説明

ポリシロキサンの再配分方法

本発明は、プロトン化したアミンの塩又は第4級アンモニウム化合物である界面活性剤と、塩酸水溶液と、加水分解物、D又はDであるシリコーンとを、接触及び加熱する工程を備える方法を用いた、環状及び線状ポリシロキサンの再配分に関する。本発明の方法がシリコーン加水分解物を用いて実施されるとき、再配分の前に、前記シリコーン加水分解物を、線状及び環状成分に分ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
市販のシロキサンポリマーは、一般的に、加水分解性の有機ケイ素組成物の加水分解及び縮合によって製造される。加水分解は、鎖状及び環状のポリシロキサンを生成する。要求に応じて、いくつかのポリシロキサンは、他のものに比べて、より高価である。例えば、環状ポリシロキサンは、鎖状ポリシロキサンよりも高価である。このように、加水分解性の有機ケイ素組成物の加水分解及び縮合の工程において、鎖状よりも環状シロキサンの製造を促進する手段が発展している。そのような製造方法の例については、特許文献1(米国特許第3983148号明細書)、特許文献2(米国特許第4423240号明細書)、特許文献3(米国特許第4772737号明細書)及び特許文献4(米国特許第4412080号明細書)で開示されている。しかしながら、これらの製造方法が持つ生成物に対する作用は限られたものである。
【0002】
加水分解性の有機ケイ素組成物の加水分解及び縮合における生成物に作用する方法に加えて、鎖状有機ポリシロキサンから環状ポリシロキサンをする方法も報告されている。これらの製造方法は、酸若しくは塩基触媒による熱分解、又は、有機ポリシロキサンの解重合を含む。しかしながら、これらの製造方法は、高い反応温度、長い反応及び/又は平衡時間、高い腐食性、並びに、高分子の分岐のように、付随した問題があった。
【0003】
異なる環のサイズを生成するため、環状ポリシロキサンを再配分する製造方法も発展している。これらの製造方法の例については、特許文献5(米国特許第4556726号明細書)、特許文献6(米国特許第4764631号明細書)及び特許文献7(欧州特許第0552925号明細書)が開示されている。しかしながら、製造方法の実施に先立って、加水分解及び縮合生成物から環状ポリシロキサンの分離を必要とすること、高い温度を必要とすること、製造されたポリシロキサンの環のサイズの制御が困難であること、又は、出発のポリシロキサン組成物の種類に対して許容性が低いように、付随した問題がある。そのため、これらの問題を解決できるポリシロキサンの再配分する方法を必要としている。また、製造方法の実施に先立って、直接処理において生成されたポリシロキサンの分離を要さず、出発ポリシロキサン組成物の種類を許容でき、製造方法に従って生成されたポリシロキサン環のサイズを制御でき、低温で実施できる方法を必要としている。
【0004】
本発明者らは、環状及び鎖状ポリシロキサンを再配分する方法を発展させている。特に、本発明者らは、(i)界面活性剤、(ii)塩酸水溶液、及び、(iii)加水分解物、D又はDであるシリコーンを接触及び加熱することによって、特定の環サイズの環状ポリシロキサン及び特定の分子量鎖状ポリシロキサンが得られることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3983148号明細書
【特許文献2】米国特許第4423240号明細書
【特許文献3】米国特許第4772737号明細書
【特許文献4】米国特許第4412080号明細書
【特許文献5】米国特許第4556726号明細書
【特許文献6】米国特許第4764631号明細書
【特許文献7】欧州特許第0552925号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、プロトン化したアミンの塩又は第4級アンモニウム化合物である界面活性剤と、塩酸水溶液と、シリコーン加水分解物、D又はDからなるシリコーンと、を接触及び加熱する工程を含む方法によって、ポリシロキサンを再配分することを必要とする。シリコーン加水分解物を用いて本発明の方法を実施すると、再配分に先立って、シリコーン加水分解物を鎖状及び環状成分に分離する必要がない。
【0007】
ここで用いられる用語「Dx」については、環状ポリシロキサンの環にある各ケイ素が2つの酸素原子に結合した環状ポリシロキサンを意味しており、「X」については、前記環にあるケイ素原子の数を表す。「Dx」は、各ケイ素原子は、2つの酸素原子に加えて、2つの1〜5個の炭素原子のヒドロカルビル基、又は、1つの1〜5個の炭素原子のヒドロカルビル基及び1つの水素原子と結合した環状ポリシロキサン構造を含むことを意味する。1〜5個の炭素原子のヒドロカルビル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基及びペンチル基を含む。以下のヘキサメチルシクロトリシロキサン(D)及びオクタメチルシクロテトラシロキサン(D)の構造が、この用語の例として挙げられる。
【化1】

【0008】
ここで用いられる、「接触すること」、「接触」及び「接触された」は、そのままの形では同じ意味を示し、どのような順序であっても、言及された物質が、ともにそれぞれ関係し、接して、混同する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(i)界面活性剤と、(ii)塩酸水溶液と、(iii)シリコーン加水分解物、D又はDであるシリコーンとを接触及び加熱する工程を含む。本発明の製造方法が実施されると、前記シリコーンは再配分される。本発明の製造方法は、D、D又はDの量を増加又は減少させることができ、それぞれの従来方法の実施にかかる量に比べて、鎖状ポリシロキサンの量を増加させる。
【0010】
前記界面活性剤は、プロトン化したアミンの塩若しくは第4級アンモニウム化合物、又は、それらの混合物である。前記プロトン化したアミンの塩の場合、前記界面活性剤は、前記塩酸及びシリコーンと直接接触する。代案としての、前記プロトン化したアミンは、塩酸水溶液を含む適当なアミンにより、その状態で形成される。典型的には、本発明による塩酸溶液は飽和している。その結果、塩化水素の存在量がプロトン化したアミンの形成に必要とされる量を上回る。そのように形成される際、プロトン化したアミンの塩を形成するメカニズムは、通常の酸塩基反応のメカニズムによって表される。
【化2】

