説明

ポリエチレン系成形材料

【課題】成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性及び耐熱性に優れた、ポリエチレン系成形材料の提供。
【解決手段】(A)ポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下、(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%、及び(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%を含有し、(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが25cm以上、(2)密度が0.953〜1.07g/cm3、(3)シャルピー衝撃値が4KJ/m以上、(4)酸素透過度が100ml・mm/m・day・atm以下、の各条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系成形材料に関し、詳しくは、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れたポリエチレン系成形材料に関し、特に、射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少なく、かつ耐熱性に優れた食品を収容する容器及び容器蓋を成形できるポリエチレン系成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品用カップや、液体食品ボトル用のキャップなどに、その滑り性、軽量、低価格を生かして高密度ポリエチレン(HDPE)が広く用いられている。そのような容器においては一般には射出成形にて成形されている。しかしながら、ポリエチレン単独による容器は、ポリエチレンのガスバリア性不足によって、食品等の内容物が酸化するため、長期保管ができないとの問題があった。
【0003】
ちなみに、荷重2.16kgにおけるMFRが0.8〜5g/10min、かつ、荷重21.6kgにおけるHLMFRが180g/10min以上、HLMFR/MFRが80の高流動性で成形性に優れ、サイクルを短縮して、生産効率を上げることができる炭酸飲料等による内圧が高くなるものを内容物とする容器用ポリエチレン組成物(例えば、特許文献1〜2参照。)等の成形性、耐ストレスクラック性を向上させた容器用樹脂組成物により、切れ性、剛性、耐ストレスクラック性とのバランスが十分でかつ、高速成形可能なポリエチレン樹脂が開発されている。しかしながら、食品を充填するには、その内容物の酸化劣化防止のため、酸化劣化防止性能が求められており、また、ポリエチレンは、元来酸素透過性能が優れていないため、透過防止においては不利である。
【特許文献1】特開2000−248125号公報
【特許文献2】特開2002−60559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れた、特に、射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少なく、かつ耐熱性に優れたポリエチレン系成形材料、特に、食品を収容する容器及び容器蓋を成形できるポリエチレン系成形材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のポリエチレンに特定量のエチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリオレフィンを配合し、かつ特定の特性を満足するポリエチレン系材料が成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性、酸素透過防止性に優れた成形用材料となり得ることを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(A)〜(C)を含有し、下記の特性(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
成分(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.001〜100g/10分及び密度が0.940g/cmを超えるポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下
成分(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%
成分(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%
特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが25cm以上
特性(2)密度が0.953〜1.07g/cm
特性(3)シャルピー衝撃値が4KJ/m以上
特性(4)酸素透過度が100ml・mm/m・day・atm以下
【0007】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記成分(A)が、下記の特性(a−1)〜(a−3)の条件を満足するポリエチレンであることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(a−1)曲げ弾性率が800MPa以上
特性(a−2)定ひずみESCRが1時間以上
特性(a−3)ビカット軟化点が90℃以上
【0008】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、上記成分(A)が、下記の特性(a−4)〜(a−5)の条件を満足するポリエチレンであることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(a−4)炭化水素揮発分が80ppm以下
