ポリヌクレオチド剤を含む細胞標的化ナノ粒子およびその使用
標的細胞にポリヌクレオチドを送達するための粒子を生成する方法が開示される。該方法は、(a)ポリヌクレオチドを、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、カチオン性分子は静電的相互作用によりポリヌクレオチドを凝縮して複合体を生成し、カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと;(b)約4.5以下のpHで、複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するための粒子を生成するステップとを含む。該粒子および同粒子を含む組成物の使用も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態で、ポリヌクレオチド剤を含む細胞標的化ナノ粒子およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大半のがんは均一ではなく、化学/放射線療法に比較的耐性の細胞の亜集団を含む。これらの細胞は、治療によって排除することができず、がん再発の原因となり得る。1つの有力な理論は、腫瘍は、正常な組織幹細胞と特性を共有する、がん幹細胞または腫瘍開始細胞(T−IC)と呼ばれる、腫瘍内のこのような珍しい薬剤耐性細胞により開始されるというものである。これらの細胞は自己再生し、試験管内および生体内の両方で無限に継代培養することができ、複数の細胞系統に分化することができる。重要なことに、これらは免疫不全マウス中の腫瘍細胞のバルクよりもはるかに悪性であり、より少ない細胞で腫瘍を形成し、この腫瘍はしばしばより転移性である。
【0003】
全てのT−ICの1つの共通の特徴は、CD44の発現が高いことであり、(CD44high)と呼ばれる。いくつかの他のマーカー(CD133、CD24lowまたはCD24+、CD166およびEpCAM)を有するまたは有さないCD44highは、血液および固形腫瘍、その中でも乳房腫瘍、膵腫瘍、白血病、脳腫瘍およびメラノーマ中に見られる。
【0004】
大半のがん幹細胞は、比較的薬剤耐性で、腫瘍細胞のバルクよりも悪性である。そのため、異なる種類のがん幹細胞をうまく治療するために、この亜集団に対処する治療を開発することが不可避である。
【0005】
RNA干渉(RNAi)が哺乳類で示されたのはつい最近であるが、ヒト治療にRNAiを利用する見通しは急速に発展してきた。黄斑変性および呼吸器合胞体ウイルス感染症を治療するためのsiRNAを使用した第1相および第2相臨床試験が促進されてきている。
【0006】
しかしながら、これらの有望な治療の多くは、siRNAを異種移植腫瘍中に局所的に注入することにより行われた。がん治療にRNAiを利用する最も大きな障害は、原発腫瘍だけでなく、潜在性転移および散在性疾患における遺伝子発現もサイレンシングするためにsiRNAを全身送達することである。
【0007】
全身的に白血球を標的化する粒子が開発されてきた。このような粒子は、siRNAを、細胞標的化部分(抗体断片または内部移行する白血球インテグリンに対する細胞表面受容体リガンド)およびプロタミンなどのRNA結合ペプチドから構成される融合タンパク質と混合することにより形成された[Peer等、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104、4095〜4100(2007)]。siRNA融合タンパク質ナノ粒子の静脈内注射は、肺造血細胞腫瘍を特異的に標的化し、抑制する。さらに、抗インテグリン抗体で修飾した脂質ナノ粒子が、siRNAを腸の炎症に関与する白血球に選択的に送達することができることが示された[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。このプラットフォームを使用して、粒子の表面を修飾する抗体を変えることにより、異なる細胞表面受容体を標的化することができる。しかしながら、これは、がん幹細胞を標的化する能力に対処することができない極めて複雑な戦略である。
【0008】
国際特許出願第WO2009/020270号およびJiang等[Biopolymers、第89巻、第7号、2008]は、ポリエチレンイミンおよびヒアルロン酸を含む組成物を使用した核酸の送達システムを教示している。この組成物は、4.5より上のpHで生成される。生成した粒子は、21nmの大きさで、3.6、13.2および24.9のゼータ電位を有していた。
【0009】
Taetz等[Oligonucleotides、第19巻、第2号、Epub Apr 2009]は、ヒアルロン酸に予め付着させたリポソームをsiRNAと反応させて、がんを治療するためのリポプレックスを作成することを教示している。リポプレックスの大きさは、100〜200nmであり、約−40mVのゼータ電位を有していた。
【0010】
Surace等[Molecular Pharmaceutics、第6巻、第4号、1062〜73頁]は、ヒアルロン酸に予め付着させたリポソームを使用して、プラスミドDNAと共にリポプレックスを形成することを教示している。リポプレックスは、負のゼータ電位を示し、平均直径は250〜300nmであった。
【0011】
Han Su−Eun等[Journal of Drug Targeting、第17巻、第2号、2009年2月]は、ポリエチレンイミンおよびヒアルロン酸を含む組成物を使用した核酸の送達システムを教示している。この組成物は、4.5より上のpHで生成される。生成した粒子は、45〜70mVのゼータ電位を有しており、直径が約185nmである。
【0012】
Herringson等[Journal of Controlled Release、第139巻、第3号、229〜238頁]は、siRNAの、中性ステルスリポソーム中へのカプセル化およびCD4リガンドによる生着を教示している。このリポソームは、243nmの平均直径、ならびに−11.5mVおよび−1.5mVのゼータ電位を有していた。
【0013】
Chono等[Journal of Controlled Release、第131巻、第1号、2008年10月6日、64〜69頁]は、siRNAを腫瘍へ全身送達するための、リポソーム、プロタミンおよびヒアルロン酸を含むナノ粒子製剤を教示している。
【0014】
追加の背景技術としては、遺伝子送達物質としての脂質化グリコサミノグリカンの粒子の不均一集団を教示している米国特許第7544374号および米国特許出願第20090155178号が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願第WO2009/020270号
【特許文献2】米国特許第7544374号
【特許文献3】米国特許出願第20090155178号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Peer等、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104、4095〜4100(2007)
【非特許文献2】Peer等、Science 319、627〜630(2008)
【非特許文献3】Jiang等、Biopolymers、第89巻、第7号、2008
【非特許文献4】Taetz等、Oligonucleotides、第19巻、第2号、Epub Apr 2009
【非特許文献5】Surace等、Molecular Pharmaceutics、第6巻、第4号、1062〜73頁
【非特許文献6】Han Su−Eun等、Journal of Drug Targeting、第17巻、第2号、2009年2月
【非特許文献7】Herringson等、Journal of Controlled Release、第139巻、第3号、229〜238頁
【非特許文献8】Chono等、Journal of Controlled Release、第131巻、第1号、2008年10月6日、64〜69頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、
(a)ポリヌクレオチドを、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、カチオン性分子は静電的相互作用によりポリヌクレオチドを凝縮して複合体を生成し、カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5以下のpHで、複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するための粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するための粒子を生成する方法が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、本発明の方法のいずれかに従って生成される粒子が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、複数の本発明の粒子を含む組成物が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物が提供され、粒子の集団の粒子の各々は、約−40mVのゼータ電位を含み、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物が提供され、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、本発明の方法に従って生成される粒子を、CD44を発現している標的細胞と接触させ、それにより標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御するステップを含む、標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御する方法が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、被験体に治療上有効量の本発明の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはDNAを含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはRNAを含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドは一本鎖である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドは二本鎖である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはRNAサイレンシング剤を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群から選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、siRNAまたはmiRNAを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によると、カチオン性分子は、カチオン性ポリペプチド、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤および合成ポリマーからなる群から選択される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によると、カチオン性脂質は、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)からなる群から選択される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、中性脂質をさらに含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、中性脂質は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、アニオン性リン脂質をさらに含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、アニオン性リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールからなる群から選択される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、コレステロールをさらに含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によると、合成ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)またはポリ−L−リジンを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、ポリペプチド標的化部分を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、抗体、抗体断片、アプタマーおよび受容体リガンドからなる群から選択される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、グリコサミノグリカンを含む。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によると、グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物からなる群から選択される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によると、グリコサミノグリカンは、HAを含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によると、本方法は、ステップ(b)の前にグリコサミノグリカンを活性化するステップをさらに含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によると、活性化は、酸性緩衝液中でグリコサミノグリカンをインキュベートすることにより行われる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分はHAを含み、ポリヌクレオチド剤はsiRNAまたはmiRNAを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によると、複合体は、ステップ(b)の前に押し出し成形されない。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、シリコン表面上で乾燥させると直径が約100nmである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、シリコン表面上で乾燥させると直径が約30nmである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、溶液中で直径が約30〜300nmである。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、形が丸い。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、約−40mVのゼータ電位を含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、帯電している。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、中性である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、ナノ粒子である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、HAを含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、抗体、抗体断片、受容体リガンドおよびアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つの追加の標的化部分をさらに含む。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、約6000個を超えるsiRNAまたはmiRNA分子を含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、実質的に均一である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によると、投与は、生体内で行われる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によると、投与は生体外で行われる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、生存率と関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0066】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての専門用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と類似のまたは同等のものを本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、代表的な方法および/または物質を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む、特許明細書が規制する。さらに、物質、方法および例は例示的なものに過ぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0067】
添付の図面および画像を参照して、単なる例として、本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載する。ここで、詳細に図面を具体的に参照して、示される事項は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることを強調する。この点について、図面を伴う記載は、本発明の実施形態をどのようにして実施することができるかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。図1A:酢酸緩衝液(AB)中、HAとDOTAPから作られた粒子の表面トポグラフィー。H−merトポグラフィーは、環境制御形走査電子顕微鏡法(E−SEM)によりイメージ化された。粒子は、シリコン表面上で乾燥させると、個別的な球状形状であり、直径が約100nmである。
【図1B】本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。図1B:DDW(再蒸留水)中、HAとDOTAPから作られた粒子は、不定構造を有し、個別的な形状を有さない。繊維のシートにより囲まれた核粒子が存在する。
【図2A】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2B】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2C】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2D】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2E】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2F】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図3】本発明の実施形態の粒子を使用した白血病幹細胞におけるCyD1の選択的ノックダウンを説明する棒グラフである。
【図4】本発明の実施形態の粒子によって送達される、発がん遺伝子に対するsiRNAの混合物を使用したがん幹細胞の根絶を説明する棒グラフである。
【図5】siRNAを封入する本発明の実施形態の粒子がインターフェロン応答を誘導しないことを説明する棒グラフである。
【図6】miRNAを封入する本発明の実施形態による粒子の画像である。
【図7】環境制御形走査電子顕微鏡(E−SEM)によりイメージ化された、本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。粒子は、シリコン表面上で乾燥させると、球状形状であり、直径が約100nmである。
【図8A】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8A−siRNA単独
【図8B】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8B−オリゴフェクトアミン(商標)
【図8C】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8C−本発明の実施形態による粒子。
【図9A】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図9B】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図9C】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図10】本発明の実施形態による粒子によって送達されるCyclin D1−siRNA(50nM)が、ヒト初代AML細胞で強力な遺伝子サイレンシングを誘導したことを説明する棒グラフである。
【図11】ヒト卵巣腺癌細胞系(NCI−ADR/RES)中のP−糖タンパク質(Pgp)発現の減少を示すフローサイトメトリー分析の結果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、そのいくつかの実施形態で、ポリヌクレオチド剤を含む細胞標的化ナノ粒子、同粒子を生成する方法、およびその使用に関する。
【0070】
少なくとも1つの本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明で示されるまたは実施例により例示される詳細への適用に必ずしも限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能である、または種々の方法で実施もしくは実行することが可能である。
【0071】
表面受容体CD44を高く発現している腫瘍開始細胞(T−IC)またはがん幹細胞は、がん再発の主な原因であると考えられており、非常に化学療法耐性および放射線耐性である。全ての種類のがん細胞(がん幹細胞を含む)を選択的に標的化することができる薬物(その中でも、siRNAまたはmiRNA模倣体などの新規クラスの阻害剤)を送達する戦略を開発する必要がある。本発明者等は、ナノ粒子(ヒアルマー(hyalumer)またはH−merとも呼ぶ)を生成することにより、CD44とそのリガンド、ヒアルロナン(HA)の間の相互作用を利用する戦略を発明し、それらを使用してsiRNAをT−IC中に選択的に送達し、これらの細胞の根絶をもたらすことができる強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができることを示している。
【0072】
ナノ粒子は、電荷−電荷相互作用によりポリヌクレオチドを凝縮することができるのであれば、いかなるカチオン性分子から構成されていてもよい。
【0073】
本発明者等は、約4.5未満のpHでの標的化部分(例えば、ヒアルロナン;HA)のカチオン性分子との架橋が、架橋がより高いpHで行われる場合によりもより均一で、より大量のポリヌクレオチド剤を封入することができるナノ粒子を生成することを発見した。この粒子を生成する方法は、本質的に1つのステップで−すなわち、ポリヌクレオチド剤の添加後、標的化部分との架橋前に粒子を小型化するためのさらなるエネルギーを必要とせずに−例えば、リポソームの生成なしに、行われた。
【0074】
従って、本発明者等により生成されたポリヌクレオチド剤カプセル化ナノ粒子の集団は、非常に均一であることが示された(図1A、6および7)。本発明の粒子はまた、ポリヌクレオチドの積荷を、CD44表面受容体を有する細胞に選択的に送達することが示された(図3および4)。本発明の粒子は、血清分解から保護されるので、生体内治療に有用である。さらに、本発明者等は、ポリヌクレオチド剤カプセル化ナノ粒子が、インターフェロン応答を誘導しないこと−全身性siRNA適用のための安全で効率的な送達媒体の必要条件を示した(図5)。
【0075】
従って、本発明の一態様によると、
(a)ポリヌクレオチド剤を、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、カチオン性分子は静電的相互作用によりポリヌクレオチド剤を凝縮して複合体を生成し、カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5未満のpHで、複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するためのナノ粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するためのナノ粒子を生成する方法が提供される。
【0076】
一実施形態によると、共有結合が行われる酸性pHは、約4.5、4、3.5、3、2.5またはそれより下である。
【0077】
本明細書で使用する「カチオン性分子」という句は、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤およびカチオン性ポリペプチドを指す。本発明のこの態様によると、カチオン性分子は、リポソームの形ではない。
【0078】
代表的なカチオン性脂質としては、それだけに限定されないが、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)が挙げられる。
【0079】
代表的なカチオン性ポリマーとしては、それだけに限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリ−L−リジンが挙げられる。
【0080】
本発明のナノ粒子を生成するために使用するカチオン性分子は、本明細書中以下に記載する他の非カチオン性成分を含んでもよい。
【0081】
特に対象となるのは、コレステロールと組み合わせて使用するカチオン性脂質である。このような化合物、特に、好ましくはコレステロールと共に1:1で使用する、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)またはDOTIMを、ポリヌクレオチドと製剤化して、生体内毒性が比較的低い複合体を得ることができる。このように、カチオン基と適当に混合された、またはカチオン基に誘導体化されたコレステロール基は、本記載の発明の実施に特によく適している。
【0082】
適当なコレステロール脂質のカチオン性成分は、それだけに限定されないが、アミノ基(またはオリゴもしくはポリアミン)、例えばスペルミン、スペルミジン、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ジエチレントリアミン、ペンタメチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等、アミド基、アミジン基、正電荷のアミノ酸(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、イミダゾール基、グアニジウム基、またはこれらの混合物および誘導体を含む、pH5〜pH8で正電荷を保持する種々の化学基のいずれかを含むことができる。さらに、上記基のいずれかのカチオン性ポリマー(多糖類または他の化学リンカーにより結合されている)はまた、遺伝子送達で有用であると判明し、本記載の脂質複合体中に組み込むことができる。このようなポリマーを調製するために使用する架橋剤は、好ましくは生体適合性または生物学的許容性(biotolerable)であり、それぞれカチオン上で適当な化学基と結合を形成することができる少なくとも2個の化学基を一般的に含む(すなわち、架橋剤は二官能性である)。本開示のために、生体適合性という用語は、化合物が意図した用量で有意な毒性または有害な免疫学的効果を示さないことを意味し、生物学的許容性という用語は、所与の化合物に関連した有害な生物学的結果を適当な投与計画またはカウンター治療(counter−therapy)により管理することができることを意味するだろう。リンカー基は、ホモ二官能性(同じ化学基)であっても、ヘテロ二官能性(異なる化学基)であってもよい。任意選択で、複合体からのベクターの放出を促進するために、結合基とカチオン性部分との間に形成される化学結合は、好ましくは生理的条件下で加水分解性である(すなわち、pH不安定性である、あるいは標的細胞中で切断を受けやすい)。さらに、架橋剤は、結合基間において生理的条件下で加水分解性の結合を含むことができる。
【0083】
任意選択で、架橋剤は、分枝ポリマーの形成を可能にする追加の架橋剤と組み合わせることができる。分枝結合分子と重合架橋剤の比を変えることにより、種々の化学的特性を有するカチオン性ポリマーが製造される。
【0084】
適当な場合には、必要に応じて、任意のまたは種々の(すなわち、混合物の)他の「ヘルパー」脂質部分を、本記載の脂質またはポリマー/ポリヌクレオチド送達媒体に添加して、複合体に所望の特性を与えることができる。このように、それだけに限定されないが、ジステアロイルホスファチジル−グリセロール(DSPG)、水素添加大豆、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、モノ−、ジ−およびトリアシルグリセロール、セラミド、セレブロシド、ホスファチジルグリセロール(HSPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジル−エタノールアミン(DLPE)、カルジオリピンなどを含むいくつかの周知のリン脂質のいずれかを添加することができる。典型的には、ヘルパーあるいは中性脂質は、ポリヌクレオチド送達複合体の脂質成分の約15%〜約70%、好ましくは約15〜約60%、より好ましくは約30〜約60%、およびより典型的には少なくとも約60%、特に少なくとも約50%を含むだろう。逆に、カチオン性脂質の割合は、好ましくは複合体の正味の脂質成分の約30〜約70%、より好ましくは約40〜約60%、特に約50%を構成するだろう。
【0085】
カチオン性分子を含む代表的な組成物としては、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)が挙げられる。カチオン性分子を含む別の代表的な組成物としては、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)が挙げられる。
【0086】
組み立て中、カチオン性分子は、一般的に、所与の用途のために最適化されたカチオン/リン酸塩比でポリヌクレオチド剤と組み合わせられる。通常、DNAリン酸塩:カチオン比は、約1:8(.mu.g DNA:nmol カチオン性脂質)、静脈内投与については好ましくは約2:1〜約1:16、およびi.p.またはエアロゾル適用については約1:1などである。
