説明

ポリオールの製造方法

本発明は、簡単な方法を用いて得られるポリオールに関する。明確な記載がない限り、開示されたポリオールはポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオールであると解釈されるべきである。さらに、本発明は、前記の簡単な方法およびポリウレタン材料の製造における、本発明のポリオールの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な方法により得られるポリオールを提供する。本発明はさらに、その方法自体、および、ポリウレタン材料の製造における本発明のポリオールの使用も提供する。
【背景技術】
【0002】
例えば軟質または硬質フォームのようなポリウレタン材料あるいはエラストマーのような固体材料の製造に適当なポリオールは、通常、適当なアルキレンオキシドを多官能価の出発化合物、すなわち、複数のツェレウィチノフ活性水素原子を含有する出発化合物において重合させることにより得られる。極めて幅広い種類の方法が、このような重合反応を行うために長い間知られ、その方法のいくつかは互いに補完する。
【0003】
一方で、アルキレンオキシドの、ツェレウィチノフ活性水素原子を有する出発化合物への塩基触媒を用いた付加は、大きな規模で重要である。他方で、この反応を行うための複金属シアン化合物(「DMC触媒」)の使用が、ますます重要になっている。例えば、米国特許第5,470,813号、欧州特許出願公開第700,949号、欧州特許出願公開第743,093号、欧州特許出願公開第761,708号、国際公開第97/40086号、国際公開第98/16310号および国際公開第00/47649号に記載されている高活性DMC触媒を使用することで、極めて低い触媒濃度(25ppm以下)でポリエーテルポリオールを製造することができ、したがって最終生成物から触媒を分離する必要はもはやなくなる。しかしながら、このような触媒は、短鎖ポリオールまたはアミノ基含有出発物質に基づくポリオールの製造には適さない。昔から知られている例えばアルカリ金属水酸化物に基づく塩基触媒によって、短鎖ポリオールおよび/またはアミノ基含有出発物質に基づくポリオールの問題のない製造が可能となるが、粗アルカリ性ポリマーから、別途、後処理工程によって、通常、触媒を取り除かねばならない。特に、アミノ基含有ポリオールを製造する場合には、黄色から黄褐色の生成物がしばしば得られる。有色の出発物質は、特定の用途(例えばラッカーおよびコーティングの場合)において好ましくない。アルキレンオキシドの、適当な出発化合物への(ルイス)酸触媒を用いた付加は、より重要性が低い。
【0004】
例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのようなアルキレンオキシドの、ツェレウィチノフ活性水素原子を有する出発化合物への塩基触媒を用いた付加は、既に述べたように、アルカリ金属水酸化物の存在下で行われるが、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類水酸化物またはアミン、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミンまたはイミダゾールまたはイミダゾール誘導体を使用することもできる。窒素原子に結合したツェレウィチノフ活性水素原子を有する、アミノ基含有出発物質の場合、ツェレウィチノフ活性水素原子1モルあたり、1モル以下のアルキレンオキシドを、触媒作用なしに付加することができ、その割合を超える場合には、前述の塩基触媒の1つを、通常は添加しなければならない。アルキレンオキシドを添加した際、ポリエーテル鎖の重合活性中心は不活性化されなければならない。そのために、種々の方法が可能である。例えば、中和は希薄鉱酸、例えば硫酸またはリン酸で達成できる。硫酸の第二解離段階の強さは、活性アルコラート基の加水分解により生成するアルカリ金属水酸化物のプロトン化に十分であり、したがって、使用する硫酸1モルあたり2モルのアルコラート基を中和できる。その一方で、リン酸は、中和するアルコラート基の量に対して等モル量を使用しなければならない。中和および/または蒸留による水の除去中に生成する塩は、通常、ろ過工程を用いて分離しなければならない。蒸留およびろ過工程は、時間およびエネルギーを消費し、その上、多くの場合において簡単には再現できない。したがって、ろ過工程がなく、多くの場合蒸留工程もなしに実施できる多くの方法が開発され(ヒドロキシカルボン酸での中和、例えば、国際公開第98/20061号および米国特許出願公開第2004167316号は、硬質フォーム用途のための短鎖ポリオールの後処理に関して乳酸を記載する)、これらは広く使用され、よく確立された方法である。米国特許第4521548号は、ギ酸との反応により同じような方法で、重合活性中心がどのように不活性化され得るか記載する。ヒドロキシカルボン酸またはギ酸での中和後に生成する金属カルボン酸塩は、溶解し透明なポリエーテルポリオールの溶液を与える。しかしながら、これらの方法の欠点は、多くのポリウレタン用途にとって好ましくない、生成物中に残存する塩の触媒活性である。したがって、国際公開第04/076529号において、低触媒濃度(10〜1000ppmのKOH)で重合反応が実施され、そのため、中和後にポリオール中に残存する触媒活性ヒドロキシカルボン酸塩も同様に低濃度で存在し、その結果、後の反応への悪影響がより少なくなった。特開平10−30023号および米国特許第4110268号において、芳香族スルホン酸または有機スルホン酸が中和に用いられている。これらの酸は同様にポリエーテルポリオール中に溶解する塩を生成するが、より塩基性が弱く、低い触媒活性により区別される。ここでの重要な欠点は、スルホン酸の高いコストである。