説明

ポリスチレン系樹脂発泡積層シート及びその成形品

【課題】 耐油性、特に高温時における中鎖脂肪酸トリグリセライドのような脂肪酸エステル系の油に対する耐油性を持ちつつ、安価にして優れたリサイクル性を保有し、熱成形性に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを提供する。
【解決手段】 押出発泡させたポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に非発泡樹脂層を積層して成るポリスチレン系樹脂発泡積層シートにおいて、
積層された上記非発泡樹脂層がアクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂であり、
発泡積層シートとしての連続気泡率が50%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂発泡積層シート及びその成形品に関し、さらに詳細には、耐油性、特に中鎖脂肪酸トリグリセライドへの耐性に優れた押出発泡によるポリスチレン系樹脂発泡積層シート及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ポリスチレンシート及びその成形品は、従来より食品容器に幅広く利用されている。また、発泡ポリスチレンシートに非発泡樹脂層を積層した、発泡ポリスチレン積層シートも食品容器に幅広く利用されて来た。しかしながら、発泡ポリスチレンシートは耐油性に乏しく、食品に幅広く使用されている炭素数8〜20の脂肪酸を含む油やMCTと呼ばれる中鎖脂肪酸トリグリセライドに対して、高温下においてポリスチレンが可塑化され、発泡ポリスチレン容器などでは穴開きなどが生じる問題があった。
【0003】
従来、かかる問題に対し、発泡ポリスチレンシートに耐油性を持たせる試みとして、ポリスチレン系樹脂と耐油性の高い樹脂との混合物が含まれた耐熱及び耐油性樹脂シートが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の樹脂シートは、ポリスチレン系樹脂とそれら耐油性の高い樹脂とが非相溶であることから、必要な物性を出すには相溶化剤が必要となる等のため、高価となったり、使用した後のリサイクル性に問題がある。
【0005】
【特許文献1】特許第3113238号
【0006】
また従来、ポリスチレン発泡体の表面をポリアクリロニトリルで被覆した食品容器が開示されている(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の食品容器は、ポリアクリロニトリルは脆性が強く耐衝撃性に劣り、またポリスチレンと非相溶であるため、リサイクル性に問題が生じる場合がある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−33976号
【0009】
またさらに、発泡ポリスチレンにオレフィン系樹脂フィルムを積層させることにより、耐油性を持たせることも従来よりなされているが、当該フィルムの接着性や成形容器のリサイクル性が乏しいといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、耐油性、特に高温時における中鎖脂肪酸トリグリセライドのような脂肪酸エステル系の油に対する耐油性を持ちつつ、安価にして優れたリサイクル性を保有し、熱成形性に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、押出発泡させたポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に非発泡樹脂層を積層して成るポリスチレン系樹脂発泡積層シートにおいて、
積層された上記非発泡樹脂層がアクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂であり、
発泡積層シートとしての連続気泡率が50%以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡積層シートである。これにより、前記課題を解決することができる。
【0012】
特に、アクリロニトリル成分を18重量%以上含む前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、押出発泡させたポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に、アクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂の非発泡樹脂層を積層させ、発泡積層シートとしての連続気泡率が50%以下であるポリスチレン系樹脂発泡積層シートであるので、耐油性、特に高温時における中鎖脂肪酸トリグリセライドのような脂肪酸エステル系の油に対する耐油性を持ちつつ、安価にして優れたリサイクル性を保有し、熱成形性に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートとすることができる。
【0014】
従って、かかるシートを用いて、上記非発泡樹脂層の面が油を含む食品と接するように食品容器などに熱成形することによって、耐油性、特に高温時における中鎖脂肪酸トリグリセライドのような脂肪酸エステル系の油に対する耐油性を持ちつつ、安価にして優れたリサイクル性を有する成形品とすることができる。
