説明

ポリエチレン樹脂の製造方法

増大した長鎖枝分かれの重合体を製造するためのエチレンの重合方法。エチレンおよび水素が第一反応区域中に触媒系の存在下で第一の分子量分布を有するエチレン重合体を製造するための重合条件下で導入される。第一反応区域からの重合体が第二反応区域にエチレンおよびC−Cアルファ−オレフィン単量体と共に適用される。第二反応区域が操作されて第一の分子量分布とは異なる第二の分子量分布を有する共重合体を製造する。二峰性分子量分布の重合体フラッフが第二重合反応区域から回収されそしてフラッフを溶融するために加熱されそして次に押し出される。加熱およびまたは押し出しと同時に、長鎖枝分かれを増大させそして重合体生成物のメルトインデックスMIを低下させるために重合体フラッフが処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は多峰性の分子量分布を有するポリエチレン樹脂を製造するためのエチレンの重合に関し、そしてより特に増大した長鎖枝分かれの重合体フラッフ(fluff)を製造するためのエチレンの重合に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
二峰性分子量分布を有するポリエチレン樹脂は多段階重合方法により製造できる。そのような多段階方法では、規定された分子量分布の重合体成分が連続的重合段階で製造されて所望する多峰性の分子量分布を有する最終生成物に到達する。重合体フラッフを押し出して重合体生成物を製造することができ、それを最終的には容器もしくは他の成型製品を製造するための例えばブロー成型もしくは押し出し成型の如き種々の方法においてまたは繊維およびフィルムの如き配向された製品を製造するための線状もしくは多次元方向づけ(orientation)を包含する方法において使用することができる。
【0003】
ポリエチレン重合体の有意な物理的特性は単峰性もしくは多峰性でありうる分子量分布MWD(重量平均分子量M対数平均分子量Mの比)および標準ASTM D1238に従い測定されるメルトインデックスの比により測定される剪断応答を包含する。例えば、剪断応答SR5は高負荷メルトインデックス(HLMI)対メルトインデックスMIの比である。種々のメルトインデックスは簡便にはグラム/10分(g/10分)でのメルトフローによりまたはデシグラム/分(dg/分)により表示される同等な測定値で報告される。重合システムの最終段階から除去される重合体フラッフを重合反応がその中で進行する希釈剤から分離することができ、そして次に溶融されそして押し出されて、典型的には約1/8”−1/4”の寸法を有するペレットの性質の重合体生成物の粒子を製造し、それらは次に最終的には以上で論じられたようなポリエチレン容器または他の製品を製造するために使用される。
【0004】
上記のように、オレフィン重合体はそれらの分子量によっても特徴づけられる。一般的に使用される分子量特性は合計モル数により割り算された重合体分子の全数の分子量である数平均分子量M、並びに重合体溶液の光拡散測定により測定されるかまたは粘度平均分子量から重量平均分子量の近似概算値として誘導される重量平均分子量Mである。重合体試料の重量平均分子量および数平均分子量を使用して、重合体の分子量分布MWDに到達することができ、Dは比D=M/Mにより定義される。
【0005】
エチレン単独重合体または共重合体のメルトフロー特性を重合体の長鎖枝分かれ度に関連させることができる。それ故、反応器から出てくる粉末の特定のメルトフローインデックスMIに関しては、ペレットのMIの値は長鎖枝分かれ度に反比例する。例えば、Gunther他に対する特許文献1に記述されているように、重合体に関する長鎖枝分かれ度はその流動活性化(flow activation)エネルギーEにより定量化できる。この特許に開示されているように、低い長鎖枝分かれ度を有する実質的に線状のポリエチレンは約6.25−6.75キロカロリー/モルの流動活性化エネルギーにより特徴づけることができる。有意な長鎖枝分かれ度を有する対応するポリエチレンは約7.25−9.0キロカロリー/モルの流動活性化エネルギーEにより特徴づけることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,433,103号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明によると、所望する増大した長鎖枝分かれを有するエチレン重合体を製造するためのエチレンの重合方法が提供される。