特性(a−5)キャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度が500Pa・sec以下
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、上記成分(A)が、下記の成分(A−1)および(A−2)からなり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が100〜400g/10分、HLMFR/MFRが50〜200であることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
成分(A−1)HLMFRが0.5〜10g/10分、密度が0.935g/cm以上のポリエチレン樹脂10重量部以上30重量部未満
成分(A−2)MFRが30g/10分以上、密度が0.961g/cm以上のポリエチレン樹脂70重量部より多く90重量部以下
【0010】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、上記成分(B)が、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(b−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1〜20g/10分
特性(b−2)密度が1.10〜1.20g/cm
特性(b−3)エチレン共重合比率が10〜80mol%
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、上記成分(C)が、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足する変性ポリオレフィンであることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
特性(c−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分
特性(c−2)密度が0.915〜0.965g/cm
【0012】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、上記成分(C)の変性ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト率が、0.001〜5重量%であることを特徴とするポリエチレン系成形材料が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性に優れ、かつ、ガスバリア性に優れたポリエチレン系成形材料が得られ、特に射出成形性に優れ、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐衝撃性等の物性低下が少ない、かつ耐熱性に優れた容器及び容器蓋を成形できる容器及び容器蓋用ポリエチレン系成形材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.001〜100g/10分及び密度が0.940g/cmを超えるポリエチレン、(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体、(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンを含有し、特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが25cm以上、特性(2)密度が0.953〜1.07g/cm、特性(3)シャルピー衝撃値が4KJ/m以上、特性(4)酸素透過度が100ml・mm/m・day・atm以下を満足するポリエチレン系成形材料である。以下に本発明を各項目毎に詳細に説明する。
【0015】
1.ポリエチレン系成形材料の構成成分
(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.001〜100g/10分及び密度が0.940g/cmを超えるポリエチレン
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.001〜100g/10分及び密度が0.940g/cmを超えるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレンが好ましく例示され、エチレンと、あるいは炭素数4〜18のα−オレフィンから選ばれる1種又はそれ以上のコモノマーとのエチレン・α−オレフィン共重合体を含むものである。共重合体に用いるα−オレフィンの代表例としては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いるポリエチレン(A)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは0.001〜100g/10分であり、0.5〜40g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.8〜20g/10分である。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.001g/10分未満では、成形性が劣る傾向があり、100g/10分を超えると耐ストレスクラック性などの特性が劣りやすくなる。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、重合温度や連鎖移動剤の使用等により調整することができ、所望のものを得ることができる。
ここで、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準じて測定される値である。
【0017】
