説明

ポリエチレン粒子回収方法及びポリエチレン粒子製造装置

【課題】 低圧スラリー重合法により得られるポリエチレン粒子、特に低密度ポリエチレン粒子を効率よく安全に乾燥する方法を提供する。
【解決手段】 低圧スラリー重合法より得られるポリエチレン粒子と重合溶媒からなるスラリーよりポリエチレン粒子と重合溶媒を分離しポリエチレン粒子を回収するに当たり、100℃未満の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低圧スラリー重合法により得られるポリエチレン粒子を回収する際に、例え融解温度の低い低密度ポリエチレン粒子であっても、乾燥中の粒子の融解・固着を防止し、効率よく安全にポリエチレン粒子を乾燥・回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低圧スラリー重合法によるポリエチレンの製造は行われてきた。そして、該低圧スラリー重合法により、エチレンとα−オレフィンとを共重合して直鎖状中密度ないし低密度ポリエチレン(密度945kg/m以下)を製造する場合においては、重合溶媒に可溶である上に粘着性を有するオリゴマーが多量に生成するために、通常の乾燥、回収手段では該ポリマーを乾燥・回収することが困難であった。例えば、気流乾燥器により該ポリマーの乾燥を行った場合、気流乾燥器内に該ポリマーが付着し、気流乾燥器を閉塞させる、付着したポリマーが製品コンタミの原因となる、乾燥不足により可燃性重合溶媒を大量に含んだポリマー製品となる、等の課題があった。また、加熱源を通常スチームとしたスチームチューブドライヤーにより該ポリマーの乾燥を行った場合、チューブの外壁にポリマーが固着し、総括伝熱係数が低下し、乾燥不足により可燃性重合溶媒を大量に含んだポリマー製品となる、等の課題があった。
【0003】
これら課題を解決する方法として、重合触媒失活剤を気流乾燥器内にフィードする方法(例えば特許文献1参照。)、揮発成分を含有するプロピレン重合体を、流動層乾燥器中、重合体の融点以下の温度でプロピレンを主成分とするガスと接触させ、プロピレン重合体を乾燥する方法(例えば特許文献2参照。)、ポリオレフィン固形分と希釈剤ガスとを分離してポリオレフィン固形分を回収するに当たり、ガス化帯域に洗浄用溶剤を注入する方法(例えば特許文献3参照。)、又は、特定の条件下にて流動層乾燥機にてポリエチレン固形分を回収する方法(例えば特許文献4参照。)、等の方法が提案されている。
【0004】
さらに、重合溶媒として例えばイソブテン等の低沸点溶剤を用いることにより、ポリオレフィンの乾燥を効率的に行う方法が知られているが、該方法ではスラリー重合の際に重合溶媒として低沸点溶剤を用いることから、重合時の圧力が高くなり、重合反応槽として耐圧100kg/cm以上の耐圧反応槽を用意することが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01−178503号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭59−025805号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平01−138209号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平05−202116号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案の方法においては、重合触媒失活剤を気流乾燥器内にフィードすると、回収希釈剤を直接重合器にフィード出来なくなり、経済上好ましくないという課題があり、特許文献2〜4に提案の方法においては、流動層乾燥器内における溶融・固着の課題をまだまだ有するものであるとともに、希釈剤として低沸点溶剤を必要とすることから乾燥効率をより高めるためには必然的に重合溶媒も低沸点溶媒とすることが必要となり、重合反応槽を耐圧反応槽とすることが必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、低圧スラリー重合法により得られるポリエチレン粒子を安全に効率よく乾燥・回収する方法及びそれに関するポリエチレン粒子製造装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に関し、鋭意検討した結果、低圧スラリー重合法により得られるポリエチレン粒子を乾燥する際に特定の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにて乾燥・回収することにより、例え低密度ポリエチレン粒子であっても安全に効率よく回収することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、低圧スラリー重合法より得られるポリエチレン粒子と重合溶媒からなるスラリーよりポリエチレン粒子と重合溶媒を分離しポリエチレン粒子を回収するに当たり、100℃未満の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収することを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法に関するものである。
【0010】
以下に、本発明に関し詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリエチレン粒子の回収方法は、低圧スラリー重合法により得られるポリエチレン粒子と重合溶媒からなるスラリーよりポリエチレン粒子と重合溶媒を分離し、ポリエチレン粒子を回収するものであり、その際に100℃未満の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収するものである。ここで、スチームチューブドライヤーを加熱する水蒸気は100℃未満の水蒸気であり、特にポリエチレン粒子同士の固着、チューブ壁面への融着を防止し、乾燥をより安全に効率的に行うことが可能となることから85〜97℃の水蒸気であることが好ましい。なお。通常の100℃以上の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにより、ポリエチレン粒子、特にJIS K6922−1(1997年)を準拠し測定した密度935kg/m未満、さらに930kg/m以下を有するポリエチレン粒子の乾燥・回収を行った場合、このようなポリエチレン粒子は融解温度が低いことからポリエチレン粒子同士の固着が発生し、製品品質の低下が見られたり、チューブ壁面にポリエチレン粒子が融着する結果、熱伝導の低下が見られ、ポリエチレン粒子の乾燥が不十分となり、後工程において重合溶媒による作業環境の悪化のみならず発火の危険性が発生する。また、100℃未満の温水等の液体により加熱したスチームチューブドライヤーにより、ポリエチレン粒子の乾燥・回収を行った場合、このような液体による加熱ではチューブの加熱に温度ムラが発生し、不均一な加熱・乾燥となる結果、ポリエチレン粒子同士の固着が発生し、製品品質の低下が見られたり、チューブ壁面へのポリエチレン粒子が融着する結果、熱伝導の低下が見られたり、加熱が不十分であるために、ポリエチレン粒子の乾燥が不十分となり、後工程において重合溶媒による作業環境の悪化、発火の危険性が発生する。
