説明

ポリエステル樹脂組成物

【課題】明性、低結晶性、溶融粘弾性、耐熱性に優れ、且つ成形加工性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂(A)と、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂組成物(C)であって、ポリエステル樹脂組成物(C)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂と、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂とからなるポリエステル樹脂組成物であって、当該ポリエステル樹脂組成物中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上である、透明性、低結晶性、溶融粘弾性、耐熱性、成形加工性等に優れたポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある)は透明性、機械的性能、耐溶剤性、保香性、耐候性、リサイクル性等にバランスのとれた樹脂であり、ボトルやフィルムなどの用途に用いられている。しかしながらPETには結晶性、溶融粘弾性、耐熱性に関して以下のような欠点が存在する。すなわち、結晶性に関しては、PETは結晶性が高いため、厚みのある成形体やシートを製造しようとすると、結晶化により白化し、透明性を損なってしまう。また、溶融粘弾性に関しては溶融粘弾性が低いため発泡成形ができない。更に耐熱性に関してはPETのガラス転移温度は80℃程度であるため、レトルト処理を行う包材等高い耐熱性が要求される用途には利用できなかった。
【0003】
このため、従来、低結晶性を必要とする用途には1,4−シクロヘキサンジメタノール変性PETやイソフタル酸変性PETといったポリエステル樹脂が用いられてきた。また、発泡体用途にはピロメリット酸変性PETやグリセリン変性PETが用いられている。更に、耐熱性の要求される分野に対しては、ポリエチレンナフタレートやポリアリレート等が用いられてきた。
【0004】
しかし、1,4−シクロヘキサンジメタノール変性PETやイソフタル酸変性PET、ピロメリット酸変性PETやグリセリン変性PETはそれぞれ結晶性や溶融粘弾性は改善されるものの、変性量の制御が難しく発泡成形に高度な熟練が必要であり、更に耐熱性はほとんど改善されない。また、ポリエチレンナフタレートやポリアリレートも耐熱性は改善されるものの、結晶性、溶融粘弾性はPETと同等である。このように従来、高耐熱性、低結晶性、高溶融粘弾性などが同時に要求される用途に適したポリエステル樹脂は知られていなかった。
【0005】
一方、耐熱性のポリエステル樹脂として、PETに3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンで変性したポリエステル樹脂が開示されている(特許文献1および2参照)。しかし当該変性PETは、耐熱性、機械物性、透明性、溶融粘弾性、二次加工性に優れるものの、一般的に溶融粘度が高く、当該変成PET単独では、射出成形やシート成形等の成形加工性に適さない場合がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許2,945,008号公報
【特許文献2】特開2002−69165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は前記の如き状況に鑑み、透明性、低結晶性、溶融粘弾性、耐熱性に優れ、且つ成形加工性にも優れたポリエステル樹脂組成物を提供することにある。更には、該ポリエステル樹脂を用いた射出成形体、シート、フィルム、及び発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂と、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂とからなるポリエステル樹脂組成物であって、当該ポリエステル樹脂組成物中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上であるポリエステル樹脂組成物が、透明性、低結晶性、溶融粘弾性、耐熱性、成形加工性等に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の(1)〜(11)に関する発明である。
(1)環状アセタール骨格を有するジオール単位を2〜50モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位とからなるポリエステル樹脂(a)、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を2〜50モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位とからなるポリエステル樹脂(b)、又は環状アセタール骨格を有するジオール単位を1〜49モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を1〜49モル%含むジカルボン酸構成単位とからなるポリエステル樹脂(c)を1種以上含むポリエステル樹脂(A)と、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂組成物(C)であって、ポリエステル樹脂組成物(C)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【0010】
(2)前記(1)に記載の組成物において、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が1〜95重量%である、成形加工性に優れたポリエステル樹脂組成物。
(3)前記(1)に記載の組成物において、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が2〜35モル%であるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである透明性に優れたポリエステル樹脂組成物。
【0011】
(4)前記(1)に記載の組成物において、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が36モル%以上であるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートであって、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が、85〜95重量%である透明性に優れたポリエステル樹脂組成物。
【0012】
(5)前記(1)に記載の組成物において、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が40〜95重量%であって、ポリエステル樹脂(B)がポリブチレンテレフタレートである透明性に優れたポリエステル樹脂組成物。
【0013】
(6)前記(1)に記載の組成物において、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が5〜95重量%であって、ポリエステル樹脂組成物(C)の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が10モル%以上である発泡性に優れたポリエステル樹脂組成物。
【0014】
(7)前記ポリエステル樹脂組成物を用いて得たポリエステル系射出成形体。(8)前記(3)、(4)又は(5)のポリエステル樹脂組成物を用いて得た、厚み1.6mmにおけるシートの全光線透過率が87%以上である透明ポリエステル系シート。
(9)前記(3)、(4)又は(5)のポリエステル樹脂組成物を用いて得た、厚み0.2mmにおけるシートの曇価が1%以下である透明ポリエステル系シート。
(10)前記(3)、(4)又は(5)のポリエステル樹脂組成物を用いて得た、厚み20μmにおけるフィルムの曇価が5%以下である透明ポリエステル系フィルム。
