説明

ポリエステルの製造装置

【課題】平均粘度1000Pa・s以上のポリエステルを生成する構造脆弱性のないポリエステルの製造装置の提供。
【解決手段】ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールからポリエステルを連続的に製造する装置であって、前記原料を含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1反応器、それを縮重合させてプレポリマーを製造する第2反応器、更に縮重合させてポリマーを製造する第3反応器を備え、第3反応器が、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面501a〜d、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を備える前記装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネート等のポリエステルの連続製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、およびポリエチレンサクシネート等のポリエステルは、ジカルボン酸とグリコールを原料とし、これらの混合物に触媒を添加した後、エステル化工程、縮重合工程を経て、ポリエステルになる。縮重合工程では、ジカルボン酸のカルボキシル基2つがそれぞれグリコールとエステル化反応して生成したモノマー同士が、縮重合反応することにより、平均重合度3以上のポリエステルを生成する。ポリエステルの製造装置は、例えば、特開平11−92555号公報(特許文献1)において知られている。
【0003】
特許文献1では、平均重合度90以上のポリエステルを重合する最終重合器の構造について言及されている。本方式によれば、最終重合器は低粘度攪拌ブロック、中粘度攪拌ブロック、高粘度攪拌ブロックの3ブロックより構成されており、低粘度攪拌ブロックではバケットによる被処理液の落下により、中粘度攪拌ブロックおよび高粘度攪拌ブロックでは車輪型円板による被処理液の薄膜形成により、蒸発面積および表面更新速度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−92555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された最終重合器は、低粘度攪拌ブロック、中粘度攪拌ブロック、高粘度攪拌ブロックと、全く異なる複数の構造のブロックにより1つの反応器を構成しているため、構造が変化するブロック境界面で構造強度が脆弱になる可能性があるという課題を有していた。
【0006】
また、特許文献1に記載された最終重合器の高粘度攪拌ブロックで用いられている車輪型円板では、粘度1000Pa・sを越える粘度においては被処理液が円盤に固着し、薄膜形成がなされないため、これより高い粘度を持つ高分子ポリエステルの重合は困難である。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、平均粘度1000Pa・s以上のポリエステルを生成する反応器においてポリエステルの重合を可能にし、構造脆弱性のないポリエステルの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、プレポリマーを更に縮重合させて平均重合度90以上のポリエステルを製造する最終重合器に、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を設置することにより、粘度1000Pa・sを越える高分子量ポリエステルの重合を可能し、構造脆弱性のないポリエステル製造装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールからポリエステルを連続的に製造する装置であって、
ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとを含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1反応器、オリゴマーを縮重合させてプレポリマーを製造する第2反応器、ならびにプレポリマーを更に縮重合させてポリマーを製造する第3反応器を備え、
第3反応器が、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を備えることを特徴とする、前記装置。
(2)第3反応器の攪拌装置が、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブと同心円最外周で規定される面のうち、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置されている面が異なっている3種以上の攪拌翼を有することを特徴とする、(1)記載の装置。
(3)第3反応器の攪拌装置が、第2反応器からプレポリマーが導入される領域において、少なくとも同心円最外周とリブで規定される面に、平板または穿孔平板が設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、少なくとも同心円最外周とサポートで規定される面に穿孔平板またはメッシュが設置されているが、同心円最外周とリブで規定される面は開口している攪拌翼を有し、それより後段の領域において、少なくともリブとサポートで規定される面に、メッシュまたはワイヤー群が設置された攪拌翼を有することを特徴とする、(2)記載の装置。
