説明

ポリエチレンテレフタレート(PET)からポリブチレンテレフタレート(PBT)を製造するプロセス

本発明は、ポリエチレンテレフタレート成分から変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を製造するプロセスに関する。ある実施形態では、本発明は2ステッププロセスに関し、1,4−ブタンジオール成分を、ポリエチレンテレフタレート成分を溶融混合物に解重合する条件下で同成分と反応させ、できた溶融混合物から減圧条件下で変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類を生成する。別の実施形態では、本発明は3ステッププロセスに関し、エチレングリコール、プロピレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択されるジオール成分を、ポリエチレンテレフタレート成分を第1の溶融混合物に十分解重合させる条件下で、同成分と反応させ、できた第1の溶融混合物を、第2の溶融混合物を生成する条件下で、1,4−ブタンジオールと混合して、できた第2の溶融混合物から減圧条件下で変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を生成する。本発明は本プロセスで製造される組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2006年1月27日に出願された米国仮特許出願番号第60/763093号、および2006年7月26日に出願された同60/820463号の優先権の特典を主張し、参照によりそのすべてを本願明細書に援用する。
本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からポリブチレンテレフタレート(PBT)を製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(「PET」とも呼ぶ)はテレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエステルであり、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとの重縮合により、また、テレフタル酸とエチレングリコールとの重縮合によっても製造される。PETは、非晶質熱可塑性材料(透明)および半結晶性熱可塑性材料(不透明および白色)の両方として存在する。PETは一般に、塩基類は除き、鉱油類、溶剤類、および酸類に対して有用な耐薬品性を有している。半結晶性PETは、良好な強度、延性、剛性、および硬度を有している。非晶質PETは、延性はより優れているが、剛性と硬度は劣る。PETは、ソフトドリンク用ボトルやその他の家庭製品や消費財、および産業製品の製造に用いられる。
【0003】
リサイクルの努力にもかかわらず残念ながら、世界中で毎年、非常に大量のPETがごみ処理場に廃棄されている。再利用されないその他のPETは焼却されている。ごみ処理場に廃棄されるPETの量は、相当量である。PETを焼却してしまうと、より有効に使える可能性のある相当量の資源を無駄にすることになる。
【0004】
ポリブチレンテレフタレート(「PBT」とも呼ぶ)と充填材をベースとした熱可塑性成形組成物は、様々な用途に用いられている。多くのユーザにとって有用でありながら、従来のPBT−充填材成形組成物は一般に、PBTの再利用品が入手困難であるために、再利用PBTから製造できない。PBTと違ってPETは、はるかに大量に生産され、また消費財廃棄物から一部回収されている。PET(スクラップ)材料をPBTに変換でき、有用な成形組成物に変えることができれば、十分に活用されていなかったスクラップPETをPBT熱可塑性成形組成物に有効に利用するという、かってなかったニーズに応える貴重な方法となるであろう。
【0005】
米国特許第5,451,611号には、廃棄ポリ(エチレンテレフタレート)を1,4−ブタンジオールとの反応で、ポリ(エチレン−コ−ブチレンテレフタレート)またはポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)のいずれかに変換するプロセスが教示されている。先行技術の議論に際し、米国特許第5,451,611号には、引用したプロセスのほとんどにおいて、有害な副産物であるジエチレングリコールが生成し、これが最終製品を汚染するために、回収製品を再度利用可能とするには純化して取り除かなければならない、ことが示されている。米国特許第5,451,611号の主な目的は、廃棄ポリ(エチレンテレフタレート)を、その構成成分であるモノマ類やオリゴマ類に分解することなく、他の高価値ポリマに直接変換するプロセスを提供することにあった。この特許では、種々のポリマ類が様々な量のジオールを包含する例が多く開示されている。実施例11では、エチレングリコールを1,4−ブタンジオールで完全に置換して生成したPBTポリマが示されている。
【0006】
米国特許第5,266,601号には、PETを1,4−ブタンジオールと反応させて「PBT」を作るプロセスが教示されている。米国特許第5,266,601号の主な目的は、スクラップPETから、エチレングリコールの量を1.0重量%単位未満に抑えたPBTを作ることであった。米国特許第5,266,601号の他の主な目的は、このプロセスで生成するTHFの低減を可能な限り容易にするプロセスを開発し、得られるPBTを、モノマ類から製造されるPBTに対して経済的に競合力あるものにすることであった。米国特許第5,266,601号では、含有するエチレングリコール基類の量が1重量%未満のPBTの製造が強調されている。米国特許第5,266,601号では、「出発PET中に存在するジエチレングリコールもできるだけ完全に除去する」ことが開示されている(第3欄、段落11、37〜38行目)。同特許では、「必要に応じて、十分な量の1,4−BD(ブタンジオール)だけをPETに添加して、反応温度で十分に処理できる混合物が得られる」ことが開示されている。さらに、使用されたPETに応じて、「PET1モル当たり1.0モル以下の1,4−BD」が使用されることが特許に開示されている。同特許では、組成物が1重量%を超えるエチレングリコールを含む例を比較実施例で提示している。そのような組成物はそれぞれ、「黄色っぽい」および「わずかに黄色っぽい」であることが記載されている。重量%は理論的には、(i)エチレングリコールから水酸基を除去後に残る二価のエチレンラジカルにおける、あるいは(ii)エチレングリコールから末端水素原子を除去後に残る二価ラジカルにおけるものとして定義付けられるが、同特許ではどの基準を用いて重量%を決定したのか不明である。それぞれの部分は違った分子量を有しているために、違った値となる。
【0007】
日本国特開2005−89572号公報には、エステル交換反応触媒の存在下、圧力1〜54kPa、最終温度200〜230°Cの条件にて、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと1,4−ブタンジオールとをエステル交換反応し、反応生成物を重縮合することにより、ポリブチレンテレフタレートを製造する方法が教示されている。ある実施形態では、前記のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートは、ポリエチレンテレフタレートを過剰のエチレングリコールで解重合し、生成した解重合物を純化することにより得られる。同特許では減圧下での、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートと1,4−ブタンジオールとのエステル交換によって好適な結果が得られることが教示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら残念なことに、そうした文献に開示された内容では、通常は焼却されるかごみ処理場に埋められるしかないスクラップPETをもっと活用するとの長年のニーズに応えられない。例えば、米国特許第5,451,611号では、PETをその構成成分のモノマ類やオリゴマ類に分解するという、商業化検討では必要とされることもある特長について、効果的なプロセスが教示されていない。米国特許第5,451,611号では、エチレングリコールを微量ではない量含有するPBTに機能的に類似し、実施例で示される融点よりも高い融点を示す組成物を製造する有意義な指針は提供されていない。同様に、米国特許第5,266,601号では、1.0重量%を超える量のエチレングリコールを用いて、あるいは一部のスクラップPETに見られるその他の残基類を用いて、有効なPBTを製造する方法についての有意義な詳細は記載されていない。また米国特許第5,266,601号では、使用されるスクラップPETに対して過剰量の1,4−ブタンジオールを使用可能とする比較的融通性のあるプロセス、あるいはジエチレングリコールを「できるだけ完全に除去する」必要のない融通性あるプロセスについては開示されていない。すなわち、PBT同様の材料製造にスクラップ材料としてのPETを活用することに関して、既知の技術では、通常は焼却されるかごみ処理場に埋め立てられるしかないPETスクラップをより活用するための新規のプロセスに対する永年のニーズに応える有意義な解決手段を提供できていない。また既知の技術では、充填材類とPET由来のPBTとを含む新規の熱可塑性組成物と、非常に有用でユーザから価値を認められる物性の組合せとに対する永年のニーズに答える有意義な解決手段を提供できていない。
【0009】
こうした理由から、PETを活用する改良プロセスの開発が求められている。
【0010】
こうした理由から、有用な性能特性を有するPBTランダム共重合体類の新規な製造プロセスの開発が求められている。
【0011】
こうした理由から、PET由来PBTを活用し、有用な性能特性を持つ成形組成物から作られる新規の物品の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を、1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、それらの組合せから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、
(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌し、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含むプロセスに関する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、
(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、
(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を含む組成物であって、
前記組成物は、(i)0.55dL/gを超える固有粘度と200°Cを超える融点とを有し、
