説明

ポリスチレン系樹脂積層発泡シートから成形された容器、該容器の成形方法、及びポリスチレン系樹脂積層発泡シート

【課題】 耐衝撃性に優れ、寒冷地等での使用においても、落下などの衝撃で割れにくい容器、その成形方法、斯かる容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することを課題とする。
【解決手段】 ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートの片面にポリスチレン系樹脂フィルムが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを前記ポリスチレン系樹脂フィルムが容器内側となるように成形した容器であって、側壁部分は、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側から−10℃の条件下で衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーが0.5J以上となるように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートから成形された容器、該容器の成形方法、及びポリスチレン系樹脂積層発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
インスタント焼きそば等のインスタント食品の湯戻し調理用の容器は、スチレン系樹脂発泡シートにスチレン系フィルムが積層されたスチレン系樹脂積層発泡シートをスチレン系フィルムが内側となるように成形したものである。従来、この種の容器に関しては、調理時や喫食時に、箸やフォーク等で容器を突き刺して破壊してしまうことが懸念されるため、いわゆる突き刺し強度が重要視されてきた。この突き刺し強度を向上させるためは、下記特許文献1でも行われているように、積層するフィルムの基材樹脂にゴム成分を添加することで耐衝撃性を付与することが一般に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−20702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の如く、これまで焼きそば等のインスタント食品用の容器については、フィルムの耐衝撃性を重要視した品質改善が行われてきたが、容器全体の耐衝撃性については、何ら考慮されることが無かった。そのため、当該容器に成形されるポリスチレン系樹脂積層発泡シートに用いられるポリスチレン系樹脂発泡シートは、価格が安く、容易に成形できることのみが追求されてきた。その結果、容器全体の耐衝撃性が低く、特に寒冷地等での使用においては、容器が割れるという問題が生じる場合がある。容器に割れが発生すると、当然の事ながら、充填された食品を湯戻しする際に熱湯が外にもれ、容器の機能を果たさないばかりか、悪くすれば消費者が火傷を負ってしまう虞がある。また、密閉性も損なわれるため、食品の劣化が進み易くなるという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、耐衝撃性に優れ、寒冷地等での使用においても、落下などの衝撃で割れにくい容器、その成形方法、斯かる容器の成形に用いられるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポリスチレン系樹脂フィルムが内側となるようにポリスチレン系樹脂積層発泡シートを成形した容器に対し、実際に小売店等で販売される状態、すなわち内容物が充填されて密閉された状態で、容器を落下させたり、重量物を容器の上に落としたりするなどして衝撃を加え、破壊した場合の状況を精査に観察した。その結果、容器は、側壁部分に内側から衝撃を与えた場合と同様の破壊状況を示し、ポリスチレン系樹脂フィルムを積層していない外側の面から破壊が生じる事を突き止めた。更には、このような破壊形式に対しては、ポリスチレン系樹脂発泡シートに柔軟性を付与することが有効であること、ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを容器に成形する際の加熱条件も影響を及ぼすことを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明に係る容器は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートの片面にポリスチレン系樹脂フィルムが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを前記ポリスチレン系樹脂フィルムが容器内側となるように成形した容器であって、側壁部分は、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側から−10℃の条件下で衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーが0.5J以上となるように形成されていることを特徴とする容器。
なお、「50%衝撃破壊エネルギー」とは、JIS K7211に基づいて求められる値を意図している。
【0008】
また、本発明に係る容器は、前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが加熱処理されて二次発泡され、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側の表面が100℃以上の温度にされた状態で成形加工されたことが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る容器は、厚み方向のセル数が9〜25個/mm、密度が0.08〜0.15g/cm3である前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に、厚みが70〜200μmの前記ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されてなり、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されていない側の表面から厚み方向に150μmの部分の密度が0.20g/cm3以上のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを用いて成形されていることが好ましい。