【0012】
なお、本発明における100℃未満の水蒸気とは、真空蒸気とも称されるものであり、減圧条件下とすることにより100℃未満の条件下でも水蒸気として存在できるものであり、例えば通常の水蒸気を減圧条件下とする、減圧条件下で水を沸騰加熱する、等の方法により調製できるものである。そして、本発明においては、100℃未満の水蒸気を用いることにより、潜熱加熱が可能となることから加熱効率に優れると伴に、均一な加熱をも可能とするものである。
【0013】
本発明でいう低圧スラリー重合法とは、一般的にポリエチレン、ポリプロピレン等の重合の際に用いられる低圧スラリー重合法であり、重合触媒として、例えばチグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒、バナジウム系触媒等を用い、重合溶媒として、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の用いることにより、200kg/cm以下の低圧下においてエチレン、又はエチレンとプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等に代表されるα−オレフィン等の重合性単量体をスラリー重合する方法を挙げることができる。そして、その中でも、特に品質に優れるポリエチレンを得ることが可能となることから、重合触媒としてはチグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いたものであることが好ましい。また、スラリー重合の際の重合圧力を低くすると共に、ポリエチレン粒子を乾燥する際の効率により優れることから重合溶媒としてはn−ヘキサンであることが好ましく、その際の重合圧力としては20〜50kg/cmであることが好ましい
本発明の回収方法により得られるポリエチレン粒子としては、ポリエチレンの範疇に属する粒子であれば如何なるポリエチレンであってもよく、例えばポリエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等が挙げられ、その中でも、特に本発明の回収方法は融解温度の低い低密度ポリエチレンに適したものであることから、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体であることが好ましい。また、その際は、JIS K6922−1(1997年)に準拠し測定した密度が935kg/m未満であることが好ましく、特に930kg/m以下であることが好ましい。
【0014】
以下に、本発明を明瞭にするため、図1に従い本発明を詳細に説明するが、これは一例にすぎない。
【0015】
ここで、a)は低圧スラリー重合反応装置、b)はフラッシュ蒸留装置、c)は遠心分離機、d)はスチームチューブドライヤー、e)は減圧装置のそれぞれを示す。そして、これら個々の装置は、一般に知られているものを用いることが出来る。又、本発明は、低圧スラリー重合反応装置及び水蒸気加熱部に減圧装置を連結したスチームチューブドライヤーからなるポリエチレン粒子製造装置、特に、低圧スラリー重合反応装置、フラッシュ蒸留装置、遠心分離機及び水蒸気加熱部に減圧装置を連結したスチームチューブドライヤーからなるポリエチレン粒子製造装置を用い、行うことが好ましい。
【0016】
まず、低圧スラリー重合反応装置a)にて、エチレン又はエチレンとα−オレフィンとのスラリー重合を行い、ポリエチレン粒子及び重合溶媒からなるスラリーを得、該スラリーをフラッシュ蒸留装置b)に移送し、該フラッシュ蒸留装置b)にて該スラリーより未反応重合性単量体であるエチレン又はエチレンとα−オレフィンとの混合物、水素等を回収し、該回収済スラリーを遠心分離機c)に移送し、該遠心分離機c)にて該回収済スラリーをポリエチレン粒子と重合溶媒に分離し、該ポリエチレン粒子をスチームチューブドライヤーd)に供給し、該スチームチューブドライヤーd)にて、該ポリマー粒子より残存重合溶媒を除去し、乾燥・回収するものである。その際にスチームチューブドライヤーd)の加熱部には、通常の水蒸気が供給され、該加熱部と減圧装置e)とを連結し、減圧下とすることにより100℃未満の水蒸気により加熱されるスチームチューブドライヤーとなるものである。
【0017】
なお、本発明の回収方法により得られるポリエチレン粒子は、その後工程のペレット化、製品加工の際の作業環境の悪化を防止するとともに、加熱溶融時に残存重合溶媒による発火の可能性が無くなることから重合溶媒の含有量が0.6重量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、たとえ融解温度が低いため、乾燥中の固着・融着等により効率的な乾燥を行うことが困難であった低密度ポリエチレン粒子であっても、固着・融着を防止し残存重合溶媒を効率よく除去し、品質、安全性に優れるポリエチレン粒子を効率よく乾燥・回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法を実施するに適した装置の一例示である。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら制限されるものではない。なお、実施例における密度はJIS K6922−1(1997年)を準拠し測定した。
【0021】
実施例1
脱イオン水4.8リットル及びエタノール3.2リットルを混合した混合溶媒に、N,N−ジメチルオクタデシルアミン297gと37%塩酸83.3mlを加え、N,N−ジメチルオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。該N,N−ジメチルオクタデシルアミン塩酸塩溶液に合成ヘクトライト1000gを加えた後、60℃とし3時間反応を行った。その後、ろ過、乾燥、粉砕を行い有機変性粘土化合物を得た。
【0022】
そして、5リットルのフラスコにn−ヘキサン1.4kg、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kg、ビス(n−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド7.32gおよび該有機変性粘土化合物450gを加え、60℃にて1時間反応した後、45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、さらに、1重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kgを添加し、60℃で30分間反応した。次いで、反応溶液を45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液0.45kgを加え、n−ヘキサンで希釈して4.5リットルとすることにより重合触媒分散液を得た。
