説明

ポリエステル製造用重縮合触媒とこれを用いるポリエステルの製造方法

【課題】成分としてアンチモンを含まないながら、すぐれた触媒活性を有し、すぐれた色調と透明性を有する高分子量ポリエステルを与える新規な重縮合触媒と、そのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、固体塩基100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒が提供される。上記固体塩基としては、好ましくは、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトが用いられる。更に、本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを上記重縮合触媒の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応させることからなるポリエステルの製造方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製造用重縮合触媒とそのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等に代表されるポリエステルは、機械的特性と化学的特性にすぐれており、それぞれの特性に応じて、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気、電子部品のケーシング、その他の種々の成形品や部品等の広範な分野において用いられている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分を主たる構成成分とするポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応や、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とこれを含むオリゴマーを製造し、これを重縮合触媒の存在下に真空中、高温下に溶融重縮合させることによって製造されている。
【0004】
従来、このようなポリエステル製造用重縮合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価ですぐれた触媒活性をもつ触媒であるが、重縮合時に金属アンチモンが析出して、得られるポリエステルが黒ずんだり、また、得られるポリエステルに異物が混入するという問題があるほか(特許文献1参照)、本来、毒性を有するという問題があるので、近年においては、アンチモンを含まない触媒の開発が望まれている。
【0005】
そこで、例えば、すぐれた触媒活性を有し、すぐれた色調と熱安定性を有するポリエステルを与える触媒として、ゲルマニウム化合物からなる触媒が知られているが、この触媒は非常に高価であるのみならず、重合中に反応系から外へ留出しやすいので、反応系の触媒濃度が経時的に変化し、重合の制御が困難になるという問題を有している。
【0006】
他方、グリコールチタネートやチタンアルコキシド等のチタン化合物も、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとのエステル交換によるポリエステル製造用重縮合触媒として用いることができることが既に知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。例えば、テトラアルコキシチタネートからなる重縮合触媒が知られているが(特許文献4参照)、得られるポリエステルが溶融成形時に熱劣化して、着色しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、近年、チタン化合物を重縮合触媒として用いて、高品質のポリエステルを高生産性にて製造する方法が種々、提案されている。例えば、ハロゲン化チタンやチタンアルコキシドを加水分解してチタン水酸化物を得、これを30〜350℃の温度で加熱して、脱水、乾燥し、かくして得られる固体状のチタン化合物を重縮合触媒として用いることが提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
【0008】
しかし、上記チタン化合物を含め、これまで知られているチタン酸からなる重縮合触媒は、なかには、金属の単位重量当たりに高い重合活性を有するものもあるが、しかし、多くの場合、重合活性は高いが、得られるポリエステルは、依然として、溶融成形時に熱劣化して、着色しやすく、また、透明性に劣る傾向があった。
【特許文献1】特開平09−291141号公報
【特許文献2】特公昭46−3395号公報
【特許文献3】特開昭49−57092号公報
【特許文献4】アメリカ特許第5596069号明細書
【特許文献5】特開2001−064377号公報
【特許文献6】特開2001−114885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、従来のポリエステル製造用重縮合触媒における上述した問題を解決するために鋭意研究した結果、チタン酸からなる被覆層を固体塩基の粒子の表面に形成させ、これをポリエステル製造用重縮合触媒として用いることによって、ポリエステルの製造時、分解が抑制されて、金属の単位重量当たり、高い重合活性にて高分子量のポリエステルを与え、しかも、このポリエステルは、溶融成形時、熱劣化による着色が殆どないことを見出して、本発明に至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、アンチモンを含まないながら、すぐれた触媒活性を有し、すぐれた色調と透明性を有するポリエステルを与える新規なポリエステル製造用重縮合触媒と、そのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、固体塩基100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒が提供される。
【0012】
本発明によれば、上記固体塩基は、好ましくは、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトである。
【0013】
更に、本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを上記重縮合触媒の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法が提供される。
【0014】
