説明

ポリオキシメチレンの製造方法

全体の重合において、プロトン供与体の全体量が5000ppmより低いことを特徴とする、モノマーa)を阻害剤b)の存在で並びに場合により調節剤c)の存在でカチオン性重合し、引き続きポリマーを失活及び分離することによるポリオキシメチレンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレンの改善された製造法に関する。
【0002】
先行技術からは、主要なプロトン供与体/プロトン性化合物を反応混合物中に含有する多様な方法が公知である。
【0003】
DE-A 361 77 54又はDE-A 292 07 03では、例えば調節剤/連鎖移動剤としてアルコールが使用される。一般に、アルコール性溶剤中の停止剤が前記混合物中に導入される:
− DE-A 361 77 54 H2O/アルコール混合物を用いた加水分解
− DE-A 250 99 24 NEt3をMeOH/H2O中に添加(NEt3=トリエチルアミン)
− JP-A 59/197 415 NEt3をエタノール中に添加
− WO 97/24 384 NEt3を水中に添加
− EP-A 999 224 失活剤は水相中に存在することができる
Echte著, Handbuch der Polymerchemie, VCH, Weinheim, 1993, Kap. 8.5.2のような教書によると、POMコポリマーはカチオン重合の後にアルカリ性に中和される。
【0004】
更に、POMポリマーは水蒸気で脱気することもできる:DE-A 370 73 90。
【0005】
EP-A 678 535からは、モノマー混合物中の含水量を有利に制限しなければならないことは公知である。重合の更なる工程において、低沸点物及びH供与体は制限されない。
【0006】
上記の文献において、例えば触媒の溶剤として、低沸点の不活性溶剤(140℃を下回る沸点)が使用される、それというのも、この溶剤は簡単に除去することができるためである。
【0007】
トリオキサンの重合は、一般に<100%の収率を提供する。溶融重合の場合には、例えば70%の転化率が達成されるだけである。反応されない残留モノマーは、一般にガス状で取り出されかつリサイクルされる。この蒸気の返送は、この蒸気から低沸点物が十分に除去されている場合に著しく容易となる。この場合、手間のかかる蒸気の精製を行わなくてもよい。蒸気からプロトン供与体が除去されている場合には、導管内での有害な被膜を生じさせる(気相)重合は起こらない。
【0008】
ポリオキシメチレンの重要な品質基準は、更に残留ホルムアルデヒド含有量(残留FA)である。残留FAを明らかに<10ppmに減少させることが望ましい。低い残留FAは、ポリマーの高い熱安定性と(つまり熱負荷の際の低い質量損失と)同義である。
【0009】
このために、ポリマー鎖は不安定な末端基を有していないことが重要である。
【0010】
従って、本発明の根底をなす課題は、不安定な末端鎖並びに残留FAを最少化し、ポリマーの熱安定性を高め、モノマーの返送を簡素化し、並びに返送のための導管及び装置の耐用時間を延長することであった。
【0011】
更に、全体の重合において、プロトン供与体の全体量が5000ppmより低いことを特徴とする、阻害剤b)の存在で並びに場合により調節剤c)の存在でのモノマーa)のカチオン性重合及び引き続く前記ポリマーの失活及び分離によるポリオキシメチレンの製造方法は見出された。有利な実施態様は、引用形式請求項に記載されている。
【0012】
意外にも、POM鎖(末端)の安定性は、重合においてプロトン供与体の割合を前記の量範囲に制限する場合に著しく高めることができる。この後処理は、特に、反応系中での使用したモノマーを除いた低沸点物の付加的な制限により有効にかつ消耗なしで実施できる。
【0013】
「全体の重合」の概念は、モノマーバッチから顆粒物までの全ての方法工程を包含する。
【0014】
この方法は、基本的に、高い混合作用を有するそれぞれの反応器、例えば、シャーレ、鋤羽混合機、管型反応器、リスト型反応器、ニーダ、撹拌反応器、押出機及びベルト型反応器に基づいて実施することができる。
【0015】
好適な反応器は、例えば次のものである:Kenics(Chemineer Inc.);インターフェイシャルサーフィスジェネレータ(interfacial surface Generator)ISG及びロープレッシャードロップ(low pressure drop)ミキサ(Ross Engineering Inc.);SMV、SMX、SMXL、SMR(Sulzer Koch-Glitsch);Inliner系45(Lightnin Inc.);CSEミキサ(Fluitec Georg AG)。
【0016】
得られるPOM重合体は当業者には公知であり、かつ文献に記載されている。
【0017】