独国特許出願公開第100,24,313号に記載されているように、酸性陽イオン交換体を用いた後処理は、溶媒の使用と蒸留によるその除去を必要とし、その結果、高いコストに結びつく。相分離の方法は、加水分解工程のみを必要とし中和工程は必要ではなく、例えば、国際公開第01/14456号、特開平6−157743号、国際公開第96/20972号および米国特許第3823145号に記載されている。アルカリ性の水相からのポリエーテルポリオールの相分離は、コアレッサーまたは遠心分離機を用いることにより補助され、ポリエーテル相と水相の間の密度差を高めるために、多くの場合、ここでも溶媒を加える必要がある。このような方法は、全てのポリエーテルポリオールに適さず、特に短鎖ポリエーテルポリオールまたは高いエチレンオキシド含量を有するポリエーテルポリオールの場合には成功しない。溶媒の使用はコストが大きく、遠心分離機は維持費の観点からも高い経費を必要とする。
【0005】
アルキレンオキシドの、アミン触媒を用いた付加反応の場合、ポリオール中のアミンの存在がポリウレタン材料の製造を妨げないのであれば、さらに後処理を省略できる。比較的に低当量を有するポリオールのみを、アミン触媒反応により得ることができる(これに関しては、例えば、Ionescu et al.著、「Advances in Urethane Science & Technology」、1998、14、第151〜218頁参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,470,813号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第700,949号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第743,093号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第761,708号明細書
【特許文献5】国際公開第97/40086号パンフレット
【特許文献6】国際公開第98/16310号パンフレット
【特許文献7】国際公開第00/47649号パンフレット
【特許文献8】国際公開第98/20061号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2004167316号明細書
【特許文献10】米国特許第4521548号明細書
【特許文献11】国際公開第04/076529号パンフレット
【特許文献12】特開平10−30023号公報
【特許文献13】米国特許第4110268号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第100,24,313号明細書
【特許文献15】国際公開第01/14456号パンフレット
【特許文献16】特開平6−157743号公報
【特許文献17】国際公開第96/20972号パンフレット
【特許文献18】米国特許第3823145号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ionescu et al.著、「Advances in Urethane Science & Technology」、1998、14、第151〜218頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の方法の欠点を有さず、アルカリまたはアルカリ土類の水酸化物、カルボン酸塩または水素化物の触媒作用で調製される、アミノ基含有ポリオール(エチレンオキシド含有アミノ基含有ポリオールを含む)の安価な後処理方法を見出すことであった。本来の色みが少ないアミノ基含有ポリオールを得ることが、本発明の特定の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
触媒1モルあたり0.75〜1モルの硫酸を、粗アルキレンオキシド付加生成物のアルカリ性重合活性中心に添加して中和を行うことにより、前記目的を達成することができた。本手法によって、驚くべきことに、触媒1モルあたり0.75モル未満の硫酸で中和した生成物よりも本来の色みが少ない透明な生成物を生じる。本方法は、長鎖および短鎖ポリエーテルポリオールに対しても用いることができ、すなわち、最終生成物のOH価範囲は約20mgKOH/g〜 約1000mgKOH/gに広がる。ポリエーテル鎖の構造、すなわちポリオールの調製に用いられるアルキレンオキシドまたはアルキレンオキシド混合物の組成物も同様に種々であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細にわたり、本発明の方法を以下に示す。
【0011】
通常、出発化合物を反応器に入れ、触媒(すなわちアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩またはアルカリ土類水酸化物)を任意にこの段階で添加する。アルカリ金属水酸化物を用いるのが好ましく、水酸化カリウムが特に好ましい。触媒は、出発化合物に水溶液の状態または固体状態で供給することができる。最終生成物の量に基づく触媒濃度は、0.004〜0.1重量%であり、好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.025〜0.1重量%である。用いた出発化合物が十分低い蒸気圧を有するならば、アルキレンオキシドの計量添加を開始する前に、溶媒水および/または出発化合物と触媒の反応において遊離した水を、高温で(好ましくは反応温度で)真空にて除去することができる。あるいは、触媒なしでアルキレンオキシドを初めに添加してもよく、出発種の十分に低い蒸気圧が得られた際にのみアルカリ金属水酸化物の添加と脱水工程を行うこともできる。触媒濃度が低い場合、脱水工程を省略することもできる。