本発明で用いるポリエチレン(A)の密度は、0.940g/cmを超えるものであり、好ましくは0.945〜0.980g/cmである。密度が0.940g/cm以下では、剛性が劣り成形体が高温時に変形しやすくなる。密度は、オレフィンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、密度は、JIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される値である。
【0018】
さらに、本発明で用いるポリエチレン(A)は、下記の特性(a−1)〜(a−5)の条件を満足するものが好ましい。
特性(a−1)曲げ弾性率
ポリエチレン(A)の曲げ弾性率は、800MPa以上が好ましく、好ましくは900MPa以上、さらに好ましくは1000MPa以上である。曲げ弾性率が800MPa未満では剛性が低下し、特に高温時に成形品が変形しやすい。曲げ弾性率の上限値は特に限定されないが、通常は2000MPa以下である。曲げ弾性率は、メルトフローレート、密度を増減させることにより調節することができ、密度を増加又はメルトフローレートを低下させると曲げ弾性率を上げることができる。
ここで、曲げ弾性率は、試験片として210℃で射出成形した4×10×80mmの板を用い、JIS−K6922−2に準拠して測定される値である。
【0019】
特性(a−2)定ひずみESCR
ポリエチレン(A)の定ひずみESCRは、1時間以上が好ましく、さらに好ましくは10時間以上である。定ひずみESCRが1時間未満では成形品の耐久性が低下する。定ひずみESCRは、メルトフローレート、密度を増減させることにより調節することができ、密度を増加又はメルトフローレートを低下させると上げることができる。
ここで、定ひずみESCRは、試験片として190℃で射出成形した120×120×2mmの板から切り出したものを用い、JIS−K6922−2に準拠して測定される値である。
【0020】
特性(a−3)ビカット軟化点
ポリエチレン(A)のビカット軟化点は、90℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上である。ビカット軟化点が90℃未満では耐熱性が不足しやすく、高温充填時に変形が発生しやすくなる。ビカット軟化点は、密度を増減させることにより変化させることができ、密度を増加させると上昇させることができる。
ここで、ビカット軟化点は、JIS−K7206に準拠して測定される値である。
【0021】
特性(a−4)炭化水素揮発分
ポリエチレン(A)の炭化水素揮発分は、80ppm以下が好ましく、さらに好ましくは50ppm以下である。炭化水素揮発分が80ppmを超えると容器内容物に臭いが残ることがある。炭化水素揮発分は、脱臭処理することにより減少させることができ、特にスチーム脱臭処理を行うことにより本発明の効果を発揮できる。スチーム処理の条件は特に限定されるものではないが、ポリエチレンを100℃のスチームに8時間程度接触させるとよい。
ここで、炭化水素揮発分の測定は、ポリエチレン樹脂1gを25mlのガラス製密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した後の密閉容器中の成分をガスクロマトグラフィーにて分析して測定される値である。
【0022】
特性(a−5)キャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度
ポリエチレン(A)のキャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度は、500Pa・sec以下が好ましく、さらに好ましくは400Pa・sec以下である。この溶融粘度が500Pa・secを超えると流動性が低下し、高速成形性が低下する。この溶融粘度は、ポリエチレンの分子量を増減させることにより調節することができ、分子量を大きくすると増加させることができる。
ここで、キャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度は、インテスコ社製キャピラリーレオメーターを用い、径1.0mm、L/D=20のキャピラリーを使用し、温度200℃、剪断速度200sec−1における粘度を測定して得られる値である。
【0023】
本発明で用いるポリエチレン(A)は、単一のポリエチレン樹脂でもよいが、複数、たとえば異なる二種類の物性を有するポリエチレン樹脂成分から構成することもできる。好ましいものとしては、下記成分(A−1)と(A−2)からなり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が100〜400g/10分、HLMFR/MFRが50〜200であるポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0024】
ポリエチレン(A)を構成する成分(A−1)としては、HLMFRが0.5〜10g/10分、密度が0.935g/cm以上のポリエチレン樹脂が挙げられる。
成分(A−1)のポリエチレン樹脂成分のHLMFRが0.5g/10分未満では流動性が低下し成形性が不良となる傾向があり、10g/10分を超えると耐ストレスクラック性が低下する。成分(A−1)のポリエチレン樹脂成分の密度は、0.935g/cm未満では剛性が不十分となる。成分(A−1)のポリエチレン樹脂成分の密度の上限としては0.955g/cmが望ましい。
【0025】
ポリエチレン(A)を構成する成分(A−2)としては、MFRが30g/10分以上、密度が0.961g/cm以上が好ましい。
成分(A−2)のポリエチレン樹脂成分のMFRが30g/10分未満では流動性が低下する。成分(A−2)のポリエチレン樹脂のMFRの上限は特に制限されないが、成分(A)の温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)100〜400g/10分、HLMFR/MFRが50〜200を満足する範囲にて選択される。成分(A−2)のポリエチレン樹脂成分の密度が0.961g/cm未満の場合は剛性が低下するおそれがある。成分(A−2)のポリエチレン樹脂成分の密度の上限値は特に制限されないが、通常は0.980g/cm以下である。