殊に一般的に、このポリマーは、ポリマー主鎖中に少なくとも50mol%の繰返単位−CH2O−を有する。
【0018】
このホモポリマーは、一般的に、モノマーa)、例えばホルムアルデヒド又はトリオキサンの重合により、好ましくは好適な触媒の存在下で製造される。
【0019】
本発明の範囲内で、ポリオキシメチレンコポリマーは、有利に、繰返単位−CH2O−の他に、50mol%まで、有利に0.01〜20mol%、特に0.1〜10mol%、特に有利に0.5〜3mol%の次の繰返単位を有するのが有利である。
【化1】

[式中、R1〜R4は、相互に無関係に、水素原子、C1〜C4−アルキル基又はハロゲン置換された1〜4個のC原子を有するアルキル基を表し、及びR5は−CH2−、−CH2O−、C1〜C4−アルキル又はC1〜C4−ハロアルキルで置換されたメチレン基、又は相応するオキシメチレン基を表し、nは0〜3の範囲内の値を有する]。有利に、前記基は環状エーテルの開環によりコポリマー中に導入することができる。有利な環状エーテルは、式:
【化2】

[式中、R1〜R5及びnは上記の意味を表す]の環状エーテルである。例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,3−ブチレンオキシド、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン及び1,3−ジオキセパンが環状エーテルとして挙げられ、並びに線状オリゴホルマール又はポリホルマール、例えばポリジオキソラン又はポリジオキセパンがコモノマーとして挙げられる。
【0020】
同様に、例えばトリオキサンと、前記した環状エーテルの1つと、第3のモノマー、有利に式
【化3】

及び/又は
【化4】

[式中、Zは化学結合、−O−、−ORO−(RはC1〜C8−アルキレン又はC3〜C8−シクロアルキレン)である]の二官能性化合物との反応により製造されるオキシメチレンターポリマーが適している。
【0021】
この種の有利なモノマーは、若干の例を挙げれば、エチレンジグリシド、ジグリシジルエーテル及びグリセリンとホルムアルデヒド、ジオキサン又はトリオキサンとの2:1のモル比のジエーテル、並びにグリシジル化合物2molと2〜8個のC原子を有する脂肪族ジオール1molとからなるジエーテル、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、シクロブタン−1,3−ジオール、1,2−プロパンジオール及びシクロヘキサン−1,4−ジオールのジグリシジルエーテルである。
【0022】
鎖末端にC−C結合又は−O−CH3−結合を有する、末端基が安定化されたポリオキシメチレン重合体が特に有利である。
【0023】
好ましいポリオキシメチレンコポリマーは、少なくとも150℃の融点及び5000〜300000、好ましくは7000〜250000の範囲内の分子量(重量平均)Mwを有する。
【0024】
不均一性(Mw/Mn)2〜15、好ましくは3〜12、特に好ましくは3.5〜9を有するPOMコポリマーが特に好ましい。この測定は、一般にGPC/SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって実施し、Mn−値(数平均分子量)は一般にGPC/SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって測定する。
【0025】
この方法により得られるPOM重合体は、好ましくは単峰性の分子量分布を有し、その際、低分子の割合は少ない。
【0026】
ポリオキシメチレンホモ重合体又はポリオキシメチレン共重合体は特に、2.25〜5.5、好ましくは2.75〜5、特に3.2〜4.5のd50/d10値の商(Mwに関する)を有する。d90/d50値の商(Mwに関する)は、好ましくは1.25〜3.25、有利には1.75〜2.75、特に2〜2.5である。
【0027】
POM重合体は、極めてわずかな低分子の割合を有し、好ましくは、非対称の単峰性分布曲線を有し、その際、上述の商d50/d10とd90/d50との差は少なくとも0.25、好ましくは1〜3、特に1.0〜2.3である。
【0028】
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)による分子量測定:
溶離剤:ヘキサフルオロイソプロパノール+0.05%トリフルオロ酢酸−カリウム塩
カラム温度:40℃
流動速度:0.5mL/min
検出器:示差屈折率検出器Agilent G1362A。
【0029】
校正は、分子量M=505ないしM=2740000を有するFa.PSS社の狭い分布のPMMAスタンダードを用いて実施した。この間隔の外に存在する溶出範囲は、外挿法により評価した。
【0030】
