説明

ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法と装置

本発明により、ポリヌクレオチドがんワクチンを送達する方法および装置として、T細胞の応答を増大させるとともに、長い電気波形の印加に起因する痛みと筋肉の収縮を低減する方法および装置が提供される。この方法は、(a)ポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚の投与部位に投与するステップと、(b)針電極を皮膚のその投与部位の近傍に適用するステップと、(c)少なくとも3つの電気波形からなるパルス列を印加して電気穿孔によりポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚細胞の中に送達するステップを含んでいる。パルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの少なくとも1つの特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2009年3月26日にRichard Walters(コロンビア、メリーランド州)、Derin Walters(東京、日本国)、Alan King(ハイランド、メリーランド州)、Anna-Karin Roos(ストックホルム、スウェーデン国)、Britta Wahren(ストックホルム、スウェーデン国)、Kristian Hallermalm(ストックホルム、スウェーデン国)、Andreas Brave(ストックホルム、スウェーデン国)を発明者として「ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法と装置」という名称で出願された同時係属中のアメリカ合衆国仮出願シリアル番号第61/211,305号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、全体として、ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法と装置に関する。より詳細には、本発明により、電気波形と電気穿孔を利用してポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法と装置が提供される。
【背景技術】
【0003】
本明細書の目的では、“パルス間隔”という用語は、1つのパルスの開始から次のパルスの開始までの時間を意味する。
【0004】
以下の刊行物について以下に検討する。
アメリカ合衆国特許第6,010,613号;
アメリカ合衆国特許第6,603,998号;
アメリカ合衆国特許第6,713,291号;
Roosらによる「皮内電気穿孔による前立腺がんDNAワクチンに対する細胞性免疫応答の増大」、Molecular Therapy、第13巻、第2号、2006年2月、320〜327ページ(この明細書ではRoosらと呼ぶ);
Puciharらによる「試験管内で電気的に浸透させた細胞への取り込みに対するパルス繰り返し頻度の効果と、電気化学療法における可能な応用」、Bioelectrochemistry、第57巻、2002年、167〜172ページ(この明細書ではPuciharらと呼ぶ)。
【0005】
アメリカ合衆国特許第6,010,613号(参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)には、例えばサイト・パルス社(810 クロムウェル・パーク・ドライヴ、スイートT、グレン・バーニー、メリーランド州 21061)のPA-4000システム(この明細書ではPulseAgileと呼ぶ)によって与えられる広い間隔の電気波形を用いた電気穿孔を利用することが開示されている。より詳細には、アメリカ合衆国特許第6,010,613号には、操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発DC電気パルスからなるパルス列を材料に印加することが開示されている。ただし少なくとも3つのDC電気パルスからなるそのパルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有する。
【0006】
この明細書の議論と開示を目的として、操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発DC電気パルスで構成されていて特徴(1)、(2)、(3)を有するパルス列を材料に上記のように印加することを、この明細書では“PulseAgile”と呼ぶ。
【0007】
アメリカ合衆国特許第6,010,613号に開示されている明細書と、PulseAgileシステムに関係する文書では、パルス間隔は0.1秒以上、すなわち100ミリ秒以上とされている。今後は、PulseAgileによって発生させるパルス間隔が100ミリ秒以上の電気波形を“広い間隔のPulseAgile電気パルス”または“スロー(slow)PulseAgile電気パルス”と呼ぶ。
【0008】
アメリカ合衆国特許第6,010,613号には、投与されたワクチンによってそのワクチンの遺伝子発現が成功したことや、T細胞の応答が改善したこと(その中には、そのワクチンの遺伝子発現が成功した結果として好ましいタンパク質の分泌が改善したことが含まれる)を示す具体的な証拠がない。
【0009】
アメリカ合衆国特許第6,603,998号とアメリカ合衆国特許第6,713,291号の両方に、広い間隔のPulseAgile電気パルスまたはスローPulseAgile電気パルスを利用して生物細胞にポリヌクレオチド・ワクチンを送達することが開示されている(両方とも参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0010】
Roosらは、広い間隔のPulseAgile電気パルスまたは遅いPulseAgile電気パルスを用いて哺乳動物の皮膚細胞にポリヌクレオチド・ワクチンを送達することを開示している。Roosらは、ポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現の成功が、ルシフェラーゼ・タンパク質を発現する遺伝子マーカーの検出によって証明されることも開示している。それに加え、Roosらは、広い間隔のPulseAgile電気パルスまたはスローPulseAgile電気パルスを用いて哺乳動物の皮膚細胞にポリヌクレオチド・ワクチンを送達すると、T細胞の応答が改善すること(その中には、そのワクチンの遺伝子発現が成功した結果として好ましいタンパク質の分泌が改善することが含まれる)を開示している。Roosらでは、T細胞の応答は、PSA特異的IFN(γ)産生CD8+T細胞によって表わされる。
【0011】
Roosらの刊行物に開示されている有益な結果以外に、スローPulseAgile電気パルスを用いることによる望ましくない結果が2つ観察されている。第1の望ましくない結果は、それぞれのスローPulseAgile電気波形を投与するプロトコルに約3.5秒を必要としたことである。このような3.5秒という投与プロトコルだと哺乳動物の皮膚に侵入する針を利用した投与によって不快感または痛みが発生するため、その哺乳動物は約3.5秒間にわたって不快感または痛みに耐えねばならないであろう。
【0012】
Roosらに開示されている第2の望ましくない結果は、それぞれのスローPulseAgile電気波形により、知覚できる筋肉の収縮が起こることである。筋肉の収縮そのものも不快感または痛みを発生させる可能性がある。通常は、ポリヌクレオチド・ワクチンを投与するのに複数のパルス波形を哺乳動物に印加することになろう。したがって、このようなスローPulseAgile電気波形を用いると複数回の筋肉の収縮が起こり、それには複数回の筋肉の不快感または痛みが伴うであろう。
【0013】
Puciharらは、2002年の公開日前に、がん細胞の治療に電気パルスが化学療法剤と組み合わせて用いられていたことを開示している。以前のこれら電気パルスは周波数が1Hzであり、各パルスによって強縮性収縮(筋肉の収縮)が起こった。1Hzとは、1サイクルが1000ミリ秒であることに注意されたい。論じられている電気パルスのプロトコルはどれも、パルスの振幅とパルス幅もとパルス間隔が同じパルスを含むパルス列である。化学療法剤には、小さな非浸透性の親水性分子が含まれている。Puciharらが行なった研究の内容は、ルシファー・イエロー(小さな非浸透性の親水性分子)を用いてがん細胞を処理する試験管内実験(生体内実験ではない)に関するものである。Puciharらが行なった研究の開示内容によると、強縮性収縮の周波数を超え(て、継起する筋肉収縮が滑らかな運動に融合す)るようにするため、さまざまなパルス繰り返し周波数が試されている。Puciharらには、継起する筋肉収縮が40Hzという励起周波数で滑らかな運動に融合するという記述がある。40Hzのパルス周波数では、パルスの振幅とパルス幅もとパルス間隔が同じパルスが用いられている。40Hzとは、1サイクルが25ミリ秒であることに注意されたい。