【0026】
成分(A−1)と成分(A−2)の配合割合は、成分(A−1)が10重量部以上30重量部未満、好ましくは20質量部以上30質量部未満であり、成分(A−2)が70重量部より多く90重量部以下、好ましくは70質量部より多く80質量部以下である。成分(A−1)が10質量部未満では、耐ストレスクラック性が低下し、30質量部以上では成形性が低下する。
これらの異なる二種類の物性を有するポリエチレン樹脂成分は、順次重合して得られるものでもよいし、別々に重合して後でブレンドしたものでもよい。
【0027】
本発明で用いる成分(A)の製造方法は、上記物性を満足する限り触媒、製造方法等を特に限定するものではなく、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、クロム系触媒などの重合用触媒を用いて、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法などの製造プロセスにより製造することができる。
【0028】
また、成分(A−1)及び成分(A−2)のポリエチレン樹脂成分を別個にそれぞれ重合し、それらをブレンドすることにより本発明のポリエチレン系成形材料とすることができる。好ましくは、操作の容易さや組成の均質さ等の理由から直列に接続した複数の重合反応器、たとえば2基の重合反応器で順次連続的に重合して得られるものが好ましい。重合触媒は前記したチーグラー系触媒、メタロセン系触媒、クロム系触媒等の各種触媒が用いられる。重合は有機溶媒中、液状単量体中あるいは気相中で行うことができる。直列に接続した複数の重合反応器で順次連続的に重合する、いわゆる多段重合においては、たとえば一段目においてエチレンあるいはさらにα−オレフィンを(共)重合させて高分子量成分の基となるポリエチレン樹脂(成分(A)に相当)を製造し、引き続き重合系中にエチレンおよび水素を導入して、高分子量成分と低分子量成分とを含むポリエチレン樹脂を調製することができる。
なお、多段重合の場合、2段目以降の重合域で生成するポリエチレン樹脂の量とその性状については、各段における樹脂生成量(未反応ガス分析等により把握できる)を求め、樹脂の物性は各段の後でそれぞれ抜出した樹脂の物性を測定し、物性の加成性から換算して求めることができる。
【0029】
(A)成分のポリエチレンには、本発明の効果を著しく損なわない範囲で添加剤、充填材等を添加しても良い。添加剤として、例えば酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、例えばタルク、マイカ等が使用できる。成分(A)のポリオレフィンは連続的に多段重合してもよく、別々に重合した後ブレンドして得ることも可能である。いずれの場合でも、上記ポリエチレンに必要に応じ各種添加剤を配合し、混練押出機、バンバリーミキサー等にて混練し、成形用材料とすることができる。
【0030】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(A)成分の配合量は、50重量%を超え90重量%以下であり、好ましくは60重量%以上90重量%以下である。(A)成分の配合量が50重量%以下では、成形性が低下し、また、脆くなることおよび硬くなることにより、実用性能上劣り、90重量%を超えるとガスバリア性が満たされなくなる。
【0031】
(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するものが好ましい。
【0032】
特性(b−1)メルトフローレート
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、1〜20g/10分を満足することが好ましい。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1g/10分未満では成形性が悪く、20g/10分を超えるとガスバリア性が低下する。温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、重合温度や連鎖移動剤の使用等により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準じて測定される値である。
【0033】
特性(b−2)密度
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)の密度は、1.10〜1.20g/cmを満足することが好ましい。密度が1.10g/cm未満では剛性が劣り成形体が変形しやすくなり、1.20g/cm超えるとスコア切れ性が低下する傾向がある。密度は、オレフィンと共重合させるコモノマーの種類や量により変化させることができ、所望のものを得ることができる。
ここで、密度はJIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される値である。
【0034】
特性(b−3)エチレン共重合比率
エチレン−ビニルアルコール共重合体(B)のエチレン共重合比率は、10〜80mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%である。また、鹸化度は、好ましくは80%以上、好適には85%以上である。エチレン含有量が10mol%未満では溶融成形性が悪くなりやすく、一方80mol%を超えると、ガスバリア性が不足しやすい。また、鹸化度が80%未満では、ガスバリア性及び熱安定性が悪くなりやすい。
【0035】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(B)成分の配合量は、5〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%である。(B)成分の配合量が5重量%未満ではガスバリア性が発現せず、30重量%を超えると機械物性が低下し、実用性能上使用できないことになりやすい。
