説明

ポリオキシアルキレン系重合体および硬化性組成物

【課題】容易に製造可能であり、活性エネルギー線や熱によって硬化し得るポリオキシアルキレン系重合体、および、これを含有する硬化性に優れた組成物を提供する。
【解決手段】−O−C(=O)−NH−R−O−C(=O)−C(R)=CH(式中、Rは2価の有機基、Rは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基。)で表される置換基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上のポリオキシアルキレン系重合体(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線や熱により硬化し得るポリオキシアルキレン系重合体とその製造方法、および、これを含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリロイル基を有する有機重合体は、重合開始剤との併用で、UV、電子線、加熱などの活性エネルギー線を照射することにより、(メタ)アクリロイル基が重合して架橋し、ゴム状硬化物を与える。有機重合体のなかでも、ポリオキシアルキレン系重合体は、比較的粘度が低いために作業性が優れ、得られる硬化物も良好なゴム弾性を示すことが特徴である。
【0003】
ポリオキシアルキレン系重合体の硬化物の機械特性は、重合体の分子量により大きく影響される。一般的に、硬化物を形成する三次元網目構造において、架橋点間分子量が大きいと、良好な伸縮性が得られる傾向にある。架橋点間分子量が大きい硬化物を得るためには、分子量が大きい重合体を使用することが挙げられる。しかし、一般的には、分子量が小さい(メタ)アクリロイル基含有ポリオキシアルキレン系化合物が使用されている(例えば、特許文献1、2、3)。このような分子量が小さい化合物から得られる硬化物は、伸縮性が劣る傾向にある。
【0004】
分子量が大きい(メタ)アクリロイル基含有ポリオキシアルキレン系重合体の製造例が少ない原因としては、その製造方法が困難であることが挙げられる。例えば、(特許文献4)では(メタ)アクリロイル基含有ポリオキシアルキレン系化合物とジイソシアネートとの反応により、(メタ)アクリロイル基を有するポリオキシアルキレン系重合体が得られているが、分子量が大きい(メタ)アクリロイル基含有ポリオキシアルキレン系化合物を製造することは、実施例にも見られるように、実質的に困難であり、得られる重合体の分子量も小さくなってしまう。
【0005】
一方、分子量が大きく、水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体を製造することは容易であるため、このような重合体と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を反応させることにより、分子量が大きい(メタ)アクリロイル基含有ポリオキシアルキレン系重合体を製造することが考えられる。(特許文献5)では、分子量が大きく、水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を反応させる方法が開示されている。しかしながら、水酸基を有する重合体と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を反応させる際に、ウレタン化触媒として一般的に使用されるジブチル錫ジラウレートを触媒としている。ジブチル錫ジラウレートを触媒とする方法では、(メタ)アクリロイル基の導入率が低く、副生成物が大量に生成する傾向にある。そのため、水酸基を有する重合体と(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物を効率的に反応させることが可能な触媒を使用することにより、(メタ)アクリロイル基の導入率が高いポリオキシアルキレン系重合体を得ることが期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−17555号公報
【特許文献2】特開2003−73331号公報
【特許文献3】特開2004−238572号公報
【特許文献4】特開2003−286340公報
【特許文献5】特開平4−7330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、活性エネルギー線や熱により硬化し得る分子量が大きいポリオキシアルキレン系重合体とその製造方法であって、本発明の製造方法により、容易に(メタ)アクリロイル基をポリオキシアルキレン系重合体に高効率で導入することができ、また、この重合体を使用することにより、優れた硬化性を示す組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
(I)
水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)と一般式(1):
O=C=N−R−O−C(=O)−C(R)=CH (1)
(式中、Rは2価の有機基、Rは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基。)で表されるイソシアネート系化合物(B)をジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)の存在下で反応させることにより得られるポリオキシアルキレン系重合体であって、一般式(2):
−O−C(=O)−NH−R−O−C(=O)−C(R)=CH (2)
(式中、R、Rは前記と同じ。)で表される置換基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【0010】
(II)
一般式(1)のRがエチレン基である(I)に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【0011】
(III)
一般式(1)のRが水素原子である(I)、または、(II)に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【0012】
(IV)
ポリオキシアルキレン系重合体がポリオキシプロピレン系重合体である(I)から(III)のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【0013】
(V)
一般式(2)で表される置換基がポリオキシアルキレン系重合体(A)の末端のみに有する(I)から(IV)のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【0014】
(VI)
(I)から(V)のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)と重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物。
【0015】