50値とは、当業者には一般的に、重合体の50%がより小さいMwを有し、かつこれに応じて50%がより大きいMwを有する値であると解される。
【0031】
有利に、本発明にかかる方法により得られる粗製ポリオキシメチレンは、顆粒物中のVDA275により最大で1%、好ましくは最大で0.1%、有利には最大で0.01%の残留ホルムアルデヒド含有率を有する。
【0032】
本発明にかかる方法は、好ましくはトリオキサンのホモ重合及び共重合に適用される。しかし、モノマーa)として、原則的に、それぞれ上述のモノマー、例えばテトロキサンを使用することもできる。
【0033】
モノマー、例えばトリオキサンは、好ましくは、一般的に60〜180℃の温度で溶融状態で供給される。
【0034】
好ましくは、供給の際の反応混合物の温度は、62〜170℃、特に120〜160℃である。
【0035】
ポリマーの分子量は、場合により(トリオキサン)重合の際に通常の調節剤c)によって目標値に調節することができる。調節剤として、一価アルコールのアセタールもしくはホルマール、アルコール自体並びに連鎖移動剤として機能する少量の水(このプロトン供与体としての存在は一般に完全には回避されない)が挙げられる。調節剤は、10〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppmの量で使用する。この種の調節剤の量は、本発明の場合に、下記のように限定されるのが好ましい。
【0036】
開始剤b)(触媒とも称される)としては、(トリオキサン)重合の際に通常のカチオン性開始剤を使用する。プロトン酸、例えばフッ素化又は塩素化されたアルキルスルホン酸及びアリールスルホン酸、例えば過塩素酸、トリフロロメタンスルホン酸又はルイス酸、例えば四塩化スズ、五フッ化ヒ素、リン酸五フッ化物及び三フッ化ホウ素並びにこれらの錯化合物及び塩状の化合物、例えば三フッ化ホウ素−エーテラート及びトリフェニルメチレンヘキサフルオロホスファートが好適である。この触媒(開始剤)は、約0.001〜1000ppm、好ましくは0.01〜500ppm、特に0.05〜10ppmの量で使用される。一般に、この触媒を希釈された形で、好ましくは0.005〜5質量%の濃度で添加することが推奨される。このための溶剤としては、不活性化合物、例えば脂肪族、環式脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサン、ハロゲン化された脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、環状カーボネート、例えばプロピレンカーボネート又はラクトン、γ−ブチロラクトン又はケトン、例えば6−ウンデカノン、並びにトリグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)及び1,4−ジオキサンを使用することができる。この種の低沸点物の量は、本発明の場合に、下記のように限定されるのが好ましい。
【0037】
モノマー並びにコモノマーa)、開始剤b)及び場合により調節剤c)は任意に予備混合するか又は互いに別々に重合反応器に添加することもできる。更に、EP-A 129 369又はEP-A 128 739 に記載されているように、成分a)、b)及び/又はc)は、安定化のために、立体障害フェノールを含有してよい。
【0038】
不安定な末端基の割合を最少化するために、モノマーa)及び場合によりコモノマーa)への添加前に、開始剤b)を調節剤c)中に溶解させることが有利であることが判明している。
【0039】
この重合は、有利に混合区域、重合区域及び失活区域を有する管型反応器中で実施する。
【0040】
本発明によれば、この重合に引き続いて、重合混合物を、好ましくは相変化させずに直接失活させる。
【0041】
この触媒残留物の失活は、一般的に少なくとも1種の失活剤d)の添加により行われる。
【0042】
好適な失活剤は、例えばアンモニア、脂肪族及び芳香族アミン、塩基性に反応する塩、例えばソーダ及びホウ砂である。これらは通常、ポリマーに好ましくは1質量%までの量で添加される。
【0043】
アルカリ(土類)金属、好ましくはナトリウムの有機化合物には、好ましくは30個までのC原子及び好ましくは1〜4個のカルボキシル基を有する(環式)脂肪族、芳香脂肪族又は芳香族カルボン酸の相応する塩が属する。この例は:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、カプリル酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、コルク酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメリット酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、安息香酸、置換安息香酸、二量体酸及び三量体酸のアルカリ金属塩並びに中性及び部分的に中性のモンタンワックス塩又はモンタンワックスエステル塩(モンタナート)である。本発明によれば、他の性質の酸基を有する塩、例えばアルカリパラフィンスルホナート、アルカリオレフィンスルホナート及びアルカリアリールスルホナート又はフェノラート並びにアルコラート、例えばメタノラート、エタノラート、グリコラートを使用してもよい。