(11)前記(6)に記載のポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステル系発泡体。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、透明性、低結晶性、溶融粘弾性、耐熱性に優れ、且つ成形加工性に優れており、耐熱透明シートや耐熱発泡体等の有用な素材として用いることができ、本発明の工業的意義は大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)を構成するポリエステル樹脂(a)、(b)、(c)について説明する。
ポリエステル樹脂(a)又は(b)中の環状アセタール骨格を有するジオール単位としては一般式(1):
【化5】

又は一般式(2):
【化6】

で表される化合物に由来するジオール単位が好ましい。一般式(1)と(2)において、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基を表す。R3は炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピル基、イソブチル基である。特に好ましくは、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン等に由来するジオール単位である。
【0017】
また、ポリエステル樹脂(b)又は(c)中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位として、一般式(3):
【化7】

又は一般式(4):
【化8】

で表される化合物に由来するジカルボン酸単位が好ましい。一般式(3)及び(4)において、R3は前記と同様であり、R4及びR5はそれぞれ独立して炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基を表す。R6およびR7はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基、好ましくは水素原子あるいはメチル基を表す。特に好ましくは、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジカルボン酸単位である。
【0018】
ポリエステル樹脂(a)ないし(c)のジオール構成単位とジカルボン酸構成単位はそれぞれ次の通りである。
ポリエステル樹脂(a)は、環状アセタール骨格を有するジオール単位を2〜50モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位からなる。ジオール構成単位の残部は、下記の環状アセタール骨格を有しないジオール単位から成る。
ポリエステル樹脂(b)は、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を2〜50モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール単位からなる。ジカルボン酸構成単位の残部は、下記の環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸単位から成る。
ポリエステル樹脂(c)は、環状アセタール骨格を有するジオール単位を1〜49モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を1〜49モル%含むジカルボン酸構成単位からなる。ジカルボン酸構成単位及びジオール構成単位の残部は、それぞれ、下記の環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸単位、及び環状アセタール骨格を有しないジオール単位から成る。
【0019】
環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位、又は環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合が上記範囲の下限以上とすると、本発明のポリエステル樹脂組成物に低結晶性、高溶融粘弾性などが良好に発現する。また上記範囲の上限以下とすることにより良好な耐衝撃性が得られる。また各構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位、又は環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合は、ポリエステル樹脂組成物に要求される透明性、耐熱性、成形加工性等に応じて、上記範囲の中で適宜選択すればよい。
【0020】
ポリエステル樹脂(a)ないし(c)中の環状アセタール骨格を有しないジオール単位としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル化合物類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の脂環式炭化水素ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール類;前記ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物;及び前記芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物等に由来するジオール単位が例示できる。本発明のポリエステル樹脂組成物(C)の機械的性能の面から特にエチレングリコール単位が好ましい。ポリエステル樹脂(a)のジオール構成単位中のエチレングリコール単位の割合は、好ましくは20〜98モル%、より好ましくは30〜98モル%、特に好ましくは40〜98モル%である。ポリエステル樹脂(b)のジオール構成単位中のエチレングリコール単位の割合は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、特に好ましくは40モル%以上である。ポリエステル樹脂(c)のジオール構成単位中のエチレングリコール単位の割合は、好ましくは20〜99モル%、より好ましくは30〜99モル%、特に好ましくは40〜99モル%である。
【0021】
ポリエステル樹脂(a)ないし(c)中の環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸単位としては、特に制限はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等のジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位が例示できる。
【0022】
機械的性能の面から上記例示したものの中で芳香族ジカルボン酸単位が好ましく、特にテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来する単位が好ましい。ジカルボン酸構成単位中に占める芳香族ジカルボン酸単位の割合は、ポリエステル樹脂(a)では、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上であり、ポリエステル樹脂(b)では、70〜98モル%、より好ましくは80〜98モル%、特に好ましくは90〜98モル%であり、ポリエステル樹脂(c)では、70〜99モル%、より好ましくは80〜99モル%、特に好ましくは90〜99モル%である。上記割合とすることにより、本発明のポリエステル樹脂組成物は耐熱性、機械的性能がより優れたものとなる。
【0023】
また、ポリエステル樹脂(a)ないし(c)には本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール単位やトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール単位、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸単位やトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸単位を導入することもできる。
【0024】
