説明

ポリオールの感覚的清涼効果の低減

本発明は、ポリオール、特にエリトリトールの感覚的清涼効果を低減化するための、繊維および/または糖エステルの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール、特にエリトリトールの清涼効果の低減への、繊維および/または糖エステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
低カロリー食品の需要の増大に関連して、砂糖の代わりに砂糖代替物(sugar substitutes)が使用されることがよくある。エリトリトールなどのポリオールは、多数の食料組成物、例えば、菓子組成物(特に、チョコレート)において砂糖代替物の役割をする。食料を甘くするためにポリオールを使用すると、その負の溶解熱のために困ることがよくある。結晶ポリオールの負の溶解熱により、その結晶が口の中で溶けるときに清涼感(cooling sensation)が生じる。この感覚的清涼効果のために、結晶ポリオールの使用が限られてくる。
【0003】
例えば、エリトリトールは甘みがあり、砂糖よりもかなり低カロリーである一方、エリトリトールを使用すると、製品の味が変化してしまうという不利な点がある。特に、エリトリトールを使用すると、清涼効果および/またはひりひりする後味が知覚されるので困る。エリトリトールを砂糖代替物として使用した場合、口の中でチョコレートが溶けると、不快な冷たい感じが生じる。結晶エリトリトールの溶解熱は、−42.9cal/gである。結晶エリトリトールの負の溶解熱により、その結晶が口の中で溶けるときに清涼感が生じる。この清涼感は、結晶母体を溶媒和させるのに必要なエネルギーの吸着によって引き起こされる。現在製造されている砂糖を含まないエリトリトール含有チョコレートの場合、エリトリトールが結晶形態で存在するので、そのようなチョコレートを食べると、強力な清涼効果があるのが分かる。しかし、前記清涼効果は、多くの場合、不快感または好ましくない感じを生じる。
【0004】
特許文献1は、水素化マルトデキストリンを添加することにより、エリトリトールの清涼効果を低減化しようとしている。しかし、観察された効果は、希釈効果とみなすべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,875,460号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに、エリトリトールの清涼効果を低減化または除去できる作用剤を特定し、提供することが引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この問題は、清涼効果、特にエリトリトールの感覚的清涼効果を低減化するため、繊維および/または糖エステルを用いることによって解決される。
【0008】
本発明にしたがって使用される繊維は、好ましくは食物繊維、特に、水溶性の食物繊維である。
【0009】
本発明の繊維は、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート(hydroxypropyl starch phosphate)、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択される。好ましくは、繊維は、ペクチン、キサンタンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性(=加水分解された)ココア繊維、グァーガムの可溶性(=加水分解された)繊維、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維(ペクチン、グァーガム、ローカストビーンガムからのものなど)およびこれらの2種以上の混合物から選択される。もっとも好ましくは、繊維はカラギナンである。
【0010】
ペクチンは、果物や野菜中に見出される酸性構造多糖類の異種グループであり、主に廃棄物のミカン果皮やリンゴの絞りかすから作られる。ペクチンは複雑な構造を有しており、その構造の大部分は、ホモポリマー状の部分メチル化ポリ−α−(1−4)−D−ガラクツロン酸残基と、かなりの毛状のゲル化しない領域である交代性(alternating)α−(1−2)−L−ラムノシル−α−(1−4)−D−ガラクツロノシル部分(主としてL−アラビノースおよびD−ガラクトースからなるほとんど中性の側鎖(1〜20個の残基)を有する分岐点を含んでいる)とから構成される。ペクチンの性質はエステル化度によって異なり、エステル化度は通常は約70%である。低メトキシペクチンは<40%がエステル化されており、高メトキシペクチンは>43%がエステル化されている(普通は67%)。
【0011】
アミド化ペクチンも本発明の繊維の好適な候補である。
【0012】
グァーガムは、(1−4)結合したβ−D−マンノピラノース主鎖およびその6位からα−D−ガラクトースに結合した分岐点から構成されるガラクトマンナンである。ガラクトース残基ごとに1.5〜2個のマンノース残基がある。グァーガムは、約10,000個の残基で構成される分子からなる非イオン性多分散棒状ポリマーで構成されている。グァーガムは高水溶性であり、例えば、ローカストビーンガムよりも可溶性である。
【0013】
キサンタンガムは、好気的な液中発酵によって商業的に調製される微生物乾燥耐性ポリマー(microbial desiccation resistant polymer)である。これは自然に生産されて、キャベツのような植物の葉にバクテリアをくっつける。キサンタンガムは、β−(1−4)−D−グルコピラノースグルカン主鎖および交代性残基上の(3−1)−α−結合したD−マンノピラノース(2−1)−β−D−グルクロン酸−(4−1)−β−D−マンノピラノースの側鎖を有する、陰イオン高分子電解質である。末端マンノース残基の半数弱が4,6−ピルビン酸化(pyruvated)されており、内側のマンノースは大部分が6−アセチル化されている。それぞれの分子は約7000個のペンタマーからなり、このガムはほとんどの親水コロイドよりも低多分散性(less polydisperse)である。
