説明

ポリカーボネート成形組成物

本発明は、溶媒フリー溶融法によって有機ポリマーで変性された積層シリケートを含有するポリカーボネート組成物、およびそれらの製造方法に関する。生じる成形組成物は、改良された熱安定性および火災の際の比較的低い最大分解速度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された熱安定性および火災の際に低い最大分解速度を有するポリカーボネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱安定性の高いPC/ABS組成物(ポリカーボネート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)がWang等によって報告されている。ABS相中に選択的に分配されるアルキルアンモニウムモンモリロナイトがここ(Wang,S.,Hu,Y.,Wang,Z.,Yong,T.,Chen,Z.,& Fan,W.,Synthesis and Characterization of polycarbonate/ABS/montmorillonite nanocomposites,Polymer Degradation and Stability,80,No.1,(2003)157−61)で用いられている。
【0003】
常套のアルキルアンモニウム変性剤、例えば、獣脂ビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムおよびそこに含まれる不純物(例えば、鉄イオン)が、ポリカーボネートマトリックスを分解し、かつ、例えば、発熱速度(コーンカロリーメーター法(cone calorimetry)によって決定される。)を増加させることがStretz等およびYoon等によって知られている(Stretz,H.A.,Koo,J.H.,Dimas,V.M.,& Zhang,Y.,Flame retardant properties of polycarbonate/montmorillonite clay nanocomposite blends,Polymer Preprints,42,no.2,(2001)50;Yoon,P.J.,Hunter,D.L.& Paul,D.R.,Polycarbonate nanocomposites:Part 2.Degradation and color formation,Polymer,44,no.18,(2003)5341−54)。
【0004】
ABS成形組成物に関して防炎特性に関するアルキルアンモニウムモンモリロナイトの相乗効果がWang等によって知られている(Wang,S.,Hu,Y.,Zong,R.,Tang,Y.,Chen,Z.,& Fan,W.,Preparation and characterization of flame retardant ABS/montmorillonite nanocomposite.Applied Clay Science,25,no.1−2,(2004)49−55)。Wang等は、ABS成形品に関して酸化アンチモンおよびデカブロモジフェニルオキシドとの組み合わせで改良された防炎特性を達成している。アルキルアンモニウムモンモリロナイトの存在下において、発熱速度(コーンカロリーメーター)は減少し、発火が見出されるまでの時間が長くなった。すなわち、LOI(限界酸素指数)が高く、試験片の燃焼特性がUL94V試験における等級V−0であると評価された。
【0005】
WO 99/43747 A1は、PC/ABS組成物に関するアルキルアンモニウムモンモリロナイトの防炎特性に関する相乗効果を開示しており、PC/ABS組成物の発火までの時間がアルキルアンモニウムモンモリロナイトClayton HYの添加によって長くされることを教示している。
【0006】
アルキルアンモニウム変性モンモリロナイトの欠点は、積層シリケートに対する複雑かつ費用のかかる変性プロセスである。このように変性された積層シリケートは、更に、ポリカーボネート組成物の物理的特性に悪影響を有する。なぜなら、積層シリケートの塩基性変性剤がポリマーを分解し、従って、ポリマーの分子量の減少並びに曇りおよび変色を引き起こすからである。開示されている方法は、非変性積層シリケートで行われる。
【0007】
US 2005/0137287 A1は、積層シリケートを含有し、2−(ジメチルアミノ)−スチレン/第四級アンモニウム頭部基を有するエチルメタクリレートのブロックコポリマーで変性されているポリカーボネート組成物を開示している。生じるポリカーボネート成形組成物は、透明であり、変色を示さない。
【0008】
WO 99/07790 A1およびFischer等(Fischer,H.R.,Gielgens,L.H.,& Koster,T.P.M.,Nanocomposites from polymers and layered minerals,Mat.Res.Soc.Proc.vol.519,1998,117−123)は、ブロックまたはグラフトコポリマーと積層シリケートとを含有するナノ複合材料を開示している。このコポリマーは、積層シリケートと相溶性である構造単位およびポリマーマトリックスと相溶性である別のユニットを有する。記述されている複合材料は、第一工程において積層シリケートをコポリマーと高温で混合し、次の工程において要求されるポリマーマトリックスへの押出によって製造される。代わりに、溶媒を添加してもよい。変性材料の引張強さの改良がこのように達成される。水性ルート(aqueous route)による積層シリケートに関するPC/ABS組成物および変性プロセスは記述されていない。
【0009】
ブロックコポリマーによる変性の欠点は、複雑かつ費用のかかる変性プロセスおよびブロックコポリマー合成に関する別の加工工程への要求である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が基づく目的は、高い熱安定性、発火後の低い最大分解速度および低い発煙濃度(smoke gas density)を有するポリカーボネート成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、溶媒フリー溶融法によって有機ポリマーで変性された積層シリケートを用いることによって、ポリカーボネート含有成形組成物の熱安定性が増加し、火災の際の最大分解速度が減少することがわかった。本発明による組成物は、長鎖第四級アンモニウム塩を安定剤として用いず、ポリカーボネートの分子量減少が避けられる点に優れている。このことは、更に本発明による成形組成物の高レベルの機械特性をもたらす。
【0012】
従って、本発明は、
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート、
B) 任意に耐衝撃性改良剤、
C) 任意に熱可塑性ホモ−および/またはコポリマー、
D) 溶媒フリー溶融プロセスによって有機ポリマーで変性された積層コンパウンド、並びに
E) 任意にリン化合物
を含有する組成物または熱可塑性成形組成物を提供する。
【0013】
本発明による組成物は、好ましくは、
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート、30〜99.9重量部、好ましくは40〜90重量部、
B) ゴム変性グラフトポリマー、0〜60重量部、好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは2〜15重量部、
C) ホモ−および/またはコポリマー、0〜30重量部、好ましくは0〜25重量部、
D) 溶媒フリー溶融プロセスによって有機ポリマーで変性された積層コンパウンド、0.1〜40重量部、好ましくは1〜25重量部、特に好ましくは2〜10重量部並びに
E) リン化合物、0〜30重量部、好ましくは1〜20重量部、特に4〜15重量部
を含有する。
【0014】
本願における全ての重量部データは、組成物中の成分A+B+C+D+Eの重量部の合計が100になるになるように規格化されている。
【0015】
本発明による好適なポリカーボネート組成物成分を以下に一例として説明する。
【0016】
成分A
本発明による好適な成分Aによる芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって製造され得る(芳香族ポリカーボネートの製造に関しては、例えば、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Interscience Publishers,1964並びにDE−AS 1 495 626、DE−A 2 232 877、DE−A 2 703 376、DE−A 2 714 544、DE−A 3 000 610およびDE−A 3 832 396参照;芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関しては、例えば、DE−A 3 077 934参照。)。
【0017】
芳香族ポリカーボネートの製造は、例えば、ジフェノールと炭酸ハロゲン化物、好ましくは、ホスゲン、および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物、好ましくは、ベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物との相界面法(phase interface process)による、要すれば連鎖停止剤、例えば、モノフェノール、を使用し、要すれば、三官能性以上である分枝剤、例えば、トリフェノールまたはテトラフェノールを使用する、反応によって行われる。ジフェノールと、例えば、ジフェニルカーボネートとの反応による溶融重合法による製造もまた可能である。
【0018】
芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関するジフェノールは、好ましくは、式(I)
【化1】

