説明

ポリエーテルアルコールを製造する方法

本発明は、下記の工程:a)H−官能基を有する出発物質、アルキレンオキシド又は少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び必要量のDMC触媒を、連続反応器に、連続的に計量導入することにより前駆物質を製造する工程、b)工程a)で得られる前駆物質を反応器から連続的に回収する工程、c)工程a)で得られた生成物、工程a)のアルキレンオキシドとは異なるアルキレンオキシド又は工程a)の混合物とは異なる少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び適宜、必要量のDMC触媒を、別の連続反応器に、連続的に計量導入する工程、d)工程c)で得られる生成物を反応器から連続的に回収する工程、を含む、DMC触媒を用いてH−官能基を有する出発物質にアルキレンオキシドを付加することによりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒として複金属(multimetal)シアニド化合物を用いてアルキレンオキシドを重合させることによりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリエーテルアルコールは、かなり前から公知であり、工業的に大量に製造されている。通常、これらは、ポリイソシアネートと反応することによりポリウレタンを製造するための出発化合物として使用される。
【0003】
ポリエーテルアルコールを製造するための触媒は、最近では、複金属シアニド化合物(DMC触媒として知られている)が屡々使用される。DMC触媒の使用により、不飽和の副生物の含有量が最小となり、反応も、慣用の塩基性触媒に比較して、顕著に高い空自収率が得られる。
【0004】
DMC触媒のさらに有利な点は、特異的触媒作用として知られているものである。これは、反応中に、アルキレンオキシドを低モル質量(低分子量)の分子に優先的に付加することを意味している。これにより、理想混合が可能な反応器でポリエーテルアルコールの連続製造が可能となる。
【0005】
DMC触媒を用いてポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法も公知である。例えば、特許文献1(WO98/03571)には、DMC触媒によりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法が記載されており、この方法では、連続撹拌タンクに、最初に出発物質(開始物質;starter)とDMC触媒を充填し、触媒及びさらに出発物質を活性化させ、アルキレンオキシド及びDMC触媒をこの活性化混合物に連続的に導入し、反応器が所望の充填レベル(fill level)まで一杯になったら、ポリエーテルアルコールが連続的に除去される。
【0006】
同様に、特許文献2(JPH6−16806)には、連続撹拌タンク又は管型反応器で、DMC触媒を用いてポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法が記載されており、この方法では、活性化した出発物質混合物を入口からまず充填し、アルキレンオキシドが管型反応器の種々な地点から計量導入される。
【0007】
特許文献3(DD203725)にも、DMC触媒によりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法が記載されており、この方法では、活性化した出発物質混合物を管型反応器の入口からまず充填し、アルキレンオキシドを管型反応器の種々な地点から計量導入される。
【0008】
特許文献4(WO01/62826)、特許文献5(WO01/62824)及び特許文献6(WO01/62825)には、DMC触媒によりポリエーテルアルコールを連続的に製造するための特定の反応器が記載されている。
【0009】
上述のDMC触媒によりポリエーテルアルコールを連続的に製造する全ての方法は、ポリエーテル鎖の構造を変えることができないとの不利がある。アルキレンオキシド又は所定のアルキレンオキシドの混合物を追加することのみが可能である。
【0010】
特許文献7(WO00/14143)及び特許文献8(WO99/44739)には、固体担体に付与(塗布)されたDMC触媒又は成形体に成形されたDMC触媒が、記載されている。これらの触媒を用いて、例えば触媒を固定床に配置することにより、ポリエーテルアルコールを連続的に製造することも、同様に可能である。特許文献8には、反応は直列に配列された複数の区域で実施することができると記載されている。しかしながら、これらの文献に記載された形態の触媒の製造は面倒であり、このように担持された触媒の使用寿命も十分ではない。このため、このような方法は、工業的に確立されていない。