発明の実施においては、エチレンおよび水素が第一反応区域中に触媒系の存在下で第一の分子量分布を有するエチレン重合体を製造するために有効な重合条件下で導入される。重合体および水素が第一反応区域から回収されそして第二重合反応区域に適用される。エチレンおよびC−Cアルファ−オレフィン単量体が触媒系の存在下で第二反応区域中に導入される。第二反応区域は第一の分子量分布とは異なる第二の分子量分布を有するエチレン−C−Cオレフィン共重合体を製造するために有効な重合条件下で操作される。二峰性分子量分布を有する重合体フラッフが第二重合反応区域から回収されそして重合体フラッフを溶融するために充分な温度に加熱される。溶融した重合体フラッフが次に押し出されて多峰性の分子量分布を有するポリエチレン重合体生成物の粒子を製造する。加熱およびまたは押し出し工程の一方または両方と同時に、重合体フラッフの長鎖枝分かれを増大させそして重合体生成物のメルトインデックスMIを低下させるために重合体フラッフが処理される。
【0008】
第一および第二反応区域は二峰性分子量分布重合体の製造のために有効ないずれかの適当なタイプであることができそして発明の1つの態様では連結された第一および第二の連続撹拌液体反応器の形態をとる。発明の一面では、エチレンおよび水素は第一反応区域中に少なくとも2.0の水素対エチレンモル比をそしてより特に3.0−5.5の範囲内の水素対エチレンモル比を与えるような量で導入される。
【0009】
発明の1つの態様では、上記のような重合体フラッフの押し出し前に重合体フラッフ中にフリーラジカル開始剤を導入することにより処理されて重合体フラッフの長鎖枝分かれが増大する。発明の別の面では、第二反応区域中で製造される成分は第一反応区域中で製造される重合体の平均分子量より高い平均分子量を有する。
【0010】
発明の別の面では、最終的な重合体生成物のメルトインデックスと第二重合区域から回収される重合体フラッフのメルトインデックスMIの間の差異は、重合体フラッフの長鎖枝分かれを増大するための処理なしで製造される重合体フラッフと重合体生成物のメルトインデックスMIの対応する差異より大きい。
【0011】
発明のさらに別の面では、水素およびエチレンの混合物が第二反応区域から排気される。第二反応区域から排気される水素対エチレンの比は重合体フラッフの長鎖枝分かれを増大するための処理なしで製造される重合体生成物に関する第二反応区域から排気されるであろう水素対エチレンの対応する比より大きい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面の簡単な記述
【図1】図1は本発明の意図に適する多段階システム中におけるエチレンおよび共単量体の重合方法の図式的説明図である。
【図2】図2は重合体フラッフ中に加えられる過酸化物フリーラジカル抑制剤(inhibitor)の濃度と重合体のメルトインデックスの間の関係を示すグラフである。
【図3】図3は過酸化物フリーラジカル抑制剤(inhibitor)の濃度と重合体の幅パラメーターの間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な記述
本発明はエチレンの連続的な単独重合および共重合用のいずれかの適当な多段階反応システムを用いて実施できる。適当な反応システムは図1に示されており、それは一対の連結された連続撹拌反応器(CSTR)を適当な回収システムと一緒に有する多段階反応システムを含んでなる。より特に、そして図1に示されているように、第二の連続撹拌反応器12と連結している第一の連続撹拌反応器10並びに反応器12の出口と連結されている回収システム14が示されている。図1に示されているように、反応器10には投入ライン16が装備されており、そこを通って例えばヘキサンまたはヘプタンの如き適当な希釈剤中のエチレン原料が供給される。さらに、反応器には投入ライン17が装備されており、そこを通って水素が供給される。反応器10はいずれの適当な配置でもありうるが、1つの態様ではエチレン、溶媒および水素を含んでなる反応媒体を反応器中に導入する際に連続的な撹拌を与えるための内部垂直インペラー(示されていない)を有する多段階垂直反応器の形態をとる。適当な重合触媒、例えば米国特許第6,218,472号明細書に開示されているタイプのメタロセンをベースにした触媒系、チーグラー−ナッタ触媒系またはクロムをベースにした触媒系、が反応器中に導入される。触媒系をライン16を通して供給される供給原料の中に加えてもよく或いはそれを別個のライン18を通して導入することもできる。