【0012】
ツェレウィチノフ活性水素原子を含有し、0.05〜50当量%のアルコキシレート含量を有する出発化合物の、既製のアルキレンオキシド付加生成物(「アルコキシレートポリマー」)を塩基触媒として用いることもできる。触媒のアルコキシレート含量は、触媒のアルキレンオキシド付加生成物中にもともと存在する全てのツェレウィチノフ活性水素原子に基づいて、塩基によって脱プロトン化されて除去されたツェレウィチノフ活性水素原子の割合を意味するものとして理解されるべきである。もちろん、使用したアルコキシレートポリマーの量は、前段落に述べたように、最終生成物の量に対する望ましい触媒濃度によって決まる。
【0013】
N、OまたはSに結合した水素は、ツェレウィチノフによって発見された方法に従い、ヨウ化メチルマグネシウムとの反応においてメタンを与える場合、ツェレウィチノフ活性水素と呼ばれる(単に"活性水素"と呼ばれることもある)。ツェレウィチノフ活性水素を有する化合物の代表的な例は、官能基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基またはチオール基を含有する化合物である。
【0014】
反応器に入れた出発化合物を、その後アルキレンオキシドと、不活性ガス雰囲気下で、80〜180℃(好ましくは100〜170℃)の温度で、使用する反応器系の安全に関する圧力制限を越えないように、アルキレンオキシドを従来通り反応器に連続的に供給して反応させる。通常、この反応を10mbar〜10barの圧力範囲で行う。すでに前述したように、アルキレンオキシドを触媒なしに初めに添加する場合、アルキレンオキシドの計量添加を適当な時点で中断し、適当な後反応時間の経過後に触媒を添加する。アルキレンオキシド添加段階の最後に続いて、残留するアルキレンオキシドが完全に反応する後反応段階がある。反応器中にさらなる圧力低下が見られなければ、後反応段階の終わりに到達する。次いで、アルカリ性粗アルキレンオキシド付加生成物の重合活性中心の中和を、触媒1モルあたり0.75〜1モルの硫酸、好ましくは触媒1モルあたり0.8〜1モルの硫酸、特に好ましくは触媒1モルあたり0.9〜1モルの硫酸、最も特に好ましくは触媒1モルあたり0.95〜1モルの硫酸を添加することにより行う。中和における温度は、広い制限内で変えることができ、制限はポリオール構造によって定めてよい。加水分解されやすい基、例えばエステル基などが生成物中に存在するならば、中和を例えば室温で行ってよい。中和が行われた際、希酸の添加により導入された微量の水を真空で除去することができる。抗老化剤または抗酸化剤を、中和中または中和後に、生成物に添加できる。さらなる後処理工程、例えば生成物のろ過は、通常不要である。しかしながら、必要であれば、得られた塩を分離することもできる。塩の結晶化は、中和前または中和中に、アルカリ性重合生成物の質量に基づいて2重量%〜20重量%の量の水を添加し、続いて蒸留によって除去することにより促進できる。そのようにして結晶化した塩を、ろ過により分離することができる。
【0015】
適当なアミノ基含有出発化合物の多くは、1〜4の官能価を有しており、官能価とは、出発分子1個あたりに存在するツェレウィチノフ活性水素原子の数を意味するものと理解される。アミノ基含有出発化合物は、好ましくは少なくとも1個の一級アミノ基(−NH)および/または二級アミノ基および/または三級アミノ基を含む。それらのモル質量は、17g/mol〜約1200g/molである。
【0016】
アミノ基含有出発化合物の例は、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、トルイジンの異性体、ジアミノトルエンの異性体、ジアミノジフェニルメタンの異性体、およびジアミノジフェニルメタンを与えるためのアニリンとホルムアルデヒドの縮合において生成する高級核生成物質である。もちろん、異なるアミノ基含有出発化合物の混合物を使用することもできる。さらに、アミノ基含有出発物質とアミノ基を含有しない出発物質の混合物を使用することもできる。出発混合物中における、アミノ基含有出発物質の含量は、少なくとも20モル%である。アミノ基を含有しない出発物質の例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2-プロパノールおよび高級脂肪族モノオールであり、特に脂肪アルコール、フェノール、アルキル置換フェノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖、ヒドロキノン、ピロカテコール、レゾルシノール、ビスフェノールF、ビスフェノールA 、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンまたはホルムアルデヒドとフェノールのメチロール基を含有する縮合生成物である。さらに、メラミンまたは尿素ならびにマンニッヒ塩基も(共)出発物質として作用することができる。
【0017】
さらに、前述のアミノ基含有出発化合物またはアミノ基を含有しない出発化合物、すなわち20〜1000mgKOH/g、好ましくは250〜1000mgKOH/gのOH価を有するポリエーテルポリオールの、既製のアルキレンオキシド付加生成物を本方法に添加することも可能である。本発明の方法において、ポリエーテルエステルを調製するために、出発化合物に加えて、6〜800mgKOH/gの範囲のOH価を有するポリエステルポリオールを使用することもできる。それに適したポリエステルポリオールは、例えば2〜12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸と、2〜12個の炭素原子を有する(好ましくは2〜6個の炭素原子を有する)多価アルコール(好ましくはジオール)から、既知の方法によって調製できる。