【0014】
ローカストビーンガムは、グァーガムに似たガラクトマンナンである。これは多分散であり、約2000個の残基で構成される非イオン分子からなる。ローカストビーンガムは、ガラクトース分岐点が少ないため、グァーガムより溶けにくく、粘度が低い。これは溶かすために加熱する必要はあるが、熱水には溶ける。
【0015】
ベータグルカンは、大麦、オートムギ、ライムギおよび小麦などの穀物の糠中に存在する。ベータグルカンは、典型的には、ランダムな順序の結合β−(1−3)D−グルコピラノース単位の線状の枝なし多糖からなる。
【0016】
アルギナートは海草から製造されるもので、β−(1−4)結合したD−マンヌロン酸残基およびα−(1−4)結合したL−グルロン酸残基を含んでいる線状の枝なしポリマーである。アルギナートは、厳密に類似した交代性残基のブロックから構成される。
【0017】
カラギナンは、紅藻からのアルカリ抽出によって調製される多糖の総称である。カラギナンの基本構造は、交代性の3−結合したβ−D−ガラクトピラノース単位および4−結合したα−D−ガラクトピラノース単位からなっている。カラギナンの基本構造の規則的な主鎖構造は、ある程度規則正しくサルフェートヘミエステル(sulphate hemi ester)基が分散されて中断されている。カラギナンは、メトキシ基およびピルベート基(pyruvate group)も幾つか含みうる。カラギナンは、約25,000個のガラクトース誘導体の線状ポリマーである。
【0018】
部分解重合された繊維は、分子量が10,000未満であり、かつ平均の重合度(DP)が3〜30である解重合複合多糖である。
【0019】
セルロースは、全体がβ−1,4構成で結合している、鎖形態のD−グルコピラノシル残基の線状ポリマーの凝集体である。セルロースおよびセルロース誘導体としては、微結晶性セルロース、マイクロフィブリル化(microfribillated)セルロース、セルロースエーテル(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)などがある。デンプンは、2種類の分子構成要素(すなわちアミロースおよびアミロペクチン)の混合物である。アミロースは、DPnが約500〜5000の間である長鎖のα−1,4結合したD−グルコース分子で主に構成されるデンプン多糖である。アミロペクチンは、比較的短鎖のα−1,4結合したD−グルコース分子が多数のα−1,6−分岐点(およそ1/25)で相互結合されたもので構成される。アミロペクチン分子の分子量は、数百万の範囲内である。アミロペクチン/アミロースの比率は、植物源に応じて、100:0から10:90までの間でさまざまでありうる。典型的な市販のデンプン源は、トウモロコシ、ワキシートウモロコシ(waxy maize)、高アミロースのトウモロコシ、小麦、ジャガイモ、タピオカ、米、エンドウおよびサゴである。デンプンは、0.5μm〜約100μmの直径を有する冷水不溶性の顆粒の形態で形成される。これらのデンプン顆粒は、元々の少量のタンパク質(普通は0.5%未満)または脂質(1%まで)に応じて得ることができる。デンプンはさらに化工することができる。化工デンプンとは、物理的手段、化学的手段または置換基の導入によってその性質が変えられ、かつ粒および分子の構造がそれぞれある程度保持されている製品である。化学的化工は、炭素原子の2、3および6のヒドロキシル基でのエステル化またはエーテル化および酸化反応によって起こりうる。化工デンプンにおけるヒドロキシル基の典型的な置換基は、アセチル基、n−オクテニルコハク酸基、ホスフェート基、ヒドロキシプロピル基、またはカルボキシメチル基である。さらに、化工により、ホスフェート、アジペートまたはシトレートのような置換基による架橋形成も行われうる。こうした化学化工の後に、グルコシドのα−1,4およびα−1,6の結合を切断することができる。デンプンのそのような部分的劣化は、普通は、酸、酸化剤または加水分解酵素による処理によって行われる。最後に、天然デンプンまたは化工デンプンは、熱水処理(heat−moisture treatment)およびその後の乾燥(例えば、円筒乾燥または噴霧加熱(spray−cooking))によって冷水分散性の形態に変換できる。好ましくは、本発明のデンプン誘導体は、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSA(n−オクテニルコハク酸)デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェートおよびこれらの2種以上の混合物である。
【0020】
本発明の実施態様によれば、糖エステルを使用できる。糖エステルは、好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。ショ糖脂肪酸エステルは、親水基としてのショ糖と親油基としての脂肪酸とからなる非イオン界面活性剤である。脂肪酸エステルの例として、ステアレート、オレエート、パルミテート、ミリステート、ラウレート、1種または複数種の混合物などがある。糖エステルの形成に適した脂肪酸は、特に、少なくとも10個、好ましくは少なくとも12個、より好ましくは少なくとも14個の炭素原子、また好ましくは30個まで、特に24個までの炭素原子を有する酸である。炭素鎖は、線状または分岐状であってよく、飽和のものかまたは1つまたは複数の二重結合を有していてよい。
【0021】
