説明

ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法

【課題】アルコール類とグリシドール類からポリグリセリルエーテル誘導体を製造する際に、特定の固体触媒を用いたポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法を提供し、また、触媒の除去工程を簡略化でき、経済的にかつ効率的にポリグリセリルエーテル誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートの存在下、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドールからポリグリセリルエーテル誘導体を製造する、ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法に関し、詳しくは、アルミノシリケート共存下におけるポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリルエーテル誘導体は、非イオン界面活性剤として優れた性能を有しており、乳化、可溶化、分散、洗浄、起泡、消泡、浸透、抗菌等の目的で、食品、化粧品、香粧品、農薬、医薬品等の分野で利用される。
ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法としては、例えば、特許文献1等には、La系触媒などの均一系触媒を用いて、アルコールとグリシドールの付加反応により製造する方法が知られている。
しかしながら、このような均一系触媒を用いる場合、反応後に触媒を除去する際に、反応混合物を多量の有機溶媒に溶解し、イオン交換樹脂等で触媒を除去した後に溶媒を留去するなど、操作が煩雑になり、また設備の負荷も過大になるなどの課題があった。
一般に、種々の反応において、固体触媒を用いることは知られており、例えば、特許文献2〜4の各々には、触媒として活性炭、ゼオライト等を用いたポリグリセリンの製造方法が開示されており、アルコール類とグリシドールを用いたポリグリセリルエーテル誘導体の製造に固体触媒を用いた例としては、特許文献5に固体触媒として活性炭を用いた製造方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】国際公開2007/066723号パンフレット
【特許文献2】特開2007−63210号公報
【特許文献3】特表平9−508434号公報
【特許文献4】特表平8−506137号公報
【特許文献5】国際公開2006/085485号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記固体触媒として活性炭を用いた製造方法は、グリシドール間の重合によるポリグリセリンが副生成物として生成し易いため収率が低く、また一旦生成したポリグリセリンは、目的とするポリグリセリルエーテル誘導体から活性炭の分離が困難であるという問題点を有していた。
本発明は、アルコール類とグリシドール類からポリグリセリルエーテル誘導体を製造する際に、特定のアルミノシリケートを用いたポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、触媒の除去工程を簡略化でき、経済的かつ効率的にポリグリセリルエーテル誘導体を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、水素イオンの一部又は全部がアンモニウムイオン及び金属元素の陽イオンから選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートの存在下、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドールからポリグリセリルエーテル誘導体を製造する、ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドール類からポリグリセリルエーテル誘導体を製造する際に、特定のアルミノシリケートを用いることで、アルコール類の転化率を上げても副生成物であるポリグリセリンの生成が抑制されたポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法を提供することができ、また、触媒の除去工程を簡略化でき、経済的かつ効率的にポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法は、水素イオンの一部又は全部がアンモニウムイオン及び金属元素の陽イオン(以後、単に陽イオンともいう)から選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートの存在下、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドールからポリグリセリルエーテル誘導体を製造するポリグリセリルエーテル誘導体を製造するものである。ここでポリグリセリルエーテル誘導体とは、1又は2以上の連続するグリセロール残基からなるポリグリセリン部位及びアルキル基等の炭化水素基を有する化合物を意味する。
【0008】
(アルコール類)
本発明で用いるアルコール類は、グリシドール及びグリセリン以外のアルコール類であり、反応性の観点から、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
1−(OA1n−(OA2m−OH (1)
(式中、R1は炭素数1〜36の炭化水素基を示し、A1は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐のアルカンジイル基を示し、A2は水酸基を有する炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルカンジイル基を示し、n、mは、それぞれOA1基、OA2基の質量平均重合度を示し、nは0〜20、mは0〜2の数である。)
1は、炭素数1〜36の飽和又は不飽和の直鎖状、分岐又は環状の炭化水素基である。前記の炭化水素基としては、得られるポリグリセリルエーテル誘導体の物性の観点から、(i)炭素数4〜24、好ましくは炭素数8〜18の直鎖状、分岐又は環状のアルキル基、(ii)炭素数2〜36、好ましくは炭素数4〜24、より好ましくは8〜18の直鎖状、分岐又は環状のアルケニル基、(iii)置換基が置換してもよい炭素数6〜24の芳香族基等が好ましい。
【0009】
1であるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基、各種テトラコシル基、各種トリアコンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、直鎖、分岐鎖、環状のいずれをも含むことを示す。分岐鎖の場合、分岐の数、分岐の位置は特に限定されない。