【0018】
石油化学資源の不足と生態系バランスにおける化石原料の好ましくない評価という背景に対して、ポリウレタン工業用に適したポリオールの製造においても、再生可能資源からの原料の使用がますます重要性を得ている。本発明の方法は、アルキレンオキシドの添加前または添加中に、トリグリセリド(例えば、大豆油、菜種油、パーム核油、ヤシ油、アマニ油、ヒマワリ油、ニシン油、イワシ油、レスクエレラ(lesquerella)油およびヒマシ油など)を、最終生成物の量に基づいて10〜80重量%の量で工程に添加することにより、このようなポリオールの製造のための高い経済的可能性を広げる。その構造中に油が完全に導入されたポリエーテルエステルポリオールが得られるため、最終生成物中において、油はもはや検出できなくなるか、ごく少量しか検出できない。驚くべきことに、本方法の変形において、ヒドロキシ基を有さない油であっても均一の最終生成物が得られる。
【0019】
触媒として使用できる前述のアルコキシレートポリマーは、ツェレウィチノフ活性水素原子を有する出発化合物へのアルキレンオキシド付加による別個の反応工程において調製される。通常、アルコキシレートポリマーの調製において、調製すべき量に基づいて0.1〜1重量%の量で、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物(例えばKOH)を触媒として使用し、必要であれば反応混合物を真空で脱水し、不活性ガス雰囲気下、100〜170℃で、150〜1200mgKOH/gのOH価が得られるまでアルキレンオキシド付加反応を行い、次いで、前記アルコキシレート含量が0.05〜50当量%になるように、さらにアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、任意に全体を調節し、続いて脱水を行う。そのようにして調製したアルコキシレートポリマーは、不活性ガス雰囲気下で単独で貯蔵できる。それらは、本発明の方法において、特に好ましくは、アルカリ性条件下での加水分解に敏感な原料を用いる場合、または、長鎖ポリオールの製造における低分子量の出発物質の量が、反応の開始時に反応混合物の混合を十分確保するのに不十分な場合に使用される。さらに、低分子量の出発物質には、やや溶けにくいアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を生成する傾向のものもあり、その場合には、前述した方法によってまず初めに出発物質をアルコキシレートポリマーに変換することが同様に勧められる。本発明の方法において使用するアルコキシレートポリマーの量は、通常、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の濃度に対応し、調製すべき本発明の最終生成物の量に基づいて、0.004〜0.1重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.025〜0.1重量%である。もちろん、アルコキシレートポリマーを混合物の状態で用いることもできる。
【0020】
好適なアルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシドまたは2,3−ブチレンオキシドおよびスチレンオキシドである。プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドを使用するのが好ましい。種々のアルキレンオキシドを混合物の状態またはブロックで添加できる。エチレンオキシド末端ブロックを含有する生成物は、例えば、成形フォーム用途に必要なイソシアネート反応性を系に与える、高い濃度の第1級末端基に特徴づけられる。
【0021】
粗アルカリ性ポリオールは、通常、20〜1000mgKOH/gのOH価、好ましくは28〜700mgKOH/gのOH価を有する。
【0022】
本発明の方法によって得られるポリオールは、固体または発泡ポリウレタン材料およびポリウレタンエラストマーの製造のための出発成分として使用できる。ポリウレタン材料およびエラストマーは、イソシアヌレート、アロファネートおよびビウレット構造単位を含むこともできる。いわゆるイソシアネートプレポリマーの製造も可能であり、その製造において、イソシアネート基のヒドロキシ基に対するモル比は1より大で使用され、そのため生成物は遊離のイソシアネート官能基を含有する。これらは、1つ以上の段階の、実際の最終生成物の製造まで反応しない。
【0023】
これらの材料の製造のために、任意に発泡剤の存在下、触媒の存在下、任意に他の添加剤、例えば気泡安定剤の存在下において、本発明のポリオールは任意にさらなるイソシアネート反応性成分と混合され、有機ポリイソシアネートと反応する。
【実施例】
【0024】
使用した原料:
Irganox(登録商標)1076:オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
【0025】
〔実施例1〕
10Lの実験用オートクレーブ中に、窒素雰囲気下で、1046.1gのエチレンジアミンを導入した。充填ノズルを閉じた後、3barの窒素圧を3回かけて残留酸素を除去し、その後、余分な圧力を大気圧まで下げた。攪拌(450rpm)しながら150℃に加熱し、3711.5gのプロピレンオキシドをオートクレーブ中に3時間かけて計量添加した。次いで、その混合物を1時間反応させた後80℃に冷却した。44.82重量%のKOH水溶液2.815gを添加した後、150℃、真空(20mbar)において、窒素(50ml/分)で除去することにより、水を1時間かけて留去した。次いで、1244.2gのプロピレンオキシドを2.5時間かけて計量添加した。続く後反応時間は、1.5時間であった。真空で30分加熱し室温まで冷却した後、中和試験(実施例1Aおよび1B)用に2留分をバッチより取り出した。触媒濃度(KOH)は210ppmであった。
