説明

ポリカルボン酸系系重合体およびその製造方法

【課題】低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品を簡便かつ効率的なプロセスで製造する製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
(i)2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程と、(ii)加熱および/または光照射により重合を開始する工程と、(iii)反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程を含む、ポリカルボン酸系重合体の製造方法であって、全単量体100モル%に対する上記2−メチレングルタル酸(塩)の使用量が30〜100モル%であり、全ての原料100質量%に対する上記溶媒の使用量が50〜85質量%である、ポリカルボン酸系重合体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカルボン酸系系重合体重合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりポリアクリル酸ナトリウム等に代表されるポリカルボン酸系重合体は、種々の分野において広く使用されているが、その中でも低分子量のものは、キレート能や分散能に優れており、無機顔料や金属イオン等の分散剤;洗剤ビルダー;防蝕剤やスケール防止剤等の水処理剤;セメント添加剤;製鉄原料の造粒処理剤等の各種用途に好適に使用されている(例えば特許文献1〜2)。
ここで、上記重合体は、例えば洗剤組成物への洗剤ビルダーとして用いられる場合、水溶液品に比べ粉末品が、濃度、ブレンド比の制約を受けず、また最終製品が粉末品である場合には乾燥コストも削減できることから好ましいこととなる。
低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品を製造する方法としては、水溶液中でカルボン酸系単量体を重合して、低分子量ポリカルボン酸系重合体水溶液を製造した後に、該水溶液を乾燥して粉末化する方法が知られているが、ポリカルボン酸系重合体水溶液を乾燥して粉末化する方法としては、金属の伝熱面に付着させて乾燥しその後かきとるタイプのドラムドライヤー、スプレーで噴霧して熱風で乾燥するスプレードライヤー等を用いる方法が知られている。しかし、上記方法では高粘度の液体の乾燥は困難であり、水で希釈して粘度を下げて乾燥する必要が有るが、その場合乾燥に要するエネルギー消費が増大したり、製造効率が低い等の問題があった。
特許文献3には、粉末状物質および/またはペースト状物質を用いた攪拌状態下に、ポリカルボン酸(塩)水溶液(A)、ポリカルボン酸(塩)の水膨潤ゲル(B)、ポリカルボン酸エステル(C)から選択される少なくとも1つの重合体を含有する組成物を、逐次的に供給する工程を含むことを特徴とする、ポリカルボン酸(塩)を含有する粉体の製造方法が開示されている。当該製造方法によれば、上記粉体化方法を、効率化、簡便化できることが開示されている。しかしながら、ポリカルボン酸(塩)水溶液等を製造した後、ポリカルボン酸(塩)水溶液を少量づつ攪拌系に逐次的に供給する必要があることから、十分な効率化が達成されているとは言いがたいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−128715号公報
【特許文献2】特開2000−80396号公報
【特許文献3】特開2001−81132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品への要求性能が高まるにつれ、効率的に低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品を製造する方法が求められてきた。
従って本発明は、低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品を簡便かつ効率的なプロセスで製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、単量体として、2−メチレングルタル酸(塩)を必須として使用し、単量体と溶媒の使用量を予定の範囲に設定し、溶剤の一部を重合反応中に重合系から除去することにより、残存単量体の少ない、低分子量のポリカルボン酸系重合体の粉末品が製造可能であることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明にかかるポリカルボン酸系重合体の製造方法は、(i)2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程と、(ii)加熱および/または光照射により重合を開始する工程と、(iii)反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程を含む、ポリカルボン酸系重合体の製造方法であって、全単量体100モル%に対する上記2−メチレングルタル酸(塩)の使用量が30〜100モル%であり、全ての原料100質量%に対する上記溶媒の使用量が50〜85質量%である、ポリカルボン酸系重合体の製造方法である。
本発明の他の一つの形態においては、ポリカルボン酸系重合体が提供される。すなわち本発明のポリカルボン酸系重合体は、(i)2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程と、(ii)加熱および/または光照射により重合を開始する工程と、(iii)反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程により製造されるポリカルボン酸系重合体であって、全単量体100モル%に対する上記2−メチレングルタル酸(塩)の使用量が30〜100モル%であり、全ての原料100質量%に対する上記溶媒の使用量が50〜85質量%である、ポリカルボン酸系重合体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法によれば、簡便な方法で、低分子量で、残存単量体の少ないポリカルボン酸系重合体を、粉末状で効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリカルボン酸系重合体の製造方法]
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程を必須としている。
本発明の製造方法において、単量体の使用量の一部または全部を重合開始前(添加直後に重合が開始する場合を含む)に反応器に添加することが好ましい。重合開始前に反応器に添加する単量体の割合(モル%)は、全使用する単量体100モル%に対して、30モル%以上100モル%以下が好ましく、50モル%以上100モル%以下がより好ましく、90モル%以上100モル%以下が更に好ましく、100モル%(全量)であることが特に好ましい。上記の範囲で単量体を重合開始前に反応器に添加することにより、残存単量体が顕著に低減可能となる。
