説明

ポリオレフィンの撥性の抑制

物体を40℃より高い温度に加熱する工程と、少なくとも10秒間保持する工程と、冷却する工程とによって、ポリオレフィンとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の撥性を一時的に抑えるための方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維、シート、フィルムまたは成形物品などの押出または成形されたポリオレフィン物体に時間遅れ撥性を与えるための方法に関する。それは、その表面改質のためにかかる物体の撥性を一時的に抑えることを可能にする。
【背景技術】
【0002】
繊維、シート、フィルムまたは成形物品などの熱可塑性ポリマー表面は、それらの表面特性に影響を与えるために、例えば撥水性を改良するために、あるいは防汚性、耐土ほこり性または撥性を付与するためにしばしばフルオロケミカル化合物で処理される。非常にしばしば、フルオロケミカル水性分散体は噴霧、パジング、または発泡によって表面に局所的に適用され、その後に、乾燥工程を行い水を除去する。
【0003】
しかしながら、表面が装飾されるかまたは写真、テキスト、ロゴまたは他の装飾を印刷される場合、付与された撥性が適用に支障を来たすことがある。同様な支障は、接着剤の適用、熱接着、積層、染色などの適用においていずれかの他の流体、ペーストまたは固体材料を表面に適用する時におこることがある。撥性性質によるいかなるこのような妨害も避けるために、製造プロセスを中断し、フルオロケミカルを局所的に適用する前に表面への適用を実施する必要がある場合がある。
【0004】
物体を押出す前にフルオロケミカル添加剤をポリマーに混入することによって局所的な適用に取って代わる場合、熱可塑性ポリマーの製造プロセスを簡易化でき、かなりの設備投資を抑えられることはよく理解されている。適当な有効なフルオロケミカル添加剤を発見することは非常に困難であった。ポリオレフィン溶融体への添加剤の要件には、添加剤の低濃度において低表面張力流体をはじくことができる以外に、加工条件に耐える良好な熱安定性および低揮発性などがある。好ましくは、十分な撥性のために必要とされる添加剤の量を最小にするために化合物が物体の表面に移動する。物体の押出し後の加熱によってこの移動はしばしば促進されるが、この加熱工程を必要とせずに移動が生じることがより好ましいと考えられている。
【0005】
しかしながら、このように改質された押出ポリマーは典型的に、所望の流体に対してだけでなく、ポリマー物体の表面を装飾するかまたは他の方法で改質したい場合に使用される印刷インクまたは他の材料に対しても撥性である。予め混入されたフルオロケミカル添加剤によって、局所的に適用されたフルオロケミカルのかわりに上述の予備フルオロケミカル法において製品の表面改質工程を行なうことは不可能である。これは、フルオロケミカル溶融添加剤を含有するポリマーについて製品の改質を困難にする。
【0006】
先行技術には、溶融段階において混入されて押出繊維の表面特性を変えるフルオロケミカル添加剤を含有するポリオレフィン繊維の例が開示されており、それらの多くは、フルオロカーボン/炭化水素エステルを使用する。例えば、米国特許公報(特許文献1)を参照のこと。しかしながら、他の後の布改質工程のためにこのように形成された撥性によって起こる可能性のある問題を避けるかまたは最小にする方法は扱われていない。
【0007】
フルオロケミカル添加剤をポリマー溶融体に混入して押出または成形された物体に撥性を形成するとき、他の表面改質工程のために可能性のあるいかなる支障も回避または最小にするためにこの撥性を一時的に抑える方法が必要とされている。本発明は、かかる方法を提供する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,898,046号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、物体を40℃より高い温度に加熱する工程と、少なくとも10秒間保持する工程と、およそ周囲温度に冷却する工程とを含む、ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の撥性を一時的に抑えるための方法を含む。
【0010】
本発明は、物体を40℃より高い温度に少なくとも10秒間加熱する工程と、前記物体をおよそ周囲温度に冷却する工程と、冷却後、約48時間以内に表面改質剤を前記物体に適用する工程とを含む、ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の表面の改質方法をさらに含む。
【0011】