【0014】
Puciharらには、彼らの知見のどれかが、ポリヌクレオチドのワクチン接種に関係することも、ポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現の成功に関係することも、T細胞の応答改善(その中には、そのワクチンの遺伝子発現が成功した結果として望むタンパク質の分泌が改善することが含まれる)に関係することも開示されていない。
【0015】
癌胎児性抗原(CEA)は、分子量が約180kDaの高度にグリコシル化された膜タンパク質である。CEAは、胎生期に特に胎児の腸で発現する。誕生後はCEAの発現は下方調節されるが、成体の腸で少量が持続して存在する。CEAは、多数の上皮腫瘍(例えば結腸直腸がん細胞)によって過剰発現するのに対し、胃がん、膵臓がん、乳がん、肺がん、卵巣がんではその程度はより小さい(WahrenとHarmenberg、1991年;Hammarstrom、1999年)。CEAは、結腸直腸がんの90%を超える細胞表面で一様に発現している。CEAは身体の他の細胞では発現しないが、例外は、胎児の消化器官と、正常な大腸粘膜での低レベルの発現である。腫瘍形成におけるCEAのこの好ましい発現プロファイルとこの可能な役割が、この抗原を免疫療法の魅力的な標的にしている(Berinstein、2002年)。CEAは血清中で測定可能であるため、悪性腫瘍(特に結腸直腸がん)の血清学的マーカーとして広く利用されている。
【0016】
CEAサブグループのメンバーは細胞膜に関係していて正常組織とがん組織で複雑な発現パターンを示し、特にCEAが上皮で選択的に発現する。CEAサブグループのいくつかのメンバーは細胞接着特性を持つ。原始的なメンバーである胆汁糖タンパク質は、おそらくCEAサブグループの他のメンバーと組み合わさってシグナル伝達またはシグナル伝達調節において機能を果たしているようである(Hammarstrom、1999年)。
【0017】
CEAの免疫原性
【0018】
免疫系はCEAを認識できるという証拠がある。さらに、天然の抗CEA IgM抗体が自然に生成して存在していると、結腸直腸がんの患者の生存期間が延長する(Albanopoulos他、2000年)。健康なドナーと患者からのT細胞は、クラスIのHLAの多数の対立遺伝子との関連で、CEAの処理済エピトープと、溶解CEAを発現している腫瘍を認識することができる(Berinstein、2002年)。患者のCEAの機能性HLA-DRエピトープも明らかにされている(Ullenhag他、2004年)。
【0019】
がん患者のCEAを標的としたワクチン接種
【0020】
CEAを標的とした多数の臨床試験から、CEAに対する寛容度を逆転させうることが証明されている。抗CEA免疫応答が、さまざまなワクチン接種法によって再現性よく生じる(Berinstein、2002年;Marshall、2003年)。ワクチン接種された患者の臨床での応答と生存期間の延長も報告されている。
【0021】
抗イディオタイプ抗体模倣CEA(CeaVac)を用いた第III相試験の予備分析から、転移性結腸直腸がんの患者がCeaVacを少なくとも5回投与されると、プラセボと比較して全体的に生存期間が延びる傾向が明らかになった(Foon他、1999年;タイタン・ファーマシューティカルズ社、2002年)。バキュロウイルス発現系で産生させ、アジュバントであるGM-CSFと組み合わせてalumに共役させたCEAタンパク質は、そのアジュバントの設定にした結腸直腸がんの患者において、CEA特異的なホルモン性と増殖性のT細胞応答を誘導した。抗CEA IgG力価と患者の全体的な生存の間に正の相関があることが証明された(Ullenhag他、2002年;Ullenhag他、2004年)。
【0022】
CEAを標的としたDC式ワクチン接種が臨床で応答を示し、CEA特異的なCD4+ヘルパーT細胞とCD8+細胞傷害性T細胞の応答を誘導した(Morse他、2003年;Liu他、2004年;Matsuda他、2004年;Ueda他、2004年)。Fongらは、免疫化した患者の17%で劇的な腫瘍の退縮を報告している。それに加え、25%の患者では、混合した応答または安定な疾患であった。臨床応答と、CEA特異的CD8+エフェクターT細胞の割合および強さとの間に強い相関があることが証明された(Fong他、2001年)。DC式ワクチン接種によって強力な免疫が誘導されるが、いくつかの因子が制約となって大規模な臨床試験でこの方法を利用することはできない(Berzofsky他、2004年)。
【0023】
遺伝子免疫化には、細胞をベースとしたワクチンやタンパク質ワクチンと比べていくつかの利点がある(Liu、2003年)。DNAは、操作が容易であること、設計に柔軟性があること、化学的な安定性がより大きいこと、メチル化されていないCpGオリゴデオキシヌクレオチドに固有のアジュバント効果があること、低コストであることが理由で、ワクチン接種にとって魅力的である。DNAワクチンは、抗腫瘍防御にとって極めて重要であると考えられるCTLの誘導を容易にする。
【0024】
CEAをコードしている単独のDNAまたは組み換えワクシニア・ウイルスを用いたワクチン接種では、客観的な臨床応答がまったく見られず、誘導されたCEA特異的免疫応答は限られていた(Tsang他、1995年;Conry他、1999年;Conry他、2000年;Conry他、2002年)。しかしワクシニア-CEAと別のポックスウイルスからなるベクター(CEAを含むALVAC)を用いたプライム-ブースト(初回-追加)法により、進行した結腸直腸がんの患者においてCEA特異的CTL前駆体の頻度が上昇し、疾患が21ヶ月まで安定していた。これは、CEAを用いたワクチン接種が患者に利益をもたらしうることを示している。CEA特異的IFN-γ応答には、全体的な生存期間の延長が伴っていた。GM-CSFは細胞性応答を有意に増大させた(Marshall他、2000年;Marshall、2003年)。CTLの誘導と安定な疾患は、共刺激分子B7.1を含むALVAC-CEAを用いて免疫化した患者でも見られた(Horig他、2000年;von Mehren他、2000年)。安定な疾患は、GM-CSFを注入された患者でより頻繁に誘導された(von Mehren他、2001年)。
【0025】
CEAのための移植遺伝子と3種類の共刺激分子(B7.1、ICAM-1、LFA-3)を含む鶏痘-CEA-TRICOMとワクシニア-CEA-TRICOMを用いたプライム-ブースト・ワクチン接種には、完全な応答が1回だけ伴っていた。しかし試験開始時に進行性疾患を抱えていた何人かの患者は、ワクチンを接種した後の6ヶ月以上も疾患が安定していた。腫瘍マーカーの応答が何人かの患者で観察された(Marshall他、2005年)。鶏痘-CEA-TRICOMで改変した樹状細胞を用いたワクチンを接種すると、わずかな臨床応答の患者や疾患が安定している患者において、進行した患者と比較してCEA特異的CTL前駆体がより高頻度に誘導された。
【0026】
したがって一般的なワクチンの原理には反するが、体内で産生されたCEAに対する寛容性が実際に破られて、免疫系が、CEAを発現している腫瘍細胞を標的とすることが、われわれによって可能になったと思われる。
【0027】
ヒトでCEAを標的としたワクチンの安全性
【0028】
CEAを標的とするどのワクチン接種戦略を利用した患者でも、深刻な副作用も自己免疫毒性も観察されなかった。
【0029】
結腸直腸がんの患者で投与量を増やしていく臨床試験では、CEAとB型肝炎抗原をコードするDNAワクチンが用いられてきた(Conry他、2002年)。毒性は一時的なグレード1の局所性または全身性の副作用に限られていて、投与量とは関係していなかった。
【0030】
CEAタンパク質をGM-CSFと組み合わせてワクチン投与された患者では、注入部位にグレードIIの局所的な反応が1回あったことを除き、グレード1の全身性または局所性の副作用だけが報告されている(Ullenhag他、2004年)。観察期間を延長した(6年間)後も自己免疫毒性の証拠は見られなかった。
【0031】
CEAを標的としたさまざまなプライム-ブースト法を用いた免疫化も安全であり、GM-CSFには追加の毒性がなかった(Berinstein、2002年;Marshall、2003年;Marshall他、2005年)。
