説明

ポリエステル連続重縮合装置およびその製造方法

【課題】 連続的にポリエステルを製造するに際し、反応槽間にある移液配管中の低重合体の移液が安定的に行われ、品質変動が少ないポリエステルを製造する重縮合反応装置とその方法を提供する。
【解決手段】 隣接した少なくとも一組の反応槽を連結する移液配管が、水平より10°未満の部分が1m以下であり、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜があることを特徴とするポリエステルの連続製造装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルの重縮合反応装置およびその製造方法に関し、さらに詳しくは高品質のポリエチレンテレフタレートを生産可能であり、安定生産可能な重縮合反応装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、耐薬品性、その他物理的、化学的特性に優れていることから、繊維、フィルム等様々な分野で利用されている。
【0003】
そのポリエステルの製造方法は回分式や連続式の製造方法により製造されている。
【0004】
これまで、連続式の重縮合反応においては、一般的には3槽から6槽の反応槽で形成され、1から2槽のエステル交換もしくはエステル反応を行う反応槽、1から2槽の予備重縮合反応を行う反応槽、1から2槽の重縮合反応を行う反応槽に分けられており、目的とするポリマーの粘度や品質によってさまざまな反応槽や方法が提案されてきた。
【0005】
特に重縮合反応装置については、反応器内部での低重合体の表面更新をより効率化させる技術や、大型化、反応槽数の最小化などに注力されてきた。
【0006】
しかしながら、それら反応槽間を連結する移液配管とその移液についてはほとんど技術検討、技術開示がなされていないのが現状であった。
【0007】
通常、反応槽間の移液方法としては、移液配管の適度な場所にポンプ等外部からの輸送動力を有する設備や、オーバーフロー方式により行われているのが通常である(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
ポリエステルの反応槽を連結している移液配管中には低重合体が移液されているが、その移液配管を加熱している熱媒等からの受熱により、その低重合体の化学的特徴から反応槽中のみならず移液配管においても、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを原料として用いるエステル交換反応系においてはメタノールとエチレングリコールが、テレフタル酸とエチレングリコールとを原料として用いるエステル反応系では水とエチレングリコールの蒸気が発生することが知られている。
【0009】
これら発生した蒸気は移液配管中に留まり低重合体の移液を妨げることがある。
【0010】
留まっている蒸気により低重合体の移液が妨げられると、連続重縮合反応の特徴である定常状態でのポリエステルの製造を妨げ、移送されてくる反応槽の滞留時間を変化させ、得られるポリエステルの粘度や色調等への悪影響が出るという問題があった。
【0011】
通常、この移液が定常的ではなくなる問題が生じた場合、重縮合反応装置の温度や真空度等の運転条件変更により変動を抑制するなどの手段を講じなければならなかった。さらにこの運転条件変更にて対応しきれない場合、チップ化のみ行うポリエステルの製造工程においてはサイロ区分処理等を行わなければならず、また直接、紡糸、製膜へと工程が続いているいわゆる直連重紡糸、直連重製膜工程の場合はそのまま多量の品質規格外れ品が発生してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開平8−3301号公報(第6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、連続的にポリエステルを製造するに際し、反応槽間にある移液配管中の低重合体の移液が安定的に行われ、品質変動が少ないポリエステルを製造する重縮合反応装置とその方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、ポリエステル連続重縮合反応設備が潜在的に持ち合わせていた上記問題点について鋭意検討した結果、これまで検討されていなかった移液配管に着目し、この移液配管に10°以上の勾配を持たせることにより従来技術の欠点を解決することを見出した。
【0014】
すなわち本発明は、少なくとも1基のエステル化反応槽と、エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する少なくとも1基の重縮合反応槽を備えたポリエステルの連続製造装置において、隣接した少なくとも一組の反応槽を連結する移液配管が、水平より10°未満の部分が1m以下であり、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜があることを特徴とするポリエステルの連続製造装置を用いることにより、従来技術が抱えていた欠点を解決することが出来る。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、移液配管中にて発生する蒸気を移液配管中に滞らせること無く、連続重縮合反応を定常的に行うことが可能となり、品質の安定したポリエステルを得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について具体例を挙げて詳細に説明する。
【0017】
本発明におけるポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸および/またはその誘導体と脂肪族ジオールおよび/またはその誘導体とを、少なくとも1つのエステル化反応槽にてエステル反応もしくはエステル交換反応を行い、低重合体を形成させ、その低重合体をすくなくとも1つの重縮合反応装置により重合反応を行うことにより目的の極限粘度のポリエステルを得ることが出来る。
【0018】
芳香族ジカルボン酸および/またはその誘導体としては、テレフタル酸のほか、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸等の公知の芳香族ジカルボン酸を任意に用いることができる。
【0019】
また、芳香族ジカルボン酸とともに、アジピン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、トリメリット酸等のトリカルボン酸も任意に用いることが出来る。
【0020】
脂肪族ジオールおよび/またはその誘導体とは、エチレングリコールの他に、トリメチレングリコールやシクロヘキサンジオール等の任意のジオール類を用いることが出来る。
【0021】
エステル化反応槽、重縮合反応装置は、ポリエステルの目的の極限粘度を得られるような公知の反応槽を設置でき、反応槽数等を変えることが出来る。
【0022】
エステル化反応系に2槽、予備重縮合反応系に2槽、重縮合反応系に1槽の合計5層が好ましいが特に限定されない。
【0023】
