説明

ポリカーボネート−ポリエステルおよびナノクレイを含む熱可塑性組成物

(A)芳香族ポリカーボネートと(B)ポリエステルとの樹脂ブレンド、(C)ナノクレイおよび(D)カルボン酸を含有する熱可塑性組成物を開示する。この組成物は、酸を含まない対応する組成物に優る改良された溶融安定性および衝撃強さを特徴とする。ナノクレイは樹脂ブレンドの重量に対して0.1〜30パーセントの量で存在し、酸はナノクレイの重量に対して1〜20パーセントの量で存在する。クレイ粒子の平均厚は約1〜100nmであり、平均長および平均幅は、互いに独立して50〜700nmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートとポリエステルとのブレンドを含む熱可塑性成形組成物、特に、クレイ−充填組成物に関する。
【0002】
(A)芳香族ポリカーボネートと(B)ポリエステルとの樹脂ブレンド、(C)ナノクレイおよび(D)カルボン酸を含有する熱可塑性組成物が開示されている。この組成物は、対応する酸を含まない組成物を超える、改良された溶融安定性および衝撃強さを特徴とする。ナノクレイは樹脂ブレンドの重量に対して0.1〜30パーセントの量で存在し、酸はナノクレイの重量に対して1〜20パーセントの量で存在する。クレイ粒子の平均厚は約1〜100nmであり、それらの平均長および平均幅は、互いに独立して50〜700nmである。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂はよく知られており、それらの良好な機械的および物理的特性の特徴的な組み合わせのため、長い間様々な用途に使用されてきた。しかしながら、それらの剛性(曲げ弾性率)は特定の構造用途、例えば、電力工具のハウジング、に不充分である。ポリカーボネートに組み込まれたガラス繊維は、この欠点に大いに取り組んできたが、成形部品の外観に悪影響を与えた。ポリカーボネートと熱可塑性ポリエステルとのブレンドは、既知である。そのようなブレンドを含む市販の組成物は、例えば、Bayer MaterialScienceからMakroblend組成物として商業的に入手可能である。
【0004】
ナノクレイ(粒度100nm未満のクレイ)は商業的に入手可能である。それらのポリマーマトリックスにおける有用性は、文献、例えば、J.Materials Res.,1993,volume 8,page 1179;J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,1993,volume 31,page 2493、において広く開示されてきた。ナノコンポジットは、相が粒子寸法1〜100nmを有することを特徴とする材料のクラスである。当業者は、現在、これらの材料のポリマーマトリックスへの混入が、ミクロ−およびマクロ−サイズの粒子を含む対照物よりも良好な機械的特性を有するコンポジットをもたらすことを認識している。
【0005】
有機変性ナノクレイ(オルガノクレイ)(第三級−および第四級−アンモニウム塩による変性)を含むポリカーボネートコンポジットがP.J.Yoon、D.L.HunterおよびD.R.PaulによってPolycarbonate Nanocomposites.Part 1,Effect of Organoclay Structure on Morphology and Properties,Polymer,44,5323(2003)において、並びに、同じ著者によってPolycarbonate Nanocomposites.Part 2,Degradation and color Formation,Polymer 44,5341(2003)において報告されている。Geralda Severe、Alex J.HsiehおよびBryan E.Koeneは、混入されるナノクレイがC16−およびC18−トリブチルホスホニウムで変性されている、関連したポリカーボネートコンポジットをEffect of Layered Silicates on Thermal Characteristics of Polycarbonate Nanocompositesと題する論文,Society of Plastics Engineers,ANTEC 2000,page 1523−6において報告している。
【0006】
当業者は、更に、膨潤剤、例えば、長鎖有機カチオン、および水溶性オリゴマーまたはポリマー、が、クレイの隣接層間にインターカレートまたは吸収され、従って、層の間隔を増加し得ることを認識している。米国特許第5,552,469号およびWO 93/04117は、特に、それらが混入されるポリマーマトリックスへのより強力な機械的強化の付与をもたらす関連したシリケートの処理方法を開示している。
【0007】
米国特許第5,760,121号は、マトリックスポリマーおよび、ポリマーを隣接フィロシリケートプレートレット(adjacent phyllosilicate platelet)間に吸着またはインターカレートするためにフィロシリケートとポリマーとを接触させることによって形成された剥離インターカレートを含むナノコンポジットを開示している。インターカレートが有機溶媒またはポリマー溶融物と混合することによって容易に剥離されるように、充分なポリマーを隣接フィロシリケートプレートレット間に吸着して隣接プレートレットを間隔5〜100オングストロームに広げる。更に、米国特許第5,747,560号および第5,385,776号における開示も関連している。
【0008】
米国特許第6,610,770号は、有機材料の特定の混合物と反応させられたスメクタイトクレイと規定された方法を使用してブレンドされたポリマーからつくられる難燃性ポリマー組成物を開示している。難燃特性は、ポリマーマトリックス中のスメクタイトオルガノクレイの分散度に依存するといわれている。難燃性ポリマー組成物の適切な機能は、オルガノクレイが完全に剥離しないようにポリマー中に分散することを要求するといわれている。更に、米国特許第6,521,690号は、有機化学組成物で変性されたスメクタイトクレイおよびポリマーを含む組成物を開示している。この組成物は、一種類以上の第四級アンモニウム化合物およびアニオン性材料でイオン交換され、反応させられ、インターカレートされ、更にナノコンポジット組成物をつくるポリマー樹脂中にブレンドされた有機化学薬品/スメクタイトクレイインターカレートからなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の詳細な説明
ポリマーマトリックスおよびクレイを含む組成物が知られている。マトリックスがポリカーボネートである組成物の曲げ弾性率はニート樹脂の曲げ弾性率よりもかなり大きいが、溶融流量の著しい増加および耐衝撃性の低下によって表される顕著な分解が、これらの組成物の押出配合およびそれからの物品の成形によって生じる。本発明は、カルボン酸少量をポリカーボネート、ポリエステルおよびナノクレイ安定剤のブレンドへ添加すると、組成物が良好な衝撃強さを示す安定化組成物になるという発見に基礎を置いている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明との関連で好適であるポリカーボネート(成分A)としては、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよびそれらの混合物が挙げられる。エステル結合がカーボネート結合に対して少ないモル量で存在するポリエステルカーボネートが本明細書中使用される用語コポリカーボネートに含まれる。
【0011】
ポリカーボネートは既知であり、それらの構造および製造方法は、例えば、米国特許第3,030,331号;第3,169,121号;第3,395,119号;第3,729,447号;第4,255,556号;第4,260,731号;第4,369,303号;第4,714,746号および第6,306,507号に開示されている(これらは全て参照することによって本明細書中に組み込まれる)。ポリカーボネートは、一般的に、重量平均分子量10,000〜200,000、好ましくは20,000〜80,000を有し、かつ、ASTM D−1238による300℃における1.2Kg負荷における溶融流量は約1〜約65g/10分、好ましくは約2〜35g/10分である。それらは、例えば、既知の二相界面法によって炭酸誘導体、例えば、ホスゲン、とジヒドロキシ化合物とから重縮合によって製造され得る(独国公開特許第2,063,050号;第2,063,052号;第1,570,703号;第2,211,956号;第2,211,957号および第2,248,817号;仏国特許第5,161,518号;並びにH.Schnellによるモノグラフ“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,New York,New York,1964参照。これらは全て参照することによって本明細書中に組み込まれる。)。
【0012】
本明細書において、本発明のポリカーボネートの製造に好適であるジヒドロキシ化合物は、構造式(1)または(2)
【化1】