(式中、
A は、単結合、C〜C−アルキレン、C〜C−アルキリデン、C〜C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C〜C12−アリーレン(これに任意にヘテロ原子を含んでいてもよい別の芳香環が縮合していてもよい)、または式(II)または(III)の基
【化2】

であり、
B は、いずれの場合も、C〜C12−アルキル、好ましくは、メチル、またはハロゲン、好ましくは塩素および/または臭素であり、
x は、いずれの場合も、互いに独立して、0、1または2であり、
p は、1または0であり、かつ、
およびR は、各Xに関して独立して選択され、かつ互いに独立して、水素またはC〜C−アルキル、好ましくは、水素、メチルまたはエチルであり、
は、炭素であり、かつ、
m は、4〜7の整数、好ましくは4または5である(但し、少なくとも一つの原子X上において、RおよびRは、同時にアルキルである。)。)
のジフェノールである。
【0019】
好ましいジフェノールは、ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−C〜C−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビスー(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホンおよびα,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピル−ベンゼンおよびそれらの核臭素化および/または核塩素化誘導体である。
【0020】
特に好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン並びにそれらの二および四臭素化または塩素化誘導体、例えば、2,2−ビス−(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンである。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。
【0021】
ジフェノールを単独でまたは所望の混合物として用いてもよい。ジフェノールは文献で知られているかまたは文献で知られている方法によって得られる。
【0022】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートの製造に好適な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、および更に長鎖アルキルフェノール、例えば、4−[2−(2,4,4−トリメチルフェニル)]−フェノール、DE−A 2 842 005による4−(1,3−テトラメチルブチル)−フェノールまたはアルキル置換基中に全部で8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノールもしくはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−iso−オクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノールおよび2−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)−フェノールである。用いられる連鎖停止剤の量は、一般的に、用いられる特定のジフェノールのモルの合計に基づいて0.5mol%〜10mol%である。
【0023】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、平均重量平均分子量(M、例えば、超遠心分離または散乱光測定によって測定される)10,000〜200,000g/mol、好ましくは15,000〜80,000g/mol、特に好ましくは24,000〜32,000g/molを有する。
【0024】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートは、既知の方法で、特に好ましくは三官能性以上の化合物、例えば、三以上のフェノール基を有する化合物、用いられるジフェノールの合計に基づいて、0.05〜2.0mol%の混合によって分枝され得る。
【0025】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートの両方が好適である。ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサン、用いられるジフェノールの総量に基づいて、1〜25wt.%、好ましくは2.5〜25wt.%を成分Aによる本発明によるコポリカーボネートの製造に用いることも可能である。これらは既知(US 3 419 634)であり、文献で知られている方法によって製造され得る。ポリジオルガノシロキサンを含むコポリカーボネートの製造は、DE−A 3 334 782に記述されている。
【0026】
好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAホモポリカーボネートに加えて、ビスフェノールAと、ジフェノールのモルの合計に基づいて15mol%までの好ましいかまたは特に好ましいジフェノールとして言及されている別のジフェノール、特に、2,2−ビス−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、とのコポリカーボネートである。
【0027】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくは、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。
【0028】
イソフタル酸の二酸二塩化物およびテレフタル酸の二酸二塩化物の1:20〜20:1混合物が特に好ましい。
【0029】
炭酸ハロゲン化物、特に、ホスゲンも更にポリエステルカーボネートの製造において二官能性酸誘導体として併用される。
【0030】
芳香族ポリエステルカーボネートの製造に関する可能な連鎖停止剤は、既に言及されたモノフェノールに加えて、更にそれらのクロロ炭酸エステル並びに任意にC〜C22−アルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい芳香族モノカルボン酸の酸塩化物、並びに脂肪族C〜C22−モノカルボン酸塩化物である。
【0031】
連鎖停止剤の量は、フェノール性連鎖停止剤の場合、ジフェノールのモルに基づいて、モノカルボン酸塩化物連鎖停止剤の場合、ジカルボン酸二塩化物のモルに基づいて、いずれの場合も、0.1〜10mol%である。
【0032】
芳香族ポリエステルカーボネートは、更に、組み込まれた芳香族ヒドロキシカルボン酸を含んでもよい。
【0033】
芳香族ポリエステルカーボネートは、直鎖であっても既知の方法で分枝されていてもよい(これに関連して、DE−A 2 940 024およびDE−A 3 007 934参照。)。
【0034】
使用され得る分枝剤は、例えば、三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えば、トリメシン酸三塩化物、シアヌル酸三塩化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸四塩化物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸四塩化物またはピロメリット酸四塩化物、0.01〜1.0mol%(用いられるジカルボン酸二塩化物に基づく)、または三官能性以上のフェノール、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタンおよび1,4−ビス−[4,4’−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼン、0.01〜1.0mol%(用いられるジフェノールに基づく)である。フェノール性分枝剤を、最初にジフェノールを有する反応容器内に導入し、酸塩化物分枝剤を酸二塩化物と共に導入してもよい。
【0035】
熱可塑性芳香族ポリエステルカーボネート中のカーボネート構造単位の含量は所望の通り変えられる。好ましくは、カーボネート基の含量は、エステル基およびカーボネート基の合計に基づいて、100mol%まで、特に80mol%まで、特に好ましくは50mol%までである。芳香族ポリエステルカーボネートのエステル分およびカーボネート分の両方が、ブロックの形態またはランダム分布で重縮合物中に存在し得る。
【0036】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.35である(ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート0.5gの塩化メチレン溶液100mlに対して25℃において測定する。)。
【0037】
熱可塑性芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で用いられても所望の混合物において用いられてもよい。
【0038】
成分B
成分Bは、
B.1 少なくとも一種類のビニルモノマー、5〜95wt.%好ましくは30〜90wt.%、が
B.2 ガラス転移温度10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満の一種類以上のグラフトベース、95〜5wt.%、好ましくは70〜10wt.%、上に存在する
グラフトポリマー一種類以上を含有する。
【0039】
グラフトベースB.2は、一般的に、平均粒度(d50値)0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜1μmを有する。
【0040】
モノマーB.1は、好ましくは、
B.1.1 ビニル芳香族および/または核置換ビニル芳香族(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン)および/またはメタクリル酸(C〜C)−アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート)、50〜99重量部と
B.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)、例えば、マレイン酸無水物およびN−フェニル−マレイミド、1〜50重量部と
の混合物である。
【0041】
好ましいモノマーB.1.1は、少なくとも一種類のモノマースチレン、α−メチルスチレンおよびメチルメタクリレートから選択され、好ましいモノマーB.1.2は、少なくとも一種類のモノマーアクリロニトリル、マレイン酸無水物およびメチルメタクリレートから選択される。特に好ましいモノマーは、B.1.1スチレンおよびB.1.2アクリロニトリルである。
【0042】
グラフトポリマーBに好適であるグラフトベースB.2は、例えば、ジエンゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレンおよび任意にジエンベースのゴム、並びに、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレン並びにエチレン/酢酸ビニルゴムである。
【0043】
好ましいグラフトベースB.2は、ジエンゴム、例えば、ブタジエンおよびイソプレンベースのジエンゴム、またはジエンゴム混合物またはジエンゴムもしくはそれらと別の共重合性モノマー(例えば、B.1.1およびB.1.2による)との混合物のコポリマーである。但し、成分B.2のガラス転移温度は、10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−10℃未満である。純粋なポリブタジエンゴムが特に好ましい。
【0044】
特に好ましいポリマーBは、例えば、ABSポリマー(エマルジョン、バルクおよびサスペンションABS)、例えば、DE−OS 2 035 390(=US 3 644 574)またはDE−OS 2 248 242(=GB 1 409 275)およびUllmanns,Enzyklopaedie der Technischen Chemie,vol.19(1980),p.280以降に記述されているものである。グラフトベースB.2のゲル含量は、少なくとも30wt.%、好ましくは少なくとも40wt.%(トルエン中で測定。)である。
【0045】
グラフトコポリマーBは、例えば、エマルジョン、サスペンション、溶液またはバルク重合による、好ましくは、エマルジョンまたはバルク重合による、フリーラジカル重合によって製造される。
【0046】
特に好適なグラフトゴムは、更に、US 4 937 285による有機ヒドロペルオキシドとアスコルビン酸との開始システムを用いるレドックス開始によるエマルジョン重合法で製造されるABSポリマーである。
【0047】
グラフトモノマーがグラフト反応中にグラフトベース上に完全にグラフトしないことが知られているので、本発明によるグラフトポリマーBは、更に、グラフトベースの存在下におけるグラフトモノマーの(共)重合によって得られる生成物、および、更にワークアップ(working up)中得られる生成物を意味すると理解される。
【0048】
ポリマーBのB.2による好適なアクリレートゴムは、好ましくは、任意に別の重合性エチレン性不飽和モノマー、B.2に基づいて40wt.%までを有してもよいアクリル酸アルキルエステルのポリマーである。好ましい重合性アクリル酸エステルとしては、C〜C−アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、ブチル、n−オクチルおよび2−エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ−C〜C−アルキルエステル、例えば、クロロエチルアクリレート、およびこれらのモノマーの混合物が挙げられる。
【0049】
架橋に関して、一超の重合性二重結合を有するモノマーを共重合してもよい。架橋モノマーの好ましい例は、C原子を3〜8個有する不飽和モノカルボン酸と、C原子を3〜12個有する不飽和一価アルコール、またはOH基を2〜4個およびC原子を2〜20個有する飽和ポリオールとのエステル、例えば、エチレングリコールジメタクリレートおよびアリルメタクリレート;ポリ不飽和複素環化合物、例えば、トリビニルおよびトリアリルシアヌレート;並びに多官能性ビニル化合物、例えば、ジ−およびトリビニルベンゼン;および更にトリアリルホスフェートおよびジアリルフタレートである。好ましい架橋モノマーは、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジアリルフタレートおよび少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する複素環化合物である。特に好ましい架橋モノマーは、環状モノマートリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジンおよびトリアリルベンゼンである。架橋モノマーの量は、好ましくはグラフトベースB.2に基づいて、0.02〜5wt.%、特に0.05〜2wt.%である。少なくとも三つのエチレン性不飽和基を有する環状架橋モノマーの場合、量をグラフトベースB.2の1wt.%未満に制限することが有利である。
