説明

ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーおよびこれを用いた水系顔料分散液

【課題】より高い分散安定性と耐擦過性に優れたPVA系ブロックコポリマ−を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるPVA系ブロックコポリマー。


(但し、上記一般式(1)において、AはPVA系ブロックを示し、Bは疎水性セグメントB’と、A以外の親水性セグメントB’’とを含むブロックを示し、ブロックAに近い方からB’、B’’の順に配置され、ブロックBはグラジエントポリマーであり、X、X、X及びXは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基(但し、これらの有機基は、炭素数が1〜20であり、且つ、直鎖、分岐または環状の何れであってもよい)であり、X、X、X及びXは相互に異っていてもよく、m1は1〜5の整数を表し、m2は0〜4の整数を表し、m1+m2が1〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリビニルアルコール系ブロックコポリマーおよびこれを用いた水系顔料分散液に関する。詳しくは、インクジェットプリンター等の記録液として用いる顔料分散型の記録液、及びこれに用いることができるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターは、フルカラー化が容易であること、騒音が少ないこと、高解像度の画像が低価格で得られること、高速印字が出来ること、などの理由から、パーソナルユース、ビジネスユースの両面から急速に普及しつつある。現在、インクジェットプリンターに用いる記録液としては水性の記録液が主流であり、解像度の高い印刷物が得られるようになってきている。
【0003】
この水性記録液としては、従来、水溶性染料と液媒体を主成分とするものが主流であった。しかしこの水性記録液によって得られる印刷物は、水性記録液が水溶性染料を含むために、耐水性、耐光性、耐オゾン性等が不十分であった。そこで近年、この様な染料に代えて、顔料を水性媒体中に分散させた顔料分散型の水性記録液(以下、単に「インク」と言うことがある。)が開発されている。
【0004】
近年では、印刷物の解像度向上に伴い、インク吐出ノズルからの1回のインク吐出量の低下が著しい。そしてインクジェットプリンターの印字速度向上に対する要求が高まっていることから、顔料分散型の水性記録液に対して、より高い顔料分散安定性と印刷物の耐擦過性が求められてきている。これに対して、顔料分散型の水性記録液に、各種の水溶性高分子や水分散性高分子等を顔料分散剤として用いる方法が提案されている。
【0005】
水溶性または水分散性高分子としては、例えばポリビニルアルコールやポリビニルアルコールを主成分とするポリビニルアルコール系ブロックコポリマー等が、一般的に知られている。ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と言うことがある。)は結晶性高分子であるため、けん化度が高過ぎると水への溶解度が低くなる。またこの様なPVAは一般の有機溶媒に対する溶解性が低いので、PVAの高機能化を計る目的で、けん化度を低くしたPVA(部分けん化PVA)や、PVAの水酸基を、アルデヒド基を有する化合物と反応させることにより、有機溶媒への溶解性を向上させたPVA(変性PVA)の他、高分子分散剤として有効な特性を持たせるために、PVAに異種のポリマーをブロック的に結合させた、PVA系ブロックコポリマーが知られている。そしてこの様なPVA系ブロックコポリマーを、高分子分散剤として用いることが提案されている。
【0006】
例えばPVA系ブロックコポリマーとして、PVA系ブロックと他のブロックがイオウ原子含有連結器を介して結合したもの(例えば特許文献1、2参照)や、エーテル結合を介して結合したもの(例えば特許文献3、4参照)、窒素原子を介して結合したもの(例えば非特許文献1、2参照)の他、更には三つのブロックからなるPVA系ブロックコポリマー等が提案されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−189113号公報
【特許文献2】特開平6−136036号公報
【特許文献3】特開2001−19770号公報
【特許文献4】特開2001−72728号公報
【特許文献5】特開平7−53841号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer,39 109 1998
【非特許文献2】Polymer,39 1369 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や2に記載のPVA系ブロックコポリマーは、PVA系ブロックと他のブロックがイオウ原子を介して結合しているので耐熱性が低く、インク吐出時などの加熱時や印刷後の乾燥時に着色し易いと言う問題があった。また特許文献3や4に記載のPVA系ブロックコポリマーは、その製造方法故にコポリマーに導入できるモノマーがカチオン重合性モノマーに限定されている。よって工業的に有用であるアクリレート系やメタクリレート系モノマーの導入には適応できないという問題があった。
【0010】
そして非特許文献1、2に記載のPVA系ブロックコポリマーは、その製造方法が紫外線照射による重合方法であるために、工業的実施には不適当であるという問題があった。
更に、特許文献5には、単なる一般的な例示の一つとして、コポリマーのブロックとしてPVA系ブロックを用いることができる旨の記載はされている。しかし具体的な例としてはアクリル系ブロックコポリマーの例しか示されていない。
【0011】
またこの様な高分子分散剤を用いる際には、顔料分散水性インク中の顔料の分散安定性維持や、印刷物の耐擦過性を一定以上とするために、インク中の高分子分散剤の含有量を増加しなければならなかった。その為、インクの粘度は高くなり、インクジェット記録方法等においては、インク吐出ノズルからのインク吐出性の低下や、ノズル目詰まりなどにより印刷が不可能となるという問題があった。
【0012】
よって、より高い分散安定性と耐擦過性に優れた印刷物を提供できる、特にインクジェット用記録液として優れた顔料分散水性記録液の開発が望まれていた。中でもこの様な要求を満たす高分子分散剤が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで本発明者らはこの様な課題を解決すべく、顔料分散型水性記録液について鋭意検討を行った。その結果、顔料分散型の記録液に用いる高分子分散剤として、PVA系ブロックと他のブロックが、置換基を有していても良いアルキレン鎖で連結した、特定の構造を有する、新規なポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを用いることによって、顔料の分散安定性が良好となるばかりでなく、記録液の吐出性も同時に良好となり、更には得られる印刷物の耐擦過性も優れるということを見出した。
【0014】
特に、この特定のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーにおいて、ポリビニルアルコール系ブロックと連結したブロックがコポリマーであって、且つこのコポリマーが、それを構成する複数種のモノマーの組成がコポリマー鎖に沿って変化している、いわゆる勾配(グラジエント)コポリマーである際に、先述した効果が更に顕著となることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
即ち本発明の要旨は、下記一般式(1)で表されるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーに関する。また本発明の今ひとつの要旨は、水性媒体中に、少なくとも顔料と、この特定のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとを含有する顔料分散水性液、及
びこの顔料分散水性液を含む記録液に関する。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、Aはポリビニルアルコール系ブロックを示し、Bは疎水性セグメントB’と、A、B’以外の親水性又は疎水性セグメントB’’とを含むブロックを示し、X1、X2、X3及びX4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を示し、m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、印字濃度が高く、にじみが抑制され印字品位が良く、更に耐擦過性、耐光性、耐水性などの堅牢性も良好な印刷物を与えるとともに、粘度が低く、吐出性が良好で且つ保存安定性が良好な、顔料分散型記録液を提供することが出来る。特に本発明の記録液は、インクジェットプリンター等の記録液に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例5における、反応時間とグラジエントコポリマーの数平均分子量の推移を表した図。
【図2】実施例6における、反応時間とグラジエントコポリマーの数平均分子量の推移を表した図。
【図3】実施例7における、反応時間とグラジエントコポリマーの数平均分子量の推移を表した図。
【図4】比較例2における、反応時間とグラジエントコポリマーの数平均分子量の推移を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.ポリビニルアルコール系ブロックコポリマー
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーは、以下の一般式(1)で表されるように、ポリビニルアルコール系ブロックAと、他のブロックBとが、特定の連結基で連結されているブロックコポリマーである。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、Aはポリビニルアルコール系ブロックを示し、
Bは疎水性セグメントB’と、A、B’以外の親水性又は疎水性セグメントB’’とを含むブロックを示し、
1、X2、X3及びX4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を示し、m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【0023】
本発明に用いられるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーは、通常、数平均分子量が1000以上、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上であり、かつ、15万以下、好ましくは10万以下、更に好ましくは6万以下、より好ましくは4万以下の範囲のものである。また、その分子量分布(Mw/Mn)は狭い方が好ましく、中でも4以下、特に2以下であることが好ましい。
【0024】
<一般式(1)中のポリビニルアルコール系ブロックAについて>
ポリビニルアルコール系ブロックAは、ビニルアルコール系ポリマー残基であり、その水酸基は一部が、アシル基で保護されていても良い。
該アシル基としては、水酸基の保護基として一般的なものであれば特に限定されないが、好ましくは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ペンチルカルボニル基、ネオペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ヘプチルカルボニル基、デシル基、ラウロリル基、ミリストリル基、パルミトイル基、ステアロイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、フェニルブチルカルボニル基、ジフエニルメチルカルボニル基、トリフエニルメチルカルボニル基、ナフチルメチルカルボニル基、ナフチルエチルカルボニル基等のハロゲン原子及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアルキルカルボニル基;アクリロイル基、イソプロペニルカルボニル基、3−ブテニルカルボニル基、メタクロイル基、アリルカルボニル基、1,1−ジメチルアリルカルボニル基、クロトノイル基、3−メチルアリルカルボニル基、2,3−ジメチルアリルカルボニル基、3,3−ジメチルアリルカルボニル基、シンナモイル基、3−シクロヘキシルアリルカルボニル基等のアルケニルカルボニル基;炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を1〜3個有していても良いベンゾイル基又はナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基が挙げられ、このうち好ましくはアセチル基、クロロアセチル基、アリルカルボニル基、ベンゾイル基又はベンジルカルボニル基が挙げられる。中でも、アセチル基であることが好ましい。
【0025】
ポリビニルアルコール系ブロックAにおいて、ビニルアルコール系ポリマー残基における水酸基のアシル化率は、最終的に得られるポリマーの用途によって適宜選択し決定すればよい。一般的にはポリビニルアルコール系ブロックA中のトータルユニット数の20%以下、好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下である。
このビニルアルコール系ポリマー残基は、下記一般式(2)〜(5)で示されるものが、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、a及びbは−OH又は−OCOR3(但しR3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示し、a及びbが同時に−OCOR3である場
合を除く。)を示し、R1及びR2は各々独立して水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、nは1〜1000の整数であり、Dは以下の一般式(6)又は(7)で表される。
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、R4は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R5は−OH又は−OCORA(但しRAは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)を示す。))
【0030】
1、R2は、各々独立して水素原子、または炭素数1〜6の炭化水素基を示す。この炭素数1〜6の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基などが挙げられる。中でも、水素原子または炭素数が少ないアルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特に水素原子、またはメチル基が好ましい。
【0031】
a及びbは、−OH又は−OCOR3を示し、a及びbが同時に−OCOR3である場合を除く。そしてR3は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキ
ル基を示す。R3におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基は
、炭素数が1〜20であることが好ましく、直鎖、分岐または環状の何れでもよく、炭素原子は置換基を有していてもよい。
【0032】
具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等のアルキル基や置換アルキル基;
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、3−メチルアリル基、2,3−ジメチルアリル基、3,3−ジメチルアリル基、シンナミル基、3−シクロヘキシルアリル基等のアルケニル基や置換アルケニル基;
フェニル基、ナフチル基等のアリール基;
フェニル基、ナフチル基等のアリ−ル基における1〜3個の水素原子をメチル基、エチル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等の官能基で置換した置換アリール基;
ベンジル基、フェネチル基、フェニルブチル基、ジフエニルメチル基、トリフエニルメチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等のアラルキル基や置換アラルキル基、等が挙げられる。
【0033】
中でもR3としてはメチル基、クロロメチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基が
好ましく、更には炭素数の少ない、アルキル基または置換アルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3の、アルキル基又は置換アルキル基が好ましく、特にメチル基またはクロロメチル基が好ましい。
4は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R5は−OH又は−OCORA
を示し、RAは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を
示す。R4における炭素数1〜6の炭化水素基としては、具体的には上述のR1、R2と同
様のものが挙げられる。中でも水素原子、炭素数が少ないアルキル基が好ましく、具体的には水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特に水素原子、メチル基が好ましい。
【0034】
5における−OCORAとしては、RAが炭素数1〜20の、アルキル基、アルケニル
基、アリール基またはアラルキル基であることが好ましく、これらは直鎖、分岐または環状の何れでもよく、炭素原子は置換基を有していてもよい。RAにおける炭素数1〜20
の、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基としては、具体的には上述のR3と同様のものが挙げられる。中でもメチル基、クロロメチル基、アリル基、フェ
ニル基、ベンジル基が好ましく、更には炭素数の少ない、アルキル基または置換アルキル基が好ましく、具体的には炭素数1〜3の、アルキル基又は置換アルキル基が好ましく、特にメチル基またはクロロメチル基が好ましい。
【0035】
上述の通り、ポリビニルアルコール系ブロックAは、一般式(2)〜(5)で表される様に、各ビニルアルコールユニットが「頭」−「頭」、「頭」−「尾」、「尾」−「頭」及び「尾」−「頭」の4つの結合様式から任意の組み合わせで結合したものであることが好ましい。通常、ポリビニルアルコール系ブロックAにおけるビニルアルコールユニット数は2以上有ればよいが、通常は10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらに好ましくは40以上であり且つ、その上限は2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは250以下である。
【0036】
よって一般式(2)〜(5)におけるnは、1以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり且つ、その上限は1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは250以下、更に好ましくは125以下の整数である。
このビニルアルコールユニット数が少な過ぎる(つまり、nが小さ過ぎる)と、本発明
のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの水溶性が低下することで顔料分散性が低下したり、印刷物の耐擦過性が低下する場合がある。逆にビニルアルコールユニット数が多すぎる(つまり、nが大きすぎる)と、顔料分散水性液の粘度が高くなりすぎてしまうことにより顔料分散性が低下したり、またこの様な顔料分散水性液を記録液として用いた場合には、記録液の吐出性が低下する場合がある。
【0037】
またポリビニルアルコール系ブロックAの立体規則性は、特に制限されないが、アタクチック構造またはアタクチック構造に近いシンジオタクチック構造が好ましく、アタクチック構造が更に好ましい。
そしてこのポリビニルアルコール系ブロックAは、本発明の趣旨を損なわない範囲ならば、共重合成分としてビニルアルコール以外のモノマー由来のユニットを有していても良いが、その含有量は、通常、ポリビニルアルコール系ブロックA全体に対して15モル%以下であり、特に10モル%以下であることが好ましい。
【0038】
このモノマーとしては例えば、以下の様なものが挙げられる。エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセ卜ンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩と4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、ジアセ卜ンメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩と4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩とエステル、イタコン酸およびその塩とエステル等のジカルボン酸類及びそのエステル誘導体;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等。
【0039】
ポリビニルアルコール系ブロックAの分子量は、一般的には500以上、中でも800以上、特に1000以上であり、且つその上限は100000以下、中でも50000以下、更には30000以下、特に10000以下であることが好ましい。分子量が小さ過ぎると、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの水溶性が低下することで顔料分散性が低下したり、印刷物の耐擦過性が低下する場合がある。逆に大きすぎても、顔料分散水性液の粘度が高くなりすぎてしまうことにより顔料分散性が低下したり、またこの様な顔料分散水性液を記録液として用いた場合には、記録液の吐出性が低下する場合がある。
【0040】
<一般式(1)中のポリビニルアルコール系ブロックAと、ブロックBとの連結基について>
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーにおいては、一般式(1)におけるポリビニルアルコール系ブロックAと他のブロックBとの連結基が、特定の連結基、具体的には置換基を有していても良いアルキレン基であることを特徴とする。
【0041】
一般式(1)において、X1、X2、X3及びX4は、各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を示す。そしてこれらの中でもアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基としては炭素数1〜20であることが好ましく、これらは直鎖、分岐または環状の何れでもよく、炭素原子は置換基を有していてもよい。
【0042】
具体的には、水素原子;F、Cl、Br、I等のハロゲン原子;及び上述のR3と同様
なものが挙げられる。中でも置換アリール基においては、置換された官能基は本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの安定性を損なわない範囲で任意のものを使用でき、具体的にはメチル基、エチル基、ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましい。
【0043】
そしてX1、X2、X3及びX4としては水素原子、ハロゲン原子、炭素数4以下のアルキル基、アルケニル基、ベンジル基又はフェニル基が好ましく、中でも水素原子、ハロゲン原子、メチル基、アリル基、ベンジル基またはフェニル基が好ましく、特に水素原子またはハロゲン原子が好ましい。
m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。中でもm1+m2が1〜3の整数であることが好ましく、特にm1+m2が1または2であることが好ましい。
【0044】
本発明において、ポリビニルアルコール系ブロックAとブロックBとの連結基の具体例としては、炭素数が比較的少ないアルキレン基やハロアルキレンが好ましく、特にハロアルキレン基が好ましい。具体的には例えば炭素数1〜3のアルキレン基やハロアルキレン基としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、クロロメチレン基、ジクロロメチレン基、ジブロモメチレン基またはテトラクロロエチレン基等が挙げられ、中でもクロロメチレン基、ジクロロメチレン基、ジブロモメチレン基またはテトラクロロエチレン基等が好ましい。
【0045】
<一般式(1)中のブロックBについて>
ブロックBは、疎水性セグメントB’と、先述のA及びB’以外の親水性又は疎水性セグメントB’’とを含むブロックを示す。
ブロックBにおけるセグメントB’及びB’’の配置順序は任意であるが、ポリビニルアルコール系ブロックAに近い方から、B’、B’’の順に配置されていることが好ましく、なかでもこの際のセグメントB’’は親水性セグメントであることが好ましい。このような配置を採ることによって、顔料分散水性液における顔料の分散安定性が極めて良好となるばかりでなく、印刷物の耐擦過性も同時に向上する。この理由は定かではないが、以下の様なことが考えられる。
【0046】
ポリビニルアルコール系ブロックAは水溶性で且つ結晶性を示すブロックである。よって連結基を介してこのブロックAと結合するブロックBが、疎水性セグメントB’、親水性セグメントB’’を、連結基からこの順に配置することで、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマー両末端側が親水性となる。そしてこの親水性部分に挟まれた疎水性セグメントB’が、疎水性である顔料表面に吸着する。
【0047】
このようにポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが吸着した顔料同士は、疎水性
セグメントB’の両側にある親水性部分によって、水性媒体中でお互いに反撥するので、顔料分散水性液中での凝集が抑制され、分散安定性が良好となると考えられる。
更には、ブロックB中のセグメントB’’として、イオン性を有する親水性セグメントを用いることで、ポリビニルアルコール系ブロックAによる構造的な反撥と、このセグメントB’’の電気的反撥の両方を利用することが出来るので,更に分散が安定し、好まし
い。
【0048】
特に、ブロックBをグラジエントコポリマーとすることによって、更に顔料分散安定性が向上するので好ましい。この様に顔料分散安定性が向上する理由は定かではないが、以下の様な理由が考えられる。高分子分散剤と顔料とを水やアルコール類等の水性媒体中で接触させ、顔料分散水性液を製造する際に、疎水性のポリマー鎖はその疎水性故に、水性媒体中においてポリマー鎖自身が凝集することが考えられる。そしてこの凝集体は、顔料分散時においても凝集が解けないくらい、堅固なものとなる場合が考えられ、このような疎水性ポリマー鎖では、疎水性である顔料表面を広く覆うことが困難であると考える。
【0049】
しかし、上述の疎水性セグメントB’においては、疎水性のモノマー以外に少量の親水性モノマーを含んだグラジエントコポリマーとすることによって(例えばスチレンモノマーを主とする疎水性セグメントB’が(メタ)アクリル酸系モノマー等の親水性モノマーを含むことによって)、疎水性セグメントB’の構造に柔軟性を持たせることが出来るので、水性媒体中での顔料分散時においても堅固な凝集体となることを抑制出来ると考えられる。そしてこの様な疎水性セグメントを有する高分子分散剤は、顔料表面をより広く覆うことが出来ると考えられる。この様に、疎水性である顔料表面を広く覆うことで、顔料表面の疎水性を低減することが可能となり、水性媒体中における顔料の分散安定性が向上する、と考えられる。
【0050】
更にブロックBは、下記一般式(8)〜(11)で示されるものが、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0051】
【化5】