特に、本発明によれば、好ましい態様として、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、上記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、上記重縮合触媒の存在下でこのオリゴマーを高真空下に高温で溶融重縮合させることを特徴とするポリエステルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造において、本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒を用いることによって、ポリエステルの製造時、ポリエステルの黒ずみやポリエステル中への異物の混入なしに、また、ポリエステルの分解なしに、高い重合活性にて、すぐれた色調と透明性を有する高分子量ポリエステルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、固体塩基100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する固体塩基の粒子からなるものである。
【0017】
本発明において、固体塩基として、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、種々の複合酸化物のほか、アルミニウム、亜鉛、ランタン、ジルコニウム、トリウム等の酸化物等や、これらの複合物を挙げることができる。これらの酸化物や複合物は、一部が炭酸塩等の塩類にて置換されていてもよい。従って、本発明において、固体塩基として、より具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛等や、ハイドロタルサイト等の複合酸化物を例示することができる。なかでも、本発明によれば、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトが好ましく用いられる。
【0018】
本発明において、チタン酸とは、一般式
TiO・nH
(式中、nは0<n≦2を満たす数である。)
で表される含水酸化チタンであって、このようなチタン酸は、例えば、後述するように、ある種のチタン化合物をアルカリ加水分解することによって得ることができる。
【0019】
固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で0.1重量部よりも少ないときは、得られる重縮合触媒の重合活性が低く、高分子量のポリエステルを生産性よく得ることができず、他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で50重量部よりも多いときは、ポリエステルの製造に際して、ポリエステルの分解が起こりやすく、また、得られたポリエステルの溶融成形時に熱劣化による着色が生じやすい。
【0020】
このような本発明による重縮合触媒は、固体塩基の粒子の水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃の温度に保持しつつ、これに固体塩基100重量部に対してTiO換算にて0.1〜50重量部のチタン化合物を加え、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリーをpH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解して、固体塩基の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、このような被覆層を有する固体塩基の粒子を乾燥し、粉砕することによって得ることができる。上記乾燥温度は、好ましくは、60〜180℃の範囲であり、特に好ましくは、100〜130℃の範囲である。
【0021】
本発明による重縮合触媒の調製において、上記アルカリ加水分解によってチタン酸被覆を形成し得るチタン化合物としては、例えば、四塩化チタン等のようなチタンハロゲン化物、シュウ酸チタニルアンモニウム塩等のようなチタン酸塩、テトライソプロポキシド等のようなチタンアルコキシド等を挙げることができるが、しかし、これら例示に限定されるものではない。また、上記加水分解に用いる上記アルカリとしては、例えば、アンモニアや水酸化ナトリウムを例示することができるが、アルカリもまた、上記例示に限定されるものではない。
【0022】
本発明によるポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを上記重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応させることからな。 本発明において、ジカルボン酸としては、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸等によって例示される脂肪族ジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルや、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等によって例示される芳香族ジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルを挙げることができる。また、本発明において、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を例示することができる。
【0023】
上述したなかでは、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられ、また、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0024】
従って、本発明において、ポリエステルの好ましい具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができる。
【0025】
しかし、本発明において、用いることができるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体や、グリコール又はそのエステル形成性誘導体は、上記例示に限定されるものではなく、また、得られるポリエステルも、上記例示に限定されるものではない。
【0026】
本発明による好ましい第1の重縮合触媒は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する水酸化マグネシウム粒子からなる。
【0027】
従って、本発明によれば、第1の重縮合触媒、即ち、表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子は、水酸化マグネシウム粒子の存在下に前記チタン化合物を5〜100℃の範囲の温度、好ましくは、25〜40℃の範囲の温度で加水分解して、水酸化マグネシウムの表面にチタン酸を析出させることによって得ることができる。
【0028】
詳しくは、本発明によれば、水酸化マグネシウムの水性スラリーを上記温度に保持しつつ、これに水酸化マグネシウム100重量部に対してTiO換算にて0.1〜50重量部の前記チタン化合物を加え、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリーをpH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解して、水酸化マグネシウムの表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、このような被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を60〜180℃の温度で乾燥し、粉砕することによって、本発明による第1の重縮合触媒を得ることができる。