【0011】
DMC触媒により製造されたポリエーテルアルコールを使用する多くの分野においては、ポリエーテル鎖、特に鎖末端のポリエーテル鎖を変性することが必要である。軟質ポリウレタンフォームの製造に使用されるポリエーテルオールは、一般に、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物のポリエーテル鎖を有している。特に、スラブ材の軟質フォームにおけるポリエーテルアルコールの使用では、DMC触媒の場合、フォーム製造時のポリエーテルアルコールの反応性を調整するために、鎖末端にプロピレンオキシドを付加することが好ましい。このようなポリエーテルアルコールは、例えば特許文献9(WO01/16209)に記載されている。これらの構造は、従来技術の方法で、連続的に製造することはできない。
【0012】
【特許文献1】WO98/03571
【特許文献2】JPH6−16806
【特許文献3】DD203725
【特許文献4】WO01/62826
【特許文献5】WO01/62824
【特許文献6】WO01/62825
【特許文献7】WO00/14143
【特許文献8】WO99/44739
【特許文献9】WO01/16209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ポリエーテル鎖に少なくとも2種の異なる構造のセグメントを有するポリエーテルアルコールの連続製造を可能にする簡易で廉価な方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、出発物質、少なくとも1種のアルキレンオキシド及びDMC触媒を連続的に導入する従来の方法において、連続反応器から回収された前駆物質を、アルキレンオキシド又は少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物(アルキレンオキシド及び少なくとも2種のアルキレンオキシドは、異なる反応器においては異なっている)と、別の連続反応器で反応させることにより達成される。
【0015】
従って、本発明は、
下記の工程:
a)H−官能基を有する出発物質(開始物質)、アルキレンオキシド又は少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び必要量のDMC触媒を、連続反応器に、連続的に計量導入することにより前駆物質を製造する工程、
b)工程a)で得られる前駆物質を反応器から連続的に回収する工程、
c)工程a)で得られた生成物、工程a)のアルキレンオキシドとは異なるアルキレンオキシド又は工程a)の混合物とは異なる少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び適宜、必要量のDMC触媒を、別の連続反応器に、連続的に計量導入する工程、
d)工程c)で得られる生成物を反応器から連続的に回収する工程
を含む、DMC触媒を用いてH−官能基を有する出発物質にアルキレンオキシドを付加することによりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法;
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
工程a)において、使用されるアルキレンオキシドの全量の、50〜98質量%、さらに80〜98質量%、特に83〜97質量%のアルキレンオキシドを使用することが好ましく、そしてアルキレンオキシドの残りは工程c)で使用され、工程a)及びc)で使用されるアルキレンオキシドの量は合計で100質量%である。
【0017】
工程a)において、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を使用することが好ましい。プロピンオキシドのエチレンオキシドに対する比は、PO:EO=30:70とPO:EO=98:2との間が好ましい。
【0018】
工程c)において、1種以上のアルキレンオキシドを計量導入する。アルキレンオキシド又はアルキレンオキシドの混合物は、工程a)におけるアルキレンオキシド又はアルキレンオキシドの混合物とは異なっている。
【0019】
工程a)及びc)で使用されるアルキレンオキシドの種類及び組成、又は少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物の種類及び組成は、ポリエーテルアルコールの意図する用途に依存して変化する。
【0020】
本発明の方法の好適態様において、プロピレンオキシドのエチレンオキシドに対する質量比がPO:EO=60:40〜PO:EO=95:5であるエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物が、工程a)において、使用されるアルキレンオキシドの量に対して70〜95質量%の量で使用され、そしてプロピレンオキシドが工程c)で使用される。このようなポリエーテルアルコールは、特に、軟質ポリウレタンスラブ材フォームを製造するために使用される。
