説明

ポリエステルアミドを含む水性コーティング組成物

(i)1〜50重量%の水溶性分岐ポリエステルアミド、(ii)130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される、1〜50重量%の溶媒、および(iii)0〜98重量%の水を含む組成物、およびアンダー噴霧/オーバー噴霧の問題を減少または除去するための、水性ベースコート組成物への添加剤としてのその使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性コーティング組成物の分野に関する。特に、本発明は、ポリエステルアミドを含む水性ベースコート組成物に関する。本発明はまた、ポリエステルアミドおよび溶媒を含有する添加剤組成物自体、およびコーティングされた基体に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ベースコートは、いわゆるベースコート/クリアコート系の一部を形成する。そのような系は、例えば自動車産業において、金属およびプラスチック基体をコーティングするために使用される。基体は通常、下塗りされる。その後、クリアコートがベースコートに施与される。施与は通常、噴霧によって行われる。そのようなコーティング系およびその使用は、例えば欧州特許出願公開EP−A−0287144およびEP−A−1242548に開示されている。
【0003】
ベースコートを噴霧によって施与するとき、オーバー噴霧(overspray)およびアンダー噴霧(underspray)と称される問題がときどき生じる。これらの問題は、温かい気候条件下でおよび/または大きい物体に噴霧するときに特に遭遇する。オーバー噴霧および/またはアンダー噴霧は目で見ることができ、ベースコート/クリアコート系の光沢の低下を生じる。
【0004】
噴霧操作の間、操作する人は、表面を水性コーティング組成物で数回噴霧し、噴霧間に時間間隔をおく。各間隔の長さは、基体の大きさおよび/または複雑さおよび作業速度などの因子に依存する。実際、温かい気候条件などの条件は、塗料粒子を、先に施与された塗料中に吸収されることなく、塗料の表面に付着させることを生じ得る。これはオーバー噴霧と呼ばれる。アンダー噴霧は、次の噴霧中に施与される層が、これらの塗料粒子を吸収または溶解しないときに生じる。そのとき、塗料粒子は、その次の層を通して依然として目に見え、したがって、光沢の低下の一因となる。
【0005】
日々の実施において、これらの現象は、ゆっくり蒸発する溶媒の添加によりしばしば阻止される。この欠点は、ベースコートの場合には、揮発性有機化合物の放出を制限する規則に従うまたは従ったままであることが一層困難になることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オーバー噴霧および/またはアンダー噴霧の問題に対する別の解決のための絶え間ない要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(i)1〜50重量%の水溶性分岐ポリエステルアミド、
(ii)130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される、1〜50重量%の溶媒、および
(iii)0〜98重量%、好ましくは5〜98重量%の水
を含む添加剤組成物を従来の水性ベースコート組成物に添加すると、低湿度および/または温かい気候条件下でそのようなベースコート組成物を使用したとき、オーバー噴霧および/またはアンダー噴霧の問題が、除去されないとしても、実質的に減少されることが見出された。
【0008】
上記添加剤組成物は、適切には、水性ベースコート組成物の重量に基づいて、1〜50重量%の量で添加される。好ましくは、上記量が5〜50重量%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に従って使用される好ましい分岐水溶性ポリエステルアミドは、30〜75℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。さらに好ましくは、30〜75℃の範囲のTg、500〜2500、好ましくは800〜2000、より好ましくは1000〜1600、の範囲の数平均分子量Mn、および250〜350mgKOH/g、好ましくは285〜350mgKOH/g、の範囲のOH価を有するポリエステルアミドである。
【0010】
本発明に従う組成物において使用される分岐水溶性ポリエステルアミドの一般的分類および一般的合成は、例えば国際公開WO99/16810から公知である。米国特許第3709858号明細書は、保護コーティング組成物中の膜形成性バインダー樹脂として有用な硬化性水溶性ポリエステルアミドを記載している。上記組成物は、1〜50重量%の有機共溶媒、好ましくはアルコールまたはグリコール、を含み得る。上記コーティング組成物は、顔料をも含み得る。