【0050】
アクリル酸エステルに加えて任意にグラフトベースB.2の製造に役立つ好ましい「別の」重合性エチレン性不飽和モノマーは、例えば、アクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルアミド、ビニルC〜C−アルキルエーテル、メチルメタクリレートおよびブタジエンである。グラフトベースB.2として好ましいアクリレートゴムは、ゲル含量少なくとも60wt.%を有するエマルジョンポリマーである。
【0051】
B.2による別の好適なグラフトベースは、例えば、DE−OS 3 704 657、DE−OS 3 704 655、DE−OS 3 631 540およびDE−OS 3 631 539に記述されているグラフト活性部位を有するシリコーンゴムである。
【0052】
グラフトベースB.2のゲル含量は、25℃において好適な溶媒中で決定される(M.Hoffmann,H.Kroemer,R.Kuhn,Polymeranalytik I und II,Georg Thieme−Verlag,Stuttgart 1977)。
【0053】
平均粒度d50は、それぞれそれ以上およびそれ以下の直径に50wt.%の粒子が存在する直径である。これは、超遠心分離測定によって決定され得る(W.Scholtan,H.Lange,Kolloid,Z.und Z.Polymere 250(1972),782−1796)。
【0054】
これらのグラフトポリマーは、本発明による組成物中、0.5〜60重量部、好ましくは1〜40重量部、最も好ましくは2〜25重量部の量で用いられ得る。種々のグラフトポリマーの混合物が存在してもよい。
【0055】
成分C
成分Cは、一種類以上の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーC.1および/またはポリアルキレンテレフタレートC.2を含有する。
【0056】
好適なビニル(コ)ポリマーC.1は、ビニル芳香族、ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)からなる群の少なくとも一種類のモノマーのポリマーである。
C.1.1 ビニル芳香族および/または核置換ビニル芳香族、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンおよびp−クロロスチレン、および/またはメタクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレート、50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部と
C.1.2 ビニルシアニド(不飽和ニトリル)、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、および/または(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、例えば、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレートおよびp−ブチルアクリレート、および/または不飽和カルボン酸、例えば、マレイン酸および/または不飽和カルボン酸の誘導体、例えば、無水物およびイミド、例えば、マレイン酸無水物およびN−フェニルマレイミド、1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部と
の(コ)ポリマーが特に好適である。
【0057】
ビニル(コ)ポリマーC.1は、樹脂状、熱可塑性かつゴムフリーである。C.1.1スチレンとC.1.2アクリロニトリルとのコポリマーが特に好ましい。
【0058】
C.1による(コ)ポリマーは既知であり、フリーラジカル重合によって、特に、エマルジョン、サスペンション、溶液またはバルク重合によって製造され得る。(コ)ポリマーは、好ましくは、平均分子量M(重量平均、光散乱または沈降によって決定される。)15,000〜200,000を有する。
【0059】
成分C.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体、例えば、ジメチルエステルまたは無水物、と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとの反応生成物、並びにこれらの反応生成物の混合物である。
【0060】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基、ジカルボン酸成分に基づいて、少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%とエチレングリコール基および/またはブタン−1,4−ジオール基および/またはプロパン−1,3−ジオール基、ジオール成分に基づいて、少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%とを含む。
【0061】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、C原子を8〜14個有する別の芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸の基またはC原子を4〜12個有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸もしくはシクロヘキサン二酢酸、20mol%まで、好ましくは10mol%までを含み得る。
【0062】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール基およびブタン−1,4−ジオール基に加えて、C原子を3〜12個有する別の脂肪族ジオールまたはC原子を6〜21個有する脂環式ジオール、例えば、プロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−エチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルシクロブタン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンの基、20mol%まで、好ましくは10mol%までを含み得る(DE−A 2 407 674、2 407 776および2 715 932)。
【0063】
ポリアルキレンテレフタレートは、比較的少量の3価もしくは4価のアルコールまたは3価もしくは4価のカルボン酸の組み込みによって分枝されてもよい(例えば、DE−A 1 900 270およびUS 3 692 744による。)。好まし分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよび−プロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0064】
テレフタル酸およびその反応性誘導体(例えば、そのジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールのみから製造されたポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0065】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、ポリエチレンテレフタレート1〜50wt.%、好ましくは1〜30wt.%とポリブチレンテレフタレート50〜99wt.%、好ましくは70〜99wt.%とを含有する。
【0066】
好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、一般的に、フェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中、25℃においてUbbelohde粘度計中で測定される極限粘度0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gを有する。
【0067】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法で製造され得る(例えば、Kunststoff−Handbuch,vol.VIII,p.695以降.,Carl−Hanser−Verlag,Munich 1973参照。)。
【0068】
本発明による組成物は、ビニル(コ)ポリマーまたはポリアルキレンテレフタレートを0〜45重量部、好ましくは1〜30重量部、特に好ましくは2〜25重量部含有し得る。
【0069】
成分D
成分Dは、溶媒フリー溶融法によって有機ポリマーで変性された積層コンパウンドを含有する。
【0070】
本発明の明細書中、積層コンパウンドは、好ましくは、一つの寸法がナノスケール、すなわち、100nm未満である積層コンパウンドである。この寸法を、以下、積層コンパウンドの「平均厚」と呼ぶ。好ましくは、平均厚0.3〜10nm、特に好ましくは0.5〜10nm、特別好ましくは0.7〜2nmの積層コンパウンドが用いられる。層は、直径5〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nm、特に好ましくは10〜1,000nmを有する。アニオン性非変性積層コンパウンドのカチオン交換能は、10〜260meq/100gである。非変性積層コンパウンドの対イオン(すなわち、カチオン)は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムまたはリチウムイオンであり、好ましくはナトリウムまたはリチウムイオンである。これらのイオンは、例えば、市販の鉱物を包含する天然(地質)供給源由来であるか、またはLagalyによって記述されているようにイオン交換によってターゲット法(targeted manner)で導入され得る(Lagaly,G.,Reaktionen der Tonminerale.In Tonminerale und Tone,Steinkopff Verlag,Darmstadt,1993)。積層コンパウンドの寸法(すなわち、積層コンパウンドの層の直径または平均厚)は、TEM写真およびXRD測定によって決定され得る。カチオン交換能は、例えば、L.P.MeierおよびG.Kahrの方法によって決定され得る(Clays & Clay Minerals,1999,47,3,p.386−388)。
【0071】
このために用いられる積層コンパウンドは、合成および更に自然に生じる積層コンパウンドである。モンモリロナイトおよびヘクトライト鉱物種の積層コンパウンドおよび積層シリケートまたは粘土鉱物アレバルダイト(allevardite)、アメサイト(amesite)、バイデライト、フルオロヘクトライト、フルオロバーミキュライト、マイカ、ハロイサイト、ヘクトライト、イライト、モンモリロナイト、モスコバイト、ノントロナイト、パリゴルスカイト、サポナイト、セピオライト、スメクタイト、ステベンサイト、タルクおよびバーミキュライト、合成タルク種およびアルカリ金属シリケートマグヘマイト、マガディアイト(magadiite)、ケニヤアイト(kenyaite)、マカタイト、シリナアイト(silinaite)、グローマンタイト(grumantite)、レブダイト(revdite)、およびそれらの水和形態、および関連する結晶質シリカまたは別の無機積層コンパウンド、例えば、ハイドロタルサイト、複水酸化物およびヘテロポリ酸(hetero−poly acid)、が好ましく用いられる。
【0072】
シリケート含有積層コンパウンドが積層コンパウンドとして特に好ましく用いられる。特に好ましいシリケート含有積層コンパウンドは、カチオン交換能10〜260meq/100g、平均厚0.3〜10nm、特に好ましくは0.5〜10nm、特別好ましくは0.7〜2nmかつ層の直径5〜10,000nm、好ましくは10〜2,000nm、特に好ましくは10〜1,000nmの、例えば、主成分としてベントナイト中に含まれる、モンモリロナイトおよびヘクトライト種の積層コンパウンドである。
【0073】
本発明によると、積層コンパウンドは、溶媒フリー溶融法によって少なくとも一種類の有機ポリマーで変性されている。この方法において、
(1)第一工程において、積層コンパウンドを有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物と混合し、
(2)第二工程において、この混合物を、好ましくは、絶えず、例えば、内部ニーダーまたは押出機を用いて、混合しながら、用いられるポリマーまたはポリマー混合物の融点以上の温度に加熱し、かつ
(3)任意に第三工程において(2)の混合物を室温に冷却し、変性積層コンパウンドを固体状で得る。
【0074】
代わりに、工程(2)によって生じる加熱混合物を、それ自体、例えば、側面押出機(lateral extruder)によって、本発明によるポリカーボネート組成物に導入してもよい。
【0075】
この変性に関して、ポリアルキレンオキシドが好ましくは有機ポリマーとして用いられる。好ましくは、これらのポリアルキレンオキシドは数平均分子量106〜20,000g/mol、特に好ましくは200〜10,000g/molを有し、更に、種々のポリアルキレンオキシドの混合物を用いることも可能である。ポリエチレンオキシドおよびポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーがポリアルキレンオキシドとして好ましく用いられる。直鎖ポリエチレンオキシドが特に好ましく用いられ、より特に好ましくはポリ−(エチレングリコール)モノメチルエーテルが用いられる。
【0076】
別の好適なオリゴマーまたはポリマーを工程(1)において任意に更に添加してもよい。ポリカーボネート(成分A)および/またはポリメチルメタクリレート(PMMA)がこのために好ましく用いられる。
【0077】
成分E
本発明との関連で、リン含有防炎加工剤(E)は、好ましくは、モノ−およびオリゴマーリン酸およびホスホン酸エステル、ホスホネートアミン(phosphonatamine)並びにホスファゼンからなる群から選択され、これらの群の一つまたは種々から選択されるいくつかの成分の混合物を防炎加工剤として用いることも可能である。本明細書中で特に言及されない別のハロゲンフリーのリン化合物も更に、単独でまたは別のハロゲンフリーのリン化合物との所望の組み合わせで用いられ得る。
【0078】
好ましいモノ−およびオリゴマーリン酸およびホスホン酸エステルは、一般式(IV)
【化3】