ここで、Bは前記アミンを表し、HBを形成するためにプロトン化され、HAはBに水素イオンを提供する酸を表し、Aが残存する。本発明によれば、HB及びAは、集合してプロトン化されたアミンの塩を構成する。前記プロトン化したアミンの塩の形成に適したアミンは、ここでは、5〜14の炭素原子を含み、窒素結合された少なくとも1つのアルキル基を有する第一級、第二級及び第三級アミンを含有し、該アルキル基は、NRR’R”の式によって表され、Rはアルキル基、別の表現では5〜14の炭素原子を含むアルキル基であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である。前記プロトン化されたアミンの塩の界面活性剤を形成に用いられる、適したアミンについては、N−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−ペンチルアミン、N−ヘキシルアミン、N−セチルジメチルアミン、N−ドデシルアミン、N−ドデシルジプロピルアミン、N−オクチルメチルアミン、N−ノニルアミン、N−テトラデシルアミンなどがある。一実施形態として、前記プロトン化されたアミンの塩の界面活性剤は、塩酸溶液にN−オクチルアミンを加え、そこでプロトン化が行われることによって、形成される。なお、当業者は、ここでのプロトン化されたアミンの塩を形成するために適したアミンを加える方法を知っており、適当なプロトン化したアミンの混合物を、本発明に従って接触させることを認識できるであろう。
【0011】
前記界面活性剤が、プロトン化したアミンの塩であるとき、前記界面活性剤も、前記塩酸水溶液及び前記シリコーンと直接接触させることができる。一実施形態では、前記界面活性剤はプロトン化したアミンの塩であり、前記塩酸水溶液及び前記シリコーンと直接接触させる。界面活性剤として前記塩酸水溶液及び前記シリコーンと直接接触するのに適したプロトン化されたアミン塩は、NRR’R”NHの式を持つものを含む。ここで、R、R’及びR”は上記と同様であり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、若しくはヨウ化物、又は、H2SO4又はH3PO4のような強鉱酸の陰イオンである。一実施形態では、Xは塩化物である。なお、当業者は、前記界面活性剤と、前記塩酸水溶液及び前記シリコーンとを接触させる方法を知っているであろう。
【0012】
前記界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物である。ここで用いられる「第四級アンモニウム化合物」とは、4つの有機基(陽イオン)と結合した中央の窒素原子を含んだ分子構造を有する有機窒素化合物の一種を意味し、負に帯電した酸基(陰イオン)を含んだ第四級アンモニウム化合物を有する第四級アンモニウム塩の意味も含まれる。前記第四級アンモニウム塩の構造を以下に示す。
【化3】