【0015】
また、このように、容器の内側にアクリロニトリルを18重量%以上含むポリスチレン系樹脂層がくるように使用した場合、かかる容器は、前記ポリスチレン系樹脂発泡シートからのスチレンダイマー、スチレントリマーの溶出を抑えることもできるため、特に食品容器として好ましい。
【0016】
アクリロニトリル成分を18重量%以上含む前記ポリスチレン系樹脂として、スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂を採用する場合、耐油性とコストと樹脂の脆性をバランスよく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(ポリスチレン系樹脂発泡シート)
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートは、従来公知のポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、スチレンアクリル酸共重合体、スチレンメタクリル酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体などの単独あるいは混合樹脂などと、発泡剤と気泡調整剤を押出機で加熱溶融混練して、押出発泡させることにより得られる。すなわち上記スチレン系樹脂を、発泡剤などとともに押出機に供給して溶融混練する。そして溶融混練された樹脂を、発泡に適する温度に調節されたダイから直接に、シート状に押し出して発泡させるか、または一旦、円筒状に押し出して発泡させた後、任意のラインで切開することにより、長尺帯状の発泡シートが製造される。発泡剤としては、分解型発泡剤、気体または揮発性の発泡剤があげられる。
【0018】
このうち分解発泡剤としては、例えば炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素ナトリウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテロラミンおよびN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独でも又は組み合わせてもよい。分解温度、発生ガス量および分解速度を調節するために公知の発泡助剤を添加してもよい。
【0019】
気体の発泡剤としては、窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、メチルエーテル等が挙げられる。なお、ここで気体とは常温(25℃)、常圧(1気圧)で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン等が挙げられる。また水も使用できる。これらを混合使用することもできる。
【0020】
上記発泡剤の中でもノルマルブタン、イソブタン、あるいは両者の混合物(混合ブタン)等のブタン類が好ましい。また、混合ブタンにプロパンを加えた混合発泡剤も好ましい。この混合発泡剤は、発泡シートの気泡を細かくしたり、発泡シートの熟成期間を短くしたりできるという利点がある。また気泡サイズを約40μm以下とすることを望む場合は、窒素、炭酸ガス、水を単独で使用するか、2種以上を併用することが好ましい。窒素等は、空気から直接分離できるので安価であるという利点がある。
【0021】
押出発泡に際しては、発泡剤とともに他の添加剤を添加してもよい。他の添加剤としては、例えば気泡調節剤が挙げられる。具体的にはタルク、シリカ等の無機粉末、多価カルボン酸等の酸性塩、多価カルボン酸と炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムとの反応混合物等が挙げられる。これら気泡調節剤を増量すると気泡膜が熱に弱くなり、フィルムを押出積層する際などに気泡膜が破れて連続気泡率が高くなることがある。このような気泡膜の破れを防ぐには、発泡剤として窒素、炭酸ガスを用いることが好ましい。
【0022】
さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0023】
本発明におけるポリスチレン系発泡シートは、密度が0.05〜0.5g/cmの範囲で、厚みが0.8〜5.0mmであることが好ましい。密度が0.05g/cmより小さいと、発泡体の強度が低下するため、容器等に熱成形した場合に容器の強度が保てなくなるため好ましくない。密度が0.5g/cmより大きいと、発泡体としての断熱性に劣るため好ましくない。厚みが0.8mmより薄い場合は、容器等に熱成形した場合の容器強度が低下するため好ましくなく、5.0mmより厚い場合は熱成形性が劣り好ましくない。
【0024】
(非発泡樹脂層)
ポリスチレン系樹脂発泡シートに積層される非発泡樹脂層には、アクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂を用いる。この樹脂は、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)と、ゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂とすることが好ましい。これは、前記非発泡樹脂層として、スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂を用いた場合、スチレン−アクリロニトリル共重合体単独で用いた場合よりもコストを押さえることができるのみならず、特にスチレン−アクリロニトリル共重合体の脆性を改善することができるからである。