(ii)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された前記少なくとも1つの残基は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0〜23当量含み、さらに、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される無機系残基を0ppm〜1000ppm含む組成物に関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、
(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を、1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、
(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌し、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含み、
前記1,4−ブタンジオールは前記ステップ(a)において、前記PET成分に対して過剰モル量用いられ、
前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0〜23当量含み、さらに、
アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される無機系残基を0ppmより多く1000ppm未満含むプロセスに関する。
【0015】
(発明の詳細な説明)
本発明は、スクラップポリエチレンテレフタレートから誘導され、「未使用PBT」(モノマ類から誘導されるPBT)と同様に機能する材料を、新規のそして効果的なプロセスで今や作ることができるとの発見に基づいている。従来の未使用PBT製造方法と違って、本発明で製造されるPBT成分は、エチレングリコールやイソフタル酸基類(これらは未使用PBTには存在しない成分である)などのポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレート共重合体類から誘導された残基類を含んでいる。未使用のモノマ由来PBTとは構造的に異なるPBTを生成するにもかかわらず、本変性PBT共重合体類は、モノマ由来PBTと同様の特性を示す。好都合なことに、本発明の実施形態により作られた変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体類は、その成形組成物に優れた性能特性を付与しながら同時に、非再生資源の消費量や廃棄物量およびCOの発生量も削減する。バイオマス資源から誘導されるブタンジオール(BDO)を用いれば、これらの利点はさらに高められる。さらに我々は、スクラップPETからジエチレングリコールを取り除いたり、およびまたは、PETの解重合時に1,4−ブタンジオールとPETとの比を1.0以下に維持するなどという面倒なステップを必要としない条件とプロセスを見いだし、そうした条件とプロセスは、多くの用途において有用な特性である200°Cを超える融点を有するPBT共重合体類の製造には特に好適である。我々はまた、残基であるジエチレングリコール、エチレングリコールおよびイソフタル酸基類の混合物に驚くべき最適量が存在し、有用なPBT共重合体の製造に利用できるということも見いだした。
【0016】
作用例を除き、あるいは別途明示がある場合を除き、明細書および請求項で用いられている成分量や反応条件等を表す数字や表現は、すべての場合について「約」という用語で修飾されるものと理解されたい。本出願においては様々な数値範囲が開示されている。
これらの範囲は連続的であり、最小値と最大値間のすべての数値を含む。別途明示がある場合を除き、本明細書のこうした様々な数値範囲は近似である。
【0017】
本明細書での分子量はすべて、ポリスチレン標準物質を使って得られた数平均分子量である。測定方法の詳細は以下の項目を含む。
(i)装置:ウォーターズ社2695セパレーションモジュール
(ii)検出器:ウォーターズ社2487デュアルUV検出器、波長273nmおよび295nm、およびウォーターズ社410屈折計
(iii)移動相:5%HFIP95%クロロホルム
(iv)GPCカラム:ポリマラボ(Polymer Labs)PL HFIPゲル250×4.6mm
(v)流量:0.3ml/min
(vi)注入量:10μl
(vii)ポリスチレン標準物質:ポリマ・ラボ(Polymer Lab)製PS−1,580−7,500,000Da
【0018】
別途明記した場合を除き、ASTM試験およびデータはすべて、ASTM標準2003年度版からのものである。
【0019】
明確にするために、式中の、テレフタル酸基、イソフタル酸基、ブタンジオール基、エチレングリコール基は次の意味を持っている。組成物中の「テレフタル酸基」(R’)は、テレフタル酸からカルボキシル基を除去後に残存する二価の、1,4−ベンゼンラジカル(−1,4−(C)−)を指す。「イソフタル酸基」(R’’)は、イソフタル酸からカルボキシル基を除去後に残存する二価の、1,3−ベンゼンラジカル(−(−1,3−C)−)を指す。「ブタンジオール基」(D)は、ブタンジオールからヒドロキシル基を除去後に残存する二価の、ブチレンラジカル(−(C)−)を指す。「エチレングリコール基」(D’)は、エチレングリコールからヒドロキシル基を除去後に残存する二価の、エチレンラジカル(−(C)−)を指す。例えば、組成物中の重量%を示すために他の文脈で使われている「イソフタル酸基」、「テレフタル酸基(類)」、「ブタンジオール基」、「エチレングリコール基」および「ジエチレングリコール基」に関して、「イソフタル酸基(類)」は、(−O(CO)C(CO)−)を有する基を、「テレフタル酸基(類)」は、式(−O(CO)C(CO)−)を有する基を、「ジエチレングリコール基」は、(−O(C)O(C)−)を有する基を、「ブタンジオール基(類)」は、式(−O(C−)を有する基を、また、「エチレングリコール基(類)」は、式(−O(C)−)を有する基を意味する。
【0020】
ポリエチレンテレフタレートから誘導される変性ポリブチレンテレフタレート成分(PET由来の変性PBT成分)は、(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含んでいる。ある実施形態では、前記変性ポリブチレンテレフタレート成分はさらに、トウモロコシ由来の1,4−ブタンジオールまたはセルロース系材料から誘導された1,4−ブタン−ジオールなどのバイオマス由来1,4−ブタンジオールから誘導することもできる。
【0021】
「バイオマス」とは、通常は非再生炭化水素源から誘導される有用な化学物質に直接あるいは間接に変換可能な、生きたあるいは死んだ生体物質を指す。バイオマスには、セルロース系物質、穀物類、穀物由来のデンプン類、脂肪酸類、植物性油類、およびこれらのバイオマスからの誘導体類などが含まれる。有用な化学物質の例としては、これに限定されないが、ジオール類;二酸類;ジオールや例えばコハク酸のような酸などの製造に用いられるモノマ類;およびポリマ類の製造に用いられるモノマ類などがある。バイオマス系ブタンジオールはいくつかの資源から得られる。例えば、バイオマス系1,4−ブタンジオールの製造に以下のプロセスが用いられる。トウモロコシなどの農業系バイオマスは、やはり二酸化炭素を消費する発酵によりコハク酸に変換できる。こうしたコハク酸は、「BioAmberTM」の商標名でDiversified Natural Products社など数社から販売されている。このコハク酸は、米国特許第4,096,156号などいくつかの出版物に記載の方法によって、容易に1,4−ブタンジオールに変換できる。米国特許第4,096,156号はその全体が本明細書に援用される。
【0022】
バイオマス由来の1,4−ブタンジオールは、テトラヒドロフランにも変換でき、さらに、ポリブチレンオキサイドグリコールとしても既知のポリテトラヒドロフランにも変換できる。コハク酸を1,4−ブタンジオールに変換する別の方法が、スミス(Smith)等の「Life Cycles Engineering Guidelines」(EPA出版、EPA/600/R−1/101 (2001))に記載されている。
【0023】
変性ポリブチレンテレフタレート成分中に存在するポリエチレンテレフタレート成分から誘導される残基は、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールの1,3−トランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールの1,4−トランス異性体、アルカリ塩類、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ土類金属塩類、リン含有化合物類および陰イオン類、イオウ含有化合物類および陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸類、1,3−プロパンジオール基類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される。
【0024】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレート共重合体類などのファクタに応じて、上記残基は様々な組合せを含むことができる。例えばある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される残基は、エチレングリコールとジエチレングリコールとの混合物類を含む。別の実施形態では、上記残基は、エチレングリコールと、ジエチレングリコールと、イソフタル酸との混合物を含む。別の実施形態では、上記残基は、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組合せを含む。
【0025】
ある実施形態では、上記残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソフタル酸基類、シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールのトランス異性体、およびそれらの組合せからなる混合物である。ある実施形態では、ポリエチレンテレフタレートから誘導される残基は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびコバルト含有化合物の混合物を含んでいる。そのようなコバルト含有化合物の混合物はイソフタル酸基類を含んでいてもよい。
【0026】
例えば、ある実施形態では、本発明のプロセスで作られた、ポリエチレンテレフタレートから誘導された変性ポリブチレンテレフタレート成分(PET由来の変性PBT成分、あるいはポリエチレンテレフタレートから誘導された残基類を含む変性ポリブチレンテレフタレート共重合体類)は、以下の基類から選択された基類を含むランダム共重合体である。
【0027】
【化1】