本発明は、40℃より高い温度に少なくとも10秒間加熱する工程と、およそ周囲温度に冷却する工程と、冷却後、48時間以内に表面改質剤を適用する工程とによって改質される表面を有する、ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの押出または成形された混合物を含む組成物をさらに含む。
【0012】
本発明は、改質された表面を有する押出または成形された物体の改良された作製方法をさらに含み、押出しまたは成形する前にフルオロカーボン/炭化水素エステルがポリオレフィン溶融体に添加され、改良が、物体の表面を改質する前に加熱および冷却工程を導入することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、物体を約40℃の温度に少なくとも10秒間、加熱し、その後、周囲温度に冷却することによって、ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の撥性を一時的に抑えるための方法に関する。この加熱および冷却は、フルオロカーボン/炭化水素エステルによって寄与された物体の表面撥性の一時的な抑制をもたらす。この一時的な抑制は、それがなければフルオロカーボン/炭化水素エステルの撥性によってはじかれるかまたは妨害されるインク、接着剤、熱接着または積層材料等の表面改質剤によって物体の表面が印刷されるかまたは他の方法で改質されることを可能にする。
【0014】
本発明は、ポリオレフィンの全体に分散されたフルオロカーボン/炭化水素エステルを含有するポリオレフィン物体に関し、かつ、表面改質剤の添加を可能にするために、または、前記ポリオレフィン物体の表面改質を行うことを可能にするために前記ポリオレフィンの撥性を一時的に抑えるための方法を提供する。本明細書中で用いられる用語「物体」には、繊維、フィラメント、布、フィルム、シート、不織布、造形物品、成形物品、または固体物体などがある。「表面改質剤」は、ポリオレフィン物体の外観または表面特性を変化させるいかなる材料も意味する。表面改質剤の例には、インク、染料、ペイント、接着剤、または熱接着もしくは積層材料などがある。「ポリオレフィン」は、ポリオレフィン、ポリオレフィンの混合物、オレフィンコポリマー、オレフィンコポリマーの混合物、および少なくとも1つのポリオレフィンと少なくとも1つのオレフィンコポリマーとの混合物からなる群から選択されるいかなるポリマーをも意味する。特に、それは、エチレン、プロピレン、ブチレン、またはそれらの混合物であるポリマー単位を有するいかなるポリオレフィンをも含むことを意味する。本発明のポリオレフィン物体は、押出、成形、または造形されたポリオレフィンである。好ましくはポリオレフィン物体は布であり、より好ましくはそれは、スパンボンド不織布ポリオレフィン布である。
【0015】
フルオロカーボン/炭化水素エステルは、式:
−O−C(O)−RまたはR−C(O)−O−R
の化合物またはそれらの混合物を意味し、式中、RがF(CF−(CHからなる群から選択され、xが約4〜約20であり、mが約0〜約6であり、Rが、約12〜約76個の炭素原子を有する脂肪族直鎖状炭化水素である。好ましくは、フルオロカーボン/炭化水素エステルはペルフルオロアルキルステアレートである。
【0016】
特に好ましいのは、Rが以下のような鎖長分布を有する混合物である組成物である:
x=6以下 0〜10重量%
x=8 45〜75重量%
x=10 20〜40重量%
x=12 1〜20重量%
x=14以上 0〜5重量%
【0017】
は、約12〜約76個の炭素、好ましくは約12〜約50個の炭素、より好ましくは約12〜約22個の炭素原子、最も好ましくは平均約17個の炭素原子の炭素鎖長を有する脂肪族炭化水素である。
【0018】
フルオロカーボン/炭化水素エステルを公知の方法によって製造することができる。例えば、エステルは、適切なアルコールをフルオロカーボン酸と反応させることによって、または脂肪酸を適切なフルオロカーボンアルコールと反応させることによって、またはエクテル交換(transecterfication)によって製造される。ペルフルオロアルキルステアレートの場合、それは好ましくは、ペルフルオロアルキルアルコールとメチルステアレートとの間のエステル交換によってまたはペルフルオロアルキルアルコールをステアリン酸と直接に配合することによって製造される。好ましくはフルオロカーボン/炭化水素エステルは、ペルフルオロアルキルアルコールをステアリン酸と直接に配合することによって製造される。適したペルフルオロアルキルステアレートは、デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington,DE)の本願特許出願人からゾニル(ZONYL)FTSまたはTLF−9483として購入してもよい。