【0011】
ポリエステルアミドのMnは、GPC(普遍的較正を使用するポリスチレン標準)によって決定される。TgはDSCによって実験的に測定され、OH価はポリエステルアミド1gに対するKOHのmg数として表わされる。
【0012】
分岐ポリエステルアミドは、いわゆるAB2モノマーの重縮合によって作られ得る。A部分は環式無水カルボン酸に由来し、B部分はジ−β−アルカノールアミンに由来する。
【0013】
一般に、本発明に従って使用されるポリエステルアミドは、
a.少なくとも1の無水物A1、
b.任意的に少なくとも1の無水物A2、
c.少なくとも1のジ−β−アルカノールアミン、および
d.任意的に少なくとも1のモノ酸
に基づき、無水物A1は、無水物の総量に基づいて50〜100%の量で存在し、無水物A2は無水物の総量に基づいて0〜50%の量で存在し、モノ酸は、官能性末端基の0〜25%がモノ酸によって修飾されるような量で存在する。
【0014】
本発明に従って使用されるポリエステルアミドは、少なくとも下記工程を含む方法によって得られ得る。
工程1:無水物の総量に基づいて50〜100%の無水物A1を、所望により0〜50%の無水物A2と共に、少なくとも1のジ−β−アルカノールアミンと反応させて中間生成物を形成すること、および
工程2:第1工程で得られた中間生成物の重縮合反応を行うこと。
ここで、無水物A1は、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸および無水グルタル酸、またはこれらの任意の組合せの群から選択され、無水物A2は、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水フタル酸または無水メチルヘキサヒドロフタル酸、またはこれらの任意の組合せの群から選択される。無水物A1として、無水コハク酸が好ましい。無水物A2として、無水ヘキサヒドロフタル酸が好ましい。上記製造において使用されるジ−β−アルカノールアミンは特に重要ではない。当業者は、どのジ−β−アルカノールアミンが自分の要求に最も良く適するかを容易に決定することができる。好ましくは、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミンまたはジイソブタノールアミン、またはこれらの任意の組合せが使用され、より好ましくは、ジイソプロパノールアミンが使用される。
【0015】
使用される無水物A1および無水物A2の量は、無水物の総量に基づく。すなわち、例えば80%の無水物A1が使用されるときには、20%の無水物A2が使用される。無水物A1および無水物A2は、同じでも異なっていてもよく、また、共に、特定された無水物の混合物から成り得る。すなわち、無水物A1のための2種類の無水物を無水物A2のための2種類の無水物と組み合わせて使用することができる。別の可能性は、無水物A1が混合物から成り、一方、無水物A2が単一の無水物であることであり、あるいは、無水物A2が混合物から成り、一方、無水物A1が単一の無水物であることである。
【0016】
使用される全無水物の50%未満である少量の無水物A2の添加は、ときどき有利であることが分かった。なぜならば、それは、最終コーティングの硬さを改善し得るからである。無水物のための反応体の非常に有利な組み合わせは、80%の無水コハク酸および20%の無水ヘキサヒドロフタル酸であることが分かった。これが、ジ−アルカノールアミンとしてのジイソプロパノールアミンと組み合わされる。
【0017】
第1工程は、上記成分のための適する反応温度で行われ、したがって、上記温度は、異なる出発成分を使用するとき、変わり得る。しかし、当業者は、ルーチン実験により、最良の温度または温度範囲を容易に決定することこができる。一般的に適する温度範囲は20〜130℃である。好ましくは、40〜100℃の温度が使用される。第2工程のための温度も、選択された成分に依存し、当業者によって容易に決定され得る。適する温度範囲は120〜180℃、好ましくは130〜170℃であろう。
【0018】
本発明に従って使用されるポリエステルアミドは、少量のモノ酸の添加によって修飾され得る。「モノ酸」は、別の分子上の適する官能基との反応のために利用できる1のカルボン酸基を有する、炭素数20以下のカルボン酸を意味する。モノ酸の添加は、上述した方法において製造されたポリエステルアミド上に存在する官能性末端基の修飾をもたらすであろう。「少量」は、官能性末端基の0〜25%がモノ酸によって修飾されることを意味する。好ましくは、官能性末端基の0〜15%が修飾され、より少ない量の修飾が好ましい。なぜならば、この方が、水溶性に好ましい影響を及ぼすからである。モノ酸の選択は、その量が上限を超えない限り、特に重要ではない。適するモン酸の例は、安息香酸、2−エチルヘキサン酸、酢酸、および酪酸である。安息香酸および2−エチルヘキサン酸が好ましい。
【0019】