【0032】
CEAに関する追加の参考文献は以下の通りである。
1.Albanopoulos, K.他(2000年)、Am. J. Gastroenterol. 第95巻(4):1056〜61ページ。
2.Beauchemin N.、Benchimol S.、Cournoyer D.、Fuks A.、Stanners C.P. 、「ヒト癌胎児性抗原の完全長機能化cDNAクローンの単離とキャラクテリゼーション」、Mol. Cell. Biol. 1987年9月;第7巻(9) :3221〜3230ページ。
3.Berinstein, N.L.(2002年)、J. Clin. Oncol. 第20巻(8):2197〜2207ページ。
4.Berzofsky, J.A.他(2004年)、J. Clin. Invest. 第113巻(11):1515〜1525ページ。
5.Collins J.J.、Black P.H.「癌胎児性抗原(CEA)の特異性」、N. Engl. J. Med. 1971年7月15日;第285巻(3) :175〜176ページ。
6.Conry, R.M.他(2000年)、Clin. Cancer Res. 第6巻(1):34〜41ページ。
7.Conry, R.M.他(2002年)、Clin. Cancer Res. 第8巻(9):2782〜2787ページ。
8.Conry, R.M.他(1999年)、Clin. Cancer Res. 第5巻(9):2330〜2337ページ。
9.Fong, L.他(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 第98巻(15) :8809〜8814ページ。
10.Foon, K.A.他(1999年)、J. Clin. Oncol. 第17巻(9):2889〜2895ページ。
11.Galaktionov V.G.、「免疫グロブリン・スーパーファミリーの進化的発生」、Izv. Akad. Nauk. Ser. Biol.、2004年3月〜4月;(2):l33〜145ページ(ロシア語;要約の英語翻訳、NLMゲートウェイ参照)。
12.Hallermalm, K.他(2007年)、Scand. J. Immunol. 第66巻(1):43〜51ページ。
13.Hammarstrom, S.(1999年)、Semin. Cancer Biol. 第9巻(2):67〜81ページ。
14.Horig, H.他(2000年)、Cancer Immunol. Immunother. 第49巻(9) :504〜514ページ。
15.Liu, K.J.他(2004年)、Clin. Cancer Res. 第10巻(8):2645〜2651ページ。
16.Liu, M.A.(2003年)、J. Intern. Med. 第253巻(4):402〜410ページ。
17.Lund, L.H.他(2003年)、Cancer Gene Ther. 第10巻(5):365〜376ページ。
18.Marshall, J.(2003年)、Semin. Oncol. 第30巻(3補8):30〜36ページ。
19.Marshall, J.L.他(2005年)、J. Clin. Oncol. 第23巻(4):720〜731ページ。
20.Marshall, J.L.他(2000年)、J. Clin. Oncol. 第18巻(23):3964〜3973ページ。
21.Matsuda, K.他(2004年)、Cancer Immunol. lmmunother. 第53巻(7) :609〜616ページ。
22.Morse, M.A.他(2003年)、Cancer Invest. 第21巻(3):341〜349ページ。
23.Paxton R.J.、Mooser G.、Pande H.、Lee T.D.、Shively J.E.、「癌胎児性抗原の配列分析:グリコシル化部位の同定と、免疫グロブリン・スーパー遺伝子ファミリーとの相同性」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1987年2月;第84巻(4) :920〜924ページ。
24.Titan Pharmaceuticals, I.(2002年)、“http://www.titanpharm.com/press/CeaVac_PhaseIII_Results.html.”
25.Tsang, K.Y.他(1995年)、J. Natl. Cancer Inst. 第87巻(13):982〜990ページ。
26.Ueda, Y.他(2004年)、Int. J. Oncol. 第24巻(4):909〜917ページ。
27.Ullenhag, G.J.他(2004年)、Cancer Immunol. Immunother. 第53巻(4):331〜337ページ。
28.Ullenhag, G.J.他(2004年)、Clin. Cancer Res. 第10巻(10):3273〜3281ページ。
29.Ullenhag, G.J.他(2002年)、Cancer Res. 第62巻(5):1364〜1369ページ。
30.Wahren, B.とU. Harmenberg(1991年)、Scand. J. Clin. Lab. Invest. Suppl. 第206巻:21〜27ページ。
31.von Mehren, M.他(2001年)、Clin. Cancer Res. 第7巻(5):1181〜1191ページ。
32.von Mehren, M.他(2000年)、Clin. Cancer Res. 第6巻(6):2219〜2228ページ。
33.Zimmermann W.、Ortlieb B.、Friedrich R.、von Kleist S. 、「ヒト癌胎児性抗原をコードしているcDNAクローンの同定とキャラクテリゼーションにより、高度に保存されている繰り返し構造が明らかになる」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1987年5月;第84巻(9):2960〜2964ページ。
34.アメリカ合衆国特許第7,279,464号、「CEAとCD40リガンドをコードするDNAワクチンとその利用法」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
上記のことに照らすと、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、そのポリヌクレオチド・ワクチンを投与するのにかかる時間が3.5秒未満である方法および装置が提供されると望ましかろう。
【0034】
それに加え、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、複数のPulseAgile電気波形を哺乳動物の皮膚に印加し、印加されたその複数の電気波形に対して筋肉の収縮を1回しか引き起こさない方法および装置が提供されると望ましかろう。
【0035】
ポリヌクレオチド・ワクチンの投与が成功したと言うには、投与されたそのポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの証拠を提示せねばならない。さらに、成功したと言うには、投与されたそのポリヌクレオチドの遺伝子発現により、そのポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの結果として望ましいタンパク質が提供されることの証拠を提示せねばならない。
【0036】
例えばこれまで説明してきた従来技術では電気穿孔装置を利用することがよく知られているが、上に説明した従来技術は、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、以下に示す望ましい特徴の組み合わせ、すなわち(1)ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、そのポリヌクレオチド・ワクチンを投与するのにかかる時間が3.5秒未満である方法および装置を提供する;(2)複数のPulseAgile電気波形を哺乳動物の皮膚に印加し、印加されたその複数の電気波形に対して筋肉の収縮を1回しか引き起こさない;(3)投与されたポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの証拠を提示する;(4)ポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの結果として望ましいタンパク質が提供されることの証拠を提示する、の組み合わせを持つ方法と装置を教示も示唆もしていない。これらの望ましい特徴は、以下の説明から明らかになるように、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達するための本発明のユニークな方法と装置によって提供される。従来技術と比べた本発明の他の利点も明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明の1つの特徴によれば、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法は、
