結果を表1および表2に示す。
<コア密度の測定方法>
上記方法で成形した後、温度25℃、湿度60%にて1日養生したものを、成形品の中央部から50(長さ)×50(幅)×50(高さ)mmのサンプル片を4個得た。このサンプル片について、JIS A 9511(1995年度版)のコア密度の試験法に基づいて測定した。
【0062】
<圧縮硬さの測定方法>
コア密度の測定を行ったサンプル片について、JIS A 9511(1995年度版)の圧縮硬さの試験法に基づいて測定した。
【0063】
<燃焼性(燃焼距離)の測定方法>
成形品の中央部から150(長さ)×50(幅)×13(高さ)mmのサンプル片を5個得、JIS A 9511(1995年度版)の燃焼性試験の試験法に基づき燃焼性を測定した。
【0064】
<燃焼性(燃焼貫通までの時間)の測定方法>
上記方法で得たポリウレタン樹脂は、温度25℃、湿度60%にて1日養生したものを成形品の中央部から200(幅)×300(長さ)×30(幅)mmのサンプル片を3個得、その密度(コア密度)を測定し、その後、トーチバーナーにてサンプル片に火炎を当て下記方法にて燃焼性を測定した。
火炎を当てた時間から火炎がサンプル片の裏側まで貫通する時間を[燃焼貫通までの時間(秒)]を計測した。トーチバーナーの火口からサンプル片までの距離は100mmとし、トーチバーナーの火炎距離は約150mmとする。火炎温度は約1200〜1500℃のものを使用した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表1〜3に示されるように、本発明のポリウレタン樹脂は、少量の難燃剤でも燃焼性に優れた樹脂であり、且つ同じ平均水酸基価のポリオールを用いた場合での対比では、従来のものより圧縮硬さに優れた樹脂である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のポリウレタン樹脂は、難燃性に優れ、圧縮硬さにも優れ強度が高いことから、例えば冷蔵庫や冷凍庫、建築用断熱剤等の用途に広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂中のビニル重合性官能基の濃度が0.05〜6mmol/gであることを特徴とする非発泡または発泡ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
非発泡または発泡ポリウレタン樹脂が、活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られ、(A)中に、活性水素含有基と下記一般式(1)で示されるビニル重合性官能基を有し、下記(a1)〜(a3)から選ばれる1種以上の活性水素化合物(a)、および必要によりビニル重合性官能基を有し、活性水素含有基を持たない1種以上の化合物(c)を含有するか、または、(a)および/もしくは(c)とビニル重合性官能基を有しない1種以上の活性水素化合物(b)とを含有する樹脂である請求項1記載のポリウレタン樹脂。
(a1)ポリオールの不飽和カルボン酸部分エステルまたは部分不飽和アルキルエーテル
(a2)アミンの不飽和カルボン酸部分アミド化物または部分不飽和アルキル化物
(a3)ポリチオールの不飽和カルボン酸部分チオエステルまたは部分不飽和アルキルチオエーテル
【化1】

[式中Rは、水素、炭素数1〜15のアルキル基、または炭素数6〜21のアリール基を表す。]
【請求項3】
活性水素化合物(a)の活性水素価が10〜1800である請求項2記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
活性水素成分(A)中の活性水素化合物(a)と化合物(c)の合計と活性水素化合物(b)の質量比が、〔(a)+(c)〕:(b)=0.5:99.5〜100:0である請求項2または3記載のポリウレタン樹脂。
【請求項5】
有機ポリイソシアネート(B)が、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、並びにそれらの変性物から選ばれる1種以上を主成分とする請求項2〜4のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項6】
芳香環濃度が1〜10mmol/gである請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項7】
ビニル重合性官能基の重合により形成されたビニル重合鎖部分がポリウレタン形成反応により形成されたポリウレタン鎖部分に架橋された構造を有する請求項2〜6のいずれか記載のポリウレタン樹脂。
【請求項8】
発泡剤(C)の存在下に活性水素成分(A)と有機ポリイソシアネート(B)を反応させて得られる発泡ポリウレタン樹脂である請求項2〜7のいずれか記載のポリウレタン樹脂。

【公開番号】特開2010−31242(P2010−31242A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130306(P2009−130306)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】