【0019】
フルオロカーボン/炭化水素エステルの調製に有用なR1−OHに相当する長鎖アルコールは、74112米国オクラホマ州、タルサの6910E.14番通リのペトロライト・コーポレーションのポリマー事業部本部(Petrolite Corporation, Polymer Division Headquarters,6910 E.14th Street,Tulsa,Oklahoma,USA 74112)から商標「ユニリン」として市販されている。「ユニリン(UNILIN)」アルコールは、完全飽和長鎖直鎖アルコールである。「ユニリン」350、425、550および700のおよそのR1範囲は、それぞれ、12〜50、14〜58、16〜56および14〜66である。「ユニリン」350、425、550および700の平均鎖長は、それぞれ、約24、32、40および48である。フルオロカーボン/炭化水素エステルの調製に有用なR1−COOHに相当する酸は、74112オクラホマ州、タルサの6910E.14番通リのペトロライト・コーポレーションのポリマー事業部本部から商標「ユニシッド(UNICID)」として市販されている。「ユニシッド」350、425、550および700の平均鎖長の範囲は、それぞれ、24〜29、29〜37、37〜45および40〜48である。
【0020】
フルオロカーボン/炭化水素エステルが押出または成形温度において最小揮発性を有することが望ましい。これは、最終生成物の量をより良く制御し、いかなる汚染問題も最小にし、成分のコストを低減するために望ましい。最小の揮発性は、上に記載されたTLF9483において行なわれるように、いかなる揮発性ペルフルオロアルキル成分または不純物も最小にすることによって、および/または業界に周知の安定剤を添加することによって達成され得る。
【0021】
フルオロカーボン/炭化水素エステルは、ポリオレフィンの重量に対して約0.3%〜約2重量%の量において存在する。0.3%未満の量は、処理後に所望の撥性を提供するのに効果的でない。2%を超える量は不必要であり、後続の適用のために撥性を十分に抑制できない場合がある。
【0022】
エステルをポリオレフィン溶融体に添加して混合物を形成し、次いでそれを押出し、成形または造形する。あるいは、エステルをポリオレフィンと混合するために、それをペレット化された、粗い、粉末状、または他の適切な形状のポリマーに添加し、混合物を圧延、撹拌、またはコンパウンディングして均一な混合物を達成し、次にそれを溶融押出して、成形あるいは他の方法で造形する。
【0023】
フルオロカーボン/炭化水素エステルが、ポリオレフィンとの、または単独で、もしくは他の物質とのマスターバッチとしてポリオレフィンと配合されてもよい。例えば、それは、揮発性を低減するための物質、着色剤、付臭剤、反射剤(reflectant)、テクスチャラント(texturant)、柔軟剤、難燃剤、またはポリオレフィンの特性を変えるための他のいずれかの材料を含有してもよい。
【0024】
ポリオレフィン物体は、本技術分野に公知の方法によって押出または成形される。押出または成形後に、ポリオレフィン物体は、安全性または製品の歪み問題を伴わずに容易に取扱われる温度に達するまで、冷却される。好ましくはそれは、およそ周囲温度に冷却される。周囲温度になると、それは無期限に保持されてもよく、本発明の処理が適用される前に貯蔵されるかまたは出荷されてもよい。およそ周囲温度とは、居住室内または建物内に一般に見出されるいかなる温度も意味する。
【0025】
表面改質剤の添加のための時間になると、物体は40℃より高い温度に少なくとも10秒間、加熱され、次いでおよそ周囲温度に再冷却される。これは、1日または2日までの期間、撥性を抑える。この結果は予想外である。先行技術は、フルオロカーボン/炭化水素エステル溶融添加剤を含有するポリオレフィンの加熱またはアニールを使用してその撥性を減少させるのではなく、増加させることができることを示す。例えば、(特許文献1)、第6欄、51〜57行目を参照のこと。
【0026】