【0021】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、プロピレンオキシドのエチレンオキシドに対する質量比がPO:EO=60:40〜PO:EO=95:5であるエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物が、工程a)において、使用されるアルキレンオキシドの量に対して50〜95質量%の量で使用され、そしてエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物が、PO:EO=80:20〜PO:EO=20:80のプロピレンオキシドのエチレンオキシドに対する質量比で、工程c)において使用される。このようなポリエーテルアルコールは、特に、成形軟質ポリウレタンフォームを製造するために使用される。
【0022】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、純粋なプロピレンオキシドが、工程a)において、使用されるアルキレンオキシドの合計量に対して50〜95質量%の量で使用され、そしてエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物が、PO:EO=80:20〜PO:EO=20:80のプロピレンオキシドのエチレンオキシドに対する質量比で、第2の工程において使用される。このようなポリエーテルアルコールは、同様に、成形軟質ポリウレタンフォームを製造するために使用される。
【0023】
反応の2つの工程で使用される反応器は、同一でも異なっていても良い。好ましい反応器は、連続撹拌タンク、管型反応器、又は流通反応器又はループ反応器である。
【0024】
このような反応器は、例えば、JPH6−16806、DD207253、WO01/62826、WO01/62825及びWO01/62824に記載されている。
【0025】
本発明の方法の好ましい態様において、連続撹拌タンクは工程a)及びc)で使用される。両方の反応器は同一の構造でも良い。しかしながら、アルキレンオキシドを異なる量で使用するため、本発明の方法の上記2つの工程においては異なる量の熱が放出されることから、2つの反応器は異なる方法で冷却しても良い。工程a)では、外部熱交換機を備えた撹拌タンクを使用することが好ましく(例えばWO01/62825に記載されているように)、一方、工程c)では、廉価な内部冷却、特に内部冷却コイルを有する反応器を使用することが可能である。
【0026】
WO01/62824には、内部熱交換プレートを有する撹拌タンクが記載されている。この種の反応器を使用することも可能である。
【0027】
従来の撹拌タンク反応器に加えて、気相及び外部熱交換機を有するジェットループ反応器(例えば、EP419419に記載されているような)、又はWO01/62826に記載されているような内部伝熱管(熱交換管)を使用することも可能である。さらに、気相のないループ型反応器を使用することが可能である。
【0028】
反応剤の計量導入中には、反応剤、即ち、アルキレンオキシド、出発物質及び触媒の懸濁物(液)の良好な分散を保証することが必要である。これは、撹拌タンク反応器の場合、リング分散器(ring distributor)を用いて行うことができる。リング分散器は、撹拌器の下又は第1及び第2撹拌器の面の間に組み込まれる。
【0029】
アルキレンオキシドは、第2の反応器c)を離れた後、十分に使い尽くされるようにするために、WO03/025045に記載されているような管型反応器を第2の反応器の下流側に連結することが可能である。工程a)で計量導入されたアルキレンオキシドの全量を、工程c)の反応器に導入する前に、使い切る必要はない。
【0030】
反応器中に存在する遊離のアルキレンオキシドの含有量が反応器内に存在する反応剤の全量に対して8質量%以下となるように、反応を行うことが好ましい。この方法では、フォーム製造において破壊的効果を有する極めて高い分子量の副生物の割合を抑えることができる。
【0031】
工程c)で得られた生成物は、一般にd)で回収した後に、後処理される。後処理としては、例えば、揮発成分の除去(一般に、真空蒸留、蒸気又はガスストリッピング、及び/又は他の臭気除去法により行われる)を挙げることができる。この場合、アルキレンオキシドの計量導入直後に、できれば、アルキレンオキシドの計量導入完了後12時間以内に、ストリッピングを行うことが有利である。必要により、ろ過を行っても良い。揮発性2次成分をバッチ又は連続的に除去しても良い。本発明の方法では、臭気物質の連続的除去を行うべきである。
【0032】