式中、R’はテレフタル酸基(−1,4−(C)−)、R’’はイソフタル酸基(1,3−(C)−)、Dはブタンジオール基(-(C)−)、D’はエチレングリコール基(−(C)−)である。ポリエチレンテレフタレートから誘導された残基類を含む前記変性ポリブチレンテレフタレート共重合体類はまた、ジエチレングリコール基類も含有することができる。
【0028】
上記変性PBT成分のポリマ骨格中のエチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル基類の量は変えられる。PET由来の変性PBT成分は通常、イソフタル酸基類を少なくとも0.1モル%含み、それは0あるいは0.1から10モル%(0あるいは0.07〜7重量%)の範囲で変えられる。PET由来の変性PBT成分は通常、エチレングリコールを少なくとも0.1モル%含み、それは0.1〜10モル%(0.02〜2重量%)の範囲で変えられる。ある実施形態では、PET由来の変性PBT成分は、エチレングリコールを0.85重量%以上含む。変性PBT成分は、ジエチレングリコールも0.1〜10モル%(0.04〜4重量%)含んでいる。ブタンジオール基類の量は通常約98モル%であり、95〜99.8モル%の範囲で変えられる。いくつかの実施形態において、テレフタル酸基類の量は通常約98モル%であり、90〜99.9モル%の範囲で変えられる。
【0029】
別段の定めがない限り、イソフタル酸基類、およびあるいは、テレフタル酸基類の全モル数は、組成物中の二酸類およびジエステル類の合計モル数による。別段の定めがない限り、ブタンジオール、エチレングリコール、およびジエチレングリコール基類の全モル数は、組成物中のジオールの合計モル数による。上述の重量パーセント測定値は、テレフタル酸基類、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類について本明細書で定義した方法に基づく。
【0030】
変性ポリブチレンランダム共重合体中のポリエチレンテレフタレート成分残基の全材料量は変えられる。例えば、混合物の量は、1.8〜2.5重量%、あるいは0.5から2重量%、あるいは1〜4重量%とすることができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびシクロヘキサンジメタノール基類は独立にあるいは組合せて、成形組成物中のグリコール100モル%に対して0.1〜10モル%存在させることができる。イソフタル酸基類は、成形組成物中の二酸およびジエステル100モル%に対して0.1〜10モル%存在させることができる。
【0031】
融点(Tm)が少なくとも200°Cのポリブチレンテレフタレート類を作ることが望ましい場合は、ジエチレングリコール、エチレングリコール、およびイソフタル酸基類の合計量をある一定の範囲内に収めなければならないことがわかった。そのため、ある実施形態では、変性ポリブチレンテレフタレート成分中のジエチレングリコール、エチレングリコール、およびイソフタル酸基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、0〜23当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、3〜23当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、3〜10当量である。別の適切な実施形態では、イソフタル酸基類、エチレングリコール基類、およびジエチレングリコール基類の合計量は、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、10〜23当量である。ある実施形態では、反応中にジエチレングリコール、エチレングリコールおよびまたはイソフタル酸を添加できる。
【0032】
ポリエチレンテレフタレート由来の無機系残基の合計量は、0ppmより大きく1000ppm以下の範囲であってもよいことがわかった。そうした無機系残基の例としては、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩を含むアルカリ土類金属塩類やアルカリ塩類、リン含有化合物類と陰イオン類、イオウ含有化合物類と陰イオン類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される。別の実施形態では、無機系残基の量は250〜1000ppmであってもよい。別の実施形態では、無機系残基の量は500〜から1000ppmであってもよい。
【0033】
変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体が作られるPET成分は、本発明で使用可能であれば任意の形態であってよい。一般に、PET成分としては、フレーク状、パウダおよびまたはチップ状、フィルム状、あるいはペレット状をした再利用(スクラップ)PETを含む。PETは一般に使用前に、紙や接着剤;ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ナイロン、ポリ乳酸などのポリオレフィン;およびその他の汚染物質などの不純物を取り除く。また、PET成分としては、フレーク状や、チップ状、ペレット状をした廃棄物ではないPETも含む。こうして、通常はごみ処理場に破棄されるPETを、生産的かつ有効的に使用することができる。ある実施形態では、PET成分としては他のポリエステル類を含んでいてもよい。また、ポリエステル共重合体類を含んでいてもよい。
【0034】
そうした材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、テレフタレートエステル類とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールを含有するコモノマ類とのコポリエステル類、テレフタル酸塩とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールを含有するコモノマ類とのコポリエステル類、ポリブチレンテレフタレート、ポリキシリレンテレフタレート、ポリジオールテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエステルナフタレート類、およびそれらの組合せから選択されるポリアルキレンテレフタレート類などがある。
【0035】
PET由来の変性PBTは、少なくとも大気圧力下で触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、(i)ポリエチレンテレフタレート成分を(ii)1,4−ブタンジオールと反応させることを含むプロセスによって製造される。このポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとの反応は、不活性雰囲気下、前記ポリエチレンテレフタレート成分を、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、および前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分を含むオリゴマ類を含む溶融混合物に解重合するのに十分な条件にて行われる。
【0036】
ポリエステル部分と1,4−ブタンジオールとは、攪拌下、液相状態で混合しており、ステップ(a)の間、1,4−ブタンジオールはリアクタ中に連続的に還流される。ある実施形態では、ステップ(a)の間、1,4−ブタンジオールはリアクタ内に還流され、ステップ(b)の間、過剰のブタンジオール、エチレングリコール、およびテトラヒドロフランが除去される。
【0037】
ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分は、一般に大気圧下で混合される。しかしながら本発明の別の実施形態では、大気圧より高い圧力とすることができる。例えば、ある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとは2気圧あるいはそれ以上になる。
【0038】
ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分との混合、反応温度は十分に高いものとし、ポリエチレンテレフタレート成分の、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールへの解重合を促進させる。より好適には、ポリエチレンテレフタレート成分は、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、および前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分に解重合される。ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオール成分との混合温度は一般に180°C〜230°Cである。
【0039】
1,4−ブタンジオールは一般に、スクラップPETに対して過剰量用いる。ある実施形態では、1,4−ブタンジオールは、2〜20過剰モル量用いられる。ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとを混合反応させるプロセスの第1段階(ステップ(a))の間、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとは、条件に適した少なくとも1気圧の気圧下で、溶融混合物に解重合する。「ステップ(a)」の間、1,4−ブタンジオールとエチレングリコールは一般に再循環され、テトラヒドロフランは蒸留される。
【0040】
この溶融混合物には、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールが含まれる。より具体的には、この溶融混合物には、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、および前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分とが含まれる。ある実施形態では、ポリエチレンテレフタレート成分はエチレングリコールでさらに解重合される。
【0041】
スクラップPETと1,4−ブタンジオールとの反応ステップの継続時間は、利用装置や、製品ニーズ、希望する最終特性などのファクタによって変ってくる。このステップが少なくとも2時間で行われる実施形態もあれば、30分間以上、あるいは2〜5時間の実施形態もある。
【0042】
このプロセスはさらに、上記溶融混合物を減圧し240°C〜260°Cの温度まで加熱して、下記の単位の1つあるいは複数を含むポリマ骨格を有する、PET由来の変性PBT成分を形成するステップを含む。
【化2】