【0087】
イオン対形成は、カチオン/ポリヌクレオチド複合体の形成で役割を果たすので、複合体形成中のpHは、特定の成分の相互作用を最適化または安定化するよう変えることができる。例えば、非pH感受性カチオン性脂質を使用する場合、所与のポリヌクレオチド(例えば、RNA)またはポリヌクレオチドと共に組み込む(coincorporated)ことができる他の化学薬剤を複合体形成させるために約5のような低いpHが好ましいだろう。さらに、ポリヌクレオチド(例えば、DNA)が、実質的に塩基加水分解に感受性でない場合、状況は複合体形成中に約10までのpHを使用することを要求することができる。一般に、複合体形成および形質移入中、約5〜約9の範囲内のpH、好ましくは約7を維持する。
【0088】
同様に、塩(例えば、NaCl、KCl、MgCl2等)の濃度は、複合体形成を最適化する、またはポリヌクレオチド剤送達および発現の効率を高めるよう変えることができる。さらに、カチオン性脂質がポリヌクレオチド剤と複合体形成する温度などの因子は、得られる複合体の構造的および機能的属性を最適化するよう変えることができる。さらに、複合体が形成される溶液のモル浸透圧濃度は、塩または他の賦形剤濃度を調整することにより変えることができる。
【0089】
中程度の塩濃度は複合体形成を妨害し得るので、それだけに限定されないが、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、果糖、トレハロース、麦芽糖、マンノースなどの適当な添加剤を添加または置換することにより、モル浸透圧濃度を調整することもできる。複合体形成中に存在させることができる糖(右旋糖、ショ糖等)の量は、一般的に、約2%〜約15%、好ましくは約3%〜約8%、より好ましくは約5%と変化するだろう。
【0090】
あるいは、溶液のモル浸透圧濃度は、塩と糖、またはデキストラン40、アルブミン、血清、リポタンパク質などを含む他の賦形剤の混合物により調整することもできる。当業者は、遺伝子送達の効率を最適化するためにどのように適当に塩および糖の濃度を変えたらよいか明確に分かるだろう。さらなる最適化のための出発点となり得る塩および糖の典型的な濃度は、約250mM(ブドウ糖)および約25mM塩(NaCl)である。複合体形成の追加の特徴は、温度調節である。典型的には、カチオン性脂質は、約4℃〜約65℃、より典型的には約10℃〜約42℃、好ましくは約15℃〜約37℃、より好ましくはほぼ室温でポリヌクレオチドと複合体形成する。多くの例では、生成物のばらつきを最小化するために、複合体形成中の温度の正確な調節(例えば、+/−1℃)が重要である。
【0091】
「ポリヌクレオチドを凝縮する」という句は、ポリヌクレオチドによって占められる容積を減少させることを指す。本発明者等は、本発明の実施形態に従って生成される単一ナノ粒子が、6000個までのsiRNAまたはmiRNA分子を取り込むことができることを示した。
【0092】
一実施形態によると、ポリヌクレオチドは、元の容積の20%、元の容積の30%、元の容積の40%、元の容積の50%、元の容積の60%、元の容積の70%、元の容積の80%または元の容積の90%を占めるように凝縮される。
【0093】
複合体中のポリヌクレオチド剤としては、DNA剤またはRNA剤が挙げられる。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0094】
開示の方法を使用して、抗腫瘍剤をコードする遺伝子を患者に送達することができる。例えば、免疫刺激剤、腫瘍抑制遺伝子、または腫瘍細胞の増殖、局所伸展もしくは転移拡散を妨げる遺伝子を、腫瘍細胞、ならびにそれだけに限定されないが、血管内皮細胞および免疫作動因子、および後に腫瘍に損傷を与える遺伝子を発現する調節細胞を含む、他の標的細胞に送達することができる。このような遺伝子の特定の例としては、それだけに限定されないが、アンギオスタチン、p53、GM−CSF、IL−2、G−CSF、BRCA1、BRCA2、RAD51、エンドスタチン(O’Reilly等、1997、Cell、88(2):277〜285)、TIMP 1、TIMP−2、Bcl−2およびBAXが挙げられる。さらに、同様の方法論を使用して、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5637483号、Dranoff等発行中に開示のものと類似のがんワクチンを生成することができる。
【0095】
別の実施形態によると、ポリヌクレオチドは、RNAサイレンシング剤を含む。本文脈では、ポリヌクレオチド剤は、標的細胞中で下方制御したい目的の遺伝子に応じて選択されることが認識されよう。
【0096】
一実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。別の実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、生存率に関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0097】
本明細書で使用する「RNAサイレンシング」という用語は、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の抑制または「サイレンシング」をもたらす、RNA分子により媒介される配列特異的調節機構のグループ(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング、コサプレッションおよび翻訳抑制)を指す。RNAサイレンシングは、植物、動物および真菌を含む多くの種類の生物で観察されてきた。
【0098】
本明細書で使用する「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を抑制または「サイレンシング」することができるRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後サイレンシング機構を通して、mRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳および/または発現)を阻止することができる。RNAサイレンシング剤としては、非コードRNA分子、例えば対鎖を含むRNA二重鎖、ならびにこのような小さな非コードRNAを生成させることができるRNA前駆体が挙げられる。代表的なRNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNAおよびshRNAなどのdsRNAが挙げられる。一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0099】
RNA干渉は、短鎖干渉性RNA(siRNA)により媒介される、動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。植物において対応するプロセスは、一般的に転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、真菌ではクエリングとも呼ばれる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を阻止するために使用される進化的に保存された細胞防御機構であると考えられており、多様な植物相および門により一般的に共有されている。このような外来遺伝子発現からの防御は、ウイルス感染、または相同性の一本鎖RNAもしくはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を通したトランスポゾン要素の宿主ゲノムへの無作為の組込みから得られる二本鎖RNA(dsRNA)の産生に応じて進化したかもしれない。
【0100】
細胞中の長鎖dsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活動を刺激する。ダイサーは、短鎖干渉性RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い断片へのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサーの活動により得られる短鎖干渉性RNAは、典型的には長さが約21〜約23ヌクレオチドであり、約19塩基対の二重鎖を含む。RNAi応答はまた、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する、一般的にRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な領域の中央で起こる。
【0101】
従って、本発明は、mRNAからのタンパク質発現を下方制御するためのdsRNAの使用を意図する。
【0102】
一実施形態によると、dsRNAは、30bpを超える。長鎖dsRNA(すなわち、30bpを超えるdsRNA)の使用は、これらの長い領域の二本鎖RNAがインターフェロンおよびPKR応答の誘導をもたらすと考えられているために非常に制限されてきた。しかしながら、長鎖dsRNAの使用は、多数のsiRNAを試験する必要性を軽減する最適なサイレンシング配列を細胞が選択することができるという点で、多数の利点をもたらすことができる;長鎖dsRNAは、siRNAに必要とされるよりも複雑性が少ないサイレンシングライブラリーを可能にするだろう;そして、おそらく最も重要なことに、長鎖dsRNAは、治療として使用する場合、ウイルスの逃避変異を阻止することができるだろう。
【0103】
種々の研究により、長鎖dsRNAを使用して、ストレス応答を誘導せず、または有意なオフターゲット効果を引き起こさずに遺伝子発現をサイレンシングすることができることが示されている−例えば、[Strat等、Nucleic Acids Research、2006、第34巻、第13号 3803〜3810;Bhargawa A等、Brain Res.Protoc.2004;13:115〜125;Diallo M.等、Oligonucleotides.2003;13:381〜392;Paddison P.J.等、Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443〜1448;Tran N.等、FEBS Lett.2004;573:127〜134]を参照されたい。
【0104】
特に、本発明はまた、インターフェロン経路が活性化されていない細胞(例えば、胚細胞および卵母細胞)における遺伝子サイレンシングへの長鎖dsRNA(30塩基転写産物を超える)の導入を意図する。例えば、Billy等、PNAS 2001、第98巻、14428〜14433頁およびDiallo等、Oligonucleotides、2003年10月1日、13(5):381〜392.doi:10.1089/154545703322617069を参照されたい。
【0105】
本発明はまた、遺伝子発現を下方制御するための、インターフェロンおよびPKR経路を誘導しないよう特異的に設計された長鎖dsRNAの導入を意図する。例えば、ShinagwaおよびIshii[Genes&Dev.17(11):1340〜1345、2003]は、RNAポリメラーゼII(Pol II)プロモーターから長鎖二本鎖RNAを発現するための、pDECAPと名付けられたベクターを開発した。pDECAPからの転写産物は、dsRNAの細胞質への搬出を促進する5’−キャップ構造および3’−ポリ(A)テールの両方を欠くので、pDECAPからの長鎖ds−RNAは、インターフェロン応答を誘導しない。
【0106】
哺乳類系においてインターフェロンおよびPKR経路を避ける別の方法は、形質移入または内因性発現のいずれかを通した阻害的低分子RNA(siRNA)の導入によるものである。
【0107】
「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する阻害的低分子RNA二重鎖(一般的に18〜30塩基対)を指す。25〜30塩基長の化学的に合成されたRNA二重鎖は、同じ場所の21merと比較して効力が100倍も増加し得ることが最近記載されたが、典型的には、siRNAは、中央の10bpの二重鎖領域および末端上の対称的な2塩基の3’−オーバーハングを含む21merとして化学的に合成される。RNAiの誘引においてより長鎖のRNAを使用して得られる観察される効力の増加は、産物(21mer)の代わりに基質(27mer)をダイサーに提供することから得られ、これがsiRNA二重鎖のRISCへの侵入の速度または効率を向上させると理論づけられている。
【0108】
3’−オーバーハングの位置は、siRNAの効力に影響し、アンチセンス鎖上に3’−オーバーハングを有する非対称的な二重鎖は、センス鎖上に3’−オーバーハングを有するものよりも一般的に強力であることが分かってきた(Rose等、2005)。アンチセンス転写産物を標的化すると、反対の効果パターンが観察されるので、これは、RISCに積み込まれている非対称鎖に起因し得る。
【0109】
二本鎖干渉性RNA(例えば、siRNA)の鎖を連結して、ヘアピンまたはステム−ループ構造を形成することができる(例えば、shRNA)。従って、上記のように、本発明のRNAサイレンシング剤は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。
【0110】
本明細書で使用する「shRNA」という用語は、相補的配列の第1および第2領域を含み、該領域の相補性および配向性の程度は該領域間で塩基対形成が起こるのに十分であり、第1および第2領域はループ領域により連結され、該ループは該ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠如から生じる、ステム−ループ構造を有するRNA剤を指す。ループ中のヌクレオチドの数は、3〜23または5〜15または7〜13または4〜9または9〜11の間でありこれを含む数である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループを形成するために使用することができるオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.等(2002)Science 296:550)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.等(2002)RNA 8:1454)が挙げられる。得られる単鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステム−ループまたはヘアピン構造を形成することが当業者により認識されよう。
【0111】
別の実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、miRNAであり得る。「miRNA」という用語はまた、修飾miRNAおよびmiRNA模倣体(アンタゴmir(antagomir))を包含することが認識されよう。
【0112】
miRNAは、種々の大きさの一次転写産物をコードする遺伝子から作られる低分子RNAである。これらは、動物および植物の両方で同定された。一次転写産物(「pri−miRNA」と呼ばれる)は、種々の核酸分解ステップを通してより短いmiRNA前駆体または「pre−miRNA」へプロセシングされる。pre−miRNAは、折り畳み形で存在し、その結果最終(成熟)miRNAは二重鎖で存在し、この2本鎖がmiRNA(最終的に標的と塩基対形成する鎖)と呼ばれる。pre−miRNAは、前駆体からmiRNA二重鎖を取り出すダイサーの形のための基質であり、その後、siRNAと同様に、二重鎖はRISC複合体中に取り込まれ得る。miRNAは遺伝子導入で発現させることができ、一次形態全体よりもむしろ前駆体形態の発現によるのが有効であることが示された(Parizotto等(2004)Genes&Development 18:2237〜2242およびGuo等(2005)Plant Cell 17:1376〜1386)。
【0113】
siRNAとは異なり、miRNAは、部分的相補性のみを有する転写産物配列と結合し(Zeng等、2002、Molec.Cell 9:1327〜1333)、定常状態のRNAレベルに影響を与えずに翻訳を抑制する(Lee等、1993、Cell 75:843〜854;Wightman等、1993、Cell 75:855〜862)。miRNAおよびsiRNAの両者は、ダイサーによりプロセシングされて、RNA誘導サイレンシング複合体の成分と会合する(Hutvagner等、2001、Science 293:834〜838;Grishok等、2001、Cell 106:23〜34;Ketting等、2001、Genes Dev.15:2654〜2659;Williams等、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:6889〜6894;Hammond等、2001、Science 293:1146〜1150;Mourlatos等、2002、Genes Dev.16:720〜728)。最近の報告(Hutvagner等、2002、Sciencexpress 297:2056〜2060)は、miRNA経路対siRNA経路を通した遺伝子調節が、標的転写産物との相補性の程度によってのみ決定されるという仮説を立てている。mRNA標的と部分的同一性のみを有するsiRNAは、RNA分解を誘引するよりもむしろ、miRNAと同様に、翻訳抑制において機能すると推測される。
【0114】
本発明と共に使用するのに適したRNAサイレンシング剤の合成は、以下のように行うことができる。最初に、AUG開始コドンの下流のmRNA配列を調査して、AAジヌクレオチド配列を探す。各々のAAおよび3’隣接19ヌクレオチドの出現を、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は調節タンパク質結合部位がより豊富であるので、好ましくは、siRNA標的部位はオープンリーディングフレームから選択される。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げ得る[Tuschl ChemBiochem.2:239〜245]。しかし、5’UTRを向いたsiRNAが細胞のGAPDH mRNAの約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全に無効にするGAPDHで示されているように、非翻訳領域を向いたsiRNAも有効であることが認識されよう(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)。
【0115】
第2に、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウェアなどの任意の配列アラインメントソフトウェアを使用して、潜在的な標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラット等)と比較する。他のコード配列と有意な相同性を示す推定上の標的部位を取り除く。
【0116】
限定的な標的配列を、siRNA合成のための鋳型として選択する。G/C含量が低い配列は、55%より高いG/C含量を有する配列と比較して遺伝子サイレンシングの媒介においてより有効であると判明したので、好ましい配列は、G/C含量が低い配列である。好ましくは、いくつかの標的部位を、評価のために標的遺伝子の長さに沿って選択する。選択されたsiRNAをより良く評価するために、好ましくは陰性対照を組み合わせて使用する。陰性対照siRNAは、好ましくはsiRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、ゲノムとの有意な相同性を欠く。従って、他の任意の遺伝子と有意な相同性を示さないのであれば、好ましくはスクランブルヌクレオチド配列のsiRNAを使用する。
【0117】
本発明のRNAサイレンシング剤は、RNAのみを含む分子に限定する必要はなく、化学修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含することが認識されよう。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するRNAサイレンシング剤は、「細胞透過性ペプチド」と機能的に関連し得る。本明細書で使用する「細胞透過性ペプチド」は、細胞の形質膜および/または核膜を横切る膜透過性複合体の輸送に関連するエネルギー非依存的(すなわち、非エンドサイトーシスの)移行特性を与える、短い(約12〜30個の残基)アミノ酸配列または機能モチーフを含むペプチドである。本発明の膜透過性複合体に使用する細胞透過性ペプチドは、好ましくは、遊離の、またはジスルフィド結合のために修飾された二本鎖リボ核酸とジスルフィド結合を形成するよう誘導体化された、少なくとも1個の非機能的システイン残基を含む。このような特性を与える代表的なアミノ酸モチーフは、その内容が参照により本明細書に特別に組み込まれる、米国特許第6348185号に列挙される。本発明の細胞透過性ペプチドとしては、好ましくは、それだけに限定されないが、ペネトラチン、トランスポータン、pIsl、TAT(48〜60)、pVEC、MTSおよびMAPが挙げられる。
【0119】
RNAサイレンシング剤を使用して標的化されるmRNAとしては、それだけに限定されないが、その発現が望ましくない表現型形質と相関するものが挙げられる。標的化することができる代表的なmRNAは、切断型タンパク質をコードするものである、すなわち欠失を含む。従って、本発明のRNAサイレンシング剤は、欠失のいずれかの側の架橋領域を標的化することができる。このようなRNAサイレンシング剤の細胞への導入は、変異タンパク質の下方制御をもたらす一方で、非変異タンパク質は影響されないままにしておく。
【0120】
従って、がん、リウマチ性関節炎およびウイルスに関連する遺伝子が標的化され得る。がん関連遺伝子としては、発がん遺伝子(例えば、K−ras、c−myc、bcr/abl、c−myb、c−fms、c−fosおよびcerb−B)、増殖因子遺伝子(例えば、上皮増殖因子およびその受容体、繊維芽細胞増殖因子結合タンパク質をコードする遺伝子)、マトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子(例えば、MMP−9をコードする遺伝子)、接着分子遺伝子(例えば、VLA−6インテグリンをコードする遺伝子)、腫瘍抑制遺伝子(例えば、bcl−2およびbcl−X1)、血管新生遺伝子ならびに転移遺伝子が挙げられる。リウマチ性関節炎関連遺伝子としては、例えば、ストロメリシンおよび腫瘍壊死因子をコードする遺伝子が挙げられる。ウイルス遺伝子としては、ヒトパピローマウイルス遺伝子(例えば、子宮頸がんに関連する)、B型およびC型肝炎遺伝子、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)遺伝子(例えば、網膜炎に関連する)が挙げられる。これらの疾患に関連する多数の他の遺伝子またはその他の遺伝子も標的化することができるだろう。
【0121】
目的の遺伝子を効率的に下方制御するために使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンスアプローチに重要な2つの側面を考慮しながら行わなければならない。第1の側面は、適当な細胞の細胞質中へのオリゴヌクレオチドの送達であり、第2の側面は、その翻訳を抑制する方法で細胞中の所定のmRNAと特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0122】
従来技術は、多種多様な細胞型中にオリゴヌクレオチドを効率的に送達するために使用することができるいくつかの送達戦略を教示している[例えば、Luft J Mol Med 76:75〜6(1998);Kronenwett等、Blood 91:852〜62(1998);Rajur等、Bioconjug Chem 8:935〜40(1997);Lavigne等、Biochem Biophys Res Commun 237:566〜71(1997);Aoki等(1997)Biochem Biophys Res Commun 231:540〜5(1997)およびPeer等、Science 2008、319(5863):627〜30参照]。
【0123】
さらに、標的mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方における構造的変化のエネルギー性を説明する熱力学サイクルに基づく、その標的mRNAに対する最も高い予測結合親和性を有する配列を同定するためのアルゴリズムも利用可能である[例えば、Walton等、Biotechnol Bioeng 65:1〜9(1999)参照]。
【0124】
このようなアルゴリズムは、細胞におけるアンチセンスアプローチを実施するためにうまく使用されてきた。例えば、Walton等により開発されたアルゴリズムは、科学者がウサギβ−グロビン(RBG)およびマウス腫瘍壊死因子−α(TNFα)転写産物のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドをうまく設計することを可能にした。同じ研究グループは、動力学的PCR技術により評価される、細胞培養における3種のモデル標的mRNA(ヒト乳酸脱水素酵素AおよびB、ならびにラットgp130)に対して合理的に選択されるオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性が、リン酸ジエステルおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチド化学を含む2種の細胞型における3種の異なる標的に対する試験を含むほぼ全ての場合で有効であると判明したとさらに最近報告した。
【0125】
さらに、試験管内系を使用する特定のオリゴヌクレオチドの効率を設計および予測するためのいくつかのアプローチも公開された[Matveeva等、Nature Biotechnology 16:1374〜1375(1998)]。
【0126】
本記載のカチオン性脂質/ポリヌクレオチドまたはカチオン性ポリマー/ポリヌクレオチド複合体は、特定の範囲の大きさを有する安定な小胞に製剤化することができるので、複合体を特定の細胞および/または組織に向けるために、標的化剤を複合体に付着させる(共有結合させる)ことができる。従って、標的化部分または標的化部分の組み合わせを複合体上に付着させることができる。
【0127】
本発明のこの態様によると、標的化部分は、酸性条件下で、複合体形成または単離後、複合体と共有結合する。このように、標的化剤が細胞表面上の分子を認識する、または細胞表面上の分子により認識されることが可能である程度まで、標的化剤は、複合体を細胞表面と効果的に密接に接触させるブリッジ分子として働くことができる。
【0128】
本発明者等は、4.5未満のpHでの標的化部分(例えば、ヒアルロナン;HA)のカチオン性分子への添加が、より高pHで架橋が行われる場合よりも、均一であり、大量のポリヌクレオチド剤を封入することができるナノ粒子を生成することを発見した。一態様によると、共有結合が行われる酸性pHは、約4.5、4、3.5、3、2.5またはそれより下である。
【0129】
本開示のために、「標的化部分」という用語は、複合体に組み込むことができる任意のおよび全てのリガンドまたはリガンド受容体を指す。このようなリガンドとしては、それだけに限定されないが、IgM、IgG、IgA、IgDなどの抗体、またはその任意の部分もしくはサブセット、細胞因子、インテグリン、プロテオグリカン、シアル酸残基等などの細胞表面受容体およびそのリガンド、MHCもしくはHLAマーカー、ウイルス外被タンパク質、ペプチドもしくは小さな有機リガンド、これらの誘導体などが挙げられる。
【0130】
標的遺伝子送達用途のために特に対象となるのは、種々の細胞表面マーカーおよび受容体をコードするタンパク質である。このようなタンパク質の代表的なものである簡単な一覧としては、それだけに限定されないが、CD1(a〜c)、CD4、CD8〜11(a〜c)、CD15、CDw17、CD18、CD21〜25、CD27、CD30〜45(R(O、A、およびB))、CD46〜48、CDw49(b、d、f)、CDw50、CD51、CD53〜54、CDw60、CD61〜64、CDw65、CD66〜69、CDw70、CD71、CD73〜74、CDw75、CD76〜77、LAMP−1およびLAMP−2、ならびにT−細胞受容体、インテグリン受容体、増殖性内皮のエンドグリン、またはこれに対する抗体が挙げられる。
【0131】
特定の実施形態によると、標的化部分は、それだけに限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物を含むグリコサミノグリカンである。
【0132】
グリコサミノグリカンの場合、典型的には、これらの分子は、本発明のナノ粒子への組込みの前に活性化している。グリコサミノグリカンを活性化する代表的な方法は、実施例1および2に記載のように、酸性緩衝液中でこれらをインキュベートすることによる。
【0133】
このように、内皮細胞、幹細胞、がん幹細胞、生殖系細胞、上皮細胞、島、ニューロンまたは神経組織、中皮細胞、骨細胞、軟骨細胞、造血細胞、免疫細胞、主要な腺または器官(例えば、肺、心臓、胃、膵臓、腎臓、皮膚等)の細胞、外分泌および/または内分泌細胞などの種々の細胞のいずれかを遺伝子送達のために標的化することができる。
【0134】
標的化部分の付着後、適当なリガンドもしくは抗体、またはこれらの混合物を、適当な固体担体、すなわちラテックスビーズ、マイクロキャリアビーズ、膜またはフィルターなどに付着させ、調製物の残部から標的化受容体もしくはリガンドを組み込むナノ粒子を選択的に結合および単離するために使用することができる。従って、使用前に所望のポリヌクレオチド複合体を単離する方法が提供される。
【0135】
本明細書で使用する「ナノ粒子」という用語は、個々の原子と巨視的なバルク固体との間の中間の大きさを有する粒子(単数または複数)を指す。一般に、ナノ粒子は、μm未満の範囲の、例えば、約1nm〜約500nm、または約1nm〜約200nm、または10nm程度、例えば約1nm〜約100nmの特有の大きさ(例えば、概して球状のナノ粒子については直径、または概して細長いナノ粒子については長さ)を有する。他の代表的な大きさとしては、約30nm〜250nmまたは約50nm〜300nmが挙げられる。
【0136】
粒子の大きさを測定する方法は、当技術分野で既知であり、本明細書の以下の実施例の節でさらに記載する。
【0137】
ナノ粒子は、それだけに限定されないが、ナノワイヤーなどの細長い粒子形状、または概して球状、六角形および立方体のナノ粒子などのより規則的な形状に加えて、不規則な形状を含む任意の形状であってよい。一実施形態によると、ナノ粒子は、概して球状である。
【0138】
丸い形の粒子は、典型的には、特定の幾何学的形状の完全な球形からの偏差を一般的に定量化する真球度として知られる幾何学量により定量的に特徴づけられる。
【0139】