(4)第3反応器の攪拌装置が、第2反応器からプレポリマーが導入される領域において、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブと同心円最外周で規定される面すべてに穿孔平板が設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、同心円最外周とサポートで規定される面およびリブとサポートで規定される面にのみメッシュが設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、リブとサポートで規定される面にのみワイヤー群が設置された攪拌翼を有することを特徴とする、(3)記載の装置。
(5)ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールからポリエステルを連続的に製造する方法であって、
第1反応器においてジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとを含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する工程、第2反応器においてオリゴマーを縮重合させてプレポリマーを製造する工程、および第3反応器においてプレポリマーを更に縮重合させてポリマーを製造する工程を含み、
第3反応器が、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を備えることを特徴とする、前記方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粘度1000Pa・sを越える高分子量のポリエステルの重合を可能にし、構造脆弱性のないポリエステル製造装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のポリエステル製造装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明に係る第1反応器(エステル化反応器)の一実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る第2反応器(初期重合器)の一実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明に係る第3反応器(最終重合器)の一実施形態を示す平面一部断面図(a)および正面一部断面図(b)である。
【図5】図4に示す第3反応器(最終重合器)の一実施形態を示す側面断面図である。
【図6】本発明に係る第3反応器(最終重合器)に設置される攪拌装置の攪拌翼の一実施形態である。
【図7】本発明に係る第3反応器(最終重合器)に設置される攪拌装置の攪拌翼の一実施形態である。
【図8】本発明に係る第3反応器(最終重合器)に設置される攪拌装置の攪拌翼の一実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリエステル製造装置は、ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとを含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1反応器、オリゴマーを縮重合させてプレポリマーを製造する第2反応器、ならびにプレポリマーを更に縮重合させてポリマーを製造する第3反応器を備える。第1反応器の前段、第1反応器と第2反応器の間、または第3反応器の後段に、更なる反応器を有する場合も、本発明に包含される。また、第1反応器、第2反応器、および第3反応器として、それぞれ複数の反応器を備える場合も、本発明に包含される。
【0013】
本発明で製造しうるポリエステルは、ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとから製造しうるものであれば特に制限されない。例えば、テレフタル酸またはその誘導体とブタンジオール(例えば、1,4−ブタンジオール)から製造されるポリブチレンテレフタレート、テレフタル酸またはその誘導体とエチレングリコールから製造されるポリエチレンテレフタレート、テレフタル酸またはその誘導体とトリメチレングリコールから製造されるポリトリメチレンテレフタレート、コハク酸またはその誘導体とブタンジオール(例えば、1,4−ブタンジオール)から製造されるポリブチレンサクシネート、およびコハク酸またはその誘導体とエチレングリコールから製造されるポリエチレンサクシネートが挙げられる。ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、ジカルボン酸のモノアルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)、ジアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル)が挙げられる。
【0014】
第1反応器では、所定の温度および圧力で、ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールのエステル化反応を行いオリゴマーを製造する。従って、第1反応器をエステル化反応器と称する場合もある。本発明において、第1反応器で製造されるオリゴマーは、通常、平均重合度3〜7程度、好ましくは2〜5程度である。第1反応器における反応温度は通常220℃〜260℃、好ましくは240℃〜250℃で、圧力は100Torr〜
