説明

ポリカルボジイミド共重合体

【課題】透明性及び保存安定性に優れ、かつ加工性・成形性にも優れたポリカルボジイミド樹脂を提供する。
【解決手段】一般式(I):


(R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基であり、R3およびR4はそれぞれ独立してモノイソシアネート残基である)で表されるポリカルボジイミド共重合体であって、該ポリカルボジイミド共重合体のGPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分が10%以下であることを特徴とする、ポリカルボジイミド共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボジイミド共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボジイミド樹脂は、耐熱性等に優れるところから、従来より成形材料、樹脂の改質剤や接着剤等の様々な用途に利用されてきた。芳香族ポリカルボジイミド樹脂は、一般に高い屈折率を有することから、薄型レンズや光学接着剤などの光学材料として用いられるようになってきており、中でもナフタレン基を含有する芳香族ポリカルボジイミド樹脂が、通常のポリカルボジイミド樹脂に比べ、高い屈折率を有し、しかも熱安定性・加工性、成形性に優れていることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004-244444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のポリカルボジイミド樹脂は、薄膜として使用した場合、加熱処理によりポリカルボジイミド薄膜が黄変する場合があり、光学材料として用いる場合、一層の透明性向上が求められている。また、一般的に溶剤に溶解した状態のポリカルボジイミド樹脂は、冷暗所下においてさえ、徐々にポリマーのゲル化が進行するため、溶液状態で長期間保存することが極めて困難であり、工業的に利用する上で大きな障害となっている。
【0004】
本発明は斯かる実情に鑑み、従来のポリカルボジイミド樹脂よりも透明性及び保存安定性に優れ、かつ加工性・成形性にも優れたポリカルボジイミド樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)分析におけるポリスチレン換算分子量分布において、GPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分が10%以下であるポリカルボジイミド共重合体は、従来公知のポリカルボジイミド共重合体よりも、透明性および保存安定性に優れ、加工性・成形性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
一般式(II):
【0007】
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基である)
で表される繰り返し単位をn個有し、かつ両末端に、モノイソシアネートより誘導された一般式(III):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R3はモノイソシアネート残基である)
で表される末端構造単位、および
モノイソシアネートより誘導された一般式(IV):
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R4はモノイソシアネート残基である)
で表される末端構造単位を有する、一般式(I):
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基であり、R3およびR4はそれぞれ独立してモノイソシアネート残基である)
で表されるポリカルボジイミド共重合体であって、該ポリカルボジイミド共重合体のGPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分が10%以下であることを特徴とする、ポリカルボジイミド共重合体。
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、透明性及び保存安定性に優れ、かつ加工性・成形性にも優れたポリカルボジイミド樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリカルボジイミド共重合体は、一般式(II):
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基である)で表される繰り返し単位をn個有し、かつ両末端に、モノイソシアネートより誘導された一般式(III):
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、R3はモノイソシアネート残基である)で表される末端構造単位、および、モノイソシアネートより誘導された一般式(IV):
【0020】
【化7】

【0021】
(式中、R4はモノイソシアネート残基である)
で表される末端構造単位を有する、一般式(I):
【0022】
【化8】

【0023】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基であり、R3およびR4はそれぞれ独立してモノイソシアネート残基である)で表されるポリカルボジイミド共重合体であって、該ポリカルボジイミド共重合体の分子量分布において、GPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分が10%以下であることを一つの特徴とする。
【0024】
本発明のポリカルボジイミド共重合体は1種以上のジイソシアネートと、鎖長制御のための1種以上のモノイソシアネートとを、非プロトン性溶媒中、カルボジイミド化触媒の存在下に反応を行い、溶液をスラリー化して、そのスラリーを回収することにより得られる。
【0025】
本発明に用いられるジイソシアネートとしては、芳香族または脂肪族ジイソシアネートのいずれでもよいが、芳香族ジイソシアネートが好ましい。例えば、1種のみのジイソシアネートが用いられる場合、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、2種以上のジイソシアネートが用いられる場合、少なくとも1種は芳香族ジイソシアネートであることが好ましく、全てが芳香族ジイソシアネートであることがより好ましい。かかる場合、前記一般式(II)で表される繰り返し単位中のR1またはR2のいずれか一方、またはその両方が芳香族ジイソシアネート残基となる。
【0026】
芳香族ジイソシアネートとしては、ナフタレンジイソシアネート、一般式(V):
【0027】
【化9】

【0028】
(式中、X1は炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシル基またはハロゲンである)
で表されるジイソシアネートおよび一般式(VI):
【0029】
【化10】

