説明

ポリエステル中空長繊維紡糸型不織布およびその製造方法

【課題】ポリエステル長繊維不織布の製造の際に、中空口金を用いて製造された不織布の厚さ感、保温性、および吸音性を高めたポリエステル中空長繊維不織布およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法は、ポリエステルを中空口金を用いて中空形で紡糸し延伸して、10乃至80μmの直径を有するポリエステルフィラメント繊維に製造するステップと、前記製造されたポリエステルフィラメント繊維を連続移動するネット上にウェブとして積層するステップと、前記積層されたフィラメントウェブを熱接着させ、または、ニードルパンチングするステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル中空長繊維不織布およびその製造方法に係り、より詳しくは、ポリエステル長繊維不織布の製造の際に、中空口金を用いて製造された不織布の厚さ感、保温性、および吸音性を高めたポリエステル中空長繊維不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空繊維を用いた不織布は、短繊維不織布だけであった。このような短繊維不織布は、長さ20乃至100mm程度の短繊維をカーディング工程を経て、機械的または熱的結合を形成させるため、その生産性が低く、多数の工程を経ることにより、加工費も高くなるという欠点があった。
【0003】
また、長繊維不織布では、中空繊維を形成するための中空口金が適用されないため、中空長繊維不織布を提供することができなかった。このため、建材用の保温材等に用いられるポリエステルニードルパンチ不織布は、前記非中空型長繊維不織布であり、空気を含有していないので、熱伝導性と熱貫流率が高い一方、保温性が低く、吸音性に劣るという不具合があった。
【0004】
一方、 「長繊維不織布および製造方法」との名称で、「ポリ乳酸系重合体からなる長繊維で形成された不織布であって、ポリ乳酸系重合体は、ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸)、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、及び、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体よりなる群から選ばれる100℃以上の融点を有する重合体、または、これらの100℃以上の融点を有する重合体の混合物であることを特徴とするポリ乳酸系重合体からなる長繊維の不織布」が開示されている(例えば、下記の特許文献1参照)。前記長繊維の断面は、様々な形状を有し、その一例として中空型のものが開示されているが、この発明は、生分解性を持たせることを主な目的とするので、使用可能な原料物質が上記のものに限定され、また、図示した中空型長繊維不織布の製造時に発生する問題点、およびそれを解決するための手段等については全く記述されていない。
【0005】
したがって、本発明者らは、上記した従来の長繊維不織布における低い保温性と吸音性等の機能上の問題点を解決する方法について鋭意研究した結果、各種の不織布の製造条件を調節することにより、上記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【特許文献1】韓国特許出願第1996−0042661号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、インライン(In-Line)でのポリエステル中空不織布の生産を可能にし、工程を短縮させ、高速生産を可能にする中空長繊維不織布の製造方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、上記の従来のポリエステル長繊維スパンボンド不織布の欠点を補完し、不織布そのものの熱伝導性と熱貫流率を低下させ、保温性および吸音性を高める中空長繊維不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法は、ポリエステルを中空口金を用いて中空形で紡糸し延伸して、10乃至80μmの直径を有するポリエステルフィラメント繊維に製造するステップと、前記製造されたポリエステルフィラメント繊維を連続移動するネット上にウェブとして積層するステップと、前記積層されたフィラメントウェブを熱接着させ、またはニードルパンチングするステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の構成によれば、前記中空口金は、紡糸口金内の紡糸孔スリットの個数が2乃至4個であり、そのスリットの幅(a)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの間隔(b)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの内径(ID)が0.4乃至1.2mmであり、口金のキャピラリー長が0.1乃至1.0mmであることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の構成によれば、前記不織布は、固有粘度(IV)が0.60乃至0.70であるポリエステルを用いることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の構成によれば、前記紡糸口金を通じた紡糸孔の吐出量が0.1乃至25g/min.holeであることを特徴とする。