【0052】
(式中、R6は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基
を示し、R7は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、カルボ
キシラト塩、アミノカルボニル基、アルキル基、アシロキシ基、アルケニル基、アリール基またはアルコキシカルボニル基を示し、R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基
、アルキルエーテル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基を示し、lは1〜1000の整数である。)
【0053】
6は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基を示す
。具体的にはハロゲン原子としてF、Cl、Br、Iが挙げられ、炭素数1〜10アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、デシル基等が挙げられる。R6としてはこれらのうち水素原子、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、中
でも炭素数が比較的小さいものが好ましく、具体的には炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、特に水素原子、メチル基が好ましい。
【0054】
7は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、カルボキシラ
ト塩、アミノカルボニル基、アルキル基、アシロキシ基、アルケニル基、アリール基またはアルコキシカルボニル基を示す。具体的にはF、Cl、Br、I等のハロゲン原子;先述のR3と同様のアルキル基、アルケニル基、アリール基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチルオキシ基、バレリルオキシ基、イソバレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トルオイルオキシ基等のアシロキシ基;カルボキシル基;−COONa、−COOK等のカルボキシラト塩;アミノカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基等の直鎖または分枝状のアルコキシカルボニル基;フェニルカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアリールカルボニル基;等が挙げられる。
【0055】
中でもR7としては、メチル基、アセトキシ基、アリル基、フェニル基、t−ブトキシ
カルボニル基、アリールカルボニル基、メトキシカルボニル基、カルボキシラト塩が好ましく、特にフェニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルカルボニル基、メトキシカルボニル基、カルボキシラト塩が好ましい。
8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基、アルケニル基、
アリール基、アラルキル基、アシロキシ基を示す。具体的にはR7にて開示されたものと
同様であり、中でも水素原子、ハロゲン原子が好ましい。
【0056】
一般式(8)〜(11)におけるlは、1〜1000の整数である。中でも1以上であり且つその上限は500以下、特に200以下であることが好ましい。
ブロックBにおける、より具体的なセグメントB’、B’’としては、親水性セグメントとしては電荷基を有するポリマー残基が好ましく、例えばアクリル酸ナトリウムポリマー残基(AA(Na))、等のアクリル酸塩ポリマー残基;メタクリル酸ナトリウムポリマー残基(MAA(Na))等のメタクリル酸塩ポリマー残基;等が好ましい。
【0057】
また疎水性セグメントとしては、電荷基を有さないものが好ましく、具体的には例えば、ベンジルアクリレートポリマー残基、ベンジルメタクリレートポリマー残基(BzMA)等のアリール(メタ)アクリレート系ポリマー残基;2エチルヘキシルアクリレートポリマー残基(2EtHxA)、n−ブチルアクリレートポリマー残基(n−BtA)、t−ブチルアクリレートポリマー残基(t−BtA)、メチルアクリレートポリマー残基(MeA)、エチルアクリレートポリマー残基(EtA)等の、アルキル(メタ)アクリレート系ポリマー残基;スチレン系ポリマー残基(St)等が挙げられる。中でも(BzMA)等のアリールメタクリレート系ポリマー残基や、(2EtHxA)、(n−BtA)、(t−BtA)、(MeA)等のアルキルアクリレート系ポリマー残基、スチレン系ポリマー残基(St)等が好ましい。
【0058】
ブロックBの分子量は、一般的には500以上であり、且つその上限は50000以下、特に20000以下であることが好ましい。
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとしては、先述の一般式(1)において、ポリビニルアルコール系ブロックAが先述の一般式(2)〜(5)の何れかで表され、且つブロックBが先述の一般式(8)〜(11)の何れかで表されるものであることが好ましい。中でも、これらブロックA、Bにおいて、各々の好ましいものを組み合わせたポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが、本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0059】
<ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの製造方法について>
次に、先述の一般式(1)で表される本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーの製造方法の一例について説明する。
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーは、まず連鎖移動重合法等により、例えば以下の一般式(12)で表される、片末端にハロゲン原子Zを有するポリビニルエステルを得る。このポリビニルエステルは、片末端にハロゲン原子が結合していることを除くと、前述のポリビニルアルコール系ブロックAに類似した構造を有する。次いでこのポリビニルエステルをマクロ開始剤として用い、原子移動ラジカル重合法等によりラジカル重合性モノマーを重合してポリビニルエステルを含むブロックコポリマーを得る。その後、このブロックポリマー中のポリビニルエステル部分をけん化することで、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを得ることが出来る。但し、けん化は重合前に行なうことも出来、この場合は、けん化で得られたポリビニルアルコールがマクロ開始剤として使用され原子移動型ラジカル重合が行なわれる。
【0060】
【化6】

【0061】
(式中、A’は上述の一般式(2)〜(5)で表されるユニットにおけるaが全て−OCOR3(但しR3は先述と同義である。)で表されるアシルオキシ基を示し、X1、X2、X3、およびX4、ならびにm1、m2は、先述と同義であり、ZはF、Cl、Br、I等のハロゲン原子を示す。)一般式(12)におけるZとしては、中でも塩素原子が好ましい。
【0062】
先ず、連鎖移動重合法による一般式(12)で表されるポリビニルエステルの調製法について説明する。
上記の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルは、テロメリゼーションと呼ばれる連鎖移動重合法により合成することが出来る(Eur.Polym.J. ,18
,779 1982)。すなわち、連鎖移動剤(テローゲン)と呼ばれる、ラジカル連鎖移動定数の大きいポリハロゲン化炭化水素の存在下、ビニルエステルのラジカル重合を行なうことにより、片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルが定量的に得られる。なお、一般式(12)において、A’とZの間の連結基は、一般式(1)におけるA−Bの連結基に相当し、連鎖移動剤によって誘導される。すなわち、一般式(1)中のX1
、X2、X3、およびX4は連鎖移動剤に由来する。
【0063】
先述の連鎖移動剤としては、メチレンクロライド、エチレンクロライド、ジクロロエタン、エチリデンクロライド、エチリデンブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素、メチルクロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、アリルクロライド、ブチルクロライド、ブチルブロマイド、ブチルアイオダイド、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンジルクロライド、メタアリルクロライド等が挙げられる。
【0064】
先述のビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ギ酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、これらのα置換体などが挙げられる。これらの中では、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ギ酸ビニルの様な側鎖の嵩高いビニルエステル又は極性の高いビニルエステル類が好適である。
【0065】
連鎖移動重合法では、連鎖移動剤とビニルエステルモノマーの比を選択することにより、また、重合溶媒を使用する場合はモノマー濃度を変化させることにより、分子量を任意に調節することが出来る。
連鎖移動重合法におけるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、レドックス系開始剤、UV系開始剤などの公知のものを使用することが出来る。また、放射線や電子線も使用することが出来る。これらの中では、アゾ系開始剤が取扱い易くて好ましい。
【0066】
重合反応は、無溶媒または溶媒の存在下に行なうことが出来る。重合反応溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類が挙げられる。また、使用する連鎖移動剤が液体である場合には、これを重合反応溶媒として使用してもよい。溶媒として使用される連鎖移動剤としては、好ましくはハロゲン化炭化水素であり、更に好ましくはクロロホルムである。
【0067】
重合反応を行う際、ビニルエステルモノマー、連鎖移動剤、重合溶媒、ラジカル開始剤等の添加順序等は任意であるが、例えば、ビニルエステルモノマー、連鎖移動剤、重合溶媒、ラジカル重合開始剤を反応容器に一括で仕込んだ後に温度を上昇させ重合反応を行う方法が挙げられる。また別の方法としては、ビニルエステルモノマー、連鎖移動剤、重合溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有するモノマー溶液や連鎖移動剤、重合溶媒、またはこれらの混合物を、連続的にまたは分割して添加し、重合反応を行う方法等が挙げられる。中でも、ビニルエステルモノマー、連鎖移動剤、重合溶媒を反応容器に仕込んで温度を上昇させた後に、ラジカル重合開始剤を含有する重合溶媒を分割して添加する方法が、重合反応時の発熱を制御できるので好ましい。
【0068】
連鎖移動剤の使用量は特に限定されないが、ビニルエステルモノマー100重量部に対し、通常0.01重量部以上、好ましくは1重量部以上2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。溶媒の使用量は特に限定されないが、単量体100重量部に対し、通常1重量部以上2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。重
合温度は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は200℃以下、好ましくは150℃以下である。
【0069】
この様にして得られたポリビニルエステルは、定法に従って精製し、次の工程へ供される。この精製方法としては例えば、モノマーと重合溶媒が可溶でポリビニルエステルが不溶な溶媒中へ重合溶液を投入し、ポリビニルエステルを沈殿させ、濾別後、乾燥させる方法が挙げられる。また、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後に、反応溶媒を置換する精製方法なども挙げられる。中でも、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後、反応溶媒を置換する精製方法が好ましく、特にこの精製方法においては、未反応モノマーの除去操作時にポリビニルエステルを含む溶液にアルカリ成分を添加することで、蒸留等によって生成する系内の酸を中和し、この酸によるポリビニルエステルの分解が抑制できるので好ましい。蒸留によって未反応モノマーや反応溶媒を除去する際には、減圧下で蒸留を行うことが好ましい。減圧蒸留時は未反応モノマーの重合とポリビニルエステルの分解を避けるために、50℃以下で行うことが好ましく、中でも40℃以下で減圧蒸留を行うことが好ましい。
【0070】
次に、先述の原子移動ラジカル重合法、すなわち、片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルをマクロ開始剤とする原子移動ラジカル重合法について説明する。原子移動型ラジカル重合法は、リビングラジカル重合法の1つの方法であり、次の様な図式で表される。
【0071】
【化7】