好ましい実施態様では、繊維または/および糖エステルを用いてエリトリトールの感覚的清涼効果を低減化する。エネルギーは同じままでありうるが、長期にわたって清涼効果が続くとすでに清涼効果の知覚が弱くなり、したがって感覚的清涼効果が低減化しうる。
【0022】
本発明者らは、清涼効果清涼効果、特にエリトリトールによって生み出される感覚的清涼効果を、繊維および/または糖エステルを添加することによって低減化できることを見出した。これにより、非常に低カロリー(約0.2cal/g)であるエリトリトールを食品の砂糖代替物として使用すること、またそれと共に食品の味に対する影響を回避することも可能になる。本発明によれば、清涼効果清涼効果、特に結晶エリトリトールによってかなりの程度引き起こされる感覚的清涼効果を、低減化することが可能であることが見出された。特に、エリトリトールと繊維および/または糖エステルの共加工混合物(co−processed mixture)(多くの場合、繊維および/または糖エステルは少量で十分である)を使用すると、清涼効果清涼効果、特に、感覚的清涼効果が著しく低減する。エリトリトール/繊維および/または糖エステルの組み合わせで見られる清涼効果の低減は、チョコレートなどの最終的な食品でも見られる。
【0023】
エリトリトール、特に菓子組成物中のエリトリトールの清涼効果を低減化するために、繊維および/または糖エステルを使用するのが、とりわけ好ましい。
【0024】
本発明の範囲の菓子組成物には、チョコレート、結晶製品および非結晶製品がある。本発明の範囲の非結晶製品には、ハードキャンディー、豆板、キャラメル、タフィー、リコリス、ゼリー、チューインガムおよびガムがある。本発明の菓子組成物の企図に含まれる結晶製品は、フォンダンやクリーム菓子、ファッジ、ヌガー、マシュマロ、プラリーヌ、押し型キャンディ(pressed candies)(例えば、タブレット、マジパンおよびペースト(pastes))およびパンキャンディ(panned candies)(ドラジェ)を包含する。これらの製品を組み合わせたものも菓子組成物の範囲に含まれる。例えば、チョコレートで覆われた結晶製品または非結晶製品。
【0025】
しかし、基本的には、本発明による清涼効果の低減化は、任意の食品(その場合、エリトリトールが甘味料として用いられる)、例えば、チョコレート、ベーカリー製品(ペストリーおよびクッキーなど)、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、乳製品(アイスクリームなど)などに有利に応用できる。特に好ましくは、本発明によれば、繊維および/または糖エステルを用いてチョコレート中のエリトリトールの清涼効果を低減化する。
【0026】
本発明が意図する範囲内の重要な菓子組成物であるチョコレートは、スイートチョコレート、セミスイートチョコレート、ビタースイートチョコレート(多くの場合、まとめてダークチョコレートと呼ばれる)、ミルクチョコレート、バターミルクチョコレート、スキムミルクチョコレートおよびホワイトチョコレートを包含する。さらに、ナッツ、果実、米および他の中身(チョコレートアート(chocolate arts)に使用されるもの)を詰めた前述のチョコレートのいずれも同じく本発明の範囲内に入る。チョコレートとしては、チョコレート類似品またはチョコレート代替物となる任意の他の材料に、チョコレート味、チョコレートの風味を与えるのに十分な特性を有する、任意の菓子製品も含まれる。
【0027】
本発明によれば、特に良好な効果は、全組成物中に存在する繊維および/または糖エステルの量が、0.1〜50重量%、特に、1〜5重量%、より好ましくは2〜4重量%の範囲であるときに観察された。本発明で使用する食品組成物では、普通は、エリトリトールが1〜70重量%の量、特に5〜60重量%の量、好ましくは10〜50重量%の量で全組成物中に存在する。繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの重量比は、好ましくは1:300から1:5まで、好ましくは1:300〜1:10、特に1:200から1:20まで、より好ましくは1:100〜1:30である。特に好ましい実施態様では、この比は、1:70〜1:10、特に1:50〜1:20である。特に好ましくは、清涼効果は、本発明によれば、食品中に存在する最大限で10重量/重量パーセントまでのエリトリトールを繊維および/または糖エステルで置き換えることによって低減化される。
【0028】
食料品(この場合に、エリトリトールの清涼効果が本発明にしたがって低減化される)は、好ましくは、エリトリトールなどのポリオールの代わりにショ糖を含む同じ食料品と比べて、カロリー量が低減している。好ましくは、食料品、特に菓子組成物、もっとも好ましくは、チョコレートは、ショ糖を含有する従来の製品と比べて、カロリー量が、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、もっとも好ましくは少なくとも30%低減している。食料品(特に菓子組成物)は、特に、450kcal/100g未満、より好ましくは400kcal/100g未満、さらにより好ましくは300kcal/100g未満、特に、200kcal/100g未満、もっとも好ましくは100kcal/100g未満である。
【0029】
さらに、甘みの強い甘味料を加えることができる。栄養素ではない甘味料として使用できる甘みの強い甘味料は、アスパルテーム、アセスルファーム塩(アセスルファーム−Kなど)、サッカリン(例えば、ナトリウム塩およびカルシウム塩)、シクラメート(例えば、ナトリウム塩およびカルシウム塩)、スクラロース、アリテーム、ネオテーム(neotame)、ステビオシド、グリチルリジン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、モネリン、タウマチン、ブラゼイン(brazzein)およびこれらの混合物よりなる群から選択できる。