理想的には、三次元物体の真球度は、物体の容積を物体に外接する球の容積で割ることにより計算される。しかしながら、いくつかの物体については、容積の決定が困難であり、しばしば不可能である。そのため、実用的な理由で、真球度の代替「二次元」定義を使用する。この代替法によると、真球度は、ある基準面上の物体の投影の面積と投影に外接する円の面積との間の比と定義される。例えば、平面ディスプレイ上に物体の像を表示すると考えると、平面ディスプレイを基準面とみなすことができ、物体の像を基準面上の物体の投影とみなすことができる。
【0140】
従って、像の面積をA、像の周囲長をPで表すと、真球度、sは、s=4πA/P2と定義することができる。当業者により認識されるように、像が完全な円である場合、A=π(P/2π)2=P2/4πでs=1である。像の面積が0である(すなわち、像が線または曲線である)場合、s=0である。
【0141】
特に定義しない限り、本明細書で使用する「真球度」は、二次元真球度を指す。
【0142】
多くの粒子(例えば10以上)または多くの異なる基準面に対して計算し、平均すれば、「二次元」真球度は、良い近似で、「三次元」真球度(容積の比)に相当すると認識される。このような事象では、「二次元」真球度、sから始めて、「三次元」真球度をs2の立方根と定義することができる。
【0143】
本発明の好ましい実施形態によると、粒子の真球度は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%である。
【0144】
本発明のナノ粒子のゼータ電位は、−10〜−75mV、より好ましくは−25〜−50mVに及び得る。従って、本発明のナノ粒子は、負に帯電し得る。
【0145】
本発明の方法に従って生成される粒子は、実質的に均一である、すなわち、全て均一な形状および大きさである。一実施形態によると、ナノ粒子集団は、集団の平均的なナノ粒子の大きさから5%、10%、20%または30%超異なるナノ粒子を含まない。
【0146】
本発明により意図される代表的な粒子の均一集団は、以下の通りである:
siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分(例えば、HA)を含む殻を含む粒子であって、
粒子の集団の粒子の各々は、約−40mVのゼータ電位を含み、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである。
【0147】
本発明により意図される別の代表的な粒子の均一集団は、以下の通りである:
miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分(例えば、HA)を含む殻を含む粒子であって、
粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである。
【0148】
上記のように、本発明の粒子は、標的がん細胞および/またはがん幹細胞を標的化するように、設計することができる。
【0149】
従って、本発明の別の態様によると、被験体に治療上有効量の本明細書に記載の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法が提供される。
【0150】
本明細書で使用する「がん」という用語は、発がん性形質転換細胞の増殖から生じる疾患または障害を指す。
【0151】
本発明により治療することができる代表的ながんとしては、それだけに限定されないが、消化管の腫瘍(結腸がん、直腸がん、肛門がん、直腸結腸がん、小および/または大腸がん、食道がん、胃がん、膵がん、胃がん、小腸がん、小腸に生じる腺がん、小腸に生じるカルチノイド腫瘍、小腸に生じるリンパ腫、小腸に生じる間葉腫、消化管間質腫瘍)、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺がん、腎臓(腎)がん(例えば、ウィルムス腫瘍)、肝がん(例えば、肝芽腫、肝細胞癌)、肝胆道がん、胆樹がん、胆嚢の腫瘍、膀胱がん、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣の未熟奇形腫、子宮腫瘍、上皮性卵巣腫瘍、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、上皮成人型腫瘍、卵巣がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、肺がん(例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、鼻咽頭がん、乳がん、扁平上皮癌(例えば、頭頸部中)、神経原性腫瘍、星細胞腫、神経節芽腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫)、神経膠腫、甲状腺髄様癌、精巣がん、脳および頭/頸部がん、婦人科がん、子宮内膜がん、胚細胞腫瘍、間葉腫、神経原性腫瘍、膀胱がん、尿管がん、腎盂がん、尿道がん、陰茎がん、精巣がん、子宮体がん、子宮内膜癌、子宮肉腫、腹膜癌および卵管癌、卵巣の胚細胞腫瘍、性索間質腫瘍、内分泌系がん、甲状腺腫瘍、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫、副甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、膵内分泌腫瘍、軟組織および骨の肉腫、良性および悪性中皮腫、悪性腹膜中皮腫、精巣鞘膜の悪性中皮腫、心膜の悪性中皮腫、皮膚がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、中枢神経系の新生物、髄芽腫、髄膜腫、末梢神経腫瘍、松果体領域の腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、聴神経腫、頸静脈グロムス腫瘍、脊索腫および軟骨肉腫、血管芽腫、脈絡叢乳頭腫および癌、脊髄軸腫瘍、白血病、ならびに慢性白血病が挙げられる。
【0152】
「被験体」という用語は、動物、典型的にはヒトを含む哺乳類を指す。
【0153】
本発明の粒子は、それ自体で、または適当な担体もしくは添加剤と混合した医薬組成物で被験体に投与することができる。
【0154】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、生理学的に適当な担体および添加剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1つまたは複数の有効成分の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を促進することである。
【0155】
本明細書で、「有効成分」という用語は、生物学的効果を説明できるポリヌクレオチド剤を含む粒子を指す。
【0156】
以降、互換的に使用することができる「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」という句は、生物に対する有意な刺激をもたらさず、投与する化合物の生物活性および特性を抑止しない担体または賦形剤を指す。アジュバントはこれらの句に含まれる。
【0157】
本明細書で、「添加剤」という用語は、有効成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加する不活性物質を指す。それだけに限定されないが、添加剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖および種々の種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0158】
薬物の処方および投与についての技術は、参照により本明細書に組み込まれる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版中に見つけることができる。
【0159】
投与の適当な経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸または非経口送達、例えば筋肉内、皮下および髄内注射、ならびに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射が挙げられる。
【0160】
あるいは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域中へ直接注射することにより、全身的というよりもむしろ局所的に医薬組成物を投与することができる。
【0161】
従って、本発明による使用のための医薬組成物は、薬学的に使用することができる製剤中への有効成分の加工を促進する添加剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用する従来の方法で製剤化することができる。適当な処方は、選択する投与経路に依存する。
【0162】
注射のために、医薬組成物の有効成分を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液または生理的塩緩衝液などの生理的適合性緩衝液中で製剤化することができる。経粘膜投与のために、透過する障壁に適した透過剤を製剤中に使用する。このような透過剤は当技術分野で既知である。
【0163】
経口投与のために、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と結合させることにより、医薬組成物を容易に製剤化することができる。このような担体は、医薬組成物が、患者による経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化されることを可能にする。経口的に使用するための医薬調製物は、固体添加剤を使用して、必要に応じて、所望であれば適当な補助剤を加えた後に、その結果得られる混合物をすりつぶし、この顆粒の混合物を加工することによって、錠剤または糖衣錠の核を得ることにより作ることができる。適当な添加剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーなどの増量剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0164】
経口的に使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンで作られた硬カプセル剤(push−fit capsule)ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から作られた軟カプセル剤(soft,sealed capsule)が挙げられる。硬カプセル剤は、乳糖などの増量剤、デンプンなどの結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定剤と混合した有効成分を含み得る。軟カプセル剤では、有効成分は、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、選択する投与経路に適した投与量とすべきである。
【0165】
頬側投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤またはロゼンジ剤の形をとってもよい。
【0166】
鼻吸入による投与のために、本発明による使用のための有効成分は、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを供給することにより、決定することができる。ディスペンサーで使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物および乳糖もしくはデンプンなどの適当な粉末基剤を含んで製剤化することができる。
【0167】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えばボーラス注射または持続点滴による、非経口投与のために製剤化することができる。注射のための製剤は、任意で追加の保存剤を含む、例えばアンプル中の単位剤形で、または多用量容器で提供され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性媒体中のエマルジョンであってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。
【0168】
あるいは、有効成分は、使用前に、適当な媒体、例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水をベースとする溶液により構成するための粉末形態であってもよい。
【0169】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または保持浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0170】
本発明の文脈中での使用に適した医薬組成物は、有効成分が所期の目的を達成するために有効な量含まれている組成物を含む。より具体的には、治療上有効量とは、障害(例えば、がん)の症状を予防、軽減もしくは寛解させる、または治療されている被験体の生存を延長するのに有効な有効成分(粒子組成物)の量を意味する。
【0171】
治療上有効量の決定は、特に、本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分当業者の能力の範囲内にある。
【0172】
本発明の方法で使用される任意の調製物のために、治療上有効量または用量を、最初に試験管内および細胞培養試験から推定することができる。例えば、所望の濃度または力価を達成するために動物モデルで用量を策定することができる。このような情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。
【0173】
本明細書に記載の有効成分の毒性および治療効果は、試験管内、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順により決定することができる。これらの試験管内および細胞培養試験ならびに動物研究から得られるデータを、ヒトに使用するための投与量の範囲を策定するのに使用することができる。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて変化し得る。正確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl等、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、1章、1頁中参照)。
【0174】
投与量および投与間隔は、生物学的効果を誘導するもしくは抑制するのに十分な有効成分の血漿または脳レベル(最小有効濃度、MEC)をもたらすよう個々に調整することができる。MECは各々の調製物について変化するが、試験管内データから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個体形質および投与経路に依存する。検出試験を使用して、血漿濃度を決定することができる。
【0175】
治療する状態の重症度および応答性に応じて、投与は単回投与または複数回投与とすることができ、治療クールは数日間から数週間、または治癒がもたらされるまでもしくは疾患状態の減少が達成されるまで続く。
【0176】
投与する組成物の量は、当然、治療する被験体、苦痛の重症度、投与方法、処方する医師の判断等に依存する。
【0177】
本発明の組成物は、所望であれば、有効成分を含む単一または複数単位剤形を含み得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサー装置で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含んでよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与説明書を伴ってよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態の容器と付随した通知を収容してもよく、この通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の機関による承認を反映している。例えば、このような通知は、処方薬についての米国食品医薬品局により承認されたラベリングまたは承認された製品添付文書であり得る。適合性の医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、適当な容器中に調製し、配置し、上でさらに詳述したように、示された状態の治療についてラベルされ得る。
【0178】
本明細書で使用する「方法」という用語は、それだけに限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の専門家に知られている、またはこれらの専門家により既知の様式、手段、技術および手順から容易に発展される様式、手段、技術および手順を含む、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0179】
本明細書で使用する「治療する」という用語は、状態の進行を抑止する、実質的に抑制する、遅らせる、もしくは逆行させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に寛解させる、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0180】
本明細書で使用する「約」という用語は、±5%を指す。
【0181】
本出願の至る所で、本発明の種々の実施形態は範囲形式で与えられ得る。範囲形式の記載は単なる便宜上および簡潔のためのものであることを理解すべきであり、本発明の範囲に対する変更できない制限と解釈すべきではない。従って、範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を含むと考えるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等などの具体的に開示される部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5および6を含むと考えるべきである。範囲の幅にかかわらずこれを適用する。
【0182】
本明細書で数値範囲を示す場合はいつでも、示される範囲内の任意の言及された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1指示数と第2指示数「の間に及ぶ」および第1指示数「から」第2指示数「まで及ぶ」という句は、本明細書で互換的に使用され、第1および第2指示数、ならびにその間の全ての分数および整数を含むことになっている。明確にするために、別の実施形態の文脈中で記載されている本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態中で、組み合わせで提供され得ることが認識される。逆に、簡潔のために単一の実施形態の文脈中で記載されている本発明の種々の特徴はまた、本発明の他の任意の記載された実施形態中で、別々に、または任意の適当な部分的組み合わせで、または適当に提供され得る。種々の実施形態の文脈中で記載される特定の特徴は、実施形態がこれらの要素なしで実施不能でない限り、これらの実施形態の必須の特徴であると考えるべきではない。
【0183】
上で叙述され、以下の特許請求の範囲の節で請求される、本発明の種々の実施形態および態様は、以下の実施例中に実験的裏付けを見出す。
実施例
【0184】
ここで、上記記載と共に非限定的な様式で本発明のいくつかの実施形態を説明する以下の実施例を参照する。
【0185】
一般に、本明細書で使用する命名法および本発明で利用する実験手順は、分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook等、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I〜III巻 Ausubel,R.M.編、(1994);Ausubel等、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal、「A Practical Guid to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、New York(1988);Watson等、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、New York;Birren等(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、第1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4666828号;第4683202号;第4801531号;第5192659号および第5272057号に示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、第I〜III巻 Cellis,J.E.編(1994);Freshneyによる「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」、Wiley−Liss、N.Y.(1994)第3版;「Current Protocols in Immunology」第I〜III巻、Coligan J.E.編(1994);Sites等(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994);MishellおよびShiigi(編)、「Selected methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、New York(1980);利用可能な免疫学的測定法は、特許および科学文献に広範に記載されており、例えば、米国特許第3791932号;第3839153号;第3850752号;第3850578号;第3853987号;第3867517号;第3879262号;第3901654号;第3935074号;第3984533号;第3996345号;第4034074号;第4098876号;第4879219号;第5011771号および第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins,S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins,S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press、(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.、(1984)および「Methods in Enzymology」第1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、San Diego、CA(1990);Marshak等、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);を参照されたい。これらの全ては、本明細書に完全に示されるように、参照により組み込まれている。他の一般的な参考文献は、本文書の至る所で提供される。これらの文献中の手順は、当技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。これらの文献に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
実施例1
DOTAPをベースとする粒子
材料および方法
【0186】
脂質(DOTAPおよびコレステロール)は、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster、AL、米国)から購入し;HSPCはLIPOID、Germany Oligofectamine(商標)(Invitrogen製)から購入し;ヒト組換えプロタミン(Abnova製);直鎖ポリエチレンイミン(PEI)はSigmaから購入した。ヒアルロナン、Mw751KDa、固有粘度:16dL/g(Genzyme cooperation、Cambridge、MA);FITC−HAはCalbiochem(ドイツ)から入手した。Cy3−siRNAはQiagenから入手し;非標識(サイクリンD1、RAS、HMGAもしくはMYCに対して標的特異的なまたはスクランブル)siRNAはDharmaconから入手した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);ホウ酸およびホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物)はSigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO、米国)から購入した。3H−HAはAmerican Radiolabeled Chemicals Inc.(St.Louis、MO、米国)から購入した。細胞培養プレートはCorning Inc.(Corning、NY)から入手した。細胞培養のための材料は、Biological Industries Co.(Beit Haemek)から入手した。透析管(12000〜14000の分子量カットオフ)は、Spectrum Medical Industries(Los Angels、CA)から購入した。ポリカーボネート膜はNucleopore(Pleasanton、CA)から購入した。他の全ての試薬は、分析用とした。
siRNAおよびmiRNA模倣体(アンタゴmir)の調製:
【0187】
Cy3−siRNAスクランブル配列は、Qiagen製とした。サイクリンD1siRNAおよび陰性対照siRNA(スクランブル配列)は、Dharmaconから購入し、以前に報告された[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。RAS、HMGA2またはMYC siRNAは、以前公開されたものであり[Yu等、Cell 131、1109〜1123(2007)]、Dharmaconから購入した。
siRNAをカプセル化したH−mer(ヒアルロン酸被覆ナノ粒子)の調製−方法1
【0188】
DOTAPをベースとする粒子の調製:5mg/mLの脂質濃度で45:33:22のモル比の水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を、伝統的な脂質−フィルム法により調製した[Peer,D.等 Biochim Biophys Acta 1612、76〜82(2003);Peer,D.&Margalit,R. Archives of biochemistry and biophysics 383、185〜190(2000)]。手短に言えば、脂質を60℃で20分間エタノールに溶解し、次いで、ロータリーエバポレーター(Buchi、スイス)中減圧下で蒸発乾固した。次いで、薄い脂質フィルムを、pH7.4で、緩衝液のみ(PBS)からなる膨潤溶液により水和した。この後、ボルテックス装置を使用して大規模に攪拌し、37℃の振盪恒温槽中で2時間インキュベートした。小単層小胞(SUV)を、60℃で200〜500psiの窒素圧下、Lipex押出装置を操作して、MLVの押し出し成形により得た。押し出し成形は、最終的な大きさが直径30nmになるまで、1孔径当たり数サイクルを使用して、次第により小さい孔径膜を使用する段階で行った。ストックの1:1000希釈(すなわち、5μg/mL)の粒度分布は、直径25±4nmでゼータ電位+72.3±6.1mVであった。
【0189】
オリゴフェクトアミン(商標)、PEI(商標)およびプロタミン複合体の調製:オリゴフェクトアミンまたはPEI複合体の調製を、これらの製造業者により推奨されるように行った。手短に言えば、siRNA60pmolを、血清を含まないOpti−MEM(商標)血清使用量低減培地50μl中に希釈し、穏やかに混合した。分枝PEIまたはオリゴフェクトアミンを希釈した(Opti−MEM I培地12μl中に3μl)。これを穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。希釈siRNAを希釈オリゴフェクトアミン(商標)と合わせて(総容積は68μlである)、穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートして、siRNA:オリゴフェクトアミン複合体を形成させた。プロタミン(ヒト組換え体)については、同じプロトコルを使用したが、プロタミンとsiRNAの比は5:1のモル比とした。(プロタミンの管をsiRNAの管に添加して複合体を生成した)。
【0190】
活性化ヒアルロン酸(HA)酢酸塩の調製:活性化HA8mgをガラスバイアルに量り入れ、0.1M pH4.0(1mg/ml)酢酸緩衝液8mlに溶解した。HAが完全に溶解するまで、混合物を37℃で数分間攪拌した。EDCを過剰に40mg添加した(5mg EDC/mg HA)。溶液を37℃で2時間攪拌した。
【0191】
脂質−siRNA懸濁液の調製:粒子(5μl/mL)3μlを、DMEM12μlに添加した。懸濁液を穏やかに攪拌し、室温(RT)で5分間インキュベートした。siRNA(100μM、300pmol)3μlをDMEM50μlに添加した。溶液を穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。粒子溶液をsiRNA溶液に添加し、穏やかに攪拌しながら室温で20分間インキュベートした。
【0192】
ヒアルマーの組み立て(24ウェルプレートの1ウェル当たり):活性化HA(1:5v/v(HA:複合体)の比)13.6μlを、脂質−siRNA複合体68μlに添加し、穏やかに攪拌しながら37℃で2時間インキュベートした。DMEM18.3μlを添加して最終容積100μl(1ウェル当たり)とした。pHをpH7.0〜7.4に修正した。
【0193】
5mg/ml粒子および0.3μmolまでを使用して、この系を1000倍スケールアップした。
siRNAをカプセル化したH−mer(ヒアルロン酸被覆ナノ粒子)の調製−方法2
【0194】
DOTAPをベースとする粒子の調製:本明細書上記の通りである。
【0195】
DDW活性化HAの調製:HA8mgをガラスバイアルに量り入れ、DDW(1mg/ml)8mlに溶解した。HAが完全に溶解するまで、これを37℃で数分間攪拌した。EDCを過剰に40mg添加した(5mg EDC/mg HA)。溶液を37℃で2時間攪拌した。
【0196】
脂質−siRNA懸濁液の調製:本明細書上記の通りである。
【0197】
ヒアルマーの組み立て(24ウェルプレートの1ウェル当たり):本明細書上記の通りである。
【0198】
この系を、10倍を超えてスケールアップすることはできなかった、すなわち粒子濃度は50μg/mLおよびsiRNAは3nmolに過ぎない。
【0199】
粒子の表面トポロジー:粒子の表面トポロジーの測定を、タッピングモード(tapping mode)で操作したDigital Instruments(米国)のNanoScope IIIa MultiMode AFMにより行った。AFM測定の少し前に、H−merサンプルを、1:10に希釈し、小滴(約50μl)を酸化シリコン上に載せた。数分後、サンプルを窒素のファインビーム下で乾燥させ、スクリーニングのために採取した。H−merの測定は、非接触法および三角形シリコンチップ(R<20nm)を使用して、1Hzのスキャン速度で、室温および大気圧で行った。チップとサンプルとの間の間隙は10〜100Åであった。サンプル面積上、2つのセグメント中、512のラインをスキャンして、二次元範囲を形成した。