【化2】

(式中、
A は、炭素原子を1〜8個有するアルキレン基、炭素原子を2〜8個有するアルキリデン基、炭素原子を5〜15個有するシクロアルキレン基、炭素原子を5〜15個有するシクロアルキリデン基、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、−SO−もしくは−SOまたは
【化3】

の基であり、
eおよびg は、両方とも数0〜1であり;
Z は、F、Cl、BrまたはC〜C−アルキルであり、いくつかのZ基が一つのアリール基における置換基である場合、それらは同一であっても互いに異なっていてもよく;
d は、0〜4の整数であり;かつ
f は0〜3の整数である。)
のジヒドロキシ化合物である。
【0013】
ジヒドロキシ化合物の中で本発明の実施において有用なジヒドロキシ化合物は、ヒドロキノン、レソルシノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシ−フェニル)−スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、およびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、並びにそれらの核アルキル化化合物である。これらおよび別の好適な芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、米国特許第5,105,004号;第5,126,428号;第5,109,076号;第5,104,723号;第5,086,157号;第3,028,356号;第2,999,835号;第3,148,172号;第2,991,273号;第3,271,367号;および第2,999,846号に記述されている(これらは全て参照することによって本明細書中に組み込まれる。)。
【0014】
別の好適なビスフェノールの例は、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−プロパン(ビスフェノールA)、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、α,α’−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−スルホキシド、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、α,α’−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピル−ベンゼンおよび4,4’−スルホニルジフェノールである。
【0015】
特に好ましい芳香族ビスフェノールの例は、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシ−フェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンである。
【0016】
最も好ましいビスフェノールは、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)である。
【0017】
本発明のポリカーボネートは、その構造中に好適なビスフェノール一種類以上から誘導される単位を伴ってもよい。
【0018】
樹脂の中で本発明の実施に好適な樹脂は、レソルシノールおよびビスフェノールAベースのポリエステルカーボネート(登録番号265997−77−1)、フェノールフタレインベースのポリカーボネート、コポリカーボネートおよびターポリカーボネート、例えば、米国特許第6,306,507号、第3,036,036号および第4,210,741号に記述されているものである(これらは全て参照することによって本明細書中に組み込まれる。)。
【0019】
本発明のポリカーボネートは、更に、その中に少量、例えば、0.05〜2.0mol%(ビスフェノールに対する)のポリヒドロキシ化合物を縮合することによって分枝されていてもよい。
【0020】
このタイプのポリカーボネートは、例えば、独国公開特許第1,570,533号;第2,116,974号および第2,113,374号;英国特許第885,442号および第1,079,821号並びに米国特許第3,544,514号に記述されている。以下の化合物は、この目的に使用され得るポリヒドロキシ化合物のいくつかの例である:フロログルシノール;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシ−フェニル)−ヘプタン;1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン;1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン;トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン;2,2−ビス−[4,4−(4,4’−ジヒドロキシジフェニル)]−シクロヘキシル−プロパン;2,4−ビス−(4−ヒドロキシ−1−イソプロピリジン)−フェノール(2,4−bis−(4−hydroxy−1−isopropylidine)−phenol);2,6−ビス−(2’−ジヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチル−フェノール;2,4−ジヒドロキシ安息香酸;2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシ−フェニル)−プロパンおよび1,4−ビス−(4,4’−ジヒドロキシトリフェニルメチル)−ベンゼンである。別の多官能性化合物のいくつかは、2,4−ジヒドロキシ−安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌルおよび3,3−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0021】