【0025】
アクリロニトリル成分の含有量が18重量%より少ないと、非発泡樹脂層の中鎖脂肪酸トリグリセライドに対する耐油性が不十分であり、容器に成形した場合、内容物によっては高温時に容器内側表面が侵されて穴開きなどの問題が生じる恐れがある。また、アクリロニトリル成分の含有量が多過ぎる場合は、中鎖脂肪酸トリグリセライドに対する耐油性に関しては問題ないが、ポリスチレン樹脂との相溶性が低下し、スチレン−アクリロニトリル共重合体と、ゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂とした場合の樹脂物性が低下したり、リサイクル性に問題が生じてくるため、好ましくない。アクリロニトリル成分含有量としては、18〜28重量%がより好ましく、18〜25重量%が特に好ましい。
【0026】
本発明に用いるスチレン−アクリロニトリル共重合体中に含まれるアクリロニトリル成分の含有量は、20〜30重量%が好ましい。20重量%より少ないとゴム変性ポリスチレンと混合したときのコスト低減効果のみならず、脆性改善効果が少なく、30重量%を越えるとゴム変性ポリスチレンとの相溶性が低下して、混合樹脂の物性が低下するため好ましくない。
【0027】
本発明で用いられるスチレン−アクリロニトリル共重合体と混合するゴム変性ポリスチレンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等の単独、又は混合物とブタジエン系ゴム状重合体を重合したものが使用できる。このブダジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が用いられる。なお、本発明において、このブダジエン系重合体の分子量や分岐度は限定されるものではない。
本発明に用いられるゴム変性ポリスチレンのブタジエン系ゴム状重合体の量は、特に限定されるものではないが、1〜15重量%の範囲であることが好ましい。本発明に用いられるゴム変性ポリスチレンは、従来公知のゴム変性ポリスチレン(HIPS樹脂)の製造で多様されいる方法、即ち塊状重合、塊状−懸濁重合、乳化重合等で製造される。ブタジエン系ゴム状重合体からなる分散粒子の粒子径は公知の方法、例えば攪拌強度、生成したスチレン系重合体の分子量、分子量調整剤の量、溶剤の量、用いるブタジエン系ゴム状重合体の分子量、重合開始剤の種類等を変更することにより調整される。また、市販のHIPS樹脂としても入手可能である。
【0028】
本発明に用いられるゴム変性ポリスチレンは、ポリスチレンマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散しているものが好ましく、その平均分散粒子径が2.0μm以上であることが好ましい。平均分散粒子径とは後述にて定義される測定方法によって得られる粒子径である。平均分散粒子径が2.0μm未満の場合は、スチレン−アクリロニトリル共重合体との混合樹脂とした場合に、耐油性が低下するので好ましくない。これは、含まれるゴム量が同じ場合、平均分散粒子径が小さい方がゴム粒子間距離が小さくなるためと、ポリスチレンとゴムでは油はゴムの部分の方が浸透しやすいことから、ゴムの粒子間距離が小さくなると、全体としての油の浸透スピードが高くなり、耐油性に影響が出ると考えられる。一方、ゴム成分の平均分散粒子径が大きくなりすぎると、ゴム変性ポリスチレン樹脂自体の耐衝撃性が低下し、混合樹脂での脆性改善効果が小さくなり好ましくない。よって、より好ましいゴム成分の平均分散粒子径は、2.0〜5.0μmである。
【0029】
また、積層する非発泡樹脂層に含まれるゴム成分が多くなりすぎると、耐油性に影響が出るため、スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレン樹脂の混合樹脂に含まれるゴム成分は、5重量%以下とすることが好ましく、3重量%以下とすることがより好ましい。一方、脆性改善のためには、0.5重量%以上含まれていることが好ましい。発泡積層シートの非発泡樹脂層の脆性が強い場合には、成形機のクランクピンによる突き刺しで、非発泡樹脂層が割れて欠落し、成形品に混入する恐れがある。
【0030】
本発明におけるアクリロニトリル成分が18重量%以上含まれた非発泡樹脂層の厚みは特に限定されず、本発明の効果や成形性を損なわない範囲で適宜決めればよい。例えば、食品容器に成形する場合は、好ましくは10〜500μmである。10μmより薄いと成形時に非発泡樹脂層が伸びに追従できずに非発泡樹脂層が破れたり、極端に薄くなり、本発明の効果が得られなくなるので好ましくない。500μmを越えると、成形時に発泡層との成形温度域が大きく異なることになり、発泡積層シートの成形性が悪くなるため好ましくない。20〜150μmがより好ましい。
【0031】
また、積層する非発泡樹脂層には本発明の効果が阻害されない程度に、顔料や滑剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0032】