40℃以下の加熱温度および10秒未満の保持時間は概して、表面改質剤を添加するために望ましい撥性の抑制をもたらすために不十分である。好ましくは加熱温度は約60℃より高い。より好ましくは、加熱温度は約70℃より高い。好ましくは加熱温度は約150℃より低い。150℃より高い温度もまた、製品が軟質すぎて容易に変形可能であるか、あるいは他の方法で劣化される場合がある温度まで、またはそれより高い温度が安全性の問題を有する場合がある温度まで、満足できる。好ましくは保持時間は約1分より長い。例えば約5分より長い、より長い時間もまた、適している。最大時間は便利さによってかまたは高温において長時間経過した後に起こり得る製品の劣化によってのみ限定される。約1分〜約15分の保持時間が、ここにおいて使用するために、特に薄いフィルムおよび布のために好ましい。より厚いキャストまたは押出物体のためには時間をあるていど長くすることが好ましいことがある。特定の適用のための最適時間は、当業者によって容易に測定される。
【0027】
次に、ポリオレフィンをおよそ周囲温度に再冷却させる。抑えられた撥性は、数時間〜約48時間、有効であり、その後、それはその通常の所望の撥性に戻る。この抑制時間は、フルオロカーボン/炭化水素エステルの量、そのポリマー成分、物体の形態または厚さ、実際の室温などのポリオレフィン物体の特性、および/または他の問題によってあるていど変化してもよい。最大の撥性の抑制のために、製品の改質工程は、その最小実際値での抑制時間、好ましくは約24時間まで、より好ましくは約1〜10時間で行なわれるのがよい。
【0028】
次に、ポリオレフィン物体は、インク、染料、ペイント、接着剤、または熱接着または積層材料などの表面改質剤を添加または適用することによって改質される。ポリオレフィン物体の撥性が戻るように、表面改質剤の添加がいずれかの理由のために延期される場合、上記の加熱処理を繰返して特定の時間、撥性を再び抑えることができる。このように、印刷、染色、塗装、接着剤の適用、熱接着および積層などの作業は、撥性から妨げられずに物体表面の上で行なわれる。
【0029】
本発明は、40℃より高い温度に少なくとも10秒間加熱する工程と、およそ周囲温度に冷却する工程と、冷却後、48時間以内に表面改質剤を適用する工程との上述の方法によって改質された表面を有する押出または成形された物体を含む組成物をさらに含む。先述のように、本発明の組成物は、ポリオレフィンおよびフルオロカーボン/炭化水素エステルを含む。かかる加熱/冷却処理の後、撥性は、加熱の約24〜約48時間以内に回復する。このように、フルオロカーボン/炭化水素エステルによって与えられた撥性性質は、最終表面改質物体に維持される。前記組成物は、ポリマーおよびエステル混合物を押出し、成形、または造形することによって達成され得るいかなる物理的形状または形態であってもよい。前記組成物は、場合により、揮発性を低減するための添加剤、着色剤、付臭剤、反射剤、テクスチャラント、柔軟剤、難燃剤、または所望の表面効果を達成するための材料などの他の成分を含有する。
【0030】
本発明は、特化された仕上加工用設備を必要とせずにメーカーが撥性ポリオレフィン製品を製造するために有用である。下流の変換器が短い熱処理によって撥性を除去することができ、これにより、変換作業(すなわち染色、印刷、塗装、接着剤の適用、熱接着、積層)は、ポリオレフィンの潜撥性を克服するための特殊な取扱または添加剤を用いずにすぐに行なうことができる。次いで、撥性は熱処理の24〜48時間以内に回復する。
【0031】
本発明は、改質された表面を有する押出または成形された物体の改良された作製方法をさらに含み、そこにおいて、押出しまたは成形する前にフルオロカーボン/炭化水素エステルがポリオレフィンに添加され、改良が、物体の表面を改質する前に加熱および冷却工程を導入することを含む。加熱および冷却工程および表面改質は、本明細書に先に詳述された通りである。本発明の押出または成形された物体の改良された作製方法は、装飾または改質された表面を有する撥性ポリオレフィン物品のメーカーが加熱/冷却工程を簡単に加えることにより、本明細書に記載されたように撥性の除去を製造作業に取り入れることを可能にする。かかる加熱/冷却工程は、表面改質工程の前に導入される。物体の撥性の抑制により、より容易により効率的な表面改質を可能にする。
【0032】
以下の実施例は本発明を説明することを意図するものであり、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。これらの実施例は、フルオロカーボン/炭化水素エステルを含有するメルトブローン不織布ポリプロピレン布を利用する。これらは、前に参照された米国特許公報(特許文献1)の実施例16に記載されているような方法によって作製される。
【0033】
以下の実施例のメルトブローンウェブの撥性性質はイソプロピルアルコール/水試験を用いて測定され、イソプロピルアルコールのパーセントの等級を用いて表される。5分後の100%のイソプロピルアルコール/0%の水溶液(最も低い表面張力の流体)の浸透を阻むウェブは、最も高い等級100を与えられる。5分後に100%の水/0%のイソプロピルアルコール溶液に耐性であるにすぎないウェブは、最も低い等級0を与えられた。表1は、この試験において用いられた他のイソプロピルアルコール/水混合物に相応する等級を記載する。与えられた布の等級は、5分後に布を湿潤しない最も低い表面張力流体(最も大きいイソプロピルアルコール含有量の%)に相応する。