モノ酸によって修飾される、本発明に従って使用されるポリエステルアミドは、下記の更なる工程を含む上記方法によって得られ得る。
工程3:工程2の反応混合物にモノ酸を添加すること。
【0020】
この工程のための温度は、工程2のための温度と同じ範囲内であり得る。したがって、工程3を工程2と一緒にすることが可能である。
【0021】
工程1における成分間の割合は、ポリエステルアミドが使用されるであろうところの特定の組成物の要求に合うように自由に選択され得る。ポリエステルアミドおよびその組成物の取扱を可能にするために、主な制限的特徴は粘度であろう。粘度が高すぎると、例えば本発明に従って使用されるポリエステルアミドを他の成分および/または溶媒と混合することが非常に困難であろう。アミンと無水物との適するモル比は、1.0〜1.6である。好ましくは、1.1〜1.3の比が使用される。
【0022】
方法の工程2は、工程1の直後またはある一定の時間をおいた後に行われ得る。方法の工程2では、第1工程で得られた中間生成物が縮合されてポリマー状物質を形成する。この種の重縮合反応は一般に公知である。
【0023】
方法の工程1で使用される無水物とジ−β−アルカノールアミンとの比に依存して、酸末端基よりも多い量のヒドロキシル末端基を有するポリエステルアミドが得られる。これらの末端基は、ときどき、可能性末端基と言う。ヒドロキシル基の量は、ヒドロキシル価(OH価、OHV)として、ポリエステルアミド1gにつき使用されたKOHのmg数で表わされる。本発明に従って使用されるポリエステルアミドのための一般的に適するOH価は、250〜350mgKOH/gの範囲である。好ましい範囲は、285〜350である。OH価が好ましい範囲内であると、最終コーティングの硬度と水溶性との間の最適なバランスが得られ得る。
【0024】
酸価は一般に、本発明に従って使用されるポリエステルアミドのためのヒドロキシル価よりもはるかに低い。酸基の数は、KOHによる酸/無水物基の滴定により決定される。酸基の量は、酸価(AV)として、mgKOH/gポリエステルアミドで表わされる。本発明に従って使用されるポリエステルアミドのための一般に得られる酸価は、0〜20mgKOH/g、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜10、最も好ましくは5未満である。酸価が好ましい範囲内であると、最適な安定性が得られ得る。
【0025】
工程2での縮合反応において得られたポリエステルアミドの分子量は、広範囲で変わり得、主として、製造法における反応体の割合によって決定される。一般に、数平均分子量(Mn)として決定される分子量が500〜2500、好ましくは800〜2000、より好ましくは1000〜1600であるポリエステルアミドが得られるであろう。Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、普遍的較正を使用するポリスチレン標準に対して決定される。
【0026】
本発明に従うポリエステルアミドのガラス転移温度(Tg)は、上記方法の工程1および2における出発成分の選択によって変わり得、したがって要求に応じて誂えられ得る。好ましくは、Tgが30〜75℃の範囲内である。
【0027】
驚いたことに、本発明に従って使用されるポリエステルアミドは、比較的低い分子量(Mn)で高いTgを有することが分かった。高いTgは、高いTgを有する樹脂または他の成分を使用するとき、最終コーティングの硬度要件故に有利である。Tgは、示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/分の走査速度で測定される。
【0028】
ポリエステルアミドと組み合わせて使用され得る溶媒は、凝集性を有する溶媒であり、大気圧で130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される。例えば、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。これらの溶媒は、水に完全にまたは部分的に溶解し、あるいは、水と完全にまたは部分的に混和する。溶媒は適切には、25℃の水100部に対して少なくとも5部の水溶解性を有する。
【0029】
ポリエステルアミドおよび溶媒の他に、オーバー噴霧および/またはアンダー噴霧の問題を克服するためにベースコートに添加される組成物は、好ましくは水を含む。
【0030】
添加剤組成物のpHは通常、5〜12、より好ましくは6〜9の範囲である。
【0031】
