説明

ポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法

【課題】透過性が高い新規な構造を有するポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上記微多孔膜を、重量平均分子量5×10以上のポリオレフィン(A)又は当該ポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物(B)からなるポリオレフィン微多孔膜であって、孔の平均孔径が少なくとも一方の膜表面から膜厚の中心方向にむかって、徐々に小さくなっているとともに、引張強度が650kg/cm以上であるものとする。微多孔膜内の貫通孔の形状は、大孔径の開口部を有し、中心部が小さくなっている鼓型や、大孔径の開口部を有し徐々に反対側に向かって、孔径が小さくなっている杯型であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量ポリオレフィンからなる微多孔膜に関し、特に透過性が高いポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン微多孔膜は、有機溶媒に不溶であり、かつ電解質や電極活物質に対して安定であるため、電池のセパレーター、特にリチウムイオン1次・2次電池のセパレーター、電気自動車等の大型電池用セパレーターコンデンサーのセパレーター、各種の分離膜、水処理膜、限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透濾過膜、各種フィルター、透湿防水衣料またははその基材として広く用いられている。
【0003】
従来から、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンに有機媒体及び微粉末シリカ等の無機粉体を混合し溶融成形後、有機媒体及び無機粉体を抽出して微多孔膜を得る方法は知られているが、無機物の抽出する工程が必要であり、得られた膜の透過性は無機粉体の粒径によるところが大きく、その制御は難しかった。
【0004】
また、超高分子量ポリオレフィンを用いた高強度の微多孔膜の製造法が種々提案されている。例えば、特開昭60−242035号公報、特開昭61−195132号公報、特開昭61−195133号公報、特開昭63−39602号公報、特開昭63−273651号公報、特開平3−64334号公報、特開平3−105851号公報等には、超高分子量ポリオレフィンを含むポリオレフィン組成物を溶媒に加熱溶解した溶液からゲル状シートを成形し、前記ゲル状シートを加熱延伸、溶媒の抽出除去による微多孔膜を製造する方法が記載されているが、これらの技術によるポリオレフィン微多孔膜は、孔径分布が狭くかつ孔径が小さいことが特徴で、電池用セパレーター等に用いられている。
【0005】
最近のリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度の機能が要求され、その需要がますます高まり、シャットダウン機能を有するポリオレフィン微多孔膜がそのセパレーターとして多用されているが、低温での高出力が要求されるような特殊な電池用途によっては、孔径が小さいポリオレフィン微多孔膜は電池内部抵抗を大きくさせる等の問題があり、安全性を併せ持ち、かつイオン透過性が高いポリオレフィン微多孔膜の開発が望まれていた。さらに孔径の大きさのみならず、膜の表面部分と内部の孔径を容易に制御する必要性もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、透過性が高い新規な構造を有するポリオレフィン微多孔膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、超高分子量ポリオレフィンまたはそれを含有するポリオレフィン組成物を用い、その溶媒との溶液を押出して得たゲル状成形物の延伸物を熱溶剤で処理することにより、微多孔膜の厚さ方向における孔径分布が異なるポリオレフィン微多孔膜が得られることを見出し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明は、重量平均分子量5×10以上のポリオレフィン(A)又は当該ポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物(B)からなるポリオレフィン微多孔膜であって、孔の平均孔径が少なくとも一方の膜表面から膜厚の中心方向にむかって、徐々に小さくなっているとともに、引張強度が650kg/cm以上であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜である。また、重量平均分子量5×10以上のポリオレフィン(A)又は当該ポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物(B)10〜50重量%と、溶媒50〜90重量%からなる溶液を押出して得られるゲル状成形物を延伸し、次いで溶媒を除去することによってポリオレフィン微多孔膜を製造する方法において、熱溶剤処理工程を、溶媒を除去する前に110〜130℃の温度範囲で行うことを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のポリオレフィン微多孔膜の断面組織を透過型電子顕微鏡(2500倍)によって観察した図面である。