ここで、R’はテレフタル酸基(1,3−C)であり、R’’はイソフタル酸基(1,3−C)であり、Dはブタンジオール基(C)であり、D’はエチレングリコール基(C)である。PET由来の変性PBT成分は、ジエチレングリコール基類を含んでもよい。
【0043】
好適には、過剰のブタンジオールとエチレングリコール、およびテトラヒドロフラン(THF)を取り除いて、ステップ(b)のプロセスを攪拌しながら行う。溶融混合物が形成されると、減圧しながら好適な温度に十分長く放置され、上記溶融混合物は重合してPET由来の変性PBTポリマとなる。
【0044】
溶融混合物は減圧下に置いておく。その圧力は一般に1Torr未満である。ある実施形態では、圧力を100〜0.05Torrに減圧する。別の実施形態では、圧力を10〜0.1Torrに減圧する。
【0045】
好都合なことに、上記溶融混合物を減圧下に置いても、どの材料も溶融混合物から分離あるいは分解することがない。このステップを回避できるために、本プロセスの利用性が大いに高められている。
【0046】
溶融混合物を減圧し加熱している間、過剰のブタンジオールとエチレングリコールおよびTHFはリアクタから除去され、オリゴマ類の分子量が構築されていく。常時攪拌しながら、低沸点成分の除去を促進する。十分な分子量が得られると、生成した溶融PETポリマをリアクタから落下させて冷却し、ひも状にしてペレットに裁断する。
【0047】
上記溶融混合物が、ポリエチレンテレフタレートおよびポリ(ブチレンテレフタレート)オリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールから重合するこのステップ(上記で議論のステップ(b))の反応継続時間は、利用装置や、製品ニーズ、希望する最終特性などのファクタによって変ってくる。ある実施形態では、このステップは少なくとも2時間行われる。別の実施形態では、このステップは少なくとも30分間以上、あるいは2〜5時間行われる。
【0048】
溶融混合物を減圧下に置く温度は十分に高い温度(「上昇温度」)とし、ポリエチレンテレフタレートとポリ(ブチレンテレフタレート)のオリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールから、PET由来の変性PBTへの重合を促進させる。一般に、その温度は少なくとも250°Cであり、ある実施形態では250°C〜275°Cである。
【0049】
本プロセスの2つのステップは同じリアクタ内で行うことができる。しかしながら、別の2つのリアクタで行う実施形態もあり、この場合には、ステップ(a)を第1のリアクタで行い、溶融混合物が形成された時点で第2のリアクタに移してステップ(b)の反応を行う。このプロセスを3つ以上のリアクタで行う実施形態もある。また、連続したリアクタでこのプロセスを行う実施形態もある。このように、本プロセスは少なくとも2つのリアクタで行うことができる。このプロセスの反応を促進するために用いられる触媒成分は一般に、反応を促進する触媒を含んでいる。上記触媒は、アンチモン化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、スズ化合物類、チタン化合物類、およびそれらの組合せとともに、文献に開示されている他の多くの金属触媒類およびそれらの組合せから選択される。
触媒量は、特定の必要性に応じて変わってくる。好適な触媒量は1〜5,000ppm、あるいはそれ以上である。
【0050】
触媒成分は、ポリエチレンテレフタレート成分を1,4−ブタンジオールと最初に混合するステップで添加される。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとが混合した後に形成される溶融混合物に、触媒成分を添加する実施形態もある。
【0051】
PET由来の変性PBTの製造プロセスは、攪拌条件下で行うことが好ましい。「攪拌条件」あるいは「攪拌」とは、ポリエチレンテレフタレート成分と1,4−ブタンジオールとをあるいは溶融混合物を、PETの解重合を促進する状態下で物理的に混合する状態にすることを指す(攪拌条件はポリエチレンテレフタレート成分および1,4−ブタンジオールへの「ステップ(a)」、あるいは、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ類、1,4−ブタンジオール、およびエチレングリコールからPBTを重合する「ステップ(b)」に適用される)。物理的混合は任意の適切な方法で達成できる。ある実施形態では、回転シャフトとシャフトに直角な羽根を有するミキサが使われる。
【0052】
PET由来の変性PBT成分の製造プロセスには、アルカリ金属を含む塩基性化合物をステップ(a)のリアクタに添加して、このプロセスで生じたTHFの量を低減するステップが含まれていてもよく、それによりTHFの生成を低減する。
【0053】
この塩基性化合物は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、あるいはアルミニウム化合物を含んでおり、ナトリウムアルコキシド類、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、カリウムアルコキシド類、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、リチウムアルコキシド類、水酸化リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、重炭酸リチウム、カルシウムアルコキシド類、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、マグネシウムアルコキシド類、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、アルミニウムアルコキシド類、水酸化アルミニウム、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、重炭酸アルミニウム、およびそれらの組合せの1つあるいは複数から選択される。
【0054】
混合物への塩基性化合物の添加量は一般に少なくとも0.1ppmである。ある実施形態では、塩基性化合物の量は0.1〜50ppmである。他の実施形態では、塩基性化合物の量は1〜10ppmである。
【0055】
アルカリ金属を含む塩基性化合物の添加により、塩基性化合物を添加しないでプロセスが行われる場合に比べて、THFの全発生量を削減できる。ある実施形態では、プロセス中のTHFの全発生量は、塩基性化合物を用いないプロセスと比較して、少なくとも10%削減される。他の実施形態では、プロセス中のTHFの全発生量は、少なくとも10%〜50%、あるいはそれ以上削減される。別の実施形態では、THF量は少なくとも10%〜50%削減される。
【0056】
ある実施形態では、重合反応中のTHF生成を削減するためにエポキシ類を使用することができる。二官能性エポキシ類の使用量は一般に1.0重量%未満である。ある実施形態では、その量は0.01重量%〜1.0重量%である。好適な二官能性エポキシ化合物類としては、これに限定されないが、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどのビスフェノールジグリシジルエーテル類、テトラブロモビスフェノール−Aジグリシジルエーテル、グリシドール、ジグリシジルのアミン類あるいはアミド類付加物類、フタル酸のジグリシジルエステルやヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステルなどのジグリシジルのカルボン酸付加物類、およびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジピン酸、ブタジエンジエポキシド、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタジエンジエポキシドなどがある。3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートは特に好適である。
【0057】
PET由来の変性PBT製造プロセスには、溶融混合物から形成されるPBTが固相重合されるステップがさらに含まれていてもよい。固相重合は一般に、溶融混合物から形成されたPBTを不活性ガス雰囲気下で加熱し、十分な時間をかけてPBTの分子量を増していく。一般に、PBTの加熱温度はPBTの融点以下とし、例えば、PBTの融点以下の5°C〜60°Cとする。ある実施形態では、加熱温度は、150°C〜210°Cである。固相重合の好適な時間は、条件と装置に応じて変わるが2〜20時間である。固相重合は一般に、適切な分子量となるように、PBTの重合をさらに促進するのに十分な激しい条件のもとで行われる。こうした激しい条件は、PBTを滝のように落下させる、つまり、ポンプで不活性ガスを系内に注入して、ペレット、チップ、フレーク、パウダなどの形態のポリマ粒子の流動を促進することによって作られる。固相重合は大気圧下、およびまたは1気圧〜1mbarの範囲の減圧下で行うことができる。
【0058】
注目すべきことに、例えばエチレングリコールやイソフタル酸基類(これらは長年にわたり、未使用PBTでは望ましくない成分と考えられてきた基類である)など、ポリエチレンテレフタレートから誘導される残基類を有しているにもかかわらず、PET由来の変性PBT成分は有用な特性を示す。
本発明のPET由来の変性PBT成分は、「再利用」という言葉が通常使われる意味では「再利用」されないことを知ることは重要である。すなわち、該成分は再処理されたPBTやPETでなはい。そうではなく、それらは、PBTとは基本的に違った材料であるPETから作られる全く新しい材料である。また、PET由来の変性PBTは「未使用」PBTとは構造的に異なる。例えば、未使用PBTは非ランダムホモポリマである。本発明の変性PBT成分は、ランダム共重合体である。以下、PET由来の変性PBTの物性について記述する。
【0059】
PET由来の変性PBT成分の物性は、要求される性能特性や使用設備、プロセスパラメータなどのファクタによって変わってくる。PET由来の変性PBTの固有粘度(IV)は少なくとも0.56dL/gである。固有粘度が1〜1.3dL/gとなる実施形態もあれば、0.95〜1.05dL/gとなる実施形態もある。本出願における固有粘度はすべて、25°Cの、60重量%のフェノールと40重量%の1,1,2,2−テトラクロロエタン溶液で測定した粘度である。
【0060】
PET由来の変性PBTの融点は少なくとも200°Cか、あるいは少なくとも210°Cである。融点が200°Cあるいは204°C〜210°Cあるいは218°Cの実施形態もあれば、211°C〜223°Cの実施形態もある。PET由来の変性PBTの結晶化温度は少なくとも150°Cである。結晶化温度が162°C〜175°Cの実施形態もあれば、164°C〜178°Cの実施形態もある。
【0061】