【0023】
内容積300リットルの低圧スラリー重合装置に、重合溶媒としてn−ヘキサンを105kg/hr、エチレンを30kg/hr、ブテン−1を4.3kg/hr、水素を30NL/hr及び上記の重合触媒分散液を連続的に供給すると伴に、重合反応液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgn−ヘキサンとなるように連続的に供給し、重合温度80℃、重合圧力30kg/cmでエチレン−ブテン共重合体の低圧スラリー重合を連続的に行った。
【0024】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子及びn−ヘキサンからなるスラリーは、連続的に低圧スラリー重合装置により抜き出し、フラッシュ蒸留装置に供給し、該フラッシュ蒸留装置にて未反応エチレン、未反応ブテン−1、水素を回収した回収済スラリーとした後、遠心分離機に供給し、エチレン−ブテン共重合体粒子とn−ヘキサンに分離した。そして、該エチレン−ブテン共重合体粒子を95℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーに供給し、含有n−ヘキサンの除去・乾燥を行い、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。なお、95℃の水蒸気は、105℃の水蒸気の供給部に減圧装置を設置し、減圧条件とすることにより調製を行った。
【0025】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.55重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は920kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0026】
実施例2
エチレンを30kg/hr、ブテン−1を4.3kg/hr、水素を30NL/hrを連続的に供給した代わりに、エチレンを22kg/hr、ブテン−1を0.8kg/hr、水素を29NL/hrを連続的に供給した以外は、実施例1と同様の方法によりエチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。
【0027】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.55重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は942kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0028】
実施例3
エチレンを30kg/hr、ブテン−1を4.3kg/hr、水素を30NL/hrを連続的に供給した代わりに、エチレンを40kg/hr、水素を90NL/hrを連続的に供給し、95℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーの代わりに97℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーとした以外は、実施例1と同様の方法によりエチレン単独重合体粒子の回収を行った。
【0029】
得られたエチレン単独重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.52重量%であり、エチレン単独重合体としての密度は960kg/mであった。また、エチレン単独重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0030】
実施例4
脱イオン水4.8リットル及びエタノール3.2リットルを混合した混合溶媒に、メチルジオクタデシルアミン536gと37%塩酸83.3mlを加え、メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。該メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液に合成ヘクトライト1000gを加えた後、60℃とし3時間反応を行った。その後、ろ過、乾燥、粉砕を行い有機変性粘土化合物を得た。
【0031】
そして、5リットルのフラスコに、n−ヘキサン1.4kg、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kg、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド7.06gおよび該有機変性粘土化合物450gを加え、60℃にて1時間反応した後、45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、さらに、1重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kgを添加し、60℃で30分間反応した。次いで、反応溶液を45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液0.45kgを加え、n−ヘキサンで希釈して4.5リットルとすることにより、重合触媒分散液を得た。
【0032】
内容積300リットルの低圧スラリー重合装置に、重合溶媒としてn−ヘキサンを105kg/hr、エチレンを27kg/hr、ブテン−1を4.2kg/hr、水素を90NL/hr及び上記の重合触媒分散液を連続的に供給すると伴に、重合反応液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgn−ヘキサンとなるように連続的に供給し、重合温度75℃、重合圧力30kg/cmでエチレン−ブテン共重合体の低圧スラリー重合を連続的に行った。
【0033】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子及びn−ヘキサンからなるスラリーは、連続的に低圧スラリー重合装置により抜き出し、フラッシュ蒸留装置に供給し、該フラッシュ蒸留装置にて未反応エチレン、未反応ブテン−1、水素を回収した回収済スラリーとした後、遠心分離機に供給し、エチレン−ブテン共重合体粒子とn−ヘキサンに分離した。そして、該エチレン−ブテン共重合体粒子を94℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーに供給し、含有n−ヘキサンの除去・乾燥を行い、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。なお、94℃の水蒸気は、105℃の水蒸気の供給部に減圧装置を設置し、減圧条件とすることにより調製を行った。