【0014】
第一反応器中の重合反応は所望する分子量分布を有するエチレン単独重合体を製造するために有効な条件下で実施される。重合体生成物は第一反応器からライン20を通して回収されそしてライン20を通して反応器10と同様にCSTR反応器の形態をとる第二段階反応器に供給される。さらにエチレンおよびC−Cアルファオレフィンコモノマーが第二反応器中に例えばヘキサンまたはヘプタンの如き適当な希釈剤中でライン22を通して導入される。前記のような適当な触媒系が第二反応器中にエチレンコモノマー原料流中でまたは別個に触媒注入ライン24を通して導入される。第二反応器中の重合は第一反応器中で製造される重合体の分子量分布と異なる分子量分布を有するエチレン−C−Cアルファオレフィン共重合体を含んでなる第二重合体成分を製造するために有効な重合条件下で実施される。生じた重合体生成物は二峰性の分子量分布を有しそして反応器12からライン27を通して除去される。水素および未反応エチレンの混合物が反応器12から頂部排気ライン28を通して排気される。この気体状混合物は第一反応器に循環されてもよくまたはそうでなければ適当な回収装置中に廃棄されてもよい。
【0015】
第二反応器からの生成物はライン27を通して濃縮および回収システム14に供給され、その中で多峰性の重合体フラッフが抽出される。希釈剤および未反応単量体が回収システム14からライン32を通して回収されそして適当な精製および回収システム(示されていない)に適用され、そこからそれらは反応器12に循環されてもまたは適当な方法で廃棄されてもよい。典型的にはライン27を通して第二反応器から回収システムに流れる生成物流は生成物が回収システム14に供給される際に重合反応を停止させるために注入ライン30を通る適当な不活性化剤と接触する。
【0016】
気体状エチレンをこの時点では実質的に含まない多峰性のポリエチレンフラッフを含有する生成物流はライン34を通して第一の供給区域35に供給され、供給区域35は押し出しおよび混合システム38の他に下降流冷却器40およびダイ42を含んでなる重合体ダイ−押し出しシステム33の加熱器を組み込んでいる。供給区域35内で、重合体フラッフはフラッフを溶融するのに充分な温度に加熱されそしてその後に押し出し混合区域38に送られ、そこで溶融重合体フラッフが押し出されて多峰性の分子量分布を有する重合体生成物の粒子を最終的に製造する。重合体生成物に増大した長鎖枝分かれを与えるために、処理剤が区域35中にライン44を通してもしくは区域38中にライン45を通してまたはこれらのラインの両方を通して加えられる。発明の一面では、加熱された重合体フ
ラッフを押し出し器に適用する前にフリーラジカル開始剤が重合体フラッフ中に導入される。それ故、フリーラジカル開始剤は区域35中にライン45を通して導入されてもよい。フリーラジカル開始剤は区域38中にライン44を通して導入されてもよい。溶融重合体が押し出されたら、それは冷却されそして次にダイ42中で切断されて粒子を製造し、それらは押し出し器ダイシステムの生成物側面から放出される。フリーラジカル開始剤として機能する適当な剤は過酸化物、濃縮酸素、空気、およびアジド類を包含する。例えばジアルキルおよびペルオキシケタールタイプの過酸化物の如き有機過酸化物を包含するそのようなフリーラジカル開始剤はGuenther他の米国特許第6,433,103号明細書に開示されている。この特許に開示されているように、特に適する市販のジアルキル過酸化物は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンを包含するが、適するペルオキシケタール過酸化物は市販生成物であるt−ブチルおよびt−アミルタイプの過酸化物をベースとする。
【0017】
過酸化物はポリエチレンフラッフまたは粉末に押し出しシステム33中への導入前に加えることができる。そのような場合には、過酸化物は押し出し器中に導入される前に重合体全体にわたり充分に混合または分散されなければならない。或いは、前記のように、過酸化物をポリエチレン溶融物中にそれぞれライン44または45を介して押し出し器の供給区域35または混合区域38内で射出することができる。過酸化物は普通は液体状で加えられるが、過酸化物を他の形態、例えば過酸化物コーティング固体分配形(solid