上記重縮合法に加えて、本発明のポリカーボネートの別の製造方法は、均一相における重縮合およびエステル交換である。好適なプロセスは、米国特許第3,028,365号;第2,999,846号;第3,153,008号;および第2,991,273号に開示されている(これらは参照することによって本明細書中に組み込まれる。)。
【0022】
ポリカーボネートの好ましい製造方法は、界面重縮合法である。本発明のポリカーボネートの製造における別の合成方法、例えば、米国特許第3,912,688号に開示されている方法(参照することによって本明細書中に組み込まれる。)を使用してもよい。
【0023】
好適なポリカーボネート樹脂は、商業的に入手可能であり、例えば、Makrolon 2400、Makrolon 2458、Makrolon 2600、Makrolon 2800およびMakrolon 3100(これらは全てそれぞれの分子量が異なるビスフェノールベースのホモポリカーボネート樹脂であり、それらのASTM D−1238によるメルトフローインデックス(300℃、1.2KgにおけるMFR)がそれぞれ約16.5〜24g/10分、13〜16g/10分、7.5〜13.0g/10分および3.5〜6.5g/10分であることを特徴とする。)である。これらはペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLCの製品である。
【0024】
本明細書において好適なポリエステル(成分(B))としては、ホモ−ポリエステルおよびコ−ポリエステル樹脂並びにそれらの混合物が挙げられる。本明細書において使用される用語コ−ポリエステルには、カーボネート結合がエステル結合に対して少ない量で存在するポリエステルカーボネートが含まれる。
【0025】
これらの既知の樹脂は、既知の方法によるジオール成分と二酸との縮合またはエステル交換重合によって製造され得る。例は、シクロヘキサンジメタノールと、エチレングリコールと、テレフタル酸またはテレフタル酸とイソフタル酸との組み合わせと、の縮合により誘導されるエステルである。更に、シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸との縮合により誘導されるポリエステルも好適である。好適な樹脂としては、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特に、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)(PCT)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−co−エチレンテレフタレート)(PETGまたはPCTG)、およびポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)が挙げられる。
【0026】
米国特許第2,465,319号、第3,953,394号および第3,047,539号−これらは全て参照することによって本明細書中に組み込まれる−は、そのような樹脂の好適な製造方法を開示している。好適なポリアルキレンテレフタレートは、約25℃における8%オルトクロロフェノール溶液の相対粘度によって測定される固有粘度少なくとも0.2デシリットル/グラム、好ましくは約少なくとも0.4デシリットル/グラムを特徴とする。上限は臨界ではないが、一般的に約2.5デシリットル/グラムを超えない。特に好ましいポリアルキレンテレフタレートは、固有粘度0.4〜1.3デシリットル/グラムのポリアルキレンテレフタレートである。
【0027】
本発明における使用に好適なポリアルキレンテレフタレートのアルキレンユニットは、炭素原子を2〜5個、好ましくは2〜4個含む。ポリブチレンテレフタレート(1,4−ブタンジオールから製造される)およびポリエチレンテレフタレートが本発明における使用に好ましいポリアルキレンテレフタレートである。別の好適なポリアルキレンテレフタレートとしては、ポリプロピレンテレフタレート、ポリイソブチレンテレフタレート、ポリペンチルテレフタレート、ポリイソペンチルテレフタレート、およびポリネオペンチルテレフタレートが挙げられる。アルキレンユニットは直鎖であっても分枝鎖であってもよい。
【0028】
本発明の組成物の成分(C)は、粒度がナノメートルのオーダーのクレイ(本明細書中ナノクレイ)である。ナノクレイは、既知であり、米国特許第5,747,560号に記述されている(これは参照することによって本明細書中に組み込まれる。)。好ましいクレイとしては、天然または合成フィロシリケート、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライト、バーミキュライト、バイデライト(beidilite)、サポナイト、ノントロナイトまたは合成フルオロマイカが挙げられる。好ましいナノクレイは、例えば、モンモリロナイト、ヘクトライトまたは合成フルオロマイカ、より好ましくは、モンモリロナイトまたはヘクトライト、最も好ましくはモンモリロナイトである。ナノクレイは、好ましくは、平均プレートレット厚約1nm〜約100nm、平均長および平均幅それぞれ約50nm〜約700nmである。
【0029】
好ましい態様において、クレイは、好適な有機塩、例えば、第四級アンモニウム、ホスホニウムおよびイミダゾリウム塩、とのカチオン交換反応によって変性されている。好適な第四級アンモニウム塩は、以下の構造
【化4】