(a)ポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚の投与部位に投与するステップと、
(b)針電極を皮膚のその投与部位の近傍に適用するステップと、
(c)操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列を印加して電気穿孔によりポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚細胞の中に送達するステップを含んでいる。少なくとも3つの波形からなるパルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有する。
【0038】
操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列をこの明細書では“ファスト(FAST)PulseAgile電気波形”または“狭い間隔のPulseAgile電気波形”と呼ぶ。
【0039】
狭い間隔の電気波形は、数ミリ秒未満のパルス間隔を持つことが好ましい。
【0040】
本発明の方法の一実施態様では、ステップ(a)とステップ(b)を順番に実施する。例えばDNAワクチンを最初に皮膚に注入して水疱を形成する。次に、針電極を、皮膚の水疱がある位置に配置する。そのとき、“Derma Vax”システムを使用することができる。
【0041】
本発明の方法の別の一実施態様では、あらかじめポリヌクレオチド・ワクチンで被覆した電極を用いてステップ(a)とステップ(b)を同時に実施する。そのとき、“Easy Vax”システムを利用することができる。
【0042】
本発明の別の特徴によれば、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達するため、狭い間隔の電気波形の発生装置と、適用したポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚の中に入れるため皮膚に接触させることのできる電極とを含む装置が提供される。狭い間隔の電気波形の発生装置は、操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列を印加することができる。
【0043】
少なくとも3つの波形からなるパルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有する。電極は、狭い間隔の電気波形の発生装置に接続される。
【0044】
本発明の装置の一実施態様では、電極を皮膚に接触させる前にポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚に適用する。これは、皮下注射針を用いて実現できる。
【0045】
本発明の装置の別の一実施態様では、ポリヌクレオチド・ワクチンはあらかじめ電極に被覆されていて、電極を皮膚に接触させるのと同時に皮膚に適用される。
【0046】
ファストPulseAgile電気波形または狭い間隔のPulseAgile電気波形を提供するとともに、哺乳動物の皮膚に適用するのに適した任意の電極が用いられている装置は、サイト・パルス社(810 クロムウェル・パーク・ドライヴ、スイートT、グレン・バーニー、メリーランド州 21061)が製造していて、“Derma Vax”という名称で知られている。
【0047】
この点に関し、「Derma Vax(登録商標)臨床評価用皮内システム」という表題の2ページからなるデータ・シートが、サイト・パルス社によってインターネット上に以下のアドレスで開示されている。
http://www.cytopulse.com/Datasheet%20Derma%20Vax.pdf.
【0048】
「Derma Vax(登録商標)臨床評価用皮内システム」という表題のこの2ページからなるデータ・シートは、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0049】
ファストPulseAgile電気波形または狭い間隔のPulseAgile電気波形を提供するとともに、哺乳動物の皮膚に適用するのに適したあらかじめ被覆した電極が用いられている装置もサイト・パルス社が製造していて、“Easy Vax”という名称で知られている。
【0050】
ファストPulseAgile電気波形または狭い間隔のPulseAgile電気波形を提供する装置もサイト・パルス社が製造していて、“CCEP-40波形発生装置”という名称で知られている。上述のように、“CCEP-40波形発生装置”の仕様は、「Derma Vax(登録商標)臨床評価用皮内システム」という表題の2ページからなるデータ・シートに提示されている。
【0051】
本発明の別の特徴によれば、CEAファミリーの抗原からの抗原を発現するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法が提供される。
【0052】
本発明の別の特徴によれば、Igと;TCRと;クラスIとクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と;胸腺細胞とT細胞(Thy-1)の1ドメイン・タンパク質と;ミエリン・タンパク質P0と;β2-ミクログロブリンと;2ドメイン・タンパク質であるスポンジ受容体チロシン・キナーゼ(RTK)、スポンジ接着タンパク質(SAP)、ショウジョウバエのチロシン・キナーゼ受容体(DTKR)、アフリカツメガエルの皮質性胸腺細胞受容体(CTX)、ヒトの皮質性胸腺細胞受容体(CTH)などと;アドヘシン、共受容体、ドメイン数がさまざまなIg受容体からなる大きなグループとからなるグループの中から選択した免疫グロブリン・スーパーファミリーの抗原を発現するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法が提供される。
【0053】
本発明の別の特徴によれば、ヒトPSA(前立腺特異抗原)または異種PSAからの抗原を発現するポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法が提供される。
【0054】
本発明の別の特徴によれば、ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法として、
(a)ポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚の投与部位に投与するステップと、
(b)針電極を皮膚のその投与部位の近傍に適用するステップと、
(c)操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列を印加して電気穿孔によりポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚細胞の中に送達するステップを含んでいて、
少なくとも3つの波形からなるパルス列が、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有する方法が提供される。
【0055】
本発明の別の特徴によれば、CEAを発現するがん(例えば結腸直腸がん、胃がん、肺腺癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、胆嚢がん、膀胱がん、子宮内膜腺癌、小細胞肺がん)に対するポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法が提供される。
【0056】
上記の簡単な説明では、あとに続く詳細な説明をよりよく理解できるようにするため、そして従来技術に対する本発明の寄与をよりよく評価できるようにするため、本発明のより重要な特徴をどちらかと言えば広く提示してある。もちろん本発明には追加の特徴が存在しており、それらはこれから説明されることになるし、添付の請求項の主題にもなるであろう。
【0057】