なお、本発明において、重合開始前に添加とは、回文式においては重合反応が開始する前に添加すること(いわゆる初期仕込み)を言い、連続式においては反応装置の経路において、重合が開始する位置の前の位置で添加することを言う。
具体的には、全使用する単量体に対する重合開始前に反応器に添加する単量体の割合とは、回文式(バッチ式)重合法においては、重合開始前に反応器に添加する単量体のモル数/1バッチに使用する全ての単量体のモル数×100で算出され、連続重合法においては、ある時間において反応液の進行方向において重合開始地点の手前の単量体供給口から添加される単量体の添加速度/ある時間において全ての単量体供給口から添加される単量体の添加速度×100で算出される。
単量体は、単量体のみで反応器に添加しても良いが、溶媒の一部または全部に溶解して反応器に添加することが好ましい。
【0008】
本発明の製造方法において、重合開始剤の使用量の一部または全部を重合開始前(添加直後に重合が開始する場合を含む)に反応器に添加することが好ましい。重合開始前に反応器に添加する重合開始剤の割合(質量%)は、全使用する重合開始剤100質量%に対して、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、100質量%(全量)であることが特に好ましい。上記の範囲で重合開始剤を重合開始前に反応器に添加することにより、残存単量体が顕著に低減可能となる。
全使用する重合開始剤に対する重合開始前に反応器に添加する重合開始剤の割合については、上記の単量体の場合と同様に算出される。
重合開始剤は、重合開始剤のみで反応器に添加しても良いが、溶媒の一部または全部に溶解して反応器に添加することが好ましい。
【0009】
本発明の製造方法において、溶媒の使用量の一部または全部を重合開始前(添加直後に重合が開始する場合を含む)に反応器に添加することが好ましい。重合開始前に反応器に添加する溶媒の割合(質量%)は、全使用する溶媒100質量%に対して、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、100質量%(全量)であることが特に好ましい。上記の範囲で溶媒を重合開始前に反応器に添加することにより、残存単量体が顕著に低減可能となる。
全使用する溶媒に対する重合開始前に反応器に添加する溶媒の割合については、上記の単量体の場合と同様に算出される。
【0010】
<2−メチレングルタル酸(塩)>
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、単量体として、2−メチレングルタル酸(塩)を必須として使用することを特徴としている。
本発明において、2−メチレングルタル酸(塩)とは、2−メチレングルタル酸、2−メチレングルタル酸の塩を表し、塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩である。
【0011】
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法において使用する全単量体に対する2−メチレングルタル酸(塩)の使用割合(質量%)としては、全単量体100モル%に対して30モル%以上100モル%以下が好ましく、50モル%以上100モル%以下が好ましく、90モル%以上100モル%以下が更に好ましく、100モル%(全量)であることが特に好ましい。上記の範囲で使用することにより、低分子量の重合体を製造することが容易になり、残存単量体が顕著に低減可能となる。
【0012】
<その他の単量体>
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法においては、2−メチレングルタル酸(塩)の他に、他の単量体を使用することが可能である。他の単量体としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、及びこれらの塩等の不飽和カルボン酸系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アリルアミンまたはその4級化物等のアミノ基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体及びこれらの塩;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体等(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリルート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1〜300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体、等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。ここで、「塩」とは上述した通りである。
【0013】
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法において任意で使用する、その他の単量体の使用割合(質量%)としては、全単量体100モル%に対して0モル%以上70モル%以下が好ましく、0モル%以上50モル%以下が好ましく、0モル%以上10モル%以下が更に好ましく、0モル%(全量)であることが特に好ましい。
【0014】
<重合開始剤>
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、加熱および/または光照射により重合を開始する工程を必須としている。すなわち、本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、加熱および/または光照射によりラジカルを発生する重合開始剤を使用することを必須としている。