600Torr、好ましくは200Torr〜400Torrである。反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または反応器内部の伝熱管(コイル)を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。第1反応器としては、エステル化によりポリエステルを製造する際に通常使用する反応器を利用できる。このような反応器として、縦型反応器、横型反応器またはタンク型反応器を用いることができる。反応器の攪拌装置における攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。また、エステル化反応を実施する第1反応器として、複数の反応器を設置してもよい。
【0015】
重合反応触媒は、第1反応器、第1反応器と第2反応器の間、または第2反応器のいずれにおいて添加してもよいが、好ましくは、第1反応器へ添加される。触媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。触媒としては、エステル交換反応に用いられる広範な触媒を使用できる。例えば、Li、Mg、Ca、Ba、La、Ce、Ti、Zr、Hf、V、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Zn、Ge、Snなどの金属を含む金属化合物、例えば、有機酸塩、金属アルコキシドおよび金属錯体(アセチルアセトナートなど)等の有機金属化合物、ならびに金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩および塩化物などの無機金属化合物が例示される。これらの金属化合物触媒の中でも、チタン化合物、特に、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタンアルコキシド等の有機チタン化合物が好ましい。オクチル酸スズ等のスズ系化合物または三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物を使用するのが好ましい場合もある。
【0016】
触媒は、その種類や組み合わせにより、反応速度が異なるだけでなく、生成するポリエステルの色相および熱安定性等の品質に大きな影響を及ぼすことがよく知られている。触媒としては現在最も多く工業的に使用されている有機チタン化合物が価格や性能面で優れている。しかし、この触媒を用いても生成したポリエステル重合物の着色は避けられない。このため、安定剤として燐系安定剤(例えば、リン酸、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等)を併用して改善することが好ましい。また、触媒や安定剤の投入位置を工夫して品質を安定させることもできる。触媒として有機チタン化合物を用いる場合、触媒の量は、通常、チタン金属換算濃度で20〜100ppmとすることが好ましく、また安定剤の量はリン金属濃度で0〜600ppmとすることが好ましい。
【0017】
第2反応器では、第1反応器から供給されたエステルを所定の温度および圧力でエステル交換反応に基づく縮重合反応に付し、末端にヒドロキシル基を有するプレポリマーを生成させる。ここでプレポリマーは、エステル化反応後、最終縮重合反応前(第3反応器に入る前)のポリエステルをさし、通常、平均重合度20〜70程度のポリエステルをさす。
【0018】
第2反応器における反応温度は、通常200〜260℃、好ましくは230〜255℃程度である。圧力は、通常、低圧(例えば、0.5〜20kPa程度)で行う。プレポリマー反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または反応器内部の伝熱管(コイル)を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0019】
第2反応器としては、ポリエステルを製造する際に通常使用する反応器を利用できる。このような反応器として、縦型反応器、横型反応器またはタンク型反応器を用いることができる。反応器の攪拌装置における攪拌翼としてはパドル翼、タービン翼、アンカー翼、ダブルモーション翼、ヘリカルリボン翼などを使用することができる。第2反応器から排出される留出液は、熱交換器により冷却・凝縮させた後、第2反応器上部に設置した蒸留塔に流入させ、高沸点留分に含まれるグリコールを回収し、第1反応器またはその前段に還流させて再使用してもよい。また、縮重合反応を実施する第2反応器として、複数の反応器を設置してもよい。
【0020】
第3反応器では、第2反応器から供給されるプレポリマーを所定の温度および圧力で更に縮重合反応させることで、高重合度のポリエステルを生成させる。第3反応器における反応温度は、通常200〜260℃、好ましくは230〜255℃程度である。圧力は、通常、低圧(例えば、0.05kPa〜1.0kPa程度)で行う。第3反応器で最終的に製造されるポリエステルは、通常、平均重合度90以上または平均粘度100Pa・s以上である。
【0021】
第3反応器における加熱方法としては、当技術分野において通常用いられる方法を使用することができ、例えば、反応器外周部に熱媒のジャケットを設置し、反応器壁面を通して伝熱により反応液を加熱する方法、または反応器内部の伝熱管(コイル)を通して伝熱により加熱する方法等があり、これらを単独で使用しても組み合わせて使用してもよい。第3反応器から排出される留出液は、湿式コンデンサにより冷却・凝縮させた後、第3反応器上部に設置した蒸留塔に流入させ、高沸点留分に含まれるグリコールを回収し、第1反応器またはその前段に還流させて再使用してもよい。
【0022】
本発明は、第3反応器において、複数(好ましくは2つ)の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を用いることを特徴とする。複数の中空同心円を径方向に接続するリブは、通常2〜8本、好ましくは3〜5本である。同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートは、同心円ごとに、通常2〜8本、好ましくは3〜5本である。好ましくは、リブの本数と同心円ごとサポートの本数は同じであり、リブとサポートは同心円上で連結されている。