【0034】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.55重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は922kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0035】
実施例5
エチレンを27kg/hr、ブテン−1を4.2kg/hr、水素を90NL/hrを連続的に供給した代わりに、エチレンを29kg/hr、ブテン−1を0.9kg/hr、水素を95NL/hrを連続的に供給した以外は、実施例4と同様の方法によりエチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。
【0036】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.55重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は939kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0037】
実施例6
脱イオン水4.8リットル及びエタノール3.2リットルを混合した混合溶媒に、メチルジオクタデシルアミン536gと37%塩酸83.3mlを加え、メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。該メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液に合成ヘクトライト1000gを加えた後、60℃とし3時間反応を行った。その後、ろ過、乾燥、粉砕を行い有機変性粘土化合物を得た。
【0038】
そして、5リットルのフラスコに、n−ヘキサン1.4kg、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kg、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド5.26gおよび該有機変性粘土化合物450gを加え、60℃にて1時間反応した後、45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、さらに、1重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kgを添加し、60℃で30分間反応した。次いで、反応溶液を45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液0.45kgを加え、n−ヘキサンで希釈して4.5リットルとすることにより、重合触媒分散液を得た。
【0039】
内容積300リットルの低圧スラリー重合装置に、重合溶媒としてn−ヘキサンを105kg/hr、エチレンを29kg/hr、ブテン−1を1.0kg/hr、水素を20NL/hr及び上記の重合触媒分散液を連続的に供給すると伴に、重合反応液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgn−ヘキサンとなるように連続的に供給し、重合温度85℃、重合圧力30kg/cmでエチレン−ブテン共重合体の低圧スラリー重合を連続的に行った。
【0040】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子及びn−ヘキサンからなるスラリーは、連続的に低圧スラリー重合装置により抜き出し、フラッシュ蒸留装置に供給し、該フラッシュ蒸留装置にて未反応エチレン、未反応ブテン−1、水素を回収した回収済スラリーとした後、遠心分離機に供給し、エチレン−ブテン共重合体粒子とn−ヘキサンに分離した。そして、該エチレン−ブテン共重合体粒子を96℃の水蒸気により加熱されたスチームチューブドライヤーに供給し、含有n−ヘキサンの除去・乾燥を行い、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。なお、96℃の水蒸気は、105℃の水蒸気の供給部に減圧装置を設置し、減圧条件とすることにより調製を行った。
【0041】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.52重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は941kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0042】
実施例7
脱イオン水4.8リットル及びエタノール3.2リットルを混合した混合溶媒に、メチルジオクタデシルアミン536gと37%塩酸83.3mlを加え、メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。該メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液に合成ヘクトイト1000gを加えた後、60℃とし3時間反応を行った。その後、ろ過、乾燥、粉砕を行い有機変性粘土化合物を得た。
【0043】
そして、5リットルのフラスコに、n−ヘキサン1.4kg、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kg、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド7.06gおよび該有機変性粘土化合物450gを加え、60℃にて1時間反応した後、45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、さらに、1重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液1.78kgを添加し、60℃で30分間反応した。次いで、反応溶液を45℃に冷却し2時間静置した後、上澄み液を除去し、20重量%のトリイソブチルアルミニウム−n−ヘキサン溶液0.45kgを加え、n−ヘキサンで希釈して4.5リットルとすることにより、重合触媒分散液を得た。
【0044】
内容積300リットルの低圧スラリー重合装置に、重合溶媒としてn−ヘキサンを105kg/hr、エチレンを28kg/hr、ブテン−1を1.9kg/hr、水素を20NL/hr及び上記の重合触媒分散液を連続的に供給すると伴に、重合反応液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度が0.93ミリモル/kgn−ヘキサンとなるように連続的に供給し、重合温度85℃、重合圧力30kg/cmでエチレン−ブテン共重合体の低圧スラリー重合を連続的に行った。