【0012】
本発明の他の構成によれば、前記紡糸口金の断面形態が円形または楕円形であることを特徴とする。
【0013】
上記他の目的を達成するために、本発明のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布は、10乃至80μmの直径を有し、同一の重量で円形断面の繊維よりも10%以上の厚さを有し、10%以上の面積中空率を有する中空繊維を含むポリエステル中空長繊維不織布であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布は、不織布を製造するにあたって、中空口金を用いて適切な紡糸条件下で紡糸してウェブを形成し、それをカレンダーを経、さらにそれを熱接着またはニードルパンチングし、中空型不織布を製造することにより、優れた保温性、厚さ感およびバルキー感を有し、一層向上した断熱性と吸音性を有することができる。また、既存の短繊維製品として生産したポリエステル中空繊維に比べて工程を大幅に単純化させ、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を添付図面を参照して好適な実施の形態に基づいてより詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明によるポリエステル中空長繊維不織布の製造に用いられる紡糸口金内の紡糸孔を示す断面図であり、図2は、本発明により製造されたポリエステル中空長繊維不織布断面のSEM写真であり、図3は、同一の重量の不織布を同一の荷重で押圧したときの厚さの比較写真である。
【0017】
本発明による不織布は、固有粘度(IV)が0.60乃至0.70、好ましくは0.62乃至0.68であるポリエステルチップを、乾燥機で水分率100ppm、好ましくは50ppm以下となるように結晶化および乾燥させる。万が一、固有粘度(IV)が0.60以下であるポリエステルチップを用いると、不織布の強度が低下する欠点があり、逆に固有粘度(IV)が0.70以上であるポリエステルチップを用いると、紡糸がうまく行われず、高速生産が不可能であるという欠点がある。
【0018】
上記で結晶化されて乾燥したチップを、270乃至320℃、好ましくは280乃至295℃の温度の押出機で溶融させ、図1に示すように、中空用として設計した口金から紡糸する。
【0019】
図1に示す中空用口金は、好ましくは、紡糸口金内の紡糸孔スリットの個数が2乃至4個であり、そのスリットの幅(a)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの間隔(b)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの内径(ID)が0.4乃至1.2mmであり、口金のキャピラリー長が0.1乃至1.0mmであり、紡糸口金内の紡糸孔の個数が1乃至600個である紡糸口金を用い、これにより紡糸孔の吐出量0.1乃至25g/min.holeで紡糸する。この際、口金内の紡糸孔の個数は、冷却効率を勘案して設計しなければならず、口金の形態は、冷却気流と、吐出されないスリットの間隔部、すなわち、ポリマーの接合が行われる部分を勘案して、きれいな断面となるように円形または楕円形で設計しなければならない。スリット幅は、適正水準の口金の背面圧となるように設計する必要があり、広過ぎると、口金プレートの上部にポリマーの溜まりが生じ、流れが不均一になり、紡糸糸切れが生じ、一方、狭過ぎて背面圧が高くなると、口金が損傷してしまう。スリット間隔も、冷却気流を考慮にいれ、 広過ぎるとダイスウェルにより良好な断面が得られず、狭過ぎるようになると中空形成が得られないので、適切に設計する。
【0020】
紡糸されたポリマーは、ハニカム状のチェンバから噴射される10乃至25℃の冷却空気 、好ましくは15乃至20℃の冷却空気により、冷却、固化される。この際、冷却空気の風速は、好ましくは10乃至45m/minであり、より好ましくは25乃至35m/minである。冷却されたポリマーを、空気圧2乃至10kg/cm2、好ましくは4乃至6kg/cm2のイジェクターを用いてフィラメントとして延伸させる。
【0021】
それぞれのフィラメント繊維の直径が10乃至80μm、好ましくは20乃至40μm、より好ましくは25乃至40μmとなるようにフィラメントを紡糸し、このフィラメントを一定の角度と速度で衝突板に衝突させてフィラメントを分散させ、移動されるコンベヤーベルト上に均一に下部の吸入装置を用いて積層させ、ウェブを形成する。前記ウェブの基礎重量は、吐出口金の孔(hole)数、吐出量、およびコンベヤーの速度により調節される。このように形成されたウェブは、一定の形態、物理的特性等を付与するために、熱接着またはニードルパンチングさせることにより、本発明による不織布を製造する。
【0022】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限られないことは言うまでもない。