delivery)、で加えることもできる。ポリエチレンが押し出し器中に供給される前または後に、過酸化物をポリエチレンに加えるかまたはそれと組み合わせることもできる。液体過酸化物をポリエチレンの溶融相に押し出し器内で加えて過酸化物の完全な分散を確実にすることが有利でありうる。過酸化物を押し出し器中に当業者に既知のいずれかの手段により、例えばギアポンプまたは他の分配装置により、導入することができる。酸素または空気が開始剤として使用される場合には、これらを押し出し器中でポリエチレン溶融物内に注入することができる。
【0018】
所望する性質および加工性を得るために必要な過酸化物または開始剤の量は変動しうる。しかしながら、過酸化物または開始剤の量は、少なすぎると所望する効果を得ないであろうし多すぎると望ましくない生成物が製造されうる点で、重要である。典型的には、過酸化物に関しては、使用量は約5〜約100ppmであり、約5〜50ppmがより典型的である。より特に、過酸化物の使用量は約5〜約40ppmの範囲でありうる。
【0019】
上記のGuenther他の特許に開示されているように、有機過酸化物または他の処理剤は押し出し前にフラッフに加えることができまたは押し出し工程中に重合体溶融物中に注入することもできる。それ故、重合体が押し出し器に供給される前にまたは後に過酸化物を重合体フラッフと組み合わせることができる。本発明を実施する際に使用できる適当な処理剤および重合体生成物中へのそれらの添加方法のさらなる記述に関しては、引用することにより本発明の内容となる上記のGuenther他の米国特許第6,433,103号明細書を参照のこと。
【0020】
重合体フラッフを処理して長鎖枝分かれを増大するために使用できる他の処理工程は例えばGuentherの上記の特許並びにDebras他の米国特許第7,169,827号明細書に開示されているような照射の適用を包括する。Debras他の特許に開示されているように、長鎖枝分かれを増大するための照射は少なくとも5Mevのエネルギーレベルを有する電子線を10Kgrayの照射投与量で用いて実施できる。適当なエネルギーレベルおよび投与量での重合体の照射を照射された重合体溶融物の機械的処理と組み合わせて、重合体分子中で長鎖枝分かれを形成する。高エネルギー照射は重合体フラッフの加熱中にもしくは溶融重合体の押し出し中にまたは両方で適用できる。本発明の実施において長鎖枝分かれを増大するために使用できる適当な照射工程のさらなる記述に関し
ては、引用することにより本発明の内容となる上記の米国特許第7,169,827号明細書を参照のこと。
【0021】
Guenther他の上記の特許に開示されているように、重合体の長鎖枝分かれは剪断応答によりまたはより特に頻度掃引のカロー−ヤスダ(Carreau−Yasuda)適合度からの「a」パラメーターにより同定できる。レオロジー幅は粘度のニュートンおよび粉末則タイプ剪断速度依存性の間の転移領域の幅をさす。レオロジー幅は樹脂の緩和時間分布の関数であり、その分布は一方では樹脂の分子構造の関数である。改変カロー−ヤスダ(CY)モデル
【0022】
【数1】

【0023】
[式中、
η=粘度(Pas)であり、
γ=剪断速度(1/s)であり、
a=レオロジー幅パラメーター[ニュートンおよび粉末則性能の間の転移領域の幅を記述するCYモデルパラメーター]であり、
λ=秒数による緩和時間[転移領域の時間数による位置を記述するCYモデルパラメーター]であり、
η=0剪断粘度(Pas)[ニュートンプラトーを規定するCYモデルパラメーター]であり、
n=粉末則定数[高剪断速度領域を規定するCYモデルパラメーター]である]
による線状粘弾性動的振動数掃引実験を用いて生ずる流動曲線を適合させることによりCox−Merz則を仮定して実験的に測定される。モデル適合を容易にするために、粉末則定数(n)は一定値(n=0)に保たれる。実験は0.1〜316.2sec−1の振動数範囲にわたる線状粘弾性型(regime)内の平行板配列および歪みを用いて実施できる。振動数掃引は3種の温度(170℃、200℃および230℃)において行われそして既知の時間−温度重ね合わせ方法を用いてデータが次に変換されて190℃におけるマスターカーブを製造する。