【0030】
(式中、X2は単結合、炭素数1〜5のアルキレン基、オキシ基、スルホ基またはスルホキシル基であり、X3及びX4はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシル基またはハロゲンである)
で表されるジイソシアネートが挙げられる。これらは単独で使用されても、または2種以上で使用されてもよい。
【0031】
前記一般式(V)で表されるジイソシアネートの具体例としては、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、6-メトキシ-2,4-フェニレンジイソシアネート、5-ブロモ-2,4-トリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
前記一般式(VI)で表されるジイソシアネートの具体例としては、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3',5,5'-テトラエチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4'-ジフェニルスルフィドジイソシアネート、4,4'-ジフェニルスルホキシドジイソシアネート、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、3,3'-ジブロモ-4,4'-ビフェニルジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
脂肪族ジイソシアネートとしては、一般式(VII):
【0034】
【化11】

【0035】
(式中、X5及びX6はそれぞれ独立して単結合または炭素数1〜5のアルキレン基であり、X7は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のアルキレン基である)で表されるジイソシアネート、一般式(VIII):
【0036】
【化12】

【0037】
(式中、X8は炭素数1〜18のアルキレン基である)で表されるジイソシアネートおよび一般式(IX):
【0038】
【化13】

【0039】
(式中、X9およびX10はそれぞれ独立して単結合、または炭素数1〜5のアルキレン基である)で表されるジイソシアネートが挙げられる。
【0040】
前記一般式(VII)で表されるジイソシアネートの具体例としては、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4'-シクロへキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、2,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0041】
前記一般式(VIII)で表されるジイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
前記一般式(IX)で表されるジイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、α,α,α',α-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4-イソシアネートメチル-フェニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0043】
これらのジイソシアネートは単独で使用されても、2種類以上併用されてもよい。
【0044】
本発明に用いられるモノイソシアネートとしては、芳香族または脂肪族モノイソシアネートのいずれでもよい。具体例としては、フェニルイソシアネート、トシルイソシアネート、イソプロピルフェニルイソシアネート、メトキシフェニルイソシアネート、クロロフェニルイソシアネートなどのフェニレン骨格を有する芳香族モノイソシアネート、1-ナフチルイソシアネートなどのナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネート、および炭素数1〜10のアルキルイソシアネートなどの脂肪族モノイソシアネートが挙げられる。中でも、ナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネートが好ましく、ナフタレンイソシアネートがより好ましい。例えば、1種のみのモノイソシアネートが用いられる場合、ナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネートを用いることが好ましく、2種以上のモノイソシアネートが用いられる場合、少なくとも1種はナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネートであることが好ましく、全てがナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネートであることがより好ましい。かかる場合、前記一般式(III)および(IV)で表される末端構造単位中のR3またはR4のいずれか一方、またはその両方がナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネート残基となる。
【0045】
これらのモノイソシアネートは単独で使用されても、2種類以上併用されてもよい。
【0046】
本発明のポリカルボジイミド共重合体を調製する場合、モノイソシアネートは、前記ジイソシアネート100モルに対して1〜20モル用いることが好ましい。モノイソシアネートの使用量が1モル以上であれば、得られるポリカルボジイミド共重合体の分子量が大きくなりすぎず、架橋反応による溶液粘度の上昇または溶液の固化を起こすことが少なくなり、溶液の保存安定性の低下を防止することができる。一方、モノイソシアネートの使用量が20モル以下であれば、溶液粘度が低くなりすぎず、溶液の塗布乾燥によるフィルム成型において良好な成膜ができる。
【0047】
本発明に用いられるカルボジイミド化触媒としては、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-フェニル-2-ホスホレン-1-スルフイド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-1-ホスファ-3-シクロペンテン-1-オキシド、2,5-ジヒドロ-3-メチル-1-フェニルホスホール-1-オキシド、これらの異性体、3-ホスホレンが挙げられる。また、カルボジイミド化触媒として、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシド、ビス(オキサジフェニルホスフィノ)エタンなどのホスフィンオキシド類も使用できる。