(VII)
重合開始剤(D)が活性エネルギー線および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(E)である(VI)に記載の硬化性組成物。
【0016】
(VIII)
ラジカル開始剤(E)が光によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤(e1)である(VII)に記載の硬化性組成物。
【0017】
(IX)
光ラジカル開始剤(e1)の添加量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、0.001重量部から10重量部であることを特徴とする(VIII)に記載の硬化性組成物。
【0018】
(X)
(VI)から(IX)のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリオキシアルキレン系重合体を使用することにより、活性エネルギー線や熱によって優れた硬化性を示す組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0021】
<ポリオキシアルキレン系重合体(A)>
本発明のポリオキシアルキレン系重合体(A)は、水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)と一般式(1):
O=C=N−R−O−C(=O)−C(R)=CH (1)
(式中、Rは2価の有機基、Rは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基。)で表されるイソシアネート系化合物(B)をジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)の存在下で反応させることにより得られる。
【0022】
水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)の主鎖骨格、合成法についてはポリオキシアルキレン系重合体(A)と同様のことが言え、下記に記載する。
【0023】
一般式(1)中のRは、特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヘキシレン基などのアルキレン基;シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基などのシクロアルキレン基;フェニレン基、ベンジレン基などのアリーレン基;エーテル結合、エステル結合、アミノ結合、アミド結合などを含む2価の有機基などが挙げられる。これらの中では、導入の容易さから、エチレン基、ヘキシレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0024】
一般式(1)中のRは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基を表す。ここで言う置換された炭化水素基とは、炭化水素基上の水素原子がヘテロ原子によって置換された基を言う。Rとしては、特に限定されず、例えば、水素原子;メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。これらの中では、重合体(A)の反応性の高さから、メチル基、または水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0025】
イソシアネート系化合物(B)としては、特に制限されないが、下記の化合物を挙げることができる。
【0026】
【化1】

【0027】
これらのなかでは、反応性や入手性の観点から、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシイソシアネートが好ましく、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。
【0028】
イソシアネート系化合物(B)の使用量としては、重合体(a)の水酸基に対し、0.1〜5当量が好ましく、0.5〜1.5当量がより好ましく、当量であることがさらに好ましい。使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利であり、少ない場合は、得られる重合体(A)の硬化性が低下する傾向がある。
【0029】
重合体(a)とイソシアネート化合物(B)を反応させる際に、ジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)を使用する。ジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)としては、特に限定されないが、例えば、ジブチル錫(メルカプト酸メチル)、ジブチル錫(メルカプト酸エチル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−プロピル)、ジブチル錫(メルカプト酸イソプロピル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−ブチル)、ジブチル錫(メルカプト酸イソブチル)、ジブチル錫(メルカプト酸sec−ブチル)、ジブチル錫(メルカプト酸tert−ブチル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−ペンチル)、ジブチル錫(メルカプト酸ネオペンチル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−ヘキシル)、ジブチル錫(メルカプト酸シクロヘキシル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−ヘプチル)、ジブチル錫(メルカプト酸n−オクチル)、ジブチル錫(メルカプト酸2−エチルヘキシル)、ジブチル錫(メルカプト酸ノニル)、ジブチル錫(メルカプト酸デシル)、ジブチル錫(メルカプト酸ドデシル)、ジブチル錫(メルカプト酸フェニル)、ジブチル錫(メルカプト酸トルイル)、ジブチル錫(メルカプト酸ベンジル)などがあげられる。より具体的には、日東化成(株)製のネオスタンU−360、ネオスタンU−350などを挙げることができる。
【0030】
ジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)の使用量としては、重合体(a)に対して、10ppm〜500ppmが好ましく、25ppm〜100ppmがより好ましく、50ppmがさらに好ましい。使用量がこれよりも多い場合は、副生成物が生じる可能性があり、これよりも少ない場合は、反応性が低くなる可能性がある。
【0031】
重合体(a)とイソシアネート化合物(B)を反応させる際に、溶剤を使用しても良いし、使用しなくても良い。溶剤を使用する場合は、重合体(a)が溶解する溶剤が好ましい。溶剤としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、ヘキサンなどが挙げられる。溶剤の使用量としては、攪拌のし易さなどの観点から、適宜、決定することができる。