PET由来の変性PBTの曲げ弾性率は少なくとも1000MPaである。曲げ弾性率が1000MPa〜5000MPaの実施形態もあれば、2400〜2500MPaの実施形態もある。PET由来の変性PBTの引張強度(降伏点)は少なくとも30MPaである。引張強度が30MPa〜100MPaの実施形態もあれば、51〜53MPaの実施形態もある。PET由来の変性PBTの引張伸び率(降伏点)は少なくとも2%である。
【0062】
別の実施形態では、引張伸び率(降伏点、破断)が2%〜10%である。別の実施形態では、引張伸び率(降伏点)は3〜3.3%である。PET由来の変性PBTの熱変形温度は、1.82MPaの応力下3.2mmの棒で測定して、一般に少なくとも45°C、あるいは少なくとも60°Cである。熱変形温度が45°C〜65°Cあるいは75°Cの実施形態もあれば、60°C〜70°Cの実施形態もある。PET由来の変性PBTのノッチ付アイゾッド衝撃強度は少なくとも20J/mである。ノッチ付アイゾッド衝撃強度が20J/m〜60J/mの実施形態もあれば、27〜45J/mの実施形態もある。
【0063】
PET由来の変性PBTの分子量は少なくとも3000g/molである。分子量が18000〜25000あるいは42000g/molの実施形態もあれば、30000〜42000あるいは50000g/molの実施形態もある。
【0064】
固相重合反応を行うと、PET由来の変性PBTの分子量は一般に少なくとも15000g/molになる。固相重合反応を行ったPET由来の変性PBT成分の分子量が18000〜42000g/molの実施形態もあれば、20000〜50000g/molの実施形態もある。
【0065】
PETからPBTを製造する新規なプロセスの提供に加えて、本発明にはそのプロセスから作られる成分に係る実施形態も含まれる。ある実施形態では、製造されたPBTは、イソフタル酸基類とエチレングリコール基類とを含有する、白色をした非黄色の、PET由来の変性PBTを含む組成物であり、その組成物の固有粘度は少なくとも0.55dL/gあるいはそれ以上であり、イソフタル酸基類とエチレングリコールは0.85重量%を超える量存在する。固有粘度は変化するが、好都合なことにこのプロセスでは、例えば0.55〜1.3dL/gあるいは1.5dL/gあるいはそれ以上などの、広範な高固有粘度を有するポリマを作ることができる。
【0066】
別の実施形態では、この組成物は、
(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体と、(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基とを含み、前記組成物は、(i)0.55dL/gを超える固有粘度と200°Cを超える融点とを有し、(ii)前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0を超えて23当量までの範囲で含み、さらに、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ塩類、アルカリ土類金属塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される無機系残基を1000ppm未満含んでいる。他の組成物も本プロセスによって製造される。
【0067】
ある実施形態では、本プロセスにより、ポリアルキレンフタレート、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を作ることができ、該フタレートは、ASTM D3418に準じ、冷却速度20°C/minのときの示差走査熱量(DSC)で測定して、120〜190°Cの結晶化温度を有する。このフタレートの結晶化熱は少なくとも10J/gである。このポリアルキレンフタレートは、ジエチレングリコール、イソフタル酸、シクロヘキサンジメタノール、あるいはそれらの混合物類から構成される群から誘導される、5モル%以下のカルボン酸エステル単位を有する。ある実施形態では、このフタレートは0.01〜5重量%のタルクをさらに含む。該タルクの粒径は0.5〜10μmである。ある実施形態では、上記タルクは、異物を含んだ繊維状のケイ酸マグネシウムを0.1%未満含んでいる。さらに別の実施形態では、本プロセスでは、ヒドロキシ末端基およびカルボン酸末端基の2つを、その合計量が樹脂1kgに対して10〜100ミリ当量となるように含むポリアルキレンフタレートを作ることができる。このフタレートでは、ヒドロキシ末端基の濃度は少なくともカルボン酸末端基濃度の少なくとも1.5倍である。別の実施形態では、本プロセスでは、ASTM D1003に準じ3.1mmで測定して、黄色度指数(YI)が10未満のポリアルキレンフタレートを作ることができる。
【0068】
本発明の実施形態はさらに、これらの組成物類の製造方法を包含しており、その方法は、(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレート成分を1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、および前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分から構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌し、前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含む。
【0069】
使用に当たっては、少なくとも大気圧力下、触媒成分の存在のもと、温度180°C〜230°Cにおいて、適切量のポリエチレンテレフタレートが、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、およびそれらの組合せの群から選択された過剰量のジオール成分と反応する。適切な不活性雰囲気が選択され、ポリエチレンテレフタレートが、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ類、1,4−ブタンジオールなどのジオール、およびエチレングリコールを含む溶融混合物に解重合する条件とする。
【0070】
ポリエチレンテレフタレート成分と、1,4−ブタンジオールなどの添加されたジオールとは、攪拌しながら液相状態で混合され、添加された1,4−ブタンジオールなどのジオールは、このステップの間、リアクタ内に連続的に還流される。添加ジオールが1,4−ブタンジオールでない場合は、このステップに、減圧しながら添加ジオールを除去するステップを加えるように変更して、1,4−ブタンジオールを反応混合物中に取り込む。溶融混合物が形成されると、これを減圧し系の温度を250°C〜260°Cに上げて、その骨格に取り込まれたイソフタル酸基類とエチレングリコール基類とを含むPET由来の変性PBT成分を形成する。過剰のブタンジオール、エチレングリコール、およびTHFは、攪拌下で行われるステップ(b)の間に取り除かれる。
【0071】
このプロセスにおける前記2つのステップは、同じリアクタ内で行うことができる。しかしながら、別の2つのリアクタで行う実施形態もあり、この場合には、ステップ(a)を第1のリアクタで行い、溶融混合物が形成された時点で第2のリアクタに移してステップ(b)の反応を行う。
【0072】
本発明で作られるPET由来の変性PBTの量は、製品ニーズや、設備、利用可能な材料などのファクタによって変わってくる。言うまでもなく、本発明には、その量が種々の商業的用途に対して十分に大きな実施形態が包含されている。本プロセスがPET由来の変性PBTを少なくとも毎時200kg生産する実施形態もあれば、毎時500〜1000kg生産できる実施形態もある。別の実施形態では、毎時1000〜2000kg生産できる。
【0073】
本発明はまた、本プロセスの種々のバージョンも包含できる。ある実施形態では本発明はプロセスに関し、そのプロセスは、(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を、1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、および前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分とから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌しながら温度を240°C〜260°Cに上げて、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、イソフタル酸基類、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,3−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールのシス異性体、シクロヘキサンジメタノールの1,3−トランス異性体、1,4−シクロヘキサンジメタノールの1,4−トランス異性体、安息香酸ナトリウム、アルカリ塩類、リン含有化号物類、ナフタレンジカルボン酸類、1,3−プロパンジオール基類、コバルト含有化合物類、およびそれらの組合せから構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するステップとを含み、前記ステップ(a)は温度180°C〜230°Cで行われ、前記プロセスは、COの削減指標が1.3kg〜2.2kgであり、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体は、1重量%を超えるエチレングリコールを含んでいる。
【0074】
上記記述は、PETから変性PBTを製造するプロセス、およびそれらの材料のそれぞれの製造プロセスに係るが、本発明の範囲には、PETから製造されるPBT以外のポリエステル類の製造プロセスも含まれる。その他のポリエステル類としては、ポリシクロヘキサンテレフタレートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリキシレンテレフタレート(PXT)、ポリジアノールテレフタレート(PDT)などが含まれる。
【0075】
こうしてある実施形態では、本発明はPTTの製造プロセスを含んでおり、そのプロセスは、(a)少なくとも大気圧の不活性雰囲気において触媒成分の存在下、温度180°C〜260°Cで、(i)ポリエチレンテレフタレート成分を(ii)1,3−プロパンジオールと反応させて、前記ポリエチレンテレフタレート成分を、ポリエチレンテレフタレートオリゴマ類、ポリプロピレンテレフタレートオリゴマ類、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、およびまたはそれらの組合せを含む溶融混合物に解重合するステップであって、前記ポリエチレンテレフタレート成分と1,3−プロパンジオールとは液相で攪拌しながら混合され、前記1,3−プロパンジオールはステップ(a)の間、リアクタ内に還流されているステップと、
(b)前記溶融混合物を減圧下にし、その温度を240°C〜270°Cに上げて,下記の基類の1つあるいは複数から選択されるPET由来のPTT成分を形成するステップとを含んでいる。
【0076】
【化3】

