説明

ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法

【課題】環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、透明性に優れるフィルムが得られるポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、空冷によって得られるフロストラインから重力方向に0〜200mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂からなるフィルムは、強度や衛生性に優れることから、食品や日用雑貨などの包装用フィルムとして使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなポリオレフィン系樹脂からなるフィルムの製造方法としては、環状ダイからポリオレフィン系樹脂を上向き(反重力方向)に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを上向きに引き取りながら空冷する装置、いわゆる上向き空冷式インフレーション成形装置により成形する方法(例えば、特許文献2参照。)、上部に設けられた押出機に接続された環状ダイからポリオレフィン系樹脂を下向き(重力方向)に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを下向きに引き取りながら水冷する装置、いわゆる水冷式インフレーション成形装置により、成形する方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−237187号公報
【特許文献2】特開平6−114929号公報
【特許文献3】特開平9−109274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、空冷式インフレーション成形装置による成形方法は、得られるフィルムの透明性において、必ずしも満足しうるものではなかった。また、水冷式インフレーション成形装置による成形方法は、空冷式インフレーション成形装置による成形方法よりも、得られるフィルムの透明性において好ましいものであるが、押出機や環状ダイ等を上部に設ける装置であることから、成形装置のコストにおいては、必ずしも満足しうるものではなかった。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、透明性に優れるフィルムが得られるポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、透明性に優れるフィルムが得られるポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、空冷によって得られるフロストラインから重力方向に0〜200mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法にかかるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取る方法としては、公知の方法、例えば、公知の空冷式インフレーション成形装置を用いる方法があげられる。具体的には、環状ダイを取り付けた押出機によりポリオレフィン系樹脂を溶融状態で環状ダイから筒状に押出して筒状フィルムとなし、次に、該筒状フィルムの内部に空気などの流体を導入して膨張させながら、エアリング装置により該筒状フィルムの外面に空気を吹き付け、ガイド、ピンチロール、巻取機などにより構成される引取装置によって該筒状フィルムを連続的に引き取る方法があげられる。
【0009】
本発明では、反重力方向に溶融押出しされた筒状フィルムの外周面に、水を含有する吸水性材料を接触させて水で冷却する。このような方法に用いる装置としては、水を含有する吸水性材料を有し、該吸水性材料から筒状フィルムの外周面に水を供給可能な水供給手段と、筒状フィルムの外周面から水を回収可能な水回収手段とを有する装置が好ましく使用される。以下、図1を参照して、該装置の一態様につき説明する。
【0010】
水供給手段は、水供給管4、水供給リング5、水供給用接触リング6および水供給ポンプ(図示しない)を備えている。水供給リング5は、環状の管で構成され且つフィルム成形中に筒状フィルムが環の内側を非接触で通過可能な大きさであり、該管内には、水供給管4を介して水供給ポンプから、流量を調整可能に水が供給される。水供給リング5は、環の円周方向略内側に複数の水供給口を有し、水供給ポンプから供給された水は、該水供給口から環状の水供給用接触リング6に供給される。該水供給用接触リング6は、少なくともその表面部材は吸水性材料からなり、水を含有する該吸水性材料が筒状フィルムの外周面に接触して、該筒状フィルムの外周面に水を供給する。水供給用接触リング6の少なくともその表面部材を構成する吸水性材料は、特に限定されるものではなく、水を吸収し放出するものであればよい。さらに吸水性材料は、筒状フィルムが振動した際にも筒状フィルムに接触できるように、柔軟性のある材料であることが好ましい。このような吸水性材料としては、布、不織布、綿、フェルト、キルト、吸水性スポンジ、吸水性シートなどがあげられる。中でも不織布シートや吸水性スポンジや吸水性シートが好ましく使用される。不織布シートを構成する材料としては、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。中でもポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂が好ましく使用される。吸水性スポンジや吸水性シートを構成する材料としては、例えばポリアクリル酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、デンプン系樹脂などの吸水性樹脂が挙げられる。具体的な例としては、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリル酸エチルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−メタクリル酸メチルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−アクリロニトリルグラフト共重合体のケン化物、デンプン−アクリルアミドグラフト共重合体のケン化物、デンプン−アクリロニトル−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸グラフト共重合体のケン化物、アクリル酸(塩)重合体、アクリル酸で架橋されたポリエチレンオキシド、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物、ポリビニルアルコール−無水マレイン酸反応物の架橋物等が挙げられる。中でもポリアクリル酸系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂からなる吸水性スポンジや吸水性シートが好ましく使用される。筒状フィルムとの滑り性がよく、優れた成形加工安定性を得るには、水を吸収・放出しやすい吸水性材料を用いることがより好ましい。
