説明

ポリエステルの製造方法

【課題】重合触媒や色相調整剤に起因した異物の発生や成形時の金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性・色相が優れ、高温溶融時の色相悪化が改善されたポリエステルの製造方法を提供する。
【解決手段】エステル化またはエステル交換反応させた後重合反応器内を減圧にして重縮合反応してポリエステルを製造する方法において、式(1)、(2)を満たすアルキレングリコール溶液として調整したチタン化合物と、式(3)、(4)を満たすアルキレングリコール溶液として調整した色相調整剤を、ポリエステルが目標とする重合度に到達するまでに添加し、リン化合物を重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)0.1≦T/W≦1.5
(2)0.01≦W≦1.0
(3)0.01≦C/W≦1.0
(4)0.01≦W≦1.0
[T:溶液中のチタン原子濃度(重量%)、W:同溶液中の水分量(重量%)、C:溶液中の色相調整剤濃度(重量%)、W:同溶液中の水分量(重量%)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色相、熱安定性に優れたポリエステルの製造方法に関するものである。更に詳しくは、重合時に使用した触媒や色相調整剤に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性・色相が優れ、高温溶融時の色相悪化が飛躍的に改善されたポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、医療用に用いられている。その中でも、汎用性、実用性の点でポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。
一般にポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製造されるが、高分子量のポリマーを製造する商業的なプロセスでは、重縮合触媒としてアンチモン化合物が広く用いられている。しかしながら、アンチモン化合物を含有するポリマーは以下に述べるような幾つかの好ましくない特性を有している。
例えば、アンチモン触媒を使用して得られたポリマーを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触媒残渣の堆積が生じるのは、ポリマー中のアンチモン化合物が口金近傍で変成し、一部が気化、散逸した後、アンチモンを主体とする成分が口金に残るためであると考えられている。また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は比較的大きな粒子状となりやすく、異物となって成形加工時のフィルターの濾圧上昇、紡糸の際の糸切れあるいは製膜時のフイルム破れの原因になるなどの好ましくない特性を有しており、操業性を低下させる一因となっている。
上記のような背景からアンチモンを含有しないポリエステルが求められている。そこで、重縮合触媒の役割をアンチモン系化合物以外の化合物に求める場合、ゲルマニウム化合物が知られているが、ゲルマニウム化合物は埋蔵量も少なく希少価値であることから汎用的に用いることは難しい。
この問題に対して重合用触媒としてチタン化合物を用いる検討が盛んに行われている。チタン化合物はアンチモン化合物に比べて触媒活性が高いため、少量の添加で所望の触媒活性を得ることができるため、異物粒子の発生や口金汚れを抑制することができる。しかし、チタン化合物を重縮合触媒として用いると、その活性の高さゆえに熱分解反応や酸化分解反応などの副反応も促進するため、熱安定性が悪くなりポリマーが黄色く着色するという課題が生じる。ポリマーが黄色味を帯びるということは、例えばポリエステルを繊維として用いる場合、特に衣料用繊維では商品価値を損なうので、好ましくない。かかる問題に対して、チタン化合物とともにリン化合物を添加することでポリマーの熱安定性や色相を向上させる検討が広くなされている。この方法は、リン化合物により高すぎるチタンの活性を抑制して、ポリマーの熱安定性や色相を向上させるというものである。例えば、チタン化合物を触媒として用いるポリエステルの製造方法において、リン化合物としてホスファイト化合物やホスフェート化合物を添加する方法(特許文献1)や、リン化合物としてホスホナイト化合物やホスホネート化合物を添加する方法(特許文献2)について明示されている。しかしながら、これらの方法を用いると、確かにポリマーの熱安定性に一定の向上は見られるものの、一定量以上のリン化合物を加えるとチタン化合物の重合活性が抑えられ過ぎて、目標の重合度まで到達しなかったり、重合反応時間が遅延するので結果としてポリマーの色相が悪化するといった問題が発生した。また、チタン化合物と特定のリン化合物とを反応させて得られた生成物、あるいは、チタン化合物と特定のリン化合物の未反応混合物あるいは反応生成物を、それぞれポリエステル製造用触媒として使用することも検討されている(特許文献3〜5)。この検討においても、ポリエステルの色相や熱安定性は一定の改善を得ることが出来るが、依然としてリン化合物の添加量が多いときには触媒の失活が起こったり、リン化合物が少ない場合には熱安定性が十分ではなかった。上記の通り、チタン化合物の重合反応活性を損なうことなく、熱安定性を向上させるために副反応を抑制するという矛盾した課題を解決する必要があった。
この課題に対して、我々の研究グループでは、リン化合物を重縮合反応後半に添加することにより、重合時間の遅延無く、熱安定性・色相を改善出来ることを見出した(特許文献6)。この方法によれば、汎用用途のポリエステルではチタン触媒における欠点をほぼ克服することが出来るが、より黄色味に厳しい衣料用途や高い熱安定性を求められる産業資材用途では問題となる場合があった。
一方ポリエステルの色相をより改善する試みとしては染料を添加したポリエステルが開示されている(特許文献7)が、色相明度が下がるためにくすんだ色合いとなったり、添加条件によっては異物が発生するなどの課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−100680号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−15630号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−290290号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2006−176625号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2008−63486号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】特開2008−111088号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2007−284556号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は上記従来の問題を解消、つまり、触媒や色相調整剤に起因した異物の発生や成形時における金型汚れが低減し、従来品に比べてポリマーの熱安定性、色相が飛躍的に優れたポリエステルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後重合反応器内を減圧にして重縮合反応してポリエステルを製造する方法において、式(1)、(2)を満たすアルキレングリコール溶液として調整したチタン化合物と、式(3)、(4)を満たすアルキレングリコール溶液として調整した色相調整剤を、ポリエステルが目標とする重合度に到達するまでに添加し、リン化合物を重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)0.1≦T/W≦1.5
(2)0.01≦W≦1.0
(3)0.01≦C/W≦1.0
(4)0.01≦W≦1.0
[T:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中のチタン原子濃度(重量%)、W:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)、C:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の色相調整剤濃度(重量%)、W:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)]
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来品に比べて飛躍的に色相と熱安定性が向上したポリエステルを得ることができる。このポリエステルは、繊維用、フイルム用、ボトル用等の成形体の製造において、色相悪化、口金汚れ、濾圧上昇、糸切れ等の問題を解消できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後、重縮合させ合成されるものである。
このような製造方法により得られるポリエステルとして具体的には、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート等が挙げられる。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポリエチレンテレフタレートまたは主としてエチレンテレフタレート単位を含むポリエステル共重合体において好適である。
本発明のポリエステルの製造方法は、チタン化合物を重縮合触媒として用いることが必須である。チタン化合物としては特に限定されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば、酢酸チタンやテトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられる。チタン化合物としてより好ましいのは、一般式(I)で表わされる化合物、又は一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸若しくは無水物とを反応させた生成物、一般式(I)で表わされる化合物と一般式(III)、(IV)、(V)で表されるリン化合物の少なくとも1種とを反応させた生成物、一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸若しくは無水物とを反応させた生成物と一般式(III)、(IV)、(V)で表されるリン化合物の少なくとも1種とを反応させた生成物、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つをキレート剤とするチタン錯体化合物を用いることである。
【0008】
【化1】

【0009】
[式(I)中、R、R、R及びRはそれぞれ互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、pは1〜4の整数を示し、かつpが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、互いに異なっていてもよい。]
【0010】
【化2】