【0036】
(C)変性ポリオレフィン
本発明のポリエチレン系成形材料で用いる(C)変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンであり、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足するものが好ましい。
【0037】
特性(c−1)メルトフローレート
変性ポリオレフィン(C)の温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートは、0.1〜50g/10分が好ましく、さらに好ましくは0.15〜30g/10分であり、特に好ましくは0.2〜20g/10分である。温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが0.1g/10分未満では、成形体に加工する際、加工機のモーターに過負荷がかかるために生産効率を低下させ、50g/10分を超えると、成形体の酸素透過防止性が低下するおそれがある。
ここで、温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレートは、JIS−K6922−2:1997に準拠して測定される値である。
【0038】
特性(c−2)密度
変性ポリオレフィン(C)の密度は、0.915〜0.965g/cmが好ましく、さらに好ましくは0.917〜0.961g/cmであり、特に好ましくは0.920〜0.957g/cmである。密度が0.915g/cm未満では、成形体の剛性が低下しやすく、また酸素透過防止性や耐油性が低下しやすく、0.965g/cmを超えると成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。
ここで、密度は、JIS−K6922−1,2:1997に準拠し測定される値である。
【0039】
本発明の(C)変性ポリオレフィンは、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィンであり、ポリオレフィンに、有機過酸化物等のラジカル発生剤の存在下で、不飽和カルボン酸カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをグラフトさせることにより得ることができる。
【0040】
変性ポリオレフィンの原料となるポリオレフィンとしては、エチレン単独重合体あるいはエチレンとα−オレフィンとの共重合体が好ましい。α−オレフィンとしては、直鎖又は分岐鎖状の炭素数3〜20のオレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンを挙げることができる。またそれらを2種類以上組み合わせて使用しても良い。これら共重合体の中でも、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が経済性の観点から好適である。上記ポリオレフィンは、特に触媒、プロセス等を限定されるものではなく、通常一般の方法により製造することが可能である。即ち、チーグラー系触媒、シングルサイト系触媒等や、スラリー法、溶液法、気相法の各重合様式にて、各種重合器、重合条件、触媒にて製造することが可能であるが、好ましくは、特公昭55−14084号公報などに記載の特定のチーグラー系触媒あるいはシングルサイト系触媒を用いて重合温度、圧力等の重合条件、助触媒等をコントロールすることにより好適に製造可能である。
【0041】
本発明の変性ポリオレフィンにグラフトされる不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、一塩基不飽和カルボン酸及び二塩基不飽和カルボン酸ならびにこれらの金属塩、アミド、イミド、エステル及び無水物が挙げられる。これらのうち、一塩基不飽和カルボン酸の炭素数は一般的には多くとも20個以下、好ましくは15個以下である。また、その誘導体の炭素数は通常多くとも20個以下、好ましくは15個以下である。さらに二塩基性不飽和カルボン酸の炭素数は一般的には30個以下、好ましくは25個以下である。また、その誘導体の炭素数は通常30個以下、好ましくは25個以下である。これらの不飽和カルボン酸及びその誘導体の中でも、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びその無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸及びその無水物ならびにメタクリル酸グリシジルが好ましく、特に無水マレイン酸及び5−ノルボルネン酸無水物が好適である。
【0042】
本発明の(C)変性ポリオレフィンを製造する際に、ラジカル開始剤を用いることができる。その種類は特に限定されないが、好ましくは有機過酸化物が望ましい。有機過酸化物としては、半減期の分解温度が100℃以上のものが好適である。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0043】
本発明の(C)変性ポリオレフィンは、上記のポリオレフィンと、上記の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体、有機過酸化物とを均一混合し処理することにより製造される。具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、あるいはいわゆる気相グラフト法等が挙げられる。グラフト処理温度としては、ポリオレフィンの劣化、不飽和カルボン酸やその誘導体の分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、通常190〜350℃であり、とりわけ200〜300℃が好適である。