ポリエステル樹脂(a)ないし(c)を製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を適用できる。例えばエステル交換法、直接エステル化法等の溶融重合法又は溶液重合法、固相重合法を挙げることができる。
【0025】
環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂(B)は特に制限されるものではないが、耐熱性、透明性、機械的性能等の点から、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAから選ばれる1種以上のジオールに由来するジオール単位からなる芳香族ポリエステル樹脂が好ましく用いられ、成形加工性、透明性等の点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが特に好ましく用いられる。
【0026】
本発明のポリエステル樹脂組成物(C)は上記のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを混合もしくは混練することにより得られる。
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の配合割合は、物性や用途によって任意に変えることができるが、ポリエステル樹脂組成物(C)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは0.2モル%以上となるように配合することが望ましい。上記値を0.05モル%以上とすることにより、結晶化速度の抑制効果や二次加工性が良好に発現する。尚、成形加工性等の理由から前記割合の和は一般的に48モル%以下とするのが好ましく、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは42モル%以下である。
【0027】
成形加工性、透明性、発泡性に関しては、特に好適な領域がそれぞれ存在する。
ポリエステル樹脂(A)は一般的に溶融粘度が高く、射出成形やシート成形には適さない場合がある。このため、成形加工性に関しては、ポリエステル樹脂(A)の濃度が重要であり、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が1〜95重量%、好ましくは1〜90重量%の範囲である場合に本発明のポリエステル樹脂組成物は適度な溶融粘度を有し、良好な成形加工性を示すことが分かった。ポリエステル樹脂(A)の濃度を上記範囲とすることにより、温度270℃、せん断速度100s-1における溶融粘度が300〜700Pa・sとなり、良好な成形加工性が得られる。
【0028】
透明性に関しては、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和、及びポリエステル樹脂(B)の種類が重要となる。
【0029】
例えば、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が2〜35モル%であるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである場合、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度によらず、ポリエステル樹脂組成物は透明性に優れる。
【0030】
ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が36モル%以上の場合、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートで、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が85〜99重量%の範囲に限り透明性が優れ、実用的性の点から好適な範囲は85〜95重量%である。
【0031】
また、ポリエステル樹脂(B)がポリブチレンテレフタレートである場合、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が40〜99重量%、実用性の点からは40〜95重量%、特に好適には50〜95重量%のときに、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和によらず、ポリエステル樹脂組成物は透明性に優れる。
【0032】
発泡性は、ポリエステル樹脂組成物(C)の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和、及びポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度によることを見出した。具体的には、ポリエステル樹脂組成物(C)の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が10モル%以上、好ましくは10〜48モル%、特に好ましくは15〜48モル%である場合に、本発明のポリエステル樹脂組成物は高い溶融強度を有する。このようなポリエステル樹脂組成物を発泡成形すると独立気泡率の高い発泡体が得られる。また、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が5〜95重量%、好ましくは5〜90重量%、特に好ましくは5〜85重量%の範囲にある場合、本発明のポリエステル樹脂組成物は大きな引張伸び率を示す。このようなポリエステル樹脂組成物を発泡成形すると、発泡倍率の大きい発泡体が得られる。特に以上の両者を満たすポリエステル樹脂組成物は発泡成形時に独立気泡率、発泡倍率が共に優れる、発泡性に優れたものとなる。
【0033】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は溶剤を含んでも良く、また、脂肪族ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリエーテル、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド等の樹脂を単独に又は複数含んでいてもよい。
【0034】
更に用途に応じて各種の成形助剤や添加剤、例えばフィラー、着色剤、補強剤、表面平滑剤、レベリング剤、硬化反応促進剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、増量剤、つや消し剤、乾燥調節剤、帯電防止剤、沈降防止剤、界面活性剤、流れ改良剤、乾燥油、ワックス類、熱可塑性オリゴマー等を含むこともできる。
【0035】
混合、混練には公知の装置を用いることができ、例えばタンブラー、高速ミキサー、ナウターミキサー、リボン型ブレンダー、ミキシングロール、ニーダー、インテンシブミキサー、単軸押出機、二軸押出機などの混合、混練装置を挙げることができる。また、ゲートミキサー、バタフライミキサー、万能ミキサー、ディゾルバー、スタティックミキサーなどの液体混合装置を用いることもできる。
【0036】
混合、混練を行う際、特に溶融混練を行う際にポリエステル樹脂間で一部エステル交換反応が起こることがあるが、エステル交換反応の有無やエステル交換反応の度合いにより本発明の効果が損なわれるものではなく、エステル交換反応が起こった樹脂組成物も本発明のポリエステル樹脂組成物に属するものである。本発明のポリエステル樹脂組成物の透明性に関してはエステル交換反応が進行することにより透明になる場合もある。
【0037】
本発明のポリエステル樹脂組成物は射出成形体、単層又は多層のシート、単層又は多層のフィルム、熱収縮性フィルム、中空容器、発泡体、繊維、溶液型塗料、粉体塗料、トナー、接着剤等種々の用途に用いることができるが、以下の理由により、シート、フィルム、発泡体の用途には特に好適に用いられる。
【0038】