【0200】
E−SEM(環境制御形走査電子顕微鏡法)も行った。
【0201】
粒子の流体力学的直径およびゼータ電位測定:H−merの直径を、自動アルゴリズムモードを使用して、Malvern Zetasizer nano ZS Zeta potential and Dynamic Light Scanning Instrument(Malvern Instruments Ltd.、Southborough、MA)で測定し、PCS1.32aで解析した。全測定は、0.01M NaCl、pH6.7中、室温で行った。
【0202】
カプセル化効率:系中の総siRNAに対する封入されたsiRNAの比として定義されるカプセル化効率を、遠心分離により測定することができる。全部のH−mer調製物(すなわち、カプセル化および非カプセル化siRNAの両方を含む)のサンプルを、小型超遠心分離(Sorval、Discovery 150M)で遠心分離した。非カプセル化siRNAを含む上清を除去し、カプセル化siRNAを含む粒子を含むペレットを、siRNAを含まない緩衝液に再懸濁した。上清中およびペレット中、ならびに全部の調製物中のsiRNAをリボグリーンアッセイ(Invitrogen)により分析し、そこからカプセル化効率および物質の保存を以前記載したように計算することができる[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。
【0203】
試験管内試験用の細胞系:乳房T−IC(BT−IC)は、無血清培地中の非接着性球(「マンモスフェア(mammosphere)」)として繰り返して継代培養することができ、分化マーカー(サイトケラチン、平滑筋アクチンおよびムチン−1)の発現を欠き、CD44+CD24−である。しかしながら、これらのマーカーは、BT−ICを初期前駆細胞(EPC)と区別することができない。BT−ICが化学療法に比較的耐性である理由は、おそらく多因子的であるが、まだ大部分は未決定である。1つの機構は、増強された薬物排出である(フローサイトメトリーによる薬物排出副集団SPとして測定される)。BT−ICおよびEPCは、ABCG多剤輸送体の発現を増強し、メラノーマ幹細胞は別の多剤輸送体、ABCB5を過剰発現する。
【0204】
エピルビシンの選択圧下でのSKBR3細胞の生体内継代培養により、BT−ICに非常に富んだヒト乳がん細胞系(SK−3rd)を生成した。これらの細胞は、幹細胞の特性(自己再生、多分化能)を安定的に維持し、球形成条件下、試験管内で無限に拡大し、さらなる研究用の無限の数の細胞を提供することができる。SK−3rd細胞は、SKBR3よりも100倍少ない細胞を使用してNOD/SCIDマウスで腫瘍を形成し、SKBR3とは異なり、その腫瘍は転移性である。さらに、これらの細胞は化学療法に比較的耐性である。
【0205】
HL60ヒト急性骨随性白血病(AML)細胞も白血病幹細胞のモデルとして使用した。
【0206】
フローサイトメトリー研究:蛍光標識したsiRNAを使用する際、BD FACScanシステムを使用してCy3+細胞の量を定量化した。
【0207】
画像取得および処理:Olympus 100X LUMPlanFL1.0水浸対物を取り付けたOlympus BX50BWI顕微鏡を組み込んだBiorad Radiance 2000 Laser−scanning confocal system(Hercules、CA)を使用して共焦点イメージングを行った。画像取得は、Laserscan 2000ソフトウェアを使用して行い、画像処理はOpenlab 3.1.5ソフトウェアを使用して行った(Improvision、Lexington、MA)。
【0208】
インターフェロンアッセイ:HL60細胞(1×106細胞/ml)をモック処理、または1000pmol対照(陰性)−siRNAもしくは5μg/mlポリ(I:C)を封入したH−merで48時間処理した。IFNまたはインターフェロン応答遺伝子の発現を定量的RT−PCRにより調査した。
【0209】
siRNAの試験管内形質移入:24ウェルマイクロタイタープレート(200μl培地中2.5×105細胞/ウェル)中、37℃、5%CO2で一晩前培養した細胞(SKBR3、SK−3rdまたはHL−60)を、siRNAまたは適当な対照を封入した一定分量(50μl/ウェル)のH−merに与えた。細胞を、37℃、5%CO2で6〜72時間培養し、フローサイトメトリーおよび/またはリアルタイムRT−PCR解析に供した。
【0210】
定量的RT−PCR:ABI1ステップと装置を使用した定量的RT−PCRを、以前記載したように行った。以前記載したように、ヒトOAS1用プライマーおよびIFN−βを使用した[Peer等、Science 2008、319(5863):627〜30]。プライマー配列は以下の通りとした:
ヒトサイクリンD1(CCND1)
順方向:TGCTCCTGGTGAACAAGCTCAAGT(配列番号1)
逆方向:TGATCTGTTTGTTCTCCTCCGCCT(配列番号2)
GAPDH
順方向:GACCCCTTCATTGACCTCAAC(配列番号3)
逆方向:CTTCTCCATGGTGGTGAAGA(配列番号4)
STAT1
順方向:GTGCATCATGGGCTTCATCAGCAA(配列番号5)
逆方向:TAGGGTTCAACCGCATGGAAGTCA(配列番号6)
結果
siRNAを封入したヒアルロン酸被覆ナノ粒子(H−mer)の調製および構造評価
【0211】
siRNAを封入したH−merを実験節で詳述したように調製した。DOTAP、PEI、オリゴフェトアミン(商標)およびヒト組換えプロタミンなどの、いくつかの正に帯電した物質を、siRNAとの自己組立過程に使用した。
【0212】
トポグラフィー(図1A)および流体力学的直径(表1)により示されるように、酢酸緩衝液で生成したDOTAP H−merは均一な球状ナノ粒子形状を形成した。ゼータ電位の測定(表1)は、(これらの条件で凝集体を形成しないことにより)生理的pHでの安定性を示している。さらに、H−merは、大量のRNAiペイロードを封入した(表1)。
【表1】
【0213】
全測定は室温で行った。凍結乾燥したsiRNAを封入しているH−merを、0.01M NaCl、pH6.7に再懸濁した。以前報告したように21、リボグリーンアッセイ(invitrogen)によりsiRNAを定量化した。データは、3バッチの平均値±SDを表す。
【0214】
これらの測定から、酢酸緩衝液中でのH−merの調製がその構造を安定化することが明らかである。酢酸緩衝液中で作成したH−merの粒度分布は、DDW中で作成したH−merよりもはるかに小さい。
【0215】
粒子への組立プロセスを駆動する低pHが、アミン型の正に帯電した物質の、活性化HAのカルボン酸基との結合を増加させるのに不可欠であると結論づけることができる。
最良の製剤をスクリーニングするためのCD44発現細胞への形質移入
【0216】
CD44highを発現しているヒト膵臓腺癌(PANC−1)細胞を使用して、異なる製剤の形質移入効率を決定した(全て、製剤中のカチオン性実体としてDOTAPを使用して作成した)。代表的な画像を図2A〜Fおよび表2に示す。
【0217】
データは、独立した実験の平均値±SDである。
【表2】
酢酸緩衝液中で生成した、カチオン性実体としてのDOTAPから生成した粒子(H−mer)を使用した腫瘍開始細胞(T−IC、がん幹細胞)へのsiRNAの選択的送達
【0218】
がん幹細胞へのsiRNAの選択的送達を調査するために(そのため、特異性を扱う)、3種類の細胞を使用した:SKBR3に由来するSK−3rd乳がん幹細胞、これは大量のCD44を発現している(CD44high);CD44を発現しているSKBR3細胞(CD44+)およびCD44を発現していないCV−1細胞(CD44−)。生体内条件を刺激するために、細胞をH−merまたは対照(オリゴフェクトアミン、Invitrogen、細胞に非選択的な形質移入試薬として使用する市販のカチオン性リポソーム)に短時間(3時間)曝露した。次いで、細胞を2度洗浄し、フローサイトメトリー分析の前にさらに6時間インキュベートした。
【0219】
オリゴフェクトアミン(商標)を製造ガイドラインに従って50nM Cy3−siRNAと混合、またはH−merを同じsiRNA量(50nM)封入させた。
【0220】
結果を、本明細書以下の表3に要約する。
【表3】
【0221】
表3に明確に示されるように、H−merは、オリゴフェクトアミン(商標)よりも多くのsiRNAを乳がん開始(SK−3rd)細胞に送達した。SKBR3細胞(これもまた大量のCD44を発現しているが、SK−3rd細胞よりログの半分少ない)では、高いsiRNA取り込みが示された。しかしながら、CD44を発現していない(CD44に対する標識化mAbを使用したフローサイトメトリーに基づく、クローン:1M7)CV−1細胞では、H−merを使用したsiRNAの取り込みはバックグラウンドレベルであった。
【0222】
HL60細胞(ヒト白血病がん幹細胞)を使用した場合、同様の結果が得られた(データ不掲載)。
H−merは、T−IC中のリファレンス遺伝子を選択的にノックダウンすることができる。
【0223】
H−merがリファレンス遺伝子のサイレンシングを選択的に誘導することができるかどうかを試験するために、本発明者等は、サイクリンD1(CyD1)siRNAまたは対照siRNAをH−merに組み込み、材料および方法の節で記載したようにHL60細胞を形質導入した。結果を図3に要約する。図3は、80%を超える白血病幹細胞中のCyD1の選択的ノックダウンを示し、その一方で、H−merにより送達された対照siRNAはCyD1 mRNAレベルに影響しなかったことを示している。さらに、CV−1細胞を使用した場合、CyD1 mRNAレベルに有意な変化は観察されず、これは、H−merがCD44依存的に作用するという事実を裏付けている。
いくつかの発がん遺伝子に対するsiRNAの混合物を封入したH−merは、T−ICを選択的に根絶する。
【0224】
H−merに封入されたsiRNAを使用したT−ICを根絶する能力を試験するために、プロトコルを、生体内環境を刺激するよう適合させた。すなわち、細胞を異なる製剤に短時間曝露させ(4時間)、引き続いて、大規模に洗浄し、薬物を含まない培地をさらに72時間追加でインキュベートした。XTTアッセイを使用して、細胞生存を監視した。
【0225】
図4は、H−merに封入されたsiRNA(RAS、HMGA2もしくはMYC)または対照(非選択的形質移入試薬としてのオリゴフェクトアミン(商標)およびH−merにより送達される対照siRNA)の組み合わせを使用した、異なる細胞(SK−3rd、CD44high、SKBR3 CD44+およびCV−1(CD44−))の生存を表す。
【0226】
オリゴフェクトアミン(商標)形質移入細胞の結果は、全ての試験した細胞種が、形質移入が可能であることを示している。H−merは、CD44発現細胞(SK−3rd、がん幹細胞を含む)において細胞死をもたらすsiRNA混合物を選択的に送達するが、CV−1細胞の場合のようなCD44発現を欠く細胞においては送達しない。
【0227】
さらに、H−mer自体の使用は、この生存試験により観察されるいかなる毒性も引き起こさない(図4、灰色列)。
siRNAを封入したH−merは、望まない免疫応答を誘導しない。
【0228】
H−merがインターフェロン応答を引き起こしたかどうかを試験するために、ヒト白血病幹細胞由来のHL60細胞のインターフェロン応答について分析した。結果を図5に示す。
【0229】
HL60細胞の存在下で48時間まで培養した場合、対照siRNA1nmolを封入したH−merはインターフェロン応答を誘導しなかった(図5)。対照的に、siRNA凝縮体としてのオリゴフェクトアミン(商標)の使用は、望まない免疫応答を誘導し、非カプセル化siRNAも同様であった。ポリI:Cを陽性対照として使用した。
miRNAを封入したH−mer
【0230】
一本鎖miRNA模倣体(アンタゴmir)を含むDOTAP含有粒子も製剤化した。得られたアンタゴmirを封入したH−merは、本明細書以下の表4に要約され、図6に説明されるように、直径35nmの範囲のより小さい粒子を示す(対して、siRNAを使用すると約100nmである)。
【表4】
各々の値は、Malvern Nano ZS ゼータサイザーにおける3つの独立した測定の平均値±SDを表す。
アンタゴmirは、Dharmaconから購入した。アンタゴmir分子の数は、リボグリーン(Invitrogen)を使用して測定した。
実施例2
DLPE:DLPGをベースとする粒子
材料および方法
【0231】
材料:脂質(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG))は、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster、AL、米国)から購入した。ヒアルロナン、Mw751KDa、固有粘度:16dL/g(Genzyme cooperation、Cambridge、MA);FITC−HAは、Calbiochem(登録商標)(ドイツ)から入手した。Cy3−siRNAは、Quiagenから購入し;非標識化siRNAはDharmaconから購入した。パクリタキセル、Taxus種からの半合成、最小97%;1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);ホウ酸およびホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物)は、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO、米国)から購入した。3H−パクリタキセルホスファチジルエタノールアミン(arach−1−14C)および3H−HAは、American Radiolabeled Chemicals Inc.(St.Louis、MO、米国)から購入した。細胞培養プレートはCorning Inc.(Corning、NY)から入手した。細胞培養のための材料は、Biological Industries Co.(Beit Haemek、イスラエル)から入手した。透析管(12000〜14000の分子量カットオフ)は、Spectrum Medical Industries(Los Angels、CA)から購入した。ポリカーボネート膜はNucleopore(Pleasanton、CA)から購入した。他の全ての試薬は、分析用とした。
【0232】
siRNAをカプセル化したヒアルマーの調製:10:1(モル/モル)DLPE:DLPG、1:10(w/w)HA:脂質および1:100〜1:10siRNA:脂質(モル/モル)の比で粒子を調製した。他の意図した範囲には、1:850(モル/モル)siRNA:脂質が含まれる。
【0233】
活性化HA:HA1.33mgをpH4.5 100mM(0.33mg/ml)酢酸緩衝液4mlに溶解した。EDCを過剰に26.67mg添加し(20mg EDC/mg HA)、混合物を37℃で2時間振盪した。
【0234】
脂質−siRNA懸濁液の調製:DLPE4.5mgおよびDLPG0.5mgを量り、50mlプラスチック管に注入した。0.1M pH=9.0ホウ酸緩衝液3.5mlを乾燥した脂質に添加した。懸濁液をTm(約70℃)より上の温度で少なくとも2時間加熱し、その後、プローブソニケーター中、1分×5回超音波処理した。次いで、懸濁液を、70℃に加熱したジャケットを備えたLipex押出機で、0.1μmポリカーボネートフィルターを通して10回押し出し成形した。siRNA溶液(100μM)100μlを活性化HA1.5mlと共に添加した。振盪しながら37℃で一晩インキュベートした後、MWCO12〜14000膜を使用して透析を行った。
【0235】
粒子の表面トポロジー:実施例1について記載の通りである。
【0236】
粒子の流体力学的直径およびゼータ電位測定:実施例1に記載の通りである。
【0237】
カプセル化効率:実施例1に記載の通りである。
【0238】
siRNAの調製:本明細書上記の通りである。
【0239】
試験管内試験:本明細書上記の通りである。
【0240】
フローサイトメトリー研究:本明細書上記の通りである。
【0241】
画像取得および処理:本明細書上記の通りである。
【0242】
siRNAの試験管内形質移入:本明細書上記の通りである。
結果
siRNAを封入したヒアルマーの調製および構造評価
【0243】
siRNAを封入したヒアルマーを実験の節で詳述のように調製した。トポグラフィー(図7)および流体力学的直径(表1)により示されるように、これらは均一な球状ナノ粒子形状を形成した。ゼータ電位の測定(表5)は、(これらの条件で凝集体を形成しないことにより)生理的pHでの安定性を示している。さらに、ヒアルマーは、大量のRNAiペイロードを封入した(表5)。バッチ間の高い一貫性は、3つの独立した調製物における再現性により反映されている(表5)。
【表5】
【0244】
全測定は室温で行った。凍結乾燥したsiRNAを封入したヒアルマーを、0.01M NaCl、pH6.7に再懸濁した。リボグリーンアッセイ(invitrogen)によりsiRNAを定量化した。
【0245】
図8A〜Cで分かるように、ヒアルマー(FITC−HAを組み込むよう生成された)は、siRNAをHL60細胞(白血病幹細胞)に送達することが示された。
【0246】
図8A〜Cから明確に分かるように、ヒアルマーのみがsiRNAを白血病幹細胞中に送達することができ、同様に使用した市販の試薬オリゴフェクトアミン(商標)またはsiRNA単独では送達することができない。
実施例3
本発明の実施形態の粒子は、AML初代細胞およびヒト卵巣腺癌細胞を標的化することができる。
材料および方法
【0247】
AML初代細胞を標的化する粒子:粒子を実施例1に記載のように生成し、サイクリンD1、Cy3標識化siRNAを担持させた。
【0248】
ヒト卵巣腺癌細胞を標的化する粒子:10mg/mLの60%DOTAP、30%コレステロール、10%DLPEをエタノールに溶解し、透明な溶液が得られるまで加熱した。その後、脂質をビュッヒエバポレーター中で乾燥させ、ホウ酸緩衝液中で再水和した。次いで、溶液を激しくボルテックスし、37℃で2時間振盪機に入れた。
【0249】
脂質を、異なるフィルターを有する押出機中に通すことにより(400nm2回、200nm2回、100nm2回、50nm10回)、脂質粒子を形成させ、最終的な粒子の大きさは約80nmとなった。実験の日までULVを4℃に保った。
【0250】
組立のために、Opti−MEM112μlを、siRNA7μlと共に小ガラスバイアルに添加し、ヒトP糖タンパク質(Pgp)に添加した(20μMストック)。5分のインキュベーション後、希釈した脂質(1mg/ml)18.5μlを添加した。室温でさらに20分後、実施例1に記載のように酸性条件下で前もって予め活性化した希釈したHA(0.2mg/ml)18.5μlを添加した。混合物を室温で16時間インキュベートした。
【0251】
AML初代細胞の形質移入:AML患者から新しく単離した血液を、フィコール勾配密度で分離した(PBMC)。氷上でFACSAriaセルソーターを使用して、細胞をさらに選別した(CD3−CD19−/CD34+CD38−)。次いで、細胞(2.5×105個の細胞)を、6ウェルプレート中2.5mLのRPMI1640完全培地(10%血清含有)に播種した。150pmolのsiRNA(総濃度50nM)を使用して実施例1に詳述のように粒子を調製し、無血清RPMI培地500μlに再懸濁し、細胞上に配置した。総容積は3mLであった。RT−PCRを使用して、未処理および処理AML細胞のmRNAの量を決定した。
【0252】
ヒト卵巣腺癌細胞の形質移入:ヒト卵巣腺癌細胞を、抗生物質を含まない完全培地中、0.1×106細胞/ウェルの濃度で、24ウェルプレートで培養した。24時間後、培地を除去し、無血清RPMI培地に交換した。次いで、細胞をヒアルマー溶液110μlで処理した。抗生物質を含まない無血清RPMIによるインキュベーションの5時間後、血清を含む完全培地を添加した(最終血清濃度10%)。一晩のインキュベーション後、培地を完全RPMI培地に交換した。72時間後、Pgpタンパク質レベルをフローサイトメトリーにより分析した。
結果
【0253】
AML初代細胞へのヒアルマー送達:図9A〜Cおよび図10に示されるように、本発明の実施形態による粒子は、siRNAをAML初代細胞に送達し、強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができる。
【0254】
ヒト卵巣腺癌細胞へのヒアルマー送達:図11に示されるように、本発明の実施形態による粒子は、siRNAをヒト卵巣腺癌初代細胞に送達し、強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができる。
【0255】
本発明はその特定の実施形態と組み合わせて記載されてきたが、多くの代替、修正および変形が当業者に明白であることが明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲に入るこのような全ての代替、修正および変形を包含することが意図されている。
【0256】
本明細書中で言及する全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の刊行物、特許および特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。さらに、本出願中の任意の参考文献の引用および同定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認と解釈すべきではない。節の見出しが使用される範囲において、それらを必ずしも限定的なものと解釈すべきてはない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態で、ポリヌクレオチド剤を含む細胞標的化ナノ粒子およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
大半のがんは均一ではなく、化学/放射線療法に比較的耐性の細胞の亜集団を含む。これらの細胞は、治療によって排除することができず、がん再発の原因となり得る。1つの有力な理論は、腫瘍は、正常な組織幹細胞と特性を共有する、がん幹細胞または腫瘍開始細胞(T−IC)と呼ばれる、腫瘍内のこのような珍しい薬剤耐性細胞により開始されるというものである。これらの細胞は自己再生し、試験管内および生体内の両方で無限に継代培養することができ、複数の細胞系統に分化することができる。重要なことに、これらは免疫不全マウス中の腫瘍細胞のバルクよりもはるかに悪性であり、より少ない細胞で腫瘍を形成し、この腫瘍はしばしばより転移性である。
【0003】
全てのT−ICの1つの共通の特徴は、CD44の発現が高いことであり、(CD44high)と呼ばれる。いくつかの他のマーカー(CD133、CD24lowまたはCD24+、CD166およびEpCAM)を有するまたは有さないCD44highは、血液および固形腫瘍、その中でも乳房腫瘍、膵腫瘍、白血病、脳腫瘍およびメラノーマ中に見られる。
【0004】
大半のがん幹細胞は、比較的薬剤耐性で、腫瘍細胞のバルクよりも悪性である。そのため、異なる種類のがん幹細胞をうまく治療するために、この亜集団に対処する治療を開発することが不可避である。
【0005】
RNA干渉(RNAi)が哺乳類で示されたのはつい最近であるが、ヒト治療にRNAiを利用する見通しは急速に発展してきた。黄斑変性および呼吸器合胞体ウイルス感染症を治療するためのsiRNAを使用した第1相および第2相臨床試験が促進されてきている。
【0006】
しかしながら、これらの有望な治療の多くは、siRNAを異種移植腫瘍中に局所的に注入することにより行われた。がん治療にRNAiを利用する最も大きな障害は、原発腫瘍だけでなく、潜在性転移および散在性疾患における遺伝子発現もサイレンシングするためにsiRNAを全身送達することである。
【0007】
全身的に白血球を標的化する粒子が開発されてきた。このような粒子は、siRNAを、細胞標的化部分(抗体断片または内部移行する白血球インテグリンに対する細胞表面受容体リガンド)およびプロタミンなどのRNA結合ペプチドから構成される融合タンパク質と混合することにより形成された[Peer等、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104、4095〜4100(2007)]。siRNA融合タンパク質ナノ粒子の静脈内注射は、肺造血細胞腫瘍を特異的に標的化し、抑制する。さらに、抗インテグリン抗体で修飾した脂質ナノ粒子が、siRNAを腸の炎症に関与する白血球に選択的に送達することができることが示された[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。このプラットフォームを使用して、粒子の表面を修飾する抗体を変えることにより、異なる細胞表面受容体を標的化することができる。しかしながら、これは、がん幹細胞を標的化する能力に対処することができない極めて複雑な戦略である。
【0008】
国際特許出願第WO2009/020270号およびJiang等[Biopolymers、第89巻、第7号、2008]は、ポリエチレンイミンおよびヒアルロン酸を含む組成物を使用した核酸の送達システムを教示している。この組成物は、4.5より上のpHで生成される。生成した粒子は、21nmの大きさで、3.6、13.2および24.9のゼータ電位を有していた。
【0009】
Taetz等[Oligonucleotides、第19巻、第2号、Epub Apr 2009]は、ヒアルロン酸に予め付着させたリポソームをsiRNAと反応させて、がんを治療するためのリポプレックスを作成することを教示している。リポプレックスの大きさは、100〜200nmであり、約−40mVのゼータ電位を有していた。
【0010】
Surace等[Molecular Pharmaceutics、第6巻、第4号、1062〜73頁]は、ヒアルロン酸に予め付着させたリポソームを使用して、プラスミドDNAと共にリポプレックスを形成することを教示している。リポプレックスは、負のゼータ電位を示し、平均直径は250〜300nmであった。
【0011】
Han Su−Eun等[Journal of Drug Targeting、第17巻、第2号、2009年2月]は、ポリエチレンイミンおよびヒアルロン酸を含む組成物を使用した核酸の送達システムを教示している。この組成物は、4.5より上のpHで生成される。生成した粒子は、45〜70mVのゼータ電位を有しており、直径が約185nmである。
【0012】
Herringson等[Journal of Controlled Release、第139巻、第3号、229〜238頁]は、siRNAの、中性ステルスリポソーム中へのカプセル化およびCD4リガンドによる生着を教示している。このリポソームは、243nmの平均直径、ならびに−11.5mVおよび−1.5mVのゼータ電位を有していた。
【0013】
Chono等[Journal of Controlled Release、第131巻、第1号、2008年10月6日、64〜69頁]は、siRNAを腫瘍へ全身送達するための、リポソーム、プロタミンおよびヒアルロン酸を含むナノ粒子製剤を教示している。
【0014】
追加の背景技術としては、遺伝子送達物質としての脂質化グリコサミノグリカンの粒子の不均一集団を教示している米国特許第7544374号および米国特許出願第20090155178号が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際特許出願第WO2009/020270号
【特許文献2】米国特許第7544374号
【特許文献3】米国特許出願第20090155178号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Peer等、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104、4095〜4100(2007)
【非特許文献2】Peer等、Science 319、627〜630(2008)
【非特許文献3】Jiang等、Biopolymers、第89巻、第7号、2008
【非特許文献4】Taetz等、Oligonucleotides、第19巻、第2号、Epub Apr 2009
【非特許文献5】Surace等、Molecular Pharmaceutics、第6巻、第4号、1062〜73頁
【非特許文献6】Han Su−Eun等、Journal of Drug Targeting、第17巻、第2号、2009年2月
【非特許文献7】Herringson等、Journal of Controlled Release、第139巻、第3号、229〜238頁
【非特許文献8】Chono等、Journal of Controlled Release、第131巻、第1号、2008年10月6日、64〜69頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、