【0010】
本発明に係るポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成され、厚み方向のセル数が9〜25個/mm、密度が0.08〜0.15g/cm3であるポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に、厚みが70〜200μmのポリスチレン系樹脂フィルムが積層されてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されていない側の表面から厚み方向に150μmの部分の密度が0.20g/cm3以上であることを特徴とする。
【0011】
本願発明に係る容器の製造方法は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートの片面にポリスチレン系樹脂フィルムが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを前記ポリスチレン系樹脂フィルムが容器内側となるように成形する容器の成形方法であって、前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを加熱処理して二次発泡させるとともにポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側の表面を100℃以上の温度にさせて前記成形を実施することによって、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側から−10℃の条件下で衝撃を与えて計測される50%衝撃破壊エネルギーが、少なくとも容器の側壁部分において0.5J以上となるように容器を形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、耐衝撃性に優れ、寒冷地等での使用においても落下などの衝撃で割れにくい容器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、発泡シートとも記す)の一方の表面にポリスチレン系樹脂フィルム(以下、フィルムとも記す)を積層したポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、積層発泡シートとも記す)を用いて成形され、該積層発泡シートを前記フィルムが容器内側となるように熱成形して得られるものである。斯かる容器は、寒冷地などの寒い場所でも、内容物が充填されて密閉された状態で落下したり、重量物が容器の上に落とされたりなどした際の衝撃に対し、十分な強度を有する。容器が割れないためには、その側壁部分におけるフィルムが積層された側の面(以下、フィルム積層面と記す)に−10℃の条件下で衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーが0.5J以上であることが必要である。フィルム積層面側から衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーが0.5J未満の場合には、耐衝撃性が不十分で割れやすい容器となる傾向がある。
【0014】
本発明の発泡シートは、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有するポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成される。ポリスチレン系樹脂とは、スチレンモノマーの単独重合樹脂、スチレンと共重合可能なモノマーとのランダム並びにブロック共重合樹脂、これらの樹脂の混合樹脂、及びこれら樹脂と混合可能なポリフェニレンオキサイド等の樹脂との混合樹脂等があげられる。
なお、前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体であるポリスチレン樹脂が、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性の観点からも好適である。
【0015】
また、本発明におけるポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の付与に有効なものであり、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有される。
なお、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、通常、次の一般式で表される。
【化1】

【0016】
ここでR1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子を示し、nは、重合度を表す正の整数である。
例示すれば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等が本実施形態において用いられ得る。
また、重合度nは、通常10〜5000の範囲内である。
【0017】
このようなポリフェニレンエーテル系樹脂は、耐熱性の向上に有効なものではあるが、ポリフェニレンエーテル系樹脂を、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下となる割合で含有させることが好ましいのは、上記範囲未満では、ポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が十分に発揮されないおそれを有し、逆に上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させても、それ以上にポリフェニレンエーテル系樹脂の添加効果が発揮されないおそれを有するためである。
また、一般的にはポリスチレン系樹脂に比べて高価であるために上記範囲を超えてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させると材料コストの観点においても問題を生じさせるおそれを有する。
【0018】