また、本発明の(C)変性ポリオレフィンを製造するにあたり、その性能を向上する目的で、特開昭62−10107号公報に記載のごとく既に公知の方法、例えば前記のグラフト変性時あるいは変性後にエポキシ化合物又はアミノ基もしくは水酸基などを含む多官能性化合物で処理する方法、さらに加熱や洗浄などによって未反応モノマー(不飽和カルボン酸やその誘導体)や副生する諸成分などを除去する方法を採用することができる。
【0044】
上記不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト量は高いほど望ましいが、好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸誘導体のグラフと量が0.001重量%未満であると、グラフト変性が不十分となり、組成物成分の分散状態が不十分となり、また、最終的に得られる成形品の機械的強度が低下することがある。一方、5重量%を超えると、得られる変性ポリオレフィンのゲル化、劣化、着色等のおそれがある。また、ラジカル開始剤の添加量は、好ましくは0.001〜0.50重量%であり、より好ましくは0.005〜0.30重量%であり、特に好ましくは0.010〜0.30重量%である。ラジカル開始剤の割合が0.001重量%未満であると、グラフト変性を完全に行うには長時間を要する。又は、ポリオレフィンのグラフト変性が不十分となり、成分分散状態が不十分になることがある。一方、0.50重量%を超えると、ラジカル開始剤によって過度に分解したり、架橋反応を起こすことがある。
【0045】
本発明のポリエチレン系成形材料において、(C)成分の配合量は、5〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。成分(C)の配合量が5重量%未満では、(A)、(B)、(C)の3成分が分散しにくくなり、40重量%を超えると製品が劣化しやすくなる。
【0046】
(D)その他の成分
本発明のポリエチレン系成形材料には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で添加剤、充填材等を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤(フェノール系、リン系、イオウ系)、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられ、これらを1種又は2種以上適宜併用することができる。充填材としては、例えばタルク、マイカ等を使用できる。
【0047】
2.成形材料の製造と特性
本発明のポリエチレン系成形材料は、前記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、必要に応じて、他の成分を任意の順番に配合して、一軸押出機、二軸押出機、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等通常の混練機を用いて溶融混練することによって得られる。この場合、各成分の分散を良好にすることができる溶融混練方法を選択することが好ましく、二軸押出機を用いて、溶融混練することが好ましい。
また、このようにして得られる本発明のポリエチレン系成形材料は、次の特性(1)〜(4)を満足する必要がある。
【0048】
特性(1)スパイラルフロー
本発明のポリエチレン系材料は、成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが25cm以上であり、好ましくは30cm以上である。このスパイラルフローに特に上限はもうけないが、一般には100cm以下である。このスパイラルフローが25cm未満であれば成形性が低下する。
ここで、スパイラルフローは、幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのスパイラル流路を有する金型を用い、東芝機械株式会社製IS−80EPN射出成形機を用い、設定温度190℃、射出圧力75MPa、保持圧力75MPa、保圧切り替え位置7mm、射出時間5秒、冷却時間10秒にて、クッション量が1.9〜2.1mmとなるように計量位置を調整し、試料の最長流動長を測定するものである。
【0049】
特性(2)密度
本発明のポリエチレン系成形材料は、密度が0.953〜1.07g/cmであり、好ましくは0.960〜1.05g/cmである。密度が0.953g/cm未満では剛性が低下し、容器及び容器蓋等に用いた場合は変形しやすくなり、1.07g/cmを超えると柔軟性が低下し、実用上好ましくない。
ここで、密度はJIS−K6922−1,2:1997に準じて測定される。
【0050】
特性(3)シャルピー衝撃値
本発明のポリエチレン系成形材料は、シャルピー衝撃値が4KJ/m以上であり、好ましくは5KJ/m以上である。シャルピー衝撃値が4KJ/m未満では、容器及び容器蓋等に用いた場合に割れやすくなり、実用上好ましくない。シャルピー衝撃値は、例えば成分(A)の量を増減させることにより調節することができ、成分(A)の量を少なくすると低下する傾向がある。
ここで、シャルピー衝撃値はJIS−K6922−2に準じて測定される。
【0051】
特性(4)酸素透過度
本発明のポリエチレン系成形材料は、酸素透過度は、100ml・mm/m・day・atm以下であり、好ましくは90ml・mm/m・day・atm以下である。酸素透過度が100ml・mm/m・day・atmを超えると、容器等に用いる場合は容器内容物の酸化を抑制が不十分となり、食品等の長期間の保存が難しくなる。なお、酸素透過度が0.01〜100ml・mm/m・day・atmであれば実用的に支障なく採用可能である。
ここで、酸素透過度はJIS−K7126に基づき、40℃、50%RH条件で測定される。測定における試験片は、東芝機械社製IS−150E射出成形機にて190℃、金型温度40℃にて成形された120×120×1mmの平板を用いて行う。
【0052】
3.成形材料の用途