シート用途ではポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような結晶性の樹脂からシートを製造した場合、透明性に劣り、特に2mmを越えるような厚いシートを製造した場合、結晶化が進行し透明性、耐衝撃性が低下する場合がある。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートからなるシートは打ち抜き性、接着性などの二次加工性にも劣る。一方で、ポリエステル樹脂(A)のように環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂のみからなるシートは、低結晶性で二次加工性に優れるものの、ポリエステル樹脂の成形加工性が劣るため、シートの厚みにむらが生じてしまう。
【0039】
これに対し、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂と環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂からなる本発明のポリエステル樹脂組成物は、結晶性が低く、成形加工性に優れ、厚いシート、例えば厚さ1.6mmのシートにおいても透明性が保たれ、また、厚みむらの少ないシートが得られる。特に、180℃における半結晶化時間が300秒以上、より好ましくは350秒以上であり、温度270℃、せん断速度100s-1における溶融粘度が300〜700Pa・s、より好ましくは350〜650Pa・sであるポリエステル樹脂組成物は透明な厚いシートを製造するのに好適に用いることができる(実施例22〜29に示す)。更に、ポリエステル樹脂(A)に由来する良好な二次加工性、耐熱性が付与され、本発明のポリエステル樹脂組成物からは透明性、二次加工性、耐熱性をバランス良く兼ね備えたポリエステル系シートが得られ、その全光線透過率は87%以上、より好ましくは88%以上、特に好ましくは89%以上となる。また、薄いシート、例えば厚さ0.2mmのシートでは、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂に対して僅かな環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂を混合、混練するだけでも、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂、あるいは環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂のシートより高い透明性を示し、その曇価は1%以下、より好ましくは0.9%以下、特に好ましくは0.8%以下となる(実施例30〜38に示す)。特に耐熱性を重視した用途においては、ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が36モル%以上であり、ポリエステル樹脂(A)の濃度が85〜95重量%であるポリエステル樹脂組成物を用いることにより耐熱性、透明性共に優れたシートが得られる。
【0040】
フィルム用途では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのフィルムはしなやかさに劣り、ピンホールが空きやすいという問題がある。これに対し、本発明のポリエステル樹脂組成物は良好な可とう性を有し、高い耐ピンホール性を示す。透明性は上記のように、本発明のポリエステル樹脂組成物の透明性は、適当なポリエステル樹脂(A)の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位及び環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合、及びポリエステル樹脂(B)の種類を選択することにより良好な透明性を有するフィルムが得られ、例えば厚み20μmにおける曇価が5%以下となる。特にポリエステル樹脂(A)の濃度が5〜95重量%である場合には高い引張伸び率を示し、本発明のポリエステル樹脂組成物を用いたフィルムは耐衝撃性にも優れる(実施例39〜46に示す)。
【0041】
また、発泡体用途では、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど一般的な芳香族ポリエステル樹脂では溶融強度が低く、良好な発泡体を得るのが困難である。一方、環状アセタール骨格を有するポリエステル樹脂は溶融強度が高く、独立気泡率の高い発泡体が得られるが、溶融強度が大きくなる程、引張伸び率が低下し発泡倍率の大きな発泡体が得られにくい。これに対し、本発明のポリエステル樹脂組成物は高い溶融強度と大きな引張伸び率を示し、特にポリエステル樹脂(A)の濃度が5〜95重量%であって、エステル樹脂組成物(C)の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が10モル%以上であるものが好ましく、より好ましくは15モル%以上である。上記範囲にあるポリエステル樹脂組成物は溶融強度が1.5〜8.0cNであり、引張伸び率が150〜400%となり、発泡倍率、独立気泡率に優れた良好な発泡体が得られる(実施例47〜52に示す)。
【0042】
本発明の樹脂組成物は用途に応じてそれぞれ公知の方法で成形することができる。例えば成形体用途では通常の射出成形を行うことができるし、シート、フィルム等では押出成形、キャスト成形、カレンダー成形を行うことができる。また発泡体用途では押出発泡成形や型内発泡成形を行うことができる。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。
【0044】
製造例1〜11〔ポリエステル樹脂の合成〕
表1〜4に記載の原料モノマーの所定量を、ジカルボン酸成分100モルに対して0.03モルの酢酸マンガン四水和物の存在下、窒素雰囲気下で200℃迄昇温してエステル交換反応を行った。水、メタノールの留出量が理論量に対して90%以上に達した後、ジカルボン酸成分100モルに対し、酸化アンチモン(III)0.01モルとトリフェニルホスフェート0.06モルを加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270℃、0.1kPa以下で重合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。
【0045】
尚、表中の略記は下記を意味する。
DMT:ジメチルテレフタレート
SPD:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,
8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
DOD:5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキ
シエチル)−1,3−ジオキサン
PMDA:ピロメリット酸
EG:エチレングリコール
SPG:3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,
8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
DOG:5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキ
シエチル)−1,3−ジオキサン
【0046】
参考例1〜3〔ポリエステル樹脂〕
本実施例及び比較例中で使用したポリエステル樹脂を以下に記す。また、これらのポリエステル樹脂に関する評価結果を表5に示す。
(1)PET:ポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット(株)製、商品名:UNIPET RT543)
(2)PEN:ポリエチレンナフタレート(東洋紡績(株)製、商品名:PN−510)
(3)PET−G:1,4−シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート(イーストマン社製、商品名:Eastar PETG 6763)
【0047】
〔ポリエステル樹脂の評価方法〕
(1)極限粘度
混合溶媒(重量比:フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=6/4)を用いて25℃の恒温下ウベローデ粘度計を用いて測定した。
【0048】
(2)溶融粘度