そのような重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、加熱によりラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。光照射によりラジカルを発生する重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、1,1′−アゾビス(1−アミジノ−1−シクロプロピルエタン)、2,2′−アゾビス(2−アミジノ−4−メチルペンタン)、2,2′−アゾビス(2−N−フェニルアミノアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(1−イミノ−1−エチルアミノ−2−メチルプロパン)、2,2′−アゾビス(1−アリルアミノ−1−イミノ−2−メチルブタン)、2,2′−アゾビス(2−N−シクロへキシルアミジノプロパン)、2,2′−アゾビス(2−N−ベンジルアミジノプロパン)及びその塩酸、硫酸、酢酸塩等、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)及びそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(イソブチルアミド)、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−(1,1′−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−1,1′−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等のアゾ系光重合性化合物;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907、商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製);オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンと4−メチルベンゾフェノンとの共融混合物、4−メチルベンゾフェノンとベンゾフェノンとの液状混合物、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドとオリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]とメチルベンゾフェノン誘導体との液状混合物、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルファニル)プロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、α−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、エチル4−ジメチルアミノベンゾエート、アクリル化アミンシナジスト、ベンゾイン(iso−及びn−)ブチルエステル、アクリルスルホニウム(モノ、ジ)ヘキサフルオロリン酸塩、2−イソプロピルチオキサントン、4−ベンゾイル−4′−メチルジフェニルスルフィド、2−ブトキシエチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンゾインヒドロキシアルキルエーテル、ジアセチル及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、ジフェニルジスルフィド及びその誘導体、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体等である。
これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。例えば、過酸化水素と過硫酸塩の組み合わせは好ましい形態である。
【0015】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体を重合できる量であれば特に制限されないが、全単量体成分1モル(使用する単量体の全量)に対して、15g以下、より好ましくは1〜12gであることが好ましい。
上記重合開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
上記重合開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10gであることが好ましく、2.0〜5.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
上記重合開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0016】
<溶媒>
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、得られる重合体の分子量を適切なものとすることが可能となることから、溶剤の使用を必須としている。
使用する溶媒としては、水を含むことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることがより好ましく、80質量%以上が水であることがさらに好ましく、100質量%が水であることが特に好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。
【0017】
本発明の製造方法で使用可能な水以外の溶媒(有機溶媒)としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、通常水とともに使用される。
【0018】
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法において、水等の溶媒の使用量としては、全ての原料100質量%に対して50〜85質量%が好ましい。より好ましくは、52質量%以上であり、更に好ましくは、55質量%以上である。また、より好ましくは、83質量%以下であり、更に好ましくは、82質量%以下である。上記範囲であれば、得られる重合体の分子量を低くすることが可能となり、また水に対する不溶分を低減することができる。
【0019】
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程(以下、工程Cとも言う)を必須としている。本工程により、重合反応が十分に進行し、得られる重合体に含まれる残存単量体量を低減することが可能となり、また得られる重合体が取り扱いやすい形態となる。
得られる重合体は、必要に応じて粉砕工程等を設けることにより、所望の粒子の粉体に調整することが可能である。
【0020】
<連鎖移動剤>
本発明の2−メチレングルタル酸系共重合体の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造される2−メチレングルタル酸系共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量の2−メチレングルタル酸系共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られる(2−メチレングルタル酸系共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができるととなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。