(製造方法)
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡積層シートは、従来公知の方法(押出ラミネート法、共押出法、接着剤を用いた貼り合わせ法又は熱を利用した融着法等)により製造することができる。まず、押出ラミネート法としては、ポリスチレン系樹脂発泡シートを、押出機内でポリスチレン系樹脂と発泡剤とを混練した後、金型より押出発泡させることにより得る。次いで、例えばTダイを備えた押出機等により非発泡樹脂層(フィルム)を押し出すことにより、ポリスチレン系樹脂発泡シートに積層することで容易に発泡ポリスチレン系樹脂発泡積層シートを得ることができる。
【0033】
共押出法としては、押出機を2台以上使用し、ポリスチレン系樹脂発泡シートを押出発泡させる前に、金型内で非発泡樹脂層を積層し、金型から同時に押出してポリスチレン系樹脂発泡シートを得る方法である。ポリスチレン系樹脂発泡シートと非発泡樹脂層(フィルム)との接着剤を用いた貼り合わせ法に使用できる接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メタアクリル酸メチル重合体エラストマー等が挙げられる。接着剤は、通常5〜15μm程度の厚さで使用される。
【0034】
熱を利用した融着法は、例えば、熱ロール及び/又は熱風によりポリスチレン系樹脂発泡シートに熱を加えた後、予め押し出した非発泡樹脂層(フィルム)を積層する方法である。熱ロールの表面は、クロムメッキ又はテフロン(登録商標)コーティングを行い、加熱された発泡体とのべたつきを防止しておくことが好ましい。
【0035】
本発明では、ポリスチレン系樹脂発泡シートと、アクリロニトリル成分が18重量%含まれた非発泡樹脂層を積層する方法として、共押出による積層が、製造コストを押さえる面から優れており好ましい。本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡シートと、アクリロニトリル成分が18重量%以上含まれた非発泡樹脂層を積層する共押出法では、発泡層樹脂の粘度と、非発泡層樹脂の粘度が大きく異なるため、一般的なサーキュラー金型を用いた押出発泡シートの製造方法の場合と同じ様に、発泡樹脂の押出温度とほぼ同じ温度に金型温度を設定すると、その温度は非発泡樹脂に対しては低すぎることから、非発泡樹脂は粘度が高くなりすぎて金型内での流動が妨げられ、発泡層との積層ムラが生じ問題となる。この問題を回避するために、本発明では金型温度を非発泡樹脂の押出に適した温度(ほぼ非発泡樹脂の押出し温度)に設定し、且つ発泡層樹脂が金型と接触する部分、例えばサーキュラー金型の内側に発泡層が来る場合は、金型の内側のコア部分を発泡層樹脂の押出温度以下に設定することにより、粘度の大きく異なった2種類の樹脂層を均一に積層することが出来る。金型温度を非発泡樹脂の押出に適した温度に設定しただけでは、発泡樹脂層の押出温度に比べて高すぎるため、発泡層の発泡状態が悪くなり、得られる発泡積層シートの連続気泡率の上昇を招き、そのことによる熱成形性の悪化などの問題が生じたりする。
【0036】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡系積層シートの連続気泡率は、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。連続気泡率が50%を超えると、熱成形性が悪化したり、得られた成形品の強度や断熱性が低下する。
【0037】
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡積層シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートにアクリロニトリル成分が18重量%以上含まれる非発泡樹脂層を積層することを特徴とした、ポリスチレン系樹脂発泡積層シートである。非発泡樹脂層は、ポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に積層される。ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に積層した場合は、もう一方の面に例えば印刷フィルムなどの非発泡樹脂層、もしくは別の発泡シートを少なくとも1層積層しても良い。
【0038】
(熱成形)
以上のように得られたポリスチレン系樹脂発泡シートは、公知の方法により二次成形し、食品包装容器などに成形できる。その際、アクリロニトリル成分が18重量%以上含まれた非発泡樹脂層を積層した面を容器の内側へ来るように成形することによって、食品に含まれる油による容器の侵食を防ぐことができる。また、食品への発泡シートからのスチレンダイマー、スチレントリマーの溶出を抑えることもでき好ましい。
【実施例1】
【0039】
ポリスチレン系樹脂発泡シートを押出発泡するに当たり、図1に示す様に、口径40mmのNo.1押出機1と口径65mmのNo.2押出機5からなるタンデム型押出機を用いて、ポリスチレン系樹脂として商品名「HRM−26」(東洋スチレン社製 GPPS 汎用ポリスチレン)を100重量部に対し、気泡調整剤としてタルク0.6重量部を混合した混合原料を、上記No.1押出機1のホッパー2に供給し、No.1押出機1のバレル内で加熱溶融させた後、発泡剤として混合ブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70/30)3.7重量部を圧入部3から圧入して混合原料と溶融混練し、次いでNo.2押出機5へ移送部4を通じて移送して、No.2押出機5のバレル内で均一に冷却したのち合流ダイ9ヘ流入させた。この時の樹脂温度は151℃であり、No.2押出機5からの吐出量は15Kg/hrであった。