【0011】
水供給手段においては、水供給リング5を用いずに、水供給ポンプから水供給管4を介して直接水供給用接触リング6に水を供給してもよい。
【0012】
水回収手段としては、水供給用接触リング6よりも反重力方向に設置される下流部水回収リング7、下流部水排出管8および吸引ポンプ(図示しない)を備えている。下流部水回収リング7は環状であり、少なくともその表面部材は吸水性材料からなる。このような下流部水回収リング7を、水供給用接触リング6よりも反重力方向に所定の距離離れた筒状フィルムの外周面に、好ましくは、水供給用接触リング6よりも反重力方向に10〜500mmの位置の筒状フィルムの外周面に接触させて、該筒状フィルムの外周面に残存する水を回収する。下流部水回収リング7の少なくともその表面部材を構成する吸水性材料としては、前記水供給用接触リング6に用いられる吸水性材料と同様の材料を用いることができる。下流部水回収リング7により回収された水は、下流部水排出管8を介して下流部水回収リング7に接続された吸引ポンプによって、下流部水回収リング7から除去される。
【0013】
水供給用接触リング6から水が垂れるときには、環状である上流部水回収リング9を、水供給用接触リング6よりも重力方向の位置に設け、過剰な水を回収してもよい。上流部水回収リング9は、筒状フィルムとは接触しないように設置する。上流部水回収リング9により、回収された水は、上流部水排出管10を介して上流部水回収リング9に接続された吸引ポンプによって、上流部水回収リング9から除去される。上流部水回収リング9の表面部材は、吸水性材料からなることが、水の回収効率向上の点から好ましい。上流部水回収リング9だけでは、水の回収が困難である場合には、さらに前記上流部水回収リングより重力方向に、V字型またはU字型の溝を有する回収リングを設けてもよい。また、V字型またはU字型の溝を有する回収リングを、前記上流部水回収リングにかえて使用することも可能である。
【0014】
図1に示す装置は、水供給用接触リング6より重量方向に位置する水回収手段、すなわち上流部水回収リング9および上流部水排出管10と、水供給用接触リング6より反重量方向に位置する水回収手段、すなわち下流部水回収リング7および下流部水排出管8を備える。本発明で用いる装置は、このように水供給用接触リング6より重力方向と、反重力方向の両方向にそれぞれ水回収手段を備えていることが好ましいが、いずれか一方のみに水回収手段を備えていてもよい。
【0015】
本発明においては、空冷によって得られるフロストライン(以下、空冷フロストラインとする。)から重力方向に0〜200mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却する。フィルムの透明性を高める観点から、空冷フロストラインから重力方向に0〜50mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することが好ましい。また、フィルムの厚みむら(偏肉)を低減する観点から、空冷フロストラインから重力方向に0〜20mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することが好ましい。さらには、0〜10mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することが好ましい。ここで空冷フロストラインとは、当該ポリオレフィン系樹脂フィルムの成形において、筒状フィルムの水冷を行わずに、筒状フィルムが成形される雰囲気による冷却や筒状フィルムの外周面への空気の吹き付けによる冷却等の空冷(ただし、水冷を行わなかった場合と水冷を行わなかった場合とで、筒状フィルムの空冷の条件を変更しない。)によって、筒状フィルムが固化する位置である。
【0016】
筒状フィルムの外周面に接触させる、水を含有する吸水性材料の幅は、フィルムの透明性を高める観点から、好ましくは5mm以上であり、より好ましくは10mm以上である。シワを低減するなど、フィルムの外観を高める観点から、好ましくは100mm以下であり、より好ましくは80mm以下であり、さらに好ましくは50mm以下である。
【0017】
本発明の成形条件について、水冷装置により筒状フィルムに供給する水の温度は、通常5〜40℃であり、水の流量は、ポリオレフィンの押出量や、成形温度、成形加工機のサイズに応じて、満足できる透明性が得られるよう、適宜調整される。また、成形温度(押出温度)は、通常130〜250℃であり、ブローアップ比は、通常1〜5である。また、引取速度は、通常5〜150m/分であり、空冷フロストラインは、環状ダイから反重力方向に、通常100〜1000mmである。
【0018】
本発明により得られるフィルムの厚みは、通常5〜200μmであり、好ましくは10〜150μmであり、より好ましくは20〜100μmである。
【0019】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、オレフィンに基づく単量体単位を50重量%以上有する樹脂であり、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂などがあげられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂が好適に用いられ、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体などをあげることができる。これらの中でも、エチレン−α−オレフィン共重合体や高密度ポリエチレンが好適に用いられる。
【0020】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体の炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0021】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、好ましくは、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体である。
【0022】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常50〜99重量%である。α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体の全重量(100重量%)に対して、通常1〜50重量%である。
【0023】