1であるアルケニル基の具体例としては、プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、イソブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、オレイル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。
1である芳香族基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0010】
一般式(1)において、A1は、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐のアルカンジイル基であり、その具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ブタン−1,3−ジイル基等が挙げられる。
2は、水酸基を有する炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルカンジイル基であり、その具体例としては、ヒドロキシプロパン−1,2−ジイル基、ヒドロキシブタン−1,3−ジイル基等が挙げられる。
n、mは、それぞれオキシアルカンジイル基であるOA1基、OA2基の質量平均重合度を示し、得られるポリグリセリルエーテル誘導体の物性の観点から、nは0〜20、好ましくは0〜8、より好ましくは0であり、mは0〜2である。OA1基、OA2基が複数ある場合、複数のOA1基、OA2基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0011】
一般式(1)で表されるアルコール類の具体例としては、次の(i)〜(iv)のアルコール類等が挙げられる。
(i)メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等の脂肪族アルコール。
(ii)フェノール、メトキシフェノール、ナフトール等の芳香族アルコール。
(iii)エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、エチレングリコールモノステアリルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノミリスチルエーテル、ポリエチレングリコールモノパルミチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノドデシルエーテル等のモノ又はポリアルキレングリコールのモノアルキルエーテル。
(iv)エチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、デシルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテル、ジグリセリンモノドデシルエーテル等のモノ又はジグリセリルエーテルやエチレングリコールモノドデシルモノグリセリルエーテル。
【0012】
上記の具体例の中では、得られるポリグリセリルエーテル誘導体の利用可能性の観点から、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等の炭素数8〜18の脂肪族アルコール、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、オクチルグリセリルエーテル、デシルグリセリルエーテル、ラウリルグリセリルエーテル、ミリスチルグリセリルエーテル、パルミチルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、イソステアリルグリセリルエーテル等のモノグリセリルエーテルが好ましく、炭素数10〜16の脂肪族アルコールがより好ましく、ラウリルアルコールが特に好ましい。
アルコール類は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
(アルミノシリケート)
本発明においては、上記アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドールとの反応は、水素イオンの一部又は全部がアンモニウムイオン及び金属元素の陽イオンから選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートの存在下で行う。
アルミノシリケートの水素イオンをイオン交換するための陽イオンであるアンモニウムイオンとしては、アンモニウム、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウム、ピリジニウム等のイオンが挙げられるが、入手又は調製の観点から、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオンが好ましい。
金属元素の陽イオンとしては、長周期型周期表において、1A,2A,2B,3B族(IUPAC表記では、1,2,12,13族)として記される典型金属元素や3A〜7A,8,1B族(IUPAC表記では3〜11族)として記される遷移金属元素の陽イオンが挙げられる。これら金属元素の陽イオンのうち、副生成物であるポリグリセリンの生成抑制の観点から、1価の陽イオン及び2価の陽イオンから選ばれる一種以上が好ましく、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選ばれる一種以上がより好ましい。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のイオンが挙げられるが、入手又は調製の観点から、本発明においてはナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンが好ましい。
また、アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のイオンが挙げられるが、入手又は調製の観点から、マグネシウムイオン,カルシウムイオンが好ましい。
【0014】
上記のアルミノシリケートの水素イオンをイオン交換するための陽イオンとしては、グリシドールの反応選択性の観点からピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオンが好ましく、ピリジニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンが特に好ましい。
アルミノシリケート上の水素イオンは、アルミノシリケート中の部分的に負に帯電したアルミニウム原子(Al)と静電的に結合しており、アンモニウムイオン又は金属元素の陽イオンによりイオン交換されたアルミノシリケート上の水素イオンの程度(量)は、それぞれ高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)分析より得られる窒素又は金属元素とアルミニウムのモル比〔(窒素/Al)又は(金属元素/Al)〕として評価することができる。