【0048】
本発明のポリカルボジイミド共重合体を調製する場合、カルボジイミド化触媒はイソシアネート全量(100モル%)に対して0.001〜5モル%の範囲で使用できる。触媒量が0.001モル%以上であれば、重合に時間がかかりすぎることがなく実用的であり、一方、5モル%以下であれば、反応が速すぎて反応途中にゲル状に固化してしまったり、取扱いが著しく困難な固体が得られたりすることを防止できる。
【0049】
本発明に用いられる非プロトン性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼンなどのアルキルトルエン、アルキルベンゼン、ナフタレン、アセトン、ブタノン、パークレン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン等が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、パークレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、ナフタレン及びシクロヘキサンが好ましく、トルエンがさらに好ましい。これらは単独で使用されても、2種類以上併用されてもよい。また反応に関与しない成分が溶媒中に混在しても良い。
【0050】
本発明のポリカルボジイミド共重合体を調製する場合、非プロトン性溶媒は、溶液中の固形分の濃度が1〜90重量%になるように使用されることが好ましい。固形分の濃度が90重量%以下であれば、粘度が高くなったり、溶液の保存安定性が低下したりすることを防止できる。一方、固形分の濃度が1重量%以上であれば、ポリカルボジイミド共重合体をスラリーとして容易に得ることができる。
【0051】
なお反応の進行は赤外分光法によるイソシアネートのN=C=O伸縮振動(2270cm-1)の吸収の減少とカルボジイミドのN=C=N伸縮振動(2135cm-1)の吸収の増加を観測することで確認することができる。
【0052】
反応温度としては、通常、40〜100℃であり、好ましくは60〜80℃である。
【0053】
スラリー化は、反応終了後、冷却し、結晶化を進行させることにより行うことができる。冷却条件としては、冷却温度として室温以下、収率および得られる粉末の取り扱い性の観点から、好ましくは10度以下であり、スラリー化するまで撹拌を続けることが好ましい。また、冷却時間は、前記温度に達してから、10分以上保持することが好ましく、1時間以上保持することがより好ましい。なお、通常、保持時間は24時間以下である。また、冷却速度および撹拌条件により、最終的に得られるポリカルボジイミド共重合体の粉末の粒径を制御することができる。
【0054】
保存安定性を向上する観点から、生じたスラリーを濾過、洗浄後、減圧条件下、乾燥を行うことにより粉末とすることが好ましい。乾燥は好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下で行う。乾燥温度が40℃以下であれば、ポリカルボジイミド共重合体がさらに重合反応を起こし、有機溶媒に不溶な成分が生成することを防止することができる。また、乾燥が十分であれば、得られた粉末の保存安定性が低下して、有機溶媒に不溶な成分が生成してしまうことを防止することができる。
【0055】
以上のようにして得られた本発明のポリカルボジイミド共重合体の分子量分布において、GPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分は10%以下である。なお、GPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0056】
得られた本発明のポリカルボジイミド共重合体を種々の材料に適用する場合、ポリカルボジイミド共重合体を非プロトン性溶媒に溶解して使用すればよい。非プロトン性溶媒としては、前記と同様の溶媒が挙げられる。例えば、本発明のポリカルボジイミド共重合体をフィルムに適用する場合、ポリカルボジイミド共重合体を適切な非プロトン性溶媒に溶解し、その溶液を公知の方法、例えば、キャスティング、スピンコート、ロールコーティングなどにより、適当な厚さに製膜する。製膜されたフィルムは、通常、溶媒の除去に必要な温度で乾燥する。即ち、硬化反応を進行させず、乾燥させるよう、好ましくは20〜350℃、より好ましくは50〜200℃に温度設定して乾燥する。乾燥温度が20℃以上であれば、フィルム中の溶媒の残存がなく、フィルムの信頼性が高いので好ましい。一方、乾燥温度が350℃以下であれば、フィルムの熱硬化を抑えて充分に乾燥させることができるので好ましい。乾燥時間としては、好ましくは0.5〜10分間、より好ましくは0.5〜3分間である。
【0057】
本発明のポリカルボジイミド共重合体は、加熱処理による黄変を生じにくく、保存安定性に優れ、加工性・成形性にも優れる。従って、本発明のポリカルボジイミド共重合体は、透明性が必要とされる光学材料に適用することができ、保存安定性に優れることより、工業的に利用する上でコストの削減に大いに貢献する。
【実施例】
【0058】
つぎに、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【0059】
実施例1
300mlの四ツ口フラスコにジムロート冷却管、温度計およびメカニカルスターラーを取り付けた合成装置を用意し、原料投入口よりトルエン151gを入れた。次いで原料である4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す、三井武田ケミカル製コスモネートPH)99g(395mmol)と1-ナフチルイソシアネート10g(59.3mmol)を加え、撹拌し加熱を行った。系内が40℃になった時点で、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.38g(2mmol)を添加して、攪拌しながら80℃に昇温し、さらに1時間半保持した。反応の進行は赤外分光法により確認した。具体的にはイソシアネートのN=C=O伸縮振動(2270cm-1)の吸収の減少とカルボジイミドのN=C=N伸縮振動(2135cm-1)の吸収の増加を観測した。