【0030】
さらに、本発明者らは、エリトリトールの清涼効果を低減化する能力を保ちつつ、種々の方法で繊維および/または糖エステルを食品組成物に取り込むことができることを見出した。したがって、本発明はまた、エリトリトール−繊維組成物またはエリトリトール−糖エステル組成物の製造方法であって、
(i)繊維および/または糖エステルおよびエリトリトールを乾燥混合する工程と、
(ii)前記乾燥混合を溶融させる工程と、
(iii)工程(ii)の温度より低い温度で固化させる工程と
を含む製造方法に関する。
【0031】
この実施態様では、繊維および/または糖エステルおよびポリオール(エリトリトールなど)を最初に乾燥混合する。次いでその混合物を、特に100〜150℃まで、より好ましくは120〜140℃まで加熱する。その後、得られた溶融物を低い温度(例えば、20〜35℃)、特に室温で晶出させる(すなわち、固化させる)。
【0032】
別の方法として、エリトリトール−繊維組成物またはエリトリトール−糖エステル組成物を製造する方法であって、
(i)繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの水溶液または水性分散液(aqueous dispersion)を準備する工程と、
(ii)前記溶液を温める工程と、
(iii)結晶化させるために、水を蒸発させるかまたは溶液を冷やし、また任意選択的にアルカノールを加える工程と
を含む、製造方法がある。
【0033】
この方法では、最初に、繊維および/または糖エステルとポリオール(エリトリトールなど)との水溶液または水性分散液を準備する。次いで、前記水溶液または水性分散液を、特に70〜130℃まで、好ましくは80〜120℃まで温める。加熱によって、水は溶液/分散液から除去される。好ましくは、水は、蒸発(例えば、圧力下、真空下、または大気圧下で)によって、または噴霧乾燥によって除去する。次いで、溶液は、さらに結晶化させるために、特に20〜35℃の低い温度まで冷やすことができる。好適なアルカノールは、例えば、エタノール、イソプロパノールまたはそれらの混合物である。
【0034】
別の方法は、
(i)エリトリトールと繊維および/または糖エステルとを乾燥混合する工程
を含む、エリトリトール−繊維組成物またはエリトリトール−糖エステル組成物の製造に関する。
【0035】
繊維および/または糖エステルおよびエリトリトールを乾燥混合することにより、エリトリトールの清涼効果を効果的に低減化することが可能である。
【0036】
上記の共結晶化法が好ましい。特に良好な清涼効果の低減は、多くの場合、共結晶化法によって達成されることが見出された。
【0037】
ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択される繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの共溶融組成物(co−melted composition)。
【0038】
糖エステルおよび/または繊維とエリトリトールとの重量比が、1:5〜1:300、好ましくは1:10〜1:300である組成物。
【0039】
清涼効果清涼効果、特に、繊維または糖エステルによるエリトリトールの感覚的清涼効果の低減は、例えば、以下の方法または技術によって確認できる。特に、分析技術を用いて、エリトリトールと繊維の組み合わせならびに最終製品を評価できる。そのような技術としては、溶解熱および溶解熱の伝播速度を測定できる熱量測定がある。
【0040】
さらに、エリトリトールの清涼効果の低減は、味の審査員団(taste panels of persons)により評価され得る。予備試験では、エリトリトール−繊維の試料またはエリトリトール−糖エステルの試料を評価することが可能である。しかし、最終製品、例えば、菓子組成物またはチョコレートを用いて、エリトリトールの清涼効果の低減を評価するのが好ましい。好ましくは、繊維なしでエリトリトールを用いて製造された同じ食料品かまたは砂糖を用いて製造された同じ食料品を、評価の基準材料として使用する。
【0041】
最終製品における感覚的清涼効果の低減に関して選別を行う好ましい方法は、味の審査員団を用いることである。
【0042】
しかし、以下の分析結果も、清涼効果の低減、特に、溶融エンタルピーの低下、溶融温度の低下または溶融ピークの形状の変化を示す。溶融エンタルピーの低下または溶融温度の低下とは、特に、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%の低減を指す。
【0043】
本発明を、以下の実施例を用いてさらに説明する。特に記載のない限り、%はすべて重量%として示す。
【実施例】
【0044】
実施例1
97重量%のエリトリトール(CargillのEridex)を、3重量%のカラギナン(Cargillのイオタカラギナン)と一緒に乾燥混合した。この乾燥混合をビーカーに入れ、完全に溶融するまで油浴によって150℃で加熱した。得られた溶融物をアルミニウム板上に注ぐと、それは晶出した。この固体物質を粉砕した。得られた粉末は(その80%に関して)粒径が200μmより小さかった。
【0045】
実施例2
清涼効果の測定
50mlの蒸留水(37℃に温められたもの)を、100mlの二重ジャケット付ビーカーに入れた。ビーカーは、温水を循環させることにより、サーモスタットで37℃に調節した。温度を記録するために熱電対を水中に挿入した。機械式撹拌器(mechanical stirrer)(1600rpm)で攪拌を行った。
【0046】
水温が37℃で一定になったとき、加熱を停止して、実施例1に従って作った25gのエリトリトール/カラギナンの生成物をビーカーに加え、温度降下を30秒間記録した。
【0047】
結果を表1に示す:
【0048】
表1:
【表1】