溶融粘度は、(株)東洋精機製作所製、商品名:キャピログラフ 1Cを用いて測定した。キャピラリの径は1mm、長さは10mmであり、測定条件は測定温度270℃、予熱時間3分、せん断速度100sec-1である。
【0049】
(3)半結晶化時間
半結晶化時間は(株)コタキ製作所製ポリマー結晶加速度測定装置(型式:MK−701型)を用い、試料を280℃で2分間溶融させた後、180℃で結晶化させて測定した。尚、測定時間が5000秒を越えても結晶化が完了しない試料については、表中、非晶性と記した。
【0050】
(4)溶融強度
溶融強度は、(株)東洋精機製作所製、商品名:キャピログラフ 1Cを用いて測定した。キャピラリの径は1mm、長さは10mmであり、測定条件は上記溶融粘度が1400Pa・sとなる温度で、クロスヘッド速度10mm/min、巻き取り速度40m/min、予熱時間3分である。
【0051】
(5)ガラス転移温度
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、(株)島津製作所製、示差走査型熱量計(型式:DSC/TA−50WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度20℃/minで測定した。
【0052】
(6)引張伸び率
引張伸び率は(株)オリエンテック製、万能試験機(型式:テンシロン UTC−5T)を用いて、ASTM D638に準じて測定した。
【0053】
表1
製造例番号 製造例1 製造例2 製造例3
ポリエステル樹脂組成
ジカルボン酸成分(モル%)
DMT 100 100 100
ジオール成分(モル%)
SPG/EG 25/75 2/98 45/55
評価結果
極限粘度(dl/g) 0.73 0.71 0.75
溶融粘度(Pa・s) 720 510 840
半結晶化時間(s) 非晶性 110 非晶性
溶融強度(cN) 2.7 1.0 6.8
ガラス転移温度(℃) 98 84 110
引張伸び率(%) 125 280 4
【0054】
表2
製造例番号 製造例4 製造例5 製造例6
ポリエステル樹脂組成
ジカルボン酸成分(モル%)
DMT 100 100 100
ジオール成分(モル%)
SPG/EG 31/69 6/94 20/80
評価結果
極限粘度(dl/g) 0.69 0.65 0.71
溶融粘度(Pa・s) 690 580 620
半結晶化時間(s) 非晶性 145 非晶性
溶融強度(cN) 4.5 1.2 3.1
ガラス転移温度(℃) 104 86 96
引張伸び率(%) 120 205 170
【0055】
表3
製造例番号 製造例7 製造例8 製造例9
ポリエステル樹脂組成
ジカルボン酸成分(モル%)
DMT 100 100 −
SPD/DMT − − 20/80
ジオール成分(モル%)
DOG/EG 20/80 45/55 −
EG − − 100
評価結果
極限粘度(dl/g) 0.68 0.72 0.75
溶融粘度(Pa・s) 660 830 690
半結晶化時間(s) 非晶性 非晶性 非晶性
溶融強度(cN) 2.0 3.0 2.5
ガラス転移温度(℃) 88 95 87
引張伸び率(%) 250 120 80
【0056】
表4
製造例番号 製造例10 製造例11
ポリエステル樹脂組成
ジカルボン酸成分(モル%)
DOD/DMT 20/80 −
PMDA/DMT − 5/95
ジオール成分(モル%)
EG 100 100
評価結果
極限粘度(dl/g) 0.72 0.77
溶融粘度(Pa・s) 640 860
半結晶化時間(s) 非晶性 85
溶融強度(cN) 2.9 3.1
ガラス転移温度(℃) 90 81
引張伸び率(%) 110 80
【0057】
表5
参考例番号 参考例1 参考例2 参考例3
ポリエステル樹脂 PET PEN PET−G
評価結果
極限粘度(dl/g) 0.75 0.67 0.75
溶融粘度(Pa・s) 440 630 580
半結晶化時間(s) 53 230 非晶性
溶融強度(cN) 測定不可 1.1 0.9
ガラス転移温度(℃) 82 120 83
引張伸び率(%) 300 130 240
【0058】
実施例1〜21(ポリエステル樹脂組成物の製造)
表6〜12に記載のポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とをタンブラーにより混合した。この樹脂混合物を、二軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D:25)を用い、シリンダー温度255〜290℃、ダイ温度260〜280℃、スクリュー回転数50rpmの条件で溶融混練を行い、ポリエステル樹脂組成物1〜18を得た。各種評価は製造例と同様に行った。
【0059】
表6
実施例番号 実施例1 実施例2 実施例3
ポリエステル樹脂(A)
製造例1 製造例1 製造例1
ポリエステル樹脂(B) PET PET PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
60 5 95
環状アセタール骨格* 15 1 24
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 520 440 670
半結晶化時間(s) 2940 190 非晶性
溶融強度(cN) 1.8 0.3 2.6
ガラス転移温度(℃) 91 83 97
引張伸び率(%) 390 315 195
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0060】
表7
実施例番号 実施例4 実施例5 実施例6
ポリエステル樹脂(A)
製造例2 製造例3 製造例3
ポリエステル樹脂(B) PET PET PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
50 90 60
環状アセタール骨格* 1 41 27
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 410 680 660
半結晶化時間(s) 80 非晶性 非晶性
溶融強度(cN) 0.3 6.5 4.7
ガラス転移温度(℃) 83 107 99
引張伸び率(%) 320 160 180
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0061】
表8
実施例番号 実施例7 実施例8 実施例9
ポリエステル樹脂(A)
製造例4 製造例4 製造例5
ポリエステル樹脂(B) PET PET PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
1 67 1
環状アセタール骨格* 0.31 20 0.06
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 470 490 470
半結晶化時間(s) 88 430 78
溶融強度(cN) 測定不可 3.5 測定不可
ガラス転移温度(℃) 82 95 82
引張伸び率(%) 310 180 330
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0062】
表9
実施例番号 実施例10 実施例11 実施例12
ポリエステル樹脂(A)
製造例5 製造例6 製造例6
ポリエステル樹脂(B) PET PET PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
10 1 10
環状アセタール骨格* 0.2 0.2 2
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 500 600 380
半結晶化時間(s) 83 88 96
溶融強度(cN) 測定不可 測定不可 0.7
ガラス転移温度(℃) 82 82 83
引張伸び率(%) 200 325 255
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0063】
表10
実施例番号 実施例13 実施例14 実施例15
ポリエステル樹脂(A)
製造例3 製造例4 製造例6