【0026】
〔実施例1A(比較例)〕
2.028gの11.82%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.50モルに相当)を、80℃で、実施例1の生成物1305.2gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.88gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0027】
〔実施例1B〕
4.064gの11.82%硫酸(KOH1モルあたり硫酸1.00モルに相当)を、80℃で、実施例1の生成物1307.6gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.885gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0028】
〔実施例2〕
10Lの実験用オートクレーブ中に、窒素雰囲気下で、1049gのエチレンジアミンを導入した。充填ノズルを閉じた後、3barの窒素圧を3回かけて残留酸素を除去し、その後、余分な圧力を大気圧まで下げた。攪拌(450rpm)しながら150℃に加熱し、3735gのプロピレンオキシドをオートクレーブ中に3時間かけて計量添加した。次いで、その混合物を1時間反応させた後80℃に冷却した。44.82重量%のKOH水溶液6.922gを添加した後、150℃、真空(20mbar)において、窒素(50ml/分)で除去することにより水を1時間かけて留去した。次いで、1252.2gのプロピレンオキシドを1時間かけて計量添加した。続く後反応時間は、1.5時間であった。真空で30分加熱し室温まで冷却した後、中和試験(実施例1Aおよび1B)用に2留分をバッチより取り出した。触媒濃度(KOH)は510ppmであった(実施例2A、2B、2C、2Dおよび2E)。
【0029】
〔実施例2A(比較例)〕
4.509gの11.82%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.51モルに相当)を、80℃で、実施例2の生成物1183.5gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.792gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0030】
〔実施例2B〕
8.971gの11.82%硫酸(KOH1モルあたり硫酸1.00モルに相当)を、80℃で、実施例2の生成物1179.3gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.799gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0031】
〔実施例2C(比較例)〕
1.238gの85%リン酸(KOH1モルあたりリン酸0.99モルに相当)を、80℃で、実施例2の生成物1192.8gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.814gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。濁った生成物が得られた。
【0032】
〔実施例2D(比較例)〕
110mlの蒸留水と4.426gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.50モルに相当)を、80℃で、実施例2の生成物1189.7gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.797gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。Pall社製のT750ディープベッドフィルターを備えた実験用吸引フィルターにてろ過後、透明な生成物が得られた。
【0033】
〔実施例2E〕
106mlの蒸留水と8.819gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.99モルに相当)を、80℃で、実施例2の生成物1182.4gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.790gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。Pall社製のT750ディープベッドフィルターを備えた実験用吸引フィルターにてろ過後、透明な生成物が得られた。
【0034】
〔実施例3〕
10Lの実験用オートクレーブ中に、窒素雰囲気下で、1025.2gのエチレンジアミンを導入した。充填ノズルを閉じた後、3barの窒素圧を3回かけて残留酸素を除去し、その後、余分な圧力を大気圧まで下げた。攪拌(450rpm)しながら150℃に加熱し、3725.7gのプロピレンオキシドをオートクレーブ中に3時間かけて計量添加した。次いで、その混合物を1時間反応させた後80℃に冷却した。44.82重量%のKOH水溶液13.668gを添加した後、150℃、真空(20mbar)において、窒素(50ml/分)で除去することにより、水を1時間かけて留去した。次いで、1249.1gのプロピレンオキシドを1時間かけて計量添加した。続く後反応時間は、1.5時間であった。次いで、アルカリ性粗生成物を150℃でさらに30分、真空で加熱した。触媒(KOH)濃度は1020ppmであった。
【0035】