【図2】本発明の比較例に相当する孔径が膜全体にわたって均一なポリオレフィン微多孔膜の断面組織を透過型電子顕微鏡(2500倍)によって観察した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を以下に詳細に説明する。
1.ポリオレフィン
本発明のポリオレフィン微多孔膜で用いるポリオレフィン(A)の重量平均分子量は、5×10以上であり、好ましくは1×10〜15×10である。ポリオレフィン(A)の重量平均分子量が5×10未満では、膜強度の低下がおこるので好ましくない。
【0011】
また、ポリオレフィン組成物(B)を用いる場合は、重量平均分子量5×10以上、好ましくは重量平均分子量が7×10以上の超高分子量ポリオレフィン、より好ましくは重量平均分子量1×10〜15×10である超高分子量ポリオレフィンを1重量%以上含有するポリオレフィン組成物である。超高分子量ポリオレフィンの含有量が1重量%未満では、超高分子量ポリオレフィンの分子鎖の絡み合いがほとんど形成されず、高強度の微多孔膜を得ることができない。超高分子量以外のポリオレフィン成分は、重量平均分子量5×10未満のものであるが、重量平均分子量が1×10以上のポリオレフィンが好ましい。重量平均分子量が1×10未満のポリオレフィンを用いると、破断が起こりやすく、目的の微多孔膜が得られないので好ましくない。
【0012】
重量平均分子量が5×10以上の超高分子量ポリオレフィン(B−1)と重量平均分子量5×10未満のポリオレフィン(B−2)の混合物を用いる場合は、(B−2)/(B−1)の重量比が0.2〜20、好ましくは0.5〜10であるポリオレフィン組成物が好ましく用いられる。ポリオレフィン組成物中の(B−2)/(B−1)の重量比が0.2未満では、得られるゲル状シートの厚み方向の収縮が起きやすく透過性が低下し、また溶液粘度が高くなり成形加工性が低下する。また、(B−2)/(B−1)の重量比比が20を超えると低分子量成分が多くなり、ゲル構造が緻密化し、得られる微多孔膜の透過性が低下する。
【0013】
このようなポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体、2段重合体、又は共重合体及びこれらのブレンド物等が挙げられる。これらのうちではポリプロピレン、ポリエチレン及びこれらの組成物等が好ましい。
【0014】
なお、上記ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は300以下が好ましく、特に5〜50であるのが好ましい。分子量分布が300を超えると、低分子量成分による破断が起こり膜全体の強度が低下するため好ましくない。ポリオレフィン組成物を用いる場合は、重量平均分子量が5×10以上の超高分子量ポリオレフィンと、重量平均分子量が5×10未満のポリオレフィンとを分子量分布が上記範囲となるように、適量混合することによって得ることができ、このポリオレフィン組成物は、上記分子量及び分子量分布を有していれば、多段重合によるものであっても、2種以上のポリオレフィンによる組成物であっても、いずれでもよい。
【0015】
また、本発明で用いるポリオレフィンには、ポリオレフィン微多孔膜をリチウム電池等のセパレーターとして用いた場合に低温でのシャットダウン機能を付与できるポリマーを配合することができる。シャットダウン機能を付与できるポリマーとしては、低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0016】
本発明において使用され得る低密度ポリエチレンとしては、高圧法による分岐状ポリエチレン(LDPE)及び低圧法による直鎖状の低密度ポリエチレン(LLDPE)である。LDPEの場合、その密度は、通常0.91〜0.93g/cm程度であり、またそのメルトインデックス(MI、190℃、2.16kg荷重)は、0.1〜20g/10分であり、好ましくは、0.5〜10g/10分である。LLDPEの場合、その密度は、通常0.91〜0.93g/cm程度であり、またそのメルトインデックス(MI、190℃、2.16kg荷重)は、0.1〜25g/10分であり、好ましくは、0.5〜10g/10分である。低密度ポリエチレンの配合割合は、重量平均分子量が7×10以上超高分子量ポリエチレンが1〜69重量%であり、高密度ポリエチレンが98〜1重量%であり、低密度ポリエチレンが1〜30重量%であるのが好ましい。
【0017】
本発明において使用され得る低分子量ポリエチレンとしては、分子量が1000〜4000、融点(JIS K7121により測定したDSCピーク温度)が80〜130℃のエチレン低重合体であり、密度が0.92〜0.97g/cmのポリエチレンワックスが好ましい。低分子量ポリエチレンは、ポリオレフィン(A)又はポリオレフィン組成物(B)の1重量%以上、好ましくは10〜70重量%配合することができる。