【0032】
重合体(a)とイソシアネート化合物(B)との反応により得られるポリオキシアルキレン系重合体(A)は、一般式(2):
−O−C(=O)−NH−R−O−C(=O)−C(R)=CH (2)
(式中、Rは2価の有機基、Rは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基。)で表される置換基(以下、(メタ)アクリロイル系置換基と記載する場合もある。)を分子内に1個以上有する。
【0033】
重合体(A)の(メタ)アクリロイル系置換基の数は、特に限定されないが、重合体(A)同士が架橋するという点から、1分子あたり平均1個未満であると硬化性が低くなる傾向があるため、平均1個以上が好ましい。ただし、1分子あたり平均1個以上の(メタ)アクリロイル系置換基を有する重合体(A)が含まれれば、硬化物の硬度、柔軟性を調整するために、1分子あたり平均1個未満の(メタ)アクリロイル系置換基を有するポリオキシアルキレン系重合体が含まれても良い。また、(メタ)アクリロイル基は分子の側鎖、および/または、末端のいずれに存在していてもかまわないが、ゴム弾性の点から、分子の末端に存在することが好ましい。
【0034】
一般式(2)中のR、Rは、一般式(1)中のR、Rと同じことが言える。
【0035】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシプロピレン−ポリオキシブチレン共重合体などを使用することができ、ポリオキシプロピレン系重合体であることが好ましい。
【0036】
ポリオキシアルキレン系重合体は、本質的に一般式(3):
−R−O− (3)
(式中、Rは炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐アルキレン基である。)で表される繰り返し単位を有する重合体であり、一般式(3)中に記載のRは、炭素原子数1から14の直鎖状もしくは分岐状アルキレン基が好まく、2から4の直鎖状、もしくは、分岐状アルキレン基がより好ましい。一般式(3)に記載の繰り返し単位としては、特に限定はなく、例えば、
【0037】
【化2】

【0038】
などが挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体(A)の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなっても良いし、2種類以上の繰り返し単位からなっても良い。特に、プロピレンオキシド重合体を主成分とする重合体から成るものが、非晶質であることや比較的低粘度であることから好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレン系重合体の合成法としては、特に限定されず、例えば、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、特開昭61−215623号公報に示される有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、特公昭46−27250号、特公昭59−15336号、米国特許3278457号、米国特許3278458号、米国特許3278459号、米国特許3427256号、米国特許3427334号、米国特許3427335号などの各公報に示される複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、特開平10−273512号公報に示されるポリホスファゼン塩からなる触媒を用いる重合法、特開平11060722号公報に示されるホスファゼン化合物からなる触媒を用いる重合法などが挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)は直鎖状、または分岐を有しても良く、その数平均分子量はGPCにおけるポリスチレン換算において3,000から100,000が好ましく、より好ましくは3,000から50,000であり、特に好ましくは3,000から30,000である。数平均分子量が3,000未満では、硬化物の伸縮性の点で不都合な傾向があり、100,000を越えると、高粘度となる為に作業性の点で不都合な傾向がある。
【0041】
ポリオキシアルキレン系重合体(A)の分子量分布は特に限定されないが、狭いことが好ましく、2.00未満が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.40以下が特に好ましい。分子量分布が大きくなると、粘度が高くなり、それゆえ作業性が悪くなる傾向がある。
【0042】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、ポリオキシアルキレン系重合体(A)と重合開始剤(D)とを含有する。重合開始剤(D)としては、特に限定されないが、活性エネルギー線および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(E)、光アニオン開始剤、レドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、入手性の点から、活性エネルギー線および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(E)が好ましく、なかでも、反応性の点から光ラジカル開始剤(e1)がより好ましい。
【0043】
光ラジカル開始剤(e1)としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが挙げられる。これらの中でも、タック改善性があるという点で、フェニルケトン系化合物が好ましい。
【0044】
また、UV照射時の深部硬化性に優れるアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤も配合することができる。アシルホスフィンオキサイド系重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−イソブチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドである。上記の光ラジカル開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を混合して用いても良い。なかでも、反応性が高いことから、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0045】
本発明の硬化性組成物では、上記アシルホスフィンオキサイドおよびフェニルケトン系化合物を併用することもできる。
【0046】