この点に関し、本発明の原理を実現したいくつかの例を以下により詳しく説明する前に、本発明が、応用される際に、以下の説明や図面に示した要素の構成の詳細や配置には限定されないことを理解されたい。本発明には他の実施態様が可能であり、さまざまな方法で実施、実行できる。また、この明細書で用いる表現や用語は説明を目的としたものであり、限定的であると見なしてはならないことを理解されたい。
【0058】
そのため当業者であれば、本発明のいくつかの目的を実現するための他の構造、方法、システムを設計するための基礎として、この明細書のもとになる考え方を容易に利用できることがわかるであろう。したがって、本発明の精神と範囲を逸脱しないのであれば、そのような等価な構造が請求項に含まれると見なすことは重要である。
【0059】
したがって本発明の1つの目的は、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置を提供することであり、本発明により、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、そのポリヌクレオチド・ワクチンを投与するのにかかる時間が3.5秒未満である方法および装置が提供される。
【0060】
本発明のさらに別の目的は、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置として、複数のPulseAgile電気波形を哺乳動物の皮膚に印加し、印加されたその複数の電気波形に対して筋肉の収縮を1回しか引き起こさない方法および装置を提供することである。
【0061】
本発明のさらに別の目的は、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置として、投与されたそのポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの証拠を提示する方法および装置を提供することである。
【0062】
本発明のさらに別の目的は、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置として、ポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功した結果として望むタンパク質が提供されることの証拠を提示する方法および装置を提供することである。
【0063】
本発明のさらに別の目的は、癌胎児性抗原(CEA)と、29種類の遺伝子(そのうちの18種類が発現し、7種類はCEAサブグループに属し、11種類は妊娠特異的糖タンパク質サブグループに属する)を含むヒトCEAファミリーとを含む抗原として発現するポリヌクレオチドを含むことのできるポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法と装置を提供することである。
【0064】
本発明のさらに別の目的は、免疫グロブリン・スーパーファミリーの抗原(例えば、Igと;TCRと;クラスIとクラスIIの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と;胸腺細胞とT細胞(Thy-1)の1ドメイン・タンパク質と;ミエリン・タンパク質P0と;β2-ミクログロブリンと;2ドメイン・タンパク質であるスポンジ受容体チロシン・キナーゼ(RTK)、スポンジ接着タンパク質(SAP)、ショウジョウバエのチロシン・キナーゼ受容体(DTKR)、アフリカツメガエルの皮質性胸腺細胞受容体(CTX)、ヒトの皮質性胸腺細胞受容体(CTH)などと;アドヘシン、共受容体、ドメイン数がさまざまなIg受容体からなる大きなグループ)を含む抗原として発現するポリヌクレオチドを含むことのできるポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法と装置を提供することである。
【0065】
本発明のさらに別の目的は、CEAを発現するがん(例えば結腸直腸がん、胃がん、肺腺癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、胆嚢がん、膀胱がん、子宮内膜腺癌、小細胞肺がん)に対するポリヌクレオチド・ワクチンを送達する方法と装置を提供することである。
【0066】
本発明のこれらの目的とさらに別の目的に加えて本発明を特徴づける新規なさまざまな特徴は、添付されていて本開示内容の一部を形成する請求項に特に指摘してある。本発明、その操作上の利点、その利用によって得られる具体的な目的をよりよく理解するには、本発明の好ましい実施態様が示されている添付の図面と説明を参照せねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本発明に関する以下の詳細な説明を検討した後、本発明はよりよく理解されるであろうし、上記の目的と上に記載した以外の目的はより明らかになろう。この説明では、添付の図面を参照する。
【0068】
【図1】“Derma Vax”装置を用いて電気穿孔によってルシフェラーゼ・プラスミドを送達するためにファストPulseAgile電気波形を印加した場合とスローPulseAgile電気波形を印加した場合に得られたルシフェラーゼの発現を比較して示したグラフである。
【図2】デング1DNAワクチンを用いたワクチン接種に対するT細胞の応答を、“Derma Vax”装置を用いて電気穿孔でこのワクチンを送達するためにファストPulseAgile電気波形を印加した場合とスローPulseAgile電気波形を印加した場合で比較して示したグラフである。
【図3】“Derma Vax”装置を用いて電気穿孔によってルシフェラーゼ・プラスミドを送達するためにファストPulseAgile電気波形を印加した場合とスローPulseAgile電気波形を印加した場合に得られたルシフェラーゼの発現を比較して示したグラフである。
【図4】2×tet-wtCEAで免疫化した後のCEA特異的T細胞応答を横並びで示した2つのグラフである。皮内針を用いた注射+/-ファストPulseAgileでのDerma Vax電気穿孔によってBALB/cマウス(1つの群につきn=7)に40μgのtet-wtCEA DNAを4週間の間隔をあけて2回投与した。CD8またはCD4で制限したCEAペプチドに対するIFN-γELISpotの読み出し記録。
【図5】tet-wtCEA DNAにDerma Vax(登録商標)でファストPulseAgile(TM)を用いた電気穿孔を組み合わせて1回だけ免疫化した後のCEAに対する免疫応答の誘導を示している。より詳細には、図5には、tet-wtCEA DNA+電気穿孔を利用して1回だけ免疫化した後のCD4 T細胞とCD8 T細胞の応答が示されている。免疫化の2週間後、CD8またはCD4で制限したCEAペプチドを用いてCEA特異的免疫応答をIFN-γELISpotによって分析した。
【図6】tet-wtCEA DNAにDerma Vax(登録商標)でファストPulseAgile(TM)を用いた電気穿孔を組み合わせて1回だけ免疫化した後のCEAに対する免疫応答の誘導を示している。より詳細には、図6には、tet-wtCEA DNA+電気穿孔を利用して1回だけ免疫化した後のCEA特異的抗体の応答が示されている。DNA免疫化の2週間後、ELISAを利用してCEA特異的抗体の応答を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0069】
ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法と装置を提示し、図面を参照してその方法と装置を以下に説明する。
【0070】
“Derma Vax”と“CCEP-40波形発生装置”の仕様は以下の通りである。
Derma Vaxの仕様
動作
モード1 - 訓練された健康な熟練者によるワクチン送達
タッチ・スクリーン
パラメータ入力のための開放スクリーン
患者ID入力
ワクチンID入力
電極ID入力
ワクチン接種スクリーン
SKIN - 1秒ごとに皮膚の抵抗値を測定して表示
READY - 高電圧電源オン
START - パルスの供給開始
DONE - ワクチン接種完了
モード2 - 訓練されたIT専門家による設定
パルスのパラメータ
データ・ファイルのダウンロード
送達用電極
送達するワクチンの体積 2個の水疱×25μlずつ IDA-4-6
2個の水疱×25μlずつ IDA-6-6
送達する標的 皮膚/真皮
電極
ハンドル アルコールで清掃して再利用可能
先端部 殺菌
個別包装
使い捨て
IDA-4-4 IDA-4-6 IDA-6-6
列の間隔 4mm 4mm 6mm
針の数/列 4 6 6
針の間隔 1.5mm 1.5mm 1.5mm