【0049】
エリトリトール/カラギナンの試料は、それほど顕著な清涼効果がないことが温度の違いから分かる。
【0050】
実施例3
エリトリトールと糖エステル(Mitsubishi)(乾燥重量のエリトリトールを基準にして量が異なる)との幾種類かの共溶融生成物を、実施例1の溶融手順に従って調製した。
【0051】
実施例2に従った方法を用いて、それぞれの共溶融生成物の清涼効果を測定した。
【0052】
結果を表2に示す:
【0053】
表2
【表2】

S170=ステアリン酸スクロースで、およそ100%のジ、トリ、ポリエステル
S270=ステアリン酸スクロースで、およそ10%のモノエステル、90%のジ、トリ、ポリエステル
S570=ステアリン酸スクロースで、およそ30%のモノエステル、70%のジ、トリ、ポリエステル
S1570=ステアリン酸スクロースで、およそ70%のモノエステル、30%のジ、トリ、ポリエステル
【0054】
エリトリトールと糖エステルを組み合わせると、純粋なエリトリトールと比べて清涼効果が低減する。
【0055】
実施例4
97重量%のエリトリトールと3重量%のペクチン(CargillのUnipectin RS ND)との共溶融生成物を、実施例1の溶融手順に従って調製した。
【0056】
実施例2に略述した方法を用いて、それぞれの配合物の清涼効果を測定した。
【0057】
表3は結果を示している。
【0058】
表3
【表3】