【0024】
長鎖枝分かれ(LCB)のレベルにおける差異のない樹脂に関しては、レオロジー幅パラメーター(a)は分子量分布の幅に反比例することが観察されていた。同様に、分子量分布における差異のない試料に関しては、幅パラメーター(a)は長鎖枝分かれのレベルに反比例することが見出されていた。従って、樹脂のレオロジー幅における増加はその樹脂に関する幅パラメーター(a)値における低下としてみられる。この相関性は分子構造における変化に伴う緩和時間分布における変化の結果である。
【0025】
重合体の長鎖枝分かれのレベルは樹脂の流動活性化エネルギー(E)より定量化できる。時間依存性シフト(例えば振動数に対する弾性もしくは応力の水平シフト)は170℃、200℃および230℃における流動曲線からのマスター曲線を形成するのに要求されるが、これは、アレニウス式の形:
【0026】
【数2】

【0027】
[式中、
=流動活性化エネルギー(キロカロリー/モル)であり、
T=シフトされたデータの温度であり、
=基準温度であり、
R=気体定数であり、
α=各温度における流動曲線を基準温度(T)に重ねるために必要なシフト因子である]
でよく知られた線形粘弾性の温度依存性を用いて、流動活性化エネルギーを計算するのに用いることができる。
【0028】
温度Tにおける流動曲線を温度Tにおける流動曲線のものと重ねるために必要なシフト因子の値を用いて流動活性化エネルギーを解析できる。流動活性化エネルギーEは流動中に分子がトランスレート(translate)するのに充分なほど大きい孔を作成するために必要なエネルギーに関連する活性化エネルギーバリアを表す。Eのこの一般的定義は、例えば長鎖枝分かれのレベルまたはタイプにおける変化に関連するもののような分子構造における変化に対するその関連性または感度を示唆する。Guenther他の特許に開示されているように、7.25+/―0.50キロカロリー/モルの範囲内のフラックス流動活性化エネルギーEを有するクロム触媒を用いて製造されるポリエチレンは有意な量の長鎖枝分かれを示す。チーグラー−ナッタタイプ触媒を用いて製造される同様な多分散度を有するさらに線状であるポリエチレンは6.5+/―0.25キロカロリー/モルのフラッフ流動活性化エネルギーEを示す非常に低いレベルの長鎖枝分かれを有する。
【0029】
本発明では、重合体フラッフのフラックス流動活性化エネルギーは処理後のフラッフの長鎖枝分かれの定量的測定値を与えるための長鎖枝分かれ指数として使用される。本発明の1つの態様では、重合体フラッフを処理して増大処理の終結時に少なくとも7.0のそしてより特に少なくとも7.25の長鎖枝分かれ指数(流動活性化エネルギーEに相当する)を与える。
【0030】
重合体の長鎖枝分かれを増大するために使用される操作の形態にかかわらず、長鎖枝分かれのレベルにおける増加は重合体生成物のメルトインデックスMIにおける低下をもたらす。メルトインデックスにおけるこの低下は重合体分子量における対応する変化を伴わずに行われる。最終的なペレット化された生成物に到達するための重合体の押し出し工程における重合体の長鎖枝分かれの増大は、それ故、最終的なペレット化された生成物の特定のメルトインデックスMIに関しては、元の重合体フラッフのより高いメルトインデックスMI(減じられた分子量に対応する)を与えるための条件下での重合反応を実施可能にする。従って、重合体フラッフから重合体生成物へ行く時のメルトインデックスMIにおける低下はそうでない場合、すなわち、長鎖枝分かれが本発明に従う押し出し工程において導入されない時、より大きくなりうる。これは、一方では、押し出し工程中の長鎖枝分かれの導入のない場合にそうであろうものより高い水素−対−エチレン比において行うことを可能にする。水素−対−エチレン比におけるこの増加は第二液体充填反応器中のより少ない頭部空間排気をもたらす。これは一方では工程におけるエチレン単量体損失量における減少を重合工程において、使用されるエチレンのコストにおける対応する低下と共に、もたらす。
【0031】
前記のように、本発明の実施は重合体フラッフ対重合体ペレットMIメルトドロップを長鎖枝分かれの増大なしで行われる匹敵する工程に関する場合にそうであろうものより大きくすることを可能にする。これは、一方では、より高い水素−対−エチレンモル比が第二反応器中で目標にすることを可能にする。第二反応器12中の水素−対−エチレンの