本発明の製造方法において、上述したように、亜硫酸および/または亜硫酸塩(以下、単に「亜硫酸(塩)」と記載する)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態であるが、その場合、亜硫酸(塩)に加えて開始剤を使用する。さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノ
ールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0021】
<反応促進剤>
本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えても良い。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明の疎水基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0022】
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、重合開始前に使用量の50質量%以上を添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては重合体の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である共重合体を繊維処理剤として用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
【0023】
本発明の本発明のポリカルボン酸系重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0025】
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe等の形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Feであり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Feである。
【0026】
本発明の方法において、連鎖移動剤の添加量は、上記単量体が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは上記単量体からなる全単量体(使用する単量体全量)1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。しかも、経済的にも不利となるおそれがある。
【0027】
本発明の製造方法において、任意成分である連鎖移動剤(または反応促進剤)の使用量の一部または全部を重合開始前(添加直後に重合が開始する場合を含む)に反応器に添加することが好ましい。重合開始前に反応器に添加する任意成分である連鎖移動剤(または反応促進剤)の割合(質量%)は、全使用する任意成分である連鎖移動剤(または反応促進剤)100質量%に対して、30質量%以上100質量%以下が好ましく、50質量%以上100質量%以下が好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、100質量%(全量)であることが特に好ましい。
【0028】
<重合条件>
本発明の製造方法において、重合温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、180℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、160℃以下であり、更に好ましくは、140℃以下である。上記範囲であれば、残存単量体を低減する傾向にある。
上記重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0029】
本発明の製造方法が、光重合工程を含む場合には、単量体と光照射によりラジカルを発生する重合開始剤とを含有する反応液に光を照射することが好ましい。照射する光としては、紫外線が好適であり、中でも近紫外線を照射することが好ましい。
照射時間としては、50分以下であることが好ましく、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下である。
上記近紫外線を照射する装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等が挙げられる。また、近紫外線の波長領域としては、300nm以上であり、また、500nm以下であることが好適である。
上記光重合工程において、近紫外線の照射強度としては、5W/m以上であることが好ましく、また、100W/m以下であることが好ましい。より好ましくは、5W/m以上であり、また、50W/m以下である。最も好ましくは、10W/m以上であり、また、40W/m以下である。
【0030】
重合時間は特に制限されないが、好ましくは20〜420分であり、より好ましくは30〜390分であり、さらに好ましくは40〜360分であり、最も好ましくは50〜300分である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、加熱および/または光照射により重合を開始してから、反応溶液の固形分が90〜100質量%に濃縮されるまでの時間を表す。
【0031】
本発明の製造方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、上記工程Cが容易になることから、減圧または常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法における重合中のpHは、特に制限はなく、使用目的(用途)により適宜調整可能である。
【0033】
<反応装置、反応器>
本発明の製造方法は、上記の通り、回文式(バッチ式)連続方法、連続式重合方法のいずれも採用可能である。
使用する反応器としては、釜型の反応釜、槽型または直方体型の反応槽、管状の反応管、ニーダー型の反応器、可動式ベルト式の反応器等が例示される。
【0034】
本発明の製造方法においては、攪拌条件下で重合反応を行なっても構わないが、好ましくは、静置重合法が採用される。本発明における静置重合法とは、重合時に攪拌機を使用した強制的な撹拌を伴わない重合を言う。静置重合法としては、回分式でも連続式であっても良い。連続式としては、可動式ベルトを用いた重合等が好ましい。ここで、管型反応器による連続重合も、強制的に乱流を生じさせない限り、静置重合に含まれる。上記方法を採用することにより、重合体の分子量を低く抑えたり、残存単量体を低減することが可能になる。
本発明における静置重合とは、重合中に攪拌機を使用した強制的な撹拌を伴わないことを表し、重合前に予め原料を混合して均一にしておくことは構わず、また均一にしておくことが好ましい。
【0035】
[ポリカルボン酸系重合体]