本発明に従うポリエステルアミド含有組成物の添加によりオーバー噴霧および/またはアンダー噴霧に関してその性能が改善されるところのベースコート組成物は、従来公知の水性ベースコート組成物である。その例は、上述した欧州特許出願公開EP−A−0287144およびEP−A−1242548ならびに欧州特許出願公開EP−A−0608773に見ることができる。一般に、一成分(1K)ベースコートが包含される。それらは、水、樹脂、例えばポリアクリレート、ポリエステル、および/またはポリウレタン、顔料、例えば金属顔料、マイカ、および無機または有機着色剤、ならびに他の通常の添加剤、例えばレオロジー調整剤、乳化剤、および溶媒、を含む。本発明に従う水性ベースコート組成物は、樹脂および顔料を含み、さらに、(i)水溶性分岐ポリエステルアミドおよび(ii)130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される溶媒を含む。
【0032】
なお、上記樹脂は、上記分岐ポリエステルアミドとは異なる膜形成性樹脂である。
【0033】
好ましい実施態様では、本発明に従う水性ベースコート組成物が、10〜80重量%の樹脂、0.5〜25重量%の顔料、0.5〜25重量%のポリエステルアミド、5〜42重量%の有機溶媒(ポリエステルアミドの添加によって生じる有機凝集性溶媒を包含する)、0.5〜10重量%の添加剤、例えばレオロジー調整剤および分散剤、および残りの水を含む。
【0034】
適切には、本発明に従うコーティング組成物が、420g/リットル以下の揮発性有機含量(VOC)を有する。
【0035】
その粘度は適切には、当業者が利用できる噴霧装置を使用して噴霧され得るような粘度である。実際には、これは、1000s−1のせん断速度で40〜80mPa.sの範囲の粘度を意味する。
【0036】
本発明に従うコーティング組成物は、金属またはプラスチックの基体に噴霧によって適切に施与され得る。硬化は、環境温度で行われ得、または硬化時間を短くするために高められた温度で、例えば50〜120℃の範囲の温度で10〜30分間行われ得る。クリアコートが、ベースコート上に、ウエットオンウエットで施与され得る。あるいは、ベースコートが、クリアコートの施与の前に部分的にまたは完全に硬化され得る。これは全て、当業者に公知である。
【0037】
本発明に従うコーティング組成物は、コーティングされた基体の製造のために、例えば自動車の再仕上げ工業における、および大型輸送車両、例えば列車、トラック、バスおよび飛行機、の仕上げのために、特に適する。コーティング組成物は、自動車の最初の仕上げのためにも使用され得る。
【実施例】
【0038】
アンダー噴霧吸収を決定するために使用される方法
ベースコートおよび添加剤組成物の噴霧できる状態の(Ready-to-spray:RTS)混合物が、噴霧機の使用により施与された。使用されたスプレイガンはSatajet RP ノズル1.4であり、試験条件は30〜35℃および15〜30%相対湿度であった。フィラーで前コーティングされた50x80cmのパネルに、試験されるべき組成物が噴霧された。噴霧プログラムは以下の通りである。試験されるべきRTSベースコート組成物の第1の通常の層が施与されてパネルの1/3を覆った。ベースコートがスプレイガンによる吹き付けによりマット状(mat)になりそして乾燥された後、第2のミスト(mist)コート層が第1の層の上に施与されてパネルの1/2を覆った。膜の乾燥後、RTS混合物の第3の完全な層が施与されてパネルを完全に覆った。すべての層の施与の間、組成物は、パネル上に右から左へ噴霧された。パネルが、検出されたアンダー噴霧粗さの程度に関して目視評価された。
【0039】
粘度を測定するために使用された方法:ウエットオンウエット
回転粘度計の使用による、偽プラスチック性またはチキソトロピー性生成物の粘度の決定。
【0040】
RTS組成物の揮発性有機化合物レベルが、下記式に従って、全体積から水を差し引いたものに基づいて計算された。
VOC={(100−[Wv−Ww])/(100−[Dc×Ww/Dw])}×Dc×1,000
ここで、Wv=全揮発性化合物の重量%
Ww=水の重量%
Dc=23℃でのコーティング組成物の密度(g/リットル)
Dw=23℃での水の密度(g/リットル)
【0041】
水感受性を測定するために下記方法が使用された。
1) 水滴に対する抵抗
暴露結果が1〜10段階で評価される。1=抵抗に非常に劣り、コーティングの膨潤または溶解が強い;10=抵抗に優れ、目に見える変化や軟化がない。
暴露系:ベースコートのみ
施与後のベースコートのエージング時間:室温で24時間
暴露時間:4日間
【0042】
2) 湿気、連続縮合38℃、暴露系に対する抵抗:ベースコート/クリアコート系
施与後のベースコート/クリアコート系エージング時間:室温で1週間
クリーブランド(Cleveland)湿度キャビネットでの暴露時間:240時間
暴露直後に、膨れの目視判定が行われる。膨れの密度が、F:少し;M:中位;MD:中〜密;D:密として評価される。膨れの大きさは0〜9段階で評価される[0:非常に大きい膨れ、9:非常に小さい膨れ]。
【0043】
Sikkens Autowave (商品名)は、Sikkensからの市販の水性ベースコート系であり、再仕上げおよび軽工業市場に利用可能である。色混合機によって色を混合し、そして、使用の直前に脱イオン水を添加して噴霧施与のために粘度を下げる。