【0034】
【表1】

【実施例】
【0035】
(実施例1)
デラウェア州、ウィルミントンの本願特許出願人から入手可能な1.0%のTLF−9483を含有するメルトブローン不織布ポリプロピレン布を、上述の方法によって撥性について測定した。それは90の撥性を有することがわかった(90%のイソプロピルアルコールを阻むことができる)。100℃において5分間、布を加熱し、周囲温度に冷却した後、同じ方法によって撥性を再び測定すると、30であった(30%のイソプロピルアルコールしか阻むことができない)。加熱した10分後、撥性は60まで回復した。72時間後、撥性は70+であった。
【0036】
赤色インクを用いて染料をシミュレートした。90の撥性を有する初期布をインク滴で処理した。それは、わずかな吸上げまたは広がりによって示されるように布を湿潤する傾向を示さなかった。布を加熱および冷却して上述のように30の撥性になった後、赤色インクは適用点から広がるかまたは吸上げられた。72時間後にインクを適用し、再び吸上げまたは広がりがほとんどなく、撥性が回復したことを示した。また、加熱したすぐ後に適用されたインクは、布の表面への十分な接着性を示し続けた。
【0037】
(実施例2)
デラウェア州、ウィルミントンの本願特許出願人から入手可能な、0.75%のゾニル(Zonyl)FTSを含有するスパンボンドポリプロピレン布を上述の方法によって撥性について測定した。それは、70の初期撥性の等級を有することがわかった。次に、布を3分間100℃に加熱し、次いで撥性を加熱時間の後、様々な時間で測定した。表2の以下の結果を得た。
【0038】
【表2】

【0039】
データは、撥性を抑える加熱効果および撥性の回復が、ポリプロピレン中に存在する異なったフルオロケミカルによって達成されることを示した。
【0040】
(実施例3)
2つのメルトブローン布を、実施例1と同様に異なった濃度のTLF−9483で作製した。布を5分間66℃に加熱し、次いで撥性を加熱時間の後、様々な時間で測定した。表3の以下の結果を得た。
【0041】
【表3】

【0042】
(実施例4)
実施例1と同様な0.8%のTLF−9483を含有するポリプロピレンベースのメルトブローン不織布試料を様々な時間で様々な温度において加熱した。加熱後に5分〜24時間の時間範囲にわたり、アルコール撥性を測定した。結果を以下の表4Aに示す。
【0043】
【表4】

【0044】
上記の結果は、40℃より高い加熱温度において観察可能な効果を示し、最適な結果は100℃においてであった。1分間と5分間の撥性に、ほとんど差はなかった。撥性は、24時間後に部分的にしか回復しない。
【0045】
加熱時間の下限を測定するために、5分の回復時間で、上記の試験をより短い加熱時間、繰返した。結果を表4Bに示す。
【0046】
【表5】

【0047】
上記の試験は、100℃において10秒だけの加熱時間が撥性を抑えるために十分であることを示す。
【0048】
(実施例5)
デラウェア州、ウィルミントンの本願特許出願人から入手可能な1%のTLF−9483を含有するポリプロピレンの直径3.8インチ(8.8cm)×厚さ0.25インチ(0.6cm)のディスクをガラス蒸発皿内でキャストするために、ホットプレート上の皿内でポリマー混合物を溶融した。キャスチングを175℃において行い、次いでディスクを冷却させた。撥性の等級を次の168時間にわたって測定した。得られたデータを以下の表5の最初の2つの欄に記載する。次いで、ディスクを1時間、110℃の炉内に置いた。ディスクを炉から取り出し、冷却させた。撥性が30分後に測定され、80の等級となり、110℃においての1時間の加熱がこのように厚い試料の撥性を抑えるために不十分であることを示した。次に、ディスクを合計2時間の暴露になる付加的な時間、110℃の炉に戻した。撥性の等級を次の216時間にわたって測定した。結果を以下の表5に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
(実施例6)