また、隣接した少なくとも1組の反応槽とは、2つのエステル化反応槽、もしくは1つのエステル化反応槽と1つの予備重縮合反応槽、1つの予備重縮合反応槽と1つの重縮合反応槽、それらが連続して設置されていても差し支えなく、特に1組と制限されるものでもない。
【0024】
本発明における隣接した少なくとも1組の反応槽を連結する移液配管とは、2つのエステル化反応槽、もしくは1つのエステル化反応槽と1つの予備重縮合反応槽、1つの予備重縮合反応槽と1つの重縮合反応槽を連結する移液配管であり、それら反応槽が連続して設置されていている移液配管でも差し支えなく、特に1組の反応槽を連結する移液配管とは制限されるものでもない。
【0025】
その移液配管の水平より10°未満の部分が1m以下であることが好ましい。1mより長いと、その配管中に水やメタノール、エチレングリコール等の蒸気が滞りやすくなり、移液を定常的に行うことが出来なくなる場合があり、品質の安定したポリエステルを得られる事が出来にくくなり好ましくない。
【0026】
移液配管一組みの合計が1mより長くなっても差し支えないが、合計では1.5m以下であることが好ましい。合計で1.5mより長くなると、その部分でのエチレングリコールの蒸気等が発生して滞りやすくなり、好ましくない。
【0027】
この移液配管の長さや勾配の測定方法は公知の方法にて測定できる。簡単に測定する手法として、例えば生産中ではなく移液配管が加熱状態でなければ、メジャーなどで測定しても差し支えない。
【0028】
移液配管長さの測定箇所としては、配管の中心を基準とし、測定個所それぞれ中心間の距離をその長さとする。。
【0029】
その移液配管の水平より10°未満であると、その配管中に水やメタノール、エチレングリコール等の蒸気が滞りやすくなり、移液を定常的に行うことが出来なくなる場合があり、品質の安定したポリエステルを得られる事が出来にくくなり好ましくない。
【0030】
移液配管の移液方法は、移液がスムーズになる方法であれば特に限定はされない。ギアポンプに代表される送液ポンプを有してもよく、またオーバーフロー方式でもよい。
【0031】
ただポンプ等を設置する場合には、移液配管の水平部分が1m未満になるように設置されなければならない。
【0032】
移液配管中の低重合体の極限粘度は0.4以下であることが好ましく、特には0.35以下であることが好ましい。極限粘度が0.4以下とすることにより移液配管中で低重合体の極限粘度が低くなり移液がスムーズに行われ、移液配管から受熱を受けた低重合体から発生する蒸気の流動性が良好であり、配管中に滞る時間が短く好ましい。
【0033】
移液配管中の平均流速は0.05m/秒以上であることが好ましく、さらには0.1m/秒以上であることが好ましい。0.05m/秒以上だと移液配管中に滞る時間が短くなり好ましい。
【0034】
この移液配管中の平均流速を測定する方法は、移液配管に公知の流量計を取り付けて測定することが出来る。測定は少なくとも2箇所以上が好ましい。その2箇所以上の流速を平均して平均流速とする。
【0035】
測定精度の面から垂直に近い配管部分にて測定するのではなく、移液配管の勾配が最も緩やかな場所に取り付けるのが好ましい。
【0036】
移液配管中の低重合体温度は255℃以上であることが好ましく、さらには260℃〜295℃であることが好ましい。255℃以上とすると、移液配管中で低重合体の極限粘度が低くなり移液がスムーズに行われ、移液配管から受熱した低重合体から発生する蒸気の流動性が良くなり、配管中に滞る時間が短くなり好ましい。295℃以下として得られるポリエステルの色調黄味を抑制できるものである。
【0037】
移液配管中の低重合体温度は、公知の温度計にて測定できる。測定は1箇所で行えば申し分ない。2箇所以上の温度計が設置してある場合は、それらの平均にて低重合体の温度とする。
【0038】
重合触媒やその他添加物は量や種類等目的に応じ、さまざま使い分け添加することが出来る。
【0039】
例えば重合触媒では、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、アルミニウム等の公知の触媒を適切な量、用いることができ特に本発明において限定はされない。
その他添加物として例えば酸化チタンや酢酸カルシウム、酢酸マンガン等の金属酸化物や、青色トナー、酸化防止剤等を目的に応じ添加することが出来る。
【実施例】
【0040】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本発明に記載する各特性は、以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解した温度25℃のポリエチレンテレフタレート希釈溶液の粘度を測定し得られるものであり、次の定義式に基づいて求められる値である。
【0041】
【数1】

【0042】
定義式のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノールで溶解したポリエチレンテレフタレートの希釈溶液の温度25℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶剤自体の粘度で割った値であり、相対粘度と定義されているものである。また、cは上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0043】
実施例1
反応槽5つを要する連続重合装置において、2つのエステル化反応槽にて段階的にエステル化反応を行った。得られた低重合体を予備重縮合反応槽に移液した後、この予備重縮合反応槽Aにて反応温度273℃、真空度80Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行い、オーバーフローにて次の予備重縮合反応槽Bへ移液した。このとき予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bとを連結する移液配管は図1のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.5m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.341、温度は280℃、単位面積当たりの低重合体の流速は0.1m/秒だった。移液もスムーズに行われ次の予備重縮合反応槽Bへ移液された。予備重縮合反応槽Bにて反応温度286℃、真空度18Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行った。オーバーフローにて最終反応槽である重縮合反応槽へ移液した。このとき、予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管は図1のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.5m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.375、温度は287℃であり、単位面積当たりの低重合体の流速は0.1m/秒であった。移液もスムーズに行われ最後の重縮合反応槽へ移液された。重縮合反応槽では反応温度289℃、真空度1.5Torr、滞留時間3時間にて反応を行い、常法にてチップ化され、極限粘度0.655のポリエステルを得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例2