【0045】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子及びn−ヘキサンからなるスラリーは、連続的に低圧スラリー重合装置により抜き出し、フラッシュ蒸留装置に供給し、該フラッシュ蒸留装置にて未反応エチレン、未反応ブテン−1、水素を回収した回収済スラリーとした後、遠心分離機に供給し、エチレン−ブテン共重合体粒子とn−ヘキサンに分離した。そして、該エチレン−ブテン共重合体粒子を95℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーに供給し、含有ヘキサンの除去・乾燥を行い、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。なお、95℃の水蒸気は、105℃の水蒸気の供給部に減圧装置を設置し、減圧条件とすることにより調製を行った。
【0046】
得られたエチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.53重量%であり、エチレン−ブテン共重合体としての密度は933kg/mであった。また、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着は見られず、スチームチューブドライヤー壁面への融着も見られなかった。
【0047】
比較例1
95℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーの代わりに、減圧装置を設置していない105℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。
【0048】
スチームチューブドライヤー壁面には、エチレン−ブテン共重合体の融着が見られ、得られたエチレン−ブテン共重合体粒子にはエチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着物が含まれていた。また、エチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.78重量%であった。エチレン−ブテン共重合体としての密度は920kg/mであった。
【0049】
比較例2
95℃の水蒸気により加熱されたスチームチューブドライヤーの代わりに、減圧装置を設置せず105℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーを用いたい以外は、実施例4と同様の方法により、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。
【0050】
スチームチューブドライヤー壁面には、エチレン−ブテン共重合体の融着が見られ、得られたエチレン−ブテン共重合体粒子にはエチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着物が含まれていた。また、エチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.85重量%であった。エチレン−ブテン共重合体としての密度は922kg/mであった。
【0051】
比較例3
95℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーの代わりに、95℃の温水により加熱したチューブドライヤーを用いたい以外は、実施例1と同様の方法により、エチレン−ブテン共重合体粒子の回収を行った。
【0052】
チューブドライヤーの加熱が不均一であり下流側となるほど温度が低くなり、壁面へのエチレン−ブテン共重合体の融着、エチレン−ブテン共重合体粒子同士の固着物は見られなかったが、エチレン−ブテン共重合体粒子のn−ヘキサン含有量は0.99重量%であった。エチレン−ブテン共重合体としての密度は920kg/mであった。
【符号の説明】
【0053】
a) 低圧スラリー重合反応装置
b) フラッシュ蒸留装置
c) 遠心分離機
d) スチームチューブドライヤー
e) 減圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧スラリー重合法より得られるポリエチレン粒子と重合溶媒からなるスラリーよりポリエチレン粒子と重合溶媒を分離しポリエチレン粒子を回収するに当たり、100℃未満の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収することを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法。
【請求項2】
請求項1に記載のポリエチレン粒子の回収方法に於いて、
上記スラリーからフラッシュ蒸留により未反応重合性単量体を分離し、その後のスラリーから遠心分離によりポリエチレン粒子を分離した後、100℃未満の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収することを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリエチレン粒子の回収方法に於いて、
85〜97℃の水蒸気により加熱したスチームチューブドライヤーにてポリエチレン粒子を乾燥・回収することを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリエチレン粒子の回収方法に於いて、
重合溶媒がn−ヘキサンであり、ポリエチレン粒子がエチレン−ブテン共重合体粒子であることを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリエチレン粒子の回収方法に於いて、
ポリエチレン粒子が、JIS K6922−1(1997年)を準拠し測定した密度935kg/m未満を有するポリエチレンよりなるポリエチレン粒子であることを特徴とするポリエチレン粒子の回収方法。
【請求項6】
低圧スラリー重合反応装置及び水蒸気加熱部に減圧装置を連結したスチームチューブドライヤーからなることを特徴とするポリエチレン粒子製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載のポリエチレン粒子製造装置に於いて、
さらに、フラッシュ蒸留装置、遠心分離機を有することを特徴とするポリエチレン粒子製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−137073(P2011−137073A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297201(P2009−297201)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】