JIS K7210に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される上記のエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常0.01〜100g/10分である。押出成形性を高める観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、より好ましくは0.07g/10分以上である。また、フィルムの強度を高める観点から、好ましくは10g/10分以下であり、より好ましくは7.0g/10分以下であり、さらに好ましくは5.0g/10分以下である。
【0024】
上記のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、通常、890〜970kg/m3である。フィルムの剛性を高める観点から、好ましくは910kg/m3以上であり、より好ましくは920kg/m3以上である。またフィルムの透明性を高める観点から好ましくは945kg/m3以下であり、さらに好ましくは935kg/m3以下である。なお、該密度は、JIS K6760に記載のアニーリングを行った試料を用いて、JIS K7112に規定された方法に従って測定される。
【0025】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂の製造方法としては、公知のラジカル重合触媒やイオン重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法があげられる。公知の触媒としては、例えば、過酸化物触媒、チーグラー−ナッタ系触媒、メタロセン系触媒等があげられ、公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、高圧ラジカル重合法、気相重合法等があげられる。
【0026】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、メタロセン系触媒を用いた気相重合法により製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。該エチレン−α−オレフィン共重合体としては、具体的には、特開平9−183816号公報に記載されているエチレン−α−オレフィン共重合体を挙げることができる。
【0027】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、酸化防止剤、抗ブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、加工性改良剤等の添加剤;他の樹脂などを含有していてもよく、該添加剤や他の樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記の酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤等があげられる。それぞれ単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0029】
該フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名Irganox1076、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(商品名Irganox1010、チバスペシャルティケミカルズ社製)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名Irganox3114、チバスペシャルティケミカルズ社製)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン(商品名スミライザー GA80、住友化学社製)等があげられる。
【0030】
該リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト(商品名アデカスタブPEP8、ADEKA社製)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名Irgafos168、チバスペシャルティケミカルズ社製)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジフォスフォナイト(商品名Sandostab P−EPQ、クラリアントシャパン社製)、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名スミライザーGP、住友化学社製)等があげられる。
【0031】
上記の抗ブロッキング剤としては、無機系抗ブロッキング剤、有機系抗ブロッキング剤が挙げられる。無機系抗ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、タルク、アルミノ珪酸塩、カオリン、炭酸カルシウム等があげられる。有機系抗ブロッキング剤としては、例えば、エポスタ-MA(株式会社日本触媒製)があげられる。
【0032】
上記の滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等があげられる。
【0033】
上記の帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、炭素原子数8〜22の脂肪酸のアルキルジアルカノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、アルキルジエタノールアミン等があげられる。
【0034】
上記の顔料としては、例えば、白色顔料、カーボンブラック等があげられる。
【0035】
上記の他の樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エラストマー等の熱可塑性樹脂があげられる。
【0036】
上記の添加剤や他の樹脂などと、ポリオレフィン系樹脂との配合物は、公知の方法で溶融混練することにより、例えばタンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合した後、更に単軸押出機、多軸押出機で溶融混練造粒する、またはニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練することにより製造される。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0038】
I.ポリオレフィン系樹脂の物性
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で測定した。
【0039】
(2)密度(単位:Kg/m3
JIS K7112のうち、A法に規定された方法に従って、測定した。なお、試料には、JIS K6760に記載のアニーリングを行った。
【0040】
II.インフレーションフィルムの物性
(1)HAZE(単位:%)
ASTM D1003に規定された方法に従った。この値が小さいほど透明性が優れることを示す。
【0041】
(2)Gloss(単位:%)