針の直径 0.3mm 0.3mm 0.3mm
針の長さ 2mm 3mm 3mm
V/d最大値 2500V/cm 2500V/cm 1667V/cm
【0071】
CCEP-40波形発生装置
パルシング
皮膚抵抗パルシング 1秒ごとに5ボルトで5マイクロ秒
パルス・プロトコルのパラメータ
1つのグループ内のパラメータ
パルス幅 50マイクロ秒〜1ミリ秒 50〜1000ボルト
50マイクロ秒〜10ミリ秒 50〜300ボルト
パルス電流トリップ 26アンペア
負荷の範囲 15〜1500オーム
パルスの数 1〜10
最大デューティ・サイクル 50%
間隔 200マイクロ秒〜1秒(1つのパルスの開始から次のパルスの開始まで)
グループの数 3
【0072】
パルス測定
内部ディジタイザ
レベル 12ビット
サンプル パルス幅/8 最小100マイクロ秒
【0073】
内部に記憶させるデータと外部USBメモリに記憶させるデータ
データのタイプ
生データ:DV<Date>.xml
Logデータ:DV<Date>.txt
CSVデータ:DV<Date>.csv
あらゆるデータは自動的に内部メモリに記憶され、外部USBメモリにダウンロードすることができる。
内部フラッシュ・メモリに記憶されていてそのメモリから回収できる最大データ・ログは20,000未満。
【0074】
前面パネル
コンピュータ
オペレーティング・システム ウインドウズ(登録商標)モバイル6.0
インターフェイス タッチ・スクリーン
配電線/コンセントのスイッチ、照明付き
緊急停止ボタン(準備状態にするためのリセット用コンピュータ)
タッチ・スクリーン
USBポート 2
電極コネクタ Fiscerシリーズ4032
【0075】
背面パネル
電源入力 IEC 320
イーサネット(登録商標) RJ45
【0076】
電気系と機械系
ハンドル付きCCEP-40Aキャビネット 幅32mm×高さ20mm×長さ40mm
幅12.6インチ×高さ7.9インチ×長さ15.7インチ
重量 25ポンド、11.3kg
動作温度 10〜40℃
交流電圧 100〜250VAC
ヒューズ 5A slo blo、5mm×20mm
予備電源 電源が落ちてから5分以内
【0077】
ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達するため本発明の装置を用いて本発明の方法を実施する実験を以下に記載する。
【0078】
実験1
【0079】
目的と意図
【0080】
この実験の目的は、ファストPulseAgile電気波形(サイト・パルス社の“Derma Vax”システムを用いる)とスローPulseAgile電気波形(サイト・パルス社のPA-4000システムを用いる)を比較することである。新しいDerma Vaxシステムは、PA-4000システムよりも素早くパルスを供給することができる。
【0081】
背景
【0082】
Anna-Karin Roos博士は、マウスの皮膚でルシフェラーゼの発現をうまく誘導する少なくとも2種類の波形を公開した。使用されたシステムはPA-4000であり、遅いPulseAgile電気波形が用いられた。“CCEP-40波形発生装置”を用いるDerma Vaxシステムに新しい能力が組み込まれた。1つの大きな違いは、Derma Vaxシステムがパルスをより短いパルス間隔で供給できることである。すなわち“Derma Vax”システムでは、100ミリ秒未満のパルス間隔にすることができる。この実験では、ファストPulseAgile電気波形を用いて生体内でのルシフェラーゼの発現に対する効果を評価する。
【0083】
アプローチ
【0084】
使用したプラスミド:アルデヴェロン社からの5mg/mlのgWizLuciferaseを殺菌PBSで0.5mg/mlに希釈した。
システム:Derma Vax #F2LQ2608851
電極:皮内アレイ(ギャップ4mm、1列に6本の針、2列)平行な列電極。
注入:呼吸用の穴を設けた50mlの円錐形チューブを用いてマウスを拘束した。マウスの頭を最初にチューブの中に挿入した。尾を私の左人差し指にまとわりつかせた。小さなハサミを用いて尾の付け根のわずかな体毛を除去した。ツベルクリン用注射器で27ゲージの0.5インチの針を用いて20μlを尾の付け根で仙骨の右側に皮内注射した。その部位にSharpeeペンで印を付けた。針の列を、電極のギャップが左から右に向くようにして注射部位の周囲に挿入した。したがって針の列は頭骨と尾の方向に揃っていた。選択した電気穿孔プロトコルを開始した後、針を除去した。このプロセスを仙骨の左側で繰り返した。
【0085】
【表1】

【0086】
マウスを元のケージに戻した。
【0087】
18〜24時間後、CO2を吸引させてマウスを安楽死させた。6mmのパンチ・バイオプシーを利用して2つの部位それぞれから組織を切除した。ハサミを用いて皮下組織を取り出し、皮下組織付きの皮膚を1mlの溶解緩衝液に添加した。このサンプルをアッセイまで氷の上で保管した。
【0088】
モデルIKA組織ホモジェナイザを用いて組織を均一化した。1mlのホモジェネートからの50μlのサンプルを白いアッセイ用プレートに添加した。3倍希釈系列を利用して既知量のルシフェラーゼを溶解緩衝液で希釈することにより、基準を作製した。ルシフェラーゼ・アッセイ・キットの試薬Aを各ウエルに50μl添加した。プレートを96ウエルの光度計に取り付けた。試薬Bを50μl添加した後、得られる光を1秒間測定した。
【0089】
データをエクセルのスプレッドシートに送ってデータ分析した。
【0090】
結果のグラフ表示に関して図面の中の図1を参照する。遺伝子の発現は、速い電気波形プロトコルと遅い電気波形プロトコルで統計的に同等である。
【0091】
結果
【0092】
【表2】

【0093】
パルス間隔が100ミリ秒未満のファストPulseAgile電気波形を用いてポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚細胞に電気穿孔で入れられること、そして遺伝子の発現が成功することは、驚くべき結果かつ予想外の結果である。
【0094】
パルス間隔が数ミリ秒のファストPulseAgile電気波形を用いてポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚細胞に電気穿孔で入れられること、そして遺伝子の発現が成功することは、より一層驚くべき結果かつより一層予想外の結果である。通常なら、パルス間隔がわずか数ミリ秒という時定数だと、電気穿孔が成功するには短すぎると予想するであろう。
【0095】
実験2
【0096】
目的と意図
【0097】
この実験の目的は、ファストPulseAgile電気波形(サイト・パルス社の“Derma Vax”システムを用いる)を用いた場合とスローPulseAgile電気波形(サイト・パルス社のPA-4000システムを用いる)を用いた場合で、DNA免疫化によって誘導されるT細胞の応答を比較することである。新しいDerma Vaxシステムは、PA-4000システムよりも素早くパルスを供給することができる。より詳細には、この実験の目的は、PulseAgile Derma Vaxによる送達を利用してprM-EとNS1-NS3を発現するデング1プラスミドでDNA免疫化することによって誘導されるT細胞の応答を比較することである。
【0098】
背景
【0099】
Anna-Karin Roos博士は、マウスの皮膚でルシフェラーゼの発現をうまく誘導する少なくとも2種類の波形を公開した。使用されたシステムはPA-4000であり、遅いPulseAgile電気波形が用いられた。“CCEP-40波形発生装置”を用いるDerma Vaxシステムに新しい能力が組み込まれた。1つの大きな違いは、Derma Vaxシステムがパルスをより短いパルス間隔で供給できることである。すなわち“Derma Vax”システムでは、100ミリ秒未満のパルス間隔にすることができる。この実験では、ファストPulseAgile電気波形を用いて生体内でのルシフェラーゼの発現に対する効果を評価する。
【0100】
アプローチ
【0101】
使用したプラスミド:5mg/mlのデング1 prM-Eとデング1 NS1-NS3をそれぞれ同じ殺菌PBSで0.5mg/mlに希釈した。
システム:Derma Vax #07-0215DV
電極:皮内アレイ(ギャップ4mm、1行に6本の針、2行)平行な行電極。