光ラジカル開始剤(e1)の添加量は、特に制限されないが、重合体(A)100重量部に対し、0.001重量部から10重量部が好ましい。光ラジカル開始剤(e1)の添加量がこの範囲を下回ると、十分な硬化性が得られない可能性が有り、また、添加量がこの範囲を上回ると硬化物に影響を及ぼす可能性がある。なお、光ラジカル開始剤(e1)の混合物が使用される場合には、混合物の合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0047】
熱ラジカル開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤などが挙げられる。
【0048】
アゾ系開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレート)などが挙げられる。
【0049】
過酸化物開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
【0050】
過硫酸塩開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、および、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0051】
熱ラジカル開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。上記の熱ラジカル開始剤の中では、取扱い易さの点から、アゾ系開始剤および過酸化物開始剤からなる群から選ばれるものが好ましい。また、反応性が高いことから、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシピバレート、および、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、並びに、これらの混合物がより好ましい。
【0052】
熱ラジカル開始剤の添加量は、特に制限されないが、重合体(A)100重量部に対し、0.01重量部から3重量部が好ましく、0.025重量部から2重量部がより好ましい。熱ラジカル開始剤の添加量がこの範囲を下回ると、十分な硬化性が得られない可能性が有り、また、添加量がこの範囲を上回ると硬化物に影響を及ぼす可能性がある。なお、熱ラジカル開始剤の混合物が使用される場合には、混合物の合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0053】
本発明の硬化性組成物は、粘度調整、得られる硬化物の機械物性の向上などを目的とし、ラジカル重合性、および/または、アニオン重合性の基を持つモノマー、および/または、オリゴマーを含有しても良い。ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基などのアクリル官能性基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基などがあげられる。なかでも、反応性の点から、(メタ)アクリル基を持つものが好ましい。アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基などがあげられる。
【0054】
上記のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマーなどがあげられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルや下式の化合物などをあげることができる。
【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどが、アクリルアミド系モノマーとしては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが、共役ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレンなどが、ビニルケトン系モノマーとしては、メチルビニルケトンなどがあげられる。
【0061】
多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどがあげられる。
【0062】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂などのエポキシアクリレート系樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂、ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレンなど)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなど}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂、上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などがあげられる。
【0063】
これらのなかでも、反応性や粘度低減による作業性の観点から、分子量500以下の(メタ)アクリルモノマーが好ましい。分子量500以下の(メタ)アクリルモノマーとしては、特に限定されないが、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸、エチルカルビトールアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリシクロデカニルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、メトキシプロピレンアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシジエチレングリコール、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシエチルアクリレートなどがあげられる。
【0064】
上記重合性基を持つモノマー、および/または、オリゴマーを任意に2つ以上組み合わせて用いても良い。
【0065】
重合性基を持つモノマー、および/または、オリゴマーの使用量としては、表面硬化性の向上、タフネスの付与、粘度低減による作業性の観点から、重合体(A)100重量部に対し、1〜200重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない傾向があり、より多い場合は、未反応成分が硬化物中から揮発する可能性がある。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、ラジカル捕捉剤を含有していても良い。ここで言うラジカル捕捉剤とは、一般に、酸化防止剤、光安定剤と呼ばれるものなどを含む。