本発明のポリカルボン酸系重合体は、2−メチレングルタル酸(塩)由来の構造単位を有することを特徴としている。本発明のポリカルボン酸系重合体は、2−メチレングルタル酸系単量体を必須とする単量体(組成物)を重合することにより製造することが可能である。
本発明において、2−メチレングルタル酸(塩)由来の構造単位とは、2−メチレングルタル酸(塩)がラジカル重合することにより形成される構造単位であり、例えば以下の一般式(1)で表される。
【0036】
【化1】

【0037】

上記一般式(1)において、Mはそれぞれ独立に、水素原子、金属原子、アンモニウムイオン、4級アミン塩を表す。
【0038】
本発明のポリカルボン酸系重合体の有する2−メチレングルタル酸(塩)由来の構造単位の割合(質量%)は、全単量体(2−メチレングルタル酸(塩)、その他の単量体)由来の構造単位100(モル%)に対して、30モル%以上100モル%以下が好ましく、50モル%以上100モル%以下が好ましく、90モル%以上100モル%以下が更に好ましく、100モル%(全量)であることが特に好ましい。上記の範囲であることにより、重合体のキレート力や分散性能が向上する。
【0039】
本発明のポリカルボン酸系重合体は、2−メチレングルタル酸(塩)由来の構造単位に加え、任意ではあるが、その他の単量体由来の構造単位を有していても構わない。
本発明のポリカルボン酸系重合体の有するその他の単量体由来の構造単位の割合(質量%)は、全単量体(2−メチレングルタル酸(塩)、その他の単量体)由来の構造単位100(モル%)に対して、0モル%以上70モル%以下が好ましく、0モル%以上50モル%以下が好ましく、0モル%以上10モル%以下が更に好ましく、0モル%(全量)であることが特に好ましい。
【0040】
本発明の製造方法により得られる、ポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは1000〜100000であり、より好ましくは2000〜30000であり、さらに好ましくは3000〜20000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、重金属イオンのキレート力が低下し、繊維処理剤として十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のポリカルボン酸系重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0041】
また、本発明のポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は、具体的には、好ましくは500〜50000であり、より好ましくは1000〜15000であり、さらに好ましくは2000〜10000である。この数平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この数平均分子量の値が小さすぎると、重金属イオンのキレート力が低下し、繊維処理剤として十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のポリカルボン酸系重合体の数平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0042】
[ポリカルボン酸系重合体組成物(重合体組成物)]
本発明の重合体組成物中には、本発明のポリカルボン酸系重合体が必須に含まれる。このほか、未反応の2−メチレングルタル酸系単量体、未反応のその他の単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物等が含まれうる。
【0043】
重合体組成物中に存在する未反応の単量体の含有量は、使用する単量体の種類によっても異なるが、重合体組成物の固形分100質量%に対して1質量%未満が好ましい。より好ましくは0.5%未満であり、0.1%未満である。
【0044】
なお、本願でいう重合体組成物は、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、好ましくは、不純物除去などの精製工程を経ずに得られる。
【0045】
本発明の重合体組成物中には、本発明の2−メチレングルタル酸系重合体の他、水などの溶剤を含んでいても良い。水の含有量は、重合体組成物100質量%に対して、0〜10質量%程度が好ましく、0〜5質量%程度がより好ましい。
本発明の重合体、重合体組成物は、繊維処理剤、水処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0046】
<繊維処理剤>
本発明の重合体組成物は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体、重合体組成物を含む。
【0047】
上記繊維処理剤における本発明の重合体組成物の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0048】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0049】
本発明の重合体組成物と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体組成物1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0050】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0051】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体組成物と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体組成物と、過酸化物とを配合することが好ましい。アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合しても良い。本願の重合体は、重金属のキレート能に優れることから、過酸化物の異常分解を抑制できる。また、珪酸スケールの沈着を抑制する効果があることから、漂白効果を向上することができる。
【0052】
<水処理剤>
本発明の重合体組成物は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0053】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0054】
<顔料分散剤>
本発明の重合体や重合体組成物は、顔料分散剤に用いることができる。
本発明の重合体は単独で顔料分散剤として使用することができるが、本発明の顔料分散剤には、必要に応じて、水などの溶媒や、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0055】