ここで、それぞれ、Rは独立して1〜22の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Zは負に帯電した酸基(例えば、塩化物イオン)である。本発明における使用に適した第四級アンモニウム塩の例としては、8〜22の炭素原子のアルキルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物(特に塩化物)、8〜22の炭素原子のアルキルジメチルベンジルアンモニウムのハロゲン化物、又は、ジ(8〜22の炭素原子のアルキル)ジメチルアンモニウムのハロゲン化物であり、8〜22の炭素原子のアルキル基としては、例えば、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オレイル基若しくはオクタデシル基、又は、獣脂若しくはココヤシのアルキル基があり、同様に、これらの物質に対応した塩がある。上述した例のハロゲン化物の代案として、メトサルフェート、リン酸塩化物又は酢酸塩化物を用いることもできる。第四級アミンが界面活性剤である場合、本発明によれば、該界面活性剤を一般的には前記塩酸及びシリコーンと、直接接触させる。当業者は、本発明での、第四級アンモニウム塩と、塩酸及びシリコーンとを接触させる方法を知っているであろう。プロトン化したアミンの混合物、プロトン化したアミン及び第四級アンモニウムの塩、並びに、第四級アンモニウム塩についても、界面活性剤として接触することができる。
【0013】
接触する界面活性剤の量は、前記(i)、(ii)及び(iii)の合計質量に基づいて0.1〜10質量%の範囲であり、その他の実施形態では、前記界面活性剤は、前記(i)、(ii)及び(iii)の合計質量に基づいて0.5〜5質量%の範囲である。
【0014】
塩酸水溶液中の塩化水素の濃度は変化する。一の実施形態では、塩酸水溶液は飽和溶液であり、塩酸水溶液中の塩化水素濃度は、塩酸水溶液の温度及び圧力によって変化する。他の実施形態では、塩酸溶液の濃度は飽和溶液濃度の95〜100%であり、その他の実施形態では、前記塩酸溶液の濃度は飽和溶液濃度の98〜100%であり、またその他の実施形態では、前記塩酸溶液の濃度は飽和溶液濃度の99〜100%であり、さらにその他の実施形態では、本質的に飽和溶液である。本発明による塩酸水溶液は、一般的に、塩化水素によって飽和している。当業者であれば、温度が変化したときの飽和塩酸溶液の作り方を理解できるであろう。例えば、25℃で約101kPaにおける塩酸の飽和溶液は、約41質量%の塩化水素を含有し、40℃で約101kPaにおける塩酸の飽和溶液は、約39質量%の塩化水素を含有する。
【0015】
本発明に従って接触するシリコーンは、シリコーン加水分解物である。該シリコーン加水分解物は、環状及び鎖状ポリシロキサンを含む。一の実施形態では、前記シリコーン加水分解物は、20〜80質量%の鎖状ポリシロキサン及び80〜20質量%の環状ポリシロキサンを含み、他の実施形態では、30〜55質量%の鎖状ポリシロキサン及び45〜70質量%の環状ポリシロキサンを含み、さらに他の実施形態では、35〜50質量%の鎖状ポリシロキサン及び65〜50質量%の環状ポリシロキサンを含む。
【0016】
前記シリコーン加水分解物の前記環状ポリシロキサンは、D、D、D又はこれらの混合物である。前記環状ポリシロキサン内のD、D、Dの量は異なるが、D、D又はDのうちの1つが、前記シリコーン加水分解物中のその他の環状ポリシロキサンのそれと比べて過剰である。ここで用いられる「過剰」とは、1つの環状ポリシロキサンの質量%が、前記加水分解物中の他のものに比べて大きいことを意味する。前記過剰な環状ポリシロキサンと、前記シリコーン加水分解物中の該過剰な環状ポリシロキサンと質量%の類似した環状ポリシロキサンとの間の質量%の差によって前記過剰を表すことができる。一の実施形態では、前記過剰とは5〜100質量%であり、他の実施形態では、前記過剰とは10〜80質量%であり、その他の実施形態では、前記過剰とは10〜60質量%であり、また他の実施形態では、前記過剰とは10〜50質量%であり、さらに他の実施形態では、前記過剰とは15〜45質量%である。別の実施形態では、D、D又はDのうちの2つが、その他に比べて過剰であり、該過剰とは、前記過剰な2つのうちの1つと、過剰でない環状ポリシロキサンとの間の質量%の差である。当業者は、製造工程の始めの過剰な環状ポリシロキサンの濃度が、その他の環状ポリシロキサンの特定の反応条件及び濃度を目的とした平衡濃度よりも高いことを理解できるであろう。そうしなければ、重要な再配分が起こらないおそれがある。しかしながら、この区別は、製造工程の始めの1つ又は2つのポリシロキサンの質量%の過剰は、一般的に平衡濃度が近くないため、通常は重要ではなく、製造工程は継続し、前記環状ポリシロキサンは再配分される。
【0017】
一実施形態では、前記シリコーン加水分解物中の前記環状ポリシロキサンは、該シリコーン加水分解物中の環状ポリシロキサンの質量に基づいて、43〜90質量%のD、9〜56質量%のD、及び、1〜23質量%のDを含み、他の実施形態では、前記環状ポリシロキサンは、50〜90質量%のD、9〜30質量%のD、及び、1〜20質量%のDを含み、さらに他の実施形態では、前記環状ポリシロキサンは、50〜90質量%のD、9〜34質量%のD、及び、1〜16質量%のDを含む。一実施形態では、前記環状ポリシロキサンは、ポリジメチルシロキサンを有する。前記シリコーン加水分解物は、D、D又はD又は分岐状のポリシロキサン以外の、環状ポリシロキサンを0.1〜5質量%含む。前記シリコーン加水分解物は、3質量%未満の出発材料、及び、該シリコーン加水分解物を生成するために実施された加水分解反応の他の副生物も含む。
【0018】
前記シリコーン加水分解物は、ハロシラン又はハロシランの混合物の加水分解及び縮合によって形成される。本発明に従って前記シリコーン加水分解物を形成するために用いられるハロシランは、直接法として知られるものにおいて生成される。該直接法は、金属シリコンが、触媒の存在下で、例えばクロロメタンのようなハロアルカンと反応する方法のことをいう。前記直接法は、技術的によく知られており、例えば、米国特許第2905703号に開示されている。前記ハロシランの加水分解は、バッチ又は連続的なプロセスの中で実施される。一般的には、前記加水分解は、前記シリコーン加水分解物を形成するため、適当な反応炉中でハロシランが水及びハロゲン化水素と混合された連続的なプロセスにおいて実施される。得られたシリコーン加水分解物及びハロゲン化水素水溶液は、その後、デキャンタに分離されるか、直接製造工程に用いられる。ハロシランを加水分解する方法は、技術的に良く知られている。
【0019】
一実施形態では、前記シリコーン加水分解物は、R2SiCl2の式のクロロシランを含むハロシランの加水分解から形成され、ここで、クロロシランのR基のうちの1つが水素であり、その他は1〜5の炭素のヒドロカルビル基であるか、各Rが独立して1〜5の炭素のヒドロカルビル基であるか、又は、それらの混合物である。前記クロロシランの1〜5の炭素のヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、ペンチル基である。適したクロロシランの例として、例えば、ジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)、ジエチルジクロロシラン((C2H5)2SiCl2)、ジ−n−プロピルジクロロシラン((n-C3H7)2SiCl2)、ジ−i−プロピルジクロロシラン((i-C3H7)2SiCl2)、ジ−n−ブチルジクロロシラン((n-C4H9)2SiCl2)、ジ−i−ブチルジクロロシラン((i-C4H9)2SiCl2)、ジ−t−ブチルジクロロシラン((t-C4H9)2SiCl2)、n−ブチルメチルジクロロシラン(CH3(n-C4H9)SiCl2)、オクタデシルメチルジクロロシラン(CH3(C18H37)SiCl2)、ジフェニルジクロロシラン((C6H5)2SiCl2)、フェニルメチルジクロロシラン(CH3(C6H5)SiCl2)、ジシクロヘキシルジクロロメタン((C6H11)2SiCl2)、及び、メチルジクロロシラン(CH3SiHCl2)が含まれる。本発明によって前記シリコーン加水分解物を形成する典型的なクロロシランとしては、ジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)、及び、メチルジクロロシラン(CH3SiHCl2)である。要求に応じて、モノクロロシラン(例えば、R3SiCl、ここで、Rは上述の定義と同様である。)を用いて、前記シリコーン加水分解物を形成することもできる。好ましいモノクロロシランとしては、例えば、トリメチルクロロシラン((CH3)3SiCl)がある。一実施形態では、前記シリコーン加水分解物の製造に用いられる前記クロロシランは、ジメチルジクロロシランである。
【0020】
前記シリコーン加水分解物は、鎖状ポリシロキサンを含む。該鎖状ポリシロキサンは、式(I)による構造を有する。
【化4】