(式中、
、R、RおよびR は、互いに独立して、いずれの場合も任意にハロゲン化されていてもよい、C〜C−アルキル、いずれの場合も任意にアルキル−好ましくはC〜C−アルキル−、および/またはハロゲン−、好ましくは塩素−または臭素−置換されていてもよいC〜C−シクロアルキル、C〜C20−アリールまたはC〜C12−アラルキルであり、
n は、互いに独立して0または1であり、
q は、0〜30であり、かつ
X は、C原子を6〜30個有する単核もしくは多核芳香族基またはC原子を2〜30個有する直鎖もしくは分枝脂肪族基であり、これらはOH置換されていてもよく8個までのエーテル結合を含んでいてもよい。)
のリン化合物である。
【0079】
好ましくは、R、R、RおよびRは、互いに独立して、C〜C−アルキル、フェニル、ナフチルまたはフェニル−C〜C−アルキルである。芳香族基R、R、RおよびRは、それぞれ、ハロゲンおよび/またはアルキル基、好ましくは、塩素、臭素および/またはC〜C−アルキルで置換されていてもよい。特に好ましいアリール基は、クレシル、フェニル、キシレニル、プロピルフェニルまたはブチルフェニルおよびそれらの対応する臭素化および塩素化誘導体である。
【0080】
式(IV)中、Xは、好ましくは、C原子を6〜30個有する単核または多核芳香族基である。これは、好ましくは、式(I)のジフェノールから誘導される。
【0081】
式(IV)中、nは、互いに独立して、0または1であり、nは好ましくは1である。
【0082】
qは、0〜30の値である。式(IV)の種々の成分の混合物が用いられる場合、好ましくは、数平均q値0.3〜20、特に好ましくは0.5〜10、特に0.5〜6を有する混合物が使用され得る。
【0083】
X は、特に好ましくは、
【化4】