上記顔料分散剤中における、本発明の重合体の含有量は、顔料分散剤全体に対して、好ましくは0.5〜10重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
本発明によれば、低粘度で粘性の経時安定性を有し、かつ高濃度の製紙用顔料スラリーを提供することが可能となる。ひいては、該スラリーを用いて塗工した際に塗工欠陥を抑制し、良好な原紙被覆性、印刷光沢、耐ブリスター性、ムラのない印刷面感を与え、かつ顔料が本来持つ白色度、不透明度、インキ受理性の有意点を備えた印刷用塗工紙を提供することが可能となる。
【0056】
本発明に用いられる顔料としては、特に制限はないが、例えばカオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、水酸化アルミニウム、プラスティックピグメント等が挙げられる。
【0057】
本発明において、顔料を調整する方法としては、従来公知の方法が適宜参照され、あるいは組み合わされることにより行なうことができるが、例えば、一次分散を行い、それを湿式粉砕処理する方法が挙げられる。この方法は、低粘度であり、かつ分散安定性に優れた高濃度の顔料スラリーを得ることができる点、好適である。無論、本発明に置ける顔料の調整方法は、この湿式粉砕処理法に限定されるものではなく、湿式粉砕処理を施さない調整方法をとることもなんら制限されるものではない。上記顔料の調整方法において、一次分散の方法は特に制限されるものではないが、ミキサーで混合することが好ましく、例えば、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好適である。
【0058】
湿式粉砕処理の際、本発明の重合体を粉砕機に仕込んで粉砕しても良い。このような場合、該本発明の重合体は粉砕助剤としての役割も発揮する。
【0059】
上記スラリーに含まれる顔料の平均粒径としては、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下である。なお、ここで言う平均粒径は、後述の実施例で用いられたような、レーザー粒度分布計にて計測された粒径である。また、所望の粒径が好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上であることが好ましい。
【0060】
上記顔料分散剤を顔料の分散剤として用いる場合、該顔料分散剤の使用量は本発明の重合体を顔料100質量部に対して、0.05〜2.0質量部とすることが好ましい。該顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0061】
本発明における顔料スラリーとしてはまた、固形分濃度が65質量%以上であるものであることが好ましい。
【0062】
上記顔料スラリーの粘度は、特に制限はされないが、好ましくは1000mPa・s以下であり、より好ましくは600mPa・s以下である。1000mPa・sより高い場合、上記スラリーを主体として調整された塗工液が、高速で高剪断力を受けながら塗工されたときに、ストリーク、ブリーディングや石筍等の塗工欠陥を発生し易く、優れた塗工紙面感を得られない虞がある。
なお、上記顔料スラリー粘度は、B型粘度計を使用し、測定条件としては、ローターNo.3、60rpm、1分間で測定した値をいう。
【0063】
<洗剤組成物>
本発明の重合体は、洗剤組成物にも添加しうる。洗剤組成物における本発明の重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、本発明の重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
上記洗剤組成物は、本発明の重合体組成物に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
また、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、500mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは400mg/L以下であり、さらに好ましくは300mg/L以下であり、特に好ましくは200mg/L以下であり、最も好ましくは100mg/L以下である。カオリン濁度の値としては、以下の手法により測定される値を採用するものとする。
【0064】
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度が高い硬水(例えば、100mg/L以上)の地域中で使用しても、塩の析出が少なく、優れた洗浄効果を有する。この効果は、洗剤組成物が、LASのようなアニオン界面活性剤を含む場合に特に顕著である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、本発明の2−メチレングルタル酸系共重合体の重量平均分子量、未反応の単量体の定量、重合体(組成物)および重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。
【0066】
<重量平均分子量および数平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI RI Detector L−2490
カラム:東ソー製 TSK−GEL G3000PWXL
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLY ACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液。
【0067】
<重合体組成物中の単量体等の測定>
単量体の測定は、下記条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
装置:
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:HITACHI UV(検出波長:214nm) Detector L−2400
カラム:東ソー製 TSK−GEL G3000PWXL
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:MGAまたはAA検量線
溶離液:リン酸二水素ナトリウム12水和物/リン酸水素二ナトリウム2水和物(34.5g/46.2g)の混合物を純水にて5000gに希釈した溶液。
【0068】
<重合体組成物、重合体水溶液の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、170℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0069】
<クレー分散能>