【0029】
本発明による第1の重縮合触媒は、別の方法によっても得ることができる。例えば、水酸化マグネシウム粒子の水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃に保持しつつ、これに水酸化マグネシウム100重量部に対してTiO換算にて0.1〜50重量部の前記チタン化合物とアルカリとをほぼ当量比にて加えて、必要に応じて、更にアルカリを加えて、pH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解して、同様に水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、60〜180℃の温度で乾燥し、粉砕することによって得ることができる。
【0030】
本発明において、水酸化マグネシウムのスラリーとは、水溶性マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウムや硝酸マグネシウム等)の水溶性液を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで中和し、水酸化マグネシウムを沈殿させて得られる水性スラリーや、水酸化マグネシウム粒子を水性媒体中に分散して得られるスラリーをいう。上記水溶性マグネシウム塩としては、例えば、塩化マグネシウムや硝酸マグネシウム等が好ましく用いられる。このような水溶性マグネシウム塩の水性溶液をアルカリで中和して、水酸化マグネシウムの水性スラリーを得る場合、水溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリとを同時中和してもよく、また、一方を他方に加えて中和してもよい。
【0031】
また、本発明において、水性スラリーとは、スラリーの分散媒が水又は少量の水溶性有機溶剤を含む水溶液をいい、水性溶液とは、同様に、溶液の溶媒が水又は少量の水溶性有機溶剤を含む水溶液をいい、水性媒体とは、水又は少量の水溶性有機溶剤を含む水溶液をいう。
【0032】
また、上記水酸化マグネシウム粒子は、その由来は、何ら制約されるものではなく、例えば、天然鉱石を粉砕して得られた粉末、マグネシウム塩水溶液をアルカリで中和して得られた粉末等であってもよい。
【0033】
次に、本発明による第2の重縮合触媒は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイト粒子からなる。
【0034】
本発明において、ハイドロタルサイトは、好ましくは、下記一般式(I)
1−x3+(OHn−x/n・mHO … (I)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+及びCu2+から選ばれる少なくとも1種の2価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+及びTi3+から選ばれる少なくとも1種の3価金属イオンを示し、An−はSO2−、Cl、CO2−及びOHから選ばれる少なくとも1種のアニオンを示し、nは上記アニオンの価数を示し、xは0<x<0.5を満足する数であり、mは0≦m<2を満足する数である。)
で表される。
【0035】
特に、本発明においては、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An−がCO2−であるハイドロタルサイト、即ち、一般式(II)
Mg2+1−xAl3+(OH(CO2−x/2・mHO…(II)
(式中、x及びmは前記と同じである。)
で表されるものが好ましく用いられる。このようなハイドロタルサイトは市販品として容易に入手することができるが、必要に応じて、適宜の原料を用いて、従来より知られている方法、例えば、水熱法によって製造することもできる。
【0036】
本発明によれば、第2の重縮合触媒、即ち、表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイト粒子は、ハイドロタルサイトの存在下に5〜100℃の範囲の温度、好ましくは、25〜40℃の範囲の温度で前述したチタン化合物を加水分解して、ハイドロタルサイトの表面にチタン酸を析出させることによって得ることができる。
【0037】
詳しくは、ハイドロタルサイトの水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃に保持しつつ、これにハイドロタルサイト100重量部に対してTiO換算にて0.1〜50重量部の前記チタン化合物を加え、得られた混合物に前記アルカリを加えて、上記スラリーをpH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解することによって、ハイドロタルサイトの表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、60〜180℃の温度で乾燥し、粉砕することに寄って,第2の重縮合触媒を得ることができる。
【0038】
本発明による第2の重縮合触媒は、別の方法によっても得ることができる。例えば、ハイドロタルサイトの水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃に保持しつつ、これにハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算にて0.1〜50重量部の前記チタン化合物とアルカリとをほぼ当量比にて加えて、必要に応じて、更にアルカリを加えて、pH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解することによって、同様にハイドロタルサイトの表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、60〜180℃の温度で乾燥し、粉砕することによって得ることができる。
【0039】
本発明において、ハイドロタルサイトの水性スラリーとは、前述したハイドロタルサイトを前述した水性媒体中に分散して得られるスラリーをいう。
【0040】
一般に、ポリエチレンテレフタレートにて代表されるポリエステルは、次のいずれかの方法によって製造されている。即ち、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸とエチレングリコールに代表されるグリコールとの直接エステル化反応によって、前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得る方法か、又はジメチルテレフタレートに代表されるテレフタル酸ジアルキルエステルとエチレングリコールに代表されるグリコールとのエステル交換反応によって、同様に、前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得る方法である。
【0041】