またはそれらの塩素化もしくは臭素化誘導体であり、特に、Xは、レソルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールAまたはジフェニルフェノールから誘導される。Xは、特に好ましくはビスフェノールAから誘導される。
【0084】
ビスフェノールAから誘導される式(IV)のオリゴマーリン酸エステルの使用が特に有利である。なぜなら、このリン化合物を有する組成物は応力亀裂および加水分解に対する特に高い抵抗並びに射出成形による加工中沈着の形成への特に低い傾向を有するからである。更に、特に高い加熱撓み温度がこれらの防炎加工剤で達成され得る。
【0085】
モノホスフェート(q=0)、オリゴホスフェート(q=1〜30)またはモノホスフェートとオリゴホスフェートとの混合物が本発明による成分Eとして用いられ得る。
【0086】
式(IV)のモノリン化合物は、特に、トリブチルホスフェート、トリス−(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、ジフェニル2−エチルクレシルホスフェート、トリ−(イソプロピルフェニル)ホスフェート、ハロゲン置換アリールホスフェート、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスフェン酸ジフェニルエステル(methylphosphenic acid diphenyl ester)、フェニルホスホン酸ジエチルエステル、トリフェニルホスフィンオキシドまたはトリクレシルホスフィンオキシドである。
【0087】
成分E式(IV)によるリン化合物は既知である(例えば、EP−A 363 608、EP−A 640 655参照。)かまたは既知の方法と類似した方法で製造され得る(例えば、Ullmanns Enzyklopaedie der technischen Chemie,vol.18,p.301以降 1979;Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,vol.12/1,p.43;Beilstein vol.6,p.177)。
【0088】
平均q値は、好適な方法(ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)またはゲル透過クロマトグラフィー(GPC))によってホスフェート混合物の組成(分子量分布)を決定し、それらのqに関する平均値を計算することによって決定され得る。
【0089】
ホスホネートアミンは、好ましくは、式(V)
3−y−NB (V)
(式中、
A は、式(Va)
【化5】