0.8%のTLF−9483を含有するポリプロピレンベースのメルトブローン不織布の1つの試料を20秒間、100℃の炉内で加熱した。同じ布の別の試料を加熱しなかった(対照標準)。初期アルコール撥性は80であった。加熱試料のアルコール撥性が20に低減された。炉から取り出したすぐ後に接着剤を加熱試料に適用し、および加熱されない試料に適用した。加熱試料の撥性は、時間をかけて60まで改善した。次に、乾燥された接着剤を各試料から除去した。乾燥された接着剤は、加熱されない試料に対して加熱および老化試料から除去するのがより難しかった。結果は、接着剤を適用した後の時間によって改良された撥性が対照標準と比較して接着性を妨げなかったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の撥性を一時的に抑えるための方法であって、物体を40℃より高い温度に加熱する工程と、少なくとも10秒間保持する工程と、およそ周囲温度に冷却する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
加熱温度が約60℃より高く、保持時間が約1分より長いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱温度が約70℃より高く、前記保持時間が約5分より長いことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱温度が約70℃〜約150℃であり、前記保持時間が約1〜約15分であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記物体が繊維、フィラメント、布、フィルム、シート、不織布、成形物品、造形物品(shaped articles)、および固体物体(solid objects)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記物体が不織布であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの混合物を含む押出または成形された物体の表面の改質方法であって、前記物体を40℃より高い温度に少なくとも10秒間加熱する工程と、前記物体をおよそ周囲温度に冷却する工程と、冷却後、約48時間以内に表面改質剤を前記物体に適用する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
表面改質剤を適用する工程が、印刷、染色、塗装、接着剤の適用、熱接着、および積層からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱温度が約70℃〜約150℃であり、保持時間が約1〜約15分であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
40℃より高い温度に少なくとも10秒間加熱する工程と、およそ周囲温度に冷却する工程と、冷却後、48時間以内に表面改質剤を適用する工程とによって改質される表面を有する、ポリオレフィンポリマーとフルオロカーボン/炭化水素エステルとの押出または成形された混合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記表面が、印刷、染色、塗装、接着剤の適用、熱接着または積層の少なくとも1つによって改質されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記加熱温度が約70℃〜約150℃であり、保持時間が約1〜約15分であることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
押出または成形する前にフルオロカーボン/炭化水素エステルがポリオレフィンに添加される、改質された表面を有する押出または成形された物体を製造する改良方法であって、前記改良が、前記物体の表面を改質する前に加熱および冷却工程を導入することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
加熱は40℃より高い温度に少なくとも10秒間であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
加熱は約70℃〜約150℃の温度に約1分〜約15分間であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2007−505188(P2007−505188A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526139(P2006−526139)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/028157
【国際公開番号】WO2005/033191
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】