【0072】
上述の図式において、(P)はポリマー又は開始剤、(M)は遷移金属、Xはハロゲン原子、Y及びLは(M)に配位可能な配位子、n及びn+1は遷移金属の原子価であり、低原子価錯体(1)と高原子価錯体(2)とはレドックス共役系を構成する。
最初に、低原子価錯体(1)がハロゲンを含有する重合開始剤P−Xからハロゲン原子Xをラジカル的に引き抜いて、高原子価錯体(2)及び炭素中心ラジカルP・を形成する。尚、この反応の速度はKactで表される。このラジカルP・は、図示の様にモノマーと反応して同種の中間体ラジカル種P・を形成する。尚、この反応の速度はKpropagaionで表される)。
【0073】
高原子価錯体(2)とラジカルP・との間の反応は、生成物P−Xを生ずると同時に、低原子価錯体(1)を再生する。この反応の速度はKdeactで表される。そして、低原子価錯体(1)はP−Xと更に反応して新たな反応を進行させる。本反応においては、
成長ラジカル種P・の濃度を低く抑制することが重合を制御することにおいて最も重要である。
【0074】
なお、上記の原子移動型ラジカル重合法の具体例としては、次の様な報告(1)、(2)がある。
(1)CuCl/ビピリジル錯体の存在下、α−クロロエチルベンゼンを開始剤としたスチレンの重合(J.Wang and K.Matyjaszewski,J.Am.Chem.Soc.117,5614(1995))
(2)RuCl2(PPh33、有機アルミ化合物の存在下でのCCl4を開始剤とするメタクリル酸メチルの重合(M.Kato,M.Kamigaito,M.Sawamoto,T.Higashimura,Macromolecules,28,1821(1995))
従って、上述の原子移動型ラジカル重合法のマクロ開始剤(P−X)として、先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルを使用し、原子移動型ラジカル重合法によってラジカル重合性モノマーを重合させることにより、ポリビニルエステルブロックと他のブロックBを含むブロックコポリマーが得られる。
【0075】
原子移動型ラジカル重合法に使用する遷移金属としては、特に制限されないが、周期表7〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属が好適である。レドックス触媒(レドックス共役錯体)においては、先述の図式に示す様に低原子価錯体(1)と高原子価錯体(2)とが可逆的に変化する。具体的に使用される低原子価金属(M)nとしては、Cu+、Ni0、Ni+、Ni2+、Pd0、Pd+、Pt0、Pt+、Pt2+、Rh+、Rh2+、Rh3+、Co+、Co2+、Ir0、Ir+、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+の群から選ばれる金属であり、中でも、Cu+、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましく、特にCu+が好ましい。1価の銅化合物の具体例としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅などが挙げられる。
【0076】
配位子としては、一般的には有機配位子が使用される。具体的には例えば2,2'−ビ
ピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられるが、特にトリス(ジメチルアミノエチル)アミンの様な脂肪族ポリアミン類が好ましい。
【0077】
溶媒としては、連鎖移動重合に使用する重合溶媒として挙げた溶媒を同様に使用することが出来る。中でもアルコール類が好ましく、特にメタノール、イソプロピルアルコール、またはその混合溶媒が好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマー、スチレン系モノマ−などが挙げられ。また、ビニルエーテル、アリルエーテル、アリルエステル等の単独ではラジカル重合し難いモノマーもラジカル重合性モノマーの共重合成分として使用することが出来る。
【0078】
上述のアクリレート系モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。
【0079】
上述のメタクリレート系モノマーの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0080】
上述のスチレン系モノマーとしては、スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、p−t−ブトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン等が挙げられる。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー100重量部に対し、通常1重量部以上、好ましくは100重量部以上であり、その上限は2000重量部以下、好ましくは1000重量部以下である。
【0081】
低原子価金属(M)nの使用量は、特に限定されないが、重合反応系中の濃度として、
通常10-6モル/リットル以上、好ましくは10-5モル/リットル以上であり、その上限は10-1モル/リットル以下である。そして、開始剤1モルに対し、通常0.001モル以上、好ましくは0.005モル以上であり、その上限は100モル以下、好ましくは50モル以下である。また、重合温度は、特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、その上限は200℃以下、好ましくは150℃である。本発明において、重合はリビング的に進行する。
【0082】
ブロックBは、先述した様なラジカル重合性モノマーを構成成分とする重合体であることが好ましく、用途に応じ、その変性物であってもよい。具体的には、ブロックBの主鎖にカルボン酸エステル基を側鎖として導入したり、カルボン酸エステル基を酸またはアルカリ条件下で加水分解してカルボン酸構造にしたり、更に、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどで中和し、カルボン酸塩構造にすることが出来る。カルボン酸エステル基を酸またはアルカリ条件下で加水分解してカルボン酸構造にする場合には、ブロックAであるポリビニルエステルのケン化反応と同工程で行ってもよく、また別工程で行ってもよい。また、ジメチルアミノエチル基の様な3級アミン構造を有する重合体ブロックBの場合は、3級アミンをベンジルクロライド等と反応させて4級塩構造構造としてもよい。斯かる変性処理により、前述の一般式(8)〜(11)におけるR6〜R8が決定される。
【0083】
更に、ブロックBとしては、ラジカル重合性モノマーとして反応性の異なる複数のラジカル重合性モノマーを重合して得られる、グラジエントコポリマーであることが好ましい。グラジエントコポリマーの製造方法としては、例えば、上述の原子移動型ラジカル重合法において、マクロ開始剤(P−X)として先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルを使用し、反応性が異なる2つ又はそれ以上のモノマーを用いた共重合化により合成する方法が挙げられる。
【0084】
反応性が異なる2つ又はそれ以上のモノマーの重合反応系への導入方法は任意である。具体的な方法としては例えば、重合開始時に、反応に用いる全種類のモノマーを同時に反応器内へ導入する方法が挙げられる。別の方法として、重合開始時に、反応に用いるモノマーを単独及び/または混合物として連続的にまたは分割して反応器内へ導入する方法が挙げられる。更に、重合開始時に、反応に用いるモノマーを2つ又はそれ以上の組成比の異なる混合物として連続的にまたは分割して反応器内へ導入する方法等が挙げられる。中でも、重合開始時に反応に用いる全種類のモノマーを同時に反応器内へ導入する方法が好ましい。
【0085】
この際、反応性の異なる複数種のモノマーとしては、疎水性モノマーと親水性モノマー(親水性モノマーには重合後の変性反応により親水性を示すモノマーも含む。)とを用いることが好ましい。中でも反応性の高い疎水性モノマーと、この疎水性モノマーに比べて反応性の低い親水性モノマーを用いることが好ましい。この様な疎水性モノマーと親水性モノマーとを用いることで、ブロックBはその末端(連結基と反対方向の末端)に向かって、疎水性モノマー組成が一定の割合で減少し、逆に親水性モノマー組成が一定の割合で増加するグラジエントコポリマーとなる。
【0086】
このようなグラジエント構造をポリマー鎖中に導入することにより、本発明のPVA系ブロックコポリマーを水性媒体中に存在させたとき、ブロックBにおいて、連結基に近い部分の疎水性セグメントB’はその構造中に親水性基を含有するため、水性媒体中においては水によって可塑化されるので、疎水性セグメントB’に柔軟性を持たせることが可能となる。
【0087】
従ってブロックBにおける疎水性セグメントB’が柔軟性を有することで、好ましくはブロックBの末端に親水性セグメントB’’を有することで、このブロックBを有する本発明のPVA系ブロックコポリマー(高分子分散剤)と顔料とを、水やアルコール類等の水性媒体中で接触させ、分散させて顔料分散水性液を製造する際に、水性媒体中で疎水性セグメントB’のポリマー鎖自身が、分散時に解けないくらい堅固な凝集体となることを抑制でき、高分子分散剤が顔料表面をより広く覆うこととなる。これによって、そもそも疎水性である顔料表面における疎水性を低減することが可能となり、水性媒体中における顔料の分散安定性が向上すると考えられる。
【0088】
この様な疎水性セグメントB’と親水性セグメントB’’の組合せは、反応性の高い任意の疎水性モノマーと、この疎水性モノマーに比べて反応性の低い任意の親水性モノマー(親水性モノマーには、重合後の変性反応により親水性を示すモノマーも含む。)を用いて製造すればよい。具体的には例えば、セグメントB’、B’’における疎水性セグメントとしては、電荷基を有さないベンジルアクリレートポリマー残基、ベンジルメタクリレートポリマー残基(BzMA)等のアリール(メタ)アクリレート系ポリマー残基;2エチルヘキシルアクリレートポリマー残基(2EtHxA)、n−ブチルアクリレートポリマー残基(n−BtA)、t−ブチルアクリレートポリマー残基(t−BtA)、メチルアクリレートポリマー残基(MeA)、エチルアクリレートポリマー残基(EtA)等の、アルキル(メタ)アクリレート系ポリマー残基;スチレン系ポリマー残基(St)等が挙げられる。中でも、(BzMA)等のアリールメタクリレート系ポリマー残基や、(2EtHxA)、(n−BtA)、(t−BtA)、(MeA)等のアルキルアクリレート系ポリマー残基、スチレン系ポリマー残基(St)等が好ましい。またセグメントB’’における親水性セグメントとしては、電荷基を有するポリマー残基が好ましく、例えばアクリル酸ナトリウムポリマー残基(AA(Na))、等のアクリル酸塩ポリマー残基;メタクリル酸ナトリウムポリマー残基(MAA(Na))等のメタクリル酸塩ポリマー残基;等が好ましい。
【0089】
この様にして、ポリビニルエステルブロックとグラジエントコポリマーであるブロックBを含む、ブロックコポリマーが得られる。
ブロックBをグラジエントコポリマーとする際には、上述した様に、原子移動型ラジカル重合法のマクロ開始剤(P−X)として先述の片末端にハロゲン原子を有するポリビニルエステルを使用し、複数のラジカル重合性モノマーを、好ましくはこれらモノマーの混合物を原子移動型ラジカル重合法により重合すればよい。この重合を行う際には、マクロ開始剤、複数種のラジカル重合性モノマー、及び触媒の添加順序等は任意である。例えば、反応器内に金属触媒を投入した後に、マクロ開始剤とラジカル重合性モノマー類、重合溶媒の混合物を投入し、その後、有機配位子を混合し、昇温させて重合を行う方法、反応器にマクロ開始剤とラジカル重合性モノマー類、重合溶媒の混合物を投入した後、金属触媒と有機配位子を別々に、もしくはその混合物を含有する溶液を投入する方法等が挙げられる。
【0090】
中でもマクロ開始剤と複数種のラジカル重合性モノマーを含む混合物を、触媒の添加前に、反応開始温度を超えない範囲で、反応開始温度の近傍まで上昇させ、具体的には反応開始温度の20℃以内、中でも好ましくは15℃以内としてから触媒と混合し、次いで温度を上昇させて重合反応を開始することが好ましい。この方法によって、触媒由来の不純物が減少するので好ましい。この様な重合反応方法に用いる触媒は任意だが、中でも塩化第一銅や臭化第一銅などの銅触媒を用いると効果が顕著となるので好ましく、さらに好ましくは臭化第一銅を用いるのが好ましい。
【0091】
この様にして得られたブロックコポリマーは、定法に従って精製するか、または未精製のまま次の工程へ供される。精製方法はポリマーが不溶でモノマーと触媒が可溶な溶媒へブロックコポリマーを沈殿、濾別を繰り返す方法や、蒸留等によって未反応モノマーを除去した後に反応溶媒を置換する精製方法などが挙げられる。
【0092】
次に、けん化方法について説明する。ポリビニルエステルブロックのケン化反応は、ケン化触媒の共存下に行われる。通常、ケン化に当たっては、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ベンゼン、酢酸メチル等にマクロ開始剤であるポリビニルエステル又はマクロ開始剤から原子移動ラジカル重合法により合成されたブロック共重合体を溶解する。ブロックコポリマーにおける先述の溶媒への溶解度が低い場合には、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物;などを混合し、ケン化反応の溶媒として使用してもよい。
【0093】
けん化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒が使用されるが、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒も使
用することができる。アルカリ触媒の使用量は、特に限定されないが、ビニルエステル単位1モルに対し、通常1ミリモル当量以上100ミリモル当量以下、好ましくは50ミリモル当量以下、更に好ましくは30ミリモル当量以下である。酸触媒の使用量は、特に限定されないが、ビニルエステル単位1モルに対し、通常1ミリモル当量以上1000ミリモル当量以下、好ましくは500ミリモル当量以下、更に好ましくは300ミリモル当量以下である。ケン化反応の温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上であり、その上限は100℃以下、好ましくは80℃以下である。
【0094】
けん化度は、最終的に得られるPVA系ブロックコポリマーの用途によって適宜選択し
決定すればよいが、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上である。ここで、けん化度とは、ビニルエステル単位のけん化によってビニルアルコール単位に変換され得る単位に対する、けん化後のビニルアルコール単位の割合を表したものであり、残基はビニルエステル単位である。
【0095】
さらに、Bブロックにカルボン酸エステル基を有するモノマーを導入し、重合後にカルボン酸エステル基を加水分解しカルボン酸構造またはカルボン酸塩構造とする際には、ブロックAのケン化反応と、加水分解反応を同一工程(ワンポット)で行ってもよい。ワンポットでのケン化・加水分解反応時には溶媒として、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、ベンゼン、酢酸メチル等、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物;水などが挙げられ、これらは単独また混合して使用しても良い。中でも水とメタノール、テトラヒドロフラン等の水溶性有機溶媒を混合して用いることが好ましい。
【0096】
ケン化・加水分解触媒としては、ケン化反応単独工程で行う場合と同様に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラート等のアルカリ触媒が使用されるが、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒も使用することができる。アルカリ触媒
の使用量は、特に限定されないが、ポリマー中のビニルエステル単位とカルボン酸エステル単位の合計に対し、通常1/1000当量以上5当量以下、好ましくは2当量以下、更に好ましくは1.5当量以下である。酸触媒の使用量は、特に限定されないが、ポリマー
中のビニルエステル単位とカルボン酸エステル単位の合計に対し、通常1/1000当量以上5当量以下、好ましくは2当量以下、更に好ましくは1.5当量以下である。反応の温度は、通常20℃以上、好ましくは40℃以上であり、その上限は100℃以下、好ましくは80℃以下である。
【0097】
2.顔料分散水性液、および記録液
本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーは、水溶性か、又は水分散性のポリマーであるので、顔料分散水性液の高分子分散剤として用いると、この水性液において優れた顔料分散性を奏する。また、この顔料分散水性液を記録液として用いることで、特にインクジェット用の記録液として用いることで、顔料の分散安定性だけでなく、吐出ノズルからの記録液の吐出性や、耐擦過性に優れた印刷物を得られるという効果をも同時に奏する。
以下、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを高分子分散剤として用いた顔料分散水性液、およびこれを含む顔料分散型の記録液について説明する。
【0098】
<顔料について>
本発明に用いられる顔料としては、各用途において一般的なものを適宜選択すればよく、特に限定されないが、代表的なものを例示すると、炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカなどを代表とする体質顔料;酸化チタン、酸化亜鉛、ゲーサイト、マグネタイト、酸化クロムなどを代表とする金属酸化物系顔料;チタンイエロー、チタンバフ、アンチモンイエロー、バナジウムスズイエロー、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、マンガングリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、タングステンブルー、エジプトブルー、コバルトブラックなどを代表とする複合酸化物系顔料;リトボン、カドミウムレッドイエロー、カドミウムレッドなどを代表とする硫化物系顔料;ミネラルバイオレット、コバルトバイオレット、リン酸コバルトリチウ
ム、リン酸コバルトナトリウム、リン酸コバルトカリウム、リン酸コバルトアンモニウム、リン酸ニッケル、リン酸銅を代表とするリン酸塩系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジを代表とするクロム酸塩系顔料;群青、プルシアンブルーを代表とする金属錯塩系顔料;アルミニウムペースト、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレスフレーク、ニッケルフレークを代表とする金属粉系顔料;カーボンブラック、オキシ塩化ビスマス、塩基性炭酸塩、二酸化チタン、被覆雲母、ITO、ATOを代表とする真珠光沢顔料・真珠顔導電性顔料等の無機顔料;及びキナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料、アゾメチン系顔料またはアゾ系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0099】
上記顔料の具体例としては下記に示すピグメントナンバーの顔料及び一般に色材分野で用いられている公知のカーボンブラックを挙げることができる。なお、以下に挙げる「C.I.ピグメントレッド2」等の用語は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
赤色色剤:C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、54、57、57:1、57:2、58、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276;
【0100】
青色色剤:C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79;
緑色色剤:C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55;
黄色色剤:C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、23、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208;
オレンジ色剤:C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、2
0、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79;
【0101】
バイオレット色剤:C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50
ブラウン色剤:C.I.ピグメントブラウン1、6、11、22、23、24、25、27、29、30、31、33、34、35、37、39、40、41、42、43、44、45
黒色色剤:C.I.ピグメントブラック1、31、32。
【0102】
上記顔料のうち、赤色顔料として好ましくは、キナクリドン系顔料、キサンテン系顔料、ペリレン系顔料、アンタントロン系顔料及びモノアゾ系顔料が挙げられ、その具体例としては、C.I.ピグメントレッド−5,−7,−12,−112,−81,−122,−123,146,−147,−168,−173,−202,−206,−207,−209等が挙げられる。このうちより好ましくはキナクリドン系顔料である。
【0103】
上記顔料のうち、黄色顔料としてモノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.Pigment―1、−3、−16,−17、−74、−120、−128、−151、−175は、その色合いの面から特に好ましく、更にその中でもC.I.Pigment Yellow−74がノンハロゲン化合物であり環境に与える影響が小さいこと、微細化が可能である等のことから特に好ましい。
【0104】
先述の顔料のうち、青色顔料として好ましくは、銅フタロシアニン顔料が印字物としての発色が他の顔料に対して良好である事から好ましい。その中でも、C.I.Pigment Blue−15:3はその色合いの面から好ましい。
また、本発明において用いられるカーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
【0105】
上記のカーボンブラックのDBP吸油量は、印字濃度の観点から、40ml/100g以上が好ましく、50ml/100g以上が更に好ましく、60ml/100g以上が特に好ましい。揮発分は、8重量%以下が好ましく、特に4重量%以下が好ましい。pHは記録液の保存安定性の観点から3以上、中でも6以上であることが好ましく、その上限は11以下、特に9以下が好ましい。
【0106】
BET比表面積は、通常100m2/g以上であるが、中でも150m2/g以上であることが好ましく、その上限は700m2/g以下、特に600m2/g以下が好ましい。ここで、DBP吸油量はJIS K6221 A法で測定した値、揮発分はJIS K6221の方法で測定した値、1次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)のことである。
【0107】
上記カーボンブラックの具体例としては、次の(1)〜(4)に示す商品が挙げられる。
(1)#2700B,#2650,#2650B,#2600,#2600B,2450B,2400B,#2350,#2300,#2300B,#2200B,#1000,#1000B,#990,#990B,#980,#980B,#970,#960,
#960B,#950,#950B,#900,#900B,#850,#850B,MCF88,MCF88B,MA600,MA600B,#750B,#650B,#52,#52B,#50,#47,#47B,#45,#45B,#45L,#44,#44B,#40,#40B,#33,#33B,#32,#32B,#30,#30B,#25,#25B,#20,#20B,#10,#10B,#5,#5B,CF9,CF9B,#95,#260,MA77,MA77B,MA7,MA7B,MA8,MA8B,MA11,MA11B,MA100,MA100B,MA100R,MA100RB,MA100S,MA230,MA220,MA200RB,MA14,#3030B,#3040B,#3050B,#3230B,#3350B(以上、三菱化学社製品)。
【0108】
(2)Monarch 1400,Black Pearls 1400,Monarch 1300,Black Pearls 1300,Monarch 1100,Black Pearls 1100,Monarch 1000,Black Pearls 1000,Monarch 900,Black Pearls 900,Monarch 880,Black Pearls 880,Monarch 800,Black Pearls 800,Monarch 700,Black Pearls 700,Black Pearls 2000,VulcanXC72R,Vulcan
XC72,Vulcan PA90,Vulcan 9A32,Mogul L,Black Pearls L,Regal 660R,Regal 660,Black Pearls 570,Black Pearls 520,Regal 400R,Regal 400,Regal 330R,Regal 330,Regal 300R,Black Pearls 490,Black Pearls 480,Black
Pearls 470,Black Pearls 460,Black Pearls 450,Black Pearls 430,Black Pearls 420,Black Pearls 410,Regal 350R,Regal 350,Regal250R,Regal 250,Regal 99R,Regal 99I,Elftex Pellets 115,Elftex 8, Elftex 5,Elftex 12,Monarch 280,Black Pearls 280,Black
Pearls 170,Black Pearls 160,Black Pearls 130,Monarch 120,Black Pearls 120(以上、キャボット社製品)。
【0109】
(3)Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black FW18,Color Black FW200,Special Black 4,Special Black 4A,Special Black5,Special Black 6,Color Black S160,Color Black S170,Printex U,Printex V,Printex 150T,Printex 140U,Printex 140V,Printex 95,Printex 90,Printex 85,Printex 80,Printex 75,Printex 55,Printex 45,Printex 40,Printex P,Printex 60,Printex XE,Printex L6,Printex L,Printex 300,Printex 30,Printex 3,Printex 35,Printex 25,Printex 200,Printex A,Printex G,Special
Black 550,Special Black 350,Special Black 250,Special Black 100(以上、デグッサ製品)。
【0110】
(4)Raven 7000,Raven 5750,Raven 5250,Raven 5000 ULTRA,Raven 3500,Raven 2000,Raven 1500,Raven 1255,Raven 1250,Raven 1200,
Raven 1170,Raven 1060 ULTRA,Raven 1040,Raven 1035,Raven 1020,Raven 1000,Raven890H,Raven 890,Raven 850,Raven 790 ULTRA,Raven 760 ULTRA,Raven 520,Raven 500,Raven 450,Raven 430,Raven 420,Raven 410,CONDUCTEX 975 ULTRA,CONDUCTEX SC ULTRA,Raven H2O,Raven C ULTRA(以上、コロンビア社製品)。
【0111】
これら顔料の1次粒子の大きさは、目的に応じて任意に設定すればよいが、通常、10nm以上であり、且つ、800nm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
上記顔料の平均粒子径は、通常500nm以下、好ましくは200nm以下である。また下限としては、通常20nm以上である。上記平均粒子径の測定方法としては、SEMやTEM等の電子顕微鏡を用いて測定すればよい。
【0112】
上記顔料としては、化学修飾がされておらず、また、顔料の小粒径化を促進するための結晶化抑止剤等の、顔料以外の不純物を含まないものが好ましい。ただし、顔料に自己分散性を持たせるために、予め公知の化学修飾を行った顔料や、また、顔料と、顔料に対して特定の物理吸着性を有する染料とを、水性媒体中で分散処理することにより表面に該染料を物理吸着させた自己分散性を有する顔料も使用できる。この様な自己分散性を有する顔料の中では後者のものが、特に記録液の色域を広げられる点で、好ましい。
【0113】
顔料に物理吸着させる染料として好ましくは、染料が下記式(I)
【0114】
【数1】