【0023】
複数の中空同心円とは、例えば、図5〜8における401aおよび402aで表される構造をさし、これらを径方向に接続するリブとは、例えば、図5〜8における411a〜dで表される構造をさし、同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートとは、例えば、図6〜8における421a〜dおよび422a〜dで表される構造をさす。
【0024】
また、図5における攪拌翼の回転方向を反時計周りと仮定すると、中空同心円最外周402aとリブ411a〜dの接点における、中空同心円最外周の接線とリブとのなす角度であって、回転方向側の角度θ600は、0°〜90°、望ましくは30°〜60°である。角度θを鋭角とすることにより、リブとサポートで規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群を設置した場合、角度θ600を成す箇所において、被処理液の掻き揚げ効果を期待できる。
【0025】
リブとサポートで規定される面とは、例えば、図6においてメッシュが設置されている面(501a〜d)をさす。同心円最外周とサポートで規定される面とは、例えば、図7においてメッシュが設置されている面(511a〜d)をさし、リブと同心円最外周で規定される面とは、例えば、図8においてメッシュが設置されている面(521a〜d、522a〜d)をさす。これらのすべての面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置されていることが好ましい場合もある。
【0026】
穿孔平板とは、穿孔を有する平板をさし、その穿孔率は、通常50〜30%であり、穿孔が円形である場合、1つの穿孔の直径は、通常1〜10cm、好ましくは2〜5cmである。穿孔が楕円形である場合、長径と短径の平均が上記直径の範囲となる。ワイヤー群が設置されている場合は、メッシュとは異なり、一方向にのみワイヤーが張り巡らされている場合をさす。その場合ワイヤーは、攪拌装置の攪拌軸(回転軸)と平衡に設置されることが好ましい。
【0027】
平均重合度90以上または平均粘度100Pa・s以上の高重合度のポリマーを製造する最終重合器(第3反応器)において、特開平11−92555号公報に示されるような被処理液の攪拌翼として回転中心に対して垂直に設置した円盤を用いた場合、被処理液の落下方向と同一平面上に攪拌翼の構成部材である円盤が存在するため、被処理液の粘度が1000Pa・s以下であれば円盤の表面で薄膜を形成し蒸発面を形成できるが、1000Pa・s以上の超高粘度の場合は円盤の表面で被処理液が固着し被処理液の自由落下を妨げ、十分な蒸発面を形成できない。しかし、第3反応器において上記のような攪拌装置を設置することにより、被処理液の落下方向と同一平面上に存在する構造物を最小限に抑え、1000Pa・s以上の超高粘度においても蒸発面形成性能を確保することができる。
【0028】
第3反応器は、好ましくは、攪拌軸(回転軸)が実質的に水平な攪拌装置を有する横型反応器である。横型反応器は、第2反応器から供給されるプレポリマーを導入するためのプレポリマー入口と生成したポリエステルを排出するポリマー出口を有し、反応器内の反応物は、プレポリマー入口からポリマー出口に進むに従って重合度が増し、粘度が増大することになる。従って、反応器内において粘度の異なる反応物が存在する領域ごとに、異なる種類の攪拌翼を有する攪拌装置を設置することが好ましい。第3反応器の攪拌装置が、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブと同心円最外周で規定される面のうち、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置されている面が異なっている3種以上の攪拌翼を有することが好ましい。
【0029】
例えば、第3反応器の内部を、平均粘度0.1Pa・s〜30Pa・sのポリエステルが生成する第1反応領域と、その後段の平均粘度30Pa・s〜100Pa・sのポリエステルが生成する第2反応領域と、その後段の平均粘度100Pa・s〜1000Pa・s以上のポリエステルを製造する第3反応領域にわけ、第1〜第3領域において、それぞれ異なる攪拌翼を有する攪拌装置を設置する。
【0030】
好ましくは、第2反応器からプレポリマーが導入される領域、例えば、平均粘度0.1Pa・s〜30Pa・sのポリエステルが生成する第1反応領域においては、少なくとも同心円最外周とリブで規定される面に、平板または穿孔平板が設置された攪拌翼が好ましい。当該領域においては、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブとサポートで規定される面にも、平板または穿孔平板が設置されていることがさらに好ましい。同心円最外周とリブで規定される面は、通常、図8に示されるように複数に区画されているが、これらの面すべて(521a〜d、522a〜d)に平板または穿孔平板が設置されていなくてもよいが、すべての面に設置されていることが好ましい。同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブとサポートで規定される面についても同様である。
【0031】