または(Vb)
【化6】

の基であり、
11およびR12 は、互いに独立して、非置換もしくは置換C〜C10−アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C10−アリールであり、
13およびR14 は、互いに独立して、非置換もしくは置換C〜C10−アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C10−アリールであるか、または、
13およびR14 は、共に、非置換もしくは置換C〜C10−アルキレンであり、
y は、数値0、1または2であり、かつ、
は、独立して水素、任意にハロゲン化されていてもよいC〜C−アルキルまたは非置換もしくは置換C〜C10−アリールである。)
の化合物である。
【0090】
は、好ましくは、独立して、水素、またはハロゲンで置換されていてもよいエチルまたはn−もしくはiso−プロピル、または非置換もしくはC〜C−アルキル−および/もしくはハロゲン−置換C〜C10−アリール、特に、フェニルまたはナフチルである。
【0091】
11、R12、R13およびR14中のアルキルは、独立して、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。
【0092】
11、R12、R13およびR14中の置換アルキルは、独立して、好ましくは、ハロゲンによって置換されたC〜C10−アルキル、特に、一−または二置換メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。
【0093】
11、R12、R13およびR14中のC〜C10−アリールは、独立して、好ましくは、ハロゲンによって(一般的に、一−、二−または三−)置換されていてもよいフェニル、ナフチルまたはビナフチル、特に、o−フェニル、o−ナフチル、o−ビナフチルである。
【0094】
13およびR14は、それらが直接結合している酸素原子およびリン原子と共に環構造を形成していてもよい。
【0095】
一例として好ましいものとして言及される化合物は、式(Va−1)
【化7】

の5,5,5’,5’,5’’,5’’−ヘキサメチルトリス(1,3,2−ジオキサホスホリナン−メタン)アミノ−2,2’,2’’−トリオキシド、1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−ブチル−N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジメチル−,P,2−ジオキシド;1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[[5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジメチル−N−フェニル−,P,2−ジオキシド;1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N,N−ジブチル−5,5−ジメチル−,2−オキシド、1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンイミン,N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−N−エチル−5,5−ジメチル−,P,2−ジオキシド、1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−ブチル−N−[(5,5−ジクロロメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)−メチル]−5,5−ジクロロメチル−,P,2−ジオキシド、1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N−[(5,5−ジクロロメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メチル]−5,5−ジクロロメチル−N−フェニル−,P,2−ジオキシド;1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンアミン,N,N−ジ−(4−クロロブチル)−5,5−ジメチル−,2−オキシド;1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−メタンイミン,N−[(5,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサホスホリナン−2−イル)メタン]−N−(2−クロロエチル)−5,5−ジ(クロロメチル)−,P,2−ジオキシドである。
【0096】
更に好ましい化合物は、式(Va−2)または(Va−3)
【化8】

(式中、R11、R12、R13およびR14は、上記意味を有する。)
の化合物である。
【0097】
式(Va−2)および(Va−1)の化合物が特に好ましい。ホスホネートアミンの製造は、例えば、US 5 844 028に記述されている。
【0098】
ホスファゼンは、式(VIa)および(VIb)
【化9】