本発明のポリエチレン系成形材料は、上記特性(1)〜(4)の条件を満足するものであるので、成形性、高流動性、臭い、耐衝撃性、食品安全性、ガスバリア性、特に射出成形性、酸素透過防止性に優れ、なおかつ耐熱性に優れる。したがって、このような特性を必要とする、容器、容器蓋等の用途に使用でき、特に、食用油、わさび等の香辛料、調味料、アルコール飲料、炭酸飲料などの食品及び飲料容器や容器蓋、化粧品、ヘアクリーム等の容器及び容器蓋の用途に使用でき、射出成形等で成形される食品容器及びその容器蓋に好適に用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例で用いた測定方法、使用した材料は以下の通りである。
【0054】
1.測定方法
(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフロー:幅10mm、厚み2mm、最長流路長2000mmのスパイラル流路を有する金型を用い、東芝機械株式会社製IS−80EPN射出成形機を用い、設定温度190℃、射出圧力75MPa、保持圧力75MPa、保圧切り替え位置7mm、射出時間5秒、冷却時間10秒にて、クッション量が1.9〜2.1mmとなるように計量位置を調整し、試料の最長流動長を測定した。
(2)シャルピー衝撃値:JIS−K6922−2に準拠して測定した。
(3)酸素透過度:JIS−K7126に基づき、40℃、50%RH条件で測定した。測定における試験片は東芝機械社製IS−150E射出成形機にて190℃、金型温度40℃にて成形された120×120×1mmの平板を用いて行なった。
(4)温度190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR):JIS−K6922−2:1997に準拠して測定した。
(5)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):JIS−K6922−2:1997に準拠して測定した。
(6)密度:JIS−K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(7)ビカット軟化点:JIS−K7206に準拠して測定した。
(8)曲げ弾性率:JIS−K6922−2に準拠して測定した。
(9)定ひずみESCR:190℃にて射出成形された120×120×2mmの板から試験片を切り出し、JIS−K6922−2に準拠して測定した。
(10)炭化水素揮発分:ポリエチレン樹脂1gを25mlのガラス製密閉容器に入れ、130℃で60分加熱した後の密閉容器中の成分をガスクロマトグラフィーにて分析して測定した。
(11)キャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度:インテスコ社製キャピラリーレオメーターを用い、径1.0mm、L/D=20のキャピラリーを使用し、温度200℃、剪断速度200sec−1における粘度を測定した。
【0055】
2.使用樹脂
(1)(A)成分
(A)成分である(A1)〜(A3)の物性を表1に示した。(A1)、(A2)は以下のように製造した。
チーグラー触媒を用いてコモノマーとしてブテン−1を用いスラリー重合法により連続的に2段重合で表1に示したように成分(A−1)を重合後、成分(A−2)を重合してポリエチレン成分(A)を得た。それらの配合比、樹脂のMFR、HLMFRとともに各測定値も併せて示した。重合は、第1段目にはモノマーとしてエチレンおよびブテン−1を供給し、第2段目にはエチレンを供給して重合した。第2段目で製造される成分(A−2)の量(配合比)、その物性などは、各段の後の未反応ガス分析から各段の生産量をそれぞれ求め、さらに1段目の後と2段目の後で得られた樹脂成分の物性をそれぞれ測定し、加成性から換算して求めた。
(A3)は、市販のチーグラー触媒によるポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製UJ270)70重量%及び市販の高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製LJ802)30重量%を混合して製造した。
【0056】
【表1】

【0057】
(2)(B)成分
表2に示す性状の市販のエチレン−ビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製エバールG156(B1)およびH101(B2))を用いた。
【0058】
【表2】

【0059】
(3)(C)成分
製造例1〜2により得られた変性ポリエチレンを用いた。その性状を表3に示す。
【0060】
(製造例1)
特公昭55−14084号公報に記載のチーグラー触媒を用いスラリー重合によりエチレンとブテン−1を共重合してなるメルトフローレート3.2g/10分、密度0.955g/cmの性状を有するポリエチレン(D1)100重量部に、無水マレイン酸0.6重量部及び2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.013重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、モダンマシナリー株式会社製50mm単軸押出機を用いて、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練し、メルトフローレート1.6g/10分、密度0.955g/cmの変性ポリエチレン(C1)を得た。
【0061】
(製造例2)