注入:呼吸用の穴を設けた50mlの円錐形チューブを用いてマウスを拘束した。マウスの頭を最初にチューブの中に挿入した。尾を私の左人差し指にまとわりつかせた。小さなハサミを用いて尾の付け根のわずかな体毛を除去した。ツベルクリン用注射器で27ゲージの0.5インチの針を用いて20μlを尾の付け根で仙骨の右側に皮内注射した。針の列を、電極のギャップが左から右に向くようにして注射部位の周囲に挿入した。したがって針の列は頭骨と尾の方向に揃っていた。選択した電気穿孔プロトコルを開始した後、針を除去した。このプロセスを仙骨の左側で繰り返した。
【0102】
【表3】

【0103】
マウスを元のケージに戻した。
【0104】
免疫化の2週間後、CO2を吸引させてマウスを安楽死させ、脾臓を回収して細胞内サイトカイン・アッセイを実施した。
【0105】
結果
【0106】
以下に示す結果は、インターフェロンγ陽性であるCD8陽性細胞の割合である。
【0107】
結果は、免疫化していないマウスからのバックグラウンドを差し引いて示してある。
【0108】
【表4】

【0109】
結果のグラフ表示に関して図面の中の図2を参照する。ここには、スチューデントのT検定を実施することにより、ファスト電気波形のプロトコルとスロー電気波形のプロトコルの間で統計的な有意差がないという試験結果が示されている。ここでは、速い電気波形のプロトコルと遅い電気波形のプロトコルの間でT細胞の促進は統計的に同等である。
【0110】
結論
【0111】
“Derma Vax”システムでファストPulseAgile電気波形を用いた生体内電気穿孔によって誘導されるT細胞の応答は、“Derma Vax”システムでスローPulseAgile電気波形を用いた生体内電気穿孔によって誘導される応答と同等である。
【0112】
表I
【0113】
知覚可能な筋肉の収縮は、ファストPulseAgile電気波形を用いた電気穿孔により、スローPulseAgile電気波形を用いた場合よりも減少する。
【0114】
【表5】

【0115】
明らかに、ファストPulseAgile電気波形を用いると(スローPulseAgile電気波形と比べて)、供給時間は3.5秒よりもはるかに短く、パルスを10個供給する場合でさえ、筋肉の収縮は1回しか知覚されない。
【0116】
図3では、DNA(DNAはポリヌクレオチドである)を以下のようにして送達した。
【0117】
4%イソフラノン(バクスター・メディカル社、キスタ、スウェーデン国)を用いてマウスを麻酔し、免疫化の間を通じてマスクの中で2〜2.5%イソフラノンの状態を維持した。29Gのインスリン・グレードの注射器(Micro-Fine U-100、BDコンシューマ・ヘルスケア社、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を用い、20μgのDNAを含むPBSを、尾の付け根付近で脇腹のそれぞれの側に皮内注射した。
【0118】
その後、注射して隆起した皮膚領域の上に針アレイ電極を置き、電圧を印加した(2パルス、1125V/cm、50マイクロ秒+8パルス、275V/cm、10ミリ秒)。パルス間隔を変えて速いPulseAgileプロトコルと遅いPulseAgileプロトコルにした。
【0119】
使用した針アレイ電極は、サイト・パルス皮内アレイ(4本の針、4mmのギャップ、2列)(サイト・パルス・サイエンシーズ社、グレン・バーニー、メリーランド州)であった。Derma Vax電気穿孔システム(サイト・パルス・サイエンシーズ社)を利用して電気穿孔を実施した。
【0120】
実験3
【0121】
ワクチン用プラスミドの説明
【0122】
A.pKCMVtet-wtCEA
【0123】
ベクターの枠組;pKCMVは、多数のクローニング部位を含む3555bpのプラスミドである。このプラスミドは、カナマイシンに対する耐性を大腸菌に付与する。
【0124】
プロモータ;ヒト・サイトメガロウイルスからの主要極初期プロモータ(MIE)は、真核生物系で頻繁に用いられる強力な真核生物プロモータである(登録番号K03104)。
【0125】
遺伝子;改変したヒト癌胎児性抗原(CEA)(登録番号M17303)。破傷風トキソイド(tet)からのT-ヘルパー・エピトープ(51bp)を5'シグナル配列とCEA配列の間にクローニングした。tet+wtCEAの合計サイズは2160bpである。
【0126】
終結配列;ヒト・パピローマウイルス16型(登録番号K02718)からのポリアデニル化配列。この配列は、真核生物発現系で頻繁に用いられる。
【0127】
抗生物質抵抗性遺伝子;アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼII(登録番号E02455)であり、Tn5トランスポゾンからカナマイシン耐性を付与する。
【0128】
ヌクレオチド位置 機能
1〜746 改変したMIEプロモータ(K03104からのヌクレオチド67〜812)
747〜802 ポリリンカー
803〜2962 tet-wtCEA
2963〜3026 HPV 16型のポリ-A配列
3027〜5717 pKCMV配列
3331〜4224 大腸菌複製起点
4318〜5111 アミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼII(APH)
【0129】
B.プラスミド遺伝子挿入体の改変
【0130】
プラスミド遺伝子挿入体のさらなる改変には以下の操作が含まれる。
【0131】
B1.エピトープ提示を促進させるためのアミノ酸の変更
【0132】
CEAタンパク質産物のグルコシル化を減らすためのアミノ酸の変更。
【0133】
CEA遺伝子の断片を含めるための遺伝子挿入体の改変(例えばA3領域とB3領域)。
【0134】
B2.CEACAMタンパク質ファミリーの異種メンバーであるCEACAM1(CD66a、BGP)、CEACAM6(CD66c、NCA)、非ヒト起源の相同遺伝子を含めることによる、免疫性の幅を増大させるための変更
【0135】
B3.B1とB2の組み合わせ
【0136】
DNAの注入と生体内電気穿孔
【0137】
29Gのインスリン・グレードの注射器(Micro-Fine U-100、BDコンシューマ・ヘルスケア社、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を用い、10〜40μgのDNA/20μlのPBSを、マウスの尾の付け根に近い部分で背中の下側に皮内注射した。DNAを皮内投与した直後、注射して隆起した皮膚領域の上に針アレイ電極を置き、電圧を印加した(2パルス、1125V/cm、50マイクロ秒+8パルス、275V/cm、10ミリ秒)。パルスの数、振幅、長さは常に同じにし、パルスとパルスの間隔だけを変えた(図1Aに記載)。針アレイ電極は、2mmのピンが4本または6本からなる2つの平行な列(1.5×4mmのギャップ)で構成した(サイト・パルス・サイエンシーズ社、グレン・バーニー、メリーランド州)。PA-4000SというAdvanced PulseAgile(登録商標)矩形波電気穿孔システムとソフトウエア、またはDerma Vax(登録商標)臨床DNAワクチン送達システム(両方ともサイト・パルス・サイエンシーズ社)を用いて電気穿孔を実行した。
【0138】
【表6】

【0139】
結果
【0140】
結論:CEA DNAワクチンをDerma Vax(登録商標)で速いPulseAgile(登録商標)を用いた電気穿孔と組み合わせて皮内投与すると、CEAに対する免疫応答が増大する。
【0141】
DNAをワクチン接種した後のCEA特異的免疫応答の誘導に対するDerma Vax(登録商標)による電気穿孔の効果を調べるため、皮内注射にDerma Vax(登録商標)でファストPulseAgile(登録商標)を用いた電気穿孔を組み合わせてBALB/cマウスにtet-wtCEA DNAを4週間の間隔で2回投与して免疫化した(対照のマウスにはtet-wtCEA DNAを皮内注射したが、電気穿孔はしなかった)。最後に免疫化してから10日後、標準的なIFN-γELISpotによってCEA特異的T細胞応答を分析した。図4からわかるように、CD8+T細胞とCD4+T細胞の応答は両方とも、電気穿孔の後に著しく増大した。それとは逆に、tet-wtCEA DNAを皮内注射したが、電気穿孔はしなかったマウスでは、CEA特異的免疫応答を検出できなかった。
【0142】
少し別の言い方をすると、図面の説明に関して上述したように、図4は、2×tet-wtCEAで免疫化した後のCEA特異的T細胞応答を横並びで示した2つのグラフである。皮内針を用いた注射+/-ファストPulseAgileでのDerma Vax電気穿孔によってBALB/cマウス(1つの群につきn=7)に40μgのtet-wtCEA DNAを4週間の間隔をあけて2回投与した。CD8またはCD4で制限したCEAペプチドに対するIFN-γELISpotの読み出し記録。
【0143】