ここで、各Rは独立して、水素又は1〜5の炭素のヒドロカルビル基であり、各Rは独立して、1〜5の炭素のヒドロカルビル基であり、各Yは独立して、ハロゲン又はヒドロキシル基であり、nは1以上の整数である。一実施形態では、Rは水素であり、各Rは独立して1〜5の炭素のヒドロカルビル基であり、Yはハロゲン又はヒドロキシル基であり、nは1以上の整数であり、他の実施形態では、Rは水素、各Rは独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、又はペンチル基であり、Yは塩素であり、nは1以上の整数であり、さらに他の実施形態では、Rは水素、Rはメチル基、Yは塩素、nは1以上の整数である。また、他の実施形態では、各R及びRは、独立して1〜5の炭素のヒドロカルビル基であり、Yはハロゲン又はヒドロカルビル基であり、nは1以上の整数であり、さらに他の実施形態では、各R及びRは、独立して、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、s−ブチル基、又はペンチル基であり、Yは塩素であり、nは1以上の整数であり、さらにまた他の実施形態では、R及びRはメチル基、Yは塩素、nは1以上の整数である。
【0021】
前記鎖状ポリシロキサンは、ヒドロキシル、ハロゲン、又は、ヒドロキシル及びハロゲンの、末端基を有する。前記末端基は、式(I)のYによって表される。Yがハロゲン基の場合には、前記鎖状ポリシロキサンはハロゲン末端ブロックであり、Yが塩素基の場合には、前記鎖状ポリシロキサンは、塩素末端ブロックである。さらに、Yがヒドロキシル基の場合には、前記鎖状ポリシロキサンは、ヒドロキシル末端ブロックである。前記末端基Yは、各鎖状ポリシロキサンの鎖、又は、鎖状ポリシロキサンのポリマー鎖の中で、同じでも異なっていてもよい。そのため、ハロゲン又はヒドロキシル基である鎖状ポリシロキサンの末端基のパーセンテージは変化する。一実施形態では、前記ポリシロキサンは前記ハロゲン末端ブロックの末端基を0〜100%有し、他の実施形態では、0.01〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基であり、また他の実施形態では、0.1〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基であり、さらに他の実施形態では、50〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基であり、さらにまた他の実施形態では、95〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基である。また他の実施形態では、97〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基であり、さらに他の実施形態では98〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基であり、さらにまた他の実施形態では、99〜100%が前記ハロゲン末端ブロックの末端基である。一の実施形態では、前記鎖状ポリシロキサンのハロゲン末端ブロックが塩素であり、他の実施形態では、前記鎖状ポリシロキサンが塩素末端ブロック鎖状ポリシロキサンである。当業者は、ここで述べられた末端ブロックの意味を理解し、鎖状ポリシロキサンの末端ブロックの範囲及び定義を決定できるであろう。
【0022】
本発明による前記鎖状ポリシロキサンが塩素末端ブロックである場合、塩酸の飽和溶液を用いた製造方法を実施することにより、塩化水素ガスの形で前記鎖状ポリシロキサンからいくらかの塩素が回収される。塩化水素ガスとして回収することによって、本発明の方法はより経済的となる。なぜなら、溶液中に回収された塩化水素は、塩化水素ガスを回収するためさらに処理されるか、又は廃棄されるためである。
【0023】
本発明に従って接触する前記シリコーンは、D、D又はこれらの混合物を含む。D及びDは、以下の構造による環状ポリシロキサンである。
【化5】