【0060】
次いで、反応系を冷却し、室温まで低下させ、その温度を1時間保持した。系内温度が30℃となった付近から白濁が始まり、最終的にスラリーを形成した。ヌッチェを用い減圧濾過し、ウエットケーキを得た。ウエットケーキをアセトンで洗浄し、軽く粉砕してから、室温で減圧乾燥を行い、72.8gのポリカルボジイミド共重合体を白色粉末として得た(収率75%)。
【0061】
得られたポリカルボジイミド共重合体のGPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量をGPCにより、以下の条件下、ポリスチレン換算で測定した(東ソーの標準計算方法を用いた)。
【0062】
分析装置:HLC-8200(東ソー社製)
データ処理装置:GPC-8020 mode II
解析ソフト:Multi Station Ver. 04.20
カラム:TSK-GEL Super HZM-M, Super HZM-2000
カラムサイズ:6.0×150
流量:0.35ml/min
注入試料濃度:2mg/mL
注入量:10μL
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
その結果、分子量が3000以下の成分は7%であった。
【0063】
上記で得られたポリカルボジイミド共重合体32gをシクロヘキサノン68gに40℃で溶解させ、キャストし、120℃にて2時間硬化した。得られたフィルムは目視において透明であり、アッベ屈折率計で25℃にて測定した屈折率は589nmにおいて1.712であった。透過スペクトルを測定したところ、400、420及び440nmでの透過率はそれぞれ、表1に示すようになった。
【0064】
実施例2
トルエン127g、MDI 72.6g(290mmol)、1-ナフチルイソシアネート4.9g(29mmol)および3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.28g(1.5mmol)を用いる以外は実施例1と同様に操作して、52.1gのポリカルボジイミド共重合体を白色粉末として得た(収率73%)。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は5%であった。
【0065】
得られたポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0066】
実施例3
トルエン147g、MDI 75g(300mmol)、フェニルイソシアネート5.4g(45mmol)および3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.29g(1.5mmol)を用いる以外は実施例1と同様に操作して、54.6gのポリカルボジイミド共重合体を白色粉末として得た(収率74%)。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は4%であった。
【0067】
得られたポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0068】
比較例1
実施例1と同様の合成装置を用い、原料投入口よりシクロヘキサノン191gを入れた。次いで原料であるMDI 99g(395mmol)と1-ナフチルイソシアネート10g(59.3mmol)を加え、撹拌し加熱を行った。系内が40℃になった時点で、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.38g(2mmol)を添加して、攪拌しながら80℃に昇温し、さらに1時間半保持した。反応の進行は実施例1と同様に観察した。
【0069】
次いで、反応系を冷却し、室温まで低下させ、その温度を1時間保持した。系内温度が30℃付近になっても白色の沈殿は得られず、溶液は透明なままであった。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は19%であった。
【0070】
上記で得られた溶液をキャストし、120℃にて2時間硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0071】
比較例2
実施例1と同様の合成装置を用い、原料投入口よりシクロヘキサノン127gを入れた。次いで原料であるMDI 72.6g(290mmol)と1-ナフチルイソシアネート4.9g(29mmol)を加え、撹拌し加熱を行った。系内が40℃になった時点で、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.28g(1.5mmol)を添加して、攪拌しながら80℃に昇温し、さらに1時間半保持した。反応の進行は実施例1と同様に観察した。
【0072】
次いで、反応系を冷却し、室温まで低下させ、その温度を1時間保持した。系内温度が30℃付近になっても白色の沈殿は得られず、溶液は透明なままであった。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は17%であった。
【0073】
上記で得られた溶液をキャストし、120℃にて2時間硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0074】
比較例3
実施例1と同様の合成装置を用い、原料投入口よりシクロヘキサノン147gを入れた。次いで原料であるMDI 75g(300mmol)とフェニルイソシアネート5.4g(45mmol)を加え、撹拌し加熱を行った。系内が40℃になった時点で、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.29g(1.5mmol)を添加して、攪拌しながら80℃に昇温し、さらに1時間半保持した。反応の進行は実施例1と同様に観察した。
【0075】
次いで、反応系を冷却し、室温まで低下させ、その温度を1時間保持した。系内温度が30℃付近になっても白色の沈殿は得られず、溶液は透明なままであった。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は18%であった。
【0076】
上記で得られた溶液をキャストし、120℃にて2時間硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0077】