本発明においても、上述した第1又は第2の重縮合触媒を用いる以外は、従来より知られているように、前述した直接エステル化反応又はエステル交換反応によって前記BHETを含む低分子量のオリゴマーを得、次いで、このオリゴマーを上記重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させることによって、所要の分子量を有するポリエステルを得ることができる。
【0042】
ポリエチレンテレフタレートの製造を例にとって説明すれば、常法に従って、知られているように、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを触媒、例えば、酢酸カルシウムと共に反応槽に仕込み、常圧下に加熱し、エチレングリコールの還流温度で、メタノールを反応系外に留去しつつ、反応させることによって、BHETを含む低分子量のオリゴマーを得ることができる。オリゴマーの重合度は、通常、10程度までである。必要に応じて、加圧下に反応を行ってもよい。留出したメタノールの量にて反応を追跡することができ、通常、エステル化率は95%程度である。
【0043】
また、直接エステル化反応によるときは、テレフタル酸とエチレングリコールを反応槽に仕込み、生成する水を留去しながら、必要に応じて、加圧下に加熱すれば、同様に、BHETを含む低分子量のオリゴマーを得ることができる。このような直接エステル化反応によるときは、予め、製造したBHETを含む低分子量のオリゴマーを原料と共に反応槽に加え、この低分子量のオリゴマーの共存下に直接エステル化反応を行うことが好ましい。
【0044】
次いで、このようにして得られた低分子量のオリゴマーは、重合槽に移送し、ポリエチレンテレフタレートの融点(通常、240〜280℃である。)以上の温度に減圧下に加熱し、未反応のエチレングリコールと反応によって生成したエチレングリコールを反応系外に留去しつつ、同時に、溶融反応物の粘度をモニタリングしながら、上記オリゴマーを溶融重縮合させる。この重縮合反応は、必要に応じて、複数の反応槽を用いて、それぞれの反応槽において、反応温度と圧力を最適に変更させながら行ってもよい。反応混合物の粘度が所要値に達すれば、減圧を止め、例えば、窒素ガスにて重合槽内を常圧に戻して、得られたポリエステルを反応槽から、例えば、ストランド状に吐出させ、水冷し、切断して、ペレットとする。本発明によれば、このようにして、通常、固有粘度〔η〕が0.4〜1.0dL/gのポリエステルを得ることができる。
【0045】
本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒は、前記BHETを含むオリゴマーの製造のための直接エステル化反応やエステル交換反応時に反応系に加えてもよく、また、低分子量のオリゴマーを得た後、これを更に重縮合させる際に反応系に加えてもよい。また、本発明による重縮合触媒は、そのまま、粉末状で反応系に加えてもよく、また、原料として用いるグリコールに分散させて、反応系に加えてもよい。しかし、本発明による重縮合触媒は、グリコール、特に、エチレングリコールに容易に分散させることができるので、好ましくは、前記BHETを含むオリゴマーの製造のための直接エステル化反応やエステル交換反応に際して、反応系に加えて用いられる。
【0046】
本発明による重縮合触媒は、用いるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体100モル部に対して、通常、1×10−5〜1×10−1モル部の範囲で用いられる。用いるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体100モル部に対して、本発明による重縮合触媒の割合が1×10−5モル部よりも少ないときは、触媒活性が十分でなく、目的とする高分子量のポリエステルを得ることができないおそれがあり、他方、1×10−1モル部よりも多いときは、得られるポリエステルが熱安定性に劣るおそれがある。
【0047】
本発明による重縮合触媒はいずれも、溶融重合のみならず、固相重合や溶液重合においても、触媒活性を有しており、いずれの場合にも、ポリエステルの製造に用いることができる。
【0048】
本発明による重縮合触媒は、成分として、アンチモンを含まないので、得られるポリエステルに黒ずみを与えたり、得られるポリエステル中に異物として混入することがなく、しかも、アンチモンを成分として含む触媒と同等又はそれ以上の触媒活性を有し、すぐれた色調と透明性を有するポリエステルを得ることができる。しかも、本発明による重縮合触媒は、毒性がなく、安全である。
【0049】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステルの製造において、チタン酸の酸触媒作用は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体のカルボニル基にルイス酸として配位して、グリコールの上記カルボニル炭素への攻撃を容易にすると同時に、グリコールの解離をも促進して、その求核性を大きくすることであると推測される。しかし、この酸触媒作用が強すぎるときは、望ましくない副反応が起こって、ポリエステルの分解反応や着色を招くとみられる。ここに、本発明による重縮合触媒によれば、チタン酸からなる被覆層を固体塩基である水酸化マグネシウムやハイドロタルサイトの粒子の表面に形成することによって、チタン酸の酸触媒作用が適度になる結果、すぐれた色調と透明性を有する高分子量ポリエステルを与えるものとみられる。
【0050】
しかし、本発明によれば、ポリエステルの製造において、本発明による重縮合触媒を用いる利点を損なわない範囲において、従来より知られている重縮合触媒、例えば、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、アルミニウム等の化合物からなる重縮合触媒を併用してもよい。更に、必要に応じてアルカリ金属化合物、熱安定性向上のため、リン酸化合物を併用してもよい。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、得られたポリエステルの固有粘度は、ISO1628−1によって測定し、色調は、45°拡散方式色差計(スガ試験機(株)製SC2−CH型)を用いて測定した。また、得られたポリエステルのヘイズ値は、ポリエステルを280℃で加熱溶融し、段付き角板を成形して、JIS K−7136による5mm厚さの各板について測定したものである。
【0052】
参考例1
(水酸化マグネシウムの水スラリーの調製)
水5Lを反応器に仕込み、これに4モル/Lの塩化マグネシウム水溶液16.7Lと14.3モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液8.4Lとを撹拌下に同時に加えた後、170℃で0.5時間水熱反応を行った。このようにして得られた水酸化マグネシウムを濾過、水洗し、得られたケーキを水に再び懸濁させて、水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)を得た。
【0053】
参考例2
(ハイドロタルサイトの水スラリーの調製)