追試実験では、BALB/cマウスにtet-wtCEA DNAで1回だけ免疫化してから速いPulseAgile電気穿孔のプロトコルを利用して電気穿孔を実施した後にCEAに対する免疫応答を評価した。免疫化の2週間後、マウスの脾臓細胞と血清を回収してCEA特異的免疫応答を分析した。図5からわかるように、tet-wtCEA DNAを用いた1回だけの免疫化に電気穿孔を組み合わせると、CD8+T細胞(500スポット超/106個の細胞)とCD4+T細胞の大きな応答が誘導された。さらに、ELISAで血清を分析すると、CEAに対する抗体の応答を刺激するのに免疫化は1回で十分であることが明らかになった(図6)。
【0144】
少し別の言い方をすると、図面の説明に関して上述したように、図5は、tet-wtCEA DNAにDerma Vax(登録商標)でファストPulseAgile(TM)を用いた電気穿孔を組み合わせて1回だけ免疫化した後のCEAに対する免疫応答の誘導を示している。より詳細には、図5には、tet-wtCEA DNA+電気穿孔を利用して1回だけ免疫化した後のCD4 T細胞とCD8 T細胞の応答が示されている。免疫化の2週間後、CD8またはCD4で制限したCEAペプチドを用いてCEA特異的免疫応答をIFN-γELISpotによって分析した。
【0145】
また、少し別の言い方をすると、図面の説明に関して上述したように、図6は、tet-wtCEA DNAにDerma Vax(登録商標)でファストPulseAgile(TM)を用いた電気穿孔を組み合わせて1回だけ免疫化した後のCEAに対する免疫応答の誘導を示している。より詳細には、図6には、tet-wtCEA DNA+電気穿孔を利用して1回だけ免疫化した後のCEA特異的抗体の応答が示されている。DNA免疫化の2週間後、ELISAを利用してCEA特異的抗体の応答を分析した。
【0146】
上記のことに照らすと、本発明が、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、そのポリヌクレオチド・ワクチンの投与にかかる時間が3.5秒未満であることをうまく利用できる方法および装置を提供することにより、提示したすべての目的を実現していることは明らかである。本発明により、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法および装置として、複数のPulseAgile電気波形を哺乳動物の皮膚に印加し、印加されたその複数の電気波形に対して筋肉の収縮を1回しか引き起こさない方法および装置が提供される。本発明により、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置として、投与されたそのポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功したことの証拠を提示する方法および装置が提供される。本発明により、ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する新規な改善された方法および装置として、ポリヌクレオチド・ワクチンの遺伝子発現が成功した結果として望むタンパク質が提供されることの証拠を提示する方法および装置が提供される。
【0147】
本発明の利用法と操作法に関しては上記の開示内容から明らかであるため、利用法と操作法についてこれ以上説明する必要はない。
【0148】
したがって本発明を図面に示し、現在のところ本発明の最も実用的で好ましい実施態様と思われるものについて具体的かつ詳細に十分に記述したが、当業者には、この明細書に示した原理と考え方を逸脱することなく、本発明に対する多くの改変が可能であることは明らかであろう。その改変には、サイズ、材料、形状、形態、機能、操作法、組み立て方、利用法などのバリエーションが含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチド・ワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法であって、
(a)ポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚の投与部位に投与するステップと、
(b)針電極を皮膚のその投与部位の近傍に適用するステップと、
(c)操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列を印加して電気穿孔により前記ポリヌクレオチド・ワクチンを皮膚細胞の中に送達するステップを含んでいて、
少なくとも3つの波形からなるパルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有し、
前記ポリヌクレオチド・ワクチンは、免疫グロブリン・スーパーファミリーの抗原からなるグループの中から選択した抗原を発現するポリヌクレオチドを含んでいる方法。
【請求項2】
ステップ(a)とステップ(b)を順番に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
あらかじめポリヌクレオチド・ワクチンで被覆した電極を用いてステップ(a)とステップ(b)を同時に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチド・ワクチンが、CEAファミリーの抗原からなるグループの中から選択した抗原を発現するポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド・ワクチンが、Igと;TCRと;クラスIとクラスIIの主要組織適合複合体(MHC)分子と;胸腺細胞とT細胞(Thy-1)の1ドメイン・タンパク質と;ミエリン・タンパク質P0と;β2-ミクログロブリンと;2ドメイン・タンパク質であるスポンジ受容体チロシン・キナーゼ(RTK)、スポンジ接着タンパク質(SAP)、ショウジョウバエのチロシン・キナーゼ受容体(DTKR)、アフリカツメガエルの皮質性胸腺細胞受容体(CTX)、ヒトの皮質性胸腺細胞受容体(CTH)などと;アドヘシン、共受容体、ドメイン数がさまざまなIg受容体からなる大きなグループとからなるグループの中から選択した免疫グロブリン・スーパーファミリーの抗原を発現するポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリヌクレオチドがんワクチンを哺乳動物の皮膚に送達する方法であって、
(a)ポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚の投与部位に投与するステップと、
(b)針電極を皮膚のその投与部位の近傍に適用するステップと、
(c)操作者が制御する独立にプログラムした少なくとも3つの単発の狭い間隔(パルス間隔が100ミリ秒未満)の電気波形からなるパルス列を印加して電気穿孔により前記ポリヌクレオチドがんワクチンを皮膚細胞の中に送達するステップを含んでいて、
少なくとも3つの波形からなるパルス列は、以下に示す特徴、すなわち(1)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルスの振幅が互いに異なっている;(2)少なくとも3つのパルスのうちの少なくとも2つは、パルス幅が互いに異なっている;(3)少なくとも3つのパルスのうちの最初の2つのセットに関する第1のパルス間隔は、その少なくとも3つのパルスのうちの第2の2つのセットに関する第2のパルス間隔とは異なっている、のうちの1つ、または2つ、または3つを有し、
前記ポリヌクレオチドがんワクチンは、CEAを発現するがん、例えば結腸直腸がん、胃がん、肺腺癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、胆嚢がん、膀胱がん、子宮内膜腺癌、小細胞肺がんに対するワクチンである方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521265(P2012−521265A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502021(P2012−502021)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/000908
【国際公開番号】WO2010/110910
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511005413)セレクティス ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】