【0044】
Bayhydrol (商品名)VP LS2952は、Bayerから商業的に利用可能なポリウレタンバインダーである。
【0045】
Setalux(商品名) 6801はポリアクリレート分散物であり、Setal 6306 (商品名)はポリエステル分散物である。共に、Nuplexから商業的に利用できる。
【0046】
Pluriol (商品名) P600は、BASFから商業的に利用できるポリプロピレングリコールオリゴマーである。
【0047】
Cymel (商品名) 303LFは、Cytec Industriesから商業的に利用できる水分散性ヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0048】
ZW6015およびZW6017は、本発明に従って使用される水溶性分岐ポリエステルアミドである。
【0049】
ZW6015の製造
ガラス反応容器にジイソプロパノールアミン(615g)を充填し、次いで、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。アミンがいったん溶融されると(Tm=42℃)、攪拌機を始動させた。無水コハク酸(385g、Tm=119℃)が、30分にわたって、反応混合物に添加された。無水物が全て添加された後、反応混合物が160℃に加熱された。生成する反応水のほとんどが約1時間で留去された。次いで、圧力が30mbarまでゆっくり低下され、その後、酸価が3.9mgKOH/g樹脂の値に達するまで反応が続けられた。反応容器が次いで排液(discharge)され、生成物が室温まで冷却された。
【0050】
ZW6017の製造
ガラス反応容器にジイソプロパノールアミン(759g)を充填し、次いで、窒素雰囲気下で80℃に加熱した。アミンがいったん溶融されると(Tm=42℃)、攪拌機を始動させた。無水ヘキサヒドロフタル酸(146g、Tm=34℃)が15分にわたって添加された。次いで、無水コハク酸(380g、Tm=119℃)が、45分にわたって反応混合物に添加された。無水物が全て添加された後、反応混合物が160℃に加熱された。生成する反応水のほとんどが約1時間で留去された。次いで、圧力が30mbarまでゆっくり低下され、その後、酸価が2.5mgKOH/g樹脂の値に達するまで反応が続けられた。反応混合物が140℃に冷却され、その後、脱イオン水(735g)が反応容器に添加され、2.5Pa.sの粘度に達した。反応容器が次いで排液(discharge)され、生成物が室温まで冷却された。
【0051】
ZW6015およびZW6017の特性は以下の通りであった。
【0052】

【0053】
結果
50%の共溶媒プロピレングリコールモノプロピルエーテルまたはジエチレングリコールメチルエーテルおよび50%の水の混合物の10%および20%のAutowave (商品名)への添加は、得られたコーティング組成物の鋼パネルへの施与および乾燥の後に、改善されたオーバー噴霧/アンダー噴霧吸収を示さなかった。上記添加はまた、420g/リットルより高いVOCをもたらした。
表1は、10%添加剤レベルを使用する比較例に関して得られたアンダー噴霧吸収の結果である。
【0054】
【表1】

【0055】
ベースコート組成物が420g/リットルより少し下のVOCを含むように、Autowave (商品名)がいくつかの組成物と混合された。
【0056】
【表2】

【0057】
許容され得る粘度は、標準(比較例1)の粘度から離れすぎていない施与粘度である。
表2の結果から分かるように、許容され得る粘度は、本発明に従う添加剤によって達成される。本発明に従う添加剤は30重量%の固形分に基づき、これは、VOCを合致させたまま、より多くの凝集性溶媒が添加され得ることを意味する。添加剤中におけるポリアクリレートおよびポリウレタンバインダーの場合には、許容され得る粘度を達成するために、10重量%より多くの固体バインダーが添加され得ない。これは、凝集性溶媒があまり使用され得ないことを意味する。例えば10重量%より多くのポリウレタンの組み入れは、許容され得ないほどに高い粘度をもたらすであろう。
【0058】
鋼パネルに、表3に示すRTS混合物が噴霧された。水滴に対する抵抗が、乾燥したベースコート系に関して測定された。耐湿性が、完全なベースコート/クリアコート系に関して試験された。
【0059】
【表3】

【0060】
表3から分かるように、ポリエステル含有添加剤を含む組成物の特性は劣っていた。これに対して、本発明に従う組成物は、有意に良好であり、標準(比較例1)と同じレベルであった。
【0061】
鋼パネルに、表4に示すRTS混合物を噴霧して、ペルソ(Persoz)硬度および粘着性を決定した。さらに、アンダー噴霧吸収を目視評価するために、より大きいパネルにRTS混合物を噴霧した。組成物は、使用された非VOC成分において互いに異なる。乾燥したベースコートの関係する特性を表5に示す。