3.8モル/L濃度の硫酸マグネシウム水溶液2.6Lと0.85モル/L濃度の硫酸アルミニウム水溶液2.6Lとの混合溶液と9.3モル/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液2.8Lと2.54モル/L濃度の炭酸ナトリウム水溶液2.6Lとの混合溶液を攪拌下に同時に反応器に加えた後、180℃で2時間水熱反応を行った。反応終了後、得られたスラリーを濾過、洗浄した後、乾燥、粉砕して、Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.48HOなる組成を有するハイドロタルサイトを得た。このハイドロタルサイトを水に懸濁させて、ハイドロタルサイトの水スラリー(100g/L)を得た。
【0054】
実施例1
(重縮合触媒Aの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)0.016Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)0.016Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムの水スラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.02時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Aを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で、0.1重量部であった。
【0055】
(ポリエステルaの製造)
側管を取付けたガラス製反応槽にテレフタル酸ジメチル13.6g(0.070モル)、エチレングリコール10.0g(0.16モル)、酢酸カルシウム二水和物0.022g及び重縮合触媒A0.0012g(2.1×10−5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を仕込み、この反応槽の一部を温度197℃の油浴に入れ、テレフタル酸ジメチルをエチレングリコールに溶解させた。反応槽の底部に届くように、キャピラリーを反応管内に挿入し、このキャピラリーを利用して、反応槽内に1時間窒素を吹き込んで、生成したメタノールの大部分を留出させながら、2時間加熱を続けて、BHETを含むオリゴマーを得た。
【0056】
次いで、222℃で15分間加熱すると、エチレングリコールが留出して、重縮合が開始した。この後、283℃に昇温し、この温度に保持すると、エチレングリコールが更に留出し、重縮合が進行した。10分後、減圧を開始し、15分間かけて、27Pa以下まで圧力を低減した。その後、3時間で重縮合を終了した。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0057】
実施例2
(ポリエステルbの製造)
テレフタル酸43g(0.26モル)とエチレングリコール19g(0.31モル)を反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下に攪拌して、スラリーとした。この反応槽の温度を250℃、大気圧に対する相対圧力を1.2×10Paに保ちながら、4時間かけてエステル化反応を行った。このようにして得られた低分子量オリゴマーのうち、50gを窒素ガス雰囲気下、温度250℃、常圧に保持した重縮合反応槽に移した。
【0058】
重縮合触媒A0.0022g(3.9×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を予めエチレングリコールに分散させてスラリーとし、このスラリーを上記重縮合反応槽に加えた。この後、反応槽内を3時間かけて250℃から280℃まで昇温し、この温度を保持すると同時に、1時間かけて常圧から絶対圧力40Paに減圧して、この圧力を維持しながら、更に、2時間加熱を続けて、重縮合反応を行った。重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0059】
実施例3
(重縮合触媒Bの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)0.16Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)0.16Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Bを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、チタン酸換算で、1.0重量部であった。
【0060】
(ポリエステルcの製造)
上記重縮合触媒Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0061】
実施例4
(ポリエステルdの製造)
上記重縮合触媒Bを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0062】
実施例5
(重縮合触媒Cの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)1.6Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)1.6Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25Lの反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Cを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で、10重量部であった。
【0063】
(ポリエステルeの製造)
上記重縮合触媒Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0064】
実施例6
(ポリエステルfの製造)
上記重縮合触媒Cを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0065】
実施例7
(重縮合触媒Dの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)3.2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)3.2Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に4時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Dを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で、20重量部であった。
【0066】
(ポリエステルgの製造)
上記重縮合触媒Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0067】
実施例8
(ポリエステルhの製造)