ポリエーテルアルコールから触媒を除去することが可能である。しかしながら、触媒は、使用されるほとんどの分野におけるポリエーテルアルコールに残り得る。例えば、WO01/38421に記載されているように、DMC触媒を除去すること、及び工程a)でそれを再使用することは、好ましくはないが、一般に可能である。しかしながら、この方法は、余りにもコストがかかり、ポリエーテルアルコールの工業的規模の製造には不都合である。
【0033】
ポリエーテルアルコールを熱酸化による劣化に対して安定化させることも一般に行われている。これは、安定剤、通常、立体障害フェノール及び/又はアミンを添加することにより行われる。アミン系安定剤の使用は好ましくない。
【0034】
使用される出発物質(開始物質)はH−官能基を有する化合物である。特に、1〜8個、好ましくは2〜8個の官能価を有するアルコールが使用される。軟質ポリウレタンフォームに使用されるポリエーテルポリオールを製造するために、使用される出発物質は、特に、2〜6個、好ましくは2及び3個の官能価を有するアルコールである。その例としては、グリセロール、ジグリセロール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン及びひまし油を挙げることができる。DMC触媒によるアルキレンオキシドの付加においては、上記アルコールと共に或いは上記アルコールの代わりに、それとアルキレンオキシド(特にプロピレンオキシド)との反応生成物を使用することが有利である。このような化合物は、500g/モル以下のモル質量を有することが好ましい。これらの反応生成物の製造における、アルキレンオキシドの付加は、あらゆる触媒、例えば塩基性触媒を用いて行うことができる。軟質ポリウレタンフォームの製造用のポリエーテルアルコールは、通常、5〜400mgKOH/g、好ましくは35〜60mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有している。
【0035】
軟質ポリウレタンスラブ材フォームを製造するために、2級ヒドロキシル基の含有量が高く、ポリエーテル鎖のエチレンオキシド単位の含有量がポリエーテルアルコールの質量に対して最大で30質量%である、ポリエーテルアルコールを使用することが好ましい。これらのポリエーテルアルコールをDMC触媒により製造する場合、これらが鎖末端にプロピレンオキシドブロックを有することが好ましい。成形軟質ポリウレタンフォームを製造するために、1級ヒドロキシ基及びエチレンオキシド末端ブロックを高い含有量で有するポリエーテルアルコールを、特に、ポリエーテルアルコールの質量に対して20質量%未満の量で使用する。
【0036】
アルキレンオキシドを、通常の条件、60〜180℃、好ましくは90〜140℃、特に100〜130℃の範囲の温度、及び0〜20バール、好ましくは0〜10バール、特に0〜5バールの範囲の圧力で、追加する。工程a)及び工程c)は、同一温度でも異なる温度でも実施することができる。反応の初めに反応器に最初に充填される混合物である、出発物質及びDMC触媒は、WO98/52689の教示に従いストリッピングにより前処理され、その後アルキレンオキシドの計量導入を開始することができる。
【0037】
本発明の方法で使用されるDMC触媒は、公知であり、例えばEP743093、EP755716、EP862947、EP862997又はEP1021453に記載されている。触媒は、一般にアモルファス又は結晶性である。結晶性DMC触媒の中で、単斜晶系構造を有するものが好ましい。
【0038】
触媒は、ポリエーテルアルコールの全組成物に対して、15〜100ppm、特に20〜80ppmの量で使用することが好ましい。
【0039】
原則として、工程a)及びc)においては、DMC触媒を同じ濃度で使用することが可能である。工程c)を、前駆物質中に残るDMC触媒の量で実施することが好ましい。さらに好ましい態様では、別のDMC触媒を工程c)の前に前駆物質に添加することもできる。
【0040】
工程a)において、触媒を1回だけ反応器に計量導入することが好ましい。触媒の量は、両方の処理工程において十分触媒活性が保持できるような量にすべきである。触媒は、約5%の触媒懸濁液(物)の形で計量導入される。触媒懸濁剤は、例えば、工程で得られる生成物であるか、工程c)で得られる生成物であっても良い。懸濁ポリエーテルオールの分子量は、この方法で得られる生成物のモル質量と同一であるか、それ未満であるべきである。
【0041】
詳細に述べたように、本発明の方法により製造されるポリエーテルアルコールは、ポリウレタンの製造において使用することが好ましい。特に、これらは軟質ポリウレタンフォームの製造に使用される。特に、本発明の方法により製造される、プロピレンオキシド単位の末端ブロックを有するポリエーテルアルコールを、軟質スラブ材フォームの製造に使用することが有利である。本発明の方法により製造されるポリエーテルアルコールは、バッチ法で、或いは末端ブロックのバッチ付加により完全に製造された生成物とは、用途特性において異なるものではない。