【0040】
一方、非発泡樹脂層としてAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラック AS769」
アクリロニトリル成分含有量26重量%)77重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 商品名「HIPS E641N」 平均ゴム分散粒子径2.5μm)23重量部の混合樹脂を口径32mmの押出機6のホッパー7に供給し、溶融混練させた後、前記合流ダイ9ヘ流入させた。この時の樹脂温度は193℃であり、押出機6の吐出量は7kg/hrであった。
【0041】
合流ダイ9ヘ合流された前記2種類の樹脂は、共にスリットの口径が80mmの環状スリットダイ10ヘ送り込まれ、ダイ10先端のスリット部102(間隔0.61mm)から円筒状に押出した。また、このとき、環状スリットダイ10のコア部分101をエアーにより冷却し、コア温度を150℃とした。
【0042】
この後発泡剤を混合した樹脂が発泡層を形成し、非発泡樹脂層が発泡層に積層された状態の円筒状発泡体を冷却マンドレル12によって冷却成形後、冷却マンドレル12の後部に取り付けたカッター15、16により円筒状発泡体を切開して表1に示す発泡積層シート17を得た。図1において、13a、13b、13c、13dはカッター15、16により切開された発泡積層シート17を移送するロールであり、14a、14bはそれぞれ発泡積層シート17の巻取りロールである。また図2において、21はNo.2押出機5から吐出部8aを通じて吐出された発泡層用樹脂、22は押出機6から吐出部8bを通じて吐出された非発泡層用樹脂である。
【実施例2】
【0043】
非発泡樹脂層をAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラックAS 769」 アクリロニトリル成分含有量26重量%)77重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(日本ポリスチレン社製 HIPS H758K 平均ゴム分散粒子径 3.5μm)23重量部の混合樹脂とした以外は実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層のNo.2押出機5からの吐出量は14kg/hr、このときの樹脂温度は152℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は200℃であった。また環状スリットダイ10のコア温度は150℃に冷却した。
【実施例3】
【0044】
非発泡樹脂層をAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラックAS 769」)77重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(日本ポリスチレン社製 商品名「CR350」 平均ゴム分散粒子径 2.9μm)23重量%の混合樹脂とした以外は、実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層の前記No.2押出機5からの吐出量は13kg/hr、このときの樹脂温度は150℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は195℃であった。また環状スリットダイ10のコア温度は150℃に冷却した。
【実施例4】
【0045】
非発泡樹脂層をAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラックAS 769」)77重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 商品名「HIPS E785N」 平均ゴム分散粒子径1.3μm)23重量部の混合樹脂とした以外は実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層の前記No.2押出機5からの吐出量は14kg/hr、このときの樹脂温度は152℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は202℃であった。また環状スリットダイ10のコア温度は150℃に冷却した。
【実施例5】
【0046】
実施例1で得られたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを加熱炉で加熱した後、丼形状の成形型の雄型に非発泡樹脂層が来るように熱成形し、丼の内側が非発泡樹脂層で覆われた成形品を得た。また、この成形品容器のスチレンダイマー、スチレントリマーの溶出量を測定したところ、トータル溶出量は10.4ppbであった。
【実施例6】
【0047】