ポリエステル樹脂(B) PBT PBT PBT
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
90 50 90
環状アセタール骨格* 41 16 18
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 600 380 590
半結晶化時間(s) 1870 313 1690
溶融強度(cN) 5.5 2.5 3.6
ガラス転移温度(℃) 104 75 91
引張伸び率(%) 330 285 315
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0064】
表11
実施例番号 実施例16 実施例17 実施例18
ポリエステル樹脂(A)
製造例1 製造例1 製造例7
ポリエステル樹脂(B) PEN PET−G PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
60 60 60
環状アセタール骨格* 15 15 12
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 680 620 520
半結晶化時間(s) 非晶性 非晶性 500
溶融強度(cN) 2.0 1.5 1.6
ガラス転移温度(℃) 109 92 85
引張伸び率(%) 150 270 400
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0065】
表12
実施例番号 実施例19 実施例20 実施例21
ポリエステル樹脂(A)
製造例8 製造例9 製造例10
ポリエステル樹脂(B) PET PET PET
ポリエステル樹脂(A)の濃度(重量%)
60 60 60
環状アセタール骨格* 27 12 12
評価結果
溶融粘度(Pa・s) 650 530 500
半結晶化時間(s) 440 320 390
溶融強度(cN) 2.5 2.0 1.7
ガラス転移温度(℃) 89 84 86
引張伸び率(%) 310 310 320
環状アセタール骨格*:環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合とジオール単位の割合の和(モル%)
【0066】
実施例22〜29、比較例1〜6
表13〜17に記載のポリエステル樹脂組成物あるいはポリエステル樹脂から、二軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D:25)を用い、Tダイ法によりシリンダー温度245〜265℃、Tダイ温度240〜260℃、スクリュー回転数50rpm、冷却ロール温度70〜80℃の作製条件で、厚さ1.6mmと0.8mmのシートを作製した。各種評価は以下に示す方法により行った。
【0067】
〔シートの評価方法〕
(1)成形加工性
シートの厚みを幅方向に1cm間隔で測定して標準偏差を算出し、値が小さいほど成形加工性が良好とした。
【0068】
(2)全光線透過率
全光線透過率は、JIS K−7105、ASTM D1003に準じて1.6mm厚のシートを測定した。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)である。
【0069】
(3)打ち抜き性
1.6mm厚のシートをプレス機((株)アマダ製、型式:トルク−バックプレス、打ち抜き穴:19mmφ、刃:トムソン刃)を使用して評価を行った。打ち抜き性に関する評価は以下に示す基準で行った。
A:完全に抜き打ち出来、かつ、破断面にひげ(削りかす)がない。
B:打ち抜きできるものの、ひげが生じている。
C:抜き打ち困難
【0070】
(4)接着加工性
1.6mm厚のシートを5cm角に切り取った試験片を以下の条件により接着した。
接着剤:THF、塩化メチレン
接着時間:10秒
接着加工性に関する評価は以下に示す基準で行った。
A:完全に接着
B:接着したものの、接着面が白化
C:接着性不良、かつ白化
【0071】
(5)耐熱性
0.8mm厚のシートから、押出方向を縦、幅方向を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出し、この試験片をオーブン内で30分加熱し、加熱後の縦及び横方向の収縮率が10%を越えない最高温度を測定した。
【0072】
表13
実施例番号 実施例22 実施例23 実施例24
ポリエステル樹脂組成物 実施例1 実施例3 実施例5
評価結果
成形加工性 2.9 3.7 4.6
全光線透過率(%) 91 91 90
打ち抜き性 A A A
接着性 A A A
耐熱性(℃) 85 80 95
【0073】
表14
実施例番号 実施例25 実施例26 実施例27
ポリエステル樹脂組成物 実施例13 実施例14 実施例15
評価結果
成形加工性 3.0 1.7 2.1
全光線透過率(%) 91 87 90
打ち抜き性 A A A
接着性 A A A
耐熱性(℃) 100 70 90
【0074】
表15
実施例番号 実施例28 実施例29
ポリエステル樹脂組成物 実施例16 実施例18
評価結果
成形加工性 3.1 2.6
全光線透過率(%) 91 90
打ち抜き性 A A
接着性 A A
耐熱性(℃) 105 80
【0075】
表16
比較例番号 比較例1 比較例2 比較例3
ポリエステル樹脂(組成物) PET 製造例1 製造例3
評価結果
成形加工性 1.8 6.7 12.8
全光線透過率(%) 87 91 91
打ち抜き性 C A A
接着性 C A A
耐熱性(℃) 75 95 105
【0076】
表17
比較例番号 比較例4 比較例5 比較例6
ポリエステル樹脂(組成物) PEN 製造例1 実施例6
評価結果
成形加工性 2.3 12.8 4.2
全光線透過率(%) 88 90 35
打ち抜き性 C A A
接着性 C A A
耐熱性(℃) 115 80 95
【0077】
実施例30〜38、比較例7〜9
次いで、表18〜21に記載のポリエステル樹脂組成物あるいはポリエステル樹脂から、二軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D:25)を用い、Tダイ法によりシリンダー温度255〜275℃、Tダイ温度260〜270℃、スクリュー回転数50rpm、冷却ロール温度70〜80℃の作製条件で、厚さ0.2mmのシートを作製した。各種評価は以下に示す方法により行った。
【0078】
〔シートの評価方法〕
(1)曇価
曇価は、JIS K−7105、ASTM D1003に準じて測定した。0.2mm厚のシートを48時間調湿後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)である。
【0079】
(2)耐衝撃性
耐衝撃性は、0.2mm厚のシートの衝撃破壊強度をオリエンテック社製フイルムインパクト試験機(型式:IFT−60)を用いて測定した。
【0080】
表18
実施例番号 実施例30 実施例31 実施例32
ポリエステル樹脂組成物 実施例7 実施例8 実施例9
評価結果
曇価(%) 0.56 0.66 0.51
耐衝撃性(kg・cm/cm)
1150 340 1200
【0081】
表19
実施例番号 実施例33 実施例34 実施例35
ポリエステル樹脂組成物 実施例10 実施例11 実施例12
評価結果
曇価(%) 0.27 0.64 0.49
耐衝撃性(kg・cm/cm)
1200 1200 1080
【0082】
表20
実施例番号 実施例36 実施例37 実施例38
ポリエステル樹脂組成物 実施例13 実施例14 実施例15
評価結果
曇価(%) 0.33 0.94 0.37
耐衝撃性(kg・cm/cm)
1200 560 1200
【0083】
表21
比較例番号 比較例7 比較例8 比較例9
ポリエステル樹脂(組成物) PET 製造例4 製造例6
評価結果
曇価(%) 4.30 1.85 3.97
耐衝撃性(kg・cm/cm)
1200 280 960
【0084】
実施例39〜46、比較例10〜12