モル比は、例えばライン22を通じたエチレン供給等の他の要因に影響されるとしても、直接的に第一反応器10中の水素−対−エチレンのモル比に関連しているので、この状況はまた第一反応器中に導入される水素−対−エチレンのモル比に関連する。第一反応器10中へのエチレンおよび水素の導入を調節して少なくとも2.0の水素−対−エチレンモル比をそして、より特に、少なくとも3.0の水素−対−エチレンモル比を与えることができる。
【0032】
第二反応器中の水素−対−エチレンモル比は、以上で述べたように、第一反応器中の最初の水素−対−エチレンモル比に関連する。その他の影響を与える因子は、第一反応器から除去されそして第二反応器に供給される水素−対−エチレンの比並びに第二反応器に別個に供給されるエチレンの量である。これらのパラメーターに依存して、第二反応器中で達成される水素−対−エチレンモル比は少なくとも0.05でありうる。第二反応器中では、少なくとも0.1、更には少なくとも0.15のより高い水素−対−エチレンのモル比が観察され得る。この第二反応器中のより高い水素−対−エチレンのモル比は、気体で満たされた第二反応器の頭部空間の排気の減少とこれに付随する第二反応器からのエチレン損失の減少を伴う。
【0033】
前記のように、第二反応区域12中で製造される共重合体は第一反応区域中で製造されるポリエチレン単独重合体の平均分子量より高い分子量を有する。第一反応区域中の平均分子量MWは25,000〜50,000の範囲内であることができそして第二反応区域中の分子量MWは450,000〜600,000の範囲内であることができ、9〜26のMW/MWの範囲、約15の典型的な値、を与える。第一および第二反応区域中で製造される重合体の平均分子量は少なくとも9の、それぞれ第二および第一反応区域中で製造される平均分子量MW対平均分子量MWの比をもたらす。より特に、比MW/MWは少なくとも10、或いは、少なくとも14、であることができる。上記の分子量の関係は関与する重合体生成物に関する重量平均分子量により表示される。しかしながら、第一および第二反応区域中で製造される重合体の間の同様な比較関係は数平均分子量値に関しても見出される。
【0034】
表1は流動活性化エネルギーおよび0(処理なし)〜100パーツパーミリオン(ppm)の範囲の過酸化物レベルにおいて過酸化物処理された重合体フラッフにより示されるような長鎖枝分かれの間の関係を示す。表1はまた重合体に関する分子量特性およびメルトフローインデックスも示す。重合体フラッフに関するメルトインデックス(MI)は0.42g/10分間でありそしてメルトインデックス(MI)を有する重合体フラッフ対重合体ペレットメルトドロップは処理なしの重合体に関する48%から100ppm過酸化物で処理した重合体フラッフに関する90%に増加した。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に報告されているような、メルトインデックス(MI)および幅パラメーター(a)に対する重合体フラッフの処置において使用される過酸化物濃度の影響は、それぞれ図2および3に示されている。図2は横座標上の過酸化物濃度に対する縦座標上のメルトインデックス(MI)のプロットである。図3は横座標上にプロットされた過酸化物濃度に対する縦座標上にプロットされた表1に示されているような幅パラメーターの同様なプロットである。図2および3の試験からわかるように、メルトフローインデックスおよび幅パラメーター(a)の両者は過酸化物濃度の増加に伴い実質的に低下する。
【0037】
本発明の特定の態様を記述したが、それらの改変が当業者に示唆されることは理解されるであろうし、そしてそのような改変の全ては添付された特許請求の範囲内に入るとして包括されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エチレンおよび水素を第一反応区域中に触媒系の存在下で第一の分子量分布を有するエチレン重合体を製造するための重合条件下で導入し、
(b)該重合体および水素を該第一反応区域から回収しそして該重合体および水素を第二重合反応区域に供給し、
(c)エチレンおよびC−Cオレフィン単量体を該第二反応区域中に触媒系の存在下で第一の分子量分布とは異なる第二の分子量分布を有するエチレンC−Cオレフィン共重合体を含んでなる第二重合体を製造するための重合条件下で導入し、