実施例1で得られたポリスチレン系樹脂発泡積層シートの非発泡樹脂層を積層していない面に柄を印刷したポリスチレン樹脂フィルム(厚み20μm)を熱ラミネートし積層した。次にこの積層シートを実施例4と同様にして、外側に柄の付いた丼形状の成形品を得た。
【0048】
[比較例1]
非発泡樹脂層をGPPS汎用ポリスチレン(東洋スチレン社製 商品名「HRM−26」)とした以外は実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層の前記No.2押出機5からの吐出量は13kg/hr、そのときの樹脂温度は151℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は190℃であった。また環状スリットダイ10のコア温度は150℃に冷却した。
【0049】
[比較例2]
非発泡樹脂層をAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラックAS 769」)60重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 商品名「HIPS E641N」)40重量部の混合樹脂とした以外は実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層の前記No.2押出機5からの吐出量は13kg/hr、そのときの樹脂温度は152℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は192℃であった。また環状スリットダイコア温度は150℃に冷却した。
【0050】
[比較例3]
非発泡樹脂層をAS樹脂(旭化成社製 商品名「スタイラックAS 769」)77重量部とゴム変性ポリスチレン樹脂(東洋スチレン社製 商品名「HIPS E641N」)23重量部の混合樹脂とし、環状スリットダイ10のコア部分を冷却しなかった以外は実施例1と同様にして発泡積層シートを得た。このときの発泡樹脂層のNo.2押出機5からの吐出量は13kg/hr、そのときの樹脂温度は152℃であった。押出機6における非発泡樹脂層の吐出量は7kg/hrであり、そのときの樹脂温度は193℃であった。環状スリットダイ10のコア温度は180℃であった。
【0051】
またこの得られたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを加熱炉で加熱した後、丼形状の成形型の雄型に非発泡樹脂層が来るように熱成形し、丼の内側が非発泡樹脂層で覆われた成形品を得ようとしたが、連気率が高く加熱後のシートが2次発泡しないため厚みが出ずに、型の出が悪い強度の弱い成形品しか得られなかった。
【0052】
[比較例4]
比較例1で得られたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを加熱炉で加熱した後、丼形状の成形型の雄型に非発泡樹脂層が来るように熱成形し、丼の内側が非発泡樹脂層で覆われた成形品を得た。また、この成形品容器のスチレンダイマー、スチレントリマーの溶出量を測定したところ、トータル溶出量は67.3ppbであった。
【0053】
【表1】

【0054】
<測定の方法>
表1は、上述した通り製造した実施例1〜5及び比較例1〜3の各発泡積層シートにおける発泡シート密度(g/cm)、連続気泡率(%)、シート厚み(mm)、耐油性及び成形性についてそれぞれ示している。これらの評価は、下記測定方法に従って測定し比較した。上記各試験項目の測定方法を以下に記す。
【0055】
[発泡シート密度]
各発泡シートサンプルの体積V(cm)をノギスで測定し、そのサンプルの重量W(g)から下記式を用いて求めた。
発泡シート密度(単位:g/cm)=W/V
【0056】
[連続気泡率]
ASTM D2856−87記載の測定方法に準じて測定した。具体的には、東京サイエンス(株)社製の空気比較式比重計1000型を用いて1−1/2−1気圧法により測定した、発泡シートサンプルの体積Vと、ノギスで測定した同じサンプルの体積Vから下記式より求めた。
連続気泡率(単位:容量%)=(V−V)/V×100
【0057】
[シート厚み]
発泡シートの厚みをシート幅方向に5点厚みゲージで測定し、その平均値をその発泡シートの厚み(単位:mm)とした。
【0058】
[アクリロニトリル成分の含有量]
非発泡樹脂層のアクリロニトリル成分含有樹脂試料を約100〜1000μg精秤し、キュリー点が590℃の強磁性金属体(パイロホイル:日本分析工業(株)製)に圧着するように包み、キューリーポイントパイロライザーJHP−3型(日本分析工業(株)製)にて分解生成したアクリロニトリルモノマーをガスクロマトグラフAuto System(パーキンエルマー社製)、検出器(FID)を用いて測定した。その測定条件は、加熱(590℃×5sec)、オーブン温度(280℃)、ニードル温度(300℃)で、カラムはDB−5(φ0.25mm×30m(膜厚0.25μm):J&W社製)を用いた。カラム温度条件は、50℃1分保持後100℃まで10℃/分で昇温しさらに320℃まで40℃/分で昇温し320℃にて3.5分保持し、キャリアーガス(He)、キャリアー流量(1mL/min)、カラム入口圧力(12psi)、注入口温度(300℃)、検出器温度(300℃)とした。標準試料にSCIENTIFIC