上記の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(PE−1)の製造方法に準じてエチレンとヘキセン−1を共重合して製造したメルトフローレート3.7g/10分、密度0.929g/cmの性状を有するポリエチレン(D2)100重量部に、無水マレイン酸0.6重量部及び2,5−ジメチル−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.013重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合した後、モダンマシナリー株式会社製50mm単軸押出機を用いて、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃の条件で溶融混練し、メルトフローレート2.1g/10分、密度0.929g/cmの変性ポリエチレン(C2)を得た。
【0062】
【表3】

【0063】
(実施例1〜8)
(A)〜(C)の各成分を表4に示す量の配合でそれぞれブレンドし、各種物性を測定した。その結果を表4に示す。表4から明らかなように、酸素透過防止性に優れ、曲げ弾性率などの機械物性に優れたものが得られ、耐熱性等の容器蓋適性が優れていた。
【0064】
【表4】

【0065】
(比較例1〜5)
(A)〜(C)の各成分を表5に示す量の配合でそれぞれブレンドし、各種物性を測定した。その結果を表5に示す。表5から明らかなように、成分(B)エチレン−ビニルアルコールの配合量の少ない比較例1、3は酸素透過防止性に劣り、成分(A)ポリエチレンの配合量の少ない比較例2、4はシャルピー衝撃強度が劣り、成分(A)ポリエチレンの密度が小さい比較例5は曲げ弾性率が低く、容器蓋適性が十分ではなかった。
【0066】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のポリエチレン系成形材料は、成形性、高流動性、柔軟性、耐ストレスクラック性、低臭気性、食品安全性に優れ、かつヒンジの耐久性と引裂き性の適度なバランスを有し、なおかつ、酸素透過防止性及び耐熱性に優れ、ウェルド強度低下などの機械物性低下がないので、容器及び容器蓋とすることができ、工業的に非常に利用価値の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(C)を含有し、下記の特性(1)〜(4)の条件を満足することを特徴とするポリエチレン系成形材料。
成分(A)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.001〜100g/10分及び密度が0.940g/cmを超えるポリエチレン:50重量%を超え90重量%以下
成分(B)エチレン−ビニルアルコール共重合体:5〜30重量%
成分(C)不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーをポリオレフィンにグラフトした変性ポリオレフィン:5〜40重量%
特性(1)成形温度190℃、金型温度40℃におけるt=2mmのスパイラルフローが25cm以上
特性(2)密度が0.953〜1.07g/cm
特性(3)シャルピー衝撃値が4KJ/m以上
特性(4)酸素透過度が100ml・mm/m・day・atm以下
【請求項2】
上記成分(A)が、下記の特性(a−1)〜(a−3)の条件を満足するポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(a−1)曲げ弾性率が800MPa以上
特性(a−2)定ひずみESCRが1時間以上
特性(a−3)ビカット軟化点が90℃以上
【請求項3】
上記成分(A)が、下記の特性(a−4)〜(a−5)の条件を満足するポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(a−4)炭化水素揮発分が80ppm以下
特性(a−5)キャピラリーレオメーターによる温度200℃、剪断速度200sec−1の溶融粘度が500Pa・sec以下
【請求項4】
上記成分(A)が、下記の成分(A−1)および(A−2)からなり、温度190℃、荷重21.6Kgにおけるメルトフローレート(HLMFR)が100〜400g/10分、HLMFR/MFRが50〜200であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。
成分(A−1)HLMFRが0.5〜10g/10分、密度が0.935g/cm以上のポリエチレン樹脂:10重量部以上30重量部未満
成分(A−2)MFRが30g/10分以上、密度が0.961g/cm以上のポリエチレン樹脂:70重量部より多く90重量部以下
【請求項5】
上記成分(B)が、下記の特性(b−1)〜(b−3)の条件を満足するエチレン−ビニルアルコール共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(b−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが1〜20g/10分
特性(b−2)密度が1.10〜1.20g/cm
特性(b−3)エチレン共重合比率が10〜80mol%
【請求項6】
上記成分(C)が、下記の特性(c−1)〜(c−2)の条件を満足する変性ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。
特性(c−1)温度190℃、荷重2.16Kgにおけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分
特性(c−2)密度が0.915〜0.965g/cm
【請求項7】
上記成分(C)の変性ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーのグラフト率が、0.001〜5重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエチレン系成形材料。

【公開番号】特開2007−161881(P2007−161881A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360219(P2005−360219)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】