【0115】
(ここで、染料吸着率は、上記顔料(4.1g)及び上記染料(0.4g)を用いて界面活性剤の不存在下に調製した分散液から固形分を除去した後の上澄み液、及び、上記染料(0.4g)の水溶液について高速液体クロマトグラフィによりその染料濃度を測定し、得られるピーク面積の比から求められる値である。)で表される染料吸着量が0.02g/g以上、好ましくは0.03g/g以上、さらに好ましくは0.04g/g以上のものを含むものである。
【0116】
顔料に染料が化学反応を伴わず可逆的に吸着していることは、例えば、次のようにして確認することが出来る。即ち、調製された記録液に対して、ジメチルホルムアミド(DM
F)を大過剰(例えば、9重量倍程度)加え、超音波分散処理等により十分に混合し、混
合物からフィルタリング等で顔料を除いた濾液中における染料の量を測定する。調製時の記録液中の顔料に吸着していない染料の量を予め確認しておき、それに対する処理後の記録液に含まれる染料の増量分を確認することにより、染料が顔料に可逆的吸着していることが確認できる。
【0117】
また、式(I)中の「染料吸着率」は、以下の方法により求められる値である。
染料吸着率:
23℃で、顔料を固形分量で4.1g及び染料を固形分量で0.4gに水を加え、全量を50gとし、0.5mmφのジルコニアビーズ75gと共に、ペイントシェーカーで6
時間分散処理を行って分散液を得、この分散液を23℃で遠心力17968×g(gは重力加速度)で3時間遠心分離処理し、上澄み液を得る。
【0118】
分散液中の顔料が全て遠心沈降し、染料が顔料に一切吸着していない場合に相当する、0.87wt%染料水溶液[即ち、水(45.5g)及び染料(0.4g)に対する染料(0.4g)の濃度(0.4/45.9×100=0.87wt%)の染料水溶液]を得る。
上記上澄み液及び上記0.87wt%染料水溶液につき、それぞれ高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography)測定を行い、得られる該染料に由来するHPLCのピーク面積をもとに、下記式(II)により求められる。
【0119】
【数2】

【0120】
HPLC測定条件:
検出波長 :254nm
カラム温度 :40℃
溶離液 :(測定開始後、60分以内にメインピークが検出されるよう濃度調整された)アセトニトリル水
緩衝剤 :テトラブチルアンモニウムブロマイド濃度1.0重量%水溶液、及び
:リン酸2水素ナトリウム濃度0.25重量%水溶液
流量 :1.0ミリリットル/分
注入量 :2.0μリットル(希釈無し)
測定に際し、カラムとしては、水溶性染料の検出可能なものであれば、特に限定されるものではないが、一般的に用いられる分離モードが逆相のカラムが好適である。また、クロマトパックとしては、HPLC検出器からのデータ処理が可能であれば、特に限定されるものではない。
【0121】
また、ここで、本発明の記録液としては、2種類以上の顔料及び/又は2種類以上の染料を組み合わせて使用してもよく、混合染料系の記録液とする場合には、分散液の染料は、記録液中の染料の混合比率にあわせた染料混合物とする。同様に、混合顔料系の記録液とする場合には、分散液の赤色顔料を顔料混合物とする。混合染料と混合顔料の記録液の場合は、分散液の染料及び顔料は、記録液中のそれぞれの混合比率に合わせた染料混合物、顔料混合物とする。混合染料系の記録液の場合、式(II)における、0.87wt%染料水溶液の染料は、記録液中の染料の混合比率に合わせた染料混合物とする。
【0122】
顔料への染料吸着量は多いほど好ましいが、染料吸着量には理論上、上限が存在し、顔料濃度を一定にして染料量を増やしていくと、ある添加量から染料吸着量は一定になる(この吸着量を以下「飽和吸着量」とする)ため、染料吸着量の上限はかかる飽和吸着量で規定される。
飽和吸着量は、用いる顔料及び染料の種類により、決まるものであり、一概にいえないが、概ね、0.01〜0.1g/g程度である。
【0123】
このような染料としては、顔料との骨格構造が類似しているもの、すなわち、染料分子及び顔料分子の化学構造において平面性を生み出す環構造に由来するもの、染料分子及び顔料分子中のπ電子同士のスタックや官能基の電気的引力に由来するもの等が挙げられる