POLYMER PRODUCTS.Inc製 St/AN=75/25(CAS#9003−54−7)を用いた絶対検量線法にて定量を行った。他のポリスチレン系樹脂と混合して用いる場合は、混合比率によりアクリロニトリル成分含有量を算出した。
【0059】
[耐油性]
まず各実施例、比較例で得た発泡積層シートを非発泡樹脂積層面が内側に来るように、タテ100mm、ヨコ190mm、高さ20mmのトレー形状に熱成形する。次に成形したトレーに中鎖脂肪酸トリグリセライド(花王社製 商品名「ココナードRk」)をトレーの底部一面を覆う程度入れ、佐竹化学機械工業(株)製のセーフベンドライヤーにて100℃、10分間加熱して、加熱後の容器底部の中鎖脂肪酸トリグリセライドを取り除いて成形品底部を綺麗に拭き取った後、底部非発泡樹脂層の状態を観察した。そして、容器底部の状態に変化がなく、つめで引っ掻いたときにも削れないものを○、容器底部の状態には変化がないが、容器底部をつめで引っ掻いたときに削れるものを△、トレー底部に穴開きや底部が容器の中鎖脂肪酸トリグリセライドによる軟化等が見られたものを×とした。
【0060】
[平均ゴム分散粒子径]
まず、実施例比較例で得た発泡積層シートから、発泡層をカッターナイフなどで削り取り、非発泡樹脂層のみを分離する。次に分離した非発泡樹脂層を120℃で1時間加熱し、内部応力を緩和させた後、下記の方法でTEM写真を撮り、写し出されたゴム粒子約1000個分の粒子径を計り、平均をもって平均ゴム分散粒子径とした。このとき隋円形状の粒子は長径と短径の平均をその粒子径とした。
【0061】
断面観察(透過型電子顕微鏡写真撮影)
装 置:透過型電子顕微鏡 H−7600((株)日立製作所製)
前処理:エポキシ樹脂包埋 四酸化オスミウム染色(OsO4)超薄切片作成
試料をエポキシ樹脂包埋後、ウルトラミクロトーム LEICA ULTRACUT UCT(ライカマイクロシステムズ株式会社製)にて超薄切片を作成し透過型電子顕微鏡H−-7600(株式会社日立製作所製)で1000倍に拡大しTEM写真撮影をした。染色剤としてオスミウム酸結晶(日新EM株式会社製)を用いた。
【0062】
[スチレンダイマー、スチレントリマー溶出量]
i)溶出液の調整
試料容器に溶出溶媒として570mlの再蒸留ヘプタン(溶出に使用したヘプタンをリサイクルするために2回蒸留して繰り返し使用)を入れ、25℃で1時間溶出を行った後、この溶出から300ml分取して全自動濃縮装置(ターボバップ500)を用いて50℃で1mlまで濃縮し、測定直前に内部標準液(ピレン100μg/ml)を40μl加えてからn−ヘプタンで2mlにメスアップして試験液とした。
【0063】
ii)GCMS分析
下記条件にてSIM測定を行い、クロマトグラムの内でダイマーピーク4本、トリマーピーク6本のピーク面積と内部標準物質のピーク面積にて予め作成したスチレンオリゴマーの検量線により定量した。ダイマー、トリマーの検量線作成は関東化学製の標準物質を用いて行った。
GCMS分析条件
装 置:GCMS QP5050 (GC=島津製GC−17A)((株)島津製作所製)
カラム:DB−5(J&W製) φ0.25mm×30m 膜厚 0.25μm
スプリット比: 1:10
注入口温度:240℃
インターフェイス温度:260℃
カラム温度:70℃(1min)昇温15℃/min→260℃(0min) 昇温10℃/min→300℃(3min)
キャリアガス:ヘリウム(1.2ml/min)
試験液注入量:1μl (オートサンプラー使用)
【0064】
[スチレンダイマー、スチレントリマー含有量]
まず、実施例、比較例で得た各発泡積層シートから、発泡層をカッターナイフなどで削り取り、非発泡樹脂層のみを分離する。次に分離した非発泡樹脂層から試料0.2gをMEK10mIに溶解してメタノール40mIで再沈殿し、約1hr撹拌する。NO.5A濾紙で50mlメスフラスコに濾過し、メタノールでメスアップする。2mlメスフラスコに内部標準液ピレン40μl(100ppm)を入れ、50mlメスフラスコ中の溶液でメスアップし、GCMS分析を行った。
【0065】
GCMS分析条件
下記条件にてSIM測定を行い、クロマトグラムの内でダイマーピーク4本、トリマーピーク6本のピーク面積と内部標準物質のピーク面積にて予め作成したスチレンオリゴマーの検量線により定量した。ダイマー、トリマーの検量線作成は関東化学製の標準物質を用いて行った。
測定装置:島津製作所(株)製ガスクロマトグラフ質量分析計 QP−5050A(GC=島津製GC−17A)
カラム:DB−5(J&W製) φ0.25mm × 30m 膜厚 0.25μm
注入口温度:240℃
インターフェイス温度:280℃
カラム温度:70℃(1min)昇温15℃/min→260℃(0min)昇温10℃/min→300℃(3min)
キャリアーガス:ヘリウム(1.2ml/min) 検出器(1.25kV)測定モード:SIM
内部標準:ピレン
【0066】
〔成形性〕
成形性は、実施例、比較例で得られた各発泡積層シートをオーブン加熱して、開口部の内径が140mm、底部の内径が100mm、深さ80mmである丼容器を成形型でプレス加工する際にクラックや亀裂、裂けなどの生じていないものを○、クラックや亀裂、裂けなどが生じたものを×とした。また、成形品の強度に影響するため、発泡積層シートをオーブン加熱する前の厚みをT1、加熱後のシート厚みをT2としたときにT2/T1≧1.2となる物を○、T2/T1<1.2となる物を×とし、総合的に下表の評価とした。