【0059】
エリトリトール/ペクチンの試料は、清涼効果が低減している。
【0060】
実施例5
97重量%のエリトリトールと3重量%のアルギナート(CargillのAlgogel 6021)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0061】
実施例2に略述した方法を用いて、清涼効果を測定した。
【0062】
表4は結果を示している:
【0063】
表4
【表4】

【0064】
エリトリトール/アルギナートの試料は、清涼効果が低減している。
【0065】
実施例6
97重量%のエリトリトールと3重量%のグァーガム(Cargill)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0066】
実施例2に略述した方法を用いて、清涼効果を測定した。
【0067】
表5は結果を示している:
【0068】
表5
【表5】

【0069】
エリトリトール/グァーガムの試料は、清涼効果が低減している。
【0070】
実施例7
95重量%のエリトリトールと5重量%の寒天(HP900 Cargill)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0071】
実施例2に略述した方法を用いて、清涼効果を測定した。
【0072】
表6は結果を示している:
【0073】
表6
【表6】

【0074】
エリトリトール/寒天の試料では、清涼効果が低減している。
【0075】
実施例8
95重量%のエリトリトールと5%の可溶性ココア繊維(SpainのNatraceuticals)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0076】
実施例2に略述した方法を用いて、清涼効果を測定した。
【0077】
表7は結果を示している:
【0078】
表7
【表7】

【0079】
エリトリトール/可溶性ココア繊維の試料は、清涼効果が低減している。
【0080】
実施例9
90重量%のエリトリトールと10重量%の部分解重合されたグァーガム(Benefiber,Novartis)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0081】
実施例2に略述した方法を用いて、共溶融生成物の清涼効果を測定した。
【0082】
表8は結果を示している:
【0083】
表8
【表8】

【0084】
エリトリトール/部分解重合されたグァーガムの試料は、それほど顕著な清涼効果がない。
【0085】
実施例10
98重量%のエリトリトールと0.5%のS170糖エステル(Mitsubishi)と1.5%のカラギナン(Cargillのイオタカラギナン)との共溶融生成物を、実施例1に例示されているようにして調製した。
【0086】
実施例2に略述した方法を用いて、清涼効果を測定した。
【0087】
表9は結果を示している:
【0088】
表9
【表9】

S170=ステアリン酸スクロースで、およそ100%のジ、トリ、ポリエステル
【0089】
エリトリトール/カラギナン−糖エステルの試料は、それほど顕著な清涼効果がない。
【0090】
実施例11
97重量%のエリトリトールと3重量%のカラギナン(Cargillのイオタカラギナン)との共溶融生成物を、実施例1の溶融手順に従って得た。
【0091】
97重量%のエリトリトールと3重量%のカラギナン(Cargillのイオタカラギナン)の組み合わせは、エリトリトールとカラギナンとの溶液から以下のようにして得た:
97重量%のエリトリトールと3重量%のカラギナンとのブレンド100gを、水100gに加えた。その溶液をビーカー内の加熱版で加熱して140℃にした。得られた溶融物をアルミニウム板上に注いで晶出させた。得られた結晶を、真空下で100℃において14時間乾燥させた。結晶を粉砕した。
【0092】
90%のエリトリトール/10%のマルトデキストリンDE 14(Cargillの01910)は以下の値を有する(90重量%のエリトリトール(CargillのEridex)を10%のマルトデキストリン(Cargillの01910)と一緒に乾燥混合した。更なる手順は実施例1と同様である。)。
【0093】
結果を表10に示す:
【0094】
表10
【表10】