よって本発明における陽イオンによるアルミノシリケートのイオン交換の程度(量)は、上記の2つのモル比の和(以下、(陽イオン/Al)比ともいう。(陽イオン/Al)=(窒素/Al)+(金属元素/Al)である)として評価することができる。ここで、金属元素は、アルミニウムを除く金属元素であることが好ましい。
アルミノシリケートの水素イオンの一部又は全部が、アンモニウムイオン及び金属元素の陽イオンから選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートにおける(陽イオン/Al)のモル比は、ポリグリセリンの生成抑制の観点から、陽イオン/Al比が、0.10〜10であることが好ましく、0.15〜5であることがより好ましく、0.20〜4であることが更に好ましく、0.25〜3であることが特に好ましい。
【0015】
アルミノシリケートとしては、結晶性のものが好ましく用いられるが、本発明においては非晶性のものも使用可能である。本発明においては、ポリグリセリンの生成を抑制し、アルコール類の転化率を向上させる観点から、アルミノシリケートとして、ゼオライトが好ましく用いられる。ゼオライトとしては、Y型、ベータ型、モルデナイト型、及びZSM−5等から選ばれる一種以上がいずれも使用可能であるが、中でもY型ゼオライト、及びモルデナイト型ゼオライトから選ばれる一種以上が好ましく使用できる。
アルミノシリケートを構成するアルミニウム原子と珪素原子(Si)のモル比(Al/Si)は、ポリグリセリンの生成を抑制し、アルコール類の転化率を向上させる観点から、0を超え0.5以下であり、0.0001〜0.5が好ましく、0.0005〜0.1がより好ましく、0.001〜0.01が更に好ましい。
本発明のアルミノシリケートの形状は特に限定されず、粉末や、それらを成形したペレット状などの形状のものを用いることができる。粉末の場合、アルコール類とグリシドールの反応性の観点、ならびに反応後の分離の観点から、平均粒径(メジアン径)は、0.1μm〜1mmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましく、0.8〜80μmがより好ましく、1〜50μmが更に好ましい。
【0016】
本発明で用いるアルミノシリケートは、プロトン酸型のアルミノシリケートのプロトンの一部又は全部を、アンモニウムイオン、金属元素の陽イオンでイオン交換して得られる構造を有している。具体的な操作としては、プロトン酸型のアルミノシリケートをアミン化合物で中和したり、硝酸塩等を用いてイオン交換する方法で、本発明で用いるアルミノシリケートを得ることができる。
本発明の製造方法におけるアルミノシリケートの使用量は、生産性の向上や、副生成物を抑制し、アルコール類の転化率を向上させる観点から、アルコール類に対して、通常0.01〜200質量%、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜50質量%である。
【0017】
(ポリグリセリルエーテル誘導体の製造)
本発明においては、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)と下記式(2)で表されるグリシドールを、上記アルミノシリケートの存在下で反応させるが、アルコール類として、前記一般式(1)で表される化合物を用いると、次のとおり、下記一般式(3)で表されるポリグリセリルエーテル誘導体を得ることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
式(3)において、R1、A1、A2、n及びmは前記と同じであり、(C362pは、本反応のグリシドールの付加反応により生成したポリグリセリン部位を示し、pはポリグリセリン部位におけるグリセロール残基の質量平均重合度を示す。また、R1、A1、A2、n及びmの好適範囲は前記と同じであり、生産性や得られるポリグリセリルエーテルの利用性の観点から、mとpの和は好ましくは0.5〜20、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜6である。
ここで、ポリグリセリン部位の具体的構造としては、下記式から選ばれる1種以上の構造を挙げることができる。
【0020】
【化2】

(式中、q、r、s、tは1以上の整数を示し、(C362)は前記(C362pに記載された(C362)と同じ意味を示す。)
【0021】
この反応においては、一般式(1)で表されるアルコール類と式(2)で表されるグリシドールの使用割合は、得られる一般式(3)のポリグリセリルエーテル誘導体における所望の質量平均重合度pの値によって適宣選定される。生産性や得られるポリグリセリルエーテル誘導体の利用性の観点から、式(2)で表されるグリシドールは、一般式(1)で表されるアルコール1モルに対して、好ましくは0.5〜30モル、より好ましくは1〜20モル、更に好ましくは1〜12モルの割合で用いられる。
【0022】
アルコール類とグリシドールの反応は発熱反応であるので、本発明においては、アルコール類を撹拌しながら、グリシドールを連続的に滴下するか、又は分割添加して徐々に反応させることが好ましい。
グリシドールを連続的に滴下する場合は、その滴下速度は、アルコールの仕込み量に対して、好ましくは1質量%/分以下、より好ましくは0.7質量%/分以下、更に好ましくは0.4質量%/分以下である。
グリシドールを分割添加する場合は、添加予定量をほぼ均等に分割して、好ましくは2分割以上、より好ましくは3分割以上、更に好ましくは4分割以上して、ほぼ等間隔で添加し、全体を通しての添加速度を前記のとおりとするのが望ましい。分割回数はグリシドールの全添加量等により異なるが、工業的観点から2〜5分割程度が好ましい。
滴下又は分割添加の時間は、グリシドールの全添加量等により異なるが、工業的観点から、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、更に好ましくは2〜10時間である。
また、グリシドールの添加完了後、反応系内の状態を維持して0.1〜20時間熟成することもできる。また、グリシドールの滴下と熟成を繰り返し行ってもよい。
【0023】
(反応条件)
本発明における反応温度は、使用するアルコール類の種類や、アルミノシリケートの種類と量等により適宜選択することができる。具体的な反応温度は、反応時間、反応効率、収率、製品の品質などの観点から、100〜250℃が好ましく、150〜230℃がより好ましく、180〜210℃が更に好ましい。
反応系の圧力は、特に制限されず、常圧下でも加圧下でもよい。