【0044】
好ましくは、有利に2〜18個のC原子、特に2〜6個のC原子を有し、かつ4個まで、好ましくは2個までのカルボキシル基を有するモノカルボン酸及びポリカルボン酸、特に脂肪族モノカルボン酸及びポリカルボン酸のナトリウム塩並びに好ましくは2〜15個、特に2〜8個のC原子を有するナトリウムアルコラートを使用することが好ましい。特に好ましい代表例は、酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、ナトリウムグリコラートである。特に有利には、ナトリウムメタノラートを、使用される成分b)の1〜5倍の等モル量で使用することが殊に好ましい。種々のアルカリ(土類)金属化合物の混合物を使用することもでき、その際、水酸化物も使用可能である。
【0045】
更に、アルキル基中に2〜30個のC原子を有するアルカリ土類金属アルキルが失活剤d)として好ましい。特に有利な金属として、Li、Mg及びNaが挙げられ、その際、n−ブチルリチウムが特に好ましい。
【0046】
好ましい失活剤d)は、式I
【化5】

[式中、R1、R3、R4及びR5は、互いに無関係に、水素又はC1〜C10−アルキル基であり、かつ
2は、水素又はC1〜C10−アルキル基又はO−R5である]の失活剤である。
【0047】
好ましい基R1〜R5は、互いに無関係に、水素又はC1〜C4−アルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチルである。
【0048】
特に好ましい失活剤d)は、置換N含有複素環化合物、特にピペリジンの誘導体であり、その際、トリアセトンジアミン(4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)が特に好ましい。
【0049】
この失活剤は、トリオキサンの処理量に対して、0.001〜25ppm、好ましくは0.01〜5ppm、特に0.05〜2ppmの量で供給される。この失活剤は、好ましくは、後述の担体/溶剤の一つに希釈されて存在する。この失活剤の担体/溶剤中の濃度は、0.001〜10%、好ましくは0.01〜5%、特に0.05〜2%、殊に好ましくは0.1〜1%である。
【0050】
好ましくは、失活剤d)は、非プロトン性の非芳香族性の溶剤、例えば上述のモノマー及びコモノマー、例えばジオキソラン、トリオキサン、ブタンジオールホルマール、エチレンオキシド又はオリゴマーないしポリマーのポリアセタール中に添加する。
【0051】
本発明にかかる方法の特に好ましい実施形態においては、エーテル構造単位を有する担体物質中の失活剤d)を重合混合物中に添加する。
【0052】
好ましくは、それぞれ製造されるべきPOM重合体中に存在する構造単位と同じ構造単位を有する担体物質が好適である。これらは、特に、上述のモノマーa)並びにオリゴマーないしポリマーのポリオキシメチレン又はポリアセタールと解される。
【0053】
好ましい液状での添加は、140〜220℃の温度で実施する。
【0054】
担体物質としてオリゴマー又はポリマーのPOM重合体を使用する場合に、液状の形での添加を160〜220℃の温度で行うことが同様に好ましい。この種の重合体は、場合により慣用の添加剤を含有してよい。失活剤d)を含有する担体物質のこの種の溶融物の供給のために、好ましくは、付属の押出機、プラグスクリュー(Stopfschnecke)、溶融ポンプ(Schmelzepumpe)などのような装置を使用する。
【0055】
次いで一般的に、生じた重合体を脱気装置中に供給する。
【0056】
次いで、生じたポリオキシメチレン重合体を慣用の添加剤、例えば安定剤、ゴム、充填剤などで通常のようにさらに加工することができる。
【0057】
本発明の場合には、全体の重合において、プロトン供与体の全体量は5000ppmより低く、有利に0.1〜2000ppm、特に1〜1000ppm及び特に有利に10〜750ppmであるのが好ましい。
【0058】
有利に、少なくとも1つのOH基を有するプロトン供与体が使用される。特に、このプロトン供与体は、<250g/mol、有利に<200g/molの分子量を有する。
【0059】