ここで、Dのnは5、Dのnは6であり、R及びRは上記定義と同様である。一実施形態では、前記シリコーンは、Rがメチル基又は水素であり、Rがメチル基であるDを含み、他の実施形態では、前記シリコーンは、R及びRがメチル基であるDを含み、その他の実施形態では、前記シリコーンは、Rがメチル基又は水素であり、Rがメチル基であるDを含み、また他の実施形態では、前記シリコーンは、R及びRがメチル基であるDを含み、さらに他の実施形態では、Rがメチル基又は水素であり、Rがメチル基である、D及びDを含み、さらにまた他の実施形態では、R及びRがメチル基である、D及びDを含む。前記シリコーンがD、D又はこれらの混合物を含む場合、前記シリコーンは、D、0から20質量%未満の鎖状ポリシロキサン、及び/又は、分岐ポリシロキサンを含む。D及びDは、例えば、接触法によって製造し、例えば、機能的分配によって、前記シリコーン加水分解物から分離する。当業者は、本発明によるD及びDの接触方法を知っているであろう。D及びDは、上述した本発明によるシリコーン加水分解物の形成に関連して、適したハロシランの加水分解し、例えば、分留によって、前記シリコーンから分離することによって商業的に製造することができる。
【0024】
前記シリコーンがハロゲン末端ブロック鎖状ポリシロキサンを含むシリコーン加水分解物であるとき、前記ハロゲン末端ブロック基のいくつか又は全ては、製造工程の間、ヒドロキシル基と置き換わる。これらのヒドロキシル基は、その後、前記シリコーン加水分解物中で、前記鎖状ポリシロキサンの鎖長を増加させるため、前記加水分解中に他の鎖状ポリシロキサンとの縮合反応を受ける。前記ハロゲン末端ブロック基の置換の結果として、前記ハロゲンは製造工程から回収される。前記ハロゲン末端ブロック基が塩素である場合、該塩素は、塩化水素ガス及び/又は塩化水素水溶液として回収される。他の実施形態としては、塩素は、塩化水素ガスとして、及び、塩化水素水溶液として、回収される。
【0025】
前記シリコーン加水分解物中のハロゲン末端ブロック鎖状ポリシロキサンの分子量は変化する。一実施形態では、数平均分子量(Mn)は、1500原子質量単位(AMU)よりも小さく、他の実施形態では、100から1500未満AMUである。本発明の工程後、前記鎖状ポリシロキサンのMnは増加する。本発明の製造工程によって生成された前記鎖状ポリシロキサンのMnは変化する。一実施形態では、本発明に従って製造された前記鎖状ポリシロキサンは、1500AMU以上のMnを有し、他の実施形態では、1500〜4000AMUであり、その他の実施形態では、1500〜3800AMUであり、また他の実施形態では、1500〜3500AMUであり、さらに他の実施形態では、2000〜3000AMUである。なお、当業者であれば、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、本発明によるポリシロキサンのMWを決定する方法を知っているであろう。
【0026】
塩酸水溶液に対するシリコーンの質量比は、本発明の工程に従い変化する。一実施形態では、塩酸水溶液に対するシリコーンの質量比は1:2〜2:1であり、他の実施形態では、1:1.5〜1.5:1であり、また他の実施形態では、1:1.25〜1.25:1であり、さらに他の実施形態では、塩酸水溶液に対するシリコーンの質量比は実質的に1:1であり、さらにまた他の実施形態では、塩酸水溶液に対するシリコーンの質量比は1:1である。ここでプロトン化されたアミンが生成されるかどうかに関わらず、シリコーンに対する塩酸水溶液の比が同じものが用いられる。なお、当業者であれば、製造方法を実施するために塩酸水溶液に対するシリコーンの量を変化させる方法を知っているであろう。
【0027】
前記製造工程の間、前記環状及び鎖状ポリシロキサンが再配分される。ここで用いられる「再配分する」又は「再配分」とは、鎖状及び環状の全てのポリシロキサンの質量に関して、1つの環サイズの環状ポリシロキサンの質量割合を減少させる一方、それ以外の環サイズの環状ポリシロキサン及び/又は鎖状ポリシロキサンの質量割合を増加させることによって、環状及び鎖状ポリシロキサンの質量割合を変化させる意味を示す。シリコーン加水分解物と接触したとき、前記製造方法では、典型的に、プロセスの開始時における前記シリコーン加水分解物中のその他の環サイズの環状ポリシロキサンに比べて、過剰である前記環状ポリシロキサンの質量割合が減少する結果となる。過剰な前記環状ポリシロキサンの質量割合が減少する一方、それ以外の過剰でない環状ポリシロキサンの質量割合は増加する。例えば、前記出発のシリコーン加水分解物が、D及びDに比べて過剰にDを有するとき、該Dの質量%は概して減少し、前記D、D及び鎖状ポリシロキサンの質量%は概して増加する。同様に、過剰にDを有して開始する場合には、該Dの質量%は減少し、前記D、D及び鎖状ポリシロキサンの質量%は概して増加する。また、過剰にDを有して開始する場合には、該Dの質量%は減少し、前記D、D及び鎖状ポリシロキサンの質量%は概して増加する。
【0028】
が本発明に従って接触したシリコーンであるとき、D、D、鎖状ポリシロキサン又はこれらの混合物が生成され、前記Dの質量%が減少する。同様に、接触したシリコーンがDであるとき、D、D、鎖状ポリシロキサン又はこれらの混合物が生成される。D及びDの混合物が加えられたとき、D及び鎖状ポリシロキサンが、本発明に従って典型的に生成される。
【0029】
前記環状及び鎖状ポリシロキサンは、本発明に従って再配分され、この再配分による前記環状及び鎖状ポリシロキサンの変化する質量%は異なる。一実施形態では、1つの環サイズの環状ポリシロキサンは、全ポリシロキサン質量%に対して、接触した出発量の15質量%を超えて減少し、他の実施形態では、接触した出発量の25質量%を超えて減少し、その他の実施形態では、接触した出発量の40質量%を超えて減少し、また他の実施形態では、接触した出発量の15〜75質量%が減少し、さらに他の実施形態では、接触した出発量の25〜75質量%が減少し、さらにまた他の実施形態では、40〜65質量%が減少する。例えば、D、D、D及び塩素末端ブロック鎖状ポリシロキサンの合計質量に基づいた、Dの10質量%の減少は、D、D及び鎖状ポリシロキサンの質量%の増加する比率に付随して起こる。
【0030】
本発明の製造工程が実施されるときの温度は、変化する。一般的には、前記温度は60℃以上である。一実施形態では、本発明に従って、前記塩酸水溶液、シリコーン及び界面活性剤が接触する温度は、60〜180℃であり、他の実施形態では、70〜150℃であり、また他の実施形態では、70〜120℃であり、さらにまた他の実施形態では、75〜95℃である。当業者よって、前記シリコーン、前記塩化水素の水溶液及び前記界面活性剤を、別々に、又は、種々の組合せで共に加熱できること、及び、従来知られている全ての加熱方法が検討されることが理解されるであろう。
【0031】
前記塩酸水溶液、シリコーン及び界面活性剤を接触させるときの圧力は、本発明の製造工程に狭義に不可欠なものではない。しかしながら、圧力は、塩酸水溶液中の塩化水素の量、及び、本発明による製造工程が実施される際の温度に影響を与えることによって、反応速度及び間接的に影響する。一般的に、圧力が増加するにつれて、より多くの塩化水素が該塩化水素水溶液中に溶解し、より高い温度が用いられる。このように、より高い圧力は、より高濃度な塩酸水溶液を可能とし、その結果、低い圧力に比べて、より早い反応速度を可能とする。実際の製造工程を考慮すると、本発明の製造工程に用いられるゲージ圧の範囲は、0kPaから1000kPaまで広がる。一実施形態としては、10〜500 kPaの圧力範囲であり、他の実施形態では、100〜500kPaの圧力範囲である。