【0023】
実施例1及び実施例2
通常のポリエステルスパンボンド不織布の生産設備に、ドラフト、背面圧、中空率等を勘案して作製した中空口金を結合した。固有粘度0.65のポリエステルチップを乾燥機で乾燥させ、結晶化して押出機に供給し、連続的に供給されたチップは、高温の押出機で溶融、混合、ミキシングされ、中空口金孔を介して1分当たり約1.7乃至2.8gで紡糸してフィラメントを形成し、冷却室から供給される冷却空気でフィラメントを冷却、固化してフィラメント間の融着を防止し、空気圧4乃至5kg/cm2のイジェクターを用いてフィラメントを延伸させ、フィラメントとしての特性を持たせる。
【0024】
ウェブを形成させるために、前記フィラメントを一定の角度と速度で衝突板に衝突させてフィラメントを分散させ、連続的に移動するコンベヤー上に、下部の吸入装置を用いて均一に積層させてウェブを形成する。この際、コンベヤーベルトの速度を1分当たり約14乃至20mとした。ウェブを固定させるために、カレンダーの温度は約165℃とし、線圧は約60kg/cmとし、また、ウェブに形態安定性および物性水準を持たせるために、ニードルパンチングすることで、下記表1に示す重量および厚さを有する不織布を製造した。このように製造された不織布の各特性を測定し、その結果を表1に示す。表1から明らかなように、本実施例により製造された不織布は、中空率は23乃至25%と良好であり、厚さは25乃至32%増加し、保温性および吸音性に極めて優れている。
【0025】
また、この結果として、生産したポリエステル中空長繊維不織布の断面SEM写真を図2に示し、中空長繊維不織布とモノ長繊維不織布との厚さ差を示すために、実施例1と下記比較例1により製造した不織布を、同一の荷重で押圧したときの厚さ比較写真を図3に示す。
【0026】
比較例1及び比較例2
上記実施例と同じポリマーを用いて、中空口金ではない、既存のモノ口金を用いた以外は、実施例と同様にして行い、下記表1に示す重量および厚さを有する不織布を製造した。このように製造された不織布の各特性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0027】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるポリエステル中空長繊維不織布の製造に用いられる紡糸口金内の紡糸孔を示す断面図である。
【図2】本発明により製造されたポリエステル中空長繊維不織布断面のSEM写真である。
【図3】同一の重量の不織布を同一の荷重で押圧したときの厚さ比較写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを中空口金を用いて中空形で紡糸し延伸して、10乃至80μmの直径を有するポリエステルフィラメント繊維に製造するステップと、
前記製造されたポリエステルフィラメント繊維を連続移動するネット上にウェブとして積層するステップと、
前記積層されたフィラメントウェブを熱接着させ、または、ニードルパンチングするステップと、を含むことを特徴とするポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法。
【請求項2】
前記中空口金は、紡糸口金内の紡糸孔スリットの個数が2乃至4個であり、そのスリットの幅(a)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの間隔(b)が0.05乃至0.3mmであり、スリットの内径(ID)が0.4乃至1.2mmであり、口金のキャピラリー長が0.1乃至1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法。
【請求項3】
前記不織布は、固有粘度(IV)が0.60乃至0.70であるポリエステルを用いることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法。
【請求項4】
前記紡糸口金を通じた紡糸孔の吐出量が、0.1乃至25g/min.holeであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法。
【請求項5】
前記紡糸口金の断面形態が、円形または楕円形であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル中空長繊維紡糸型不織布の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法で製造されたものであって、10乃至80μmの直径を有し、同一の重量で円形断面の繊維よりも10%以上の厚さを有し、10%以上の面積中空率を有する中空繊維を含むことを特徴とするポリエステル中空長繊維紡糸型不織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−174098(P2009−174098A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15300(P2008−15300)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(504244069)トーレ セハン インク (7)
【Fターム(参考)】