また、本発明において使用され得る低温でのシャットダウン機能を付与できる直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体としては、メタロセン触媒のようなシングルサイト触媒を用いて重合された直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体例えば、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等を挙げることができる。該エチレン−α−オレフィン共重合体の融点(JIS K7121により測定したDSCピーク温度)は、95〜125℃、好ましくは100℃〜120℃である。95℃未満では高温条件での電池特性を著しく悪化させてしまい、125℃を超えると好ましい温度でシャットダウン機能を発揮しなくなるため、好ましくない。該エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mn(Q値)は、1.5〜3.0、好ましくは1.5〜2.5であることが望ましい。このエチレン−α−オレフィン共重合体をポリエチレンまたはそのポリエチレン組成物に加えることにより、ポリエチレン微多孔膜をリチウム電池等のセパレーターとして用い、電極が短絡して電池内部の温度が上昇した時、低温でシャットダウンする機能を付与される。さらに、シャットダウン時の膜抵抗の温度依存性が飛躍的に改善される、さらにシャットダウン温度を自由にコントロールできる。エチレン−α−オレフィン共重合体の量は、ポリエチレン又はポリエチレン組成物に対して2〜80重量%、好ましくは5〜50重量%である。2重量%未満では低温かつ急速なシャットダウン効果が得られず、80重量%を超えると得られたポリエチレン微多孔膜の強度が著しく損なわれる。
【0018】
さらに、本発明でポリオレフィンとしてポリエチレンを用いる場合は、電解液の保持性の向上を目的として微多孔膜の表面に微視的凹凸が生じさせるためにポリプロピレンを配合することができる。ポリプロピレンとしては、重量平均分子量が1.0×10以上、好ましくは3.0×10〜1.0×10のホモポリプロピレン、エチレン含有量が1.0重量%以下のエチレンプロピレンランダムコポリマー、エチレンプロピレンブロックコポリマー等を用いることができる。重量平均分子量が1.0×10未満では、得られるポリエチレン微多孔膜の開孔が困難になり、エチレン含有量が1.0重量%を超えるとポリオレフィンの結晶性が低くなり、ポリエチレン微多孔膜の開孔が困難になる。
【0019】
ポリプロピレンの量は、ポリエチレン又はポリエチレン組成物の5〜30重量%、好ましくは、5〜25重量%である。5重量%未満では、均一に多数分散した凹凸を形成できず、電解液保持性向上の効果はみられない。また、30重量%を超えるとポリエチレン微多孔膜の強度が著しく低下し、さらに多くなるとシート成形時にポリエチレンとポリプロピレンが相分離してしまい、成形が困難になる。
【0020】
なお、上述したようなポリオレフィン又はポリオレフィン組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填材などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0021】
2.ポリオレフィン微多孔膜
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、膜中の微多孔の平均孔径が膜厚の中心方向にむかって、少なくとも一方の表面から膜厚の中心方向に向かって、徐々に小さくなっていることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜であり、透過性の高いことを特徴とする。例えば、本発明のポリオレフィン微多孔膜の断面を透過型電子顕微鏡によって観察した写真である図1(倍率は2500倍)では、膜表面側に大孔径の孔径を有する孔が存在し、膜厚の中心方向には、膜表面より平均孔径の小さい層が存在していることを示している。
【0022】
本発明のポリオレフィン微多孔膜内の貫通孔の形状は、大孔径の開口部を有し、中心部が小さくなっている鼓型、または大孔径の開口部を有し徐々に反対側に向かって、孔径が小さくなっている杯型がある。
【0023】
したがって、本発明のポリオレフィン微多孔膜は、一部に孔径の小さい層を有していることにより、微多孔膜の強度が維持され、かつ膜表面部に大孔径の開口部を有することにより高透過性を備えている新規な構造のポリオレフィン微多孔膜である。
【0024】
すなわち、膜厚をdとした場合に、一方の表面からd/16までの距離にある孔の平均孔径(a)、その他の部分の孔の平均孔径(b)としては、(a)は0.05〜50μm、好ましくは1〜30μmであり、(b)は0.01〜30μm、好ましくは0.03〜2μmであり、かつ(b)<(a)である。
【0025】
このような構造を有する本発明のポリオレフィン微多孔膜は、膜全体の空孔率が35〜95%、好ましくは45〜80%であり、膜の透気度が5〜500sec/100cc、好ましくは5〜250sec/100ccである。
【0026】
3.製造方法
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、上述のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物と溶媒の溶液から押出して得られたゲル状シートを、延伸した後、熱溶剤と接触させ、次いで溶媒を除去、乾燥する方法により得られる。
【0027】
(1)微多孔膜の製造方法
本発明の微多孔膜の基礎となる製造方法は、上述のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物を溶媒に加熱溶解することにより、溶液を調製する。この溶媒としては、ノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、あるいは沸点がこれらに対応する鉱油留分などを用いることができる。またこの溶媒の粘度としては、25℃における粘度が30〜500cSt、特に50〜200cStであるのが好ましい。25℃における粘度が30cSt未満では、不均一吐出を生じ、混練が困難であり、一方500cStを超えると、後工程での脱溶媒が容易でなくなる。