通常、ポリスチレン系樹脂のビカット軟化温度(JIS K7206−1991、B法、50℃/h)は、102℃程度であるが、上記のようなポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させることにより、ビカット軟化温度を110〜155℃の範囲に向上させることができ、該ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだポリスチレン系樹脂組成物を使用することで、得られるポリスチレン系樹脂発泡シートや該ポリスチレン系樹脂発泡シートを2次加工した製品などの耐熱性向上を図り得る。
【0019】
一般にポリスチレン系樹脂組成物が用いられてなる製品に耐熱性が求められる場合には、スチレンホモポリマーよりもビカット軟化温度の高いスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイミド共重合体、ポリパラメチルスチレン樹脂などのコポリマーをその形成材料に採用することが行われている。
一方で、上記のようにポリフェニレンエーテル系樹脂をブレンドする方法は、単に製品に耐熱性を付与することができるばかりでなく、優れた靱性を付与することができる点においても優れている。
【0020】
したがって、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含んだポリスチレン系樹脂組成物を使用して発泡トレーなどを形成させた場合には、急激な変形が加えられても割れたりすることのない発泡トレーを形成させ得る。
【0021】
ただし、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、特有の臭いを有していることから、特に臭気を嫌う用途などにおいては消臭のための成分を含有させることが好ましい。
この消臭成分としては、ゼオライト系やリン酸ジルコニウム系の無機物粒子が挙げられる。
なかでも、消臭効果の点においては、リン酸ジルコニウム系の成分を採用することが好ましい。
【0022】
そして、これら樹脂にタルク、炭酸カルシウム等の無機物を造核剤として添加した上で、押出機内でプロパン、ブタン、ペンタンなどの物理的発泡剤及び重曹−クエン酸等の化学発泡剤と共に溶融混合し、その後、サーキュラーダイ等より押出発泡させて発泡シートを得る。この際、造核剤の種類やその添加量によって発泡シートの厚み方向のセル数を調整することができる。また、発泡剤の混合量や樹脂を押し出すサーキュラーダイのリップ開度を調整することにより、発泡シートの密度を調整することができる。更に、押出発泡時の発泡シート表面部分のセル形成は、ダイからの押出時の樹脂温度、ダイリップ間隙等の調整、発泡剤の選定、及び、ダイから出た直後の発泡シートの表面に空気を吹き付けて急冷する際の操作によって調整することができる。
【0023】
ここで、耐衝撃性に優れた成形容器を得るためには、発泡シートが十分な強度と柔軟性をあわせ持っていることが重要となる。そのためには、発泡シートの厚み方向のセル数が9〜25個/mm、密度が0.08〜0.15g/cm3であることが好ましい。厚み方向のセル数が9個/mm未満である場合や、密度が0.15g/cm3を超える場合には、セル膜が厚くなりすぎるため、発泡シートが柔軟でなくなる。このため、強度は高いが、割れやすい容器となる。また。厚み方向のセル数が25個/mmを超える場合や、密度が0.08g/cm3未満の場合には、セル膜が薄くなるため、成形時にシートが伸びずに良好な成形体が得られなかったり、強度が不足したりする。
なお、発泡シートの厚みは、通常、1.0mm〜3.0mmである。
【0024】
更に、後工程でフィルムを積層する面に対して反対側の表面から厚み方向に150μmの部分の密度を0.20g/cm3以上とすることが好ましい。表層部の密度が0.20g/cm3以上である場合には、成形時の加熱により長径50μm以下の微細なセルが発生し、容器の耐衝撃性を向上させる。これは、表面に発生した微細セルが容器に与えられた衝撃を分散・吸収するためである。一方、表層部の密度が0.20g/cm3未満では、成形時の加熱で十分な微細セルが発生せず、十分な耐衝撃性を容器に付与することができない。また、表層部の密度としては、0.60g/cm3程度が限界である。これを超えて表層の密度を高くしようとすると、押出時のシート冷却を強くする必要があるため、発泡の安定性が損なわれることがある。
【0025】
得られた発泡シートには、2〜8週間の養生後、押出ラミネーション法によって、T−ダイより押出されたポリスチレン系樹脂フィルムが積層される。該フィルムは、非発泡のフィルムであり、用いられるポリスチレン系樹脂としては、発泡シートに用いる物と同様のものが用いられ、発泡シートと同一樹脂を使用しても良いし、異種の樹脂を使用しても良い。
【0026】
また、耐衝撃性の観点から、フィルムに用いる樹脂のIzod衝撃強度は、80J/m以上であることが望ましい。Izod衝撃強度が80J/m未満である場合には、積層したフィルムが割れやすく、熱成形後に成形型から容器を取り出す際に切り口にクラックが生じたり、充填された麺や箸が容器に突き刺さって穴を開けてしまったり等の問題が生じる場合がある。Izod衝撃強度を80J/m以上とするためには、フィルムの基材樹脂に耐衝撃性ポリスチレン樹脂やポリスチレン系樹脂にSBS等のゴム成分を添加したものを用いることが望ましく、添加するゴム成分は、4%以上であることが望ましい。
【0027】
更に、フィルムの厚みは、70〜200μmが好ましい。フィルムが70μm未満で薄いと、前述の如く耐衝撃性に優れた基材樹脂を用いても容器内面が麺や箸等で傷がつきやすくなり、200μmを越える厚みでは、経済的に好ましくない。
【0028】
このようにして得られたポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、容器の内側がフィルム積層面となるように成形機にセットされ、赤外線ヒーター等を設置した加熱炉で加熱されて二次発泡した後、成形型(一対の金型など)を用いて容器形状に成形される。この際、積層発泡シートの厚みが最大二次発泡厚みの80%以上(言い換えれば、二次発泡して厚みが2倍以上)となるように加熱することが好ましい。最大二次発泡厚みとは、加熱条件を変えて積層発泡シートを二次発泡させた時に発現し得る最大の厚みである。二次発泡厚みが最大二次発泡厚みの80%未満では、前述の微細セルが容器外側表面部に発生せず、容器に十分な耐衝撃性を付与できない場合がある。また、積層発泡シートが加熱不足のために十分に伸びず、得られた容器に成形型通りの形状を付与できなかったり、場合によってはナキや亀裂が容器に発生したりする場合がある。