プロトン供与体とは、ブレンステッド/ローリーによるプロトンを放出することができる化合物であると解釈される(Roempp Chemie Lexikon, 第9版 1992, p. 3958 und 3959参照)。これには、特に本発明による運転方法により、飽和又は不飽和であることができる脂肪族/芳香族アルコール(調節剤c)及びd)のための溶剤)、並びに水又は水を含有する反応体、例えば阻害剤b)としての前記の(ルイス)酸の溶液が挙げられる。
【0060】
この量の限定を維持するために、有利に特に鎖長調節剤c)はホルマール、例えばメチラール又はブチラールを使用することができる。更に、阻害剤b)又は停止剤d)のための溶剤として、前記の担体物質(エーテル単位を有する)、例えばラクトン、例えばγ−ブチロラクトン、ケトン、例えば6−ウンデカノン又は環式炭酸エステルを使用するのが有利である。
【0061】
環式炭酸エステルとして、有利に5員の炭酸エステル、特に式:
【化6】

[式中、Rは水素原子、フェニル基又は有利に1、2又は3個の炭素原子を有する低級アルキル基を表し、R1はそれぞれ水素原子又は有利に1、2又は3個の炭素原子を有する低級アルキル基を表す]の化合物が使用される。これらの例として、エチレングリコールカーボネート、1,2−プロピレングリコールカーボネート、1,2−ブチレングリコールカーボネート、2,3−ブチレングリコールカーボネート、フェニルエチレングリコールカーボネート、1−フェニル−1,2−プロピレングリコールカーボネート及び2−メチル−1,2−プロピレングリコールカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フェニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−2−オン及び4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)を挙げることができる。
【0062】
本発明により使用される環式炭酸エステルは、少なくとも95%、有利に少なくとも99.9%の純度値を有し、これはほぼ水不含及びアルカリ不含であるのが好ましい。この精製は一般に減圧下での蒸留又は吸収又は吸着により行われる。精製された環式炭酸エステルは通常の標準条件下で固体の凝集物状態で存在する場合には、これは開始剤溶液の製造のために溶融により液状の凝集体物質にしなければならず、これはそれぞれの炭酸エステルの融点を5〜10℃上回る温度に加熱することにより行われる。一般に、このために35〜100、有利に45〜80℃の温度で十分である。
【0063】
更に、本発明の場合に、脱気は酸素の遮断下で又は不活性ガス下で、特に窒素下で行うのが好ましい。
【0064】
更に、残留モノマーの返送のために、有利に反応系中の低沸点物の量は、使用されたモノマーを除き、0.1〜15000ppm、有利に0.1〜2000ppm、特に0.1〜750ppmに制限される。
【0065】
本発明の範囲内で、低沸点物とは、<160℃、有利に<140℃、特に<120℃の沸点を有する化合物であると解釈される。
【0066】
この種の低沸点物の分子量は、有利に<400g/mol、有利に<300g/mol、特に<200g/molである。
【0067】
この種の低沸点物は、有利に、既にb)で前記されたような系中で非プロトン性の溶剤である。プロトン性溶剤は、大抵は酸素、窒素又は硫黄と結合している比較的移動性のプロトンを含有する。非プロトン性溶剤の場合には、全ての水素原子は酸素と結合している(F.A. Carey, R.J. Lundberg著, Organische Chemie Verlag VCH 1995, p. 224参照)。
【0068】
しかしながら、完全にプロトン性化合物を使用しないのは有利ではない、それというのもこのプロトン性化合物は重合を開始させ、促進することができ(水性の過塩素酸は重合開始剤として利用される)、反応も効果的に停止することができる(TADは停止剤として利用され、少量の水を含有する)ためである。
【0069】
次の本発明による措置を組み合わせることにより、反応混合物中のプロトン性化合物の割合は低減される:
1. 鎖長調節剤として、ホルマール、有利にメチラール又はブチラールを使用する。
【0070】
2. 停止剤のための溶剤として、環式ホルマールを使用する。
【0071】
3. 開始剤のための溶剤として、沸点>160℃の非プロトン性化合物を使用する。
【0072】
4. 全ての使用物質は、高くても500ppmの水割合を有する。
【0073】
低分子量のプロトン性化合物は、従って本発明による方法において開始剤(例えば水性の過塩素酸)、停止剤(例えばTAD)及び使用物質中の残留水によってのみ反応混合物中にもたらされる。この残留水は、本発明により導入されるプロトン性化合物の大部分を構成する。
【0074】
実施例