【0028】
加熱溶解は、ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物を溶媒中で完全に溶解する温度で攪拌しながら行うか、又は押出機中で均一混合して溶解する方法で行う。溶媒中で攪拌しながら溶解する場合は、温度は使用する重合体及び溶媒により異なるが、例えばポリエチレン組成物の場合には140〜250℃の範囲である。ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物の高濃度溶液から微多孔膜を製造する場合は、押出機中で溶解するのが好ましい。
【0029】
押出機中で溶解する場合は、まず押出機に上述したポリオレフィン又はポリオレフィン組成物を供給し、溶融する。溶融温度は、使用するポリオレフィンの種類によって異なるが、ポリオレフィンの融点+30〜100℃が好ましい。なお、融点については後述する。例えば、ポリエチレンの場合は160〜230℃、特に170〜200℃であるのが好ましく、ポリプロピレンの場合は190〜270℃、特に190〜250℃であるのが好ましい。次に、この溶融状態のポリオレフィン又はポリオレフィン組成物に対して、液状の溶媒を押出機の途中から供給する。
【0030】
ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物と溶媒との配合割合は、ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物と溶媒の合計を100重量%として、ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物が10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%であり、溶媒が90〜50重量%、好ましくは90〜70重量%である。ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物が10重量%未満では(溶媒が90重量%を超えると)、シート状に成形する際に、ダイス出口で、スウエルやネックインが大きくシートの成形性、自己支持性が困難となる。一方、ポリオレフィン又はポリオレフィン組成物が50重量%を超えると(溶媒が50重量%未満では)、厚み方向の収縮が大きくなり、空孔率が低下し、大孔径を有する微多孔膜が得られず、また成形加工性も低下する。この範囲において濃度を変えることにより、膜の透過性をコントロールすることができる。
【0031】
次に、このようにして溶融混練したポリオレフィン又はポリオレフィン組成物の加熱溶液を直接に、あるいはさらに別の押出機を介して、ダイ等から最終製品の膜厚が5〜250μmになるように押し出して成形する。
【0032】
ダイは、通常長方形の口金形状をしたシートダイが用いられるが、2重円筒状の中空系ダイ、インフレーションダイ等も用いることができる。シートダイを用いた場合のダイギャップは通常0.1〜5mmであり、押し出し成形時には140〜250℃に加熱する。この際押し出し速度は、通常20〜30cm/分ないし15m/分である。
【0033】
ダイから押し出された溶液は、冷却することによりゲル状成形物に形成される。冷却は、ダイを冷却するか、ゲル状シートを冷却する方法による。冷却は少なくとも50℃/分の速度で90℃以下まで、好ましくは80〜30℃まで行う。ゲル状シートの冷却方法としては、冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法などを用いることができるが、冷却ロールを用いる方法が好ましい。
【0034】
冷却速度が遅いと、得られるゲル状成形物の高次構造が粗くなり、それを形成する疑似細胞単位も大きなものとなるが、冷却速度が速いと、密な細胞単位となる。冷却速度が50℃/分未満では、ゲル構造が独立泡に近くなり、さらに結晶化度も上昇するため溶媒が除去されにくくなる。
【0035】
冷却ロールの温度は、30℃〜ポリオレフィン結晶化温度、特に40〜90℃にするのが好ましい。冷却ロール温度が高すぎると、ゲル状シートは徐冷されてゲル構造を形成するポリオレフィンのラメラ構造を構成する壁が厚くなり、微多孔は独立泡になり易いため、脱溶媒性が低下し透過性が低下する。冷却ロール温度が低すぎると、ゲル状シートは急冷されてゲル構造が緻密になり過ぎるため、孔径が小さくなり、透過性が低下する。引き取り速度は、1〜20m/分、特に3〜10m/分が好ましい。引き取り速度が速過ぎるとシートがネックインを起こし、延伸されやすいため、遅い方が好ましい。
【0036】
次にこのゲル状成形物を、延伸する。延伸は、ゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、圧延若しくはこれらの方法の組み合わせによって所定の倍率で行う。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよい。また、二軸延伸の場合、縦横同時延伸または逐次延伸のいずれでもよいが、特に同時二軸延伸が好ましい。
【0037】