【0067】
【表2】

【0068】
〔総合評価〕
耐油性と成形性の評価において、耐油性と成形性がともに○のものは総合評価◎、耐油性が△で成形性が○のものは総合評価○、耐油性が×のものは総合評価×、成形性が×のものは総合評価×とした。
【0069】
表1に示すように、非発泡樹脂層がアクリロニトリル成分を18重量%以上含まないポリスチレン系樹脂で構成された比較例1及び比較例2の発泡積層シートは耐油性が乏しいが、同アクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂で構成された発泡積層シートは耐油性が良好である。またゴム変性ポリスチレン樹脂においてその樹脂中に含まれるゴム成分の平均分散粒子径が2.0μm以上である実施例1〜4は耐油性が良好であるが、同平均分散粒子径が2.0μm未満である実施例5では耐油性の低下が見られる。また比較例3は、金型の内側のコア部分が冷却されずに発泡層樹脂の押出温度を越えるとなっていることから、連続気泡率が高くなり、成形性が低下しているが、実施例1〜5は、金型の内側のコア部分が冷却され、発泡層樹脂の押出温度以下の温度に設定されているため、2種類の樹脂層を均一に積層することが出来、成形性が良好である。また、積層する非発泡樹脂層に含まれるゴム成分が5重量%以下である実施例は耐油性が良好であり、同ゴム成分が0.5重量%以上含まれている実施例は、熱成形時にクランクピンによる非発泡樹脂シートの欠落がなく、脆性改善が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、積層された非発泡樹脂層がアクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂であり、発泡積層シートとしての連続気泡率が50%以下である発泡積層シートであるので、発泡ポリスチレン製食品容器などで問題となりうる、中鎖脂肪酸トリグリセライドなどの油に対して耐性を持たせることが可能となる。また本発明によれば、安価にして優れたリサイクル性を保有し、熱成形性に優れたポリスチレン系樹脂発泡積層シートを提供することができる。
従って、本発明の発泡積層シートは、発泡ポリスチレン製食品容器などの食品容器に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明の発泡積層シートを共押出によって製造する装置の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、図1において合流ダイ及び環状スリットダイを示す概略拡大図である。
【符号の説明】
【0072】
1 No.1押出機
2 ホッパー
3 圧入部
4 移送部
5 No.2押出機
6 押出機
7 ホッパー
8a 吐出部
8b 吐出部
9 合流ダイ
10 環状スリットダイ
11 冷却用エアーリング
12 冷却マンドレル
101 コア部分
102 スリット部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出発泡させたポリスチレン系樹脂発泡シートの少なくとも片面に非発泡樹脂層を積層して成るポリスチレン系樹脂発泡積層シートにおいて、
積層された上記非発泡樹脂層がアクリロニトリル成分を18重量%以上含むポリスチレン系樹脂であり、
発泡積層シートとしての連続気泡率が50%以下であることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
【請求項2】
アクリロニトリル成分を18重量%以上含む前記ポリスチレン系樹脂が、スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
【請求項3】
前記スチレン−アクリロニトリル共重合体におけるアクリロニトリル成分の含有量が20〜30重量%であることを特徴とする請求項2に記載のポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
【請求項4】
前記ゴム変性ポリスチレンの平均ゴム分散粒子径が2.0μm以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載のポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
【請求項5】
前記スチレン−アクリロニトリル共重合体とゴム変性ポリスチレンとの混合樹脂に、ゴム成分が0.5〜5重量%含まれる請求項2〜4のいずれかの項に記載のポリスチレン系樹脂発泡積層シート。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のポリスチレン系樹脂発泡積層シートの非発泡樹脂層を内側にして熱成形することにより得られる成形品。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−224549(P2006−224549A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42979(P2005−42979)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】