【0067】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系の酸化防止剤があげられ、これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。同様に、チヌビン622LD,チヌビン144,CHIMASSORB944LD,CHIMASSORB119FL(以上、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARK LA−57,MARK LA−62,MARK LA−67,MARK LA−63,MARK LA−68(以上、いずれも旭電化工業株式会社製);サノールLS−770,サノールLS−765,サノールLS−292,サノールLS−2626,サノールLS−1114,サノールLS−744(以上、いずれも三共株式会社製)に示されたヒンダードアミン系光安定剤を使用することもできる。酸化防止剤の具体例は、特開平4−283259号公報や特開平9−194731号公報にも記載されている。酸化防止剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが良く、さらに好ましくは、0.2重量部から5重量部である。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。
【0068】
光安定剤としてベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物などがあげられ、これらの中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。光安定剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部から10重量部の範囲で使用するのが好ましく、0.2重量部から5重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、経済的に不利になる可能性があるだけでなく、光ラジカル開始剤より発生したラジカルを酸化防止剤が補足し、硬化物の硬化不良が発生し、硬化物が良好な物性を発現しない可能性がある。光安定剤の具体例は特開平9−194731号公報にも示されている。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、物性の調整、性状の調節などの目的により、可塑剤を含有していても良い。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケートなどの非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニルなどの炭化水素系油などを単独、または2種以上混合して使用することができるが、必ずしも必要とするものではない。なお、これら可塑剤は、重合体製造時に配合することも可能である。可塑剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、5重量部から200重量部の範囲で使用するのが好ましく、10重量部から100重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、得られる硬化物の機械物性が低下する可能性がある。
【0070】
本発明の硬化性組成物には、各種支持体(プラスチックフィルム、紙など)に対する接着性を向上させるために各種接着性改良剤を添加しても良い。例示するならば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどのアルキルイソプロペノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどの官能基を有するアルコキシシラン類;シリコーンワニス類;ポリシロキサン類などである。接着性改良剤の使用量は、重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部から50重量部の範囲で使用するのが好ましく、1重量部から5重量部がより好ましい。使用量がこれよりも少ない場合は、十分な効果が得られない可能性が有り、使用量がこれよりも多い場合は、得られる硬化物の機械物性が低下する可能性がある。
【0071】
<硬化物>
本発明の硬化性組成物は、活性エネルギー線、または熱によって硬化させることができる。
【0072】
活性エネルギー線により硬化させる場合、活性エネルギー線としては、光(UV)、または、電子線が挙げられ、活性エネルギー線源としては、特に限定されないが、使用する光重合開始剤の性質に応じて、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー、メタルハライドなどがあげられる。
【0073】
その硬化温度は、0℃〜150℃が好ましく、5℃〜120℃がより好ましい。その他の開始剤として、レドックス系開始剤を併用する場合、その硬化温度は、−50℃〜250℃が好ましく、0℃〜180℃がより好ましい。
【0074】
熱により硬化させる場合、その硬化温度は、30℃〜200℃が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0076】
(合成例1)
分子量約2,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、末端が水酸基である数平均分子量14,500(送液システム:東ソー製HLC−8120GPC、カラム:東ソー製TSK−GEL Hタイプ、溶媒としてTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリプロピレンオキシド(a−1)を得た。
【0077】
(実施例1)
水酸基を有するポリプロピレンオキシド(a−1)100重量部に対し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.02重量部、ジブチル錫ビス(メルカプト酸エステル)(C−1)(日東化成(株)製ネオスタンU−360)50ppm、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(B−1)(昭和電工(株)製カレンズAOI)2.6重量部を加え、90℃で1時間攪拌した。H−NMR(Bruker製AvanceIII 400MHz NMRシステム)による測定により、ポリプロピレンオキシド(a−1)の水酸基に由来するピークが消失するとともに、カルバメート基が結合した炭素上のプロトンに由来するピーク(4.91ppm(多重線))が現れ、(メタ)アクリロイル系置換基を末端に有するポリプロピレンオキシド(A−1)が得られたことを確認した。
【0078】
H−NMRスペクトルにおいて、主鎖中のメチル基に由来するピークの積分値とアクリロイル基に由来するピークの積分値の比から算出した(メタ)アクリロイル系置換基の導入率は90%であった。これによりポリプロピレンオキシド(A−1)は1分子あたり平均して、1.8個の(メタ)アクリロイル系置換基を含有することがわかった。また、GPCにより求めた分子量は14,500であった。
【0079】
(実施例2)