反応系内のゲージ圧は、ポリグリセリルエーテル誘導体の収率向上の観点から、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは0.3〜0.9MPaの範囲である。この加圧による収率向上の効果は、ポリグリセリンの生成が増大する高温側で特に顕著である。そのため、反応系を加圧することで、高温でもポリグリセリンの生成を抑制した反応が可能となり、低活性の触媒を用いた場合においても反応時間の短縮を図ることができる。
系内の加圧は、系内に窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガスを充填することにより行うことができる。使用するガスとしては窒素ガスが好ましい。
本発明においては、副生物の生成を抑制し、ポリグリセリルエーテル誘導体の選択性を向上させる観点から、反応系を不活性ガスで加圧し、グリシドール分圧を0.10〜0.49MPa、好ましくは0.10〜0.36MPa、より好ましくは0.10〜0.25MPaに調整することが好ましい。また加圧下においては、反応時間を短縮する観点から、反応温度は100〜250℃が好ましく、180〜250℃がより好ましく、210〜250℃が更に好ましい。
【0024】
反応中又は反応後における気相部の体積は、グリシドール同士の重合を十分に抑制する観点から、その反応器に対して好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは1〜30%である。
また、その気相中のグリシドール濃度は、グリシドール同士の重合を十分に抑制する観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、更に好ましくは1〜30%である。
【0025】
反応は、無溶媒下で行う方が工業的利便性に優れるが、アルコールの組成やグリシドールの添加量により、反応系が高粘度ないし不均一となる場合は、適当な溶媒を適当量用いて反応させることもできる。
溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等の両極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソオクタン、水添トリイソブチレン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、等の炭化水素系溶媒;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒を組み合わせて用いてもよい。
溶媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、溶媒は脱水、脱気して用いるのが好ましい。
【0026】
反応終了後、使用したアルミノシリケートを除去するが、本発明においては、ろ過、デカンテーション等の方法により、容易にアルミノシリケートを除去することができる。反応液を必要に応じ洗浄処理したのち、目的のポリグリセリルエーテル誘導体を得る。また必要に応じて、得られたポリグリセリルエーテル誘導体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶等の常法に従って精製することができる。ここで、使用済みのアルミノシリケートは回収して再使用することができる。
また反応終了後、反応混合液の溶解度を超えて生成したポリグリセリンが析出する場合も、必要に応じ、ろ過等により容易に除去することができる。
【0027】
本発明の方法で得られるポリグリセリルエーテル誘導体は、非イオン界面活性剤として有用であり、その用途、使用形態は特に限定されない。例えば、化合物単独、水溶液、水分散液、又は他の油相を含む乳化液、含水ゲル、アルコール溶液又は分散液、油性ゲル、ワックス等の固形状物質との混合又は浸潤・浸透等の状態又は形状であってもよい。
【実施例】
【0028】
実施例及び比較例において、「%」及び「ppm」は特記しない限り質量基準である。
以下のイオン交換アルミノシリケートの調製例において、陽イオン/Alモル比、及びAl/Siモル比は、ICP−AES分析による元素の定量分析から算出し、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定を行い、体積基準のメジアン径を算出した。
実施例において、反応後の原料アルコール類、ならびにグリシドールの転化率については、ガスクロマトグラフィーにて分析し、反応混合液中に含まれる、ポリグリセリンについては、液体クロマトグラフィーにて分析した。分析装置及び分析条件を下記に示す。
【0029】
<ICP−AES分析>
装置:パーキンエルマー社製、Optima 5300DV
<アルミノシリケートの平均粒径の測定>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置:株式会社堀場製作所製、LA−920
分散媒体:水 前処理:1分間の超音波処理
測定温度:25℃ 計算に用いた屈折率:1.2
【0030】
<ガスクロマトグラフィー分析>
装置:HEWLETT PACKARD HP6850 Series
カラム:J&W社製、B−1HT(内径0.25mm、長さ15m、膜厚0.1μm)
キャリアガス:He,1.0mL/min
注入:300℃,スプリット比1/50 検出:FID方式,300℃
カラム温度条件:40℃ 2分保持→10℃/分昇温→350℃ 2分保持
【0031】
<液体クロマトグラフィー分析>
装置:株式会社日立製作所製、LaChrom
カラム:東ソー株式会社製、Amide−80(カタログNo.13071)
カラムサイズ:4.6mm(ID)×25.0cm(L)
溶離液:アセトニトリル/水=1:1 流量1.0Lml/min
検出:RI(屈折率) カラム温度:40℃
【0032】
<イオン交換アルミノシリケートの調製>
調製例1(Py−Y型ゼオライト400の調製)
300mlナスフラスコにゼオライト(東ソー株式会社製、HSZ−390HUA、Al/Siモル比:0.0027)12.5g、トルエン125ml、ピリジン2.02gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを120℃のオイルバスで13時間攪拌、還流させた後、ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをジクロロメタン500mlで洗浄した後、180℃、40.0Paで6時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたPy−Y型ゼオライトの重量組成はSi:47%、Al:0.12%、窒素:0.026%であった。Al/Siモル比は、0.0027、陽イオン/Al比は0.96である。平均粒径(メジアン径)は4.4μmであった。
【0033】