96.495質量%の液体トリオキサン、3.5質量%のジオキソラン及び0.005質量%のメチラールからの混合物5kgを160℃に加熱し、そしてスタティックミキサを有する管型反応器中に圧送した。これらのモノマーの残留水含有量はそれぞれ0.05%であった。0.5ppmの過塩素酸(溶剤A中の0.01質量%溶液として)の添加により重合を開始し、反応器中の圧力は20barであった。
【0075】
2minの滞留時間の後に、過塩素酸に対して5倍過剰量でTADが存在するように、反応器の停止領域中に停止剤としてのトリアセトンジアミン(溶剤B中の0.05質量%の溶液として)を供給し、スタティックミキサを介して混合した。
【0076】
更なる3minの滞留時間の後に、生成物(粗製POM)を、調節弁を介して脱気ポット(Entgasungstopf)中で4barの圧力に放圧し、これによりポリマー溶融物から揮発性成分を分離した。このポリマー溶融物中に、トリオキサン及びホルムアルデヒドの残留物が残留した。
【0077】
このガス状のモノマーは、脱気ポットから130℃に加熱された導管(以後蒸気導管とする)を介して凝縮器中へ移され、凝縮される。この凝縮物をGC−MS測定により調査した。
【0078】
この溶融物は押出機で脱気され、排出され、水浴中で冷却され、顆粒化された。
【0079】
反応混合物中での低分子量のプロトン性化合物の割合は次のようであった:
500ppm (モノマーの残留水)
+0.25ppm (70%の水性過塩素酸から)
+2.5ppm (トリアセトンジアミン)
=502.75ppm
並びに、溶剤の選択に応じて、
+5000ppm 溶剤B(例えば水、メタノール)
反応混合物中の低沸点物の割合は、溶剤の選択に応じて、
5000ppm 溶剤A(例えば1,4−ジオキサン、シクロヘキサン)であった。
【0080】
【表1】

【0081】
比較例1〜4は、モノマー凝縮物中で1,4−ジオキサンもしくはシクロヘキサンに関する著しい残留物を示す。モノマーのリサイクルの前に、これらは手間をかけて分離しなければならない。
【0082】
>5000ppmのプロトン供与体が存在する比較例3及び4は、蒸気導管中でのさらなる皮膜形成を示し、明らかに低下された耐用時間を示す。
【0083】
低沸点物及びプロトン供与体を本発明により制限した場合に、高純度の凝縮物と組み合わせた、高い耐用時間を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーa)を阻害剤b)の存在で並びに場合により調節剤c)の存在でカチオン性重合し、引き続きポリマーを失活及び分離することによるポリオキシメチレンの製造方法において、全体の重合において、プロトン供与体の全体量が5000ppmより低いことを特徴とする、ポリオキシメチレンの製造方法。
【請求項2】
プロトン供与体は<250g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのOH基を有するプロトン供与体を使用することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
プロトン供与体の全体量は0.1〜2000ppmであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
プロトン供与体のグループは、脂肪族又は芳香族アルコール、水又は反応体の水を含有する溶液、酸又はその混合物のグループから選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
残留モノマーを除去し、かつ重合反応器中に又はモノマー装置中に返送することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
全体の重合において、低沸点物の量は、使用したモノマーを除いて、0.1〜15000ppmであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
低沸点物は非プロトン性であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
低沸点物は<400g/molの分子量を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
低沸点物は<160℃の沸点を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2008−533265(P2008−533265A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501300(P2008−501300)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060751
【国際公開番号】WO2006/097487
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】