(a)ポリヌクレオチドを、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、カチオン性分子は静電的相互作用によりポリヌクレオチドを凝縮して複合体を生成し、カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5以下のpHで、複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するための粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するための粒子を生成する方法が提供される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、本発明の方法のいずれかに従って生成される粒子が提供される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、複数の本発明の粒子を含む組成物が提供される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物が提供され、粒子の集団の粒子の各々は、約−40mVのゼータ電位を含み、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物が提供され、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、本発明の方法に従って生成される粒子を、CD44を発現している標的細胞と接触させ、それにより標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御するステップを含む、標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御する方法が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によると、被験体に治療上有効量の本発明の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはDNAを含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはRNAを含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドは一本鎖である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドは二本鎖である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によると、ポリヌクレオチドはRNAサイレンシング剤を含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群から選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、siRNAまたはmiRNAを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によると、カチオン性分子は、カチオン性ポリペプチド、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤および合成ポリマーからなる群から選択される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によると、カチオン性脂質は、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)からなる群から選択される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、中性脂質をさらに含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によると、中性脂質は、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、アニオン性リン脂質をさらに含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によると、アニオン性リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールからなる群から選択される。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、コレステロールをさらに含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によると、合成ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)またはポリ−L−リジンを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、ポリペプチド標的化部分を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、抗体、抗体断片、アプタマーおよび受容体リガンドからなる群から選択される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、グリコサミノグリカンを含む。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によると、グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物からなる群から選択される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によると、グリコサミノグリカンは、HAを含む。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によると、本方法は、ステップ(b)の前にグリコサミノグリカンを活性化するステップをさらに含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によると、活性化は、酸性緩衝液中でグリコサミノグリカンをインキュベートすることにより行われる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)を含む。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分はHAを含み、ポリヌクレオチド剤はsiRNAまたはmiRNAを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によると、複合体は、ステップ(b)の前に押し出し成形されない。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、シリコン表面上で乾燥させると直径が約100nmである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、シリコン表面上で乾燥させると直径が約30nmである。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、溶液中で直径が約30〜300nmである。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、形が丸い。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、約−40mVのゼータ電位を含む。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、帯電している。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、中性である。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、ナノ粒子である。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態によると、標的化部分は、HAを含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、抗体、抗体断片、受容体リガンドおよびアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つの追加の標的化部分をさらに含む。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によると、粒子は、約6000個を超えるsiRNAまたはmiRNA分子を含む。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によると、組成物は、実質的に均一である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態によると、投与は、生体内で行われる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によると、投与は生体外で行われる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、生存率と関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0066】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての専門用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と類似のまたは同等のものを本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、代表的な方法および/または物質を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む、特許明細書が規制する。さらに、物質、方法および例は例示的なものに過ぎず、必ずしも限定することを意図していない。
【0067】
添付の図面および画像を参照して、単なる例として、本発明のいくつかの実施形態を本明細書に記載する。ここで、詳細に図面を具体的に参照して、示される事項は、例としてのものであり、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることを強調する。この点について、図面を伴う記載は、本発明の実施形態をどのようにして実施することができるかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。図1A:酢酸緩衝液(AB)中、HAとDOTAPから作られた粒子の表面トポグラフィー。H−merトポグラフィーは、環境制御形走査電子顕微鏡法(E−SEM)によりイメージ化された。粒子は、シリコン表面上で乾燥させると、個別的な球状形状であり、直径が約100nmである。
【図1B】本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。図1B:DDW(再蒸留水)中、HAとDOTAPから作られた粒子は、不定構造を有し、個別的な形状を有さない。繊維のシートにより囲まれた核粒子が存在する。
【図2A】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2B】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2C】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2D】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2E】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図2F】PANC−1(ヒト膵臓腺癌)における、AB(図2B、2Dおよび2F)またはDDW(図2A、2Cおよび2E)中で本発明の実施形態に従って生成した粒子によるCy3−siRNAの形質移入を説明する写真である。
【図3】本発明の実施形態の粒子を使用した白血病幹細胞におけるCyD1の選択的ノックダウンを説明する棒グラフである。
【図4】本発明の実施形態の粒子によって送達される、発がん遺伝子に対するsiRNAの混合物を使用したがん幹細胞の根絶を説明する棒グラフである。
【図5】siRNAを封入する本発明の実施形態の粒子がインターフェロン応答を誘導しないことを説明する棒グラフである。
【図6】miRNAを封入する本発明の実施形態による粒子の画像である。
【図7】環境制御形走査電子顕微鏡(E−SEM)によりイメージ化された、本発明の実施形態の粒子の表面トポグラフィーを説明する写真である。粒子は、シリコン表面上で乾燥させると、球状形状であり、直径が約100nmである。
【図8A】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8A−siRNA単独
【図8B】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8B−オリゴフェクトアミン(商標)
【図8C】本発明の粒子を使用した、ヒト白血病幹細胞への選択的siRNA送達を説明する写真である。図8C−本発明の実施形態による粒子。
【図9A】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図9B】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図9C】本発明の実施形態による粒子が、ヒトAML初代細胞にsiRNAを送達することができることを説明する画像である。
【図10】本発明の実施形態による粒子によって送達されるCyclin D1−siRNA(50nM)が、ヒト初代AML細胞で強力な遺伝子サイレンシングを誘導したことを説明する棒グラフである。
【図11】ヒト卵巣腺癌細胞系(NCI−ADR/RES)中のP−糖タンパク質(Pgp)発現の減少を示すフローサイトメトリー分析の結果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、そのいくつかの実施形態で、ポリヌクレオチド剤を含む細胞標的化ナノ粒子、同粒子を生成する方法、およびその使用に関する。
【0070】
少なくとも1つの本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明で示されるまたは実施例により例示される詳細への適用に必ずしも限定されないことを理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能である、または種々の方法で実施もしくは実行することが可能である。
【0071】
表面受容体CD44を高く発現している腫瘍開始細胞(T−IC)またはがん幹細胞は、がん再発の主な原因であると考えられており、非常に化学療法耐性および放射線耐性である。全ての種類のがん細胞(がん幹細胞を含む)を選択的に標的化することができる薬物(その中でも、siRNAまたはmiRNA模倣体などの新規クラスの阻害剤)を送達する戦略を開発する必要がある。本発明者等は、ナノ粒子(ヒアルマー(hyalumer)またはH−merとも呼ぶ)を生成することにより、CD44とそのリガンド、ヒアルロナン(HA)の間の相互作用を利用する戦略を発明し、それらを使用してsiRNAをT−IC中に選択的に送達し、これらの細胞の根絶をもたらすことができる強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができることを示している。
【0072】
ナノ粒子は、電荷−電荷相互作用によりポリヌクレオチドを凝縮することができるのであれば、いかなるカチオン性分子から構成されていてもよい。
【0073】
本発明者等は、約4.5未満のpHでの標的化部分(例えば、ヒアルロナン;HA)のカチオン性分子との架橋が、架橋がより高いpHで行われる場合によりもより均一で、より大量のポリヌクレオチド剤を封入することができるナノ粒子を生成することを発見した。この粒子を生成する方法は、本質的に1つのステップで−すなわち、ポリヌクレオチド剤の添加後、標的化部分との架橋前に粒子を小型化するためのさらなるエネルギーを必要とせずに−例えば、リポソームの生成なしに、行われた。
【0074】
従って、本発明者等により生成されたポリヌクレオチド剤カプセル化ナノ粒子の集団は、非常に均一であることが示された(図1A、6および7)。本発明の粒子はまた、ポリヌクレオチドの積荷を、CD44表面受容体を有する細胞に選択的に送達することが示された(図3および4)。本発明の粒子は、血清分解から保護されるので、生体内治療に有用である。さらに、本発明者等は、ポリヌクレオチド剤カプセル化ナノ粒子が、インターフェロン応答を誘導しないこと−全身性siRNA適用のための安全で効率的な送達媒体の必要条件を示した(図5)。
【0075】
従って、本発明の一態様によると、
(a)ポリヌクレオチド剤を、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、カチオン性分子は静電的相互作用によりポリヌクレオチド剤を凝縮して複合体を生成し、カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5未満のpHで、複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するためのナノ粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するためのナノ粒子を生成する方法が提供される。
【0076】
一実施形態によると、共有結合が行われる酸性pHは、約4.5、4、3.5、3、2.5またはそれより下である。
【0077】
本明細書で使用する「カチオン性分子」という句は、カチオン性ポリマー、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤およびカチオン性ポリペプチドを指す。本発明のこの態様によると、カチオン性分子は、リポソームの形ではない。
【0078】
代表的なカチオン性脂質としては、それだけに限定されないが、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)が挙げられる。
【0079】
代表的なカチオン性ポリマーとしては、それだけに限定されないが、ポリエチレンイミン(PEI)およびポリ−L−リジンが挙げられる。
【0080】
本発明のナノ粒子を生成するために使用するカチオン性分子は、本明細書中以下に記載する他の非カチオン性成分を含んでもよい。
【0081】
特に対象となるのは、コレステロールと組み合わせて使用するカチオン性脂質である。このような化合物、特に、好ましくはコレステロールと共に1:1で使用する、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)またはDOTIMを、ポリヌクレオチドと製剤化して、生体内毒性が比較的低い複合体を得ることができる。このように、カチオン基と適当に混合された、またはカチオン基に誘導体化されたコレステロール基は、本記載の発明の実施に特によく適している。
【0082】
適当なコレステロール脂質のカチオン性成分は、それだけに限定されないが、アミノ基(またはオリゴもしくはポリアミン)、例えばスペルミン、スペルミジン、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ジエチレントリアミン、ペンタメチレンヘキサミン、ペンタプロピレンヘキサミン等、アミド基、アミジン基、正電荷のアミノ酸(例えば、リジン、アルギニンおよびヒスチジン)、イミダゾール基、グアニジウム基、またはこれらの混合物および誘導体を含む、pH5〜pH8で正電荷を保持する種々の化学基のいずれかを含むことができる。さらに、上記基のいずれかのカチオン性ポリマー(多糖類または他の化学リンカーにより結合されている)はまた、遺伝子送達で有用であると判明し、本記載の脂質複合体中に組み込むことができる。このようなポリマーを調製するために使用する架橋剤は、好ましくは生体適合性または生物学的許容性(biotolerable)であり、それぞれカチオン上で適当な化学基と結合を形成することができる少なくとも2個の化学基を一般的に含む(すなわち、架橋剤は二官能性である)。本開示のために、生体適合性という用語は、化合物が意図した用量で有意な毒性または有害な免疫学的効果を示さないことを意味し、生物学的許容性という用語は、所与の化合物に関連した有害な生物学的結果を適当な投与計画またはカウンター治療(counter−therapy)により管理することができることを意味するだろう。リンカー基は、ホモ二官能性(同じ化学基)であっても、ヘテロ二官能性(異なる化学基)であってもよい。任意選択で、複合体からのベクターの放出を促進するために、結合基とカチオン性部分との間に形成される化学結合は、好ましくは生理的条件下で加水分解性である(すなわち、pH不安定性である、あるいは標的細胞中で切断を受けやすい)。さらに、架橋剤は、結合基間において生理的条件下で加水分解性の結合を含むことができる。
【0083】
任意選択で、架橋剤は、分枝ポリマーの形成を可能にする追加の架橋剤と組み合わせることができる。分枝結合分子と重合架橋剤の比を変えることにより、種々の化学的特性を有するカチオン性ポリマーが製造される。
【0084】
適当な場合には、必要に応じて、任意のまたは種々の(すなわち、混合物の)他の「ヘルパー」脂質部分を、本記載の脂質またはポリマー/ポリヌクレオチド送達媒体に添加して、複合体に所望の特性を与えることができる。このように、それだけに限定されないが、ジステアロイルホスファチジル−グリセロール(DSPG)、水素添加大豆、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、モノ−、ジ−およびトリアシルグリセロール、セラミド、セレブロシド、ホスファチジルグリセロール(HSPG)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジラウロイルホスファチジル−エタノールアミン(DLPE)、カルジオリピンなどを含むいくつかの周知のリン脂質のいずれかを添加することができる。典型的には、ヘルパーあるいは中性脂質は、ポリヌクレオチド送達複合体の脂質成分の約15%〜約70%、好ましくは約15〜約60%、より好ましくは約30〜約60%、およびより典型的には少なくとも約60%、特に少なくとも約50%を含むだろう。逆に、カチオン性脂質の割合は、好ましくは複合体の正味の脂質成分の約30〜約70%、より好ましくは約40〜約60%、特に約50%を構成するだろう。
【0085】
カチオン性分子を含む代表的な組成物としては、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)が挙げられる。カチオン性分子を含む別の代表的な組成物としては、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)が挙げられる。
【0086】
組み立て中、カチオン性分子は、一般的に、所与の用途のために最適化されたカチオン/リン酸塩比でポリヌクレオチド剤と組み合わせられる。通常、DNAリン酸塩:カチオン比は、約1:8(.mu.g DNA:nmol カチオン性脂質)、静脈内投与については好ましくは約2:1〜約1:16、およびi.p.またはエアロゾル適用については約1:1などである。
【0087】
イオン対形成は、カチオン/ポリヌクレオチド複合体の形成で役割を果たすので、複合体形成中のpHは、特定の成分の相互作用を最適化または安定化するよう変えることができる。例えば、非pH感受性カチオン性脂質を使用する場合、所与のポリヌクレオチド(例えば、RNA)またはポリヌクレオチドと共に組み込む(coincorporated)ことができる他の化学薬剤を複合体形成させるために約5のような低いpHが好ましいだろう。さらに、ポリヌクレオチド(例えば、DNA)が、実質的に塩基加水分解に感受性でない場合、状況は複合体形成中に約10までのpHを使用することを要求することができる。一般に、複合体形成および形質移入中、約5〜約9の範囲内のpH、好ましくは約7を維持する。
【0088】
同様に、塩(例えば、NaCl、KCl、MgCl2等)の濃度は、複合体形成を最適化する、またはポリヌクレオチド剤送達および発現の効率を高めるよう変えることができる。さらに、カチオン性脂質がポリヌクレオチド剤と複合体形成する温度などの因子は、得られる複合体の構造的および機能的属性を最適化するよう変えることができる。さらに、複合体が形成される溶液のモル浸透圧濃度は、塩または他の賦形剤濃度を調整することにより変えることができる。
【0089】
中程度の塩濃度は複合体形成を妨害し得るので、それだけに限定されないが、ブドウ糖、ショ糖、乳糖、果糖、トレハロース、麦芽糖、マンノースなどの適当な添加剤を添加または置換することにより、モル浸透圧濃度を調整することもできる。複合体形成中に存在させることができる糖(右旋糖、ショ糖等)の量は、一般的に、約2%〜約15%、好ましくは約3%〜約8%、より好ましくは約5%と変化するだろう。
【0090】
あるいは、溶液のモル浸透圧濃度は、塩と糖、またはデキストラン40、アルブミン、血清、リポタンパク質などを含む他の賦形剤の混合物により調整することもできる。当業者は、遺伝子送達の効率を最適化するためにどのように適当に塩および糖の濃度を変えたらよいか明確に分かるだろう。さらなる最適化のための出発点となり得る塩および糖の典型的な濃度は、約250mM(ブドウ糖)および約25mM塩(NaCl)である。複合体形成の追加の特徴は、温度調節である。典型的には、カチオン性脂質は、約4℃〜約65℃、より典型的には約10℃〜約42℃、好ましくは約15℃〜約37℃、より好ましくはほぼ室温でポリヌクレオチドと複合体形成する。多くの例では、生成物のばらつきを最小化するために、複合体形成中の温度の正確な調節(例えば、+/−1℃)が重要である。
【0091】
「ポリヌクレオチドを凝縮する」という句は、ポリヌクレオチドによって占められる容積を減少させることを指す。本発明者等は、本発明の実施形態に従って生成される単一ナノ粒子が、6000個までのsiRNAまたはmiRNA分子を取り込むことができることを示した。
【0092】
一実施形態によると、ポリヌクレオチドは、元の容積の20%、元の容積の30%、元の容積の40%、元の容積の50%、元の容積の60%、元の容積の70%、元の容積の80%または元の容積の90%を占めるように凝縮される。
【0093】
複合体中のポリヌクレオチド剤としては、DNA剤またはRNA剤が挙げられる。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。
【0094】
開示の方法を使用して、抗腫瘍剤をコードする遺伝子を患者に送達することができる。例えば、免疫刺激剤、腫瘍抑制遺伝子、または腫瘍細胞の増殖、局所伸展もしくは転移拡散を妨げる遺伝子を、腫瘍細胞、ならびにそれだけに限定されないが、血管内皮細胞および免疫作動因子、および後に腫瘍に損傷を与える遺伝子を発現する調節細胞を含む、他の標的細胞に送達することができる。このような遺伝子の特定の例としては、それだけに限定されないが、アンギオスタチン、p53、GM−CSF、IL−2、G−CSF、BRCA1、BRCA2、RAD51、エンドスタチン(O’Reilly等、1997、Cell、88(2):277〜285)、TIMP 1、TIMP−2、Bcl−2およびBAXが挙げられる。さらに、同様の方法論を使用して、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5637483号、Dranoff等発行中に開示のものと類似のがんワクチンを生成することができる。
【0095】
別の実施形態によると、ポリヌクレオチドは、RNAサイレンシング剤を含む。本文脈では、ポリヌクレオチド剤は、標的細胞中で下方制御したい目的の遺伝子に応じて選択されることが認識されよう。
【0096】
一実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。別の実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、生存率に関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される。
【0097】
本明細書で使用する「RNAサイレンシング」という用語は、対応するタンパク質コード遺伝子の発現の抑制または「サイレンシング」をもたらす、RNA分子により媒介される配列特異的調節機構のグループ(例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング、コサプレッションおよび翻訳抑制)を指す。RNAサイレンシングは、植物、動物および真菌を含む多くの種類の生物で観察されてきた。
【0098】
本明細書で使用する「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を抑制または「サイレンシング」することができるRNAを指す。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後サイレンシング機構を通して、mRNA分子の完全なプロセシング(例えば、完全な翻訳および/または発現)を阻止することができる。RNAサイレンシング剤としては、非コードRNA分子、例えば対鎖を含むRNA二重鎖、ならびにこのような小さな非コードRNAを生成させることができるRNA前駆体が挙げられる。代表的なRNAサイレンシング剤としては、siRNA、miRNAおよびshRNAなどのdsRNAが挙げられる。一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、RNA干渉を誘導することができる。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、翻訳抑制を媒介することができる。
【0099】
RNA干渉は、短鎖干渉性RNA(siRNA)により媒介される、動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す。植物において対応するプロセスは、一般的に転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、真菌ではクエリングとも呼ばれる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を阻止するために使用される進化的に保存された細胞防御機構であると考えられており、多様な植物相および門により一般的に共有されている。このような外来遺伝子発現からの防御は、ウイルス感染、または相同性の一本鎖RNAもしくはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を通したトランスポゾン要素の宿主ゲノムへの無作為の組込みから得られる二本鎖RNA(dsRNA)の産生に応じて進化したかもしれない。
【0100】
細胞中の長鎖dsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活動を刺激する。ダイサーは、短鎖干渉性RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い断片へのdsRNAのプロセシングに関与する。ダイサーの活動により得られる短鎖干渉性RNAは、典型的には長さが約21〜約23ヌクレオチドであり、約19塩基対の二重鎖を含む。RNAi応答はまた、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する、一般的にRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な領域の中央で起こる。
【0101】
従って、本発明は、mRNAからのタンパク質発現を下方制御するためのdsRNAの使用を意図する。
【0102】
一実施形態によると、dsRNAは、30bpを超える。長鎖dsRNA(すなわち、30bpを超えるdsRNA)の使用は、これらの長い領域の二本鎖RNAがインターフェロンおよびPKR応答の誘導をもたらすと考えられているために非常に制限されてきた。しかしながら、長鎖dsRNAの使用は、多数のsiRNAを試験する必要性を軽減する最適なサイレンシング配列を細胞が選択することができるという点で、多数の利点をもたらすことができる;長鎖dsRNAは、siRNAに必要とされるよりも複雑性が少ないサイレンシングライブラリーを可能にするだろう;そして、おそらく最も重要なことに、長鎖dsRNAは、治療として使用する場合、ウイルスの逃避変異を阻止することができるだろう。
【0103】
種々の研究により、長鎖dsRNAを使用して、ストレス応答を誘導せず、または有意なオフターゲット効果を引き起こさずに遺伝子発現をサイレンシングすることができることが示されている−例えば、[Strat等、Nucleic Acids Research、2006、第34巻、第13号 3803〜3810;Bhargawa A等、Brain Res.Protoc.2004;13:115〜125;Diallo M.等、Oligonucleotides.2003;13:381〜392;Paddison P.J.等、Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443〜1448;Tran N.等、FEBS Lett.2004;573:127〜134]を参照されたい。