調製例2(Na−Y型ゼオライト400の調製)
1000mlの4つ口ナスフラスコにゼオライト(東ソー社製、HSZ−390HUA、Al/Siモル比:0.0027)52.5g、イオン交換水500ml、硝酸ナトリウム50.1gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。静置後、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、新たな硝酸ナトリウム水溶液(硝酸ナトリウム50.27g、イオン交換水400ml)を加えて100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。この操作をもう一度行い、処理終了後、ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで10時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたNa−Y型ゼオライトの重量組成はSi:46%、Al:0.11%、ナトリウム(Na):0.03%であった。Al/Siモル比は0.0025、陽イオン/Alモル比は0.32である。平均粒径(メジアン径)は6.5μmであった。
【0034】
調製例3(Na−モルデナイト240の調製)
1000mlの4つ口ナスフラスコにゼオライト(東ソー社製、HSZ−690HOA、Al/Siモル比:0.0077)50.65g、イオン交換水500ml、硝酸ナトリウム55.13gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。ろ過によりNa−モルデナイトを分離した。分離したNa−モルデナイトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで10時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたNa−モルデナイトの重量組成はSi:46%、Al:0.33%、Na:0.62%であった。Al/Siモル比は、0.0075、陽イオン/Alモル比は2.20である。平均粒径(メジアン径)は11.4μmであった。
【0035】
調製例4(Na−ベータゼオライトの調製)
1000mlの4つ口ナスフラスコにゼオライト(東ソー社製、HSZ−980HOA、Al/Siモル比:0.0051)51.19g、イオン交換水500ml、硝酸ナトリウム52.89gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで8時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたNa−ベータゼオライトの重量組成はSi:45%、Al:0.23%、Na:0.23%であった。Al/Siモル比は、0.0053、陽イオン/Al比は1.17である。平均粒径(メジアン径)は1.7μmであった。
【0036】
調製例5(Na−Y型ゼオライト100の調製)
1000mlの4つ口ナスフラスコにゼオライト(東ソー社製、HSZ−385HUA、Al/Siモル比:0.021)51.53g、イオン交換水500ml、硝酸ナトリウム103.54gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。静置後、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、新たな硝酸ナトリウム水溶液(硝酸ナトリウム103.09g、イオン交換水300ml)を加えて100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。この操作をもう一度行い、処理終了後、ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで8時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたNa−Y型ゼオライトの重量組成はSi:45%、Al:0.73%、Na:0.43%であった。Al/Siモル比は、0.017、陽イオン/Al比は0.69である。平均粒径(メジアン径)は1.9μmであった。
【0037】
調製例6(Mg−Y型ゼオライト400の調製)
500mlの4つ口ナスフラスコに上記Na−Y型ゼオライト400、12.20g、イオン交換水150ml、硝酸マグネシウム・六水和物31.60gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。静置後、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、新たな硝酸マグネシウム水溶液(硝酸マグネシウム・六水和物30.05g、イオン交換水100ml)を加えて100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。この操作をもう一度行い、処理終了後、ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで8時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたMg−Y型ゼオライトの重量組成はSi:43%、Al:0.12%、マグネシウム(Mg):0.02%であった。Al/Siモル比は、0.0029、陽イオン/Alモル比は0.18である。平均粒径(メジアン径)は6.2μmであった。
【0038】
調製例7(Cs−Y型ゼオライト400の調製)
500mlの4つ口ナスフラスコにゼオライト(東ソー社製、HSZ−390HUA、Al/Siモル比:0.0027)20.63g、イオン交換水150ml、硝酸セシウム5.24gを加え、ゼオライト分散スラリーを調製した。これを100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。静置後、デカンテーションにより上澄み液を取り出し、新たな硝酸セシウム水溶液(硝酸セシウム5.04g、イオン交換水70ml)を加えて100℃のオイルバスで加熱しながら、1昼夜攪拌した。この操作をもう一度行い、処理終了後、ろ過によりゼオライトを分離した。分離したゼオライトをイオン交換水1500mlで洗い、180℃、40.0Paで8時間乾燥した。ICP−AES分析の結果、得られたCs−Y型ゼオライトの重量組成はSi:44%、Al:0.12%、セシウム(Cs):0.13%であった。Al/Siモル比は、0.0028、陽イオン/Alモル比は0.22である。平均粒径(メジアン径)は6.0μmであった。
【0039】
実施例1