重合体(A−1)100重量部をミニカップに加え、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(e1−1)(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 DAROCURE1173)0.2重量部とビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(e1−2)(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 IRGACURE819)を添加し、スパチュラにてよく攪拌することで、硬化性組成物を得た。
【0080】
得られた硬化性組成物をテフロン(登録商標)シート上に厚さが2mmになるように塗布した。得られたシートをフュージョンUVシステム製UV照射装置(機種:LIGHT HAMMER 6、光源:水銀灯ランプ、積算光量:3000mJ/cm)にて照射を行い、硬化物を得た。
【0081】
(比較例1)
水酸基を有するポリプロピレンオキシド(a−1)100重量部に対し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.02重量部、ジブチル錫ジラウレート50ppm、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(B−1)(昭和電工(株)製カレンズAOI)2.6重量部を加え、90℃で1時間攪拌し、ポリプロピレンオキシド(P−1)を得た。室温に冷却後、ポリプロピレンオキシド(P−1)はゲル化していた。
【0082】
(比較例2)
水酸基を有するポリプロピレンオキシド(a−1)100重量部に対し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.02重量部、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)50ppm、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(B−1)(昭和電工(株)製カレンズAOI)2.6重量部を加え、80℃で5時間攪拌し、ポリプロピレンオキシド(P−2)を得た。
【0083】
ポリプロピレンオキシド(P−2)のH−NMRスペクトルにおいて、(実施例1)と同様の方法で算出した(メタ)アクリロイル系置換基の導入率は約10%であった。これによりポリプロピレンオキシドは1分子あたり平均して、0.2個の(メタ)アクリロイル系置換基を含有することがわかった。
【0084】
(比較例3)
水酸基を有するポリプロピレンオキシド(a−1)100重量部に対し、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシ0.02重量部、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(B−1)(昭和電工(株)製カレンズAOI)2.6重量部を加え、80℃で7時間攪拌し、ポリプロピレンオキシド(P−3)を得た。
【0085】
ポリプロピレンオキシド(P−3)のH−NMRスペクトルにおいて、(実施例1)と同様の方法で算出した(メタ)アクリロイル系置換基の導入率は約25%であった。これによりポリプロピレンオキシドは1分子あたり平均して、0.5個の(メタ)アクリロイル系置換基を含有することがわかった。
【0086】

実施例1のように、水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)に、イソシアネート系化合物(B)を、ジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)の存在下で反応させることにより、容易に(メタ)アクリロイル系置換基を有するポリオキシアルキレン系重合体(A)を得ることができた。また、実施例2に示したように、重合体(A)と光ラジカル開始剤(e1)を含有する組成物は、優れた硬化性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するポリオキシアルキレン系重合体(a)と一般式(1):
O=C=N−R−O−C(=O)−C(R)=CH (1)
(式中、Rは2価の有機基、Rは水素原子、または、置換あるいは非置換の炭素原子数1から20の炭化水素基。)で表されるイソシアネート系化合物(B)をジブチル錫(メルカプト酸エステル)(C)の存在下で反応させることにより得られるポリオキシアルキレン系重合体であって、一般式(2):
−O−C(=O)−NH−R−O−C(=O)−C(R)=CH (2)
(式中、R、Rは前記と同じ。)で表される置換基を分子内に1個以上有する数平均分子量が3,000以上のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【請求項2】
一般式(1)のRがエチレン基である請求項1に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【請求項3】
一般式(1)のRが水素原子である請求項1、または、請求項2に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン系重合体がポリオキシプロピレン系重合体である請求項1から3のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【請求項5】
一般式(2)で表される置換基がポリオキシアルキレン系重合体(A)の末端のみに有する請求項1から4のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のポリオキシアルキレン系重合体(A)と重合開始剤(D)を含有する硬化性組成物。
【請求項7】
重合開始剤(D)が活性エネルギー線および/または熱によりラジカルを発生するラジカル開始剤(E)である請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
ラジカル開始剤(E)が光によりラジカルを発生する光ラジカル開始剤(e1)である請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
光ラジカル開始剤(e1)の添加量が、ポリオキシアルキレン系重合体(A)100重量部に対し、0.001重量部から10重量部であることを特徴とする請求項8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物。


【公開番号】特開2012−7041(P2012−7041A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142906(P2010−142906)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】