【0011】
[式(II)中、qは2〜4の整数を表わす。]
【0012】
【化3】

【0013】
[式(III)中、rは1又は2を表し、sは0又は1を表し、但しrとsとの和は1又は2であり、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し、rが2を表す場合、2個のR基は、互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。式(IV)中、u及びvは1〜3の整数、tは2以上の整数を表し、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。式(V)中、RおよびRは同一又は異なった炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Xは、−CH2−又は−CH(Y)−を表す。]
一般式(I)で表わされるチタン化合物は、テトラアルコキサイドチタン及び/又はテトラフェノキサイドチタンなどが挙げられ、R〜Rが炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基であれば特に限定されないが、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン又はテトラフェノキシチタンなどが好ましく用いられる。また、かかるチタン化合物と反応させる一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸若しくはピロメリット酸又はこれらの無水物が好ましく用いられる。一般式(I)で表されるチタン化合物と一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物とを反応させる場合には、溶媒に芳香族多価カルボン酸又はその無水物の全部又は一部を溶解し、これにチタン化合物を滴下し、0〜200℃の温度で30分以上反応させれば良い。また必要に応じてチタン化合物滴下後、残りの芳香族多価カルボン酸又はその無水物を加えればよい。チタン化合物(I)と式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比には限定はない。しかし、チタン化合物(I)の割合が高すぎると、得られるポリエステルの色相が悪化したり、軟化点が低下したりすることがあり、逆にチタン化合物(I)の割合が低すぎると重縮合反応が進みにくくなることがある。このため、チタン化合物(I)と式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応モル比は、2/1〜2/5の範囲内にコントロールされることが好ましい。この反応によって得られる反応生成物を、重縮合触媒として用いても良く、またさらに一般式(III)〜(V)で表されるリン化合物と反応させてもよい。リン化合物と反応させる場合は、反応性生物をそのままリン化合物との反応に供してもよく、あるいはこれを、アセトン、メチルアルコール及び/又は酢酸エチルなどからなる溶剤を用いて再結晶して精製した後リン化合物と反応させてもよい。
一般式(III)で表されるリン化合物は、Rが未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表しているが、この置換基としては、例えば、カルボキシル基、アルキル基、ヒドロキシル基及びアミノ基などを包含する。例えば、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシルフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸などから選ばれる。チタン化合物(I)とリン化合物(III)を反応させる場合、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(III)と反応させる場合は、例えばリン化合物(III)と溶媒とを混合してリン化合物の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(I)を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に10分間以上、好ましくは15〜150℃の温度に30〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、又は減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれであってもよく、通常常圧下が行われる。この時、リン化合物の調製に用いられる溶媒は、リン化合物(III)の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、及びキシレン等から選ばれた少なくとも1種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。この調製反応において、反応系中のチタン化合物(I)とリン化合物(III)の配合割合、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(III)との配合割合は、得られる反応生成物に含まれるチタン化合物のチタン原子換算モル量(mT)と、リン化合物のリン原子換算モル量(mPIII)に対する反応モル比mT:mPIIIが1:1〜1:4の範囲になるように設定されることが好ましい。より好ましい反応モル比はmT:mPIIIは1:1〜1:3である。
チタン化合物(I)とリン化合物(III)の反応生成物、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(III)の反応生成物は、反応生成物を反応系から遠心沈降処理又は濾過などの手段により分離した後、又は分離することなくそれをそのまま用いてもよく、或は、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/又は水などにより再結晶し精製した後用いてもよい。
一般式(IV)で表されるリン化合物は、uがより大きい化合物が好ましい。これらのリン化合物は単一種を用いても複数種を併用して用いても良い。特に工業的に生産されており入手が容易という点で、エチレングリコールアシッドホスフェート(式(IV)において、t=2、u=1、v=1または2の化合物に対応する。)が好ましい。チタン化合物(I)とリン化合物(IV)とを反応、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(IV)とを反応させる場合は、アルキレングリコールを溶媒として加熱することにより製造することができる。この際チタン化合物(I)、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(IV)のグリコール溶液を混合し加熱すると、チタン化合物とリン化合物が反応し、その反応生成物はグリコール中に懸濁物として得られる。ここで用いるグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール又はシクロヘキサンジメタノールを例示することができる。溶媒として用いるアルキレングリコールには、その後製造したその触媒を用いて製造するポリエステルの原料と同じグリコールを使用することが好ましい。反応温度は、常温では反応が不十分であったり、反応に過大に時間を要する問題があるため、通常50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は1分〜4時間で完結させるのが好ましい。例えば、アルキレングリコールとしてエチレングリコールを用いる場合15℃〜150℃が好ましく、ヘキサメチレングリコールを用いる場合100℃〜200℃が好ましい範囲であり、反応時間は30分〜2時間がより好ましい範囲となる。反応温度が高すぎたり、時間が長すぎると、触媒の劣化が起こるため好ましくない。この調製反応において、反応系中のチタン化合物(I)とリン化合物(IV)の反応生成物の配合割合、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(IV)との配合割合は、得られる反応生成物に含まれるチタン化合物のチタン原子換算モル量(mT)と、リン化合物のリン原子換算モル量(mPIV)に対する反応モル比mT:mPIVが1:1.5〜1:2.5の範囲になるように設定されることが好ましい。より好ましい反応モル比はmT:mPIVは1:1.7〜1:2.3である。一方1.5未満では未反応チタン化合物が多く存在し、逆に2.5以上では、過剰な未反応のリン化合物の存在が多く存在してしまう。
一般式(V)で表されるリン化合物は、ホスホン酸のジメチル−、ジエチル−、ジプロピル−及びジブチルエステルが挙げられ、具体的にはカルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボプトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸等が挙げられる。リン化合物(V)は、通常安定剤として使用されリン化合物に比較し、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行する為、チタン化合物の触媒活性が、重縮合反応中における持続時間も長く、結果としてポリエステルへの添加量が少なくでき、また、本特許のように触媒に対し多量安定剤を添加する場合でも、ポリエステルの重合活性を損ないにくい特性を有している。チタン化合物(I)とリン化合物(V)、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(V)と反応させる場合は、例えばリン化合物(V)と溶媒とを混合してリン化合物の一部又は全部を溶媒中に溶解し、この混合液にチタン化合物(I)、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物を滴下し、反応系を0℃〜200℃の温度に10分間以上、好ましくは15〜150℃の温度に30〜90分間、加熱することによって行われる。この反応において、反応圧力については格別の制限はなく、加圧下(0.1〜0.5MPa)、常圧下、又は減圧下(0.001〜0.1MPa)のいずれであってもよく、通常常圧下が行われる。この時、リン化合物の調製に用いられる溶媒は、リン化合物(V)の少なくとも一部を溶解し得る限り格別の制限はないが、例えば、エタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン、及びキシレン等から選ばれた少なくとも1種からなる溶媒が好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。この調製反応において、反応系中のチタン化合物(I)とリン化合物(V)との配合割合、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(V)との配合割合は、得られる反応生成物に含まれるチタン化合物のチタン原子換算モル量(mT)と、リン化合物のリン原子換算モル量(mPV)に対する反応モル比mT:mPVが1:1〜1:4の範囲になるように設定されることが好ましい。より好ましい反応モル比はmT:mPVは1:1〜1:3である。チタン化合物(I)とリン化合物(V)の反応生成物、またはチタン化合物(I)と芳香族多価カルボン酸化合物(II)との反応生成物とリン化合物(V)の反応生成物は、反応生成物を反応系から遠心沈降処理又は濾過などの手段により分離した後、又は分離することなくそれをそのまま用いてもよく、或は、この分離された反応生成物を、再結晶剤、例えばアセトン、メチルアルコール及び/又は水などにより再結晶し精製した後用いてもよい。
チタン化合物のキレート剤としては、多価カルボン酸として、フタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸として、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられ、含窒素カルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても併用して用いてもよい。
本発明のポリエステルの製造方法は、重縮合触媒として用いるチタン化合物を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で0.1〜50質量ppmとなるように添加することが好ましい。0.5〜20質量ppmであるとポリマーの色相や熱安定性がより良好となり好ましく、更に好ましくは1〜15質量ppmである。艶消し剤の目的で添加する酸化チタン粒子は、重縮合触媒としての働きはないため除かれる。
本発明のポリエステルの製造方法は、式(1)、(2)を満たすアルキレングリコール溶液として調整したチタン化合物と、式(3)、(4)を満たすアルキレングリコール溶液として調整した色相調整剤を添加することが必須である。
(1)0.1≦T/W≦1.5
(2)0.01≦W≦1.0
(3)0.01≦C/W≦1.0
(4)0.01≦W≦1.0
[T:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中のチタン原子濃度(重量%)、W:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)、C:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の色相調整剤濃度(重量%)、W:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)]