【0104】
特に、本発明はまた、インターフェロン経路が活性化されていない細胞(例えば、胚細胞および卵母細胞)における遺伝子サイレンシングへの長鎖dsRNA(30塩基転写産物を超える)の導入を意図する。例えば、Billy等、PNAS 2001、第98巻、14428〜14433頁およびDiallo等、Oligonucleotides、2003年10月1日、13(5):381〜392.doi:10.1089/154545703322617069を参照されたい。
【0105】
本発明はまた、遺伝子発現を下方制御するための、インターフェロンおよびPKR経路を誘導しないよう特異的に設計された長鎖dsRNAの導入を意図する。例えば、ShinagwaおよびIshii[Genes&Dev.17(11):1340〜1345、2003]は、RNAポリメラーゼII(Pol II)プロモーターから長鎖二本鎖RNAを発現するための、pDECAPと名付けられたベクターを開発した。pDECAPからの転写産物は、dsRNAの細胞質への搬出を促進する5’−キャップ構造および3’−ポリ(A)テールの両方を欠くので、pDECAPからの長鎖ds−RNAは、インターフェロン応答を誘導しない。
【0106】
哺乳類系においてインターフェロンおよびPKR経路を避ける別の方法は、形質移入または内因性発現のいずれかを通した阻害的低分子RNA(siRNA)の導入によるものである。
【0107】
「siRNA」という用語は、RNA干渉(RNAi)経路を誘導する阻害的低分子RNA二重鎖(一般的に18〜30塩基対)を指す。25〜30塩基長の化学的に合成されたRNA二重鎖は、同じ場所の21merと比較して効力が100倍も増加し得ることが最近記載されたが、典型的には、siRNAは、中央の10bpの二重鎖領域および末端上の対称的な2塩基の3’−オーバーハングを含む21merとして化学的に合成される。RNAiの誘引においてより長鎖のRNAを使用して得られる観察される効力の増加は、産物(21mer)の代わりに基質(27mer)をダイサーに提供することから得られ、これがsiRNA二重鎖のRISCへの侵入の速度または効率を向上させると理論づけられている。
【0108】
3’−オーバーハングの位置は、siRNAの効力に影響し、アンチセンス鎖上に3’−オーバーハングを有する非対称的な二重鎖は、センス鎖上に3’−オーバーハングを有するものよりも一般的に強力であることが分かってきた(Rose等、2005)。アンチセンス転写産物を標的化すると、反対の効果パターンが観察されるので、これは、RISCに積み込まれている非対称鎖に起因し得る。
【0109】
二本鎖干渉性RNA(例えば、siRNA)の鎖を連結して、ヘアピンまたはステム−ループ構造を形成することができる(例えば、shRNA)。従って、上記のように、本発明のRNAサイレンシング剤は、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。
【0110】
本明細書で使用する「shRNA」という用語は、相補的配列の第1および第2領域を含み、該領域の相補性および配向性の程度は該領域間で塩基対形成が起こるのに十分であり、第1および第2領域はループ領域により連結され、該ループは該ループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠如から生じる、ステム−ループ構造を有するRNA剤を指す。ループ中のヌクレオチドの数は、3〜23または5〜15または7〜13または4〜9または9〜11の間でありこれを含む数である。ループ中のヌクレオチドのいくつかは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与し得る。ループを形成するために使用することができるオリゴヌクレオチド配列の例としては、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.等(2002)Science 296:550)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.等(2002)RNA 8:1454)が挙げられる。得られる単鎖オリゴヌクレオチドは、RNAi機構と相互作用することができる二本鎖領域を含むステム−ループまたはヘアピン構造を形成することが当業者により認識されよう。
【0111】
別の実施形態によると、RNAサイレンシング剤は、miRNAであり得る。「miRNA」という用語はまた、修飾miRNAおよびmiRNA模倣体(アンタゴmir(antagomir))を包含することが認識されよう。
【0112】
miRNAは、種々の大きさの一次転写産物をコードする遺伝子から作られる低分子RNAである。これらは、動物および植物の両方で同定された。一次転写産物(「pri−miRNA」と呼ばれる)は、種々の核酸分解ステップを通してより短いmiRNA前駆体または「pre−miRNA」へプロセシングされる。pre−miRNAは、折り畳み形で存在し、その結果最終(成熟)miRNAは二重鎖で存在し、この2本鎖がmiRNA(最終的に標的と塩基対形成する鎖)と呼ばれる。pre−miRNAは、前駆体からmiRNA二重鎖を取り出すダイサーの形のための基質であり、その後、siRNAと同様に、二重鎖はRISC複合体中に取り込まれ得る。miRNAは遺伝子導入で発現させることができ、一次形態全体よりもむしろ前駆体形態の発現によるのが有効であることが示された(Parizotto等(2004)Genes&Development 18:2237〜2242およびGuo等(2005)Plant Cell 17:1376〜1386)。
【0113】
siRNAとは異なり、miRNAは、部分的相補性のみを有する転写産物配列と結合し(Zeng等、2002、Molec.Cell 9:1327〜1333)、定常状態のRNAレベルに影響を与えずに翻訳を抑制する(Lee等、1993、Cell 75:843〜854;Wightman等、1993、Cell 75:855〜862)。miRNAおよびsiRNAの両者は、ダイサーによりプロセシングされて、RNA誘導サイレンシング複合体の成分と会合する(Hutvagner等、2001、Science 293:834〜838;Grishok等、2001、Cell 106:23〜34;Ketting等、2001、Genes Dev.15:2654〜2659;Williams等、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:6889〜6894;Hammond等、2001、Science 293:1146〜1150;Mourlatos等、2002、Genes Dev.16:720〜728)。最近の報告(Hutvagner等、2002、Sciencexpress 297:2056〜2060)は、miRNA経路対siRNA経路を通した遺伝子調節が、標的転写産物との相補性の程度によってのみ決定されるという仮説を立てている。mRNA標的と部分的同一性のみを有するsiRNAは、RNA分解を誘引するよりもむしろ、miRNAと同様に、翻訳抑制において機能すると推測される。
【0114】
本発明と共に使用するのに適したRNAサイレンシング剤の合成は、以下のように行うことができる。最初に、AUG開始コドンの下流のmRNA配列を調査して、AAジヌクレオチド配列を探す。各々のAAおよび3’隣接19ヌクレオチドの出現を、潜在的なsiRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は調節タンパク質結合部位がより豊富であるので、好ましくは、siRNA標的部位はオープンリーディングフレームから選択される。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨げ得る[Tuschl ChemBiochem.2:239〜245]。しかし、5’UTRを向いたsiRNAが細胞のGAPDH mRNAの約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全に無効にするGAPDHで示されているように、非翻訳領域を向いたsiRNAも有効であることが認識されよう(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)。
【0115】
第2に、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウェアなどの任意の配列アラインメントソフトウェアを使用して、潜在的な標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラット等)と比較する。他のコード配列と有意な相同性を示す推定上の標的部位を取り除く。
【0116】
限定的な標的配列を、siRNA合成のための鋳型として選択する。G/C含量が低い配列は、55%より高いG/C含量を有する配列と比較して遺伝子サイレンシングの媒介においてより有効であると判明したので、好ましい配列は、G/C含量が低い配列である。好ましくは、いくつかの標的部位を、評価のために標的遺伝子の長さに沿って選択する。選択されたsiRNAをより良く評価するために、好ましくは陰性対照を組み合わせて使用する。陰性対照siRNAは、好ましくはsiRNAと同じヌクレオチド組成を含むが、ゲノムとの有意な相同性を欠く。従って、他の任意の遺伝子と有意な相同性を示さないのであれば、好ましくはスクランブルヌクレオチド配列のsiRNAを使用する。
【0117】
本発明のRNAサイレンシング剤は、RNAのみを含む分子に限定する必要はなく、化学修飾ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含することが認識されよう。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供するRNAサイレンシング剤は、「細胞透過性ペプチド」と機能的に関連し得る。本明細書で使用する「細胞透過性ペプチド」は、細胞の形質膜および/または核膜を横切る膜透過性複合体の輸送に関連するエネルギー非依存的(すなわち、非エンドサイトーシスの)移行特性を与える、短い(約12〜30個の残基)アミノ酸配列または機能モチーフを含むペプチドである。本発明の膜透過性複合体に使用する細胞透過性ペプチドは、好ましくは、遊離の、またはジスルフィド結合のために修飾された二本鎖リボ核酸とジスルフィド結合を形成するよう誘導体化された、少なくとも1個の非機能的システイン残基を含む。このような特性を与える代表的なアミノ酸モチーフは、その内容が参照により本明細書に特別に組み込まれる、米国特許第6348185号に列挙される。本発明の細胞透過性ペプチドとしては、好ましくは、それだけに限定されないが、ペネトラチン、トランスポータン、pIsl、TAT(48〜60)、pVEC、MTSおよびMAPが挙げられる。
【0119】
RNAサイレンシング剤を使用して標的化されるmRNAとしては、それだけに限定されないが、その発現が望ましくない表現型形質と相関するものが挙げられる。標的化することができる代表的なmRNAは、切断型タンパク質をコードするものである、すなわち欠失を含む。従って、本発明のRNAサイレンシング剤は、欠失のいずれかの側の架橋領域を標的化することができる。このようなRNAサイレンシング剤の細胞への導入は、変異タンパク質の下方制御をもたらす一方で、非変異タンパク質は影響されないままにしておく。
【0120】
従って、がん、リウマチ性関節炎およびウイルスに関連する遺伝子が標的化され得る。がん関連遺伝子としては、発がん遺伝子(例えば、K−ras、c−myc、bcr/abl、c−myb、c−fms、c−fosおよびcerb−B)、増殖因子遺伝子(例えば、上皮増殖因子およびその受容体、繊維芽細胞増殖因子結合タンパク質をコードする遺伝子)、マトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子(例えば、MMP−9をコードする遺伝子)、接着分子遺伝子(例えば、VLA−6インテグリンをコードする遺伝子)、腫瘍抑制遺伝子(例えば、bcl−2およびbcl−X1)、血管新生遺伝子ならびに転移遺伝子が挙げられる。リウマチ性関節炎関連遺伝子としては、例えば、ストロメリシンおよび腫瘍壊死因子をコードする遺伝子が挙げられる。ウイルス遺伝子としては、ヒトパピローマウイルス遺伝子(例えば、子宮頸がんに関連する)、B型およびC型肝炎遺伝子、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)遺伝子(例えば、網膜炎に関連する)が挙げられる。これらの疾患に関連する多数の他の遺伝子またはその他の遺伝子も標的化することができるだろう。
【0121】
目的の遺伝子を効率的に下方制御するために使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンスアプローチに重要な2つの側面を考慮しながら行わなければならない。第1の側面は、適当な細胞の細胞質中へのオリゴヌクレオチドの送達であり、第2の側面は、その翻訳を抑制する方法で細胞中の所定のmRNAと特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
【0122】
従来技術は、多種多様な細胞型中にオリゴヌクレオチドを効率的に送達するために使用することができるいくつかの送達戦略を教示している[例えば、Luft J Mol Med 76:75〜6(1998);Kronenwett等、Blood 91:852〜62(1998);Rajur等、Bioconjug Chem 8:935〜40(1997);Lavigne等、Biochem Biophys Res Commun 237:566〜71(1997);Aoki等(1997)Biochem Biophys Res Commun 231:540〜5(1997)およびPeer等、Science 2008、319(5863):627〜30参照]。
【0123】
さらに、標的mRNAおよびオリゴヌクレオチドの両方における構造的変化のエネルギー性を説明する熱力学サイクルに基づく、その標的mRNAに対する最も高い予測結合親和性を有する配列を同定するためのアルゴリズムも利用可能である[例えば、Walton等、Biotechnol Bioeng 65:1〜9(1999)参照]。
【0124】
このようなアルゴリズムは、細胞におけるアンチセンスアプローチを実施するためにうまく使用されてきた。例えば、Walton等により開発されたアルゴリズムは、科学者がウサギβ−グロビン(RBG)およびマウス腫瘍壊死因子−α(TNFα)転写産物のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドをうまく設計することを可能にした。同じ研究グループは、動力学的PCR技術により評価される、細胞培養における3種のモデル標的mRNA(ヒト乳酸脱水素酵素AおよびB、ならびにラットgp130)に対して合理的に選択されるオリゴヌクレオチドのアンチセンス活性が、リン酸ジエステルおよびホスホロチオエートオリゴヌクレオチド化学を含む2種の細胞型における3種の異なる標的に対する試験を含むほぼ全ての場合で有効であると判明したとさらに最近報告した。
【0125】
さらに、試験管内系を使用する特定のオリゴヌクレオチドの効率を設計および予測するためのいくつかのアプローチも公開された[Matveeva等、Nature Biotechnology 16:1374〜1375(1998)]。
【0126】
本記載のカチオン性脂質/ポリヌクレオチドまたはカチオン性ポリマー/ポリヌクレオチド複合体は、特定の範囲の大きさを有する安定な小胞に製剤化することができるので、複合体を特定の細胞および/または組織に向けるために、標的化剤を複合体に付着させる(共有結合させる)ことができる。従って、標的化部分または標的化部分の組み合わせを複合体上に付着させることができる。
【0127】
本発明のこの態様によると、標的化部分は、酸性条件下で、複合体形成または単離後、複合体と共有結合する。このように、標的化剤が細胞表面上の分子を認識する、または細胞表面上の分子により認識されることが可能である程度まで、標的化剤は、複合体を細胞表面と効果的に密接に接触させるブリッジ分子として働くことができる。
【0128】
本発明者等は、4.5未満のpHでの標的化部分(例えば、ヒアルロナン;HA)のカチオン性分子への添加が、より高pHで架橋が行われる場合よりも、均一であり、大量のポリヌクレオチド剤を封入することができるナノ粒子を生成することを発見した。一態様によると、共有結合が行われる酸性pHは、約4.5、4、3.5、3、2.5またはそれより下である。
【0129】
本開示のために、「標的化部分」という用語は、複合体に組み込むことができる任意のおよび全てのリガンドまたはリガンド受容体を指す。このようなリガンドとしては、それだけに限定されないが、IgM、IgG、IgA、IgDなどの抗体、またはその任意の部分もしくはサブセット、細胞因子、インテグリン、プロテオグリカン、シアル酸残基等などの細胞表面受容体およびそのリガンド、MHCもしくはHLAマーカー、ウイルス外被タンパク質、ペプチドもしくは小さな有機リガンド、これらの誘導体などが挙げられる。
【0130】
標的遺伝子送達用途のために特に対象となるのは、種々の細胞表面マーカーおよび受容体をコードするタンパク質である。このようなタンパク質の代表的なものである簡単な一覧としては、それだけに限定されないが、CD1(a〜c)、CD4、CD8〜11(a〜c)、CD15、CDw17、CD18、CD21〜25、CD27、CD30〜45(R(O、A、およびB))、CD46〜48、CDw49(b、d、f)、CDw50、CD51、CD53〜54、CDw60、CD61〜64、CDw65、CD66〜69、CDw70、CD71、CD73〜74、CDw75、CD76〜77、LAMP−1およびLAMP−2、ならびにT−細胞受容体、インテグリン受容体、増殖性内皮のエンドグリン、またはこれに対する抗体が挙げられる。
【0131】
特定の実施形態によると、標的化部分は、それだけに限定されないが、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物を含むグリコサミノグリカンである。
【0132】
グリコサミノグリカンの場合、典型的には、これらの分子は、本発明のナノ粒子への組込みの前に活性化している。グリコサミノグリカンを活性化する代表的な方法は、実施例1および2に記載のように、酸性緩衝液中でこれらをインキュベートすることによる。
【0133】
このように、内皮細胞、幹細胞、がん幹細胞、生殖系細胞、上皮細胞、島、ニューロンまたは神経組織、中皮細胞、骨細胞、軟骨細胞、造血細胞、免疫細胞、主要な腺または器官(例えば、肺、心臓、胃、膵臓、腎臓、皮膚等)の細胞、外分泌および/または内分泌細胞などの種々の細胞のいずれかを遺伝子送達のために標的化することができる。
【0134】
標的化部分の付着後、適当なリガンドもしくは抗体、またはこれらの混合物を、適当な固体担体、すなわちラテックスビーズ、マイクロキャリアビーズ、膜またはフィルターなどに付着させ、調製物の残部から標的化受容体もしくはリガンドを組み込むナノ粒子を選択的に結合および単離するために使用することができる。従って、使用前に所望のポリヌクレオチド複合体を単離する方法が提供される。
【0135】
本明細書で使用する「ナノ粒子」という用語は、個々の原子と巨視的なバルク固体との間の中間の大きさを有する粒子(単数または複数)を指す。一般に、ナノ粒子は、μm未満の範囲の、例えば、約1nm〜約500nm、または約1nm〜約200nm、または10nm程度、例えば約1nm〜約100nmの特有の大きさ(例えば、概して球状のナノ粒子については直径、または概して細長いナノ粒子については長さ)を有する。他の代表的な大きさとしては、約30nm〜250nmまたは約50nm〜300nmが挙げられる。
【0136】
粒子の大きさを測定する方法は、当技術分野で既知であり、本明細書の以下の実施例の節でさらに記載する。
【0137】
ナノ粒子は、それだけに限定されないが、ナノワイヤーなどの細長い粒子形状、または概して球状、六角形および立方体のナノ粒子などのより規則的な形状に加えて、不規則な形状を含む任意の形状であってよい。一実施形態によると、ナノ粒子は、概して球状である。
【0138】
丸い形の粒子は、典型的には、特定の幾何学的形状の完全な球形からの偏差を一般的に定量化する真球度として知られる幾何学量により定量的に特徴づけられる。
【0139】
理想的には、三次元物体の真球度は、物体の容積を物体に外接する球の容積で割ることにより計算される。しかしながら、いくつかの物体については、容積の決定が困難であり、しばしば不可能である。そのため、実用的な理由で、真球度の代替「二次元」定義を使用する。この代替法によると、真球度は、ある基準面上の物体の投影の面積と投影に外接する円の面積との間の比と定義される。例えば、平面ディスプレイ上に物体の像を表示すると考えると、平面ディスプレイを基準面とみなすことができ、物体の像を基準面上の物体の投影とみなすことができる。
【0140】
従って、像の面積をA、像の周囲長をPで表すと、真球度、sは、s=4πA/P2と定義することができる。当業者により認識されるように、像が完全な円である場合、A=π(P/2π)2=P2/4πでs=1である。像の面積が0である(すなわち、像が線または曲線である)場合、s=0である。
【0141】
特に定義しない限り、本明細書で使用する「真球度」は、二次元真球度を指す。
【0142】
多くの粒子(例えば10以上)または多くの異なる基準面に対して計算し、平均すれば、「二次元」真球度は、良い近似で、「三次元」真球度(容積の比)に相当すると認識される。このような事象では、「二次元」真球度、sから始めて、「三次元」真球度をs2の立方根と定義することができる。
【0143】
本発明の好ましい実施形態によると、粒子の真球度は、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%である。
【0144】
本発明のナノ粒子のゼータ電位は、−10〜−75mV、より好ましくは−25〜−50mVに及び得る。従って、本発明のナノ粒子は、負に帯電し得る。
【0145】
本発明の方法に従って生成される粒子は、実質的に均一である、すなわち、全て均一な形状および大きさである。一実施形態によると、ナノ粒子集団は、集団の平均的なナノ粒子の大きさから5%、10%、20%または30%超異なるナノ粒子を含まない。
【0146】
本発明により意図される代表的な粒子の均一集団は、以下の通りである:
siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分(例えば、HA)を含む殻を含む粒子であって、
粒子の集団の粒子の各々は、約−40mVのゼータ電位を含み、粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである。
【0147】
本発明により意図される別の代表的な粒子の均一集団は、以下の通りである:
miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分(例えば、HA)を含む殻を含む粒子であって、
粒子の集団の粒子の各々は、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである。
【0148】
上記のように、本発明の粒子は、標的がん細胞および/またはがん幹細胞を標的化するように、設計することができる。
【0149】
従って、本発明の別の態様によると、被験体に治療上有効量の本明細書に記載の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法が提供される。
【0150】
本明細書で使用する「がん」という用語は、発がん性形質転換細胞の増殖から生じる疾患または障害を指す。
【0151】
本発明により治療することができる代表的ながんとしては、それだけに限定されないが、消化管の腫瘍(結腸がん、直腸がん、肛門がん、直腸結腸がん、小および/または大腸がん、食道がん、胃がん、膵がん、胃がん、小腸がん、小腸に生じる腺がん、小腸に生じるカルチノイド腫瘍、小腸に生じるリンパ腫、小腸に生じる間葉腫、消化管間質腫瘍)、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺がん、腎臓(腎)がん(例えば、ウィルムス腫瘍)、肝がん(例えば、肝芽腫、肝細胞癌)、肝胆道がん、胆樹がん、胆嚢の腫瘍、膀胱がん、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣の未熟奇形腫、子宮腫瘍、上皮性卵巣腫瘍、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部トロホブラスト腫瘍、上皮成人型腫瘍、卵巣がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、肺がん(例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、鼻咽頭がん、乳がん、扁平上皮癌(例えば、頭頸部中)、神経原性腫瘍、星細胞腫、神経節芽腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、組織球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、胸腺リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫)、神経膠腫、甲状腺髄様癌、精巣がん、脳および頭/頸部がん、婦人科がん、子宮内膜がん、胚細胞腫瘍、間葉腫、神経原性腫瘍、膀胱がん、尿管がん、腎盂がん、尿道がん、陰茎がん、精巣がん、子宮体がん、子宮内膜癌、子宮肉腫、腹膜癌および卵管癌、卵巣の胚細胞腫瘍、性索間質腫瘍、内分泌系がん、甲状腺腫瘍、甲状腺髄様癌、甲状腺リンパ腫、副甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、膵内分泌腫瘍、軟組織および骨の肉腫、良性および悪性中皮腫、悪性腹膜中皮腫、精巣鞘膜の悪性中皮腫、心膜の悪性中皮腫、皮膚がん、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、中枢神経系の新生物、髄芽腫、髄膜腫、末梢神経腫瘍、松果体領域の腫瘍、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫、聴神経腫、頸静脈グロムス腫瘍、脊索腫および軟骨肉腫、血管芽腫、脈絡叢乳頭腫および癌、脊髄軸腫瘍、白血病、ならびに慢性白血病が挙げられる。
【0152】
「被験体」という用語は、動物、典型的にはヒトを含む哺乳類を指す。
【0153】
本発明の粒子は、それ自体で、または適当な担体もしくは添加剤と混合した医薬組成物で被験体に投与することができる。
【0154】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、生理学的に適当な担体および添加剤などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の1つまたは複数の有効成分の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を促進することである。
【0155】
本明細書で、「有効成分」という用語は、生物学的効果を説明できるポリヌクレオチド剤を含む粒子を指す。
【0156】
以降、互換的に使用することができる「生理学的に許容される担体」および「薬学的に許容される担体」という句は、生物に対する有意な刺激をもたらさず、投与する化合物の生物活性および特性を抑止しない担体または賦形剤を指す。アジュバントはこれらの句に含まれる。
【0157】
本明細書で、「添加剤」という用語は、有効成分の投与をさらに促進するために医薬組成物に添加する不活性物質を指す。それだけに限定されないが、添加剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖および種々の種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ならびにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0158】
薬物の処方および投与についての技術は、参照により本明細書に組み込まれる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版中に見つけることができる。
【0159】
投与の適当な経路としては、例えば、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸または非経口送達、例えば筋肉内、皮下および髄内注射、ならびに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻腔内または眼内注射が挙げられる。
【0160】
あるいは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域中へ直接注射することにより、全身的というよりもむしろ局所的に医薬組成物を投与することができる。
【0161】
従って、本発明による使用のための医薬組成物は、薬学的に使用することができる製剤中への有効成分の加工を促進する添加剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用する従来の方法で製剤化することができる。適当な処方は、選択する投与経路に依存する。
【0162】
注射のために、医薬組成物の有効成分を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液または生理的塩緩衝液などの生理的適合性緩衝液中で製剤化することができる。経粘膜投与のために、透過する障壁に適した透過剤を製剤中に使用する。このような透過剤は当技術分野で既知である。
【0163】
経口投与のために、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と結合させることにより、医薬組成物を容易に製剤化することができる。このような担体は、医薬組成物が、患者による経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などに製剤化されることを可能にする。経口的に使用するための医薬調製物は、固体添加剤を使用して、必要に応じて、所望であれば適当な補助剤を加えた後に、その結果得られる混合物をすりつぶし、この顆粒の混合物を加工することによって、錠剤または糖衣錠の核を得ることにより作ることができる。適当な添加剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、イネデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーなどの増量剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0164】