それより後段の領域、例えば、平均粘度30Pa・s〜100Pa・sのポリエステルが生成する第2反応領域においては、少なくとも同心円最外周とサポートで規定される面に穿孔平板またはメッシュが設置されているが、同心円最外周とリブで規定される面は開口している攪拌翼が好ましい。当該領域においては、リブとサポートで規定される面にも、穿孔平板またはメッシュが設置されていることがさらに好ましい。同心円最外周とサポートで規定される面は、通常、図7に示されるように複数に区画されているが、これらの面すべて(511a〜d)に穿孔平板またはメッシュが設置されていなくてもよいが、すべての面に設置されていることが好ましい。リブとサポートで規定される面についても同様である。穿孔平板の孔径およびメッシュの粗さは、入口に近い側で細かく、出口に向かうほど荒くするのが望ましい。
【0032】
さらに後段の領域、例えば、平均粘度100Pa・s〜1000Pa・s以上のポリエステルを製造する第3反応領域においては、少なくともリブとサポートで規定される面に、メッシュまたはワイヤー群が設置された攪拌翼が好ましい。当該領域においては、その他の面には、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群はいずれも存在せず、開口していることが好ましい。リブとサポートで規定される面は、通常、図6に示されるように複数に区画されているが、これらの面すべて(501a〜d)にメッシュまたはワイヤー群が設置されていなくてもよいが、すべての面に設置されていることが好ましい。メッシュの粗さ、ワイヤー群の間隔は、入口に近い側で細かく、出口に向かうほど荒くするのが望ましい。ワイヤー群は回転軸に平行に設置することが望ましい。
【0033】
このように、低粘度から高粘度に向かうに従って、攪拌翼における構造物が占める面積を漸減させる構造を持たせることにより、被処理液の粘度変化に合わせた効率的な蒸発面の形成が可能になる。一方、各領域ごとに攪拌翼の構造は異なっていても、骨格構造は同一であることから、第1反応領域と第2反応領域、ならびに第2反応領域と第3反応領域の境界において、構造上の不連続性が少なく、構造強度上の脆弱性が少ない。
【0034】
以下、本発明に係るポリエステルの連続製造プロセスの一実施形態を図面を参照することにより説明する。本実施形態では、ポリエステルとしてPBT(ポリブチレンテレフタレート)を製造する場合について説明する。図1において、1は、PBTの原料であるTPA(テレフタル酸)とBD(1,4−ブタンジオール)を所定の割合で混合、攪拌する原料調製槽である。原料調製槽1から得られる原料は、原料供給ライン2から原料入口105を介してエステル化反応器(第1反応器)10へ供給される。この段階で重合反応触媒(CAT)や安定剤、品質調整剤などの添加物(ADD)を加える場合があるが、本実施例では重合反応触媒や添加剤はエステル化反応器10へ触媒投入ライン14から触媒供給口108を通して投入される。本実施形態では、触媒として有機チタン化合物を用い、チタン金属換算濃度で20〜100ppmとなるように添加する。
【0035】
本実施形態において、エステル化反応器10の外周部は、図2に示すように被処理液を反応温度に保つために熱媒ジャケット101を用いた構造になっている。熱媒ジャケット101には、ジャケット液相熱媒出口または気相熱媒入口102とジャケット液相熱媒入口または気相熱媒出口103が接続される。105は原料入口、106はオリゴマー出口である。107はBD供給口、108は触媒供給口である。130は蒸気出口である。
【0036】
さらに、図2に示すようにエステル化反応器10内で被処理液104に浸漬される部分には、多重のリング状の伝熱管下部ヘッダ111と多重のリング状の伝熱管上部ヘッダ113との間を数千本のマルチ伝熱管(直径が20mm程度で、長さが100〜150cm程度の伝熱管)112を接続して構成される加熱手段11が設置される。245〜260℃程度の温度の熱媒が、液相熱媒の場合には、液相熱媒が外部から伝熱管液相熱媒入口110より上記伝熱管下部ヘッダ111に供給され、該供給された液相熱媒がマルチ伝熱管112内を下部から上部へ流動し、上記伝熱管上部ヘッダ113から伝熱管液相熱媒出口114を介して外部に流出される。熱媒が油等の気相熱媒(スチームガス)の場合には、気相熱媒が外部から伝熱管気相熱媒入口114より上記伝熱管上部ヘッダ113に供給され、該供給された液相熱媒がマルチ伝熱管112内を上部から下部へ流動し、上記伝熱管下部ヘッダ111から伝熱管液相熱媒出口110を介して外部に流出される。
【0037】
第1反応器(エステル化反応器)10において、反応により生成する水は水蒸気の形をとり、気化したBD蒸気および副生するTHF蒸気と共に気相部12を形成する。本実施形態においては、第1反応器において、反応温度240〜250℃、圧力200〜400Torrで反応を行う。減圧により反応副生成物を迅速に除去できるため、2時間以下の滞留時間で目標のエステル化率に到達可能となる。このようにエステル化反応速度が向上することによりエステル化反応時間が短縮され、副反応生成物であるTHF生成量を大幅に低減できる。この時のTHF生成量は、原料TPAのモル分率で15〜25mol%/h程度である。被処理液中から出た揮発分である気相部12のガスは、その第1反応器であるエステル化反応器10の上方に設けられた蒸留塔(図示せず)により水とTHFおよびBDとに分離され、水とTHFは系外に除去され、BDは精製工程等を経て再び系内あるいは原料用として蒸留塔下部よりBD循環ライン42によりBDタンク40に戻される。循環BDはBDタンク40からBD供給ライン41により原料調製槽1に供給されるが、BDタンク40内の循環BDは必要に応じてBD精製処理(図示せず)を行い原料BDの純度を調整する。さらに必要に応じて、初期重合器(第2反応器)20および最終重合器(第3反応器)30に設置される減圧装置の湿式コンデンサ(図示せず)から排出された循環BDをBD循環ライン43よりBDタンク40に戻し、BD原単位をさらに向上させる。この場合、新BDは、最終重合器30の湿式コンデンサへ新BD供給ライン45より供給し、BD循環ライン44から第2反応器20の湿式コンデンサへ供給し、BD循環ライン43よりBDタンク40に供給する。