JIS Z8741に規定された45°鏡面光沢測定方法に従った。この値が大きいほど光沢が良好であることを示す。
【0042】
実施例1
50mmφ押出機、環状ダイ(リップ径125mm、リップ開度2.0mm)、エアリング装置および引取装置を有するプラコー社製上向き空冷式インフレーション成形装置に、図1に示すような水冷装置、すなわち、水供給管、水供給リングおよび水供給用接触リングを有する水供給手段と、下流部水回収リング、下流部水排出管、上流部水回収リングおよび上流部水排出管を有する水除去手段とを有する水冷装置を取り付けた。水供給用接触リングには、吸水性材料として幅30mmのポリエステル系の不織布シート(ニトムズ社製強力結露吸水テープ30シルバーE101)を巻きつけて使用した。
【0043】
メタロセン触媒により製造されたエチレン・1−ヘキセン共重合体(住友化学(株)販売、日本エボリュー(株)製造、スミカセンE FV203(以下、PE−1とする。))を、水供給用接触リング、下流部水回収リングおよび上流部水回収リングが筒状フィルムから離れた状態で、加工温度170℃、押出量25kg/時間、ブローアップ比1.8、引取速度12m/分の条件で、空冷フロストラインが環状ダイから反重力方向に250mmの位置になるようにして厚み50μmのインフレーションフィルムの成形を開始した。続いて、水供給管から常温の水を3.5l/分の流量で供給し、30mmの幅を有する水供給用接触リングを空冷フロストラインから重力方向に5〜35mmの位置で筒状フィルムに接触させ、筒状フィルムが水冷されるようにした。上流部水回収リングの上端(反重力方向にある端部)を水供給用接触リングの下端(重力方向にある端部)から重力方向に5mmに位置させ、水供給用接触リングからオーバーフローした過剰の水を回収し、下流部水回収リングの下端(重力方向にある端部)を空冷フロストラインから反重力方向に350mmの位置で筒状フィルムに付着した過剰の水を回収した。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例2
PE−1に替えて、チーグラー触媒により製造されたエチレン・1−ヘキセン共重合体(住友化学(株)製、スミカセンα CS8051(以下、PE−2とする。))を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例3
PE−1に替えて、チーグラー触媒により製造されたエチレン・1−ブテン共重合体(住友化学(株)製、スミカセンL CL1079(以下、PE−3とする。))を用い、加工温度を190℃とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例4
PE−1に替えて、チーグラー触媒により製造されたエチレン・1−ブテン共重合体(住友化学(株)製、スミカセンL FS150C(以下、PE−4とする。))を用い、加工温度を190℃とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
水冷装置を使用しなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0048】
比較例2
水冷装置を使用しなかった以外は、実施例2と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0049】
比較例3
水冷装置を使用しなかった以外は、実施例3と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0050】
比較例4
水冷装置を使用しなかった以外は、実施例4と同様に行った。得られたフィルムの物性評価結果を表2に示す。
【0051】
比較例5
水供給用接触リングの上端と筒状フィルムとが接触する位置を空冷フロストラインから重力方向に210mmの位置とし、下流部水回収リングと筒状フィルムとの接触位置を空冷フロストラインから重力方向に220mmの位置とした以外は、実施例1と同様に行った。その結果、環状ダイから溶融押出しされた筒状フィルムが大きく振動し、得られたフィルムの厚みは不均一なものであった。
【0052】
比較例6
水供給用接触リングの下端と筒状フィルムとが接触する位置を空冷フロストラインから反重力方向に3mmの位置とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたフィルムは、透明性のムラが大きい(透明な部分と不透明な部分が存在する)フィルムであった。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一例の概略図である。
【図2】本発明の他の一例の概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1:環状ダイ
2:エアリング装置
3:筒状フィルム
4:水供給管
5:水供給リング
6:水供給用接触リング
7:下流部水回収リング
8:下流部水排出管
9:上流部水回収リング
10:上流部水排出管
11:V字型溝水回収リング
12:V字型溝水排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ダイからポリオレフィン系樹脂を反重力方向に溶融押出しして筒状フィルムを形成させ、該筒状フィルムを反重力方向に引き取りながら冷却するポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法であって、空冷によって得られるフロストラインから重力方向に0〜200mmのいずれかの位置から、水を含有する吸水性材料であって、重力方向の幅が5mm以上である吸水性材料を、筒状フィルムの外周面に接触させて冷却することを特徴とするポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
さらに筒状フィルムの外周面に水を含有する吸水性材料を接触させる位置よりも重力方向に水回収手段を設置し、該水回収手段によって、前記吸水性材料から筒状フィルム外周面に供給した水を回収することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
さらに筒状フィルムの外周面に水を含有する吸水性材料を接触させる位置よりも反重力方向に水回収手段を設置し、該水回収手段によって、前記吸水性材料から筒状フィルム外周面に供給した水を回収することを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のポリオレフィン系樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−30461(P2008−30461A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156074(P2007−156074)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】