経口的に使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンで作られた硬カプセル剤(push−fit capsule)ならびにゼラチンとグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤から作られた軟カプセル剤(soft,sealed capsule)が挙げられる。硬カプセル剤は、乳糖などの増量剤、デンプンなどの結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定剤と混合した有効成分を含み得る。軟カプセル剤では、有効成分は、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、選択する投与経路に適した投与量とすべきである。
【0165】
頬側投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤またはロゼンジ剤の形をとってもよい。
【0166】
鼻吸入による投与のために、本発明による使用のための有効成分は、適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオロエタンまたは二酸化炭素を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形で好都合に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを供給することにより、決定することができる。ディスペンサーで使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物の粉末混合物および乳糖もしくはデンプンなどの適当な粉末基剤を含んで製剤化することができる。
【0167】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えばボーラス注射または持続点滴による、非経口投与のために製剤化することができる。注射のための製剤は、任意で追加の保存剤を含む、例えばアンプル中の単位剤形で、または多用量容器で提供され得る。組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性媒体中のエマルジョンであってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。
【0168】
あるいは、有効成分は、使用前に、適当な媒体、例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水をベースとする溶液により構成するための粉末形態であってもよい。
【0169】
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤または保持浣腸剤などの直腸用組成物に製剤化することもできる。
【0170】
本発明の文脈中での使用に適した医薬組成物は、有効成分が所期の目的を達成するために有効な量含まれている組成物を含む。より具体的には、治療上有効量とは、障害(例えば、がん)の症状を予防、軽減もしくは寛解させる、または治療されている被験体の生存を延長するのに有効な有効成分(粒子組成物)の量を意味する。
【0171】
治療上有効量の決定は、特に、本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分当業者の能力の範囲内にある。
【0172】
本発明の方法で使用される任意の調製物のために、治療上有効量または用量を、最初に試験管内および細胞培養試験から推定することができる。例えば、所望の濃度または力価を達成するために動物モデルで用量を策定することができる。このような情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定することができる。
【0173】
本明細書に記載の有効成分の毒性および治療効果は、試験管内、細胞培養または実験動物における標準的な製薬手順により決定することができる。これらの試験管内および細胞培養試験ならびに動物研究から得られるデータを、ヒトに使用するための投与量の範囲を策定するのに使用することができる。投与量は、使用する剤形および利用する投与経路に応じて変化し得る。正確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Fingl等、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、1章、1頁中参照)。
【0174】
投与量および投与間隔は、生物学的効果を誘導するもしくは抑制するのに十分な有効成分の血漿または脳レベル(最小有効濃度、MEC)をもたらすよう個々に調整することができる。MECは各々の調製物について変化するが、試験管内データから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個体形質および投与経路に依存する。検出試験を使用して、血漿濃度を決定することができる。
【0175】
治療する状態の重症度および応答性に応じて、投与は単回投与または複数回投与とすることができ、治療クールは数日間から数週間、または治癒がもたらされるまでもしくは疾患状態の減少が達成されるまで続く。
【0176】
投与する組成物の量は、当然、治療する被験体、苦痛の重症度、投与方法、処方する医師の判断等に依存する。
【0177】
本発明の組成物は、所望であれば、有効成分を含む単一または複数単位剤形を含み得る、FDA承認キットなどのパックまたはディスペンサー装置で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチック箔を含んでよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与説明書を伴ってよい。パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態の容器と付随した通知を収容してもよく、この通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の機関による承認を反映している。例えば、このような通知は、処方薬についての米国食品医薬品局により承認されたラベリングまたは承認された製品添付文書であり得る。適合性の医薬担体中に製剤化された本発明の調製物を含む組成物はまた、適当な容器中に調製し、配置し、上でさらに詳述したように、示された状態の治療についてラベルされ得る。
【0178】
本明細書で使用する「方法」という用語は、それだけに限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の専門家に知られている、またはこれらの専門家により既知の様式、手段、技術および手順から容易に発展される様式、手段、技術および手順を含む、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0179】
本明細書で使用する「治療する」という用語は、状態の進行を抑止する、実質的に抑制する、遅らせる、もしくは逆行させる、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に寛解させる、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0180】
本明細書で使用する「約」という用語は、±5%を指す。
【0181】
本出願の至る所で、本発明の種々の実施形態は範囲形式で与えられ得る。範囲形式の記載は単なる便宜上および簡潔のためのものであることを理解すべきであり、本発明の範囲に対する変更できない制限と解釈すべきではない。従って、範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を含むと考えるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等などの具体的に開示される部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5および6を含むと考えるべきである。範囲の幅にかかわらずこれを適用する。
【0182】
本明細書で数値範囲を示す場合はいつでも、示される範囲内の任意の言及された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1指示数と第2指示数「の間に及ぶ」および第1指示数「から」第2指示数「まで及ぶ」という句は、本明細書で互換的に使用され、第1および第2指示数、ならびにその間の全ての分数および整数を含むことになっている。明確にするために、別の実施形態の文脈中で記載されている本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態中で、組み合わせで提供され得ることが認識される。逆に、簡潔のために単一の実施形態の文脈中で記載されている本発明の種々の特徴はまた、本発明の他の任意の記載された実施形態中で、別々に、または任意の適当な部分的組み合わせで、または適当に提供され得る。種々の実施形態の文脈中で記載される特定の特徴は、実施形態がこれらの要素なしで実施不能でない限り、これらの実施形態の必須の特徴であると考えるべきではない。
【0183】
上で叙述され、以下の特許請求の範囲の節で請求される、本発明の種々の実施形態および態様は、以下の実施例中に実験的裏付けを見出す。
実施例
【0184】
ここで、上記記載と共に非限定的な様式で本発明のいくつかの実施形態を説明する以下の実施例を参照する。
【0185】
一般に、本明細書で使用する命名法および本発明で利用する実験手順は、分子、生化学、微生物学および組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook等、(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」第I〜III巻 Ausubel,R.M.編、(1994);Ausubel等、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、Baltimore、Maryland(1989);Perbal、「A Practical Guid to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、New York(1988);Watson等、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、New York;Birren等(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、第1〜4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York(1998);米国特許第4666828号;第4683202号;第4801531号;第5192659号および第5272057号に示される方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、第I〜III巻 Cellis,J.E.編(1994);Freshneyによる「Culture of Animal Cells−A Manual of Basic Technique」、Wiley−Liss、N.Y.(1994)第3版;「Current Protocols in Immunology」第I〜III巻、Coligan J.E.編(1994);Sites等(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton&Lange、Norwalk、CT(1994);MishellおよびShiigi(編)、「Selected methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、New York(1980);利用可能な免疫学的測定法は、特許および科学文献に広範に記載されており、例えば、米国特許第3791932号;第3839153号;第3850752号;第3850578号;第3853987号;第3867517号;第3879262号;第3901654号;第3935074号;第3984533号;第3996345号;第4034074号;第4098876号;第4879219号;第5011771号および第5281521号;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.およびHiggins,S.J.編(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.およびHiggins,S.J.編(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press、(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.、(1984)および「Methods in Enzymology」第1〜317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、San Diego、CA(1990);Marshak等、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996);を参照されたい。これらの全ては、本明細書に完全に示されるように、参照により組み込まれている。他の一般的な参考文献は、本文書の至る所で提供される。これらの文献中の手順は、当技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。これらの文献に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
実施例1
DOTAPをベースとする粒子
材料および方法
【0186】
脂質(DOTAPおよびコレステロール)は、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster、AL、米国)から購入し;HSPCはLIPOID、Germany Oligofectamine(商標)(Invitrogen製)から購入し;ヒト組換えプロタミン(Abnova製);直鎖ポリエチレンイミン(PEI)はSigmaから購入した。ヒアルロナン、Mw751KDa、固有粘度:16dL/g(Genzyme cooperation、Cambridge、MA);FITC−HAはCalbiochem(ドイツ)から入手した。Cy3−siRNAはQiagenから入手し;非標識(サイクリンD1、RAS、HMGAもしくはMYCに対して標的特異的なまたはスクランブル)siRNAはDharmaconから入手した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);ホウ酸およびホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物)はSigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO、米国)から購入した。3H−HAはAmerican Radiolabeled Chemicals Inc.(St.Louis、MO、米国)から購入した。細胞培養プレートはCorning Inc.(Corning、NY)から入手した。細胞培養のための材料は、Biological Industries Co.(Beit Haemek)から入手した。透析管(12000〜14000の分子量カットオフ)は、Spectrum Medical Industries(Los Angels、CA)から購入した。ポリカーボネート膜はNucleopore(Pleasanton、CA)から購入した。他の全ての試薬は、分析用とした。
siRNAおよびmiRNA模倣体(アンタゴmir)の調製:
【0187】
Cy3−siRNAスクランブル配列は、Qiagen製とした。サイクリンD1siRNAおよび陰性対照siRNA(スクランブル配列)は、Dharmaconから購入し、以前に報告された[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。RAS、HMGA2またはMYC siRNAは、以前公開されたものであり[Yu等、Cell 131、1109〜1123(2007)]、Dharmaconから購入した。
siRNAをカプセル化したH−mer(ヒアルロン酸被覆ナノ粒子)の調製−方法1
【0188】
DOTAPをベースとする粒子の調製:5mg/mLの脂質濃度で45:33:22のモル比の水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を、伝統的な脂質−フィルム法により調製した[Peer,D.等 Biochim Biophys Acta 1612、76〜82(2003);Peer,D.&Margalit,R. Archives of biochemistry and biophysics 383、185〜190(2000)]。手短に言えば、脂質を60℃で20分間エタノールに溶解し、次いで、ロータリーエバポレーター(Buchi、スイス)中減圧下で蒸発乾固した。次いで、薄い脂質フィルムを、pH7.4で、緩衝液のみ(PBS)からなる膨潤溶液により水和した。この後、ボルテックス装置を使用して大規模に攪拌し、37℃の振盪恒温槽中で2時間インキュベートした。小単層小胞(SUV)を、60℃で200〜500psiの窒素圧下、Lipex押出装置を操作して、MLVの押し出し成形により得た。押し出し成形は、最終的な大きさが直径30nmになるまで、1孔径当たり数サイクルを使用して、次第により小さい孔径膜を使用する段階で行った。ストックの1:1000希釈(すなわち、5μg/mL)の粒度分布は、直径25±4nmでゼータ電位+72.3±6.1mVであった。
【0189】
オリゴフェクトアミン(商標)、PEI(商標)およびプロタミン複合体の調製:オリゴフェクトアミンまたはPEI複合体の調製を、これらの製造業者により推奨されるように行った。手短に言えば、siRNA60pmolを、血清を含まないOpti−MEM(商標)血清使用量低減培地50μl中に希釈し、穏やかに混合した。分枝PEIまたはオリゴフェクトアミンを希釈した(Opti−MEM I培地12μl中に3μl)。これを穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。希釈siRNAを希釈オリゴフェクトアミン(商標)と合わせて(総容積は68μlである)、穏やかに混合し、室温で20分間インキュベートして、siRNA:オリゴフェクトアミン複合体を形成させた。プロタミン(ヒト組換え体)については、同じプロトコルを使用したが、プロタミンとsiRNAの比は5:1のモル比とした。(プロタミンの管をsiRNAの管に添加して複合体を生成した)。
【0190】
活性化ヒアルロン酸(HA)酢酸塩の調製:活性化HA8mgをガラスバイアルに量り入れ、0.1M pH4.0(1mg/ml)酢酸緩衝液8mlに溶解した。HAが完全に溶解するまで、混合物を37℃で数分間攪拌した。EDCを過剰に40mg添加した(5mg EDC/mg HA)。溶液を37℃で2時間攪拌した。
【0191】
脂質−siRNA懸濁液の調製:粒子(5μl/mL)3μlを、DMEM12μlに添加した。懸濁液を穏やかに攪拌し、室温(RT)で5分間インキュベートした。siRNA(100μM、300pmol)3μlをDMEM50μlに添加した。溶液を穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。粒子溶液をsiRNA溶液に添加し、穏やかに攪拌しながら室温で20分間インキュベートした。
【0192】
ヒアルマーの組み立て(24ウェルプレートの1ウェル当たり):活性化HA(1:5v/v(HA:複合体)の比)13.6μlを、脂質−siRNA複合体68μlに添加し、穏やかに攪拌しながら37℃で2時間インキュベートした。DMEM18.3μlを添加して最終容積100μl(1ウェル当たり)とした。pHをpH7.0〜7.4に修正した。
【0193】
5mg/ml粒子および0.3μmolまでを使用して、この系を1000倍スケールアップした。
siRNAをカプセル化したH−mer(ヒアルロン酸被覆ナノ粒子)の調製−方法2
【0194】
DOTAPをベースとする粒子の調製:本明細書上記の通りである。
【0195】
DDW活性化HAの調製:HA8mgをガラスバイアルに量り入れ、DDW(1mg/ml)8mlに溶解した。HAが完全に溶解するまで、これを37℃で数分間攪拌した。EDCを過剰に40mg添加した(5mg EDC/mg HA)。溶液を37℃で2時間攪拌した。
【0196】
脂質−siRNA懸濁液の調製:本明細書上記の通りである。
【0197】
ヒアルマーの組み立て(24ウェルプレートの1ウェル当たり):本明細書上記の通りである。
【0198】
この系を、10倍を超えてスケールアップすることはできなかった、すなわち粒子濃度は50μg/mLおよびsiRNAは3nmolに過ぎない。
【0199】
粒子の表面トポロジー:粒子の表面トポロジーの測定を、タッピングモード(tapping mode)で操作したDigital Instruments(米国)のNanoScope IIIa MultiMode AFMにより行った。AFM測定の少し前に、H−merサンプルを、1:10に希釈し、小滴(約50μl)を酸化シリコン上に載せた。数分後、サンプルを窒素のファインビーム下で乾燥させ、スクリーニングのために採取した。H−merの測定は、非接触法および三角形シリコンチップ(R<20nm)を使用して、1Hzのスキャン速度で、室温および大気圧で行った。チップとサンプルとの間の間隙は10〜100Åであった。サンプル面積上、2つのセグメント中、512のラインをスキャンして、二次元範囲を形成した。
【0200】
E−SEM(環境制御形走査電子顕微鏡法)も行った。
【0201】
粒子の流体力学的直径およびゼータ電位測定:H−merの直径を、自動アルゴリズムモードを使用して、Malvern Zetasizer nano ZS Zeta potential and Dynamic Light Scanning Instrument(Malvern Instruments Ltd.、Southborough、MA)で測定し、PCS1.32aで解析した。全測定は、0.01M NaCl、pH6.7中、室温で行った。
【0202】
カプセル化効率:系中の総siRNAに対する封入されたsiRNAの比として定義されるカプセル化効率を、遠心分離により測定することができる。全部のH−mer調製物(すなわち、カプセル化および非カプセル化siRNAの両方を含む)のサンプルを、小型超遠心分離(Sorval、Discovery 150M)で遠心分離した。非カプセル化siRNAを含む上清を除去し、カプセル化siRNAを含む粒子を含むペレットを、siRNAを含まない緩衝液に再懸濁した。上清中およびペレット中、ならびに全部の調製物中のsiRNAをリボグリーンアッセイ(Invitrogen)により分析し、そこからカプセル化効率および物質の保存を以前記載したように計算することができる[Peer等、Science 319、627〜630(2008)]。
【0203】
試験管内試験用の細胞系:乳房T−IC(BT−IC)は、無血清培地中の非接着性球(「マンモスフェア(mammosphere)」)として繰り返して継代培養することができ、分化マーカー(サイトケラチン、平滑筋アクチンおよびムチン−1)の発現を欠き、CD44+CD24−である。しかしながら、これらのマーカーは、BT−ICを初期前駆細胞(EPC)と区別することができない。BT−ICが化学療法に比較的耐性である理由は、おそらく多因子的であるが、まだ大部分は未決定である。1つの機構は、増強された薬物排出である(フローサイトメトリーによる薬物排出副集団SPとして測定される)。BT−ICおよびEPCは、ABCG多剤輸送体の発現を増強し、メラノーマ幹細胞は別の多剤輸送体、ABCB5を過剰発現する。
【0204】
エピルビシンの選択圧下でのSKBR3細胞の生体内継代培養により、BT−ICに非常に富んだヒト乳がん細胞系(SK−3rd)を生成した。これらの細胞は、幹細胞の特性(自己再生、多分化能)を安定的に維持し、球形成条件下、試験管内で無限に拡大し、さらなる研究用の無限の数の細胞を提供することができる。SK−3rd細胞は、SKBR3よりも100倍少ない細胞を使用してNOD/SCIDマウスで腫瘍を形成し、SKBR3とは異なり、その腫瘍は転移性である。さらに、これらの細胞は化学療法に比較的耐性である。
【0205】
HL60ヒト急性骨随性白血病(AML)細胞も白血病幹細胞のモデルとして使用した。
【0206】
フローサイトメトリー研究:蛍光標識したsiRNAを使用する際、BD FACScanシステムを使用してCy3+細胞の量を定量化した。
【0207】
画像取得および処理:Olympus 100X LUMPlanFL1.0水浸対物を取り付けたOlympus BX50BWI顕微鏡を組み込んだBiorad Radiance 2000 Laser−scanning confocal system(Hercules、CA)を使用して共焦点イメージングを行った。画像取得は、Laserscan 2000ソフトウェアを使用して行い、画像処理はOpenlab 3.1.5ソフトウェアを使用して行った(Improvision、Lexington、MA)。
【0208】
インターフェロンアッセイ:HL60細胞(1×106細胞/ml)をモック処理、または1000pmol対照(陰性)−siRNAもしくは5μg/mlポリ(I:C)を封入したH−merで48時間処理した。IFNまたはインターフェロン応答遺伝子の発現を定量的RT−PCRにより調査した。
【0209】
siRNAの試験管内形質移入:24ウェルマイクロタイタープレート(200μl培地中2.5×105細胞/ウェル)中、37℃、5%CO2で一晩前培養した細胞(SKBR3、SK−3rdまたはHL−60)を、siRNAまたは適当な対照を封入した一定分量(50μl/ウェル)のH−merに与えた。細胞を、37℃、5%CO2で6〜72時間培養し、フローサイトメトリーおよび/またはリアルタイムRT−PCR解析に供した。
【0210】
定量的RT−PCR:ABI1ステップと装置を使用した定量的RT−PCRを、以前記載したように行った。以前記載したように、ヒトOAS1用プライマーおよびIFN−βを使用した[Peer等、Science 2008、319(5863):627〜30]。プライマー配列は以下の通りとした:
ヒトサイクリンD1(CCND1)
順方向:TGCTCCTGGTGAACAAGCTCAAGT(配列番号1)
逆方向:TGATCTGTTTGTTCTCCTCCGCCT(配列番号2)
GAPDH
順方向:GACCCCTTCATTGACCTCAAC(配列番号3)
逆方向:CTTCTCCATGGTGGTGAAGA(配列番号4)
STAT1
順方向:GTGCATCATGGGCTTCATCAGCAA(配列番号5)
逆方向:TAGGGTTCAACCGCATGGAAGTCA(配列番号6)
結果
siRNAを封入したヒアルロン酸被覆ナノ粒子(H−mer)の調製および構造評価
【0211】
siRNAを封入したH−merを実験節で詳述したように調製した。DOTAP、PEI、オリゴフェトアミン(商標)およびヒト組換えプロタミンなどの、いくつかの正に帯電した物質を、siRNAとの自己組立過程に使用した。
【0212】
トポグラフィー(図1A)および流体力学的直径(表1)により示されるように、酢酸緩衝液で生成したDOTAP H−merは均一な球状ナノ粒子形状を形成した。ゼータ電位の測定(表1)は、(これらの条件で凝集体を形成しないことにより)生理的pHでの安定性を示している。さらに、H−merは、大量のRNAiペイロードを封入した(表1)。
【表1】
【0213】
全測定は室温で行った。凍結乾燥したsiRNAを封入しているH−merを、0.01M NaCl、pH6.7に再懸濁した。以前報告したように21、リボグリーンアッセイ(invitrogen)によりsiRNAを定量化した。データは、3バッチの平均値±SDを表す。
【0214】
これらの測定から、酢酸緩衝液中でのH−merの調製がその構造を安定化することが明らかである。酢酸緩衝液中で作成したH−merの粒度分布は、DDW中で作成したH−merよりもはるかに小さい。
【0215】
粒子への組立プロセスを駆動する低pHが、アミン型の正に帯電した物質の、活性化HAのカルボン酸基との結合を増加させるのに不可欠であると結論づけることができる。
最良の製剤をスクリーニングするためのCD44発現細胞への形質移入
【0216】
CD44highを発現しているヒト膵臓腺癌(PANC−1)細胞を使用して、異なる製剤の形質移入効率を決定した(全て、製剤中のカチオン性実体としてDOTAPを使用して作成した)。代表的な画像を図2A〜Fおよび表2に示す。
【0217】
データは、独立した実験の平均値±SDである。
【表2】
酢酸緩衝液中で生成した、カチオン性実体としてのDOTAPから生成した粒子(H−mer)を使用した腫瘍開始細胞(T−IC、がん幹細胞)へのsiRNAの選択的送達
【0218】
がん幹細胞へのsiRNAの選択的送達を調査するために(そのため、特異性を扱う)、3種類の細胞を使用した:SKBR3に由来するSK−3rd乳がん幹細胞、これは大量のCD44を発現している(CD44high);CD44を発現しているSKBR3細胞(CD44+)およびCD44を発現していないCV−1細胞(CD44−)。生体内条件を刺激するために、細胞をH−merまたは対照(オリゴフェクトアミン、Invitrogen、細胞に非選択的な形質移入試薬として使用する市販のカチオン性リポソーム)に短時間(3時間)曝露した。次いで、細胞を2度洗浄し、フローサイトメトリー分析の前にさらに6時間インキュベートした。
【0219】
オリゴフェクトアミン(商標)を製造ガイドラインに従って50nM Cy3−siRNAと混合、またはH−merを同じsiRNA量(50nM)封入させた。
【0220】
結果を、本明細書以下の表3に要約する。
【表3】
【0221】
表3に明確に示されるように、H−merは、オリゴフェクトアミン(商標)よりも多くのsiRNAを乳がん開始(SK−3rd)細胞に送達した。SKBR3細胞(これもまた大量のCD44を発現しているが、SK−3rd細胞よりログの半分少ない)では、高いsiRNA取り込みが示された。しかしながら、CD44を発現していない(CD44に対する標識化mAbを使用したフローサイトメトリーに基づく、クローン:1M7)CV−1細胞では、H−merを使用したsiRNAの取り込みはバックグラウンドレベルであった。
【0222】
HL60細胞(ヒト白血病がん幹細胞)を使用した場合、同様の結果が得られた(データ不掲載)。
H−merは、T−IC中のリファレンス遺伝子を選択的にノックダウンすることができる。
【0223】