【0038】
エステル化反応器10で所定のエステル化率に到達した被処理液は、連絡管13を経由して初期重合器(第2反応器)20に供給される。即ち、被処理液は、エステル化反応器10で所定のエステル化率に到達したとき、連絡管13の途中に設けたオリゴマーポンプ15により初期重合器(第2反応器)20に供給される。
【0039】
次に、第2反応器(初期重合器)20について図1および図3を用いて説明する。図1において、初期重合器20は堅長円筒状の容器本体の外周を熱媒ジャケット202で覆われており、容器本体中央上部に回転軸203および駆動装置204が取り付けられている。容器本体内は円筒状の仕切板205により2室に分けられており、ドーナツ状の第1室206と円筒状の第2室207を形成し、それぞれの攪拌室206、207内を回転して攪拌する攪拌翼208および209が1本の共通の半長の回転軸203に取り付けられている。さらに、それぞれの攪拌室206、207内の攪拌翼208、209の外側には伝熱管210、211が取り付けられ、この伝熱管210、211への熱媒入口ノズル214、213、出口ノズル212、215が容器本体を貫通して取り付けられている。また、容器本体の第1室206の下部には、被処理液の入口ノズル216が取り付けられ、容器本体の第2室207の下部中央には、被処理液の出口ノズル217が取り付けられている。さらに、容器本体の上部に揮発物の出口ノズル218が設けられ、配管で凝縮器および真空引き装置(図示せず)に接続される。
【0040】
ここで第1室206内の攪拌翼208は、第2室207内の攪拌翼209に比べて周速が高いため、攪拌抵抗の小さいスリムな形状となっており、第2室207内の攪拌翼209は、周速が低いため、攪拌抵抗の大きい幅の広い形状となっている。これにより、同一の回転数でまわる両攪拌翼208および209が両攪拌室206および207で同程度の攪拌効果を得ることができる。
【0041】
このような装置において、入口ノズル216より連続して供給された被処理液は、まず第1室206内に入り、伝熱管210で加熱され、攪拌翼208で攪拌される間に縮重合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。このようにして反応が進んだ被処理液は第1室206の上部より仕切板205の上端を乗り越えて第2室207に入る。被処理液は第2室207においても第1室と同様に、伝熱管211で加熱され、攪拌翼209で攪拌される間にさらに縮重合反応が進み、生成した1,4−ブタンジオール等の揮発物は蒸発して揮発物の出口ノズル218より凝縮器に捕集される。
【0042】
このようにして反応が進んだ被処理液は、第2室207の下部より被処理液の出口ノズル217を通って次の最終重合器(第3反応器)30へ送られる。このとき、被処理液は初期重合器20内の2つの攪拌室206、207でそれぞれ完全混合状態で効率良く反応が進み、ショートパスすることなく、また第1、2室間では密閉配管内での熱分解もなく、品質の良い重合物を連続して生産することができる。
【0043】
このような装置でPBTを重合する場合には、平均重合度3〜7のビスヒドロキシブチルテレフタレートを入口ノズル216より連続供給して縮重合反応を進め、生成した1,4−ブタンジオールおよび水の蒸気を初期重合器20内で分離し、初期重合器20中央部の出口ノズル217より平均重合度20〜70のPBTの重合物を得ることができる。本実施形態においては、第2反応器において、反応温度230〜255℃、圧力0.5〜20kPa、攪拌翼の回転数5〜100回/分の範囲で反応を行う。
【0044】
本実施形態では、図3に示すように、初期重合器20内が円筒状の仕切板205Aおよび205Bにより3室に分けられており、ドーナツ状の第1室206Aおよび第2室206Bと円筒状の第3室207が形成され、それぞれの攪拌室206A、206Bおよび207内を回転して攪拌する攪拌翼208A、208Bおよび209が回転軸203に取り付けられ、さらにそれぞれの攪拌室206A、206Bおよび207内に伝熱管210A、210B、211が取り付けられている。このように、初期重合器20内を完全混合槽3槽を構成することにより、さらに短時間で重合反応を進めることができ、熱劣化が少ない品質の良い重合物を連続して生産することができる。
【0045】
初期重合器(第2反応器)20で所定の反応時間を経過した処理液は、連絡管21を経てプレポリマーポンプ22により最終重合器(第3反応器)30に供給される。
【0046】
次に、本発明の特徴である最終重合器30について具体的に図1、図4〜8を用いて説明する。最終重合器(第3反応器)30では、初期重合器(第2反応器)20から得られる平均重合度が20〜70のプレポリマーである粘度0.1〜45Pa・s程度のPBTから、一度に平均重合度90以上、好ましくは150〜200で、粘度100〜1000Pa・s、好ましくは500〜2500Pa・sのPBT50を製造できる。従って、第3反応器としては、このように0.1〜45Pa・sの低粘度から500〜2500Pa・sの高粘度の範囲に亘って使用できる高粘度液処理用の攪拌装置をもった反応器を用いなければならない。
【0047】