(d)二峰性分子量分布を有するポリエチレン重合体フラッフを該第二重合反応区域から回収し、
(e)該第二重合反応区域から回収された重合体フラッフを該フラッフを溶融するのに充分な温度に加熱し、
(f)該加熱された重合体フラッフを押し出して多峰性の分子量分布を有するポリエチレン重合体生成物の粒子を製造し、そして
(g)該重合体フラッフの加熱および押し出しの少なくとも一方と同時に、該重合体フラッフを処理してその長鎖枝分かれを増大させそして該重合体生成物のメルトインデックスMIを低下させる
ことを含んでなる、二峰性の分子量分布を有するポリエチレン樹脂の製造方法。
【請求項2】
該第一および第二反応区域が連結されている第一および第二の連続撹拌液体反応器により提供される請求項1の方法。
【請求項3】
エチレンおよび水素が該第一反応区域中に少なくとも2.0の水素対エチレンモル比を与える量で導入される請求項2の方法。
【請求項4】
該水素対エチレンモル比が3.0−5.5の範囲内である請求項3の方法。
【請求項5】
該重合体フラッフが副段階(g)で、少なくとも7の該重合体フラッフに関する長鎖枝分かれ指数を与えるように処理される請求項1の方法。
【請求項6】
該重合体フラッフが副段階(g)で、少なくとも7.25の該重合体フラッフに関する長鎖枝分かれ指数を与えるように処理される請求項5の方法。
【請求項7】
該重合体フラッフを押し出す前に該重合体フラッフ中へのフリーラジカル開始剤の導入により該重合体フラッフが副段階(g)で処理される請求項1の方法。
【請求項8】
重合体生成物のメルトインデックスMIと副段階(e)で回収された重合体フラッフのメルトインデックスMIの間の差異が、これに対応する、重合体フラッフと、重合体フラッフの長鎖枝分かれを増大するための重合体フラッフの処理なしに生成された重合体生成物のメルトインデックスMIにおける差異より大きい請求項1の方法。
【請求項9】
該第二反応区域中で製造される共重合体が、該第一反応区域中で製造される重合体の平均分子量MWより高い平均分子量MWを有する請求項1の方法。
【請求項10】
該第一反応区域中で製造される平均分子量(MW)対平均分子量(MW)の比が少なくとも10である請求項9の方法。
【請求項11】
比MW/MWが少なくとも14である請求項10の方法。
【請求項12】
水素およびエチレンの混合物を該第二反応区域から排気することをさらに含んでなる請求項1の方法。
【請求項13】
該第二反応区域から排気される水素対エチレンの比が重合体フラッフの長鎖枝分かれを増大するための重合体フラッフの処理なしで製造される重合体生成物に関する該第二反応区域から排気されるであろう水素対エチレンの対応する比より大きい請求項12の方法。
【請求項14】
該重合体フラッフが少なくとも7の該重合体フラッフに関する長鎖枝分かれ指数を与えるように処理される請求項13の方法。
【請求項15】
該重合体フラッフが少なくとも7.25の該重合体フラッフに関する長鎖枝分かれ指数を与えるように処理される請求項15の方法。
【請求項16】
該エチレンおよび水素が該反応区域中に少なくとも2.0の該第一反応区域中の水素対エチレンモル比を与える量で導入され、そして、少なくとも0.05の該第二反応区域中の水素対エチレンモル比をさらに与える請求項1の方法。
【請求項17】
水素およびエチレンの混合物を該第二反応区域から排気することをさらに含んでなる請求項16の方法。
【請求項18】
該第二反応区域中の水素対エチレンモル比が少なくとも0.1である請求項16の方法。
【請求項19】
該第一反応区域中の水素対エチレンモル比が少なくとも3.0である請求項16の方法。
【請求項20】
該第二反応区域中の水素対エチレンモル比が少なくとも0.15である請求項19の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−510121(P2011−510121A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542414(P2010−542414)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/030843
【国際公開番号】WO2009/091730
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】