チタン化合物を式(1)、(2)を満たすアルキレングリコール溶液として添加することにより、触媒活性が安定するために重合反応が安定する。また色相調整剤を式(3)、(4)を満たすアルキレングリコール溶液として添加することにより、異物の発生が抑制され、色相が改善したポリエステルを得ることが出来る。本発明における「アルキレングリコール溶液」とは、チタン化合物、色相調整剤が、アルキレングリコール中に一部又は全部が溶解している状態、または分散、懸濁、スラリー化している状態を表す。式(1)、(2)の範囲から外れると、アルキレングリコール溶液中に白色異物が発生することがあり、この白色異物による仕込みラインの閉塞、仕込み精度の悪化、重合反応性の低下等の問題を引き起こすことがある。また、式(3)、(4)の範囲から外れると、アルキレングリコール溶液中に白色異物が発生することがあり、この白色異物による仕込みラインの閉塞、仕込み精度の悪化、異物の発生等の問題を引き起こすこととなる。式(9)〜(12)を満たすことがより好ましい。
(9)0.2≦T/W≦1.0
(10)0.04≦W≦0.9
(11)0.05≦C/W≦0.7
(12)0.04≦W≦0.9
この時用いられるアルキレングリコールは、格別の制限はないが、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール等から選ばれた少なくとも1種から好ましく用いられる。特に、最終的に得ようとするポリエステルを構成しているグリコール成分と同一の化合物を溶媒として用いることが好ましい。またチタン化合物、色相調整剤のアルキレングリコール溶液は、それぞれ別々に添加しても良く、混合後に一括して添加しても良い。
尚、本発明における「色相調整剤」とは、有機の多芳香族環系染料又は顔料を表す。すなわち、コバルト、チタン、クロム、鉄、亜鉛などの金属化合物は、本発明における「色相調整剤」には含まれない。具体的には後述のように青色系整色用色素、紫色系整色用色素、赤色系整色用色素、橙色系整色用色素等が挙げられる。これらは単一種で用いても複数種を併用して用いても良い。後述のような可視光吸収スペクトルに関する要件を満たしやすい点において、複数種を併用することが好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、チタン化合物のアルキレングリコールの溶液調製濃度(T)が、0.01〜10質量%であることが好ましい。チタン化合物のアルキレングリコールの溶液調製濃度(T)が上記範囲内より少ないと、ポリエステルに添加するアルキレングリコール量が多くなりすぎてコストの上昇につながり、上記範囲内より多いとアルキレングリコール量が少なくなるためチタン化合物の添加量の調整が難しくなる。チタン化合物のアルキレングリコールの溶液調製濃度(T)は0.03〜5質量%の範囲が好ましく、0.05〜1質量%の範囲が更に好ましい。
色相調整剤のアルキレングリコールの溶液調製濃度(C)は、0.01〜1質量%であることが好ましい。色相調整剤のアルキレングリコールの溶液調製濃度(C)が上記範囲内より少ないと、ポリエステルに添加するアルキレングリコール量が多くなりすぎてコストの上昇につながり、上記範囲内より多いとアルキレングリコール量が少なくなるため色相調整剤の添加量の調整が難しくなる。色相調整剤のアルキレングリコールの溶液調製濃度(C)は0.03〜0.5質量%の範囲が好ましく、0.05〜0.3質量%の範囲が更に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、色相調整剤を0.1〜20質量ppm添加することが好ましい。色相調整剤の添加量が、0.1〜20質量ppmの範囲の時、明度が高く、また黄色味を抑えられたポリエステルが得られるため好ましい。より好ましくは、0.3質量ppm〜10質量ppmの範囲であり、さらに好ましくは0.5質量ppm〜8質量ppmの範囲である。
本発明のポリエステルの製造方法は、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、まずテレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させる、又はテレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸成分の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させ、ジカルボン酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱し、所定の重合度に到達するまでにリン化合物を添加した後、所定の重合度になるまで重縮合反応させることによって目的とするポリエステルが製造される。重縮合反応時には、発生するアルキレングリコール成分を系外に留去するために、最終的に高減圧にすることが好ましい。ポリエステルの重縮合反応は平衡反応であるため、アルキレングリコールを系外に留去することは高分子量ポリエステルを効率良く得るために重要である。最終的に到達する圧力としては、1〜100Paにすることが好ましく、1〜50Paであることがより好ましい。しかしながら本発明で添加する色相調整剤は、反応系内を高減圧にすると、発生するアルキレングリコールとともに反応系外に留去されてしまう場合がある。色相調整剤がアルキレングリコールとともに反応系外へ留去してしまうと、色相調整剤が所望量ポリエステルに含有されなくなり得られるポリエステルの色相が変ってしまうため、また経済的にもコスト上昇につながるため好ましくない。また、反応系外に留去されたアルキレングリコールは、コンデンサーにて濃縮後に精製してポリエステルの製造に再び使用する場合があるが、その時に色相調整剤が多量に含まれると色相を大きく変えてしまったり、異物となってポリエステルの品質を大きく損ねてしまう場合がある。色相調整剤の残存率(色相調整剤の残存率=ポリマー中の色相調整剤の含有量/色相調整剤の添加量×100(%))が50%〜100%の範囲であることが、上述の課題を回避出来るため好ましい。より好ましくは60%〜100%の範囲であり、特に好ましくは70%〜100%の範囲である。色相調整剤のアルキレングリコール溶液を上述する調整濃度で調整し、また調整後、ポリエステル製造工程に投入されるまでに100℃〜180℃の範囲に保持することにより、色相調整剤の系外への留去を極めて抑えることが出来る。この効果は詳しいことは分かっていないが、上述の濃度、温度で色相調整剤を調整することにより、色相調整剤とアルキレングリコール溶液の相溶性を向上させるために起こっているものと推定している。色相調整剤のアルキレングリコール溶液のポリエステル製造工程に投入されるまでに保持される温度は、110〜170℃の範囲が好ましく、120〜160℃の範囲が更に好ましい。
また本発明における、「ポリエステル製造工程に投入されるまでに」とは、色相調整剤をアルキレングリコール溶液に調整する段階、アルキレングリコール溶液で保管する段階、ポリエステル製造工程に投入する段階と3つに分けた場合に、少なくとも保管する段階及びポリエステル製造工程に投入する段階で上述の温度に保持されていることを表す。またその保持時間は少なくとも5分以上が好ましく、より好ましくは15分以上、最も好ましくは20分以上である。またより好ましくは色相調整剤をアルキレングリコール溶液に調整する段階、アルキレングリコール溶液で保管する段階、ポリエステル製造工程に投入する段階の全ての段階において100〜180℃の温度に保持されていることである。前記の色相調整剤をアルキレングリコール溶液で保管する段階においては、流速10m/分以上の流速で循環或いは攪拌している事が好ましい。流速10m/分未満の場合、未溶解の色相調整剤が沈降する可能性があり好ましくない。前記色相調整剤溶液又は分散液の保持は流速15〜100m/分の範囲が更に好ましい。流速は例えば以下のようにして算出・制御することができる。色相調整剤溶液又は分散液が循環している場合には、循環している配管の途中に流速計を設置することにより、色相調整剤溶液又は分散液が攪拌されている場合には、水平方向が円形の攪拌槽を用いている場合には、攪拌翼の回転数、攪拌槽直径等から適宜算出することができる。
チタン化合物の添加時期は、ポリエステルの製造工程における重縮合反応工程が終了するまでの任意の段階で添加されることが必須である。エステル化反応触媒やエステル交換反応触媒としてジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体などの原料添加直後に触媒を添加する方法や、原料と同伴させて触媒を添加する方法があるが、重縮合反応触媒として添加する場合は、実質的に重縮合反応開始前であればよく、エステル化反応やエステル交換反応の前、あるいは該反応終了後、重縮合反応触媒が開始される前に添加してもよい。
色相調整剤の添加時期は、ポリエステルの製造工程における重縮合反応工程が終了するまでの任意の段階で添加されることが必須である。ポリエステルを所望の重合度に作成した後に溶融混練などで色相調整剤をポリエステルに添加する方法は、コストアップにつながるため、本願には含まれない。エステル化反応若しくはエステル交換反応が終了した後に色相調整剤を添加することが特に好ましい。
さらにその色相調整剤は、濃度20mg/Lのクロロホルム溶液について光路長1cmにおいて波長380〜780nm領域の可視光吸収スペクトルを測定したとき、最大吸収波長が540〜650nmの範囲にあり、且つ該最大吸収波長における吸光度に対する各波長での吸光度の割合が数式(5)〜(8)のすべてを満たすと、得られるポリエステルの色相の明度が高く、黄色味が抑えられるため好ましい。
0.00≦A400/Amax≦0.20(5)
0.10≦A500/Amax≦0.70(6)
0.55≦A600/Amax≦1.00(7)
0.00≦A700/Amax≦0.05(8)
[式(5)〜(8)中、A400、A500、A600及びA700はそれぞれ波長400nm、500nm、600nm及び700nmでの可視光吸収スペクトルにおける吸光度を、Amaxは最大吸収波長での可視光吸収スペクトルにおける吸光度を表す。]
ここで可視光吸収スペクトルとは、通常分光光度計によって測定されるスペクトルであるが、本発明の製造方法により得られるポリエステルに含有される色相調整剤溶液の可視光吸収スペクトルの最大吸収波長が540nm未満の場合は得られるポリエステルの赤味が強くなり、また650nmを超える場合は得られるポリエステルの青味が強くなる為好ましくない。最大吸収波長の範囲は545〜595nmの範囲が好ましく、550〜590nmの範囲が更に好ましい。
好ましくは式(5)〜(8)を全て満たしさらに式(13)〜(16)のいずれか1つ以上を満たすことであり、さらに好ましくは式(5)〜(8)、式(13)〜(16)すべてを満たすことである。
0.00≦A400/Amax≦0.15(13)
0.30≦A500/Amax≦0.60(14)
0.60≦A600/Amax≦0.95(15)
0.00≦A700/Amax≦0.03(16)
[式(13)〜(16)中、A400、A500、A600及びA700はそれぞれ波長400nm、500nm、600nm及び700nmでの可視光吸収スペクトルにおける吸光度を、Amaxは最大吸収波長での可視光吸収スペクトルにおける吸光度を表す。]
本発明に使用する色相調整剤は、窒素雰囲気下中、昇温速度10℃/分の条件で熱天秤にて測定したときの質量減少開始温度が250℃以上である整色用色素から選ばれることが好ましい。ここで、熱天秤で測定したときの質量減少開始温度とは、JISK−7120に記載の質量減少開始温度(T1)のことであり、色相調整剤が有している熱安定性の指標となる。該質量減少開始温度が250℃未満である場合、色相調整剤の熱安定性が不十分であることから最終的に得られるポリエステルの着色の原因となり好ましくない。該質量減少開始温度は300℃以上であることが更に好ましい。またポリエステルが溶融状態にある温度下で分解しないことが更に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法においては、色相調整剤として青色系色相調整用色素と紫色系色相調整用色素を質量比90:10〜40:60の範囲で併用すること、又は青色系色相調整用色素と赤色系又は橙色系色相調整用色素を質量比98:2〜80:20の範囲で併用することが好ましい。ここで青色系色相調整用色素とは、一般に市販されている色相調整用色素の中で「Blue」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が580〜650nm程度にあるものを示す。同様に紫色系色相調整用色素とは市販されている色相調整用色素の中で「Violet」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が560〜580nm程度にあるものを示す。赤色系色相調整用色素とは市販されている色相調整用色素の中で「Red」と表記されているものであって、具体的には溶液中の可視光吸収スペクトルにおける最大吸収波長が480〜520nm程度にあるものである。橙色系色相調整用色素とは市販されている色相調整用色素の中で「Orange」と表記されているものである。