延伸温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度以上結晶融点+10℃以下、好ましくは結晶分散温度から結晶融点未満である。例えば、超高分子量ポリエチレン含有ポリエチレン組成物の場合は90〜140℃で、より好ましくは、100〜130℃の範囲である。延伸温度が融点+10℃を超える場合は、樹脂の溶融により延伸による分子鎖の配向ができない。また、延伸温度が結晶分散温度未満では、樹脂の軟化が不十分で、延伸において破膜し易く、延伸倍率の制御ができない。
【0038】
なお、結晶分散温度とは、ASTM D4065に基づき、動的粘弾性の温度特性測定により求められた温度をいい、融点は、JIS K7121によりDSCにて測定したピーク温度をいう(以下同じ。)。
【0039】
延伸倍率は、特に制約はないが、面倍率で2〜400倍が好ましく、より好ましくは15〜400倍である。
【0040】
さらに、延伸された成形物は、後述の熱溶剤接触処理工程を施した後に溶剤で洗浄し残留する溶媒を除去する。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。これらの溶剤はポリオレフィン組成物の溶解に用いた溶媒に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。洗浄方法は、溶剤に浸漬し抽出する方法、溶剤をシャワーする方法、またはこれらの組合せによる方法などにより行うことができる。
【0041】
上述のような洗浄は、成形物中の残留溶媒が1重量%未満になるまで行う。その後洗浄溶剤を乾燥するが、洗浄溶剤の乾燥方法は加熱乾燥、風乾などの方法で行うことができる。
【0042】
(2)熱溶剤接触処理工程
本発明の新規な構造を有するポリオレフィン微多孔膜は、上記の、熱溶剤接触処理工程の追加された微多孔膜の製造工程により製造できる。
【0043】
熱溶剤処理工程は、上記の溶媒除去プロセスの前に追加する。また、成形物に直接的に高温の溶剤と接触させる方法(以下、直接法という。)の他、成形物を溶剤と接触させた後に加熱する方法(以下、間接法という。)も採用しうる。すなわち、最終的に高温の溶剤と接触できれば、その手法は問わない。
【0044】
熱溶剤接触処理は、直接法としては、成形物を加熱溶剤中に浸漬する方法、加熱溶剤を成形物にスプレーする方法、加熱溶剤を成形物に塗布する方法等があるが、より均一な処理方法としては浸漬する方法が好ましい。また、間接法としては、成形物を溶剤に浸漬、もしくは塗布、もしくはスプレーした後に熱ロール、オーブン、熱溶剤浸漬等により、熱溶剤処理する方法が挙げられる。
【0045】
溶剤の温度は、前記ポリオレフィン(A)又はポリオレフィン組成物の結晶分散温度から融点+10℃の範囲の温度であり、ポリオレフィンがポリエチレンの場合は、110〜130℃が好ましく、より好ましくは115〜125℃である。結晶分散温度未満であると熱溶剤処理の効果はほとんどなく、透過性が向上しないし、融点+10℃を超えると微多孔膜の強度が急激に低下したり、微多孔膜が破断するので好ましくない。
【0046】
また、接触処理時間は、0.1秒〜10分が好ましく、5秒〜1分であることが特に好ましい。0.1秒未満であると熱溶剤処理の効果はほとんどなく、透過性が向上しないし、10分を超えると微多孔膜の強度が急激に低下したり、微多孔膜が破断するので好ましくない。
【0047】
熱溶剤処理で用いることのできる溶剤としては、上記ポリオレフィン溶液を製造する際に用いた溶媒を用いることができるが、溶剤の種類はポリオレフィン溶液を製造する際に用いたものと同一であってもよいし、異なってもよい。これらの溶剤のなかでは、流動パラフィンが最も好ましい。
【0048】
以上のようにして製造され、上記のような構造を有する本発明のポリオレフィン微多孔膜は、透気度が5〜500sec/100cc、好ましくは5〜250秒/100cc、空孔率が35〜95%、好ましくは45〜80%であり、少なくとも一方の表面の平均孔径が0.05〜50μmの高透過性膜である。
【0049】
さらに、本発明においては、工程を変えることなく、熱溶剤処理工程における温度と処理時間を変化させるだけで、膜の孔径や空孔率を変化させることができるという利点を有している。(後述の実施例5参照。)
【0050】
なお、得られたポリエチレン微多孔膜は、必要に応じてさらに、プラズマ照射、界面活性剤含浸、表面グラフト等の親水化処理などの表面修飾を施すことができる。
【実施例】
【0051】
以下に本発明について実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例における試験方法は次の通りである。
【0052】
(1)重量平均分子量及び分子量分布:ウォーターズ(株)製のGPC装置を用い、カラムに東ソー(株)製GMH−6、溶媒にo−ジクロロベンゼンを使用し、温度135℃、流量1.0ml/分にてゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した。
【0053】
(2)膜厚:触針式膜厚計ミツトヨライトマチックを用いて測定した。
【0054】
(3)透気度:JIS P8117に準拠して測定した
【0055】
(4)空孔率:重量法により測定した。
【0056】
(5)引張強度:幅10mmの短冊状試験片の引張破断強度をASTM D822に準拠して測定した。
【0057】