ラウリルアルコール50.01g(0.27mol)、調製例1で得られたPy−Y型ゼオライト400、2.51gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール10.22g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.77g(0.15mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール8.73g(0.12mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して、反終物80.60gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は73.7%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は2.5質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.36であった。
【0040】
実施例2
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例2で得られたNa−Y型ゼオライト400、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール9.89g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.77g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.09g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して、反終物80.33gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は73.5%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は2.5質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.35であった。
【0041】
実施例3
ラウリルアルコール50.02g(0.27mol)、Na−Y型ゼオライト(東ソー社製、HSZ−320NAA、Al/Siモル比:0.35、陽イオン/Alモル比:1.00)を200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール10.21g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.53g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.05g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物80.15gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は62.2%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は10質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.10であった。
【0042】
実施例4
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例3で得られたNa−モルデナイト240、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール10.14g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.93g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.79g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物77.38gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は75.6%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は2.3質量%であったラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.37であった。
【0043】
実施例5
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例4で得られたNa−ベータゼオライト、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール10.41g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.58g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.99g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物77.00gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は66.6%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は9.2質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.13であった。
【0044】
実施例6
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例5で得られたNa−Y型ゼオライト100、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール9.94g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.80g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.98g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物76.60gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は53.2%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は20.0質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は0.87であった。
【0045】
実施例7