反応槽5つを要する連続重合装置において、2つのエステル化反応槽にて段階的にエステル化反応を行った。得られた低重合体を予備重縮合反応槽に移液した後、この予備重縮合反応槽Aにて反応温度260℃、真空度100Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行い、オーバーフローにて次の予備重縮合反応槽Bへ移液した。このとき予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bとを連結する移液配管は図1のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.5m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.330、温度は260℃、単位面積当たりの低重合体の流速は0.10m/秒だった。移液もスムーズに行われ次の予備重縮合反応槽Bへ移液された。予備重縮合反応槽Bにて反応温度273℃、真空度20Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行った。オーバーフローにて最終反応槽である重縮合反応槽へ移液した。このとき、予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管は図1のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.5m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.358、温度は275℃であり、単位面積当たりの低重合体の流速は0.06m/秒であった。移液もスムーズに行われ最後の重縮合反応槽へ移液された。重縮合反応槽では反応温度280℃、真空度1.5Torr、滞留時間3時間にて反応を行い、常法にてチップ化され極限粘度0.710のポリエステルを得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.705以上0.715以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0046】
実施例3
反応槽5つを要する連続重合装置において、2つのエステル化反応槽にて段階的にエステル化反応を行った。得られた低重合体を予備重縮合反応槽予備重縮合反応槽に移液した後、この予備重縮合反応槽Aにて反応温度260℃、真空度90Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行い、オーバーフローにて次の予備重縮合反応槽Bへ移液した。このとき予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bとを連結する移液配管は図2のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.8m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.330、温度は260℃、単位面積当たりの低重合体の流速は0.06m/秒だった。移液もスムーズに行われ次の予備重縮合反応槽Bへ移液された。予備重縮合反応槽Bにて反応温度275℃、真空度20Torr、滞留時間1時間にて予備重縮合反応を行った。オーバーフローにて最終反応槽である重縮合反応槽へ移液した。このとき、予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管は図2のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.8m、かつ他の部分が水平より15°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.360、温度は275℃であり、単位面積当たりの低重合体の流速は0.06m/秒であった。移液もスムーズに行われ最後の重縮合反応槽へ移液された。重縮合反応槽では反応温度285℃、真空度1.5Torr、滞留時間3時間にて反応を行い、常法にてチップ化され、極限粘度0.655のポリエステルを得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0047】
実施例4
図3の通りギアポンプにて予備重縮合反応槽Aから予備重縮合反応槽Bへ、予備重縮合反応槽Bから重縮合反応槽へ移液した以外は実施例1記載の方法にて実施したところ、極限粘度0.655のポリエステルを得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0048】
実施例5
エステル化反応槽Aにて反応温度258℃、圧力0.1MPa、滞留時間6時間にてエステル化反応率92%まで反応が進行した低重合体を、反応槽の底部から抜き出しエステル化反応槽Bへ移液した。このときエステル化反応槽Aとエステル化反応槽Bとを連結する移液配管は図4のとおりであり、水平より10°未満の部分が1m、かつ他の部分が水平より20°の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.283、温度は262℃、単位面積当たりの低重合体の流速は0.1m/秒だった。移液もスムーズに行われた。その後、予備重縮合反応、重縮合反応が行われ、目的とする極限粘度0.655を安定的に得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0049】
実施例6
エステル化反応槽Bにて反応温度265℃、圧力0.0MPa、滞留時間1時間にてエステル化反応率98%まで反応が進行した低重合体を、反応槽の底部から抜き出し予備重縮合反応槽Aへギアポンプにて移液した。このときエステル化反応槽Bと予備重縮合反応槽Aとを連結する移液配管は図5のとおりであり、水平より10°未満の部分が0.5m、かつ他の部分が水平より15°以上の傾斜を有している配管であった。このときの移液配管中の低重合体の極限粘度は0.290、温度は268℃、単位面積当たりの低重合体の流速は0.1m/秒であり、移液もスムーズに行われた。その後、重縮合反応が行われ、目的とする極限粘度0.655を安定的に得た。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来た。
【0050】
比較例1
予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bとを連結する移液配管が図6のとおりであり、水平より10°未満の部分が3.5m、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜を有している配管であり、予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管が図6のとおりであり、水平から10°未満の部分が3.5m、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜を有している配管である以外は、実施例1と同じ方法にて重縮合反応を行った。その結果、この移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.680となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格外れが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【0051】