(6)平均孔径:微多孔膜の断面を透過型電子顕微鏡写真により100個の孔の平均孔径を求めた。
【0058】
(7)シャットダウン温度:所定温度に加熱することによって、透気度が10万秒/100cc以上となる温度を測定した(実施例7)。
【0059】
実施例1
重量平均分子量が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.0×10の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%からなり、Mw/Mn=14のポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)にフェノール系酸化防止剤をポリエチレン組成物100重量部当たり0.08重量部、リン系酸化防止剤をポリエチレン組成物100重量部当たり0.08重量部加えたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物20重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプセグメント)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン80重量部を供給し、200℃、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製し、押出機の先端に設置されたTダイから190℃で押出し、ダイ−ロール間隔を20mm、冷却ロールで引き取りながらゲル状シートを成形した。続いて、得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を10cm四方の金枠に固定し、118℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで2分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚は、30μm、空孔率は58%、透気度は200秒、TD方向の引張強度は650kgf/cmであった。また、微多孔膜の断面の透過型電子顕微鏡写真は図1と同様の構造を示し、膜中心部の平均孔径は、膜表面の平均孔径よりも小さかった。結果を表1に示す。
【0060】
比較例1
市販のヘキスト社製ポリエチレン微多孔膜の物性を表1に示す。微多孔膜の表面の走査型電子顕微鏡写真と断面の透過型電子顕微鏡写真を見ると、膜全体にわたって孔径は均一であった。
【0061】
【表1】

[表面−d/16]:膜厚をdとしたときに、一方の表面からの距離d/16の間にある孔の平均孔径。
[裏面−d/16]:膜厚をdとしたときに、他方の表面からの距離d/16の間にある孔の平均孔径。
(ただし、[表面−d/16]が大きくなるように表示した。)
[中間部] : [表面−d/16]、[裏面−d/16]以外の部分にある孔の平均孔径。
【0062】
実施例2
重量平均分子量が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.0×10の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%からなり、Mw/Mn=14のポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)にフェノール系酸化防止剤をポリエチレン組成物100重量部当たり0.08重量部、リン系酸化防止剤をポリエチレン組成物100重量部当たり0.08重量部加えたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物20重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプセグメント)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン80重量部を供給し、200℃、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製し、押出機の先端に設置されたTダイから190℃で押出し、ダイ−ロール間隔を20mm、冷却ロールで引き取りながらゲル状シートを成形した。続いて、得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。
【0063】
得られた延伸膜の両端を保持しながら、118℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで2分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚は、30μm、空孔率は58%、透気度は200秒、TD方向の引張強度は、650kgf/cmであった。また、微多孔膜の表面の走査型電子顕微鏡写真と断面の透過型電子顕微鏡写真(図1)より求めた微多孔膜の各層の孔径を表2に示す。
【0064】
実施例3
実施例2において、熱溶剤処理を118℃で2秒間行う以外は、実施例2と同様にしてポリエチレン微多孔膜を得た。その結果を表2に示す。
【0065】
実施例4