この第3反応器に好適な攪拌装置として、複数の中空同心円(401a〜b、402a〜b)とこれらを径方向に接続するリブ(411a〜d、412a〜d)でなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポート(421a〜d、422a〜d)からなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面(501a〜d)、同心円最外周とサポートで規定される面(511a〜d)、および/またはリブと同心円最外周で規定される面(521a〜d、522a〜d)に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を用いる。中空同心円401a〜b、402a〜bは反応器の両端で外部動力源35に駆動される攪拌軸32と接続する。なお、図5〜8ではリブ411a〜d、412a〜dの回転面上における本数が4本となっているが、これに限定されるものではない。また、本実施形態において、図5における角度θ600は、45°である。
【0048】
本実施形態においては、第3反応器において、反応温度230℃〜255℃、圧力0.665kPa〜0.067kPaで反応させる。特にPBTの品質の評価項目の1つであるポリマー酸価の値を出来るだけ低くするには、反応温度を250℃以下にすることが望ましい。最終重合器30の外周も、図4および図5に示すように、ポリマーを上記反応温度に保つために、熱媒ジャケット構造301になっている。3011は熱媒ジャケット301に対する熱媒入口、3012は該熱媒出口である。302はプレポリマー入口、303はポリマー出口である。304は蒸気出口である。321は攪拌軸32の各々の軸受である。
【0049】
第3反応器では、低粘度から高粘度の広い範囲に亘って縮重合させるため、反応器の内部を、平均粘度0.1Pa・s〜30Pa・sのポリエステルを製造する第1反応領域と、平均粘度30Pa・s〜100Pa・sのポリエステルを製造する第2反応領域と、平均粘度100Pa・s〜1000Pa・sのポリエステルを製造する第3反応領域とにわけ、プレポリマーの入口301に近い第1反応領域では、リブとサポートで規定される面(501a〜d)、同心円最外周とサポートで規定される面(511a〜d)、およびリブと同心円最外周で規定される面(521a〜d、522a〜d)のいずれにも穿孔平板を設置する。これにより、攪拌翼が回転することによって生じる、被処理液を掻き揚げた後に落下させるという一連の動作により、蒸発面積と表面更新速度の確保が可能となる。また、被処理液の粘度が低い場合、被処理液が軸方向に流れてしまうことで、重合反応を進行させるための滞留時間が確保できない問題が生じるが、リブと同心円最外周で規定される面(521a〜d、522a〜d)にも穿孔平板を設置することで、これを防止することができる。
【0050】
第1反応領域に続く第2反応領域においては、粘度の上昇に伴う攪拌翼へのポリマーの固着を防止するため、リブとサポートで規定される面(501a〜d)、および同心円最外周とサポートで規定される面(511a〜d)のいずれにもメッシュを設置する。これらメッシュの回転により被反応液が掻き揚げられた後、メッシュの隙間より糸状に落下することで、単位体積あたりの表面積を確保し、蒸発面積および表面更新速度を確保できる。メッシュの粗さは、プレポリマー入口302に近い側で細かく、ポリマー出口303に向かうほど荒くする。リブと同心円最外周で規定される面(521a〜d、522a〜d)は開口とする。
【0051】
第3反応領域では、リブとサポートで規定される面(501a〜d)にのみ、ワイヤー群を設置する。ワイヤー群の回転により被反応液が掻き揚げられた後、ワイヤー群の隙間より糸状もしくは帯状に落下することで、単位体積あたりの表面積を確保し、蒸発面積および表面更新速度を確保できる。ワイヤー群の間隔は、プレポリマー入口302に近い側で細かく、ポリマー出口303に向かうほど荒くする。ワイヤー群は回転軸に平行に設置する。
【0052】
入口302より供給された低粘度のプレポリマーは、第1反応領域、第2反応領域、第3反応領域、のそれぞれの粘度に適した被反応液の持ち上げ、自由落下機構を通して、良好な表面更新作用を受け、プレポリマーの内部から揮発成分が蒸発して反応が促進されて粘度が徐々に上昇する。この結果、500〜2500Pa・s程度の高粘度を有する高重合度のポリマー50が出口303から排出される。
【0053】
第1〜第3反応器の滞留時間は4〜7.5時間であるが、品質面から、重合工程全体の滞留時間は2〜4時間が最適な範囲である。また、滞留時間は必要に応じて、温度と圧力を調整することにより長くすることが可能であり、例えば生産量を減少させる場合に、品質の変動を最小限に保つために実施されることがある。
【0054】
本発明によれば、第3反応器(最終重合器)は一台の装置で縮重合が可能となり大幅な装置コストの低減、ならびにポリエステルの製造原価の低減を図ることができる。
【実施例】
【0055】
(実施例)
図1〜5に示されるポリエステル製造装置において、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を製造した。その結果、第3反応器(最終重合器)30出口において、粘度2500Pa・s、平均重合度200程度のPBTが得られた。得られたPBTのIV値は0.7〜1.2であり、b値は0〜4であった。
【0056】
(比較例)
図1〜5に示されるポリエステル製造装置において、第3反応器の攪拌装置として特許文献1に記載された車輪型円板を適用し、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を製造した。その結果、第3反応器(最終重合器)30出口において、粘度500Pa・s、平均重合度150程度のPBTが得られた。
【符号の説明】
【0057】