具体的には、顔料としてキナクリドン系顔料を用いる場合は、キサンテン系染料、アンスラキノン系染料等が物理吸着に好適な芳香族縮合多環系の類似した骨格構造の組合せの点で好ましく、顔料としてモノアゾ系顔料及びジスアゾ系顔料を用いる場合は、モノアゾ系染料及びジスアゾ系染料等が物理吸着に好適な類似した骨格構造の組合せの点で好ましく、顔料として銅フタロシアニン系顔料を用いる場合は、銅フタロシアニン系染料が物理吸着に好適な芳香族縮合多環系の類似した骨格構造の組合せの点で好ましく、顔料としてカーボンブラックを用いる場合は、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、銅フタロシアニン系染料等が物理吸着に好適な骨格構造の組合せの点で好ましい。
【0124】
また、染料1分子あたりにおいて、水酸基、アミノ基、カルボキシル基類又はスルホン酸基類といった解離性基の数が、1個以上4個以下であることが好ましく、さらに好ましくは、遊離酸の形として、−COOH及び−SO3Hの少なくともいずれかで示される解
離性基を有するものであり、その数が染料1分子当たり1個以上、2個以下であるのが特に好ましい。
【0125】
染料分子が解離性基を有しないと、顔料に染料が吸着したことによる水性媒体中への分散効果が得にくくなる。他方、−COOH及び−SO3Hで示される解離性基の数が3個
以上だと、染料は顔料表面に吸着するよりも記録液の媒体中に溶解し易いため、染料が顔料に吸着することによる分散効果が得られにくくなる。更に、インクジェット用記録液の液性は、通常、中性からアルカリ性であることから、アルカリ性水性媒体中で解離して水に対する親和性を確保出来る程度のアニオン性基を有するのが好適である。
【0126】
さらに、上記顔料として上述のような染料を物理吸着させたものと表面処理等により自己分散性能を有する顔料とを混合して用いても良いが、好ましくは全顔料量に対して、後者の割合が30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0127】
<顔料分散水性液、および記録液について>
本発明の顔料分散水性液は、水性媒体中に、少なくとも上述の顔料と、高分子分散剤として先述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとを含んでなるものである。
【0128】
水性媒体としては、水及び/又は水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒としては、この用途に一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、具体的には、水よりも蒸気圧の小さいものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;アセトニルアセトン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、ジアセチン、リン酸トリエチル等のエステル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等の低級アルコキシアルコール類;フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、チオジエタノール、チオジグリコール、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドン、スルホラン、イミダゾール、メチルイミダゾール、ヒドロキシイミダゾール、トリアゾール、ニコチンアミド、ジメチルアミノピリジン、ε−カプロラクタム、乳酸アミド、1,3−プロパンスルトン、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、1−メチロール−5,5−ジメチルヒダントイン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、エチレン尿素、プロピレン尿素、尿素、チオ尿素、ビウレット、
セミカルバジド、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トリメチロールプロパン、が挙げられる。上述の水性媒体としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物であることが好ましい。
【0129】
本発明の顔料分散水性液において用いる顔料は、先述した様な、未処理の顔料でも、また表面を化学修飾した顔料や、表面に染料を吸着させて自己分散性をもたせた顔料等、任意の顔料を使用できる。
本発明の顔料分散水性液中の顔料濃度としては、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。ここで、あまり顔料濃度が薄すぎるとインク化時に濃縮の手間がかかる等の問題があるので、通常、0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
【0130】
また、本発明の顔料分散水性液中における、先述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー濃度は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、この範囲であれば耐擦過性向上効果の観点から見て十分である。一方、該ポリマーの含有量の上限としては、通常、20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0131】
また、顔料とポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとの重量比は、適宜選択し決定すればよいが、一般的には顔料1重量部に対してポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが0.01重量部以上、中でも0.05重量部以上、特に0.1重量部以上であることが好ましく、その上限は2重量部以下、中でも1.5重量部以下であることが好ましい。
【0132】
本発明の記録液は、上述の顔料分散水性液の着色剤濃度を必要に応じて調整し、更には用途に応じて各種添加剤を加えてもよい。
着色剤としては、上述の顔料分散液中の着色剤に加え、さらに調色等の目的などで顔料や染料を追加で含んでいても良い。
本発明の記録液における全着色剤の濃度は、記録液全量に対して、全着色剤の濃度が0.1重量%以上、中でも0.5重量%以上であることが好ましく、その上限は15重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に、特に8重量%以下であることが好ましい。一方で、顔料分散水性液に追加する着色剤の量は、顔料分散水性液中の着色剤の量100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは75重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは25重量部以下である。
【0133】
本発明の記録液中の水溶性有機溶剤濃度は、適宜選択し決定すればよいが、通常、記録液に対して1重量%以上45重量%以下、中でも40重量%以下であることが好ましい。また記録液における水の含有量は、上述の着色剤や水溶性有機溶剤、及び以下に記載される任意の添加成分の濃度を適宜設定すればよい。
【0134】
<添加剤について>
本発明の記録液においては、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を加えても良い。具体的には例えば、浸透促進剤、表面張力調整剤、ヒドロトロピー剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、保湿剤、防黴剤、防錆剤等の記録液用添加剤として公知のものをものが挙げられる。
【0135】
本発明の記録液における、これら添加剤の含有量は、記録液の全量に対して、通常10
重量%以下、中でも5重量%以下であることが好ましい。
浸透促進剤としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等の
低級アルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルグリコールエーテル等のカルビトール類、界面活性剤等が挙げられる。
【0136】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤等、任意のものを使用できる。中でも非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及びポリマー系の界面活性剤が好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン誘導体類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン類等が挙げられる。
【0137】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルフォン酸塩類、アルキルナフタレンスルフォン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルフォン酸塩類、ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、α−オレフィンスルフォン酸塩等が挙げられる。
【0138】
またポリマー系界面活性剤としては、ポリアクリル酸、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸/アクリル酸エステル共重合、スチレン/メタクリル酸共重合体、スチレン/メタクリル酸/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸ハーフエステル共重合体、スチレン/スチレンスルフォン酸共重合体、ビニルナフタレン/マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン/アクリル酸共重合体あるいはこれらの塩等が挙げられる。
【0139】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、ラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等の界面活性剤も使用することができる。
【0140】
これらの様な界面活性剤の含有量は、適宜選択し決定すればよい。通常は記録液に対して0.001重量%以上5重量%以下の範囲で添加することによって、印刷物の速乾性及び印字品位をより一層改良できる。
表面張力調整剤としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、グリセリン、ジエチレングリコール等のアルコール類、ノニオン、カチオン、アニオン、あるいは両性界面活性剤を挙げることができる。
【0141】
ヒドロトロピー剤としては、尿素、アルキル尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、チオ尿素、グアニジン酸塩、ハロゲン価テトラアルキルアンモニウム等が好ましい。
保湿剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等を水溶性有機溶剤と兼ねるものとして添加することもできる。更に、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類を添加することもできる。
【0142】
記録液のpHを調整し、記録液の安定ないし、記録装置中の記録液配管との安定性を得るため、特に限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、硝酸、アンモニア等のpH調整剤、リン酸等の緩衝液を用いることができる。記録液のpHとしては、通常、中性からアルカリ性の範囲であり、中でもpH6〜11程度に調製することが好ましい。
キレート剤としては、特に限定されるものではないが、エチレンジアミンテトラアセティックアシッドのナトリウム塩、エチレンジアミンテトラアセティックアシドのジアンモニウム塩等が用いられる。これらは、記録液に対して0.005重量%以上0.5重量%以下の範囲で用いられることが好ましい。
【0143】
防黴剤としては、特に限定されるものではないが、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム等が用いられる。これらは、記録液に対して0.05重量%以上1重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の記録液は、特にインクジェット用記録液として優れた効果を奏する。本発明の記録液は、高分子分散剤として上述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを用いることを最大の特徴とする。従来、紙への定着性、インキ塗膜の耐水性を目的として、従来、添加されていた通常の水溶性樹脂である高分子分散剤と比べても、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを用いた際には、その濃度が低くとも、顔料の分散安定性に優れ、そして耐擦過性に優れた印刷物を提供することが出来る。
【0144】
また本発明の記録液に於いては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー以外の水溶性または水分散性樹脂を含有しても良い。具体的には水溶性のビニル系樹脂、例えば、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、本発明以外のポリビニルアルコール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等、及び、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ブタジエン系樹脂、石油系樹脂、フッ素系樹脂等の公知の水溶性または水分散性樹脂が挙げられる。中でもアクリル系樹脂やスチレン−アクリル系樹脂が好ましく、これらは疎水性セグメントとポリビニルアルコール系ブロック以外の親水性セグメントを含むコポリマーであることが好ましく、特にこのコポリマーがランダムコポリマーであることが好ましい。
【0145】
本発明の記録液において、先述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーと、これ以外の水溶性または水分散性樹脂を含む全ての水溶性または水分散性樹脂の含有量は、通常、0.05重量%以上、好ましくは0.25重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、その上限は20重量%以下、中でも10重量%以下、特に5重量%以下であることが好ましい。また、公知の水性樹脂の使用量としては、上述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとの重量比が99:1〜1:99の範囲で適宜選択し決定すれば良く、具体的にはポリビニルアルコール系ブロックコポリマー1重量部に対して、他の水溶性または水分散性樹脂が30重量部以下、中でも20重量部以下、特に10重量部以下であることが好ましい。
【0146】
本発明の顔料分散水性液は、高分子分散剤として先述のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを含む。また顔料分散水性液の製造方法において、顔料、水性媒体、及び高分子分散剤等の混合方法や添加順序は任意である。例えば、未処理の顔料や、先述の様に表面を化学修飾した顔料、界面活性剤等の公知の分散剤で処理しれた顔料、または染料を吸着させた顔料等の処理顔料とを、高分子分散剤とを接触させてから、水性媒体と接触させ、混合、分散処理する方法が挙げられる。また、先述の様な処理顔料を水性媒体中で分散した後に、高分子分散剤と接触させて、顔料分散水性液としても良い。
中でも、未処理の顔料を高分子分散剤とを接触させてから、水性媒体と接触させ、混合、分散処理する方法が本発明の効果が顕著となるので好ましい。
【0147】
<実施例>
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の諸例においては、数平均分子量(Mn)の測定は、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して行った。なお、以下の表記において、「b」はブロックを意味し、「co」はcopolymerの「co」を意味する。
【実施例1】
【0148】
PVA−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−t−ブチルアクリレート−co−アクリル酸ナトリウム)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル187g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム375g、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを仕込み、約15分間窒素バブリングした後、加熱し、還流条件下にて150分間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物をヘキサンと接触させ、ヘキサン中に沈殿させて得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニルを得た。ポリ酢酸ビニルは、数平均分子量が2914、分子量分布が1.83であった。
【0149】
このポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶媒
CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化学
シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3として
計算される数平均分子量(3000)とGPCから求めた数平均分子量が略一致することから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニルが
合成できたことを確認した。
【0150】
次いで、内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅0.1057gを仕込み、更に、溶媒としてイソプロピルアルコール13.7g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート68.85g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン0.2713g、マクロ開始剤として上述のポリ酢酸ビニル(1)29.9gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上述のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下、30分間重合反応を行った。
【0151】
反応終了後、反応混合物にメタノール/水(500ミリリットル/100ミリリットル)を添加して、得られたポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、THF300ミリリットルに溶解させ、活性アルミナ100gを充填したカラムに通過させて残留銅成分を除去した。その後、エバポレーターによりTHFを除去し、真空乾燥して、ポリ酢酸ビニル−b−ポリ−t−ブチルアクリレートを得た。数平均分子量は7081、分子量分布(Mw/Mn)は1.28であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0152】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でメタノール600ミリリットルに上述のポリ酢酸ビニル−b−ポリ−t−ブチルアクリレート63gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物2.0gを加え、還流下で12時間反応を行った。その後、エバポレーターによりメタノールを除去した。そして、水200ミリリットルを加えた後に水酸化ナトリウム水溶液で中和し、アセトン中にポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥して、PVA−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−t−ブチルアクリレート−アクリル酸メチル)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0153】
このPVA系ブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒とした13C−NMRにより確認した。13C−NMRにより求められた、PVAのけん化度は99%であり、ブロックコポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、t−ブチルアクリレート単位、アクリル酸メチル単位の組成比は、40.7:32.1:13.6:13.7(モル比)であった。得られたブロックコポリマーを180℃の熱風乾燥機中で30分間放置したところ、着色・臭気は見られず、耐熱性に優れていることが判った。
<比較例1>
【0154】
PVA−b−ポリ(ベンジルメタクリレート)の合成
先ず、内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、モノマーとして酢酸ビニル240g、溶媒としてメタノール58g、チオール酢酸0.093gを仕込み、内温が60℃になるまで加熱した後、触媒としてアゾビスイ
ソブチロニトリル0.0868gを溶解したメタノール2gを加え、その後、チオール酢酸1.74gを溶解したメタノール6gを3時間かけて滴下した。
【0155】
反応終了後、メタノールと未反応の酢酸ビニルを留去し、再度メタノールを加えてポリ酢酸ビニルメタノール溶液(濃度50%)を得た。得られたポリ酢酸ビニルは数平均分子量が6490、分子量分布が2.1であった。
次いで、上述のポリ酢酸ビニルメタノール溶液に、NaOH/酢酸ビニル=0.05%(モル比)となる様にNaOHメタノール溶液を加え、40℃でけん化反応を行ない、ポリビニルアルコール(1)を得た。1H−NMRにより測定したけん化度は99%であっ
た。
【0156】
次いで、内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコ中において、蒸留水11gに上述のポリビニルアルコール(1)1gを加え、95℃で溶解し、窒素下で室温まで冷却した。溶液のpHを3に調節後、溶液にベンジルメタクリレート1gを加えて溶解させた。そして、15分間窒素バブリングした後に60℃に加熱した。次いで、過硫酸カリウム0.02gを添加し、3時間重合反応を行った。反応終了後、エマルジョンとして得られた重合溶液から水を減圧下で除去し、PVA−b−ポリ(ベンジルメタクリレート)を得た。得られたポリマーを180℃の熱風乾燥機中で30分間放置したところ、茶色に着色し・臭気も発生し、耐熱性が劣ることが判った。
【実施例2】
【0157】
PVA−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−t−ブチルアクリレート−co−アクリル酸メチル−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル445g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム320g、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.51gを仕込み、約15分間窒素バブリングした後、加熱し、還流条件下で150分間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物をヘキサンと接触させ、ヘキサン中に沈殿させて得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニルを得た。ポリ酢酸ビニルの数平均分子量5100、分子量分布は1.96であった。
【0158】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(5000)とGPCから求めた数平均分子量が略一致することから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0159】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅1.02gを仕込み、更に、溶媒としてイソプロピルアルコール75g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート721g、スチレン58g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン9.6051g、マクロ開始剤として上述の方法で得たポリ酢酸ビニル110.4gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で365分間重合反応を行った。
【0160】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(1000mL/300mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール1000mlにケン濁した後 水300mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(t−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(t−ブチルアクリレート−co−スチレン)の数平均分子量は19000、分子量分布は1.28であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0161】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でメタノール3600mlに上記のポリ酢酸ビニル−b−ポリ(t−ブチルアクリレート−co−スチレン)360gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物12.0gを加え、加熱し、還流条件下で12時間反応を行った。その後、エバポレーターによりメタノールを除去した。そして、水1000ml加えた後に水酸化ナトリウム水溶液で中和し、アセトニトリル中に沈殿させ、得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−t−ブチルアクリレート−co−アクリル酸メチル−co−スチレン)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0162】
上記のブロックポリマーの構造は重水を溶媒とした13C−NMRにより確認された。13C−NMRにより求められた、ブロックポリマーの中の酢酸ビニル単位、ビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、t−ブチルアクリレート単位、アクリル酸メチル単位、スチレン単位の組成比は、1.3:21.4:13.8:46.3:5.3:11.9(モル比)であった。
【実施例3】
【0163】
PVA−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル441g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム464g、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを仕込み、約15分間窒素バブリングした後、加熱し、還流条件下で150分間重合を行った。反応終了後、反応混合物をヘキサンと接触させ、ヘキサン中に沈殿させて得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニルを得た。ポリ酢酸ビニルの数平均分子量3800、分子量分布は1.96であった。
【0164】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(4000)とGPCから求めた数平均分子量が略一致するこ
とから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0165】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅0.883gを仕込み、更に、溶媒としてイソプロピルアルコール90g、メタノール30g、モノマーとしてメタクリル酸ベンジル306g、アクリル酸メチル374.5g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン9.14g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニル96gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で660分反応を行った。
【0166】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(4000mL/1000mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール1000mlにケン濁した後 水300mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル)を得た。ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル)の数平均分子量は20000、分子量分布は1.33であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0167】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でメタノール1000gとテトラヒドロフラン1500gの混合溶媒に上記のポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル)500gを溶解した後、5N水酸化ナトリウム974.7g加え、加熱し、還流条件下で7時間反応を行った。その後、上澄み液を除去し、得られたポリマー塊にテトラヒドロフランを750g加えて、けん濁させ、メタノール500gを加えポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを水1000gに溶解しパラトルエンスルホン酸で中和した後にアセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0168】
上記のブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位の組成比は、14:44:10:11:21(モル比)であった。
【実施例4】
【0169】
PVA−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル440g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム460g、触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.5gを仕込み、約15分間窒素バブリングした後、加熱し、還流条件下で150分間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物をヘキサンと接触させ、ヘキサン中に沈殿させて得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニルを得た。ポリ酢酸ビニルの数平均分子量4200、分子量分布は2.22であった。
【0170】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(4500)とGPCから求めた数平均分子量が略一致することから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0171】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅0.4962gを仕込み、更に、溶媒としてイソプロピルアルコール23.9g、モノマーとしてnブチルアクリレート80.19g、スチレン16.78g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン1.276g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニル15gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で22時間重合反応を行った。
【0172】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(500mL/100mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール500mlにけん濁した後 水100mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の数平均分子量は24100、分子量分布は1.50であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0173】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でメタノール118gとテトラヒドロフラン177gの混合溶媒に上記のポリ酢酸ビニル−b−ポリ(nブチルアクリレート−co−スチレン)59gを溶解した後、5N水酸化ナトリウム115g加え、加熱し、還流条件下で7時間反応を行った。その後、上澄み液を除去し、得られたポリマー塊にテトラヒドロフランを90g加えけん濁させた後にメタノール60gを加えポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを水100gに溶解しパラトルエンスルホン酸で中和した後にアセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリル酸−co−スチレン)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0174】
上記のブロックポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレートアクリル単位、スチレン単位の組成比は、20:65:4:11(モル比)であった。
【実施例5】
【0175】
ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル3587g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム1907g、触媒としてアゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1gを仕込み、加熱し、還流条件下で21時間重合反応を行った。反応終了後 反応溶液中に0.01N水酸化ナトリウム/
メタノール溶液を連続的に滴下しながら、内温40℃で未反応の酢酸ビニルとクロロホルムを減圧留去し、ポリ酢酸ビニル/メタノール溶液(ポリマー濃度81%)を得た。このポリ酢酸ビニルは数平均分子量4100、分子量分布が2.07であった。
【0176】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(4000)とGPCから求めた数平均分子量が略一致することから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0177】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール132.5g、イソプロピルアルコール1050g
モノマーとしてアクリル酸メチル2996g、メタクリル酸ベンジル2448g、スチレン72.7g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニル/メタノール溶液を1236g仕込み、室温から60℃まで1時間で昇温した。内温が60℃に達した時点で、メタノ
ール30gに触媒として臭化第一銅1.2g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン24.07gを溶解した触媒溶液を添加した。触媒溶液添加後、加熱し、還流条件下で25時間重合反応を行った。
【0178】
図1に示されるように、数平均分子量(Mn)は重合反応時間の経過とともに増大した。またガスクロマトグラフィーより求めた、重合溶液中のモノマー消費量から計算されるポリマー中のアクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、スチレン(St)の各モノマーのモル比率を表1に示す。表1から明らかな通り、ポリ酢酸ビニルと連結したブロックコポリマーは、その数平均分子量の増加とともに組成が変化し、このブロックコポリマー中のモノマー組成が、末端に向かって変化している(グラジエントである)ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)であることを確認した。またその数平均分子量は19400、分子量分布は1.41であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0179】
【表1】