(式中、
R は、いずれの場合も、同一であるかまたは異なっており、アミノ、いずれの場合も任意にハロゲン化、好ましくはフッ素でハロゲン化されていてもよい、C〜C−アルキル、またはC〜C−アルコキシ、いずれの場合も任意にアルキル−、好ましくはC〜C−アルキル−、および/またはハロゲン−、好ましくは塩素−および/または臭素−置換されていてもよいC〜C−シクロアルキル、C〜C20−アリール、好ましくはフェニルまたはナフチル、C〜C20−アリールオキシ、好ましくはフェノキシまたはナフチルオキシ、またはC〜C12−アラルキル、好ましくはフェニル−C〜C−アルキルであり、
k は、0または1〜15の数、好ましくは1〜10の数である。)
の化合物である。
【0099】
言及され得る例は、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン(methylphenoxphosphazene)、アミノホスファゼンおよびフルオロアルキルホスファゼンである。フェノキシホスファゼンが好ましい。
【0100】
ホスファゼンは単独で用いられても混合物として用いられてもよい。基Rは、常に、同一であってもよいか、または式(Ia)および(Ib)中の2以上の基が異なっていてもよい。ホスファゼンおよびそれらの製造は、例えば、EP−A 728 811、DE−A 1 961668およびWO97/40092に記述されている。
【0101】
防炎加工剤は単独で用いられても互いの所望の混合物中で用いられても別の防炎加工剤との混合物中で用いられてもよい。リン含有防炎加工剤は、本発明による組成物中で0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、最も好ましくは2〜20重量部の量で用いられ得る。
【0102】
成分F
成分Eに対応する防炎加工剤は、しばしば、材料が火災の際に燃焼ドリップ(buring dripping)になる傾向を減少するいわゆるドリップ防止剤と組み合わせて使用される。本明細書中言及され得る例は、フッ素化ポリオレフィン、シリコーンおよびアラミドファイバーの物質種の化合物である。これらは、本発明による組成物においても使用され得る。フッ素化ポリオレフィンがドリップ防止剤として好ましく用いられる。この混合物は、一般的に、フッ素化ポリオレフィンを0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜1.5重量部含有する。
【0103】
フッ素化ポリオレフィンは既知であり、例えば、EP−A 0 640 655に記述されている。それらは、商標名Teflon(登録商標)のもと、市販されている(例えば、DuPont製のTeflon 30N。)。
【0104】
フッ素化ポリオレフィンは純粋な形態およびフッ素化ポリオレフィンのエマルジョンとグラフトポリマー(成分B)のエマルジョンまたはコポリマー、好ましくは、スチレン/アクリロニトリルベース、のエマルジョンとの凝固混合物の形態の両方で用いられ得る。凝固混合物の場合、フッ素化ポリオレフィンはエマルジョンとしてグラフトポリマーまたはコポリマーのエマルジョンと混合され、次に凝固される。
【0105】
フッ素化ポリオレフィンは、更に、グラフトポリマー(成分B)またはコポリマー、好ましくは、スチレン/アクリロニトリルベース、とのプレコンパウンドとして用いられてもよい。フッ素化ポリオレフィンはパウダーとしてグラフトポリマーまたはコポリマーのパウダーまたはグラニュールと混合され、常套のユニット、例えば、内部ニーダー、押出機または二軸スクリュー中、一般的に温度200〜330℃において溶融物において配合される。
【0106】
フッ素化ポリオレフィンは、更に、フッ素化ポリオレフィンの水性分散体の存在下における少なくとも一種類のモノエチレン性不飽和モノマーのエマルジョン重合によって製造されるマスターバッチの形態で用いられてもよい。好ましいモノマー成分は、スチレン、アクリロニトリルおよびこれらの混合物である。酸性沈殿および続く乾燥後、ポリマーをさらさらのパウダーとして用いる。
【0107】
凝固物、プレコンパウンドまたはマスターバッチは、通常、フッ素化ポリオレフィンの固形分5〜95wt.%、好ましくは7〜60wt.%を有する。
【0108】
成分G
本発明による組成物は、更に、別の常套のポリマー添加剤(成分G)、例えば、防炎加工剤、滑剤および離型剤、例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート、成核剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤および強化剤(例えば、ガラスファイバーまたはカーボンファイバー、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)並びに色素および顔料を含有し得る。
【0109】
成形組成物および成形物品の製造
本発明による熱可塑性成形組成物は、特定の成分を既知の方法で混合し、この混合物を常套のユニット、例えば、内部ニーダー、押出機および二軸スクリュー中、温度200〜300℃において溶融配合および溶融押出することによって製造される。
【0110】
個々の成分の混合は、既知の方法で連続してまたは同時に、特に、約20℃(室温)または高温において、行われ得る。
【0111】
好ましい態様において、
(i) 第一工程において、積層コンパウンドを溶媒フリー溶融法によって有機ポリマー、好ましくは、数平均分子量106〜20,000g/mol、特に好ましくは200〜10,000g/molのポリアルキレンオキシド(種々のポリアルキレンオキシドの混合物が用いられることも可能である。)で変性し、
(ii) 第二工程において、(i)で得られる積層コンパウンドマスターバッチを既知の方法で成分(A)および任意に(B)、(C)、(E)、(F)および(G)からなる群から選択される別の成分と混合し、かつ、
(iii) 第三工程において、(ii)の混合物を、常套のユニット、例えば、内部ニーダー、押出機および二軸スクリュー中、温度200〜300℃において溶融配合および溶融押出し、
工程(i)において生じる積層コンパウンドマスターバッチを工程(ii)において単離することも、溶融物として、好ましくは補助押出機(subsidiary extruder)を使用して、成形組成物に直接加工することも可能である。
【0112】
特に好ましい態様において、ポリカーボネート(成分Aによる)およびポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる群から選択される別のオリゴマーまたはポリマーが第一工程(i)において用いられる。
【0113】
それらの高い熱安定性および良好な機械的特性のため、本発明による熱可塑性組成物は、あらゆるタイプの成形物品、特に、最大発熱速度の増加した要求を有する成形物品の製造に好適である。
【0114】
本発明による成形組成物は、あらゆるタイプの成形物品の製造に使用され得る。これらは、射出成形、押出および吹込成形プロセスによって製造され得る。加工の別の形態は、予め製造されたシートまたはフィルムの熱成形による成形物品の製造である。
【0115】
従って、本発明は、更に、あらゆるタイプの成形物品、好ましくは、上記の成形物品、の製造への本発明による成形組成物の使用、および本発明による成形組成物からの成形物品も提供する。
【0116】
そのような成形物品の例は、フィルム、プロファイル、あらゆるタイプのハウジング部品、例えば、屋内電気器具、例えば、果汁圧搾機、コーヒーマシーンおよびミキサー(mixture);事務機器、例えば、モニター、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンターおよびコピー機;シート、パイプ、電気設備コンジット、ウィンドウ、ドアおよび建築部門用の別のプロファイル(内装および外装用)、並びに、電機部品および電子部品、例えば、スイッチ、プラグおよびソケット、および実用車用、特に、自動車部門用部品である。
【0117】
本発明による成形組成物は、更に、特に、例えば、以下の成形物品または成形品:
軌道車、船舶、航空機、バスおよび別の自動車用内装部品、小型変圧器を含む電気装置のハウジング、情報処理および伝達用装置用ハウジング、医療機器用ハウジングおよび面材、マッサージ機器およびそのハウジング、子供用乗物玩具、フラットウォールエレメント(flat wall element)、安全装置用ハウジング、断熱輸送容器、衛生および浴室備品用成形品、換気口用カバーグレーチング並びに庭設備用ハウジング
の製造にも使用され得る。
【0118】
以下の実施例は、本発明の更なる説明をする。
【実施例】
【0119】
実施例
成分A1
塩化メチレン中、25℃において濃度0.5g/100mlにおいて測定される相対溶液粘度1.34の、ビスフェノールAベースの分枝ポリカーボネート
【0120】
成分A2
塩化メチレン中、25℃において濃度0.5g/100mlにおいて測定される相対溶液粘度1.20の、ビスフェノールAベースの直鎖ポリカーボネート
【0121】
成分B
アクリロニトリル27wt.%とスチレン73wt.%との混合物、ABSポリマーに基づいて43wt.%の、粒状架橋ポリブタジエンゴム(平均粒径d50=0.35μm)57wt.%の存在下におけるエマルジョン重合によって製造されるABSポリマー
【0122】
成分D1
カチオン変性積層シリケート(ステアリルベンジルジメチル−アンモニウムクロリドで変性)(Nanofil 9、パウダー、比重1.8g/cm、平均粒度8μm、完全分散での一次粒子サイズ約100〜500nm×1nm、Sued−Chemie AG製)。
【0123】
成分D2:
積層シリケート/ポリカーボネートマスターバッチ(本発明による)
積層シリケート/ポリカーボネートマスターバッチの製造に関して、表1に列挙される出発物質を10ml小型押出機(DSM)中で240℃において5分間混練し、放出し、室温に冷却する。
【0124】
表1
積層シリケート/ポリカーボネートマスターバッチの製造

【0125】
成分D2−1
Nanofil 757(高純度ナトリウムモンモリロナイト、パウダー、比重約2.6g/cm、平均粒度10μm未満、完全分散での一次粒子サイズ約500nm×1nm、Sued−Chemie AG製)。寸法は、TEM写真およびXRD測定によって決定された:平均層厚1nmかつ層径約300〜1,000nm。
【0126】
成分D2−2
ポリ−(エチレングリコール)モノメチルエーテル(平均分子量(数平均)Mn=350)(Sigma−Aldrich Chemie)
【0127】
成分D2−3
ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量(数平均)Mn=2,000)(Sigma−Aldrich Chemie)
【0128】
成分E
ビスフェノールAベースのオリゴホスフェート
【化10】