H−merがリファレンス遺伝子のサイレンシングを選択的に誘導することができるかどうかを試験するために、本発明者等は、サイクリンD1(CyD1)siRNAまたは対照siRNAをH−merに組み込み、材料および方法の節で記載したようにHL60細胞を形質導入した。結果を図3に要約する。図3は、80%を超える白血病幹細胞中のCyD1の選択的ノックダウンを示し、その一方で、H−merにより送達された対照siRNAはCyD1 mRNAレベルに影響しなかったことを示している。さらに、CV−1細胞を使用した場合、CyD1 mRNAレベルに有意な変化は観察されず、これは、H−merがCD44依存的に作用するという事実を裏付けている。
いくつかの発がん遺伝子に対するsiRNAの混合物を封入したH−merは、T−ICを選択的に根絶する。
【0224】
H−merに封入されたsiRNAを使用したT−ICを根絶する能力を試験するために、プロトコルを、生体内環境を刺激するよう適合させた。すなわち、細胞を異なる製剤に短時間曝露させ(4時間)、引き続いて、大規模に洗浄し、薬物を含まない培地をさらに72時間追加でインキュベートした。XTTアッセイを使用して、細胞生存を監視した。
【0225】
図4は、H−merに封入されたsiRNA(RAS、HMGA2もしくはMYC)または対照(非選択的形質移入試薬としてのオリゴフェクトアミン(商標)およびH−merにより送達される対照siRNA)の組み合わせを使用した、異なる細胞(SK−3rd、CD44high、SKBR3 CD44+およびCV−1(CD44−))の生存を表す。
【0226】
オリゴフェクトアミン(商標)形質移入細胞の結果は、全ての試験した細胞種が、形質移入が可能であることを示している。H−merは、CD44発現細胞(SK−3rd、がん幹細胞を含む)において細胞死をもたらすsiRNA混合物を選択的に送達するが、CV−1細胞の場合のようなCD44発現を欠く細胞においては送達しない。
【0227】
さらに、H−mer自体の使用は、この生存試験により観察されるいかなる毒性も引き起こさない(図4、灰色列)。
siRNAを封入したH−merは、望まない免疫応答を誘導しない。
【0228】
H−merがインターフェロン応答を引き起こしたかどうかを試験するために、ヒト白血病幹細胞由来のHL60細胞のインターフェロン応答について分析した。結果を図5に示す。
【0229】
HL60細胞の存在下で48時間まで培養した場合、対照siRNA1nmolを封入したH−merはインターフェロン応答を誘導しなかった(図5)。対照的に、siRNA凝縮体としてのオリゴフェクトアミン(商標)の使用は、望まない免疫応答を誘導し、非カプセル化siRNAも同様であった。ポリI:Cを陽性対照として使用した。
miRNAを封入したH−mer
【0230】
一本鎖miRNA模倣体(アンタゴmir)を含むDOTAP含有粒子も製剤化した。得られたアンタゴmirを封入したH−merは、本明細書以下の表4に要約され、図6に説明されるように、直径35nmの範囲のより小さい粒子を示す(対して、siRNAを使用すると約100nmである)。
【表4】
各々の値は、Malvern Nano ZS ゼータサイザーにおける3つの独立した測定の平均値±SDを表す。
アンタゴmirは、Dharmaconから購入した。アンタゴmir分子の数は、リボグリーン(Invitrogen)を使用して測定した。
実施例2
DLPE:DLPGをベースとする粒子
材料および方法
【0231】
材料:脂質(1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG))は、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster、AL、米国)から購入した。ヒアルロナン、Mw751KDa、固有粘度:16dL/g(Genzyme cooperation、Cambridge、MA);FITC−HAは、Calbiochem(登録商標)(ドイツ)から入手した。Cy3−siRNAは、Quiagenから購入し;非標識化siRNAはDharmaconから購入した。パクリタキセル、Taxus種からの半合成、最小97%;1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC);ホウ酸およびホウ砂(四ホウ酸ナトリウム十水和物)は、Sigma−Aldrich Co.(St.Louis、MO、米国)から購入した。3H−パクリタキセルホスファチジルエタノールアミン(arach−1−14C)および3H−HAは、American Radiolabeled Chemicals Inc.(St.Louis、MO、米国)から購入した。細胞培養プレートはCorning Inc.(Corning、NY)から入手した。細胞培養のための材料は、Biological Industries Co.(Beit Haemek、イスラエル)から入手した。透析管(12000〜14000の分子量カットオフ)は、Spectrum Medical Industries(Los Angels、CA)から購入した。ポリカーボネート膜はNucleopore(Pleasanton、CA)から購入した。他の全ての試薬は、分析用とした。
【0232】
siRNAをカプセル化したヒアルマーの調製:10:1(モル/モル)DLPE:DLPG、1:10(w/w)HA:脂質および1:100〜1:10siRNA:脂質(モル/モル)の比で粒子を調製した。他の意図した範囲には、1:850(モル/モル)siRNA:脂質が含まれる。
【0233】
活性化HA:HA1.33mgをpH4.5 100mM(0.33mg/ml)酢酸緩衝液4mlに溶解した。EDCを過剰に26.67mg添加し(20mg EDC/mg HA)、混合物を37℃で2時間振盪した。
【0234】
脂質−siRNA懸濁液の調製:DLPE4.5mgおよびDLPG0.5mgを量り、50mlプラスチック管に注入した。0.1M pH=9.0ホウ酸緩衝液3.5mlを乾燥した脂質に添加した。懸濁液をTm(約70℃)より上の温度で少なくとも2時間加熱し、その後、プローブソニケーター中、1分×5回超音波処理した。次いで、懸濁液を、70℃に加熱したジャケットを備えたLipex押出機で、0.1μmポリカーボネートフィルターを通して10回押し出し成形した。siRNA溶液(100μM)100μlを活性化HA1.5mlと共に添加した。振盪しながら37℃で一晩インキュベートした後、MWCO12〜14000膜を使用して透析を行った。
【0235】
粒子の表面トポロジー:実施例1について記載の通りである。
【0236】
粒子の流体力学的直径およびゼータ電位測定:実施例1に記載の通りである。
【0237】
カプセル化効率:実施例1に記載の通りである。
【0238】
siRNAの調製:本明細書上記の通りである。
【0239】
試験管内試験:本明細書上記の通りである。
【0240】
フローサイトメトリー研究:本明細書上記の通りである。
【0241】
画像取得および処理:本明細書上記の通りである。
【0242】
siRNAの試験管内形質移入:本明細書上記の通りである。
結果
siRNAを封入したヒアルマーの調製および構造評価
【0243】
siRNAを封入したヒアルマーを実験の節で詳述のように調製した。トポグラフィー(図7)および流体力学的直径(表1)により示されるように、これらは均一な球状ナノ粒子形状を形成した。ゼータ電位の測定(表5)は、(これらの条件で凝集体を形成しないことにより)生理的pHでの安定性を示している。さらに、ヒアルマーは、大量のRNAiペイロードを封入した(表5)。バッチ間の高い一貫性は、3つの独立した調製物における再現性により反映されている(表5)。
【表5】
【0244】
全測定は室温で行った。凍結乾燥したsiRNAを封入したヒアルマーを、0.01M NaCl、pH6.7に再懸濁した。リボグリーンアッセイ(invitrogen)によりsiRNAを定量化した。
【0245】
図8A〜Cで分かるように、ヒアルマー(FITC−HAを組み込むよう生成された)は、siRNAをHL60細胞(白血病幹細胞)に送達することが示された。
【0246】
図8A〜Cから明確に分かるように、ヒアルマーのみがsiRNAを白血病幹細胞中に送達することができ、同様に使用した市販の試薬オリゴフェクトアミン(商標)またはsiRNA単独では送達することができない。
実施例3
本発明の実施形態の粒子は、AML初代細胞およびヒト卵巣腺癌細胞を標的化することができる。
材料および方法
【0247】
AML初代細胞を標的化する粒子:粒子を実施例1に記載のように生成し、サイクリンD1、Cy3標識化siRNAを担持させた。
【0248】
ヒト卵巣腺癌細胞を標的化する粒子:10mg/mLの60%DOTAP、30%コレステロール、10%DLPEをエタノールに溶解し、透明な溶液が得られるまで加熱した。その後、脂質をビュッヒエバポレーター中で乾燥させ、ホウ酸緩衝液中で再水和した。次いで、溶液を激しくボルテックスし、37℃で2時間振盪機に入れた。
【0249】
脂質を、異なるフィルターを有する押出機中に通すことにより(400nm2回、200nm2回、100nm2回、50nm10回)、脂質粒子を形成させ、最終的な粒子の大きさは約80nmとなった。実験の日までULVを4℃に保った。
【0250】
組立のために、Opti−MEM112μlを、siRNA7μlと共に小ガラスバイアルに添加し、ヒトP糖タンパク質(Pgp)に添加した(20μMストック)。5分のインキュベーション後、希釈した脂質(1mg/ml)18.5μlを添加した。室温でさらに20分後、実施例1に記載のように酸性条件下で前もって予め活性化した希釈したHA(0.2mg/ml)18.5μlを添加した。混合物を室温で16時間インキュベートした。
【0251】
AML初代細胞の形質移入:AML患者から新しく単離した血液を、フィコール勾配密度で分離した(PBMC)。氷上でFACSAriaセルソーターを使用して、細胞をさらに選別した(CD3−CD19−/CD34+CD38−)。次いで、細胞(2.5×105個の細胞)を、6ウェルプレート中2.5mLのRPMI1640完全培地(10%血清含有)に播種した。150pmolのsiRNA(総濃度50nM)を使用して実施例1に詳述のように粒子を調製し、無血清RPMI培地500μlに再懸濁し、細胞上に配置した。総容積は3mLであった。RT−PCRを使用して、未処理および処理AML細胞のmRNAの量を決定した。
【0252】
ヒト卵巣腺癌細胞の形質移入:ヒト卵巣腺癌細胞を、抗生物質を含まない完全培地中、0.1×106細胞/ウェルの濃度で、24ウェルプレートで培養した。24時間後、培地を除去し、無血清RPMI培地に交換した。次いで、細胞をヒアルマー溶液110μlで処理した。抗生物質を含まない無血清RPMIによるインキュベーションの5時間後、血清を含む完全培地を添加した(最終血清濃度10%)。一晩のインキュベーション後、培地を完全RPMI培地に交換した。72時間後、Pgpタンパク質レベルをフローサイトメトリーにより分析した。
結果
【0253】
AML初代細胞へのヒアルマー送達:図9A〜Cおよび図10に示されるように、本発明の実施形態による粒子は、siRNAをAML初代細胞に送達し、強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができる。
【0254】
ヒト卵巣腺癌細胞へのヒアルマー送達:図11に示されるように、本発明の実施形態による粒子は、siRNAをヒト卵巣腺癌初代細胞に送達し、強力な遺伝子サイレンシングを誘導することができる。
【0255】
本発明はその特定の実施形態と組み合わせて記載されてきたが、多くの代替、修正および変形が当業者に明白であることが明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲に入るこのような全ての代替、修正および変形を包含することが意図されている。
【0256】
本明細書中で言及する全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各々の刊行物、特許および特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。さらに、本出願中の任意の参考文献の引用および同定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認と解釈すべきではない。節の見出しが使用される範囲において、それらを必ずしも限定的なものと解釈すべきてはない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリヌクレオチドを、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、前記カチオン性分子は静電的相互作用により前記ポリヌクレオチドを凝縮して複合体を生成し、前記カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5以下のpHで、前記複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するための粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するための粒子を生成する方法。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドがDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドがRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが一本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが二本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドがRNAサイレンシング剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記RNAサイレンシング剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RNAサイレンシング剤が、siRNAまたはmiRNAを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記カチオン性分子が、カチオン性ポリペプチド、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤および合成ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオン性脂質が、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、中性脂質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記中性脂質が、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、アニオン性リン脂質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アニオン性リン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、コレステロールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記合成ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)またはポリ−L−リジンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記標的化部分が、ポリペプチド標的化部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記標的化部分が、抗体、抗体断片、アプタマーおよび受容体リガンドからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記標的化部分が、グリコサミノグリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記グリコサミノグリカンが、HAを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)の前に前記グリコサミノグリカンを活性化するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化が、酸性緩衝液中で前記グリコサミノグリカンをインキュベートすることにより行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記標的化部分がHAを含み、前記ポリヌクレオチド剤がsiRNAまたはmiRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記複合体が、ステップ(b)の前に押し出し成形されない、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
請求項1から27に記載の方法のいずれかに従って生成される粒子。
【請求項29】
シリコン表面上で乾燥させると直径が約100nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項30】
シリコン表面上で乾燥させると直径が約30nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項31】
溶液中で直径が約30〜300nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項32】
形が丸い、請求項28に記載の粒子。
【請求項33】
約−40mVのゼータ電位を含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項34】
帯電している、請求項28に記載の粒子。
【請求項35】
中性である、請求項28に記載の粒子。
【請求項36】
ナノ粒子である、請求項28に記載の粒子。
【請求項37】
前記標的化部分が、HAを含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項38】
抗体、抗体断片、受容体リガンドおよびアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つの追加の標的化部分をさらに含む、請求項37に記載の粒子。
【請求項39】
約6000個を超えるsiRNAまたはmiRNA分子を含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項40】
請求項28から39のいずれかに記載の複数の粒子を含む組成物。
【請求項41】
実質的に均一である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物であって、前記粒子の集団の粒子の各々が、約−40mVのゼータ電位を含み、前記粒子の集団の粒子の各々が、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである組成物。
【請求項43】
miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物であって、前記粒子の集団の粒子の各々が、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである組成物。
【請求項44】
請求項7に記載の方法に従って生成される粒子を、CD44を発現している標的細胞と接触させ、それにより標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御するステップを含む、標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御する方法。
【請求項45】
被験体に治療上有効量の請求項7に記載の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法。
【請求項46】
前記投与が生体内で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が生体外で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記RNAサイレンシング剤が、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記RNAサイレンシング剤が、生存率と関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項1】
(a)ポリヌクレオチドを、カチオン性分子を含む組成物と接触させるステップであって、前記カチオン性分子は静電的相互作用により前記ポリヌクレオチドを凝縮して複合体を生成し、前記カチオン性分子はリポソームに含まれないステップと、
(b)約4.5以下のpHで、前記複合体を標的化部分に共有結合させて、標的細胞にポリヌクレオチド剤を送達するための粒子を生成するステップと
を含む、標的細胞にポリヌクレオチドを送達するための粒子を生成する方法。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドがDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドがRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが一本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが二本鎖である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドがRNAサイレンシング剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記RNAサイレンシング剤が、siRNA、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RNAサイレンシング剤が、siRNAまたはmiRNAを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記カチオン性分子が、カチオン性ポリペプチド、カチオン性脂質、カチオン性界面活性剤および合成ポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カチオン性脂質が、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)、ジオレオイル−1,2−ジアシル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン(DOTAP、18:1;14:0;16:0;18:0)およびN−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−エチルホスホコリン(エチルPC、12:0;14:0;16:0;18:0;18:1;16:0〜18:1);1,2−ジ−(9Z−オクタデセノイル)−3−ジメチルアンモニウム−プロパンおよび3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール塩酸塩(DC−コレステロール)からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、中性脂質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記中性脂質が、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、アニオン性リン脂質をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アニオン性リン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、コレステロールをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記合成ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)またはポリ−L−リジンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記標的化部分が、ポリペプチド標的化部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記標的化部分が、抗体、抗体断片、アプタマーおよび受容体リガンドからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記標的化部分が、グリコサミノグリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記グリコサミノグリカンが、ヒアルロン酸(HA)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、デルマチン硫酸、これらの塩および混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記グリコサミノグリカンが、HAを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(b)の前に前記グリコサミノグリカンを活性化するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記活性化が、酸性緩衝液中で前記グリコサミノグリカンをインキュベートすることにより行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、水素化ホスファチジルコリン(HSPC)、コレステロールおよびジオレオイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)および1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−グリセロール(DLPG)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記標的化部分がHAを含み、前記ポリヌクレオチド剤がsiRNAまたはmiRNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記複合体が、ステップ(b)の前に押し出し成形されない、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
請求項1から27に記載の方法のいずれかに従って生成される粒子。
【請求項29】
シリコン表面上で乾燥させると直径が約100nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項30】
シリコン表面上で乾燥させると直径が約30nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項31】
溶液中で直径が約30〜300nmである、請求項28に記載の粒子。
【請求項32】
形が丸い、請求項28に記載の粒子。
【請求項33】
約−40mVのゼータ電位を含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項34】
帯電している、請求項28に記載の粒子。
【請求項35】
中性である、請求項28に記載の粒子。
【請求項36】
ナノ粒子である、請求項28に記載の粒子。
【請求項37】
前記標的化部分が、HAを含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項38】
抗体、抗体断片、受容体リガンドおよびアプタマーからなる群から選択される少なくとも1つの追加の標的化部分をさらに含む、請求項37に記載の粒子。
【請求項39】
約6000個を超えるsiRNAまたはmiRNA分子を含む、請求項28に記載の粒子。
【請求項40】
請求項28から39のいずれかに記載の複数の粒子を含む組成物。
【請求項41】
実質的に均一である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
siRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物であって、前記粒子の集団の粒子の各々が、約−40mVのゼータ電位を含み、前記粒子の集団の粒子の各々が、溶液中の場合、直径が約100〜300nmである組成物。
【請求項43】
miRNAおよびカチオン性分子の核、ならびに標的化部分を含む殻を含む粒子の実質的に均一な集団を含む組成物であって、前記粒子の集団の粒子の各々が、溶液中の場合、直径が約30〜50nmである組成物。
【請求項44】
請求項7に記載の方法に従って生成される粒子を、CD44を発現している標的細胞と接触させ、それにより標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御するステップを含む、標的細胞内の目的の遺伝子を下方制御する方法。
【請求項45】
被験体に治療上有効量の請求項7に記載の方法に従って生成される粒子を投与し、それによりがんを治療するステップを含む、それを必要とする被験体のがんを治療する方法。
【請求項46】
前記投与が生体内で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が生体外で行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記RNAサイレンシング剤が、発がん遺伝子の発現を下方制御するよう選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記RNAサイレンシング剤が、生存率と関連する遺伝子の発現を下方制御するよう選択される、請求項45に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A−8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A−8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−500960(P2013−500960A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522335(P2012−522335)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000614
【国際公開番号】WO2011/013130
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507253749)ラモット アット テル アビブ ユニバーシティ, リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000614
【国際公開番号】WO2011/013130
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507253749)ラモット アット テル アビブ ユニバーシティ, リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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