1)まず、グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.6g、および、48%水酸化ナトリウム水溶液とイオン交換水を加えて600g(pH10)としたグリシン緩衝溶液を調製した。
2)また、塩化カルシウム・2水和物を0.369g、塩化マグネシウム0.168g、および上記の1)で調製したグリシン緩衝溶液60gをそれぞれ秤量し、さらにイオン交換水を加えて1000gとして、分散液を調製した。
3)一方、得られた重合体の水溶液を、固形分換算濃度で0.1質量%となるように調製した。
4)試験管に、JIS試験用粉体I、8種(関東ローム、微粒:日本粉体工業技術協会製
)のクレー0.3gを入れ、上記の2)で調製した分散液28.5g、上記の3)で調製した水溶液1.5gを添加した。この際、試験液のカルシウム濃度は炭酸カルシウム換算で300ppmであった。
5)試験管をパラフィルムで密封した後、クレーが全体に分散するように軽く振り、その
後さらに上下に20回振った。
6)この試験管を直射日光の当たらないところに20時間静置し、その後分散液の上澄み
をホールピペットで5mL採取した。
7)この液をUV分光器を用いて、波長380nm、1cmのセルで吸光度(ABS)を
測定し、この値をクレー分散能とした。
【0070】
<実施例1>
50mLのガラス製ビーカーに、2−メチレングルタル酸(以下、MGAと称す。)3.0g、純水4.7g、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと称す。)3.1g、および、モール塩0.0002gを仕込み、均一になるまで攪拌した。
上記溶液5.0gをアルミカップに移し、130℃に昇温した乾燥機中で10分間保持した後、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと称す。)0.3gを一括で添加し、すぐに静置した。
上記反応溶液を更に60分間保持した後、乾燥機から取り出し室温に戻すことで、重合を終了した。このようにして、固形分濃度98%以上の粉末状重合体(1)を得た。
粉末状重合体(1)を分析したところ、残存MGAは0.0質量%であった。
【0071】
<実施例2>
50mLのガラス製ビーカーに、MGA3.0g、純水4.7g、48%NaOHと3.1g、および、モール塩0.0002gを仕込み、均一になるまで攪拌した。
上記溶液5.0gをアルミカップに移し、130℃に昇温した乾燥機中で10分間保持した後、15%NaPS0.3gを一括で添加し、均一になるように攪拌した。
上記反応溶液を更に60分間保持した後、乾燥機から取り出し室温に戻すことで、重合を終了した。このようにして、固形分濃度98%以上の粉末状重合体(2)を得た。
残存MGAは、粉末状重合体(2)の固形分に対し、2.4質量%であった。
【0072】
<実施例3>
50mLのガラス製ビーカーに、MGA3.0g、純水16.2g、48%NaOHと3.1g、および、モール塩0.0005gを仕込み、均一になるまで攪拌した。
上記溶液5.0gをアルミカップに移し、130℃に昇温した乾燥機中で10分間保持した後、15%NaPS0.15gを一括で添加し、すぐに静置した。
上記反応溶液を更に60分間保持した後、乾燥機から取り出し室温に戻すことで、重合を終了した。このようにして、固形分濃度98%以上の粉末状重合体(3)を得た。
残存MGAは、粉末状重合体(3)の固形分に対し、1.1質量%であった。
【0073】
<実施例4>
50mLのガラス製ビーカーに、MGA3.0g、純水16.2g、48%NaOHと3.1g、および、モール塩0.0005gを仕込み、均一になるまで攪拌した。
上記溶液5.0gをアルミカップに移し、130℃に昇温した乾燥機中で10分間保持した後、15%NaPS0.15gを一括で添加し、均一になるように攪拌した。
上記反応溶液を更に60分間保持した後、乾燥機から取り出し室温に戻すことで、重合を終了した。このようにして、固形分濃度98%以上の粉末状重合体(4)を得た。
残存MGAは、粉末状重合体(4)の固形分に対し、1.4質量%であった。
【0074】
<比較例1>
50mLのガラス製ビーカーに、80%AA3.75g、純水15.25g、48%NaOHと3.1g、および、モール塩0.0005gを仕込み、均一になるまで攪拌した。
上記溶液0.5gをアルミカップに移し、130℃に昇温した乾燥機中で10分間保持した後、15%NaPS0.03gを一括で添加し、均一になるように攪拌した。
上記反応溶液を更に60分間保持した後、乾燥機から取り出し室温に戻すことで、重合を終了した。このようにして、固形分濃度98%以上のゲル状の比較重合体(1)を得た。
【0075】
【表1】

【0076】

表1に示す結果から、本発明の製造方法によれば、低分子量のカルボキシル基含有共重合体の粉体を、効率よく製造することが可能となることが明らかとなった。
【0077】
<実施例5>
上記実施例1で得られた重合体(1)のクレー分散能を上記方法により測定した。結果を表2に示す。比較として重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム(株式会社日本触媒製、比較重合体(2)とする)のクレー分散能を評価した。
表2の結果から、本発明の製造方法による重合体は、良好なクレー分散能を有していることが明らかとなった。
【0078】
【表2】

【0079】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程と、
(ii)加熱および/または光照射により重合を開始する工程と、
(iii)反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程を含む、ポリカルボン酸系重合体の製造方法であって、
全単量体100モル%に対する上記2−メチレングルタル酸(塩)の使用量が30〜100モル%であり、全ての原料100質量%に対する上記溶媒の使用量が50〜85質量%である、ポリカルボン酸系重合体の製造方法。
【請求項2】
(i)2−メチレングルタル酸(塩)を必須とする単量体、溶媒、重合開始剤を反応器に添加する工程と、
(ii)加熱および/または光照射により重合を開始する工程と、
(iii)反応溶液を固形分90〜100質量%に濃縮する工程により製造されるポリカルボン酸系重合体であって、
全単量体100モル%に対する上記2−メチレングルタル酸(塩)の使用量が30〜100モル%であり、全ての原料100質量%に対する上記溶媒の使用量が50〜85質量%である、ポリカルボン酸系重合体。

【公開番号】特開2012−72278(P2012−72278A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218028(P2010−218028)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】