重量平均分子量が2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.9×10の高密度ポリエチレン(HDPE)66.7重量%及びメルトインデックスが2.0(190℃、2.16kg)の低密度ポリエチレン13.3重量%からなるポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)に酸化防止剤をポリエチレン組成物100重量部当たり0.375重量部を加えたポリエチレン組成物を得た。得られたポリエチレン組成物15重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン85重量部を供給し、200℃、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製し、押出機の先端に設置されたTダイから最終製品が30μmになるように押し出し、50℃に温調された冷却ロールで引き取りながら、ゲル状シートを成形した。続いて、得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を10cm四方の金枠に固定し、115℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで1分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。
【0066】
実施例5
重量平均分子量が2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%と重量平均分子量が3.3×10の高密度ポリエチレン(HDPE)80重量%のポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)100重量部に酸化防止剤0.375重量部を加えたポリエチレン組成物を得た。このポリエチレン組成物30重量部とポリエチレンワックス(三井ハイワックス−100P;融点115℃、分子量1000;三井化学製)5重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入した。また、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70重量部を供給し、190℃、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製し、押出機の先端に設置されたTダイから最終製品が30μmになるように押し出し、50℃に温調された冷却ロールで引き取りながら、ゲル状シートを成形した。得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を10cm四方の金枠に固定し、115℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで1分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。
【0067】
実施例6
重量平均分子量が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20重量%、3.5×10の高密度ポリエチレン(HDPE)60重量%及び重量平均分子量が5.1×10のポリプロピレンが20重量%からなるポリオレフィン組成物(融点165℃、結晶分散温度90℃)100重量部に酸化防止剤0.375重量部を加えたポリオレフィン組成物を得た。このポリオレフィン組成物30重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入した。またこの二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70重量部を供給し、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリオレフィン溶液を調製した。続いて、この押出機の先端に設置されたTダイから190℃で押し出し、冷却ロールで引取りながらゲル状シートを成形した。得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を10cm四方の金枠に固定し、115℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで1分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。
【0068】
実施例7
重量平均分子量が2.5×10の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)17.6重量%と3.3×10の高密度ポリエチレン(HDPE)70.8重量%とシングルサイト触媒を用いて製造したエチレン−α−オレフィン共重合体(密度0.915、融点108℃のエチレン−オクテン−1共重合体、アフィニティFM1570、ザ・ダウケミカル社製)11.6重量%のポリエチレン組成物(融点135℃、結晶分散温度90℃)100重量部に酸化防止剤0.375重量部を加えたポリエチレン組成物を得た。このポリエチレン組成物30重量部を二軸押出機(58mmφ、L/D=42、強混練タイプ)に投入し、この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン70重量部を供給し、200rpmで溶融混練して、押出機中にてポリエチレン溶液を調製した。続いて、この押出機の先端に設置されたTダイから190℃で押し出し、冷却ロールで引取りながらゲル状シートを成形した。得られたシートを、115℃で5×5倍に二軸延伸を行い、延伸膜を得た。得られた延伸膜を10cm四方の金枠に固定し、115℃に加熱した流動パラフィン浴に10秒間浸漬した後、大過剰のヘキサン浴に浸漬し流動パラフィンを洗い落とし、室温で乾燥した後、115℃のエアーオーブンで1分間乾燥した。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。なお、シャットダウン温度を測定したところ、105℃であり、電池セパレーターとして用いた場合の安全性が向上していることがわかった。