(式中、Rは、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシアルキルであり、R、R、およびRは、独立して、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシルアルキル基、オリゴマーもしくはポリマーアルキレン−オキシドまたはオリゴマーもしくはポリマーアルキレン−エステルのいずれかである。)
の第四級アンモニウム塩である。この第四級アンモニウムカチオンの好適な対アニオンは、塩素、臭素、ヨウ素、硫酸メチルまたは酢酸メチルである。
【0030】
好適な第四級ホスホニウム塩は、以下の構造
【化5】

(式中、Rは、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシアルキルであり、R、R、およびRは、独立して、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシアルキル基、オリゴマーもしくはポリマーアルキレン−オキシドまたはオリゴマーもしくはポリマーアルキレン−エステルのいずれかである。)
の第四級ホスホニウム塩であり、対アニオンは、塩素、臭素、ヨウ素、硫酸メチルおよび酢酸メチルからなる群から選択される一員である。
【0031】
有機変性ナノクレイは、Southern Clay Products,Inc.およびNanocor,Inc.から、それぞれ商標CloisiteおよびNanomerのもとで商業的に入手可能である。第四級アンモニウム塩で変性された好ましい変性ナノクレイは、Southern Clay製のCloisite 10A、20Aおよび25Aである。
【0032】
本発明の組成物の成分(D)として使用される酸は、カルボン酸である。好適な酸としては、脂肪族および芳香族酸の両方が挙げられる。飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の両方が好適な酸に含まれる。好ましくは、カルボン酸は、脂肪族であり、最も好ましくは、炭素原子を2〜30個含む。クエン酸が有利に使用される。
【0033】
酸は、本発明の実施において、ナノクレイの重量に対して1〜20パーセント、好ましくは5〜15パーセント、より好ましくは8〜12パーセントの量で使用される。
【0034】
本発明の組成物の製法は、常套であり、当業者に既知の手順に従い、かつ、当業者に既知の装置を利用する。
【0035】
本発明を、これらに限定されることを意図しているわけではないが、更に、以下の実施例によって説明する。以下の実施例において、全ての部およびパーセンテージは他に特に規定がなければ重量部および重量パーセントである。
【実施例】
【0036】
本発明による組成物を製造し、それらの特性を評価した。これらの組成物の製造およびそれらの試験は常套である。特性を以下において表にした。
【0037】
例示される組成物の製造において使用される成分を以下に示す。
ポリカーボネート1:Makrolon 5208、ASTM D 1238による300℃における1.2kG負荷における溶融流量(MFR)5.5g/10分のビスフェノールAベースのパウダー形態ホモポリカーボネート、Bayer MaterialScience LLC製。
ポリカーボネート2:Makrolon 3208、ASTM D 1238による300℃における1.2kG負荷における溶融流量約5.1g/10分のビスフェノールAベースのホモポリカーボネート、Bayer Polymers LLC製。
PET:ポリエチレンテレフタレート、Versatray 12822、Voridian製、固有粘度0.92〜0.98。
クレイ:Cloisite 25A、アニオンとして硫酸メチルを有するジメチル、水素化獣脂および2−エチルヘキシルの第四級アンモニウム塩変性天然モンモリロナイト、Southern Clay Products製。
【0038】
試験中に使用されたクエン酸は、化学的に純粋なグレードであった。
【0039】
組成物の溶融流量は、ASTM D 1238に従って300℃において1.2kG負荷において決定された。
【0040】
機器搭載衝撃強さ(instrumented impact strength)(多軸)を、3インチステージおよび0.5インチドロップハンマー(tup)衝撃試験機を備えるInstronを槍速度(dart speed)15マイル毎時において用いて決定した。全ての試験片の厚さが1/8”であった。
【0041】
表1