【0032】
前記シリコーン、塩化水素水溶液及び界面活性剤の接触のための時間は、本発明によれば変化する。一実施形態では、前記接触は1〜60分間であり、他の実施形態では1〜30分、また他の実施形態では5〜25分、さらに他の実施形態では5〜15分、さらにまた他の実施形態では10〜15である。一般的には、前記接触は5〜15分間である。当業者であれば、本発明に従って所望の量の環状及び/又は鎖状ポリジメチルシロキサンが生成されたときを決定するための製造工程を監視する方法を知っているであろう。当業者は、温度や時間のように、可変の他のプロセスを伴って変動する時間がどのくらいかを理解できるであろう。
【0033】
本発明に従って、前記シリコーン、塩酸水溶液及び界面活性剤を接触させたとき、それらは、接触すると共に混合する。その混合割合は、本発明に従って変化する。より高い混合割合及び/又はズレは、一般的に、増加した反応速度と相互に関連がある。当業者であれば、本発明に従って、混合する速度及びズレを変更する方法を知っているであろう。
【0034】
本発明の特徴は、ハロシランの加水分解及び縮合に現在用いられるシステムと、環状五量体(D)、六量体(D)及び鎖状ポリシロキサンの増量をもたらすこととを統合することである。例えば、ハロシランは、シリコーン加水分解物を生成するために塩酸水溶液と接触し、その後、シリコーン加水分解物は、典型的には、鎖状ポリシロキサン及び環状ポリシロキサンの混合物を提供するために中和及び/又は水洗される。鎖状及び環状ポリシロキサンを、典型的には、その後例えば分留によって分離する。本発明を用いることで、前記シリコーン加水分解物を水洗及び/又は分離する典型的な工程を施すことに代えて、前記シリコーン加水分解物を製造工程に従って直接処理できる。つまり、前記シリコーン加水分解物を、前記界面活性剤及び前記塩酸水溶液に直接接触させることができる。塩化水素ガスは回収され、結果物はその後、相分離され、塩酸水を含む相及び前記界面活性剤を、同様の工程において再使用するために再利用される。前記ポリシロキサンを含有する相は、その後、中和され、水を用いて洗浄され、分留のように、その構成成分を分離するための分離工程が行われる。必要に応じて、D、D及びDのような分離された成分を、本発明に従う処理に先立って、前記シリコーン加水分解物に加えることによって、前記製造工程へと戻すことができる。
【0035】
環状及び鎖状ポリシロキサンを再配分するための処理に先立って、前記シリコーン加水分解物に中和及び洗浄工程を施すことなく、前記ポリシロキサンを生成する現行の工程内に統合できることに加えて、いくらかの塩化水素を、水溶液中ではなく、ガスとして回収することも可能となる。上述したように、本発明に従って飽和した塩化水素水溶液を含むことによって、塩素末端ブロック鎖状ポリシロキサンの加水分解によって生成された塩素は、ガスとして回収されるが、このように生成された前記塩化水素は、飽和溶液に溶解しないためである。これは、塩化水素溶液の廃棄及びの必要性を回避し、溶液からの塩化水素の回収のための集約したプロセスを除去できる。
【0036】
上述したように、本発明に従って、所望の環状及び鎖状ポリシロキサンが生成された後、前記反応混合物は、ポリシロキサン及び水の相に分相している。前記ポリシロキサンの相は、その後、例えば、1回以上水を用いて洗浄し、及び/又は、重炭酸ナトリウムのようなアルカリ性試薬若しくは適当なイオン交換樹脂を用いて処理するように、いずれかの適した方法で中和される。中和及び洗浄後、前記ポリシロキサンは、異質の微粒子物質をさらに除去するため、ろ過される。ろ過の後、前記生成物を、その後必要に応じて、前記鎖状ポリマーから前記環状ポリマーを分離するために分留する。前記環状ポリマーは、例えば前記環状の四量体(D)及び六量体(D)から前記環状の五量体(D)を分離する蒸留によって分留される。
【実施例】
【0037】
後述の実験例は、本発明の実施形態を実施することが含まれている。後に表す実験例において開示された技術は、発明者によって見出された本発明の実施に十分機能する技術を表し、そのため、前記技術は実施に用いられる形式を構成するものと見なされることが、当業者によって理解できる。しかしながら、当業者は、開示された内容を考慮して、本発明の思想及び範囲から離れることなく、開示され、同等又は類似結果物を得る発明の詳細な説明から、多くの変更ができることを理解するであろう。全てのパーセンテージについては、質量%である。
【0038】
以下に、本実施例で用いられる略語のリストを示す。
(略語のリスト)
RPM 1分間当たりの回転数
mL ミリリットル
HCl 塩酸
Me メチル(例えば、CH3基)
CEB 塩素末端ブロック
D4 ジメチルシロキサン環状四量体、[Me2SiO]4
D5 ジメチルシロキサン環状五量体、[Me2SiO]5
D5 ジメチルシロキサン環状六量体、[Me2SiO]6
Lx 鎖状ポリシロキサン:ヒドロキシル基末端、HO[Me2SiO]XH、及び、
塩素末端ブロック、Cl[Me2SiO](X-1)Si(CH3)2Cl、ここでXは1以上の整数。
CEB−Lx 塩素末端ブロック鎖状ポリシロキサン、
Cl[Me2SiO](X-1)Si(CH3)2Cl、ここでXは1以上の整数。
Mn 数平均分子量
Mw 重量平均分子量
PD 多分散性
本実施例のGPC試験は、以下の仕様/パラメータを有するAgilent 1100シリーズ モジュラー HPLCを用いて実施される。
検出器モジュール: 35℃における屈折率;
カラムモジュール: 40℃において3μMのPLゲルの混合されたEカラムの3プライマーラボラトリーズのセット;
ポンプモジュール: 0.8mL/分でトルエン移動相のHPLCグレードを有するアイソクラティックポンプ;
脱ガス機モジュール: トルエン移動相の真空脱気法;
オートサンプラーモジュール:サンプルごとに100μL注入した状態の100のオートサンプラートレー;
データシステム: HPケムステーション分析データシステム;
スタンダード: ポリマーラボラトリースタンダードは直線回帰較正が用いられた;
【0039】
実験例1
37%HCl水溶液の295.3gを、秤量し、1000mlの実験用反応容器に充填した。前記酸を95℃における飽和濃度である28.7%まで希釈するため、脱塩水(85.4g)をその後実験用反応容器に加えた。混合を開始し、7.77gのN−オクチルアミンを前記実験用反応容器に加えた。28.7%のHCl及び2.0%のN−オクチルアミンからなる水溶液を、前記実験用反応容器に用意した。前記実験用反応容器は95℃に加熱した。前記実験用反応容器内の前記酸の温度が95℃に達したらすぐに、シリコーン加水分解物388.5gを、定量ポンプを用いて、約2分間、450RPMで攪拌しながら、前記実験用反応容器に供給した。前記実験用反応容器に供給されたシリコーン加水分解物は、43.84%のD、11.41%のD、3.33%のD及び41.79%のCEB−Lxを含んでいた。シリコーン加水分解物を供給する間、前記温度はわずかに低下したが、すぐに95℃へと戻した。サンプルは、前記シリコーン加水分解物の前記反応容器への投入開始から、5、10、15及び30分後に、前記実験用反応容器から引き上げられ、層分離が可能となった。上層のシロキサン相は透明であり、一方、下層の酸相はわずかに濁っていた。前記上層のシロキサン相のサンプルは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)解析のため、2μmのテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過された。表1は、これらのGPC解析の結果を表にしたものである。
【表1】