【0180】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きの反応釜中でメタノール5251gとテトラヒドロフラン10821g水2626gの混合溶媒に上記の重合溶液7344gを
溶解した後、60℃まで昇温し、5N水酸化ナトリウム11134g加え、65℃で7時間反応を行った。反応終了後、上澄み液を除去して得られたポリマー塊にテトラヒドロフラン10552g、水5279gを加え、けん濁させた後に、氷酢酸75.35gを加えた。さらにメタノール2630gを加えポリマーを沈殿させた。再度上澄み液を除去し、水23698gを加えた後、溶液を90℃まで加熱し、残THFとメタノールを留去し、ポ
リマー水溶液を得た。その後アセトニトリル中にポリマー水溶液を投入しポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、PVA系ブロックと連結したコポリマーがグラジエントコポリマーである、ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸
ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0181】
上記のブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位、スチレン単位の組成比は、21:36:17:3:18:5(モル比)であった。
【実施例6】
【0182】
ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル447g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム225g、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1gを仕込み、加熱し、還流条件下、3.5時間重合反応を行った。反応終了後、反応混合物をヘキサンと接触させ、ヘキサン中に沈殿させて得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ酢酸ビニルを得た。ポリ酢酸ビニルの数平均分子量9300、分子量分布は2.1であった。
【0183】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(9000)とGPCから求めた数平均分子量が略一致することから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0184】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール28.3g、イソプロピルアルコール88.9g モノマーとしてアクリル酸メチル150.5g、メタクリル酸ベンジル122.7g、スチレン3.72g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニル100g仕込み、室温から60℃まで1時間で昇温した。内温が60℃に達した時点で、メタノール5gに触媒として臭化第一銅0.12g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン2.42gを溶解した触媒溶液を添加した。触媒溶液添加後、加熱し、還流条件下、33時間重合反応を行った。
【0185】
図2に示されるように、数平均分子量(Mn)は重合反応時間の経過とともに増大した。またガスクロマトグラフィーより求めた、重合溶液中のモノマー消費量から計算されるポリマー中のアクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、スチレン(St)の各モノマーのモル比率を表2に示す。表2から明らかな通り、ポリ酢酸ビニルと連結したブロックコポリマーは、その数平均分子量の増加とともに組成が変化し、このブロックコポリマー中のモノマー組成が、末端に向かって変化している(グラジエントである)ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)であることを確認した。またその数平均分子量は16900、分子量分布は1.67であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0186】
【表2】

【0187】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きの反応釜中でメタノール276gとテトラヒドロフラン552g、水138gの混合溶媒に上記の重合溶液502gを溶解した後、60℃まで昇温し、5N水酸化ナトリウム728g加え、65℃で7時間反応を行った。反応終了後、上澄み液を除去して得られたポリマー塊にテトラヒドロフラン550g、水140gを加えてけん濁させ、メタノール280gを加えポリマーを沈殿させた。再度上澄み液を除去し、水300gを加えた後、溶液を90℃まで加熱し、残THFとメタノ
ールを留去し、ポリマー水溶液を得た。その後アセトニトリル中にポリマー水溶液を投入しポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、PVA系ブロックと連結したコポリマーがグラジエントコポリマーであるポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0188】
上記のブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位、スチレン単位の組成比は、36:31:11:7:11:4(モル比)であった。
【実施例7】
【0189】
ポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、酢酸ビニル3587g、連鎖移動剤および溶媒としてクロロホルム1907gを仕込み、1時間掛けて70℃に昇温した。次いで、クロロホルム534gに触媒としてアゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.3gを溶解した触媒溶液を、6時間かけて滴下した。その後、クロロホルム444.5gに、触媒としてアゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.5gを溶解した触媒溶液を、5時間かけて滴下した。触媒溶液の滴下後、加熱し、還流条件下、10時間重合反応を行った。反応終了後 反応溶液中に0.01N水酸
化ナトリウム/メタノール溶液を連続的に滴下しながら、内温40℃で未反応の酢酸ビニルとクロロホルムを減圧留去し、ポリ酢酸ビニルメタノール溶液(ポリマー濃度74%)を得た。このポリ酢酸ビニルは数平均分子量4400、分子量分布が2.7であった。
【0190】
上記のポリ酢酸ビニルの末端構造は、−CCl3であった。これは、1H−NMR(溶
媒CDCl3)において、このポリ酢酸ビニルの末端に隣接してメチレン基のピーク(化
学シフトδ=2.8〜3.2のピーク)が認められたことと、末端構造を−CCl3とし
て計算される数平均分子量(4500)とGPCから求めた数平均分子量が略一致するこ
とから、片末端が定量的にハロゲン置換された基(−CCl3)を有するポリ酢酸ビニル
が合成できたことを確認した。
【0191】
次いで、内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール17g、イソプロピルアルコール1048.5g モノマーとしてアクリル酸メチル2623g、メタクリル酸ベンジル2142g、スチレン63.5g、マクロ開始剤として前記のポリ酢酸ビニルメタノール溶液1353g仕込み、室温から60℃まで1時間で昇温した。内温が60℃に達した時点で、メタノール3
0gに触媒として臭化第一銅0.6g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン12.0gを溶解した触媒溶液を添加した。触媒溶液添加後、加熱し、還流条件下、25.5時間重合反応を行った。
【0192】
図3に示されるように、数平均分子量(Mn)は重合反応時間の経過とともに増大した。またガスクロマトグラフィーより求めた、重合溶液中のモノマー消費量から計算されるポリマー中のアクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、スチレン(St)の各モノマーのモル比率を表3に示す。表3から明らかな通り、ポリ酢酸ビニルと連結したブロックコポリマーは、その数平均分子量の増加とともに組成が変化し、このブロックコポリマー中のモノマー組成が、末端に向かって変化している(グラジエントである)ポリ酢酸ビニル−b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)であることを確認した。またそのポリマーの数平均分子量は17300、分子量分布は1.48であった。このポリ酢酸ビニル系ブロックコポリマーにおいて、ポリ酢酸ビニルブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、ジクロロメチレン基である。
【0193】
【表3】