式中、R’はテレフタル酸基(1,4−C)であり、R’’はイソフタル酸基(1,3−C)であり、Dは二価プロピレンラジカル(C)であり、D’は二価エチレンラジカルであり、過剰のプロパンジオールとエチレングリコールはステップ(b)の間に除去され、ステップ(b)は攪拌下で行われることを特徴とする。
【0077】
本発明は、従来は得られなかった利点を提供する。例えば本発明は、比較的大量の変性PBTなどのPET由来の変性ポリエステル類を効率的に生産する比較的簡略で効果的なプロセスを提供する。本発明のプロセスは、従来技術で開示されたプロセスの短所を回避するために重要であることが見いだされた特定の条件を必要とする。本プロセスでは、例えば出発PET中におけるジエチレングリコール単位を、米国特許第5,266,601号に開示されているように、「できるだけ完全に除去する」必要はない。本プロセスでは、PET成分の解重合時に、1,4−ブタンジオール対PETのモル比が1.0を上回る条件で、有用な変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を製造することができ、これにより融通性が高いシステムを提供できる。また、本発明では、PBT成分として、ジエチレングリコール基類、エチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類からなる混合物が含まれていてもよい柔軟なシステムを提供し、さらに、有用な特性を持つPBT共重合体類を作ることができる。
【0078】
また、PET由来のランダム変性PBT成分の製造方法では、好都合なことに、二酸化炭素排出量と固形廃棄物量を実質的に削減することができる。本発明のプロセスで作られたPET由来のポリエステルランダム変性PBT共重合体は、モノマ類からではなくスクラップPETから作られるために、本プロセスでは、二酸化炭素排出量と固形廃棄物量が実質的に削減される。炭素廃棄量の削減(あるいは原油の節約)は、ポリエステル類の製造に通常使われるジメチルテレフタレートやテレフタル酸を構成する炭素を使わずに、スクラップポリエステルなどのPET成分を使用するためにもたらされる。原油からDMTやTPAを作るプロセスは非常にエネルギ集約的であり、この結果、非再生エネルギ源の燃焼によって、相当量のCOが大気中に放出される。
【0079】
PET由来のPBT製造にDMTあるいはTPAを使用しないために、二酸化炭素排出量の削減がもたらされる。ある実施形態では、PET由来の変性PBTの製造プロセスでは、モノマ類から未使用PBTホモポリマ類を作るプロセスと比較して、このプロセスで製造されるPET由来の変性PBT1kg当たり、CO排出量が少なくとも1kg削減できる。他の実施形態では、PET由来の変性PBTの製造プロセスでは、モノマ類から未使用PBTホモポリマを製造するプロセスと比較して、本発明のプロセスで製造されたPET由来の変性PBT1kgあたり、1kg〜1.5kg、あるいはそれ以上のCO排出量の削減が図られる。また、エチレングリコール副産物を回収し、生産時に通常のエチレングリコールの代わりに使用すれば、エネルギ節約およびまたは二酸化炭素排出量の削減がもたらされる。
【0080】
さらに、BDO源を、コハク酸など、供給材料から誘導されるバイオマスからとすると、二酸化炭素節約量は2つの理由からさらに上昇する。バイオ由来のコハク酸は、化石燃料の炭素資源に対して、大気中の炭素から誘導された糖またはその他のバイオ由来炭化水素から作られ、このために、バイオマス資源から得られたコハク酸をベースとしたBDOから誘導されるポリマの環境に与えるインパクトは低減される。さらに、コハク酸を生産する発酵プロセスでは入力として二酸化炭素を必要とするために、二酸化炭素はさらに削減されることになる。好都合なことに、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類は、CO放出量の削減指標を有している。本出願で定義するように、CO放出量削減指標とは、モノマ類から誘導されるポリブチレンテレフタレートで作られる組成物1kgを製造する時に生成するCO量(重量)と比較して、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類を含む組成物1kgを製造する際に節約されるCOの量(重量)である。変性PBTランダム共重合体類は一般に、約1.3kgを上回るCO放出量削減指標を有しており、またこの指標は1.3kg〜2.5kgの範囲で変えられる。
【0081】
この特徴の根拠を以下に記載する。未使用のモノマ由来PBTの通常の製造プロセスと、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類1kgの製造プロセスとにおけるCO生成量の差は、1.3kg〜2.5kgであり、より好適には1.7kg〜2.2kgである。なおこの差は、廃棄PETからオリゴマ類までそして変性PBTまでの全体プロセスに対して、原油から始まってモノマ類までそしてPBTまでの全体プロセスについての計算に基づくものである。言いかえれば、1kgの変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体の製造プロセスでは、原油から1kgの未使用PBTを作るプロセスと比較して、COの発生量は1.3〜2.5kg少ない。これらの結果は、材料とエネルギ収支計算(化学工学技術では周知の計算)を用いることによって、また、PETから変性PBTランダム共重合体類を製造するために使われるエネルギ量と、テレフタル酸からPBTを作るために使われるエネルギ量とを比較することによって、誘導あるいは立証される。
【0082】
本発明は、以下の具体的な実施例でさらに述べられるが、ここでは特に明記されないかぎり、部およびパーセンテージはすべて重量による。
(実施例1)
<小規模プロセス(BDO:PET=2.9:1)>
北米における供給者であるSt.Jude社からグリーン色の再利用PETペレットを入手した。この使用済み再利用PETペレットは、iv仕様が0.68〜0.78、
融点仕様が245〜255°Cであった。ブタンジオールは、BASF社より入手し、その純度仕様は99.5重量%超であった。TPT触媒は、Dupont社より販売されているTyzorグレード品である。
【0083】
再利用PETペレット100gとブタンジオール134g(モル比2.9:1)を500mlの反応容器内で混合した。油浴(反応容器用)の温度を180〜255°Cに上げた。攪拌速度を20rpmに設定した。この段階で、0.2mlのTPT触媒を反応混合物に添加した。反応物の温度を227°C(ブタンジオールの沸点)まで上げ、
BDOをこの温度で2時間還流させた。これはPETの解糖段階として既知である。
【0084】
ポリ段階では、還流凝縮器を取り外し反応容器を減圧した。揮発した溶剤は別の凝縮器に集めた。攪拌速度を220rpmに上げた。真空ポンプを用いてシステム圧力を0.15Torr(0.199kPa)まで下げた。溶融物質の棒上昇で明らかなよう、ポリマの分子量はこの段階で急上昇した。反応はポリ段階に入って20分後に終了させた。ポリマ約10gを反応容器から集め、試験と分析を行った。上記のポリマサンプルで行った試験の結果には、固有粘度(iv)データ、NMR分析によるポリマの組成、およびDSC分析による結晶化データが含まれており、それらを表2に提示する。250°Cにおける5kg溶融体積速度(MVR)の結果を表4および6に提示する。
【0085】
(実施例2)
<パイロットプラント(BDO:PET=2.9:1)>
ヘリコンリアクタで、大量のポリエチレンテレフタレート成分から変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を誘導した。ヘリコンリアクタの容量は40Lで、270度ねじれた2つの対向する螺旋ブレードを備える特別設計のものであり、16gの磨き仕上げを施した316ステンレスでできている。ブレードの回転数は1〜65rpmまで変えられる。攪拌器は、230/460V交流電圧、3相、60Hzで作動する、7.5馬力の定トルクインバータデューティモータに接続している。この攪拌機によって、溶融ポリマには分子量を高めるための良好な表面積が与えられる。上記ヘリコンリアクタには上部に凝縮器を備えるように設計されており、解糖段階、エステル交換段階(もしあれば)、および重合反応段階における蒸発物を凝縮する。
【0086】
25lbs(11.4kg)の再利用PETペレットと35lbs(15.9kg)のブタンジオール(モル比2.9:1)とをヘリコンリアクタに投入した。4.6ml(Tiとして100ppm)のTPT触媒も上記反応混合物に添加した。加熱油(ヘリコーン用の)の温度を250°Cに設定した。攪拌速度を最高速度の67%に設定し、ブタンジオールはリアクタ内に2時間還流させた。上部凝縮器システムの設計上、ブタンジオールは完全には還流されないことに留意する必要がある。その結果、初期の段階で発生した約5〜10lbs(2.3〜4.5kg)のブタンジオールは還流されなかった。その後発生したブタンジオールはリアクタへ完全に還流された。
【0087】
重合段階(本明細書では「ポリ段階」とも呼ぶ)では、ヘリコンリアクタを真空にし、また、ブタンジオールのリアクタへの還流は中止した。攪拌速度は最大速度の60%に設定し、モータの目標電流を3.5Aとした。ポリマの分子量が高まるにつれて、攪拌速度を変えるロジックを表3に示す。系の圧力を真空ポンプで0.5Torr(0.066kPa)まで下げた。ポリマ物質が第3構造に達するまで反応を行った。第3構造になって15分後に反応を止め、粒状に注型した。次に反応生成物を乾燥しペレットに粉砕した。このポリマサンプルについて、iv測定、NMR分析、およびDSC分析を行った。
【0088】
[実施例3〜10]
PET由来のPBTにおいて、主に高濃度のエチレングリコールの影響を見るためにこれらの実施例を作成した。PBT物性に与えるエチレングリコール残基の影響を調べるために、ラボスケールおよびパイロットプラントスケールの両方でこれらの実施例を作成した。未使用PETと再利用PBTの両方を供給原料として用いて、PET由来のPBTへの変換を行った。実施例3、7、10、および11は再利用PETペレットで作成されたものであり、実施例4、5および6は未使用PETで作成されたものである。実施例8および10では、高濃度のエチレングリコールを有するPET由来のPBT共重合体を得るために、反応混合物に外部からエチレングリコール添加しなければならなかった。
【0089】
(実施例3)
<パイロットプラントプロセス(BDO:PET=2:1)>
実施例3では、実施例2で記載と同様の手順に従った(ヘリコンリアクタ)。この反応では、BDO:PETのモル比が2:1と低モル比を採用した。この反応で合成されたPBTの特性を表2に示す。
【0090】
(実施例4,5,6)
<パイロットプラントプロセス(別のPET源、3つの異なるBDO:PET比)>
PBT(PETルート)の最良の特性は、出発原料として未使用PETを使用すると得られる可能性がある。未使用PETを用いた2〜3の実験を行って、この新規なPBT合成技術で可能な性能分類における最良な性能を決定した。この一連の実験に用いた未使用PETはDAK社から入手したものであり、ivは0.83であった。実施例4,5,6として、3つの異なるBDO:PET比(2.9:1、2:1、1.5:1)を用いた。PBTの合成には、実施例2と同様な手順に従った。得られた特性を表2に示す。実施例Aは、モノマ類から作られたGEプラスチック社製のPBT315グレードで測定された比較データである。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

**ジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対する残基当量
【0093】
【表3】

【0094】
(実施例7)
<パイロットプラントプロセス(BDO:PET=1.5:1)>
再利用PETを用いた実施例7では、実施例2と同様な手順に従った(ヘリコン/パイロットプラントリアクタ)。この反応では、BDO:PETのモル比が1.5:1と低モル比を採用した。実施例7,8,9,10に用いた出発原料モノマ類の重量を表4に示す。これらの反応で合成されたPBTの特性を表5に示す。
【0095】
(実施例8,9,10)
<小規模プロセス(3つの異なるジオール:PET比)>
実施例8,9,10では、実施例1と同様な手順に従った(ラボスケール)。この反応では、2つの異なるジオール:PET比(2.68:1、0.60:1、2.67:1)を用いた。この反応により合成されたPBTの特性を表5に示す。
【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
[実施例11〜15]
PET由来のPBTにおいて、主に高濃度のイソフタル酸単位の影響を見るためにこれらの実施例を作成した。PBT物性に与えるイソフタル酸残基の影響を調べるために、ラボスケールおよびパイロットプラントスケールの両方でこれらの実施例を作成した。PET由来のPBT共重合体における高濃度のイソフタレート単位残基の影響をシミュレーションするために、ジメチルイソフタレートあるいはイソフタル酸の濃度を変えて反応混合物に添加した。
【0099】
(実施例11,12)
<パイロットプラントプロセス(異なるIPA:(PET+IPA)モル比)>
イソフタル酸繰り返し単位の量は、イソフタル酸またはジメチルイソフタレートを添加することによって制御できる。実施例11および12に対して、上記のように2つの異なるIPA:PET比(0.049:1、0.098:1)を用いた。実施例11−15で用いた出発原料のモノマ類の重量を表6に示す。PETおよびBDOとともに、イソフタル酸を添加してPBTを合成するために、実施例2と同様な手順に従った。得られた特性を表7に示した。
【0100】
(実施例13,14,15)
<小規模プロセス(異なるIPA:(IPA+PET)比)>
実施例13〜15(ラボスケール)では実施例1と同様の手順に従った。この反応では、3つの異なるIPA:(PET+IPA)モル比(0.40:1、0.73:1、0.85:1)を用いた。この反応で合成されたPBTの特性を表7に示す。
【0101】
【表6】

【0102】
【表7】

【0103】
[実施例16〜17]
PET由来のPBTにおいて、主に高濃度のジエチレングリコール単位の存在の影響を見るためにこれらの実施例を作成した。PBT物性に与えるジエチレングリコール残基の影響を調べるために、ラボスケールおよびパイロットプラントスケールの両方でこれらの実施例を作成した。PET由来のPBT共重合体における高濃度のDEG単位残基の影響をシミュレーションするために、DEGの濃度を変えて反応混合物に添加した。
【0104】
(実施例16,17)
<パイロットプラントプロセス(異なるDEG:PETモル比)>
DEGの出発量を変えることによって、最終反応品におけるEGの量を変えることができる。PETおよびBDOとともに、DEGを添加する実施例16および17では、実施例2と同様な手順に従った。この反応では、2つの異なるDEG:PETモル比(3.14:1、3.19:1)を用いた。実施例11−15に用いた出発モノマ類の重量を表8に示す。これらの反応により合成されたPBTの特性を表9に示す。
【0105】
【表8】

【0106】
【表9】

【0107】
(データ分析)
実施例1−17において、ジオール部分の合計量を50モル%、二酸基部分の合計量を50モル%に設定した。PBT特性に及ぼす全残基の影響を総合的に理解するために、実施例1−17のデータすべてを、コモノマ残基の合計含有量が低いものから順番に整理した。この分析目的のために、ジオールと二酸とのコモノマ類は、存在するジオールと二酸のそれぞれのパーセント(%)で表されていることに留意すべきである。表10A、10Bおよび10Cのポリマのコモノマ合計配合量は、実施例1−17の合計配合量の2倍になる。
【0108】
【表10A】

【0109】
【表10B】

【0110】
【表10C】

【0111】
(議論)
融点が200°C未満のPBT共重合体類は、高温、急速循環、結晶性ポリエステルとして限定的な実際の応用性を持っている。上記の実施例から(実施例はいずれもこういうように表されていないので、この段落と次の段落は、この議論の目的のためには場所が悪い)変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の100当量のジオールと100当量の二酸基類の合計に対して、コモノマ配合量が約23当量のときに、融点が200°Cに達することがわかる。このように上表中、コモノマ配合量が約23当量以下の実施例はすべて特に有用なPBT特性を持つポリマと考えられるであろう。
【0112】
これらのデータによって、再利用PETが本明細書に記載のプロセスで、驚くべき有用なPBT共重合体樹脂を生み出すように変換されることが示されている。一定の再利用PET資源には、IPAおよびまたはDEGなどの低不揮発性残基類が含まれている。これらの残基類を、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中の100当量のジオールと100当量の二酸基類の合計に対して、プロセス条件で約23当量未満に制御できるEG残基と組み合わせることによって、驚くほど有用なPBT共重合体が実現できる。
【0113】
(実施例18)
実施例18では、実施例2と同様な手順に従った。ここでは、Evergreen社の再利用PETフレークを用いて合成した。実施例18で用いた出発モノマ類の重量を表11に示す。この実験の目的は、このプロセスで製造したPBT共重合体が、出発原料であるPET成分から誘導される高濃度の金属残基を有する傾向にあることを示すことであった。PET成分由来のこうした無機系残基類を表12に示す。高濃度含有にもかかわらず、本発明の変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体は、モノマ系「未使用」PBTと同様な特性を示し、それは表13に見ることができる。
【0114】
【表11】