これらの色相調整用色素としては油溶染料が特に好ましく、具体的な例としては、青色系色相調整用色素には、C.I.SolventBlue11、C.I.SolventBlue25、C.I.SolventBlue34、C.I.SolventBlue35、C.I.SolventBlue36、C.I.SolventBlue45(TelasolBlueRLS)、C.I.SolventBlue55、C.I.SolventBlue63、C.I.SolventBlue70、C.I.SolventBlue78、C.I.SolventBlue83、C.I.SolventBlue87、C.I.SolventBlue94、C.I.SolventBlue104、C.I.SolventBlue117、C.I.SolventBlue122等が挙げられる。紫色系色相調整用色素には、C.I.SolventViolet8、C.I.SolventViolet13、C.I.SolventViolet14、C.I.SolventViolet21、C.I.SolventViolet27、C.I.SolventViolet28、C.I.SolventViolet36、C.I.SolventViolet37、C.I.SolventViolet49等が挙げられる。赤色系色相調整用色素には、C.I.SolventRed24、C.I.SolventRed25、C.I.SolventRed27、C.I.SolventRed30、C.I.SolventRed49、C.I.SolventRed52、C.I.SolventRed100、C.I.SolventRed109、C.I.SolventRed111、C.I.SolventRed121、C.I.SolventRed135、C.I.SolventRed168、C.I.SolventRed179、C.I.SolventRed195等が例示される。橙色系色相調整用色素には、C.I.SolventOrange60等が挙げられる。
ここで青色系色相調整用色素と紫色系色相調整用色素を併用する場合、質量比90:10より青色系色相調整用色素の質量比が大きい場合は、得られるポリエステルのカラーa値が小さくなって緑色を呈し、40:60より青色色相調整用色素の質量比が小さい場合は、カラーa値が大きくなって赤色を呈してくる為好ましくない。同様に青色系色相調整用色素と赤色系又は橙色系色相調整用色素を併用する場合、質量比98:2より青色系色相調整用色素の質量比が大きい場合は、得られるポリエステルのカラーa値が小さくなって緑色を呈し、80:20より青色色相調整用色素の質量比が小さい場合は、カラーa値が大きくなって赤色を呈してくる為好ましくない。該色相調整用色素は、青色系色相調整用色素と紫色系色相調整用色素を質量比80:20〜50:50の範囲で併用すること、あるいは青色系色相調整用色素と赤色系又は橙色系色相調整用色素を質量比95:5〜90:10の範囲で併用することが更に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、重合反応器内の減圧を開始して重縮合反応を開始させてからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物を添加することが必須である。リン化合物を上記の条件にて添加を行うことにより、重合反応が安定し、かつ異物の発生が抑制され、色相が改善したポリエステルを得ることが出来る。通常ポリエステルは、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体に、重縮合触媒の添加を行った後、反応器内を減圧にして重縮合反応を進行させることにより製造される。ポリエステルは、用途・目的によって様々な重合度が求められるため、所望の重合度に到達した時点で反応器内を常圧または加圧にして重縮合反応を停止し、反応器外に吐出する。本発明では、この重合反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物を添加するものである。
本発明のリン化合物を添加する時期は、反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてから重合が実質的に完了するまでの間であればいつ添加しても良いが、ポリエステルの固有粘度が目的とする固有粘度の40〜99%の時期に添加すると、重縮合触媒の失活が極めて少ないまま副反応を抑制できるために好ましい。好ましくは50〜98%の間であり、特に好ましくは、75〜98%の間である。リン化合物を添加する時期におけるポリエステルの固有粘度は、直接サンプリングを行い後述する方法で粘度測定を行って算出しても良いが、反応器の攪拌翼にかかるトルク負荷から算出しても良い。
上記の条件でリン化合物を添加する場合では、エチレングリコール等のジオール成分を多量に持ち込んで添加を行うと、ポリエステルの解重合(ポリエステル主鎖の切断反応)が進行してしまうため、リン化合物を単独で添加するか、高濃度にリン化合物を含有したマスターペレットを添加する方法、高濃度にリン化合物を含有したエチレングリコール等のジオール成分を溶媒として添加する方法が好ましい。この時、リン化合物は、数回に分割して添加してもよく、フィーダーなどで継続的に添加を行っても良い。また、上記のリン化合物の添加方法は、重合系に溶解又は溶融可能でありかつ、本発明で得られる重合体と実質的に同一成分の重合体から成る容器に充填して添加することが好ましい。上記のような容器にリン化合物を入れて添加を行うと、減圧条件下での重合反応器に添加を行うことによって、リン化合物が飛散して、減圧ラインにリン化合物が流出を防止することができるとともに、リン化合物をポリマー中に所望量安定して添加することができる。本発明における「容器」とは、リン化合物がまとめられるものであればよく、例えば、ふたや栓を有する射出成形容器、あるいはシートやフィルムをシールあるいは縫製などで袋状にしたものなどが含まれる。上記の容器は、空気抜きを作ることがさらに好ましい。空気抜きを作った容器にリン化合物を入れて添加すると、真空条件下で重合反応器に添加しても、空気膨張により容器が破裂してリン化合物が減圧ラインに流出したり、重合反応器の上部や壁面に付着することがなく、ポリマー中にリン化合物を所望量添加することができる。この容器の厚さは、厚すぎると溶解、溶融時間が長くかかるため厚さは薄いほうがよいが、リン化合物の封入・添加作業の際に破裂しない程度の厚さを確保する。そのためには10〜500μm厚さで均一で偏肉のないものが好ましい。
重合反応器内の減圧を開始して重縮合反応を開始させてからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間にリン化合物は特に限定されないが、ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナイト化合物、ホスフィネート化合物から選ばれる1種以上の化合物から選ばれることが好ましい。ホスファイト化合物としては、亜リン酸、亜リン酸モノアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルエステル、亜リン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等、亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。ホスフェート化合物としては、リン酸、リン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、リン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、リン酸ナトリウム等が挙げられる。ホスホナイト化合物としては、亜ホスホン酸、亜ホスホン酸モノアルキルエステル、亜ホスホン酸ジアルキルエステル、亜ホスホン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等が挙げられる。ホスホネート化合物としては、ホスホン酸、ホスホン酸モノアルキルエステル、ホスホン酸ジアルキルエステル、ホスホン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、ホスホン酸ナトリウム、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、2−カルボキシフェニルホスホン酸、3−カルボキシフェニルホスホン酸、4−カルボキシフェニルホスホン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスホン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル、エチルホスホン酸ジメチルエステル、エチルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジフェニルエステル、ベンジルホスホン酸ジメチルエステル、ベンジルホスホン酸ジエチルエステル、ベンジルホスホン酸ジフェニルエステル、リチウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ナトリウム(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、マグネシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、カルシウムビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸メチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル等が挙げられる。ホスフィナイト化合物としては、亜ホスフィン酸、亜ホスフィン酸モノアルキルエステル、亜ホスフィン酸ジアルキルエステル、亜ホスフィン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸等が挙げられる。ホスフィネート化合物としては、次亜リン酸、次亜リン酸モノアルキルエステル、次亜リン酸ジアルキルエステル、次亜リン酸トリアルキルエステル、およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。具体的には、次亜リン酸ナトリウム、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、3−カルボキシフェニルホスフィン酸、4−カルボキシフェニルホスフィン酸、2,3−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,6−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,4−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、3,5−ジカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,3,6−トリカルボキフェニルホスフィン酸、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスフィン酸、ビス(2−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3−ジカルボキルシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,6−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(3,5−ジカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,4−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,3,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(2,4,5−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、及びビス(2,4,6−トリカルボキシフェニル)ホスフィン酸、メチルホスフィン酸メチルエステル、ジメチルホスフィン酸メチルエステル、メチルホスフィン酸エチルエステル、ジメチルホスフィン酸エチルエステル、エチルホスフィン酸メチルエステル、ジエチルホスフィン酸メチルエステル、エチルホスフィン酸エチルエステル、ジエチルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸メチルエステル、フェニルホスフィン酸エチルエステル、フェニルホスフィン酸フェニルエステル、ジフェニルホスフィン酸メチルエステル、ジフェニルホスフィン酸エチルエステル、ジフェニルホスフィン酸フェニルエステル、ベンジルホスフィン酸メチルエステル、ベンジルホスフィン酸エチルエステル、ベンジルホスフィン酸フェニルエステル、ビスベンジルホスフィン酸メチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸エチルエステル、ビスベンジルホスフィン酸フェニルエステル等が挙げられる。中でも一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)で表されるリン化合物が好ましい。
【0014】
【化4】