表22〜25に記載のポリエステル樹脂組成物あるいはポリエステル樹脂を、二軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D:25)を用い、Tダイ法によりシリンダー温度240〜260℃、Tダイ温度280℃、スクリュー回転数50rpm、冷却ロール温度70〜80℃の条件下で成膜し、幅120mm、厚さ約0.3mmの未延伸シートを得た。次いで(株)東洋精機製作所製の二軸延伸機を用いて、上記の未延伸シートを90〜110℃で10〜30秒間予備加熱した後、線延伸速度30〜90%/秒、縦、横方向の延伸倍率がそれぞれ4.0倍の条件で、縦及び横方向に同時に延伸した。実施例40、41、比較例10では次いで、延伸したフィルムを緊張状態に保ったまま235〜240℃の雰囲気中で20秒間熱処理を行い、厚さ20μmの延伸フィルムを得た。各種評価は以下に示す方法により行った。
【0085】
〔フィルムの評価方法〕
(1)曇価
曇価は、JIS K−7105、ASTM D1003に準じて測定した。フィルムを48時間調湿後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下で測定した。使用した測定装置は、日本電色工業社製の曇価測定装置(型式:COH−300A)である。
【0086】
(2)衝撃あなあけ試験
JIS P813,ASTM D781に準じて行った。測定機器は、(株)東洋精機製作所製(パンクチャー テスター)を使用した。測定条件は、温度23℃、相対湿度50%である。尚、測定値の単位はkJ/mである。
【0087】
(3)耐ピンホール性
測定機器は、理学工業(株)製ゲルボーフレックスを使用した。ゲルボーフレックスの軸方向を測定方向とした。ピンホールの測定は、ピンホールテスター(微弱電流放電法)を用いて行った。測定環境は温度23℃、相対湿度50%である。
【0088】
表22
実施例番号 実施例39 実施例40 実施例41
ポリエステル樹脂組成物 実施例1 実施例2 実施例4
評価結果
衝撃あなあけ強度 51 46 44
曇価(%) 0.3 0.2 0.2
耐ピンホール性
個/200回 0.0 0.0 0.0
個/400回 0.0 0.0 0.0
個/600回 1.0 1.2 0.9
【0089】
表23
実施例番号 実施例42 実施例43 実施例44
ポリエステル樹脂組成物 実施例13 実施例14 実施例15
評価結果
衝撃あなあけ強度 42 55 43
曇価(%) 0.4 2.1 0.6
耐ピンホール性
個/200回 0.0 0.0 0.0
個/400回 0.0 0.2 0.0
個/600回 0.0 3.3 0.1
【0090】
表24
実施例番号 実施例45 実施例46
ポリエステル樹脂組成物 実施例5 実施例20
評価結果
衝撃あなあけ強度 49 46
曇価(%) 0.5 0.2
耐ピンホール性
個/200回 0.0 0.0
個/400回 0.0 0.0
個/600回 0.3 1.1
【0091】
表25
比較例番号 比較例10 比較例11 比較例12
ポリエステル樹脂(組成物) PET 製造例1 実施例17
評価結果
衝撃あなあけ強度 29 37 48
曇価(%) 0.1 0.5 19.5
耐ピンホール性
個/200回 0.3 0.0 0.0
個/400回 5.3 0.0 0.0
個/600回 12.7 0.0 0.2
【0092】
実施例47〜52、比較例13〜18
表26〜29に記載のポリエステル樹脂組成物あるいはポリエステル樹脂100質量部あたり核剤としてタルク1.5質量部を加え、このものを原料樹脂として、第一押出機(溶融混練用)に供給した。加熱、溶融、混練した後、発泡剤としてイソブタンをポリエステル樹脂100質量部当たり1.7質量部を押出機内に圧入して溶融混練した。次いで当該溶融混練物を第二押出機に供給し、押出機先端の環状ダイスよりチューブ状の発泡体として押出した。チューブ状の発泡体の内面側をマンドレル(円柱状冷却ドラム)表面に接触させると共に発泡体外面に空気を吹き付けながら内外面を冷却しつつ引き取り、次いで押出方向に沿って切り開き、発泡シートを得た。各種評価は以下に示す方法により行った。
【0093】
〔発泡体の評価方法〕
(1)発泡倍率
発泡シートの発泡倍率は、水没法により測定した体積からその密度を求め、かかる密度と用いた未発泡の原料樹脂の密度の比として算出した。
【0094】
(2)独立気泡率
発泡シートの独立気泡率は、ASTM D2856−70に記載されている手順Cに従って、東芝ベックマン(株)の空気比較式比重計930型を使用して測定(発泡シートから縦25mm、横25mmに切り出し(厚みはそのまま)、複数枚を重ねたときに最も25mm厚みに近づく枚数をサンプルカップ内に収容して測定)された発泡シート(複数枚のカットサンプル)の真の体積Vxを用い、次式により独立気泡率S(%)を計算し、N=3の平均値で求めた。
S(%)=[(Vx−W/ρ)×100]/(Va−W/ρ)
Vx:上記方法で測定された複数枚の発泡シートの真の体積(cm3)であり、発泡シートを構成する樹脂の容積と、発泡シート内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。
Va:測定に使用されたカットサンプルの外寸から計算されたカットサンプルの見掛け上の体積(cm3)。
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡シートを構成する樹脂の密度(g/cm3)
【0095】
(3)熱成形性
開口部の直径160mm、深さ35mmの丼形状の金型を用い、単発成形機にて発泡シートを熱成形した。
熱成形性に関する評価は以下に示す基準で行った。
○:賦形性も良好で、ナキ〔表面の亀裂〕、割れの発生が無い事。
△:賦形性はやや不良で、所々ナキ等の発生が見られる。
×:原反自体に伸びが無く、賦形性が不良。
【0096】
(4)耐熱性
発泡体シートから、押出方向を縦、幅方向を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出し、この試験片をオーブン内で30分加熱し、加熱後の縦及び横方向の収縮率が10%を越えない最高温度を測定した。
【0097】
表26
実施例番号 実施例47 実施例48 実施例49
ポリエステル樹脂組成物 実施例1 実施例5 実施例6
評価結果
発泡倍率 7.3 8.8 6.5
独立気泡率(%) 94 92 90
熱成形性 ○ ○ ○
耐熱性(℃) 80 100 95
【0098】
表27
実施例番号 実施例50 実施例51 実施例52
ポリエステル樹脂組成物 実施例14 実施例16 実施例18
評価結果
発泡倍率 7.5 7.1 6.0
独立気泡率(%) 89 91 88
熱成形性 ○ ○ ○
耐熱性(℃) 80 80 75
【0099】
表28
比較例番号 比較例13 比較例14 比較例15
ポリエステル樹脂 PET 製造例3 PEN
評価結果
発泡倍率 発泡せず 3.7 2.3
独立気泡率(%) − 94 44
熱成形性 − ○ ×
耐熱性(℃) − 100 110
【0100】
表29
比較例番号 比較例16 比較例17 比較例18
ポリエステル樹脂(組成物)PET−G 製造例11 実施例2
評価結果
発泡倍率 2.0 シーティング困難 2.2
独立気泡率(%) 31 − 66
熱成形性 ○ − ○
耐熱性(℃) 70 − 70

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状アセタール骨格を有するジオール単位を2〜50モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有しないジカルボン酸構成単位とからなるポリエステル樹脂(a)、環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を2〜50モル%含むジカルボン酸構成単位と環状アセタール骨格を有しないジオール構成単位とからなるポリエステル樹脂(b)、又は環状アセタール骨格を有するジオール単位を1〜49モル%含むジオール構成単位と環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位を1〜49モル%含むジカルボン酸構成単位とからなるポリエステル樹脂(c)を1種以上含むポリエステル樹脂(A)と、環状アセタール骨格を有しないポリエステル樹脂(B)とからなるポリエステル樹脂組成物(C)であって、ポリエステル樹脂組成物(C)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が0.05モル%以上であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(A)中の環状アセタール骨格を有するジオール単位が一般式(1):