【0115】
【表12】

【0116】
【表13】

【0117】
(実施例19)
<トウモロコシ系コハク酸からのブタンジオールの合成>
この実施例の目的はBDOがバイオマスから誘導されることを示すことである。
【0118】
(技術/手順)
実施例19で行った実験のバイオ−コハク酸は、Diversified Natural Products社から入手した。バイオ−コハク酸からBDOを以下の2ステッププロセスにより合成した。
【0119】
(ステップ(1):コハク酸からジエチルエーテルへのエステル化)
上部に攪拌機と凝縮器とが付いたオイルバス中の2.0Lの丸底フラスコに、バイオコハク酸200g(1.69モル)、乾燥エチルアルコール1.0L、および濃硫酸5〜8滴を入れ、8時間加熱還流した。8時間後にアルコールを留去し、ジクロロメタン500mLを加えて、10%の炭酸ナトリウム溶液で洗浄して明確にアルカリ性pHにした。有機層を水洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤を除去し、ジエステル反応物を減圧留去した。純粋ジエステルを、140〜145°C、20mmHg以下の減圧下で収集した。ジエステルの重量:285g、純度:99.0%超(GC)、収率:95%である。
【0120】
(ステップ(2):ジエステルからBDOへの還元)
洗浄ナトリウム60g(2.6モル)を、凝縮器、上部攪拌機、保護管、および滴下ロートの付いた3Lの丸底フラスコに入れた。緩やかに窒素を流して、フラスコを不活性雰囲気にした。窒素ブランケットを取り除き、乾燥エチルアルコール700mLに溶かしたコハク酸ジエチル溶液35g(0.2モル)を滴下ロートから速やかに添加した。反応を制御するために必要であれば、外部から冷却してもよい。次に、反応物を120〜130°Cに90分間加熱してナトリウムをすべて溶解させた。その後、反応物を室温まで冷却し、水25mLを慎重に添加した。反応混合物をさらに30分間還流して未反応のエステル(もし存在すれば)を加水分解し、濃塩酸270mLを冷却された混合物に加えた。
【0121】
沈殿した塩化ナトリウムを濾別し、濾液を300gの無水炭酸カリウムで無水処理した。アルコール溶液を濾別し、固形分を温アルコール(2×100mL)で洗浄し、ソノアルコールは留去した。乾燥アセトン(200〜250mL)を残留物に加え、固形分を濾別後にアセトンを留去して未精製BDOを得た。この未精製BDOをさらに135〜138°C(圧力20mmHg)で減圧蒸留して純粋留分を得た。この実験で得られたBDOの重量は8gであり、用いたエステル量を基準とした収率は45%であった。本実施例におけるバイオマス由来のBDOは、実施例1のプロセスで用いたBDOの代わりに使用できる。
【0122】
(実施例20)
<再利用PETと、バイオ系コハク酸から得たBDOからのPBTの合成>
この実施例における目的は、PBT共重合体がバイオマス由来のBDOから作られることを示すことである。PET(再利用)3.5g(18.23ミリモル)とエチレングリコール1.69g(27.26ミリモル)を反応容器に入れ、窒素雰囲気下180°Cに加熱する。180°Cになった時点で、触媒:オルトチタン酸テトライソプロピル(TPT)200ppmを加え、さらに加熱を継続し、225〜230°Cで90分間維持する。
【0123】
バイオコハク酸から誘導された1,4−ブタンジオール(BDO)5.6g(62.22ミリモル)を反応物に加え、さらに15分間蒸留を継続してエチレングリコールとブタンジオールとを留去した。700mbarから500、300、100、75、50、25、10、5.5、1.5mbarへと段階的に減圧しながら、最終的に1.0mbar未満とした。溶融反応物を0.7〜0.5mbarで30分間維持し、最後に、ポリマを窒素圧下リアクタから排出した。得られたポリエステルはIVが0.7dL/g、融点(Tm)が215°Cであった。ポリエステルの重量平均分子量は57,517、数平均分子量は13,969(Mw/Mn=4.12)であった。1HNMR分析から、96.4モルのブタンジオールが取り込まれ、3.6モルの残基性エチレングリコールが取り込まれていることがわかった。
【0124】
PBTがPETから誘導された上記のすべての実施例では、変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体類の製造プロセスが1を超えるCO放出量削減指標(製造されるPBT共重合体1kg毎に対して、1kgを超えるCOが削減される)を示した。PETとバイオ系BDOから作られるPBTの実施例では、バイオマスから誘導されるモノマを用いることによってCOはさらに削減できることを示している。本発明を一定の好適なバージョンを参照して詳細に説明したが、その他の変更も可能である。したがって、添付の請求項の趣旨と範囲は、本明細書に包含される記載に限定されるべきものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、前記の少なくとも2つの部分を含む共有結合オリゴマ部分、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、
(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌し、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含むプロセス。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された前記少なくとも1つの残基は、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された前記少なくとも1つの残基は、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、1,3−シクロヘキサンジメタノール異性体類、1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体類、アルカリ土類金属塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、ナフタレンジカルボン酸類、1,3−プロパンジオール基類、コバルト含有化合物類、およびそれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ステップ(b)は、240°C〜260°Cで行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
1,4−ブタンジオールは前記ステップ(a)の間、リアクタ内に還流され、過剰のブタンジオール、エチレングリコール、およびテトラヒドロフランは前記ステップ(b)の間に除去されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記プロセスは、同一のリアクタで行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスは、少なくとも2つのリアクタで行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記溶融混合物は、いずれの材料も該溶融混合物から分離および分解することなく減圧下に置かれることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロセスで製造された前記ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体類は、固有粘度が少なくとも0.55dL/gであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された少なくとも1つの残基を含む前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体は、エチレングリコール基含有量が0.85重量%を超えることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された前記少なくとも1つの残基は、その量が1重量%を超えるエチレングリコール基であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスにおける前記ステップ(a)の間、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、および水は再循環され、テトラヒドロフランは蒸留されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ステップ(a)は30分間〜5時間行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ステップ(b)は30分間〜5時間行われることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記1,4−ブタンジオールは前記ステップ(a)において、前記PET成分に対して過剰モル量用いられることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記1,4−ブタンジオールの前記過剰量は2〜20であることを特徴とする請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記触媒成分は、アンチモン化合物類、スズ化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン化合物類、およびそれらの組合せから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記触媒は10〜5000ppmの量で使用されることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ステップ(b)における圧力は、1Torr未満であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記プロセスは、前記ステップ(b)で製造されたポリマを固相重合することにより、そのポリマの分子量を上昇させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体は、1kgを超えるCO削減指標を有していることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記1,4−ブタンジオールはバイオマスから誘導されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体は、200°Cを超える融点(Tm)を有し、製造されたPBTは、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0〜23当量含むことを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の前記混合物は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、その量が3〜23当量であることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の前記混合物は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、その量が10〜23当量であることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ポリエチレンテレフタレート成分はエチレングリコールでさらに解重合されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
(1)ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分から誘導され、
(2)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体を含む組成物であって、
前記組成物は、(i)0.55dL/gを超える固有粘度と200°Cを超える融点とを有し、
(ii)前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導された前記少なくとも1つの残基は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0〜23当量含み、さらに、アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ塩類、アルカリ土類金属塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、およびそれらの組合せから構成される群から選択される無機系残基を0ppm〜1000ppm含むことを特徴とする組成物。
【請求項28】
エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の前記混合物は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、その量が3〜23当量であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の前記混合物は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、その量が3〜10モル%であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の前記混合物は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、その量が10〜23当量であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記無機系残基はその量が250〜1000ppmであることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記エチレングリコールはその量が1重量%を超えることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物は、
(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレート成分を1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレートオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレートオリゴマ類、ブチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレングリコールイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレン、エチレン、およびジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンとエチレンとジエチレンイソフタレート部分とを含むオリゴマ類、ブチレンとエチレンとジエチレンイソフタレート類とジエチレンテレフタレート類のすべてを含むオリゴマ類、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、およびそれらの組合せから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、
(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌(かくはん)し、前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含むプロセスで作られることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項34】
プロセスであって、
(a)少なくとも大気圧力の不活性ガス雰囲気中、触媒成分の存在下、温度180°C〜230°Cで、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート共重合体類から構成される群から選択されるポリエチレンテレフタレート成分を、1,4−ブタンジオール成分により高温下で攪拌しながら解重合して、エチレンテレフタレートオリゴマ類、ブチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、エチレンイソフタレートオリゴマ類、ブチレンイソフタレートを含むオリゴマ類、ジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ジエチレングリコールイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンとエチレンとジエチレンテレフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンとエチレンとジエチレンイソフタレート部分を含むオリゴマ類、ブチレンとエチレンとジエチレンイソフタレートとジエチレンテレフタレートのすべてを含むオリゴマ類、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、およびそれらの組合せとから構成される群から選択される成分を含む溶融混合物を生成するステップと、
(b)減圧下で前記溶融混合物を攪拌し、前記ポリエチレンテレフタレート成分から誘導される少なくとも1つの残基を含む変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体を形成するのに十分な条件のもとで前記溶融混合物の温度を高温に上げていくステップとを含み、
前記1,4−ブタンジオールは前記ステップ(a)において、前記PET成分に対して過剰モル量用いられ、
前記変性ランダムポリブチレンテレフタレート共重合体は、前記変性ポリブチレンテレフタレートランダム共重合体中のジオール100当量および二酸基類100当量の合計に対して、エチレングリコール基類、ジエチレングリコール基類、およびイソフタル酸基類の混合物を0〜23当量含み、さらに、
アンチモン含有化合物類、ゲルマニウム含有化合物類、チタン含有化合物類、コバルト含有化合物類、スズ含有化合物類、アルミニウム、アルミニウム塩類、アルカリ塩類、リン含有化合物類、リン含有陰イオン類、イオウ含有化合物類、イオウ含有陰イオン類、
およびそれらの組合せから構成される群から選択される無機系残基を0ppmより多く1000ppm未満含むことを特徴とするプロセス。
【請求項35】
前記1,4−ブタンジオールはバイオマスから誘導されることを特徴とする請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記バイオマスはトウモロコシであることを特徴とする請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
組成物は1kgを超えるCO削減指標を有していることを特徴とする請求項34に記載のプロセス。

【公表番号】特表2009−524731(P2009−524731A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552442(P2008−552442)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002197
【国際公開番号】WO2007/089600
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】