【0015】
[式(VI)中、R、R10、R11はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。a、b、cおよびa+b+cは0〜5の整数、dは0または1を表している。]
【0016】
【化5】

【0017】
[式(VII)中、R12〜R14は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。eは0〜5の整数、fは0または1を表している。]
【0018】
【化6】

【0019】
[式(VIII)中、R15〜R17は、それぞれ独立水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。gは0〜5の整数、hは0または1を表している。]
【0020】
【化7】

【0021】
[式(IX)中、R18〜R19は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表し、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造、脂肪族の分岐構造、フェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。iは0または1を表している。]
(VI)で表されるリン化合物としては、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトが挙げられる。ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトは、アデカスタブPEP−36として旭電化株式会社より入手可能である。ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトは、アデカスタブPEP−24Gとして旭電化株式会社より、またはIRGAFOS126としてチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社より入手可能である。(VII)で表されるリン化合物としては、フェニルホスホナイト、2−カルボキシフェニルホスホナイト、3−カルボキシフェニルホスホナイト、4−カルボキシフェニルホスホナイト、2,3−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,6−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、フェニルホスホナイトジメチル、フェニルホスホナイトジエチル、フェニルホスホナイトジフェニル、フェニルホスホナイトジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホナイトジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホナイトジエチル等のf=0の亜ホスホン酸系化合物、フェニルホスホネート、2−カルボキシフェニルホスホネート、3−カルボキシフェニルホスホネート、4−カルボキシフェニルホスホネート、2,3−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,6−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、フェニルホスホネートジメチル、フェニルホスホネートジエチル、フェニルホスホネートジフェニル、フェニルホスホネートジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホネートジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホネートジエチル等のf=1のホスホン酸系化合物が挙げられる。(VIII)で表されるリン化合物としては、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイトなどのh=0の亜ホスホン酸系化合物、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネートなどh=1のホスホン酸系化合物などが挙げられる。(IX)で表されるリン化合物としては、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイトなどのi=0の亜ホスホン酸系化合物、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラドデシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネートなどのi=1のホスホン酸系化合物などが挙げられる。中でもテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル−5−メチル)[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネートが好ましく用いられる。テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトは、IRGAFOSP−EPQとしてチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社より、またはSandostabP−EPQとしてクラリアント・ジャパン社より入手可能である。テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトは、GSY−P101として大崎工業社より入手可能である。テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネート、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホネートは、城北化学工業株式会社より入手可能である。これらのリン化合物は単独で用いても、2種以上を併用して用いても良い。
重合反応器内の減圧を開始して重縮合反応を開始させてからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に添加するリン化合物の添加量は特に限定されないが、得られるポリエステルに対してリン原子換算で合計して1〜10000質量ppmの範囲であることが好ましい。添加量が上記範囲内であると色相が良好でかつ熱安定性に優れたポリエステルが得られる。より好ましくは1〜1000質量ppmの範囲であり、特に好ましくは10〜500質量ppmの範囲である。
本発明のポリエステルの製造方法において、重合反応器内の減圧を開始する前にリン化合物を添加しても勿論良い。しかしながら重合反応器内の減圧を開始する前にリン化合物の添加を行うと、リン化合物の添加量によっては重合反応系中においてリン化合物によって重縮合触媒であるチタン化合物の活性が抑制されるため、リン化合物の添加量が多いときには重合反応時間の遅延が生じる場合がある。そのため重合反応器内の減圧を開始する前に添加するリン化合物の添加量は、得られるポリエステルに対してリン原子換算で合計して1000質量ppm以下であることが好ましい。この時に用いるリン化合物としては特に限定されないが、一般式(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)で表されるリン化合物が好ましい。
本発明により得られるポリエステルは、真比重5.0以上の金属元素の含有量が0〜10質量ppmであることが好ましい。本発明における「真比重」とは空隙を含まない比重のことをいい、「比重」とは、標準物質(4℃における水)に対するある物質の同体積での質量の比のことをいう。「真比重5.0以上の金属元素」とは、通常ポリエステル中に含有される触媒や金属系の色相調整剤、艶消剤等に含有されている金属化合物に由来するものである。真比重が5.0以上の金属としては、具体的にはアンチモン、ゲルマニウム、マンガン、コバルト、すず、亜鉛、鉛又はカドミウム等があげられ、これらは通常、触媒や金属系の整色剤、添加剤等としてポリエステルに含有されている。その他にも、鉄、ニッケル、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンなどが挙げられる。これに対し、チタン、カルシウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム等はここでいう真比重が5.0以上の金属には該当しない。含有される金属の種類によってその特徴、特性は変わるが、例えばアンチモン金属含有量が10質量ppmより多い場合、溶融紡糸時やフィルムの製膜時に異物となって口金やダイ周辺に付着し、長期間の連続成形性に悪影響を与える。ゲルマニウム金属の場合は、それ自体が高価な為、含有量が多くなると得られるポリエステルの価格が上昇してしまい好ましくない。また、鉛、カドミウムなどの金属場合は金属元素そのものに毒性がある為、ポリエステル中に多量に含有していることは好ましくない。該真比重5.0以上の金属元素の含有量は0〜7質量ppm以下であることが好ましく、0〜5質量ppm以下であることが特に好ましい。
本発明のポリエステルの製造方法は、フェノール系酸化防止剤を添加しても良い。フェノール系酸化防止剤とは、フェノール構造を有したラジカル連鎖反応禁止剤であって、具体的には2,6−t−ブチル−p−クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,8,10−テトラオキサスピロ{5,5}ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、トコフェロール、ペンタエリスリトールーテトラキス[3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。これらフェノール系酸化防止剤を1種または2種以上組み合わせて用いても良い。また、添加量は特に限定されないが、添加する化合物の重量として得られるポリマーに対して通常1質量ppm〜10重量%、好ましくは100質量ppm〜1重量%の範囲である。
本発明のポリエステルの製造方法は、硫黄系酸化防止剤を添加しても良い。硫黄系酸化防止剤とは、過酸化物をラジカルを発生しない形で還元し、自身が酸化される硫黄系酸化防止剤であって、具体的には、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられ、これら硫黄系酸化防止剤を1種または2種以上組み合わせて用いても良い。また、添加量は特に限定されないが、添加する化合物の重量として得られるポリマーに対して通常1質量ppm〜10重量%、好ましくは100質量ppm〜1重量%の範囲である。