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基を表す。)
又は一般式(2):
【化2】

(式中、R1は前記と同様であり、R3は炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基を表す。)
で表されるジオールに由来するジオール単位である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(A)中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位が一般式(3):
【化3】

(式中、R4およびR5はそれぞれ独立して炭素数が1〜10の非環状炭化水素基、炭素数が3〜10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6〜10の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる特性基を表し、R6およびR7はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基を表す。)
または一般式(4):
【化4】

(式中、R3、R4、R6及びR7は前記と同様である。)
で表されるジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
環状アセタール骨格を有するジオール単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、又は5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジオール単位である請求項2記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位が3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、又は5−カルボキシ−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサンに由来するジカルボン酸単位である請求項3記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステル樹脂(A)が芳香族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸構成単位、及び環状アセタール骨格を有するジオール単位を2〜50モル%及びエチレングリコール単位を20〜98モル%を含むジオール構成単位からなるポリエステル樹脂(a)である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
芳香族ジカルボン酸単位がテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上のジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位である請求項6記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
ポリエステル樹脂(B)がテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸から選ばれる1種以上の芳香族ジカルボン酸に由来するジカルボン酸単位とエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAから選ばれる1種以上のジオールに由来するジオール単位からなる芳香族ポリエステル樹脂である請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである請求項8記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が、1〜95重量%である成形加工性に優れた請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が2〜35モル%であるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートである透明性に優れた請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
ポリエステル樹脂(A)中の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が36モル%以上であるポリエステル樹脂であり、ポリエステル樹脂(B)がポリエチレンテレフタレートであって、ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が85〜95重量%である透明性に優れた請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が5〜95重量%であって、ポリエステル樹脂組成物(C)の全ジカルボン酸構成単位中の環状アセタール骨格を有するジカルボン酸単位の割合と、全ジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位の割合の和が10モル%以上である発泡性に優れた請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項14】
ポリエステル樹脂(B)がポリブチレンテレフタレートである請求項8記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項15】
ポリエステル樹脂組成物(C)中のポリエステル樹脂(A)の濃度が40〜95重量%であり、ポリエステル樹脂(B)がポリブチレンテレフタレートである透明性に優れた請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1ないし15に記載のいずれかのポリエステル樹脂組成物を用いて得られるポリエステル系射出成形体。
【請求項17】
請求項12、13又は15に記載のいずれかのポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、厚み1.6mmにおけるシートの全光線透過率が87%以上である透明ポリエステル系シート。
【請求項18】
請求項12、13又は15に記載のいずれかのポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、厚み0.2mmにおけるシートの曇価が1%以下である透明ポリエステル系シート。
【請求項19】
請求項12、13又は15に記載のいずれかのポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、厚み20μmにおけるフィルムの曇価が5%以下である透明ポリエステル系フィルム。
【請求項20】
請求項13記載のポリエステル樹脂組成物を用いたポリエステル系発泡体。

【公開番号】特開2008−223038(P2008−223038A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123309(P2008−123309)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【分割の表示】特願2002−367675(P2002−367675)の分割
【原出願日】平成14年12月19日(2002.12.19)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】