実施例4
実施例1で得られたポリカルボジイミド共重合体の粉末を室温で1ヶ月保存した。その後、保存後のポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は7%であった。さらに、保存後のポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0078】
実施例5
実施例2で得られたポリカルボジイミド共重合体の粉末を室温で1ヶ月保存した。その後、保存後のポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は5%であった。さらに、保存後のポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0079】
実施例6
実施例3で得られたポリカルボジイミド共重合体の粉末を室温で1ヶ月保存した。その後、保存後のポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は4%であった。さらに、保存後のポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0080】
実施例7
反応系を冷却して0℃まで低下させた以外は実施例1と同様に操作して、78.6gのポリカルボジイミド共重合体を白色粉末として得た(収率81%)。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は9%であった。
【0081】
得られたポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0082】
実施例8
実施例1と同様の合成装置を用い、原料投入口よりトルエン100gおよびシクロヘキサン52gを入れた。次いで原料であるMDI 89g(356mmol)、ナフタレンジイソシアネート(三井武田ケミカル製コスモネートND)8.3g(40mmol)と1-ナフチルイソシアネート10g(59.3mmol)を加え、撹拌し加熱を行った。系内が40℃になった時点で、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド0.38g(2mmol)を添加して、攪拌しながら80℃に昇温し、さらに1時間半保持した。反応の進行は実施例1と同様に観察した。
【0083】
次いで、反応系を冷却し、0℃まで低下させ、その温度を1時間保持した。系内温度が30℃となった付近から白濁が始まり、最終的にスラリーを形成した。ヌッチェを用い減圧濾過し、ウエットケーキを得た。ウエットケーキをアセトンで洗浄し、軽く粉砕してから、室温で減圧乾燥を行い、73.1gのポリカルボジイミド共重合体を白色粉末として得た(収率83%)。得られたポリカルボジイミド共重合体の分子量を実施例1と同様に測定したところ、分子量が3000以下の成分は8%であった。
【0084】
得られたポリカルボジイミド共重合体を実施例1と同様に硬化してフィルムを作製したところ、得られたフィルムは目視において透明であった。さらに、実施例1と同様に屈折率および透過スペクトルを測定し、その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
いずれの実施例も比較例と比べ、屈折率および透過率において同等以上であり、特に透過率は比較例と比較して(実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3との比較)数%程度高くなっており、キャストフィルムの透明性が向上していることがわかる。また、実施例1〜3で得られたポリカルボジイミド共重合体を1ヶ月保存した後(実施例4〜6)も、物性に変化は見られなかった。一方、比較例で得られたポリカルボジイミド共重合体の溶液は、室温で1週間保存するとゲル化してしまい使用できなくなった。従って、粉末としてポリカルボジイミド共重合体を得たことにより、保存安定性が良くなることが明らかとなった。さらに、実施例7および8において、スラリー化の段階で0℃にまで冷却したところ、収率の向上が確認された。
【0087】
以上のことより、本発明のポリカルボジイミド共重合体は、従来のポリカルボジイミド共重合体と比較して同等以上の屈折率および透過率を有しつつも、保存安定性が飛躍的に向上することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリカルボジイミド共重合体は半硬化フィルム状で得られ、プレス加工によるレンズシートなどの新しい分野に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(II):
【化1】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基である)
で表される繰り返し単位をn個有し、かつ両末端に、モノイソシアネートより誘導された一般式(III):
【化2】

(式中、R3はモノイソシアネート残基である)
で表される末端構造単位、および
モノイソシアネートより誘導された一般式(IV):
【化3】

(式中、R4はモノイソシアネート残基である)
で表される末端構造単位を有する、一般式(I):
【化4】

(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してジイソシアネート残基であり、R3およびR4はそれぞれ独立してモノイソシアネート残基である)
で表されるポリカルボジイミド共重合体であって、該ポリカルボジイミド共重合体のGPC分析によるポリスチレン換算分子量分布における分子量が3000以下の成分が10%以下であることを特徴とする、ポリカルボジイミド共重合体。
【請求項2】
R1またはR2のいずれか一方、またはその両方が芳香族ジイソシアネート残基である、請求項1記載のポリカルボジイミド共重合体。
【請求項3】
R3またはR4のいずれか一方、またはその両方がナフタレン骨格を有する芳香族モノイソシアネート残基である、請求項1または2記載のポリカルボジイミド共重合体。

【公開番号】特開2006−241375(P2006−241375A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61369(P2005−61369)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】