【0029】
更に、耐衝撃性に優れた容器を得るためには、成形型で成形する直前のフィルム積層面の温度が100℃以上となるように加熱炉内で十分に積層発泡シートを加熱し、斯かる温度状態で成形することが望ましい。フィルム積層面の温度が100℃未満で加熱が不十分な場合には、フィルムが十分軟化しておらず、成形時に側壁部分のフィルムが過剰に延伸され、フィルムが割れやすくなる。加えて、この状態で厚みを最大二次発泡厚みの80%以上とすると、フィルム非積層面の加熱が過剰となり、発泡シートとフィルムとの伸びが不均一となって成形性が損なわれたり、フィルム非積層面の二次発泡倍率が高くなりすぎて表層部のセル膜が薄くなって耐衝撃性が低下したりする。
【0030】
成形型で成形する直前のフィルム積層面の温度は、105℃以上であるのがより好ましく、110℃以上であるのが最も好ましい。また、フィルム積層面の温度の上限は、外観良好な成形品が成形可能な範囲にあればよく、一般的な成形機で積層発泡シートを用いた場合には160℃以下である。
【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
<実施例1〜3,比較例1〜2>
ポリスチレン系樹脂(DIC社製GPPS(スチレンホモポリマー)、商品名「XC−515」)及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とポリスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製、商品名「ノリルEFN4230」、PPE/PS=70/30)の合計100質量部に対して前記混合樹脂(ノリルEFN4230)が30質量部となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物に造核剤としてタルクを加え、押出機内で溶融・混合した。これに発泡剤としてブタンガスを圧入し、サーキュラーダイより押出して発泡シートを成形した。この際、サーキュラーダイより押し出した直後のシートの表面に30℃の空気を吹き付けて冷却した。なお、発泡シートのセル数、密度、フィルムを積層しない面の表層密度が表1に示す値となるように、タルク混合量、ブタンの圧入量、サーキュラーダイリップ開度、および、エアーリング量を調整した。
【0033】
厚み方向のセル数は、発泡シートの巾方向の3箇所からサンプルを切り出し、各サンプルの断面を拡大鏡で観察して厚み方向に並ぶセル数を数え、得られた結果を各サンプルの厚みで除して相加平均することにより求めた。密度は、発泡シートの巾方向の10ヶ所から10cm角のサンプルを切り出し、得られたサンプルの重量・厚みを測定して得られた結果を相加平均することにより求めた。表層密度は、発泡シート巾方向の3ヶ所から1cm×5cmのサンプルを切り出し、その表層部150μmを削り取って重量を測定して得られた結果を相加平均することにより求めた。
【0034】
得られた各発泡シートは、巻反で3週間の養生後、発泡シートの表面上に樹脂温度250℃のハイインパクトスチレン樹脂(東洋スチレン社製 商品名:E785N)をT−ダイで押し出し、表1に示す厚みのフィルムとして発泡シート表面に積層し、積層発泡シートを得た。この積層発泡シートをフィルム積層面が容器の内面側になるように成形機(浅野研究所製FLC)に掛けた。この際、二次発泡厚みとフィルム積層面の温度が表1に示す値となるように加熱時間・ヒーター設定を調整して加熱・発泡させた。これにより、シール剥離止めが付いた角型の市販焼きそばの容器に類似した形状の容器を成形した。
【0035】
なお、二次発泡厚みは、前記成形機で使用される成形型で成形される直前の積層発泡シートを採取し、その厚みを幅方向に等間隔で10点測定してその平均を求めた。また、フィルム積層面の温度は、成形型で成形される直前の積層発泡シートの表面温度を非接触型の温度測定装置Avio製Handy Thermo T VS100により測定した。
【0036】
容器の側壁部分を切り出し、その断面構造をセル走査型電子顕微鏡にて観察した結果、フィルムを積層していない側の表層密度が0.20g/cm3以上である実施例1〜3は、容器の外面に微細セルが発生していたが、表層密度の低い比較例1,2には、微細セルの存在は確認できなかった。そのため、実施例1〜3の外観には光沢があり、非常に美麗であるが、比較例1,2の外観には粗い気泡が目立ち、高級感の無いものとなった。
【0037】
また、容器の側壁部分を切り出し、デュポン式落錘衝撃試験機を用いて、JIS−K7211の方法に基づいて、−10℃の雰囲気下でフィルム積層面側から衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーを測定した。表1に示すように、実施例1〜3の50%衝撃破壊エネルギーは、0.5J以上であるが、比較例1,2は、0.5J未満であった。
【0038】
更に、これらの容器に内容物(麺・具材等)を充填し、シール蓋にて密閉した後、6個×2段の12個入りケースに箱詰めし、箱の上に1.5mの高さから5kgの重量物を落下させて、ケース内の割れた容器の個数を調べた。この重量物落下テストの結果、表1に示すように50%衝撃破壊エネルギーが0.5J以上である実施例1〜3の容器には割れが発生しなかったが、0.5J未満の比較例1,2の容器には割れが発生した。
【0039】
以上のように、本発明によれば、耐衝撃性に優れ、割れにくい容器を提供することができる。
【0040】
【表1】

【0041】
<参考例>
以下に、樹脂成分がスチレン系樹脂単体のポリスチレン系樹脂組成物で作製したポリスチレン系樹脂発泡シートと、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させたポリスチレン系樹脂組成物で作製したポリスチレン系樹脂発泡シートとにおいて割れ難さを評価した事例を示す。
【0042】
(シート1)