1…原料調製槽、2…原料供給ライン、10…エステル化反応器(第1反応器)、101…熱媒ジャケット、102…ジャケット液相熱媒出口またはジャケット気相熱媒入口、103…ジャケット液相熱媒入口またはジャケット気相熱媒出口、104…被処理液、105…原料入口、106…オリゴマー出口、107…BD供給口、108…触媒供給口、110…伝熱管液相熱媒入口または伝熱管気相熱媒出口、111…伝熱管下部ヘッダ、112…マルチ伝熱管、113…伝熱管上部ヘッダ、114…伝熱管液相熱媒出口または伝熱管気相熱媒入口、115…間隙もしくは間隙挿入物質、120…攪拌翼、121…攪拌軸、122…攪拌駆動軸、130…蒸気出口、11…加熱手段、12…気相部、13…連絡管、14…触媒投入ライン、15…オリゴマーポンプ、20…初期重合器(第2反応器)、21…連絡管、22…プレポリマーポンプ、202…熱媒ジャケット、203…回転軸、204…駆動装置M、205…円筒状の仕切板、206…攪拌室(第1室)、207…攪拌室(第2室)、208…攪拌翼、209…攪拌翼、210、211…伝熱管、213,214…熱媒入口ノズル、212,215…熱媒出口ノズル、216…被処理液の入口ノズル、217…被処理液の出口ノズル、218…揮発物の出口ノズル、30…最終重合器(第3反応器)、301…熱媒ジャケット、302…プレポリマー入口、303…ポリマー出口、304…蒸気出口、321…軸受、32…攪拌軸、335…熱媒入口、336…熱媒出口、40…BDタンク、41…BD供給ライン、42、43、44…BD循環ライン、45…新BD供給ライン、401,402…中空同心円、411,412…中空同心円を径方向に接続するリブ群、421,422…同心円集合体を回転軸方向に接続するサポート、501…リブとサポートで規定される面、511…同心円最外周とサポートで規定される面、521、522…リブと同心円最外周で規定される面、50…ポリマー、600…中空同心円とリブが成す角度θ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールからポリエステルを連続的に製造する装置であって、
ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとを含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する第1反応器、オリゴマーを縮重合させてプレポリマーを製造する第2反応器、ならびにプレポリマーを更に縮重合させてポリマーを製造する第3反応器を備え、
第3反応器が、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を備えることを特徴とする、前記装置。
【請求項2】
第3反応器の攪拌装置が、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブと同心円最外周で規定される面のうち、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置されている面が異なっている3種以上の攪拌翼を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第3反応器の攪拌装置が、第2反応器からプレポリマーが導入される領域において、少なくとも同心円最外周とリブで規定される面に、平板または穿孔平板が設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、少なくとも同心円最外周とサポートで規定される面に穿孔平板またはメッシュが設置されているが、同心円最外周とリブで規定される面は開口している攪拌翼を有し、それより後段の領域において、少なくともリブとサポートで規定される面に、メッシュまたはワイヤー群が設置された攪拌翼を有することを特徴とする、請求項2記載の装置。
【請求項4】
第3反応器の攪拌装置が、第2反応器からプレポリマーが導入される領域において、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、およびリブと同心円最外周で規定される面すべてに穿孔平板が設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、同心円最外周とサポートで規定される面およびリブとサポートで規定される面にのみメッシュが設置された攪拌翼を有し、それより後段の領域において、リブとサポートで規定される面にのみワイヤー群が設置された攪拌翼を有することを特徴とする、請求項3記載の装置。
【請求項5】
ジカルボン酸またはその誘導体とグリコールからポリエステルを連続的に製造する方法であって、
第1反応器においてジカルボン酸またはその誘導体とグリコールとを含む被処理液を反応させてオリゴマーを製造する工程、第2反応器においてオリゴマーを縮重合させてプレポリマーを製造する工程、および第3反応器においてプレポリマーを更に縮重合させてポリマーを製造する工程を含み、
第3反応器が、複数の中空同心円とこれらを径方向に接続するリブでなる同心円集合体、および同心円集合体を回転軸方向に接続するサポートからなる骨格を有し、リブとサポートで規定される面、同心円最外周とサポートで規定される面、および/またはリブと同心円最外周で規定される面に、平板、穿孔平板、メッシュ、またはワイヤー群が設置された攪拌翼を有する攪拌装置を備えることを特徴とする、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−248312(P2010−248312A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96977(P2009−96977)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】