比較例2
予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管が図7のとおりであり、水平より10°未満の部分が3.5m、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜を有している配管である以外は、実施例1と同じ方法にて重縮合反応を行った。その結果、この移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.665となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格外れが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【0052】
比較例3
予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bとを連結する移液配管が図8のとおりであり、水平より10°未満の部分が2.5m、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜を有している配管であり、予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽とを連結する移液配管が図8のとおりであり、水平より10°未満の部分が2.5m、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜を有している配管である以外は、実施例1と同じ方法にて重縮合反応を行った。その結果、この移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.730となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.705以上0.715以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格外れが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【0053】
比較例4
図9の通りギアポンプにて予備重縮合反応槽Aから予備重縮合反応槽Bへ、予備重縮合反応槽Bから重縮合反応槽へ移液し、水平より10°未満の部分が5.5mである以外は実施例1記載の方法にて実施したところ、それぞれの移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.675となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格アウトが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【0054】
比較例5
図10の通り水平より10°未満の部分が3.5mである以外は実施例5記載の方法にて実施したところ、それぞれの移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.680となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格アウトが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【0055】
比較例6
図11の通り水平より10°未満の部分が5mである以外は実施例6記載の方法にて実施したところ、それぞれの移液配管にて移液不良が発生し、得られるポリエステルの極限粘度が0.680となった。該ポリエステルのIV品質規格は0.650以上0.660以下であり、目標規格を満足する製品を得ることが出来ず、品質規格アウトが発生した。原因は移液配管中にエチレングリコールや水などの蒸気が発生し、低重合体の移液を妨げたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽B、および重縮合反応槽を真横から見た概略図。
【図2】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽B、および重縮合反応槽を真横から見た概略図。
【図3】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bを真横から見た概略図。
【図4】エステル化反応槽Aとエステル化反応槽Bを真横から見た概略図。
【図5】エステル化反応槽Bと予備重縮合反応槽Aを真横から見た概略図。
【図6】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽B、および重縮合反応槽を真横から見た概略図。
【図7】予備重縮合反応槽Bと重縮合反応槽を真横から見た概略図。
【図8】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽B、および重縮合反応槽を真横から見た概略図。
【図9】予備重縮合反応槽Aと予備重縮合反応槽Bを真横から見た概略図。
【図10】エステル化反応槽Aとエステル化反応槽Bを真横から見た概略図。
【図11】エステル化反応槽Bと予備重縮合反応槽Aを真横から見た概略図。
【符号の説明】
【0057】
1:エステル化反応槽A
2:エステル化反応槽B
3:予備重縮合反応槽A
4:予備重縮合反応槽B
5:重縮合反応槽
6:コントロールバルブ
7:ギアポンプ
8:温度計
9:流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1基のエステル化反応槽と、エステル化反応槽で得られたエステル化物を重縮合する少なくとも1基の重縮合反応槽を備えたポリエステルの連続製造装置において、隣接した少なくとも一組の反応槽を連結する移液配管が、水平より10°未満の部分が1m以下であり、かつ他の部分が水平より10°以上の傾斜があることを特徴とするポリエステルの連続製造装置。
【請求項2】
請求項1記載のポリエステル連続重合装置を用いたポリエステルの製造方法において、移液配管中の低重合体の極限粘度が0.4以下、かつ平均流速が0.05m/秒以上であることを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項3】
移液配管中の低重合体の温度が255℃以上であることを特徴とする請求項2記載のポリエステルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−277430(P2007−277430A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106714(P2006−106714)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】