この実験例は、95℃において、前記シリコーンがシリコーン加水分解物であり、過剰な環状ポリシロキサンDを2質量%のN−オクチルアミンとともに用いる場合の、本発明による製造方法を実証している。
【0040】
実験例2
前記反応温度が75℃とより低く、前記N−オクチルアミン濃度が4.0%と増加しており、前記塩酸水溶液中のHCl濃度を75℃における飽和濃度である32.7%に変更したこと以外は、実験例1と同じ実験条件及び反応物質を用いた。前記実験用反応容器に供給された前記シリコーン加水分解物は、43.05%のD、11.31%のD、3.19%のD及び42.46%のCEB−Lxを含んでいた。サンプルは、実験例1と同様に、前記反応容器から取り出された。相分離の後、前記上層のシロキサン相を、GPC解析のためのサンプルとした。表2は、前記解析の結果を示す。
【表2】

この実験例は、74℃という実験例1に比べて低い温度において、前記N−オクチルアミンの濃度を2倍にする効果を実証している。
【0041】
実験例3
前記N−オクチルアミンの濃度が6.0%と増加したこと以外は、実験例2と同様の実験条件及び反応物質を用いた。表3は、前記得られたポリシロキサンのGPC解析結果を示す。
【表3】

この実験例は、実験例1及び2における2及び4質量%に比べて、6質量%N−オクチルアミンの使用、並びに、実験例1の95℃に対して75℃の反応温度の使用を実証している。
【0042】
実験例4
前記反応温度が95℃とより高く、前記塩酸水溶液中のHCl濃度を95℃における飽和濃度である28.7%に変更し、実験例2と同じ前記シリコーン加水分解組成物を用いたこと以外は、実験例3と同じ実験条件及び反応物質を用いた。
【表4】

この実験例は、実験例3の75℃で6質量%のN−オクチルアミンに対して、95℃の反応温度の使用を実証している。
【0043】
実験例5
製造の連続工程をシミュレートするため、連続モードで連続かくはん槽型反応器において実験が行われた。37%のHCl水溶液1111g及び水326gからなる、28.7%のHCl水溶液を、前記実験用反応容器及び実験用相分離器に加え、攪拌器を450RPMで動かした。N−オクチルアミン(86.3g)を前記反応容器に加え、均一な溶液を作製するため、ポンプによって7分間液体反応剤を循環させた。ポンプは、前記実験用反応容器から前記実験用分離器へと前記反応剤を移し、他のポンプは、前記実験用分離器の下層から前記実験用反応容器へと酸を再利用した。両方の前記反応容器の量を維持するように、両方のポンプのスピードを調整し、前記実験用分離器をその後停止した。両方の前記実験用反応容器及び実験用分離器は、95℃に加熱された。前記実験用反応容器の温度が攪拌することなく95℃に達したした後すぐに、前記シリコーン加水分解物を前記実験用反応容器へ供給した。液面が前記実験用反応容器の全容量に達したとき、前記攪拌器を450RPMで開始し、ポンプを設定したスピードで開始した。各ポンプのスピードは、HCl水溶液とシリコーン加水分解物とが、体積で1:1の相比となるように設定し、反応容器の滞留時間を10分とした。前記シリコーン加水分解物を、44.22%のD、11.48%のD、3.20%のD及び41.10%のCEB−Lxを含んだ前記反応容器へと供給した。前記混合速度、並びに、前記反応容器及び前記攪拌器の温度を、反応中450RPM並びに95℃に維持した。前記反応容器から、5分、10分及び15分後に、シロキサンのサンプルを取り出した。前記シロキサンのサンプルを、2μmのテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過した。表5は、解析結果を示す。
【表5】

この実験例は、連続工程における本発明の使用を実証している。
【0044】
実験例6
前記塩酸水溶液中のN−オクチルアミンの濃度が8.0%と増加したこと以外は、実験例5と同様の実験条件及び反応物質を用いた。表6は、前記ポリシロキサン生成物のGPC解析結果を示す。
【表6】

この実験例では、連続工程における本発明を実証している。
【0045】
実験例7
前記塩酸水溶液中のN−オクチルアミンの濃度が5.0%であること以外は、実験例5と同様の実験条件及び反応物質を用いた。前記供給されたシリコーン加水分解物は、43.78%のD、11.48%のD、2.79%のD及び41.94%のCEB−Lxを含んでいた。表7は、前記ポリシロキサン生成物のGPC解析結果を示す。
【表7】

この実験例では、連続工程における5質量%のN−オクチルアミンを有する本発明を実証している。
【0046】
実験例8(比較例)
N−オクチルアミンを加えず、前記反応容器に供給されたシリコーン加水分解物中の環状ポリシロキサンの質量%が、5.38%のD、4.79%のD、3.52%のDである一方、鎖状ポリシロキサンの質量%が86.31%のCEB−Lxであること以外は、実験例1と同様の実験を行った。サンプルは実験例1と同様に取り出された。運転は、サンプルの採取の困難性や、前記鎖状ポリシロキサンの分子量の急速な増加による反応混合物のゲル化、及び、高粘度の発生を避けるため10分後に停止した。相分離の後、前記上層のシロキサン相を、GPC解析のためのサンプルとした。表8は、前記GPC解析結果を示す。
【表8】

この実験例では、N−オクチルアミンが用いられず、本発明の範囲を外れた鎖状ポリシロキサンの質量%のときの結果を比較している。
【0047】
実験例9(比較例)
N−オクチルアミンを2.0質量%加えこと以外は、実験例8と同様の実験を行った。サンプルは実験例1と同様に取り出された。シリコーン加水分解物中の環状ポリシロキサンの質量%が、5.38%のD、4.79%のD、3.52%のDである一方、鎖状ポリシロキサン(CEB−Lx)が86.31質量%であった。サンプルは実験例8と同様に取り出されたが、反応物のゲル化が始まった(例えば、前記反応今後物を攪拌又は採取できない程、粘度が高まる)ため、実験は5分後に停止した。実験例1と比較して、表8及び表9の結果は、本発明の範囲を外れたCEB−Lxの量を有した状態で前記製造工程が実施された場合、急速に重合が進み、前記CEB−Lxの分子量が急激に増加し、多くなりすぎることを示す。表9は、前記GPC解析結果を示す。
【表9】

この実験例では、本発明を外れた鎖状ポリシロキサンを有する加水分解物の使用を比較している。
【0048】
実験例10(比較例)
28.7%のHCl水溶液を作製するため、37%HCl水溶液の946.3及び水281.3gを、連続かくはん槽型反応器の前記反応容器及び前記相分離器に加え、300RPMで攪拌した。N−オクチルアミン(129.2g)を前記反応容器に加え、均一な溶液を作製するため、ポンプを通して循環させた。前記ポンプを、前記反応に応じたスピードに調整した後、停止した。両方の前記実験用反応容器及び実験用分離器は、95℃に加熱及び保持された。Dをその後、攪拌することなく前記反応容器に供給した。一杯になった際、前記実験用反応容器は300RPMで攪拌され、前記反応剤を循環させるために前記ポンプを起動した。前記上層のシロキサン相は透明であり、一方、下層の酸相はわずかに濁っていた。前記反応容器から、5分、10分及び15分の滞留時間で、シロキサンのサンプルを取り出し、GPC解析のために2μmのテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過した。表10は、解析結果を示す。
【表10】