【0042】
本発明の方法は、ポリオール構造を求める連続製造を簡単な方法で、連続製造方法によって可能にし、その際ポリエーテルアルコールの特性上の不利はない。従って、本発明の方法により製造される生成物は、実質的に無臭であり、揮発性化合物が存在しない。
【0043】
本発明により製造されるプロピレンオキシド単位の末端ブロックを有するポリエーテルアルコールは、問題なく処理することができ、これにより開放気泡(open-cell)の含有量(風量値)の高い、好ましくは少なくとも50dm3/min、さらに好ましくは少なくとも100dm3/minの開放気泡含有量を有する破砕面のない軟質ポリウレタンフォームが得られる。異性体比が80:20の廉価で入手し易いトリレンジイソシアネートを使用することが可能であり、一方、プロピレンオキシド単位の末端ブロックの付加することなく等しいフォーム特性を達成するためには、異性体比が65:35の高価なトリレンジイソシアネートを使用する必要がある。
【0044】
このようにして得られた軟質ポリウレタンフォームは、特に自動車の内装に、或いは家具及びマットレスに使用することができる。
【0045】
本発明を下記の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
[実施例1](比較例)−プロピレンオキシド末端ブロックのないポリエーテルアルコール
反応の開始時に触媒を分散させるために、水酸化カリウムで触媒活性されたポリオールを、最初に充填する。このポリオールは、まず250L反応器に17.16kgのグリセロールを充填することによりその製造を開始した。次いで、1.56kgの48%水酸化カリウム溶液を計量導入し、反応水を20ミリバール未満の減圧下、120℃において留去した。次いで、6.59kgのジエチレングリコールを計量導入した。5時間以内に、226kgのプロピレンオキシドを125℃で添加した。反応終了後に、13kgのMarcosorb(登録商標)MP5+及び3.5kgの水を計量導入した。混合物を90℃で1時間撹拌し、その後水を、水分値0.02%未満まで留去し、Marcosorb(登録商標)をデプス型フィルタでろ別した。ポリオールは、152.8mgKOH/gのOH価を有し、1ppm未満のアルカリ度を有するものであった。
【0047】
このポリオール(以下、VP900とよぶ)がDMC触媒を分散する働きを示した。10kgのVP900をまず充填し、1020gの、EP862947の教示に従い製造されたDMC化合物の湿ったフィルターケーキを添加した。懸濁物(液)を約20分間Ultra Turraxにより分散させた。次いで、懸濁物(液)を10ミリバールの減圧下に、4時間乾燥させた。乾燥懸濁物は、5.21質量%の触媒含有量を示した。触媒含有量は、ICP(Zn及びコバルト含有量)により測定し、触媒の化学量論組成物により計算した。
【0048】
20Lの反応器に、2.5kgのVP900を充填し、そして0.1085kgのDMC懸濁物を計量導入した。次いで、1.2kgのグリセロール、0.461kgのジエチレングリコール及び16.026kgのプロピレンオキシドを、平行して、120℃において5時間で導入した。この中間生成物を反応器から回収した。最後の反応として、6.3kgの製造された中間生成物を、20Lの反応器に充填し、13.7kgのプロピレンオキシド及び1.94kgのエチレンオキシドを、平行して、120℃において3時間で導入した。
【0049】
最終生成物(以下、VP3000とよぶ)は、48.2mgKOH/gのOH価を有し、92ppmのDMC触媒含有量を有するものであった。生成物の粘度は、618mPasであった。
【0050】
連続反応システムにおける実験として、上述のVP900の場合のDMC触媒をVP3000に懸濁させ、次いでこの懸濁物を乾燥した。DMC懸濁物は、5.82質量%のDMC含有量を有していた。
【0051】
連続プラントは、グリセロール:ジエチレングリコール(=2.6:1、質量で)、アルキレンオキシド及び触媒懸濁物から構成される出発混合物ための分離フィード(separate feeds)を備えた1Lタンクから構成されている。各成分の供給はHPLCポンプで行われた;反応器への導入は、分離浸漬管(separate immersed tubes)により行った。反応器の底部では、下流側に接続された質量流量計で、ギアポンプを用いて排出を制御した。プロセス制御システムは、反応器の充填レベルが常に90%充填の一定となるように使用した。生成物は、20ミリバールで脱気下に100L収集容器で集めた。反応温度は130℃であった。
【0052】