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例6で得られたMg−Y型ゼオライト400、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール9.78g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.89g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.33g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物78.32gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は54.2%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は16.0質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は0.71であった。
【0046】
実施例8
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、調製例7で得られたCs−Y型ゼオライト400、2.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール9.92g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.11g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.12g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物81.02gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は76.5%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は3.0質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は1.40であった。
【0047】
比較例1
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)を200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール9.83g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール10.02g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.96g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して、反終物78.63gを得た。その後、析出したポリグリセリンをろ過によって除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99.9%以上)。ラウリルアルコール転化率は46.3%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は27.0質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は0.44であった。
【0048】
比較例2
ラウリルアルコール30.08g(0.16mol)、イオン交換を行っていないH−Y型ゼオライト(東ソー社製、HSZ−390HUA、重量組成はSi:46%、Al:0.12%、ナトリウム:検出せず,窒素:検出せず,Al/Siモル比:0.0027)1.50gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら150℃まで昇温した(200℃ではグリシドール由来の重合物が急激に生成し、攪拌困難であったため)。次に、その温度を保持しながらグリシドール18.39g(0.25mol)を3時間で滴下した。滴下終了後、反応液は粘調なスラリー状となり、攪拌が困難となったため、攪拌を停止し、ろ過により反終品を分離した。得られた反終液をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:94.0%)。ラウリルアルコール転化率は5.4%であった。また、回収したゼオライトを含む固形分は全仕込み量に対して、32質量%であった。
【0049】
比較例3
ラウリルアルコール50.00g(0.27mol)、活性炭(日本エンバイロケイミカルズ社製,商品名;白鷺A)、2.51gを200mL四つ口ナスフラスコに入れ、窒素気流下、攪拌しながら200℃まで昇温した。次に、その温度を保持しながらグリシドール10.24g(0.14mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.91g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌を続けた。その後、グリシドール9.90g(0.13mol)を3時間で滴下し、そのまま4時間攪拌して反終物77.99gを得た。ろ過によってゼオライトを除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析した結果、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率:99%以上)。ラウリルアルコール転化率は39.6%であり、生成物中に含まれるポリグリセリンの含有量は21.7質量%であった。ラウリルポリグリセリルエーテルのポリグリセリル部位の質量平均重合度は0.64であった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1の反応条件A、Bの詳細は以下のとおりである。
(反応条件A)
・仕込み比: ラウリルアルコール:グリシドール=1:1.5(モル比)、ゼオライト(比較例3では活性炭);5質量%(対ラウリルアルコール)
・反応温度: 200℃
・グリシドール添加条件: グリシドール0.5当量(対ラウリルアルコール)を3時間かけて滴下した後、4時間攪拌した。この操作を3回繰り返した。
(反応条件B)
・仕込み比: ラウリルアルコール:グリシドール=1:1.5(モル比)、ゼオライト;5質量%(対ラウリルアルコール)
・反応温度: 150℃
・グリシドール添加条件: グリシドール1.5当量(対ラウリルアルコール)を3時間かけて滴下した。
表1から、本発明の方法によれば、アルコール類の転化率を上げても副生成物であるポリグリセリンの生成を抑制することができることが分かる。
【0052】
実施例9