本発明の製造方法により得られるポリエステルは、後述する測定方法にて測定したときの固有粘度が、0.3〜1.0dlg−1であるのが好ましい。0.4〜0.8dlg−1であるのがさらに好ましく、0.5〜0.75dlg−1であるのが特に好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリエステルは、チップ形状での色相がハンター値でそれぞれL値が60〜95、a値が−6〜2、b値が−3〜7の範囲にあることが、繊維やフィルムなどの成型品の色相の点から好ましい。さらに好ましいのは、L値が70〜90、a値が−5〜1、b値が−2〜5の範囲である。
本発明の製造方法により得られるポリエステルは、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下290℃で60分間溶融させた後の色相b値の変化、Δb値290が−5〜5の範囲であることが好ましい。この値が小さいほど、熱劣化による分解・着色が少なく熱安定性に優れていることを示す。この値が5を超える場合には、紡糸時や成形加工時にポリマーが変色してしまい品質に重大な影響を与えてしまう。好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
本発明の製造方法により得られるポリエステルは、例えば溶融押出成形等によってフィラメント状に成形した後、延伸、或いは紡糸等を施すことにより繊維として有用なものとなる。このポリエステル繊維を製造する時の製造方法としては特に限定はなく、従来公知の溶融紡糸方法が用いられる。例えば乾燥したポリエステルを270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸の引き取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られる繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻き取りを行うこともできる。また紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、異形、中実、中空などのいずれも採用することが出来る。また延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行う、あるいは巻き取ることなく連続的に行うことによって、延伸糸を得ることができる。繊維の形態としては、芯鞘型複合繊維、芯鞘型複合中空繊維、海島型複合繊維等として使用することができ、任意の割合で構成成分として用いることが出来る。
【実施例】
【0022】
以下本発明をさらに下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
100℃、60分間、オルソクロロフェノールを溶媒として溶解させた希薄溶液を、ウベローデ粘度計を用いて25℃にて測定した。
(2)ポリマーのジエチレングリコール(DEG)含有量
モノエタノールアミンを溶媒として、1,6−ヘキサンジオール/メタノール混合溶液を加えて冷却し、中和した後遠心分離した後に、上澄み液をガスクロマトグラフィ(島津製作所社製、GC−14A)にて測定した。
(3)ポリマーの色相
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L、a、b値)として測定した。
(4)Δb値290
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下290℃で60分間加熱溶融させた後、(3)の方法にて色相を測定し、加熱溶融前後の差をΔb値290として測定した。
(5)重縮合触媒中のチタン、リン原子濃度
調製された触媒のチタン、リン原子濃度の測定において、乾燥した触媒サンプルを走査電子顕微鏡(日立計測器サービス株式会社製S570型)にセットし、これに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA、株式会社堀場製作所製EMAX-7000)を用いて、重縮合触媒中のチタン及びリン原子濃度を求めた。
(6)ポリマー中のチタン、リン、アンチモン、コバルト元素含有量
チップ状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線元素分析装置(理学電機工業社製、System3270)により求めた。すなわち、ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、必要に応じてクロロホルムで該ポリマー溶液の粘性を調製した後、遠心分離器で粒子を沈降させる。その後、傾斜法で上澄み液のみを回収し、アセトン添加によりポリマーを再析出、濾過、洗浄して粒子を除去したポリマーとする。
(7)真比重5.0以上の金属成分定性分析
ポリエステルを硫酸アンモニウム、硫酸、硝酸、過塩素酸とともに混合して約300℃で9時間湿式分解後、蒸留水で希釈し、理学電機工業株式会社製ICP発光分析装置(JY170ULTRACE)を用いて定性分析し、真比重5.0以上の金属元素の有無を確認した。1質量ppm以上の存在が確認された金属元素について、その元素含有量を示した。
(8)ポリマー中の色相調整剤の残存率
色相調整剤の添加有無以外は同一条件にて重縮合反応を行い、色相調整剤の添加有のポリマー・添加無のポリマーの2種類を作成した。この2種類のポリマーをそれぞれ150℃にてオルソクロロフェノールに溶解後、分光光度計(HITACHI社製、U−3000)を用いて吸光度差を測定した。この吸光度差より色相調整剤の含有量を算出し、色相調整剤の残存率を、ポリマー中の色相調整剤の含有量/色相調整剤の添加量×100(%)として算出した。
(9)色相調整剤の質量減少開始温度
理学電機工業株式会社製TAS−200熱天秤を用いてJISK7120に従い、窒素雰囲気下中昇温速度10℃/分で測定した。
(10)アルキレングリコール中の水分量
KF水分率計(京都電子工業(株)製、MKC−210を用いて水の量を測定し、アルキレングルコールに対する質量%として算出した。
(11)口金の堆積物の観察
ポリエステルをチップ化した後、150℃15時間真空乾燥し含水分量を10〜50質量ppmの範囲にした後、紡糸温度285℃、孔径0.18mmφ、孔数16個の紡糸口金から吐出し、1000m/分で72時間紡糸した後の口金孔周辺の堆積物量を、長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認められない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する状態を×として判定した。
参考例1(重縮合触媒Aの合成)
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2質量%)にチタンテトラブトキシドを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめた。その後常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させた。析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥せしめ、目的の化合物を得た。この化合物にエチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Aとした。
参考例2(重縮合触媒Bの合成)
エチレングリコール99重量部と酢酸の1重量部の混合物を撹拌している中にチタンテトラブトキシド6重量部をゆっくり添加し、チタン化合物の透明なエチレングリコール溶液を調製した。このチタン化合物のエチレングリコール溶液を、100℃の温度で撹拌されたフェニルホスホン酸のエチレングリコール溶液(2質量%)に、チタンテトラブトキシド中のチタン原子とフェニルホスホン酸中のリン原子のモル比率が1:2になるようにゆっくり添加した後、100℃に温度を保ったまま1時間撹拌し、白色スラリーを得た。この化合物にエチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Bとした。
参考例3(重縮合触媒C〜Dの合成)
リン化合物を表1の通りに変更した以外は参考例2と同様にして調整した。
参考例4(重縮合触媒Eの合成)
無水トリメリット酸のエチレングリコール溶液(0.2質量%)にチタンテトラブトキシドを無水トリメリット酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で80℃に保持して60分間反応せしめた。その後常温に冷却し、10倍量のアセトンによって生成触媒を再結晶化させた。析出物をろ紙によって濾過し、100℃で2時間乾燥した。得られた化合物をトリエチルホスホノアセテートのエチレングリコール溶液(2質量%)に加え、120℃で60分間撹拌し、白色スラリーを得た。この化合物にエチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Gとした。
参考例5(重縮合触媒F〜Gの合成)
リン化合物を表1の通りに変更した以外は参考例4と同様にして調整した。
参考例6(重縮合触媒H〜Iの合成)
チタン化合物、多価カルボン酸化合物を表1の通りに変更した以外は参考例1と同様にして調整した。
参考例7(重縮合触媒Jの合成)
クエン酸のエチレングリコール溶液(0.1質量%)に、チタンテトラブトキシドをクエン酸に対して1/3モル添加し、空気中常圧下で50℃に保持して60分間反応せしめた。常温に冷却した後、エチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Jとした。
参考例8(重縮合触媒Kの合成)
乳酸のエチレングリコール溶液(0.1質量%)に、チタンテトラブトキシドを乳酸に対して1/2モル添加し、空気中常圧下で50℃に保持して60分間反応せしめた。常温に冷却した後、エチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Kとした。
参考例9(重縮合触媒Lの合成)
水分量を表1の通りに変更した以外は参考例1と同様にして調整した。
参考例10(重縮合触媒Mの合成)
チタンテトラブトキシドにエチレングリコールおよび水を追添加して重縮合触媒溶液中のチタン濃度および水分濃度を表1の通り調整したものを重縮合触媒Mとした。
【0023】
【表1】