VP3000をまず充填した。次いで、触媒懸濁物を計量導入し、反応器の理論的DMC濃度を150ppmとした。プロピレンオキシド(0.5239kg/h)及びエチレンオキシド(0.0585kg/h)の供給、出発混合物(0.0178kg/h)の供給、及びDMC懸濁物(0.515kg/h)の供給を開始し、規定された計量導入速度を30分間維持した。滞留時間は100分であった。20滞留時間の後、生成物の特性は一定となり、生成物は集められた。その特性は下記のとおりである:
OH価: 48.1mgKOH/g
DMC含有量: 51ppm
粘度: 598mPas
1級OH基の含有量: 12モル%
揮発成分: 15000ヘッドスペースエリア単位
臭気: 1.3
【0053】
次いで、集められたポリオールは、蒸気でストリップされた(160ミリバールの圧力、10kg/hの蒸気を4時間で600kgのポリール)。ヘッドスペース分析は、2次揮発成分の生成物中の含有量を測定するために使用され、ヘッドスペースエリア単位の合計のみ考慮した。これにより15000エリア単位を得た。
【0054】
ストリッピング後、最終生成物を4000ppmのIrgastab(登録商標)PUR 68で安定化させ、発泡させた。
【0055】
[実施例2](本発明)−10%のプロピレンオキシド末端ブロックを有するポリエーテルアルコール
実施例1と同様の装置を使用した。しかしながら、1Lの容積を有する別の撹拌タンクを反応器の下流側に設置した。第1反応で得られた生成物は、ここで別のプロピレンオキシドと反応させた。第2反応器の下流側に脱気ユニットを設置した;脱気条件は、実施例1の設定に対応させた。
【0056】
VP3000をまず充填した。次いで、触媒懸濁物を計量導入し、反応器内の理論的DMC濃度を150ppmとした。プロピレンオキシド(0.4639kg/h)及びエチレンオキシド(0.0585kg/h)の供給、実施例1に記載の出発混合物(0.0178kg/h)の供給、及びDMC懸濁物(0.515kg/h)の供給を開始し、規定された計量導入速度を30分間維持した。滞留時間は111分であった。第1のタンクで得られた生成物を第2タンクに移し、第2タンクに、0.06kg/hのプロピレンオキシドを浸漬管(immersed tube)により計量導入した。このタンクでの滞留時間100分であった。両方の反応器は130℃で操作した。
【0057】
35滞留時間の後、生成物の特性は一定となり、生成物は集められた。その特性は下記のとおりである:
OH価: 47.2mgKOH/g
DMC含有量: 48ppm
粘度: 591mPas
1級OH基の含有量: 3モル%
揮発成分: 13500ヘッドスペースエリア単位
臭気: 1.3
ストリップ後、最終生成物を4000ppmのIrgastab(登録商標)PUR 68で安定化させ、発泡させた。
【0058】
01.15.2001のPPU03/03−04試験方法による臭気の測定
調査すべき100gのポリエーテルオールを、ねじ込みクロージャーを備えた新しい乾燥ガラスボトル(250ml)に計量導入する。臭気を25℃にて測定する。ガラスボトルを開く前に、それを少しの間ひっくり返す。臭気感覚試験の後、ガラスボトルを再びに密閉する。次の試験は15分経つまでは行うべきでない。全体的に、評価は5人の固定の指名された試験者により実施される。臭気は下記の尺度で評価される:
1.0 −無臭
1.3 −かろうじて感じられる臭
1.5 −知覚可能な好ましい臭
1.7 −好ましいが少し刺激的な臭い
2.0 −少し不快な臭
3.0 −不快臭
4.0 −強い臭い
5.0 −悪臭
【0059】
5〜7人の試験者の臭気評価の後、臭の値は、多数の判定により決定し、示した。多数の判定が確立できなかった場合、臭気評価は後で繰り返した。風邪などで、試験者の臭い間隔評価が限定された場合、試験は別の指名試験者により行われる。
【0060】
揮発性第2成分の含有量の測定
ポリオールを、まず4000ppmのBHTで安定化させる。約3gのサンプルを、高温−抵抗性隔膜で密封した10mlのサンプルボトルに導入する。次いで、このサンプルをサンプラーに入れ、140℃で、正確に2時間加熱する。この途中に、ガス相(ヘッドスペース)が液体の上に形成する。加熱時間後、ガス相をガス・クロマトグラフィで分析する。ヘッドスペースエリアの単位はフレームイオン化検出器により測定した。
【0061】
分析条件:
カラム: DB−wax(0.25mmID、0.25μmフィルム厚さ、30m)
キャリアガス: ヘリウム
燃焼ガス: 水素及び合成空気(最適化)
GCの初期圧力: 7.5psi
流速: 0.5m/分
温度(検出器): 250℃
温度(注入器): 150℃
温度(オーブン): 50℃で10分、10℃/分→240℃で20分
スプリット比: 1:20
バス(bath)温度: 140℃(120℃)
バルブ/ループ温度: 150℃(130℃)
積分法: PO2.MTH
【0062】