【0095】
マルトデキストリンを添加しても単なる希釈効果しかなく、清涼効果の低減はない。
【0096】
こうした知見は、どちらの生成物もエリトリトールの清涼の低減に効果があることを証明している。
【0097】
実施例12
チョコレートの製造
以下の表に従った原料を用いてチョコレートを製造した。
【0098】
表11
【表11】

【0099】
原料は、45℃においてZブレンダー(Z blender)で、混合の場合は35rpmの速度、コンチングの場合は50〜60rpmの速度で混ぜ合わせた。
【0100】
ダークチョコレートの製造では、最初に甘味料をZブレンダーに入れた。その後、カカオマスの一部、次いでカカオ脂の一部を加えた。3ロール精錬機(3 rolls refiner)で精錬を行った。精錬後に得られた粉末を、再びZブレンダーに1〜2時間入れた。Zブレンダーの温度を70℃まで上昇させ、カカオマスの第2部分を加えた。14時間後にカカオ脂の第2部分を加えた。混合物の温度を50℃まで下げた。この工程が終了する1時間前に、レシチンを加えた。
【0101】
以下のチョコレート配合物を調製した:
【0102】
表12
【表12】

【0103】
甘味料として100%のエリトリトール(ErOH)を用いた配合物No.1を、基準として使用した。混合物No.4では、エリトリトールの清涼効果は観察されなかった。すなわち、エリトリトールの清涼効果は完全に抑制された。配合物No.2および3の場合には、清涼効果の大幅な低減が観察され、チョコレート生成物のわずかな清涼が観察された。
【0104】
脱脂粉乳を甘味料と一緒に加えることを除けば、ミルクチョコレートの調製はダークチョコレートの調製と同じである。
【0105】
カロリーの低減
甘味料として95/5のエリトリトール/カラギナンの配合物を含んでいるNo.4に従ったミルクチョコレートは、360kcal/gである。これと比べて、ショ糖を含んでいる基準のチョコレートは約530kcal/100gであり、これは、本発明に従って製造されたチョコレートの場合、32%のカロリー低減があることを意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清涼効果清涼効果、特にエリトリトールの感覚的清涼効果の低減への、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択される繊維および/または糖エステルの使用。
【請求項2】
菓子組成物中のエリトリトールの前記清涼効果の低減への、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記菓子組成物がチョコレート組成物である、請求項1〜2のいずれか1つに記載の使用。
【請求項4】
繊維および/または糖エステルの総合重量とエリトリトールの重量との比が1:5〜1:300、好ましくは1:10〜1:300である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の使用。
【請求項5】
前記エリトリトールが、1〜70重量%の量、特に5〜60重量%の量で全組成物中に存在する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の使用。
【請求項6】
甘みの強い甘味料をさらに加える、請求項1〜5のいずれか1つに記載の使用。
【請求項7】
ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択される繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの共溶融組成物。
【請求項8】
繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの重量比が1:5〜1:300、好ましくは1:10〜1:300である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択される繊維および/または糖エステルならびにエリトリトールを含む菓子組成物であって、繊維および/または糖エステルとエリトリトールとの重量比が1:5〜1:300、好ましくは1:10〜1:300である、菓子組成物。
【請求項10】
前記菓子組成物がチョコレート組成物であることを特徴とする、請求項9に記載の菓子組成物。
【請求項11】
(i)繊維および/または糖エステルとエリトリトールとを乾燥混合する工程と、
(ii)前記乾燥混合を溶融させる工程と、
(iii)工程(ii)の温度より低い温度で固化させる工程と
を含む、エリトリトール−繊維および/または糖エステルの組成物の製造方法。
【請求項12】
繊維が、ペクチン、グァーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギナート、カラギナン、可溶性ココア繊維、グァーガムの可溶性繊維、セルロース、セルロース誘導体、ベータグルカン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、n−OSAデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンホスフェート、部分解重合された繊維およびこれらの2種以上の混合物から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
糖エステルおよび/または繊維とエリトリトールとの重量比が1:5〜1:300、好ましくは1:10〜1:300である、請求項11または12に記載の方法。

【公表番号】特表2010−523161(P2010−523161A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503398(P2010−503398)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003031
【国際公開番号】WO2008/125344
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(397058666)カーギル インコーポレイテッド (60)
【Fターム(参考)】