【0042】
表1は、ポリカーボネートおよびポリエステルを含む組成物の特性を示す。従って、ポリエステル(PET)の混入は、曲げ弾性率の増加および耐衝撃性の著しい低下をもたらす。
【0043】
表2

−歪5%未満
【0044】
表2および3において示される結果の比較は、クレイの添加によって引き起こされる溶融流量の増加および衝撃強さの減少が本発明による酸の混入によって緩和されることを示す。
【0045】
表3

(3)−歪5%未満
【0046】
本発明の組成物は、実施例3B、3C、3Dおよび3Eによって示されている。
【0047】
本発明を説明の目的で上記に詳細に説明したが、そのような詳細は、請求項によって規定されるものを除いて、もっぱら説明の目的のためであって、変更が発明の精神および範囲から逸脱しない限り当業者によってなされ得ると解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート、ポリエステル、ナノクレイおよびカルボン酸を含有し、該ナノクレイがポリカーボネートとポリエステルとの総重量に対して0.1〜30パーセントの量で存在し、該酸の量がナノクレイの重量に対して約1〜20パーセントであり、前記ナノクレイの平均プレートレット厚が1〜100nmであり、かつ、平均長および平均幅が、互いに独立して50〜700nmである、熱可塑性組成物。
【請求項2】
該ポリカーボネートが99〜10パーセントの量で存在し、該ポリエステルが1〜90パーセントの量で存在し、該パーセントが両方とも組成物の重量に対する、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項3】
該ポリカーボネートが99〜20パーセントの量で存在し、該ポリエステルが1〜80パーセントの量で存在し、該パーセントが両方とも組成物の重量に対する、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項4】
該ナノクレイの量が0.1〜15パーセントである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項5】
該ナノクレイが第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩変性モンモリロナイトである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
該第四級アンモニウム塩が、
【化1】

(式中、Rは、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシアルキルであり、R、R、およびRは、互いに独立して、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシルアルキル基、オリゴマーもしくはポリマーアルキレン−オキシドまたはオリゴマーもしくはポリマーアルキレン−エステルのいずれかである。)
であり、対アニオンが、塩素、臭素、ヨウ素、硫酸メチルおよび酢酸メチルからなる群から選択される一員である、請求項5に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
第四級ホスホニウム塩が、
【化2】

(式中、Rは、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素基もしくはヒドロキシアルキルであり、R、R、およびRは、独立して、炭素原子を1〜40個含む直鎖もしくは分枝脂肪族もしくは芳香族炭化水素もしくはヒドロキシルアルキル基、オリゴマーもしくはポリマーアルキレン−オキシドまたはオリゴマーもしくはポリマーアルキレン−エステルのいずれかである。)
であり、対アニオンが、塩素、臭素、ヨウ素、硫酸メチルおよび酢酸メチルからなる群から選択される一員である、請求項5に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項8】
該酸がカルボン酸である、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項9】
該カルボン酸が脂肪族である、請求項8に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項10】
該カルボン酸がクエン酸である、請求項9に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項11】
酸の量がナノクレイの重量に対して5〜15パーセントである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項12】
酸の量がナノクレイの重量に対して8〜12パーセントである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項13】
該ナノクレイが、モンモリロナイト、ヘクトライトおよび合成フルオロマイカからなる群から選択される一員である、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。
【請求項14】
該ナノクレイがモンモリロナイトである、請求項1に記載の熱可塑性成形組成物。

【公表番号】特表2009−522439(P2009−522439A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550334(P2008−550334)
【出願日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/000090
【国際公開番号】WO2008/063198
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】