【0069】
比較例2
実施例2において、熱溶剤処理工程を行わない以外は、実施例2と同様の方法でポリエチレン微多孔膜を得た。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。
【0070】
比較例3
実施例2において、延伸と熱溶剤処理工程を行わない以外は、実施例2と同様の方法でポリエチレン微多孔膜を得た。得られたポリエチレン微多孔膜の膜厚、空孔率、透気度、引張強度、各層の孔径を表2に示す。
【0071】
【表2】

樹脂組成 (A):2.5×10UHMWPE(30wt%)/6.8×10HDPE(70wt%)
(B):2.0×10UHMWPE(20wt%)/3.9×10HDPE(66.7 wt%)/LDPE(13.3wt%)
(C):2.0×10UHMWPE(19wt%)/3.3×10HDPE(76wt%)//PEワックス(5wt%)
(D):2.0×10UHMWPE(20wt%)/3.3×10HDPE(60wt%)/PP(20wt%)
(E):2.0×10UHMWPE(17.6wt%)/3.3×10HDPE(70.8wt%)/エチレン−オクテン−1共重合体(11.6wt%)
平均孔径 [表面−d/16]:膜厚をdとしたときに、一方の表面からの距離d/16の間にある孔の平均孔径。
[裏面−d/16]:膜厚をdとしたときに、他方の表面からの距離d/16の間にある孔の平均孔径。
(ただし、[表面−d/16]の値が[裏面−d/16]より大きくなるように表示した。)
[中間部] : [表面−d/16]、[裏面−d/16]以外の部分にある平均孔径。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上詳述したように本発明のポリオレフィン微多孔膜は、少なくとも一方の膜表面の孔径が大きく、膜の厚さ方向の内部に表面層より小さい孔径の層を有する、孔径が膜の厚さ方向に減少するという新規な構造の微多孔膜であり、高透過性微多孔膜で、電池用セパレータ、液体フィルター等として好適に用いることができる。さらに、工程を変化させることなく、膜に厚さ方向の内部の孔径が大きい構造を有する微多孔膜が得られる点でも本発明の製造方法は有効である。
【符号の説明】
【0073】
1 微多孔膜表面
2,2’ 孔径の大きい層
3 孔径の小さい層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量5×10以上のポリオレフィン(A)又は当該ポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物(B)からなるポリオレフィン微多孔膜であって、孔の平均孔径が少なくとも一方の膜表面から膜厚の中心方向にむかって、徐々に小さくなっているとともに、引張強度が650kg/cm以上であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
微多孔膜内の貫通孔の形状が、大孔径の開口部を有し、中心部が小さくなっている鼓型であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
微多孔膜内の貫通孔の形状が、大孔径の開口部を有し徐々に反対側に向かって、孔径が小さくなっている杯型であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
重量平均分子量5×10以上のポリオレフィン(A)又は当該ポリオレフィンを含有するポリオレフィン組成物(B)10〜50重量%と、溶媒50〜90重量%からなる溶液を押出して得られるゲル状成形物を延伸し、次いで溶媒を除去することによってポリオレフィン微多孔膜を製造する方法において、熱溶剤処理工程を、溶媒を除去する前に110〜130℃の温度範囲で行うことを特徴とするポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いた電池用セパレータ。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた電池。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いたフィルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−59436(P2010−59436A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276549(P2009−276549)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【分割の表示】特願2000−574599(P2000−574599)の分割
【原出願日】平成11年9月29日(1999.9.29)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】