【0024】
参考例11(色相調整剤の可視光吸収スペクトル測定、色相調整剤A〜Hの調製)
色相調整用色素を室温で濃度20mg/Lのクロロホルム溶液とし、光路長1cmの石英セルに充填し、対照セルにはクロロホルムのみを充填して、日立分光光度計U−3010型を用いて、380〜780nmの可視光領域での可視光吸収スペクトルを測定した。色相調整用色素2種を混合する場合は合計で濃度20mg/Lとなるようにした。最大吸収波長とその波長における吸光度に対する、400、500、600及び700nmの各波長での吸光度の割合を測定した。更に粉末の色相調整用色素の熱質量減少開始温度を測定した。尚、実施例、比較例でこれら色相調整剤をポリエステル製造工程で添加する場合は、エチレングリコール・水を表2に記載されている通りに調整した後、攪拌機と循環ラインの配管を有した色相調整剤溶解槽の容器内で分散させた。次いで、内温を140℃まで加温して約1時間で溶解後、流速を20m/分の流速で30分間循環させた。この色相調整剤調製溶液の水分率を上述の測定法によって測定した。結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
参考例12(容器の作成)
<容器1>
ポリエチレンテレフタレートシートを射出成形により厚さ0.2mm、内容積500cm3の容器およびそのふたを成形し、空気抜きを設けた。容器およびふたを合わせた重量は10gであった。
<容器2>
厚さ0.07mmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、縫製糸としてポリエチレンテレフタレート繊維を用いて縫製し、空気抜きを有した内容積500cm3の袋を作成した。フィルム、糸を含んだ容器の重さは3gであった。
実施例1
予め225部のビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートが滞留する反応器内に、攪拌下、窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸(三井化学社製)と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度で供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は、98%以上で、生成されたポリエステルオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒Aを得られるポリマーに対してチタン原子換算で10質量ppm、色相調整剤Aを得られるポリマーに対して2質量ppmとなるように投入した。5分後に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.15重量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。系内の反応温度を250から285℃、又、反応圧力を常圧から30Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。重縮合反応の進行度合いを、系内の攪拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所定の攪拌トルクの92%となった時点(減圧を開始してから2時間20分の時点)で、反応缶上部よりポリマーに対して1760質量ppm(リン原子換算で100質量ppm)相当のテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製)を、容器1に詰めた後添加した。その後反応を継続し、所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は159分であった。得られたポリマーの物性の測定結果を表3に示す。得られたポリマーは色相に優れており、またΔb値290が小さく熱安定性に優れていた。
また、このポリエステルを150℃12時間真空乾燥し含水分量を10〜50質量ppmの範囲にした後、エクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度285℃、孔径0.18mmφ、孔数16個の紡糸口金から吐出し、紡糸速度1000m/分の速度で引取り、300dtex/36フィラメントを作成した。溶融紡糸工程においては、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例2〜13
重縮合触媒を表3の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例12、13ではやや色相b値が悪く、また若干熱安定性が劣っていた。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例14〜15
重縮合触媒の添加量を表3の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例14では、重合時間が長くなり、得られたポリマーがやや色相が悪かった。実施例15では、熱安定性が若干劣ったポリマーが得られた。また、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇は、実施例15においてやや汚れ及び糸切れが見られたが、操業上差し支えないレベルであった。
【0027】
【表3】

【0028】
実施例16〜22
色相調整剤を表4の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例19では、やや色相が悪かったが、製品上問題ないレベルであった。また実施例20〜22ではわずかに紡糸時の口金孔周辺の堆積物が見られたが、操業上差し支えないレベルであった。それ以外の実施例では色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例23〜24
色相調整剤の添加量を表4の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例23、24では、得られたポリマーのやや色相が悪かったが、熱安定性は良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例25〜31
リン化合物を表4の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは、色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例32〜33
リン化合物の添加量を表4の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例32では、熱安定性が若干劣ったポリマーが得られた。実施例33ではわずかに紡糸時の口金孔周辺の堆積物が見られたが、操業上差し支えないレベルであった。
【0029】
【表4】

【0030】
実施例34〜36
実施例34ではリン化合物の添加を容器2につめて添加し、実施例35では、リン化合物を水分量0.15質量%のエチレングリコール(10質量%)溶液に調整した後添加し、実施例36ではリン化合物を単独で重合反応槽に添加した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例35、36では、熱安定性が若干劣ったポリマーが得られたが、それ以外の実施例では色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例37〜38
リン化合物を添加する時期を表5の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例37では、重合時間が長くなり、得られたポリマーがやや色相が悪かった。実施例38では紡糸時の口金孔周辺の堆積物が見られたが、操業上差し支えないレベルであった。
実施例39〜42
表5に記載のリン化合物を、得られるポリマーに対してリン原子換算で50質量ppmを水分量0.15質量%のエチレングリコール(2質量%)溶液に調整して、エステル化反応後オリゴマーを重縮合反応槽に移した後重縮合触媒を添加する前に添加し、得られるポリマーに対してリン原子換算で50質量ppmを所定の攪拌トルクの92%となった時点で添加した以外は、実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例39〜42では、重合時間が長くなり、得られたポリマーがやや色相が悪かった。また、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例43〜45
表5に記載した酸化防止剤を添加した以外は、実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは、色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例46〜47
所定の攪拌トルクの設定を変更した(実施例46では得られるポリエステルの固有粘度が低くなるよう、実施例47では得られるポリエステルの固有粘度が高くなるよう設定した)以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例46、47では、得られたポリマーのやや色相が悪かったが、熱安定性は良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0031】
【表5】

【0032】
実施例48
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部の混合物に、重縮合触媒Aを得られるポリマーに対してチタン原子換算で10質量ppm加え、加圧反応が可能なSUS製容器に仕込んだ。0.07MPaの加圧を行い140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた後、トリエチルホスホノアセテートを添加し、エステル交換反応を終了させた。
このエステル交換反応で得られたオリゴマーを重縮合反応槽に移し、色相調整剤Aを得られるポリマーに対して2質量ppmとなるように投入した。5分後に、酸化チタン粒子のエチレングリコールスラリーを、ポリマーに対して酸化チタン粒子換算で0.15重量%添加した。さらに5分後に、反応系を減圧して反応を開始した。系内の反応温度を250から285℃、又、反応圧力を常圧から40Paにそれぞれ段階的に上昇及び減圧し、反応で発生する水,エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。重縮合反応の進行度合いを、系内の攪拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所定の攪拌トルクの90%となった時点(減圧を開始してから2時間30分の時点)で、反応缶上部より得られるポリマーに対して880質量ppm(リン原子換算で50質量ppm)相当のトリエチルホスホノアセテートを、容器1に詰めた後添加した。その後反応を継続し、所定の攪拌トルクとなった時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は166分であった。得られたポリマーの物性の測定結果を表6に示す。得られたポリマーは色相に優れており、またΔb値290が小さく熱安定性に優れていた。
また、このポリエステルを150℃12時間真空乾燥し含水分量を10〜50質量ppmの範囲にした後、エクストルーダー型紡糸機に供給し、紡糸温度285℃、孔径0.18mmφ、孔数16個の紡糸口金から吐出し、紡糸速度1000m/分の速度で引取り、300dtex/36フィラメントを作成した。溶融紡糸工程においては、紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例49〜57
重縮合触媒を表6の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例56、57ではやや色相b値が悪く、また若干熱安定性が劣っていた。紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0033】
【表6】

【0034】
実施例58〜64
色相調整剤を表7の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例61では、やや色相が悪かったが、製品上問題ないレベルであった。また実施例62〜64ではわずかに紡糸時の口金孔周辺の堆積物が見られたが、操業上差し支えないレベルであった。それ以外の実施例では色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例65〜70
リン化合物を表7の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは、色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0035】
【表7】

【0036】
実施例71〜74
リン化合物の添加を表8の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例71では、得られたポリマーがやや色相が悪く、また熱安定性もやや劣っていた。実施例72、74では紡糸時の口金孔周辺の堆積物が見られたが、操業上差し支えないレベルであった。
実施例75〜76
実施例75では、減圧を開始してから添加するリン化合物の添加を水分量0.15質量%のエチレングリコール(10質量%)溶液に調整した後添加し、実施例76ではリン化合物を単独で重合反応槽に添加した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。実施例75、76では、熱安定性が若干劣ったポリマーが得られたが、それ以外の実施例では色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
実施例77
表8に記載した酸化防止剤を添加した以外は、実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは、色相、熱安定性ともに良好であり、また紡糸時の口金孔周辺の堆積物及び濾圧上昇はほとんど認められなかった。
【0037】
【表8】