上記重縮合触媒Dを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0068】
実施例9
(重縮合触媒Eの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.2g/L)8.0Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)8.0Lを調製した。参考例1で得られた水酸化マグネシウムのスラリー(123g/L)9.0Lを40L容量の反応器に仕込んだ後、この水酸化マグネシウムのスラリーにそのpHが10.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に10時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして、表面にチタン酸からなる被覆層を有する水酸化マグネシウムの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Eを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で、50重量部であった。
【0069】
(ポリエステルiの製造)
上記重縮合触媒Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0070】
実施例10
(ポリエステルjの製造)
上記重縮合触媒Eを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0071】
実施例11
(重縮合触媒Fの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.4g/L)0.07Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で100g/L)0.07Lを調製した。参考例2で得られたハイドロタルサイトの水スラリー(100g/L)5.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトのスラリーにそのpHが9.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして、表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイト粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Fを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で、1.0重量部であった。
【0072】
(ポリエステルkの製造)
上記重縮合触媒Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0073】
実施例12
(ポリエステルlの製造)
上記重縮合触媒Fを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表1に示す。
【0074】
実施例13
(重縮合触媒Gの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.4g/L)0.72Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で100g/L)0.72Lを調製した。参考例2で得られたハイドロタルサイトの水スラリー(100g/L)5.0Lを25Lの反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトのスラリーにそのpHが9.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成し、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このような水スラリーからハイドロタルサイトを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して本発明による重縮合触媒Gを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で、10重量部であった。
【0075】
(ポリエステルmの製造)
上記重縮合触媒Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0076】
実施例14
(ポリエステルnの製造)
上記重縮合触媒Gを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0077】
実施例15
(重縮合触媒Hの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.4g/L)3.6Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で100g/L)3.6Lを調製した。参考例2で得られたハイドロタルサイトの水スラリー(100g/L)5.0Lを25Lの反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトの水スラリーにそのpHが9.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に10時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイトの水スラリーを濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、本発明による重縮合触媒Hを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で、50重量部であった。
【0078】
(ポリエステルoの製造)
上記重縮合触媒Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0079】
実施例16
(ポリエステルpの製造)
上記重縮合触媒Hを用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0080】
比較例1
(ポリエステルqの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、三酸化アンチモン0.0061g(2.1×10−5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0081】
比較例2
(ポリエステルrの製造)
実施例2において、重縮合触媒Aに代えて、三酸化アンチモン0.0114g(3.9×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0082】
比較例3
(チタン酸の調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で69.4g/L)7.2Lを調製した。 上記四塩化チタン水溶液を25L容量の反応器に仕込んだ後、この四塩化チタン水溶液に攪拌しながらそのpHが7.0になるように滴下した。滴下終了後、スラリーからチタン酸を濾過し、水洗した後、再濾過して、チタン酸のケーキ(TiO換算で33重量%)を得た。