この実験例では、本発明の濃度を外れたシリコーンの使用を比較している。本実験例は、本発明の範囲を外れたと見なされる100質量%のDを用いる。
【0049】
実験例11
反応温度を、25℃から95℃へと変化させたこと以外は、実験例5と同様の実験を行った。前記酸相に基づいた5.5質量%のN−オクチルアミンを追加したが、N−オクチルアミンは、前記温度が95℃に上昇するまで加えなかった。前記塩酸水溶液は全ての温度において飽和していた。10分の反応容器の滞留時間を各温度で保持した。シロキサンのサンプルを取り出し、GPCによって解析を行った。表11は解析結果を示す。前記反応は飽和したHCl水溶液で行われたため、CEB−Lxから放出された前記塩素は、ガス相へと蒸発しており、回収を行うことができた。(供給の全てのLxがCEB−Lxであると仮定すれば、%CEBの値は、ガスクロマトグラフィー(GC)解析から正規化されたデータである。)
【表11】

この発明は、本発明の工程中のCEB−Lxの濃度変化を実証したものである。
【0050】
実験例12
反応温度を、25℃から95℃へと変化させたこと以外は、実験例5と同様の実験を行った。前記酸相に基づいた5.5質量%のN−オクチルアミンを追加したが、N−オクチルアミンは、前記温度が95℃に上昇するまで加えなかった。前記塩酸水溶液は全ての温度において飽和していた。10分の反応容器の滞留時間を各温度で保持した。シロキサンのサンプルを取り出し、GPCによって解析を行った。表12は解析結果を示す。前記反応は飽和したHCl水溶液で行われたため、CEB−Lxから放出された前記塩素は、ガス相へと蒸発しており、回収を行うことができた。(供給の全てのLxがCEB−Lxであると仮定すれば、%CEBの値は、ガスクロマトグラフィー(GC)解析から正規化されたデータである。)
【表12】

この発明は、本発明の工程中のCEB−Lxの濃度変化を実証したものである。
【0051】
実験例13
表13で示された環状ポリシロキサンの割合を除いて、実験例12と同じ実験条件及び反応物質を用いた。サンプルは、実験例12と同様に前記実験用反応容器から取り出し、GPCによって解析を行った。表13は解析結果を示す。
【表13】

【0052】
実験例14
実験例12のシリコーン加水分解物に代えて、表14で示された種類の環状及び鎖状ポリシロキサンの割合(41.00%のD、21.34%のD、3.60%のD及び34.06%のCEB−Lx)を有するシリコーン加水分解物を、前記反応容器に供給したこと以外は、実験例12と同じ実験条件を用いた。サンプルは、実験例12と同様に前記実験用反応容器から取り出し、GPCによって解析を行った。表14は解析結果を示す。
【表14】

【0053】
実験例15
実験例12のシリコーン加水分解物に代えて、表15で示された種類の環状及び鎖状ポリシロキサンの割合を有する加水分解物を、前記反応容器に供給したこと以外は、実験例12と同じ実験条件を用いた。サンプルは、実験例12と同様に前記実験用反応容器から取り出し、GPCによって解析を行った。表15は解析結果を示す。
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン化したアミンの塩又は第4級アンモニウム化合物である界面活性剤と、
塩酸水溶液と、
(i)シリコーン加水分解物、(ii)D又は(iii)Dからなるシリコーンで、前記シリコーン加水分解物がシリコーンの質量に対し20〜80質量%の鎖状ポリシロキサンを含むか、又は、シリコーンがD若しくはDであるとき、該シリコーンがシリコーンの質量に対し0から20質量%未満の鎖状ポリシロキサンを含む前記シリコーンと、を接触及び加熱する工程を備える環状及び鎖状ポリシロキサンの再配分方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、プロトン化したアミンの塩であり、次式(I):
NRR’R” (I)
(式中のRはアルキル基であり、R’及びR”はそれぞれ独立して、水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)によるアミンから形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Rが5〜14個の炭素原子を有するアルキル基であり、R’及びR”がそれぞれ独立して水素原子又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤が、N−オクチルアミンから形成される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーンがシリコーン加水分解物からなり、該シリコーン加水分解物が環状ポリシロキサンを含み、前記鎖状ポリシロキサンが塩素末端ブロック鎖状ポリジメチルシロキサンである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーン加水分解物が、31〜47質量%のDと、8〜30質量%のDと、1〜12質量%のDと、38〜45質量%の塩素末端ブロック鎖状ポリジメチルシロキサンとを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱が、60〜180℃の温度である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記塩酸水溶液が、飽和溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記塩酸水溶液とシリコーンとを1:2〜2:1の割合で接触させる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記シリコーンがDからなる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記シリコーンがDからなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記界面活性剤の濃度が、前記塩酸水溶液、界面活性剤及びシリコーンの質量に対し0.1〜10質量%である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
塩化水素を気体として回収する工程をさらに備える請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記方法を0〜1000kPaの圧力下で行う請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記接触及び加熱の工程を1〜60分間行う請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記シリコーンを再配分し、前記方法の実施後、前記環状ポリシロキサンの配分が、接触したシリコーンの配分とは異なる請求項1に記載の方法。
【請求項17】
N−オクチルアミン塩酸塩である界面活性剤と、
飽和塩酸水溶液と、
(i)シリコーン加水分解物、(ii)D又は(iii)Dからなるシリコーンで、前記シリコーン加水分解物がシリコーンの質量に対し20〜80質量%の鎖状ポリシロキサンを含むか、又は、シリコーンがD若しくはDであるとき、該シリコーンがシリコーンの質量に対し0から20質量%未満の鎖状ポリシロキサンを含む前記シリコーンと、を接触及び加熱する工程を備え、
前記接触が60〜180℃の温度で0〜1000kPaの圧力下1〜60分間行われる環状及び鎖状ポリシロキサンの再配分方法。
【請求項18】
前記シリコーンが、D、D又はDからなり、前記D、D及びDのうちの1つがその他のD、D又はDと比べて過剰であり、前記シリコーンの質量に対する質量%で減少し、前記鎖状ポリシロキサンが前記シリコーンの質量に対する質量%で増加する請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2012−501370(P2012−501370A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525037(P2011−525037)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050474
【国際公開番号】WO2010/024973
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】