【0129】
成分F
ポリテトラフルオロエチレンパウダー、CFP6000N、Du Pont
【0130】
成分G1: ペンタエリトリトールステアレート
【0131】
成分G2: ホスフィット安定剤
【0132】
成分G3: テトラフェニルホスホニウムフェノレート
【0133】
本発明による成形組成物の製造および試験
表2に列挙される出発物質を二軸押出機(ZSK−25)(Werner und Pfleiderer)において機械温度260℃、回転速度225rpmかつ押出量20kg/時間において配合し、このコンパウンドを粒状化する。いずれの場合も総バッチサイズは8kgである。実施例1は、積層シリケートの添加なしの比較例であり、実施例2は、市販のカチオン変性積層シリケートを比較として含み、実施例3は、上記積層シリケート/ポリカーボネートマスターバッチを含む。
【0134】
完成グラニュールは、射出成形機(溶融温度260℃、金型温度80℃、メルトフロントスピード(melt front speed)240mm/秒)において対応する試験片に加工され、これらはISO 1133(MVR)、ISO 5660−1(コーンカロリーメーター法)およびASTM E 662(発煙濃度)によって並びに熱重量分析(TGA)によって特徴を明らかにされる。
【0135】
メルトボリュームフローレート(melt volume flow rate)(MVR値)の決定をISO 1133に従って行う(260℃;5kg)。
【0136】
コーンカロリーメーター測定の決定(50kW/m、距離60mm)をISO 5660−1によって行う。
【0137】
発煙濃度の決定をASTM E 662(発火炎d=3mm)によって行う。
【0138】
熱重量分析(TGA)をTGA/SDTA 851e(Mettler−Toledo)で行った。試料約10mgを秤量し、ヘリウム中酸素20%のガス混合物下において25℃において流量80ml/分で30分間フラッシュし、次に加熱速度5K/分において800℃まで加熱した。全測定中、重量変化を継続的に監視し、質量を質量分析計において記録した。測定される重量減少パーセンテージまたは重量損失速度(%分−1)から得られた分解の温度範囲を表2に示す。初期値は分解の開始に対応し、終末値(end value)は分解の終わりに対応する。
【0139】
表2
成形組成物の組成および特性

【0140】
表2から、本発明による積層シリケート/ポリカーボネートマスターバッチの添加(実施例3)によって、充填剤なしの成形組成物(比較例1)と比較して、測定精度内でメルトボリュームフローレート(MVR値)が変化せずに、ASTM E 662による発煙濃度が低下し、最大発熱速度(発熱、コーンカロリーメーター法によって決定)が減少し、かつ、更に、分解温度(熱重量分析)が増加することがわかる。
【0141】
更に、カチオン変性積層シリケートの使用(比較例2)と比較して低いMARHE値が達成される(MARHE=最大平均熱放射速度)。カチオン変性積層シリケートを含有する比較例2による成形組成物は、比較例1および本発明による実施例3と比較して、ポリカーボネートマトリックスの分子量低下の高まりを示す、著しく増加したMVR値を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート、
B) 任意に耐衝撃性改良剤、
C) 任意に熱可塑性ホモ−および/またはコポリマー
D) 溶媒フリー溶融法によって有機ポリマーで変性された積層コンパウンド、並びに
E) 任意にリン化合物
を含有する組成物。
【請求項2】
A) 芳香族ポリカーボネートおよび/またはポリエステルカーボネート、30〜99.9重量部、
B) ゴム変性グラフトポリマー、0〜60重量部、
C) ホモ−および/またはコポリマー、0〜30重量部、
D) 溶媒フリー溶融法によって有機ポリマーで変性された積層コンパウンド、0.1〜40重量部、並びに
E) リン化合物、0〜30重量部
を含有し、成分A、B、C、DおよびEの重量部の合計が100に規格化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
平均厚0.3〜10nmの積層コンパウンドを含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
層が直径5〜10,000nmの積層コンパウンドを含有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
溶媒フリー溶融法によって数平均分子量106〜20,000g/molのポリアルキレンオキシドで変性された積層コンパウンドを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
溶媒フリー溶融法によって数平均分子量106〜20,000g/molのポリアルキレンオキシドおよび少なくとも一種類の別のポリマーで変性された積層コンパウンドを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
B.1 B.1.1 ビニル芳香族および核置換ビニル芳香族からなる群から選択される少なくとも一種類のモノマー、B.1)に基づいて50〜99wt.%と
B.1.2 ビニルシアニド、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステルおよび不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種類のモノマー、B.1)に基づいて1〜50wt.%と
の混合物、B)に基づいて65〜95wt.%、が
B.2 ガラス転位温度−10℃未満の一種類以上のグラフトベース、B)に基づいて5〜35wt.%、
上にグラフトしているゴム変性グラフトポリマーが成分B)として用いられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
該モノマーB.1.1)がスチレンであり、該モノマーB.1.2)がアクリロニトリルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
該グラフトベースB.2)がジエンゴムを含有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
C.1 ビニル芳香族、核置換ビニル芳香族および(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステルからなる群から選択される少なくとも一種類のモノマー、(コ)ポリマーに基づいて50〜99wt.%と
C.2 ビニルシアニド、(メタ)アクリル酸(C〜C)−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される少なくとも一種類のモノマー、コポリマーに基づいて1〜50wt.%と
の(コ)ポリマーを含有する、従前請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
溶媒フリー溶融法による積層コンパウンドの変性のために
(1) 第一工程において積層コンパウンドを有機ポリマーまたは有機ポリマー混合物と混合し、
(2) 第二工程において該混合物を用いられるポリマーまたは用いられるポリマー混合物の溶融温度以上の温度に加熱する、
請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
成分Eによる該リン化合物がオリゴホスフェートである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
防炎加工剤、ドリップ防止剤、滑剤および離型剤、成核剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤および強化剤並びに色素および顔料からなる群の少なくとも一種類から選択される添加剤を含有する、従前請求項のいずれか一項に記載に記載の組成物。
【請求項14】
(i)第一工程において該積層コンパウンドを溶媒フリー溶融法によって数平均分子量106〜20,000g/molのポリアルキレンオキシドで変性し、
(ii)第二工程において(i)で得られた積層コンパウンドマスターバッチを成分(A)および任意に(B)、(C)、(E)、(F)および(G)からなる群から選択される別の成分と混合し、かつ、
(iii)第三工程において(ii)の混合物を温度200℃〜300℃において溶融配合および溶融押出する
ことを特徴とする、従前請求項のいずれか一項に記載の組成物からの熱可塑性成形組成物の製造方法。
【請求項15】
成形物品の製造への請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含有する成形物品。
【請求項17】
該成形物品が、自動車、軌道車、航空機もしくは船舶の部品または小型変圧器を含む電気設備のハウジング、情報の処理および伝達用装置のハウジング、医療機器のハウジングおよび面材、マッサージ機器およびそのハウジング、子供用乗物玩具、フラットウォールエレメント、安全装置用ハウジング、断熱輸送容器、衛生および浴室備品用成形品、換気口用カバーグレーチングまたは庭設備用ハウジングであることを特徴とする、請求項16に記載の成形物品。

【公表番号】特表2009−520046(P2009−520046A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544823(P2008−544823)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011694
【国際公開番号】WO2007/068384
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】