500mLオートクレーブにラウリルアルコール150.0g(0.80mol)、触媒として調製例2で用いたNa−Y型ゼオライト400を7.51g(5質量%/対ラウリルアルコール)、グリシドール29.8g(0.40mol:0.5当量/ラウリルアルコール)を加え、槽内を窒素で0.3MPa(ゲージ圧)(昇温後0.6MPa(ゲージ圧)まで上昇)まで加圧し、攪拌しながら230℃まで昇温した(25℃から昇温を開始し、昇温速度は6.8℃/min、グリシドール分圧0.25MPa)。230℃到達時点を0時間とし4時間反応させ、反応終了物187.2gを得た。濾過によって触媒を除去し、得られた生成物をガスクロマトグラフィーによって分析し、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率99%以上)。結果を表2に示す。
【0053】
実施例10
実施例9と同様にして、230℃まで昇温した(25℃から昇温を開始し、昇温速度は6.8℃/min、グリシドール分圧0.25MPa)。230℃到達時点を0時間とし4時間反応させた。その後、更にグリシドール29.8g(0.40mol:0.5当量/ラウリルアルコール)を加え、4時間反応させ、反終物217.1gを得た。得られた生成物をガスクロマトグラフィー分析し、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率99%以上)。結果を表2に示す。
【0054】
実施例11
実施例9と同様にして、230℃まで昇温した(25℃から昇温を開始し、昇温速度は6.8℃/min、グリシドール分圧0.25MPa)。230℃到達時点を0時間とし4時間反応させた。その後、更にグリシドール29.8g(0.40mol:0.5当量/ラウリルアルコール)を加え、4時間反応させた。その後、更にグリシドール29.8g(0.40mol:0.5当量/ラウリルアルコール)を加え、4時間反応させ、反終物246.9gを得た。得られた生成物をガスクロマトグラフィー分析し、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率99%以上)。結果を表2に示す。
【0055】
実施例12
実施例9において、グリシドールの添加量を89.54g(1.21mol:1.5当量/ラウリルアルコール)としたこと以外は、実施例9と同様にして、230℃まで昇温した(25℃から昇温を開始し、昇温速度は6.8℃/min、グリシドール分圧0.36MPa)。230℃到達時点を0時間とし4時間反応させ、反終物215.8gを得た。得られた生成物をガスクロマトグラフィー分析し、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率99%以上)。結果を表2に示す。
【0056】
実施例13
実施例9において、グリシドールの添加量を89.60g(1.21mol:1.5当量/ラウリルアルコール)としたこと以外は、実施例9と同様にして、250℃まで昇温した(25℃から昇温を開始し、昇温速度は7.5℃/min、グリシドール分圧0.48MPa)。250℃到達時点を0時間とし3時間反応させ、反終物232.2gを得た。得られた生成物をガスクロマトグラフィー分析し、ラウリルポリグリセリルエーテルの存在を確認した(グリシドール転化率99%以上)。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
なお、表2中の「気相中グリシドール濃度(体積%)」は次式から算出した。
気相中グリシドール濃度(体積%)=気相中のグリシドール体積/(気相中の不活性ガス体積+気相中のグリシドール体積)
上記式中、気相中の不活性ガス体積、及び気相中のグリシドール体積は、各々の仕込み量を用いて、既知の気液平衡計算により求めた。
表2から、反応を特に加圧条件下で行なうことで、ポリグリセリンの生成が増大する高温側においても、ポリグリセリンの生成を抑制し、より効率的にポリグリセリルエーテルを製造することが可能であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法によれば、アルコール類とグリシドールとの高選択的付加反応を実現し、かつアルコール類の転化率を向上させることができる。また、得られたポリグリセリルエーテル誘導体は、非イオン界面活性剤として有用であり、例えば、乳化、可溶化、分散、洗浄、起泡、消泡、浸透、抗菌等の目的で、食品、化粧品、香粧品、農薬、医薬品等の工業用途において、広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素イオンの一部又は全部がアンモニウムイオン及び金属元素の陽イオンから選ばれる一種以上でイオン交換されているアルミノシリケートの存在下、アルコール類(但し、グリシドール及びグリセリンを除く)とグリシドールからポリグリセリルエーテル誘導体を製造する、ポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項2】
金属元素の陽イオンが、金属元素の1価の陽イオン及び2価の陽イオンから選ばれる一種以上である、請求項1記載のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項3】
金属元素の陽イオンが、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンから選ばれる一種以上である、請求項1又は2記載のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項4】
アルミノシリケートがゼオライトである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項5】
アルミノシリケートの、アルミニウム原子(Al)と珪素原子(Si)のモル比(Al/Si)が0を超え0.5以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項6】
アルコール類が、一般式(1)
1−(OA1n−(OA2m−OH (1)
(式中、R1は炭素数1〜36の炭化水素基を示し、A1は炭素数2〜4の直鎖状又は分岐のアルカンジイル基を示し、A2は水酸基を有する炭素数2〜4の直鎖又は分岐のアルカンジイル基を示し、n、mは、それぞれOA1基、OA2基の質量平均重合度を示し、nは0〜20、mは0〜2の数である。)
で表される化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリグリセリルエーテル誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2010−195775(P2010−195775A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14604(P2010−14604)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】