【0194】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きの反応釜中でメタノール276gとテトラヒドロフラン552g、水138gの混合溶媒に上記の重合溶液502gを溶解した後、60℃まで昇温し、5N水酸化ナトリウム728g加え、65℃で7時間反応を行った。反応終了後、上澄み液を除去して得られたポリマー塊にテトラヒドロフラン550g、水140gを加え、けん濁させた後に、メタノール280gを加えてポリマーを沈殿させた。再度上澄み液を除去し、水300gを加えた後、酢酸で中和し、溶液を90℃まで加熱し、残THFとメタノールを留去し、ポリマー水溶液を得た。その後、限外ろ過膜(ACP-1050 旭化成株式会社製)を用いてポリマー水溶液から不純物を除去した。限外ろ過後のポリマー水溶液を濃縮、乾固することにより、PVA系ブロックと連結したコポリマーがグラジエントコポリマーであるポリビニルアルコール−b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン) を得た。このPVA系ブロックコポリマーにおいて、PVA系ブロックと他方のブロックとを連結する連結基は、上述した連結基(ジクロロメチレン基)における塩素原子の一部又は全部が水素原子に置換されたものである。
【0195】
上記のブロックコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたブロックポリマーの中のビニルアルコール単位、アクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位、スチレン単位の組成比は、25:26:21:2:21:5(モル比)であった。
<比較例2>
【0196】
b−ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、溶媒としてメタノール15g、イソプロピルアルコール47.5g モノマーとしてアクリル酸メチル131g、メタクリル酸ベンジル108.6g、スチレン3.31g、開始剤としてメチルブロモプロピオネート2.2g仕込み、室温から60℃まで1時間
で昇温した。内温が60℃に達した時点で、メタノール5gに触媒として臭化第一銅0.0597g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン1.2121gを溶解した触媒溶液を添加した。触媒溶液添加後、加熱し、還流条件下、22時間重合反応を行った。
【0197】
図4に示されるように、数平均分子量(Mn)は重合時間の経過とともに増大した。またガスクロマトグラフィーより求めた、重合溶液中のモノマー消費量から計算されるポリマー中のアクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸ベンジル(BzMA)、スチレン(St)の各モノマーのモル比率を表4に示す。表4より明らかな通り、得られたブロックコポリマーは、その数平均分子量の増加とともに組成が変化している、グラジエントコポリマーである、b−ポリ(アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)であることを確認した。またその数平均分子量は13600、分子量分布は1.60であった。
【0198】
【表4】

【0199】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きの反応釜中でテトラヒドロフラン520gに上記の重合溶液319gを溶解した後、60℃まで昇温し、5N水酸化ナトリウム380g加え、65℃で7時間反応を行った。反応終了後、上澄み液を除去して得られたポリマー塊にテトラヒドロフラン160gを加え、けん濁させた後に、メタノール150gを加えてポリマーを沈殿させた。再度上澄み液を除去し、水300gを加えた後、酢酸で中和し、溶液を90℃まで加熱し、残THFとメタノールを留去し、ポリマー水溶液を得
た。その後アセトニトリル中にポリマー水溶液を投入して、ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、グラジエントコポリマーである、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−アクリル酸メチル−co−メタクリル酸ナトリウム−co−メタクリル酸ベンジル−co−スチレン)を得た。
【0200】
上記のグラジエントコポリマーの構造は重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。
H−NMRにより求められたポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、アクリル酸メチル単位、メタクリル酸ナトリウム単位、メタクリル酸ベンジル単位、スチレン単位の組成比は41:26:4:24:5(モル比)であった。
【0201】
(参考例1):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として臭化第一銅7.43g、を仕込み、更に、溶媒としてアニソール500g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート250g n−ブチルアクリレート250g、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン9.88g、開始剤としてメチルブロモプロピオネート7.243gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で130分間重合反応を行った。
【0202】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(2000mL/500mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール1000mlにケン濁した後 水300mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート)を得た。
このポリマーの数平均分子量は8900、分子量分布は1.36であった。
【0203】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でトルエン3500mlに上記のポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート)350gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物12.8gを加え、加熱し、還流条件下で6時間反応を行った。その後、エバポレーターによりトルエンを除去したのち、真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート)を得た。
【0204】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート)150gを水200mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、アセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート)を得た。
このランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められたランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位の組成比は、50:50(モル比)であった。
【0205】
(参考例2):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として臭化第一銅4.259g、臭化第二銅0.0217gを仕込み、更に、溶媒としてメタノール68.8g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート352g、n−ブチルアクリレート118g、スチレン79.2g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン8.21g、開始剤としてメチルブロモプロピオネート4.41gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下、150分間重合反応を行った。
【0206】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(1000mL/300mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール500mlにけん濁した後
水150mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は21000、分子量分布は1.33であった。
【0207】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でトルエン1720ml
に上記のポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)172gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物6.31gを加え、加熱し、還流条件下、6時間反応を行った。その後、エバポレーターによりトルエンを除去したのち、真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−c
o−スチレン)を得た。
【0208】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)100gを水100mlにけん濁させた後 水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、アセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このランダム
コポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、48:20:32(モル比)であった。
【0209】
(参考例3):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として臭化第一銅3.135g、臭化第二銅0.0234gを仕込み、更に、溶媒としてメタノール68.9g、モノマーとしてtブチルアクリレート400g、n−ブチルアクリレート113g、スチレン37.5g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン6.06g、開始剤としてメチルブロモプロピオネート4.18gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で150分間重合反応を行った。
【0210】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(1000mL/300mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール500mlにけん濁した後
水150mlを加えてポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は21000、分子量分布は1.25であった。
【0211】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でトルエン3000mlに上記のポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)295gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物10.8gを加え、加熱し、還流条件下、6時間反応を行った。その後、エバポレーターによりトルエンを除去したのち、真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−c
o−スチレン)を得た。
【0212】
次いで、上記のポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)1
00gを水100mlにけん濁させた後 水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、アセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認された。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、63:22:15(モル比)であった。
【0213】
(参考例4):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラス
コに、触媒として臭化第一銅8.78g、臭化第二銅0.0688gを仕込み、更に、溶媒としてメタノール112.5g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート774g、n−ブチルアクリレート456g、スチレン290g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン9.6051g、開始剤としてメチルブロモプロピオネート12.95gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記のフラスコ内に仕込み、加熱し、還流条件下で140分間重合反応を行った。
【0214】
反応終了後、重合反応液にメタノール/水(2000mL/500mL)を添加してポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを回収し、メタノール1000mlにケン濁した後 水300mlを加えポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は20600、分子量分布は1.33であった。
【0215】
次いで、コンデンサー、撹拌機および温度計付きのフラスコ中でトルエン5700mlに上記のポリ(t−ブチルアクリレート−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)570gを溶解した後、パラトルエンスルホン酸・1水和物20.9gを加え、加熱し、還流条件下で6時間反応を行った。その後、エバポレーターによりトルエンを除去したのち、真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−c
o−スチレン)を得た。
【0216】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)30
0gを水1000mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、アセトニトリル中に沈殿させた。得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。
上記のランダムコポリマーの構造は重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、38:25:28(モル比)であった。
【0217】
(参考例5):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)9gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン1050g、モノマーとしてアクリル酸192g、nブチルアクリレート240g、スチレン48g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った。
【0218】
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n
ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は11000、分子量分布は1.65であった。
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)20
0gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し真空乾燥することによりポリ(アクリル酸ナトリウム−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。
【0219】
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、60:31:9(モル比)であった。
【0220】
(参考例6):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−nブチルアクリレート−co−ス
チレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)9gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン1050g、モノマーとしてアクリル酸144g、nブチルアクリレート288g、スチレン48g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った