〔実施例3A(比較例)〕
9.969gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.50モルに相当)を、80℃で、実施例3の生成物1327.4gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.891gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0036】
〔実施例3B〕
19.532gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸1.00モルに相当)を、80℃で、実施例3の生成物1299.8gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.891gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。透明な生成物が得られた。
【0037】
〔実施例4〕
10Lの実験用オートクレーブ中に、窒素雰囲気下で、756.8gのエチレンジアミンを導入した。充填ノズルを閉じた後、3barの窒素圧を3回かけて残留酸素を除去し、その後、余分な圧力を大気圧まで下げた。攪拌(450rpm)しながら150℃に加熱し、2769.8gのプロピレンオキシドをオートクレーブ中に3時間かけて計量添加した。次いで、その混合物を1時間反応させた後80℃に冷却した。44.83重量%のKOH水溶液6.967gを添加した後、150℃、真空(20mbar)において、窒素(50ml/分)で除去することにより、水を1時間かけて留去した。次いで、2476.4gのプロピレンオキシドを1時間かけて計量添加した。続く後反応時間は、2時間であった。次いで、アルカリ性粗生成物を150℃でさらに30分、真空で加熱した。触媒濃度(KOH)は520ppmであった。
【0038】
〔実施例4A(比較例)〕
1.4325gの85%リン酸(KOH1モルあたりリン酸0.99モルに相当)を、80℃で、実施例4の生成物1347.8gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.911gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。濁った生成物が得られた。
【0039】
〔実施例4B(比較例)〕
118mlの蒸留水と4.934gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.49モルに相当)を、80℃で、実施例4の生成物1303.8gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.881gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。 Pall社製のT750ディープベッドフィルターを備えた実験用吸引フィルターにてろ過後、透明な生成物が得られた。
【0040】
〔実施例4C〕
118mlの蒸留水と、9.892gの11.87%硫酸(KOH1モルあたり硫酸0.99モルに相当)を、80℃で、実施例4の生成物1301.6gに添加し、80℃で1時間攪拌した。0.883gのIrganox(登録商標)1076を添加した後、生成物を18mbar(ウォータージェット真空)で1時間、その後、110℃、1mbarで3時間かけて脱水した。 Pall社製のT750ディープベッドフィルターを備えた実験用吸引フィルターにてろ過後、透明な生成物が得られた。
【0041】
試験の結果を表1にまとめる。
【0042】
【表1】

【0043】
色数は、DIN53995規格に従って測定し、OH価はDIN53240規格に従って測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終生成物の量に基づいて0.004〜0.1重量%濃度の、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩またはアルカリ土類水酸化物に基づく触媒の存在下で、アルキレンオキシドをアミノ基含有出発化合物へ、塩基触媒を用いた付加を行うことによるポリオールの製造方法であって、使用する触媒1モルあたり0.75〜1モルの硫酸でポリオールの中和を行う、ポリオールの製造方法。
【請求項2】
生成した塩を分離しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中和前および/または中和中および/または中和後に、ポリオールに基づいて2%〜20%の水を添加し、水を取り除いた後に塩を分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アルキレンオキシドの付加前または付加中に、最終生成物の量に基づいて10〜80重量%のトリグリセリドを添加する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られるポリオール。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法により得られるポリオールの、ポリウレタンの製造における使用。

【公表番号】特表2011−524448(P2011−524448A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513908(P2011−513908)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003981
【国際公開番号】WO2009/152954
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】