【0083】
(ポリエステルsの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、上記チタン酸のケーキ0.0051g(TiOとして2.1×10−5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0084】
比較例4
(ポリエステルtの製造)
実施例2において、重縮合触媒Aに代えて、比較例3で得られたチタン酸のケーキ0.0093g(TiOとして3.9×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0085】
比較例5
(チタン酸と水酸化マグネシウムの混合物の調製)
参考例1で得られた水酸化マグネシウムのスラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、比較例3で得られたチタン酸のケーキ(TiO換算で33重量%)335gを加えて、2時間撹拌し、撹拌終了後、1時間熟成した。このようなスラリーから混合物を濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、チタン酸と水酸化マグネシウムの混合物を得た。この混合物におけるチタン酸の割合は、水酸化マグネシウム100重量部に対して、TiO換算で10重量部であった。
【0086】
(ポリエステルuの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、上記チタン酸と水酸化マグネシウムの混合物0.0013g(2.1×10−5モル、テレフタル酸ジメチル100モル部に対して0.03モル部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0087】
比較例6
(ポリエステルvの製造)
実施例2において、重縮合触媒Aに代えて、比較例5で得られたチタン酸と水酸化マグネシウムの混合物 0.0024g(3.9×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0088】
比較例7
(チタン酸とハイドロタルサイトの混合物の調製)
参考例2で得られたハイドロタルサイトのスラリー(100g/L)11.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ後、比較例3で得られたチタン酸のケーキ(TiO換算で33重量%)334gを加えて、2時間撹拌し、撹拌終了後、1時間熟成した。このようなスラリーから混合物を濾過し、水洗、乾燥した後、粉砕して、チタン酸とハイドロタルサイトの混合物を得た。この混合物におけるチタン酸の割合は、ハイドロタルサイト100重量部に対して、TiO換算で10重量部であった。
【0089】
(ポリエステルwの製造)
実施例1において、重縮合触媒Aに代えて、上記チタン酸とハイドロタルサイトの混合物 0.012g(2.1×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.030モル部)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0090】
比較例8
(ポリエステルxの製造)
実施例2において、重縮合触媒Aに代えて、比較例7で得られたチタン酸とハイドロタルサイトの混合物0.022g(3.9×10−5モル、重縮合に供したテレフタル酸成分100モル部に対して0.015モル部)を用いた以外は、実施例2と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られたポリエステルの固有粘度、色調及びヘイズ値を表2に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
表1と表2に示す結果から明らかなように、本発明によれば、三酸化アンチモンを重縮合触媒として用いる場合とほぼ同等の固有粘度と色調とヘイズ値を有するポリエステルを得ることができる。これに対して、チタン酸を単独で重縮合触媒として用いるときは、固有粘度が低く、色相、ヘイズ値においても劣るポリエステルを得ることができるにすぎない。また、チタン酸を水酸化マグネシウムやハイドロタルサイトと混合して、重縮合触媒として用いても、同様に、得られるポリエステルは、固有粘度が低く、色相、ヘイズ値も満足できるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、固体塩基100重量部に対して、TiO換算で0.1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する固体塩基の粒子からなる重縮合触媒。
【請求項2】
固体塩基が水酸化マグネシウムである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項3】
固体塩基がハイドロタルサイトである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項4】
固体塩基の粒子の水スラリーに温度25〜40℃においてそのpHが5〜12となるようにハロゲン化チタン水溶液とアルカリ水溶液とを加えて、上記固体塩基の粒子の表面にチタン酸からなる表面被覆を形成し、この表面被覆を有する固体塩基の粒子を乾燥し、粉砕して得られるものである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項5】
固体塩基が水酸化マグネシウムである請求項4に記載の重縮合触媒。
【請求項6】
固体塩基がハイドロタルサイトである請求項4に記載の重縮合触媒。
【請求項7】
ハロゲン化チタンが四塩化チタンである請求項4に記載の重縮合触媒。
【請求項8】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを請求項1から7のいずれかに記載の重縮合触媒の存在下でエステル化反応又はエステル交換反応させることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項9】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、上記芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、請求項1から7のいずれかに記載の重縮合触媒の存在下でこのオリゴマーを高真空下に高温で溶融重縮合させることを特徴とするポリエステルの製造方法。

【公開番号】特開2006−188567(P2006−188567A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−383016(P2004−383016)
【出願日】平成16年12月30日(2004.12.30)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】