軟質ポリウレタンフォームの製造
表1に規定された出発材料を、表1に示した比率で反応させた。
【0063】
イソシアネート、Lupranta(登録商標)T80A及びDesmodur(登録商標)T65以外の全ての成分を、まず激しいミキシングにより混合してポリオール成分を得る。その後、Lupranta(登録商標)T80A及び、存在する場合は、Desmodur(登録商標)T65を、撹拌しながら加え、その反応混合物を開放金型に注入する。ここで発泡し、ポリウレタンフォームが得られる。得られたフォームの特性データを表1に示す。
【0064】
下記の特性データは、規格、規定された操作及び試験指示により測定される:
密度(kg/m3): DIN EN ISO 845
リシノール酸サイクルのVOC(ppm): PB VWL 709
リシノール酸サイクルのFOG(ppm): PB VWL 709
風量値(dm3/分): DIN EN ISO 7231
圧縮硬度、40%変形(kPa): DIN EN ISO 2439
伸び(%): DIN EN ISO 1798
引張強度(kPa): DIN EN ISO 1798
反発(rebound)弾性(%): DIN EN ISO 8307
圧縮永久歪(compressive set)(%): DIN EN ISO 3386
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
a)H−官能基を有する出発物質、アルキレンオキシド又は少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び必要量のDMC触媒を、連続反応器に、連続的に計量導入することにより前駆物質を製造する工程、
b)工程a)で得られる前駆物質を反応器から連続的に回収する工程、
c)工程a)で得られた生成物、工程a)のアルキレンオキシドとは異なるアルキレンオキシド又は工程a)の混合物とは異なる少なくとも2種のアルキレンオキシドの混合物、及び適宜、必要量のDMC触媒を、別の連続反応器に、連続的に計量導入する工程、
d)工程c)で得られる生成物を反応器から連続的に回収する工程
を含む、DMC触媒を用いてH−官能基を有する出発物質にアルキレンオキシドを付加することによりポリエーテルアルコールを連続的に製造する方法。
【請求項2】
工程a)において、アルキレンオキシドを全量の60〜98質量%追加する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を使用し、工程c)において、プロピレンオキシドを使用する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、プロピレンオキシドを使用し、工程c)において、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を使用し、工程c)において、工程a)の混合物を除いた、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程a)のエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの混合物におけるエチレンオキシドのプロピレンオキシドに対する比が、30:70〜98:2である請求項2に記載の方法。
【請求項7】
工程a)及びc)を、連続撹拌タンクで行う請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程a)を連続撹拌タンクで行い、工程及びc)を管型反応器で行う請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により製造されるポリエーテルアルコール。
【請求項10】
ポリイソシアネートを、イソシアネート基と反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物と反応させることにより軟質ポリウレタンを製造する方法であって、
イソシアネート基と反応する少なくとも2個の水素原子を有する化合物として、請求項1に記載の方法により製造される少なくとも1種のポリエーテルアルコールを使用することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2008−504413(P2008−504413A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518502(P2007−518502)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006717
【国際公開番号】WO2006/002807
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】