【0062】
結果から、本発明に従う組成物は、特に乾燥後に、標準(比較例1=CE1)と実質的に同じ粘着性および硬度の値を示し、比較例11〜14よりも良好な値を示すことが分かる。本発明に従う組成物は、比較例11〜14で使用された組成物と対照的に、特性に負の影響を及ぼさない。
【0063】
結果はまた、アンダー噴霧吸収における本発明に従う組成物の優位性を示す。本発明に従う添加剤組成物(実施例1〜3)の使用故に、本発明に従うコーティング組成物は、420g/リットルを超えないVOCを有し、一方、比較例7〜10に従うコーティング組成物はより高いVOCを有することに注目されるべきである。
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、樹脂および顔料を含む水性ベースコート組成物において、上記組成物が、(i)水溶性分岐ポリエステルアミドおよび(ii)130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される溶媒をさらに含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
ポリエステルアミドのTgが30〜75℃の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリエステルアミドが500〜2500の範囲のMnおよび250〜350mgKOH/gの範囲のOH価を有することを特徴とする請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
ポリエステルアミドが下記工程
a)無水物の総量に基づいて50〜100重量%の無水物A1を、所望により0〜50重量%の無水物A2と共に、少なくとも1のジ−β−アルカノールアミンと反応させて中間生成物を形成させること、および
b)第1工程で得られた上記中間生成物の重縮合反応を行うこと
を含む方法によって得られ得るものであり、ここで、無水物A1は無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸および無水グルタル酸ならびにこれらの任意の組合せの群から選択され、無水物A2は無水ヘキサヒドロフタル酸、無水フタル酸または無水メチルヘキサヒドロフタル酸、またはこれらの任意の組合せの群から選択される、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
ジアルカノールアミンが、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミンおよびジイソブタノールアミンから選択されることを特徴とする請求項4記載の組成物。
【請求項6】
溶媒が、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびジプロピレングリコールジメチルエーテルから選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
(i)1〜50重量%の水溶性分岐ポリエステルアミド、
(ii)130〜250℃の範囲の沸点を有するアルコール、エーテルおよびエーテルアルコールの群から選択される、1〜50重量%の溶媒、および
(iii)0〜98重量%の水
を含み、(i)、(ii)および(iii)の合計が100%である、添加剤組成物。
【請求項8】
ポリエステルアミドのTgが30〜75℃の範囲であることを特徴とする請求項7記載の組成物。
【請求項9】
ポリエステルアミドのMnが500〜2500の範囲であり、OH価が250〜350mgKOH/gの範囲であることを特徴とする請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
溶媒が、2−エチルヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、およびジプロピレングリコールジメチルエーテルから選択される、請求項7〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
乾燥された請求項1〜6のいずれか1項記載のコーティング組成物で少なくとも部分的にコーティングされた基体。


【公表番号】特表2009−541510(P2009−541510A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515843(P2009−515843)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055941
【国際公開番号】WO2007/147784
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】