【0038】
参考例12(重縮合触媒N、O、P、Q、Rの合成)
水分量、重縮合触媒溶媒中のチタン濃度を表9の通りに変更した以外は参考例1、4、5と同様にして調整した。
【0039】
【表9】

【0040】
参考例13(色相調整剤I、J、Kの調製)
水分量、色相調整剤調製濃度を表10の通りに変更した以外は参考例11と同様にして調整した。
【0041】
【表10】

【0042】
比較例1
リン化合物を添加しない以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。色相は黄色味が強く、また熱安定性の劣ったポリマーであった。
比較例2〜6
重縮合触媒を表11の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。比較例2〜5では、得られたポリマーの色相は黄色味が強く、また熱安定性の劣ったポリマーであった。また比較例6で得られたポリマーは、色相および熱安定性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。
比較例7〜10
比較例7〜9は、色相調整剤を表11の通りにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。比較例7〜9では、得られたポリマーの色相および熱安定性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。また比較例10では、色相調整剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られた色相に劣った黄色味の強いポリマーであった。
比較例11〜12
比較例11は、重縮合触媒として三酸化アンチモンを得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300質量ppmを水分量0.15質量%のエチレングリコール(2質量%)溶液に調整して添加した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーの色相および熱安定性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。また比較例12では、色相調整剤の代わりに酢酸コバルトを得られるポリマーに対してコバルト原子換算で50質量ppmを水分量0.15質量%のエチレングリコール(2質量%)溶液に調整して添加した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは色相の明度が低く、また熱安定性に劣ったポリマーであった。
【0043】
【表11】

【0044】
比較例13
重縮合反応を開始してから添加するリン化合物を添加しない以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。色相は黄色味が強く、また熱安定性の劣ったポリマーであった。
比較例14〜18
重縮合触媒を表12の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。比較例14〜17では、得られたポリマーの色相は黄色味が強く、また熱安定性の劣ったポリマーであった。また比較例18で得られたポリマーは、色相および熱安定性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。
比較例19〜22
比較例19〜21は、色相調整剤を表12の通りにそれぞれ変更した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。比較例19〜21では、得られたポリマーの色相および熱安定性は良好なポリマーであったが、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。また比較例22では、色相調整剤を添加しなかったこと以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られた色相に劣った黄色味の強いポリマーであった。
比較例23〜24
比較例23は、エステル交換反応触媒として重縮合触媒Aの代わりに酢酸コバルトを得られるポリマーに対してコバルト原子換算で40質量ppm添加し、また重縮合触媒として三酸化アンチモンを得られるポリマーに対してアンチモン原子換算で300質量ppmを、水分量0.15質量%のエチレングリコール(2質量%)溶液に調整して、エステル交換反応終了後重縮合反応槽にオリゴマーを移送した後に添加した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは、色相の明度が低く熱安定性に劣ったポリマーであり、溶融紡糸時の口金孔周辺に堆積物が見られ濾圧上昇および糸切れが発生した。また比較例24では、エステル交換反応触媒として重縮合触媒Aの代わりに酢酸コバルトを得られるポリマーに対してコバルト原子換算で40質量ppm添加し、また重縮合触媒として重縮合触媒Aを得られるポリマーに対してチタン原子換算で10質量ppmを、エステル交換反応終了後重縮合反応槽にオリゴマーを移送した後に添加した以外は実施例48と同様にポリエステルを重合、溶融紡糸した。得られたポリマーは色相の明度が低く、また熱安定性に劣ったポリマーであった。
【0045】
【表12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とをエステル化またはエステル交換反応させた後重合反応器内を減圧にして重縮合反応してポリエステルを製造する方法において、式(1)、(2)を満たすアルキレングリコール溶液として調整したチタン化合物と、式(3)、(4)を満たすアルキレングリコール溶液として調整した色相調整剤を、ポリエステルが目標とする重合度に到達するまでに添加し、リン化合物を重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
(1)0.1≦T/W≦1.5
(2)0.01≦W≦1.0
(3)0.01≦C/W≦1.0
(4)0.01≦W≦1.0
[T:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中のチタン原子濃度(重量%)、W:チタン化合物のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)、C:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の色相調整剤濃度(重量%)、W:色相調整剤のアルキレングリコール調製溶液中の水分量(重量%)]
【請求項2】
チタン化合物が、一般式(I)で表わされる化合物、又は一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸若しくは無水物とを反応させた生成物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【化1】

[式(I)中、R、R、R及びRはそれぞれ互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、pは1〜4の整数を示し、かつpが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、互いに異なっていてもよい。]
【化2】

[式(II)中、qは2〜4の整数を表わす。]
【請求項3】
チタン化合物が、一般式(I)で表わされる化合物と、一般式(III)、(IV)、(V)で表されるリン化合物の少なくとも1種とを反応させた生成物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【化1】

[式(I)中、R、R、R及びRはそれぞれ互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、pは1〜4の整数を示し、かつpが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、互いに異なっていてもよい。]
【化3】

[式(III)中、rは1又は2を表し、sは0又は1を表し、但しrとsとの和は1又は2であり、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し、rが2を表す場合、2個のR基は、互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。式(IV)中、u及びvは1〜3の整数、tは2以上の整数を表し、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。式(V)中、RおよびRは同一又は異なった炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Xは、−CH2−又は−CH(Y)−を表す。]
【請求項4】
チタン化合物が、一般式(I)で表わされる化合物と一般式(II)で表わされる芳香族多価カルボン酸若しくは無水物とを反応させた生成物と、一般式(III)、(IV)、(V)で表されるリン化合物の少なくとも1種とを反応させた生成物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【化1】

[式(I)中、R、R、R及びRはそれぞれ互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、pは1〜4の整数を示し、かつpが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、互いに異なっていてもよい。]
【化2】

[式(II)中、qは2〜4の整数を表わす。]
【化3】

[式(III)中、rは1又は2を表し、sは0又は1を表し、但しrとsとの和は1又は2であり、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表し、rが2を表す場合、2個のR基は、互いに同一であってもよく、或いは異なっていてもよい。式(IV)中、u及びvは1〜3の整数、tは2以上の整数を表し、Rは、未置換の又は置換された、6〜20個の炭素原子を有するアリール基、又は1〜20個の炭素原子を有するアルキル基を表す。式(V)中、RおよびRは同一又は異なった炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Xは、−CH2−又は−CH(Y)−を表す。]
【請求項5】
チタン化合物が、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、含窒素カルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1つをキレート剤とするチタン錯体化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【請求項6】
色相調整剤が、窒素雰囲気下中、昇温速度10℃/分の条件で熱天秤にて測定したときの質量減少開始温度が250℃以上である色相調整剤であり、濃度20mg/Lのクロロホルム溶液について光路長1cmにおいて波長380〜780nm領域の可視光吸収スペクトルを測定したとき、最大吸収波長が540〜650nmの範囲にあり、且つ該最大吸収波長における吸光度に対する各波長での吸光度の割合が数式(5)〜(8)のすべてを満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
(5)0.00≦A400/Amax≦0.20
(6)0.10≦A500/Amax≦0.70
(7)0.55≦A600/Amax≦1.00
(8)0.00≦A500/Amax≦0.05
[式(5)〜(8)中、A400、A500、A600及びA700はそれぞれ波長400nm、500nm、600nm及び700nmでの可視光吸収スペクトルにおける吸光度を、Amaxは最大吸収波長での可視光吸収スペクトルにおける吸光度を表す。]
【請求項7】
色相調整剤が、青色系整色用色素と紫色系整色用色素を質量比90:10〜40:60範囲で併用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項8】
色相調整剤が、青色系整色用色素と、赤色系又は橙色系整色用色素を質量比98:2〜80:20範囲で併用することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項9】
重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間で、ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナイト化合物、ホスフィネート化合物から選ばれる1種以上の化合物を、得られるポリエステルに対してリン原子換算で合計して、1〜10000質量ppm添加することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項10】
フェノール系酸化防止剤を添加することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項11】
真比重5.0以上の金属元素の含有量が0〜10重量質量ppmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたポリエステル。
【請求項12】
ポリマー中の色相調整剤の残存率が50〜100%であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたポリエステル。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたポリエステルを用いてなる繊維。

【公開番号】特開2010−195934(P2010−195934A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42370(P2009−42370)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】