ポリスチレン系樹脂(DIC社製GPPS(スチレンホモポリマー)、商品名「XC−515」)70質量%、及び、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)とポリスチレン系樹脂(PS)との混合樹脂(サビック社製、商品名「ノリルEFN4230」、PPE/PS=70/30)30質量%からなる樹脂成分100質量部に対して、消臭成分として東亜合成社製のリン酸ジルコニウム系消臭剤(商品名「ケスモンNS−10」)を0.5質量部含有する樹脂組成物を押出し発泡して、厚み2.0mm、目付け(坪量)180g/m2の発泡シートを作製した。
【0043】
(シート2)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてアクリル系モノマーとスチレンモノマーとの共重合体を押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けのポリスチレン系樹脂発泡シート(シート2)を作製した。
【0044】
(シート3)
GPPS、PPE、及び、消臭成分を含む樹脂組成物に代えてGPPSのみを押出し発泡してシート1と同じ厚みで同じ目付けのポリスチレン系樹脂発泡シート(シート3)を作製した。
【0045】
(耐熱性評価:示差走査熱量測定)
上記シートから6.5±0.5mgのサンプルを採取し、JIS K7121に基づいて示差走査熱量測定を実施した(使用装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、示差走査熱量計装置、型名「DSC6220」)。
その結果、シート1、シート2のサンプルにおいては、JIS K7121 9.3(1)に記載の「中間点ガラス転移温度(Tmg)」が120℃付近に観察され、シート3のサンプルでは、106℃に観察された。
【0046】
(靱性評価:ダイナタップ衝撃試験)
上記シート1〜3から、100×100mmのテストピースを採取して、該テストピースに対して、ASTM D3763に基づくダイナタップ衝撃試験を実施した(使用装置:General Research Corp.社製、ダイナタップ衝撃試験装置、型名「GRC8250」)。
その結果、シート2のテストピースについては、最大点変位3.2mm、最大荷重29Nという結果となり、シート3のテストピースについては、最大点変位4.0mm、最大荷重36Nという結果となった。
一方でシート1のテストピースについては、最大点変位4.4mm、最大荷重42Nという結果となった。
このことからシート1は、PPE系樹脂が含有されることによって変位と荷重が大きな割れ難い状態となっていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートの片面にポリスチレン系樹脂フィルムが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを前記ポリスチレン系樹脂フィルムが容器内側となるように成形した容器であって、
側壁部分は、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側から−10℃の条件下で衝撃を与えた場合の50%衝撃破壊エネルギーが0.5J以上となるように形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートが加熱処理されて二次発泡され、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側の表面が100℃以上の温度にされた状態で成形加工されたことを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
厚み方向のセル数が9〜25個/mm、密度が0.08〜0.15g/cm3である前記ポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に、厚みが70〜200μmの前記ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されてなり、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されていない側の表面から厚み方向に150μmの部分の密度が0.20g/cm3以上であるポリスチレン系樹脂積層発泡シートを用いて成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成されたポリスチレン系樹脂発泡シートの片面にポリスチレン系樹脂フィルムが積層されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを前記ポリスチレン系樹脂フィルムが容器内側となるように成形する容器の成形方法であって、
前記ポリスチレン系樹脂積層発泡シートを加熱処理して二次発泡させるとともにポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側の表面を100℃以上の温度にさせて前記成形を実施することによって、ポリスチレン系樹脂フィルムが積層された側から−10℃の条件下で衝撃を与えて計測される50%衝撃破壊エネルギーが、少なくとも容器側壁部分において0.5J以上となるように容器を形成させることを特徴とする容器の成形方法。
【請求項5】
ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有し、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計100質量部に対して前記ポリフェニレンエーテル系樹脂が10質量部以上50質量部以下となる割合で含有されているポリスチレン系樹脂組成物を用いて形成され、厚み方向のセル数が9〜25個/mm、密度が0.08〜0.15g/cm3であるポリスチレン系樹脂発泡シートの片面に、厚みが70〜200μmのポリスチレン系樹脂フィルムが積層されてなるポリスチレン系樹脂積層発泡シートであって、
ポリスチレン系樹脂フィルムが積層されていない側の表面から厚み方向に150μmの部分の密度が0.20g/cm3以上であることを特徴とするポリスチレン系樹脂積層発泡シート。

【公開番号】特開2012−11640(P2012−11640A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149545(P2010−149545)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】