反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n
ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は8200、分子量分布は1.80であった。
【0221】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)20
0gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し真空乾燥することによりポリ(アクリル酸ナトリウム−co−nブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、50:40:10(モル比)であった。
【0222】
(参考例7):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン3500g、モノマーとしてアクリル酸600g、nブチルアクリレート600g、スチレン400g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行っ
た。
【0223】
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は11000、分子量分布は1.60であった。
【0224】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)700gを水3500mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し真空乾燥することによりポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)を得た。
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、47:22:31(モル比)であった。
【0225】
(参考例8):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、溶媒としてテトラヒドロフラン3500g、モノマーとしてアクリル酸600g、n−ブチルアクリレート600g、スチレン400g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス
温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応を行った。
【0226】
反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム/メタノール溶液で中和後、イソプロピルアルコール中に沈殿させた。沈殿をろ過し、真空乾燥することで、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−スチレン)とアクリル酸ナトリウムの混合物を得た。このポリマーの数平均分子量は11000、分子量分布は1.6であった。
【0227】
上記ランダムコポリマーとアクリル酸ナトリウムの混合物30gを水970gに溶解したのち、限外ろ過膜(AIP-1010 旭化成株式会社製)を用いて、アクリル酸ナトリウムを除去した。アクリル酸ナトリウム除去後、ポリマー水溶液を濃縮・乾固することにより、上記ランダムコポリマーを得た。
このランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、47:21:32(モル比)であった。
【0228】
(参考例9):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−2エチルヘキシルアクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換された、コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)30gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン3500g、モノマーとしてアクリル酸600g、2−エチルヘキシルアクリレート600g、スチレン400g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重
合反応を行った。
【0229】
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−エチルヘキシルアクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は13000、分子量分布は1.5であった。
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−エチルヘキシルアクリレート−co−スチレン)200gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し、真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−エチルヘキシルアクリレート−co−スチレン)を得た。
【0230】
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、エチルヘキシルアクリレート単位、スチレン単位の組成比は、47.5:17:35.5(モル比)であった。
【0231】
(参考例10):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン700g、モノマーとしてアクリル酸120g、n−ブチルアクリレート120g、ベンジルメタクリレート80g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合
反応を行った。
【0232】
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n
−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)を得た。このポリマーの数平均分子量は15000、分子量分布は1.6であった。
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)200gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し、真空乾燥することによりポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)を得た。
【0233】
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、ベンジルメタクリレート単位の組成比は、56:20:24(モル比)であった。
【0234】
(参考例11):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン700g、モノマーとしてアクリル酸85g、nブチルアクリレート79g、ベンジルメタクリレート156g、を上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時間、重合反応
を行った。
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)を得た。このポリマーの数平均分子量は16000、分子量分布は1.7であった。
【0235】
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)200gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し真空乾燥することによりポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート)を得た。
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、ベンジルメタクリレート単位の組成比は、40:30:30(モル比)であった。
【0236】
(参考例12):ポリ(アクリル酸ナトリウム−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート−co−スチレン)の合成
内部を窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として2,2’−アソビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4gを仕込み、更に、溶媒としてテトラヒドロフラン700g、モノマーとしてアクリル酸98g、nブチルアクリレート91g、ベンジルメタクリレート11g、スチレン22gを上記のフラスコ内に仕込んだ。バス温度を室温から70℃まで1時間かけて上昇させ、70℃で8時
間、重合反応を行った。
【0237】
反応終了後、エバポレーターで重合液を濃縮し、アセトニトリル中にポリマーを沈殿させた。その後得られたポリマーを真空乾燥することにより、ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート−co−スチレン)を得た。このポリマーの数平均分子量は13000、分子量分布は1.4であった。
次いで、上記ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート−co−スチレン)200gを水100mlにけん濁させた後、水酸化ナトリウム水溶液で中和・溶解し、その後水をエバポレーターで除去し、真空乾燥することによ
り、ポリ(アクリル酸−co−n−ブチルアクリレート−co−ベンジルメタクリレート−co−スチレン)を得た。
【0238】
上記のランダムコポリマーの構造は、重水を溶媒としたH−NMRにより確認した。H−NMRにより求められた、ランダムコポリマーの中のアクリル酸ナトリウム単位、nブチルアクリレート単位、ベンジルメタクリレート単位、スチレン単位の組成比は、30:10:25:35(モル比)であった。
以下に、実施例1〜7で得られた本発明のブロックコポリマーを用いた、顔料分散水性液の製造例を示す。尚、以下の実施例8〜33、及び比較例3〜10においては、先述の実施例1で得られたPVA系ブロックコポリマーを、B−Aと表記し、実施例2〜7にて得られたPVA系ブロックコポリマーについては、各々、B−C〜B−Hと表記する。また参考例1で得られたランダムコポリマーについては、R−Aと表記し、参考例2〜12にて得られたランダムコポリマーについては、各々、R−B〜R−Lと表記する。
【実施例8】
【0239】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液A)の調製
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)75.8g、アシッドレッド−51(アルドリッチ社製)10%水溶液25g、脱イオン水149.2gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0240】
上記分散液を300mlビーカーに秤量し、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−300T;使用チップ26mmφ)で5分分散、液温が20℃になってから5分分散を繰り返し、分散時間がトータル60分になるまで分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Aとした。
この顔料分散液を用いて、以下の処方により、インクを製造した。
【0241】
(記録液の調製)
顔料分散液A 3.75g
B−A(10%水溶液) 0.5g
脱イオン水 4.135g
ジエチレングリコール 0.5g
グリセリン 0.5g
トリメチロールプロパン 0.6g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.015g
【0242】
上記成分を混合し、15分撹拌、NaOH水溶液でpHを9に調製後、30分間超音波分散処理後して記録液Aを得た。この記録液Aを、以下の方法で評価した。なお、プリンターとして、インクジェット記録方式プリンタ(キヤノン社製BJ−S700)を用い、印字用紙として市販の光沢紙(PR101)を用いた。また、記録液は、0.45μmフ
ィルターで濾過してから評価に用いた。
【0243】
(a)記録液の安定性
試験方法としては記録液に分散安定性を阻害する効果を有する安息香酸アンモニウムを1.0wt%加えることで、加速試験を行った。安息香酸アンモニウムを添加後、70℃で1時間保持し粒径を測定した。粒径の増大が小さいほど安定である。尚、平均粒径の測定はインクジェット記録液を脱イオン水で10000倍に希釈し、大塚電子(株)DLS7000でマゼンタ、イエローはHe−Neレーザー、ブラック、シアンはArレーザーを用いて測定し、平均粒子径の値はCumulant法により算出した。
【0244】
(b)記録画像の耐擦過性
該インクを、キヤノン(株)BJ−S700プリンターで、カートリッジに充填した後に、光沢紙(キャノン(株)PR−101)に印字をおこない、印字直後と1時間後の耐擦過性の試験を以下の指標により行った。結果を表5に示す。
【0245】
耐擦過性
○:指でこすっても色おちしない
△:指でこすると僅かに色落ちする
×:指でこすると剥げる
【0246】
(c)記録画像の20゜グロス
該インクを、キヤノン(株)BJ−S700プリンターで、カートリッジに充填した後に、光沢紙(キャノン(株)PR−101)に印字をおこない、1日後にHaze−Gross Reflectmeter(BYK−Gardner社)で20゜グロスの測定を行った。結果を表5に示す。
【実施例9】
【0247】
・シアン顔料分散液(顔料分散液B)の調整
ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量30.8%)73.1g、ダイレクトブルー−86(三菱化学社製)10%水溶液25g、脱イオン水151.9gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で6時間分散して分散液を得た。
【0248】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Bとした。この顔料分散液を用いて、実施例8と同様にインクを調製し、評価した。結果を表5に示す。
【実施例10】
【0249】
・イエロー顔料分散液(顔料分散液C)の調整
ピグメントイエロー−74(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量23.5%)95.7g、ダイレクトイエロー−27(アルドリッチ社製)10%水溶液25g、脱イオン水129.3gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0250】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Cとした。この顔料分散液を用いて、実施例8と同様にインクを調製し、評価した。結果を表5に示す。
【実施例11】
【0251】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液D)の調整
カーボンブラック(MA100 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)22.5g、ダイレクトブルー−86(三菱化学社製)10%水溶液25g、脱イオン水202.5gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で6時間分散して分散液を得た。
【0252】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Dとした。この顔料分散液を用いて、実施例8と同様にインクを調製し、評価した。結果を表5に示す。
【実施例12】
【0253】
実施例9において、用いるポリマーとしてB−AをB−Cとした以外は、実施例9と同様にインクを調製し、評価した。結果を表5に示す。
【実施例13】
【0254】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液E)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)84.2g、B−A10%水溶液50g、脱イオン水115.7gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で8時間分散して分散液を得た。
【0255】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Eとした。この顔料分散液を用いて、以下の処方により、インクを製造した。
【0256】
(記録液の調製)
顔料分散液E 5g
脱イオン水 3.385g
ジエチレングリコール 0.5g
グリセリン 0.5g
トリメチロールプロパン 0.6g
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製界面活性剤) 0.015g
【0257】
上記成分を混合し、15分撹拌、30分間超音波分散処理後して記録液Gを得て、実施例8と同様に評価した。結果を表5に示す。
【実施例14】
【0258】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液F)の調整
カーボンブラック(MA−100 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)25g、B−A10%水溶液50g、脱イオン水175gを混合し、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて25℃で6時間分散して分散液を得た。
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Fとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例15】
【0259】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液G)の調整
カーボンブラック(#990 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)25g、R−A10%水溶液25g、脱イオン水150gを混合し、ホモミキサーで30分予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて70℃で90分間分散し、B−D10%水溶液25gをペリスターポンプを使用し10分間かけて分散液中に滴下し90分間分散を2回繰り返し、分散液を得た。
【0260】
上記分散液を300mlビーカーに秤量し、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザーで実施例8と同様に分散時間がトータル60分になるまで分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Fとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例16】
【0261】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液H)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)94.3g、R−B10%水溶液56g、脱イオン水87.7gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、60℃で4時間分散し、B−D10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0262】
上記分散液を500mlビーカーに秤量し、ビーカーを水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で5分分散、液温が40℃になってから5分分散を繰り返し、分散時間がトータル60分になるまで分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Hとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例17】
【0263】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液I)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)94.3g、R−C10%水溶液56g、脱イオン水91.1gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、40℃で4時間分散し、B−D10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を25℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0264】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液 I とした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例18】
【0265】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液J)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)94.3g、R−D10%水溶液56g、脱イオン水87.7gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、60℃で4時間分散し、B−D10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0266】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Jとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例19】
【0267】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液K)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)94.3g、R−D10%水溶液56g、脱イオン水87.7gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、60℃で4時間分散し、B−E10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1
時間分散し分散液を得た。
【0268】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Kとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例20】
【0269】
・シアン顔料分散液(顔料分散液L)の調整
ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量30.8%)90.9g、R−E10%水溶液56g、脱イオン水91.1gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、40℃で4時間分散し、B−F10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を25℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0270】
上記分散液を500mlビーカーに秤量し、ビーカーを氷水中に漬け、超音波ホモジナイザー(日本精機製作所(株);US−600T;使用チップ36mmφ)で3分分散、液温が20℃になってから3分分散を繰り返し、分散時間がトータル60分になるまで分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Lとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例21】
【0271】
・イエロー顔料分散液(顔料分散液M)の調整
ピグメントイエロー−74(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量23.5%)119.1g、R−F10%水溶液56g、脱イオン水62.9gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、25℃で1時間分散し、B−F10%水溶液42gをペリスターポンプを使用し15分間かけて分散液中に滴下し、40℃に温度を上げた後7時間分散し分散液を得た。
【0272】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例20と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Mとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例22】
【0273】
・マゼンタ顔料分散液(顔料分散液N)の調整
ピグメントレッド−122(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量29.7%)94.3g、R−G10%水溶液56g、脱イオン水87.7gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、60℃で4時間分散し、B−F10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0274】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Nとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例23】
【0275】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液O)の調整
カーボンブラック(#990 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)28g、R−G10%水溶液112g、脱イオン水95gを混合し、ホモジナイザーで10分予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて80℃で6時間分散し、60℃まで温度を下げた後、B−F10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0276】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Oとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例24】
【0277】
・シアン顔料分散液(顔料分散液P)の調整
ピグメントブルー−15:3(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量30.8%)90.9g、R−G10%水溶液112g、脱イオン水32.1gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、25℃で1時間分散し、B−F10%水溶液42gをペリスターポンプを使用し15分間かけて分散液中に滴下し1時間分散し分散液を得た。
【0278】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例20と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Pとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例25】
【0279】
・イエロー顔料分散液(顔料分散液Q)の調整
ピグメントイエロー−74(大日精化工業株式会社製;ペースト;固形分量23.5%)119.1g、R−G10%水溶液56g、脱イオン水62.9gを混合し、ホモジナイザーで10分間予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用い、25℃で1時間分散し、B−F10%水溶液42gをペリスターポンプを使用し15分間かけて分散液中に滴下し、40℃に温度を上げた後7時間分散し分散液を得た。
【0280】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例20と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Qとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例26】
【0281】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液R)の調整
R−GをR−Iに変えた以外は、実施例23と同様にして、顔料分散液Rを得た。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例27】
【0282】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液S)の調整
カーボンブラック(#990 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)28g、R−J10%水溶液112g、脱イオン水95gを混合し、ホモジナイザーで10分予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて60℃で6時間分散し、B−F10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を3回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0283】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Sとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例28】
【0284】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液T)の調整
R−JをR−Kに変えた以外は、実施例27と同様にして、顔料分散液Tを得た
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例29】
【0285】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液U)の調整
R−JをR−Lに変えた以外は、実施例27と同様にして、顔料分散液Uを得た
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例30】
【0286】
・シアン顔料分散液(顔料分散液V)の調整
B−FをB−Gに変えた以外は、実施例24と同様にして、顔料分散液Vを得た
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例31】
【0287】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液W)の調整
カーボンブラック(#960 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)28g、R−I10%水溶液140g、脱イオン水84gを混合し、ホモジナイザーで10分予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて80℃で6時間分散し、60℃まで温度を下げた後、B−G10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散を2回繰り返し、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0288】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様に分散し顔料分散液を得た。この分散液を顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液Wとした。
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例32】
【0289】
・シアン顔料分散液(顔料分散液X)の調整
R−GをR−Hに、B−GをB−Hに変えた以外は、実施例30と同様にして、顔料分散液Xを得た
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
【実施例33】
【0290】
・ブラック顔料分散液(顔料分散液Y)の調整
R−JをR−Hに、B−FをB−Hに変えた以外は、実施例27と同様にして、顔料分散液Yを得た
顔料分散液をこの顔料分散液に変更した以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例3>
【0291】
実施例8のポリマーをポリビニルアルコールホモポリマー(クラレ(株)PVA−102)に変更した以外は実施例8と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例4>
【0292】
実施例8のポリマーをスチレン−アクリル酸ブロックコポリマー(Polymer Source社 P2476)とした以外は実施例8と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例5>
【0293】
実施例8において、ポリマーを使用しなかった他は実施例8と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例6>
【0294】
実施例13のポリマーをスチレン−アクリル酸ブロックコポリマー(Polymer Source社 P2476)とした以外は実施例13と同様にして実施した。結果を表5に示す。
<比較例7>
【0295】
実施例13のポリマーをポリビニルアルコールホモポリマー(クラレ(株)PVA−102)とした以外は、実施例13と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例8>
【0296】
実施例14のポリマーを高分子分散剤ジョンクリル678(ジョンソンポリマー(株))とした以外は、実施例14と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例9>
【0297】
実施例14のポリマーを、R−Dとした以外は、実施例14と同様に実施した。結果を表5に示す。
<比較例10>
【0298】
カーボンブラック(#990 三菱化学社製;パウダー;固形分量100%)28g、R−G10%水溶液112g、脱イオン水126gを混合し、ホモジナイザーで10分予備分散実施後、0.5mmΦのジルコニアビーズをメディアとしてビーズミルを用いて80℃で6時間分散し、60℃まで温度を下げた後、比較例2で得られたポリマー10%水溶液14gをペリスターポンプを使用し5分間かけて分散液中に滴下し1時間分散後、温度を40℃に下げ1時間分散し分散液を得た。
【0299】
上記分散液を超音波ホモジナイザーで実施例16と同様の条件で分散処理して得られた
顔料分散液を、顔料濃度8重量%に調整し、顔料分散液とした。この分散液を実施例13と同様にしてインク化し、記録液を得た。しかし調製された記録液は粘度が非常に高く、印字できなかった。結果を表5に示す。
【0300】
【表5】

【0301】
以上の結果から、本発明のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーを添加した記録液は安定性に優れ、且つ得られる印刷物はグロスも高く(印字濃度が高く)、また耐擦過性が優れていることが分かる。一方、このポリマーを用いないか、または公知のポリマーを用いた記録液は、安定性低く、また得られる印刷物の耐擦過性が不十分であり、且つ印字濃度も低いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリビニルアルコール系ブロックコポリマー。
【化1】

(式中、Aはポリビニルアルコール系ブロックを示し、
Bは疎水性セグメントB’と、A以外の親水性セグメントB’’とを含むブロックを示し、ブロックAに近い方からB’、 B’’の順に配置され、ブロックBはグラジエントポ
リマーであり、
一般式(1)中のAの構成単位は、以下の一般式(2)〜(5)の何れかで表され、一般式(1)中のBの構成単位は、以下の一般式(8)〜(11)の何れかで表される。
【化2】

(式中、a及びbは−OH又は−OCOR3(但しR3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示し、a及びbが同時に−OCOR3である場
合を除く。)を示し、R1及びR2は各々独立して水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Aの連結基側でない末端はDであり、Dは以下の一般式(6)又は(7)で表される。
【化3】

(式中、R4は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R5は−OH又は−OCORA(但しRAは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基
を示す。)を示す。))
【化4】

(式中、R6は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基
を示し、R7は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、カルボ
キシラト塩、アミノカルボニル基、アルキル基、アシロキシ基、アルケニル基、アリール基またはアルコキシカルボニル基を示し、Bの連結基側でない末端はR8であり、R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基を示す。)
1、X2、X3及びX4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を示し、m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【請求項2】
一般式(2)〜(5)の何れかで表される構造単位の数が1〜1000の整数であり、一般式(8)〜(11)の何れかで表される構造単位の数が1〜1000の整数で表されることを特徴とする請求項1に記載のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー。
【請求項3】
一般式(1)におけるポリビニルアルコール系ブロックAの分子量が、500以上100000以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリビニルアルコール系ブ
ロックコポリマー。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系ブロックAの分子量が500〜50000、ブロックBの分子量が500〜50000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のポリビニルアルコール系ブロックコポリマー。
【請求項5】
水性媒体中に、少なくとも顔料と、下記一般式(1)で表されるポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとを含有する顔料分散水性液。
【化5】

(式中、Aはポリビニルアルコール系ブロックを示し、
Bは疎水性セグメントB’と、A以外の親水性セグメントB’’とを含むブロックを示し、ブロックAに近い方からB’、 B’’の順に配置され、ブロックBはグラジエントポ
リマーであり、
一般式(1)中のAの構成単位は、以下の一般式(2)〜(5)の何れかで表され、一般式(1)中のBの構成単位は、以下の一般式(8)〜(11)の何れかで表される。
【化6】

(式中、a及びbは−OH又は−OCOR3(但しR3は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示し、a及びbが同時に−OCOR3である場
合を除く。)を示し、R1及びR2は各々独立して水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Aの連結基側でない末端はDであり、Dは以下の一般式(6)又は(7)で表される。
【化7】

(式中、R4は水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基を示し、R5は−OH又は−OCORA(但しRAは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基を示す。)を示す。))
【化8】

(式中、R6は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1〜10のアルキル基
を示し、R7は、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、カルボ
キシラト塩、アミノカルボニル基、アルキル基、アシロキシ基、アルケニル基、アリール基またはアルコキシカルボニル基を示し、Bの連結基側でない末端はR8であり、R8は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルエーテル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アシロキシ基を示す。)
1、X2、X3及びX4は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアリール基を示し、m1は1〜5の整数であり、m2は0〜4の整数であり、m1+m2は1〜5の整数である。)
【請求項6】
ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーが請求項2乃至4のいずれかに記載のポリビニルアルコール系ブロックコポリマーであることを特徴とする請求項5に記載の顔料分散水性液。
【請求項7】
顔料がフタロシアニン系顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、キサンテン系顔料、アンタントロン系顔料、ジオキサジン系顔料、モノアゾ系顔料、ジズアゾ系顔料、アゾメチン系顔料、カーボンブラック、金属錯体系顔料及び無機顔料からなる郡より選ばれる1つ又は二つ以上の顔料であることを特徴とする請求項5または6に記載の顔料分散水性液。
【請求項8】
顔料と、ポリビニルアルコール系ブロックコポリマーとの重量比が1:0.01〜1:2であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の顔料分散水性液。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載の顔料分散水性液を含む記録液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−209336(P2010−209336A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66533(P2010−66533)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【分割の表示】特願2004−109730(P2004−109730)の分割
【原出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】